(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光変調器、及びこれを用いた光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G02F1/03 505
(21)【出願番号】P 2018124468
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102786(JP,A)
【文献】特開2006-041213(JP,A)
【文献】特開2003-233048(JP,A)
【文献】特開2017-134131(JP,A)
【文献】特開2007-065247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0308898(US,A1)
【文献】特開平07-151927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/03
G02B 6/12 - 6/14
G02B 6/26 - 6/27
G02B 6/30 - 6/42
G02B 6/42 - 6/43
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H01L 31/00 -31/024
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子と、
前記光変調素子を収容する筐体と、
を備え、
前記筐体は、平面視が四辺形の底面壁と、前記底面壁の互いに対向する2つの辺につながる第1の長辺壁及び第2の長辺壁と、前記第1の長辺壁及び前記第2の長辺壁よりも長さの短い、前記底面壁の互いに対向する他の2つの辺につながる第1の短辺壁及び第2の短辺壁と、を有し、
前記光変調素子は、前記底面壁、前記第1の長辺壁及び前記第2の長辺壁、並びに前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁により囲まれる空間内に収容されており、
前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させる干渉部を有する干渉型光変調素子であり、
前記第2の長辺壁は、前記長手方向に沿った前記干渉部に対応する範囲の部分の壁厚が、一様であって且つ前記第2の長辺壁の他の部分の壁厚より厚く、
且つ、前記第2の長辺壁および前記第1の長辺壁は、それらの壁厚が、前記筐体の幅方向中心線に関して非対称に構成されており、
前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁のうち少なくとも一つは、前記第1の長辺壁の壁厚より薄い壁厚を有する、
光変調器。
【請求項2】
前記第1の長辺壁又は前記第2の長辺壁の内面に、前記光変調素子に向かって延在する少なくとも一つの突出部を有する、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記光変調素子の光入力端及び光出力端は、それぞれ、前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁と対向し、
前記第2の長辺壁のうち、前記第1の短辺壁の内面から前記光変調素子の光入力端までの範囲である光入力部、及び第2の短辺壁の内面から前記光変調素子の光出力端までの範囲である光出力部の少なくとも一方を含む範囲が、前記第1の長辺壁の壁厚よりも薄い壁厚を有する、
請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1の短辺壁には、前記光変調素子に光を入力する入力光ファイバを保持する光入力端末部が固定され、
前記第2の短辺壁には、前記光変調素子から出力される光を前記筐体の外部へ導く出力光ファイバを保持する光出力端末部が固定され、
前記光入力端末部もしくは前記光出力端末部に光部品が取り付けられ、又は前記筐体の前記光入力部もしくは前記光出力部に光部品が取り付けられている、
請求項3に記載の光変調器。
【請求項5】
前記底面壁の外面には、前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁にそれぞれつながる辺の少なくとも一方から、長手方向に沿って所定距離の範囲の部分にへこんだ凹部が設けられている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項6】
前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子である、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項7】
前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子であり、
前記少なくとも一つの突出部は、前記第1の長辺壁又は前記第2の長辺壁のうち、前記光変調素子の前記2つの前記光導波路が形成された部分を含む範囲において、前記光変調素子に向かって延在する、
請求項2に記載の光変調器。
【請求項8】
前記壁厚は、それぞれ対応する壁の部分又は全体の厚さの平均値である、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光変調器と、
発熱体である電子部品と、
を備える光モジュール。
【請求項10】
前記電子部品の少なくとも一つは、前記光変調器に対し、
前記筐体の幅方向中心線に関して壁厚が非対称に構成された前記第1の長辺壁および前記第2の長辺壁のうち、前記第1の長辺壁よりも壁厚の厚い前記第2の長辺壁
に近接して配されている、
請求項9に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記光変調器及び前記電子部品は回路基板上に実装されており、
前記電子部品の少なくとも一つは、前記光変調器に対し前記第2の長辺壁のある側に、その一部が平面視において前記光変調器と重なるように配されている、
請求項9に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器、及びこれを用いて光通信動作を行う光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、長距離光通信において適用が開始されたデジタルコヒーレント伝送技術は、通信需要の更なる高まりから中距離、短距離などメトロ用光通信にも適用されつつある。このようなデジタルコヒーレント伝送においては、光変調器として、代表的にはLiNbO3(以下、LNという)基板を用いたDP-QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)変調器が用いられる。以下、LiNbO3基板を用いた光変調器を、LN変調器という。
【0003】
このような光変調器は、例えば、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力するドライバIC(ドライバ集積回路)や、上位装置から入力される信号を高速に処理して上記ドライバICに送信データを入力するDSP(デジタルシグナルプロセッサ、Digital Signal Processor)が配された回路基板と共に、光通信動作を行う光モジュール内に実装されて使用される。
【0004】
メトロ用光通信など短距離用途では、特に光モジュールの小型化への要求が高く、今後、更なる小型化要請の高まりにより、光モジュール筐体内における光部品及び電子部品の実装密度は増々高まることとなる。その結果、光モジュール筐体内においては、光変調器に対し、ドライバICやDSP等の発熱電子部品が極めて近接して配置することが必要となり得る。
【0005】
一般に、ドライバICは、数ボルトから十数ボルトの電圧振幅を有する高周波信号を出力し、1W前後の電力を消費する。また、特に、光モジュールに用いられるDSPは、数十から数百Mbsの信号を高速で処理する素子(またはデバイス)で、10~30W程度の電力を消費する。そして、これらの消費電力は主に熱としてドライバICやDSPから放出されることとなる。
【0006】
一方で、光変調器は、その筐体(変調器筐体)の内部に、特性及び信頼性の面で温度に対し比較的敏感な光学結晶(例えば、上記のLN)を備え、且つサブミクロン単位の位置精度を要する光学部品を収容する。
【0007】
このため、従来、光モジュール筐体内においては、発熱電子部品が発する熱が光変調器に影響を与えないように、光変調器と発熱電子部品とは、できる限り離れた位置に配される。また、発熱電子部品が発する熱が光モジュール筐体内の各部の温度を上昇させるのを抑制すべく、発熱電子部品を光モジュール筐体に直接的に接触させ、又は放熱ゲルを介して接触させて、発熱電子部品からの熱を光モジュール外へ放熱することも提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
しかしながら、光モジュールの小型化が進展すれば、光変調器と発熱電子部品との近接配置は不可避であり、発熱電子部品に対し近接配置された場合でも特性及び長期信頼性の低下を回避し得る光変調器が望まれる。
【0009】
外部から印加される熱に起因する光変調器の信頼性低下等を抑制する技術として、例えば特許文献2には、製造時において、光ファイバを導入するフィードスルー部を筐体にハンダ固定する際の熱により筐体内部の光変調素子に劣化や故障が生じるのを防止するため、フィードスルー固定部と光変調素子固定部との間の筐体の壁厚を薄くすることが開示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の構成は、製造時のハンダ固定工程においてのみ発生する数秒から十数秒程度の極めて短時間に印加される熱が光変調素子へ伝達されるのを回避するものである。この構成は光変調器の動作時において外部から継続的に印加される熱に起因する光学特性の変動や、光変調器の長期動作期間中において継続的に熱が印加されることに起因する長期信頼性の低下についての回避策を教示するものではない。
【0011】
さらに、光変調器筐体は、一般に、製造容易性の観点や、周囲温度変動時の応力集中回避の観点から、できる限り均等な壁厚をもつように設計される。これに対し、光モジュール筐体内に実装された光変調器の変調器筐体には、周囲温度変動に伴って四方から均等に熱が加わる場合とは異なり、発熱電子部品からの熱が局所的に加わることが多い。
【0012】
図15は、従来の光変調器の構成の一例を概略的に示す平面図である。図示の光変調器1500は、例えば、光変調素子1502と、当該光変調素子1502を収容する変調器筐体1504と、を備える。光変調素子1502は、例えば、LN基板上に形成された並行導波路間の位相差を制御することにより光の干渉を利用して動作する、いわゆる干渉型光変調素子であるマッハツェンダ型光変調器である。
【0013】
また、光変調器1500は、光変調素子1502へ光を入力する入力光ファイバ1508と、光変調素子1502により変調された光を出力する出力光ファイバ1510とを備える。変調器筐体1504は、一般的には平面視が略矩形であり、4つの辺のそれぞれの壁厚ができるだけ均等となるように、必要な剛性を確保できる範囲で同じ厚さで構成される。
【0014】
実際には、変調器筐体1504の内部には、高周波信号を変調器筐体1504の外部から受信して光変調素子1502まで入力するための、図示しないリードピンや、中継基板等が実装されため、壁の内面部分には必要に応じて凹凸が設けられる。しかしながら、これらの凹凸は、付随的な部品配置のために、必要に応じて限られた範囲内に設けられるものであり、変調器筐体1504の四方の壁の厚さを有意な程度に互いに不均等なものとするものではない。
図15に示す変調器筐体1504は、四方の辺の壁厚を、各辺における平均的な厚さを持つものとして概略的に示したものとして理解されたい。
【0015】
従来の光変調器1500は、変調器筐体1504の四方の辺の壁厚(の平均値)が、略等しい値t15となるように構成されており、且つ、幅方向に対する中心線1520及び長手方向に対する中心線1522に関して対象な構造となっている。このため、光変調器1500の周囲環境からの熱が変調器筐体1504に対して均等に加わる場合には、変調器筐体1504の変形は微小な範囲に抑制され、特性の変動や信頼性の低下の程度も抑制される。ここで、壁厚の「平均値」とは、対応する壁又は壁の部分厚さの平均値をいい、当該壁又は壁の部分が隣接する壁に接続又は交わる場合であっても、当該接続又は交わる部分を含まない、いわゆる“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいうものとする。例えば、対応する壁又は壁の部分の内面(変調器筐体内部の面)が、隣接する壁の内面と、曲線部(R加工部)を介して接続されている場合には、当該曲線部を除く、“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいう。
【0016】
しかしながら、光変調器1500が光モジュール内に実装される場合には、隣接して配された発熱電子部品から伝わる熱は、一般に、変調器筐体1504の一部分にほぼ局所的に伝わり、変調器筐体1504の全体へ向かって発散していく。このため、光モジュール内部では、一般に、熱は変調器筐体1504に対し均等には加わらない。
【0017】
図16は、光変調器1500を、例えば発熱電子部品であるDSP1600と共に光モジュールの回路基板1602上に実装した場合の、変調器筐体1504に発生する温度分布を模式的に示したものである。図示の変調器筐体1504に重畳して示された白黒の濃淡は各部の温度を示しており、白いほど温度が低く、黒いほど温度が高いことを示している。
【0018】
図示において、回路基板1602上の図示右下に配されたDSP1600からの熱は、主として回路基板1602を伝搬し、変調器筐体1504の図示下側の辺の、DSP1600と対向する部分から変調器筐体1504へ流入する。そして、当該部分から流入した熱は、変調器筐体1504の全体へ向かって図示左上へ伝搬していく。
【0019】
その結果、変調器筐体1504には、図示のように右下から左上に向かって温度が低下するような温度勾配が発生することとなる。このような温度勾配は、環境温度の変化に伴って変調器筐体1504の全体の温度が変化するような場合には発生せず、DSP1600が変調器筐体1504にとって非対称な位置にある偏在した熱源として作用することに起因して発生する。より具体的には、この温度勾配は、DSP1600のサイズが一般に変調器筐体1504のサイズよりも小さく、且つDSP1600が変調器筐体1504の辺の一部に近接して配置されることに起因する。
【0020】
そして、DSP1600が上記のように非対称な偏在する熱源として作用する結果、この温度勾配は図示のように変調器筐体1504の幅方向に対する中心線1520及び長手方向に対する中心線1522のいずれの方向とも異なる方向1604(図示白色の破線矢印)に沿って発生し、変調器筐体1504に非対称な温度分布を発生させる。
【0021】
このよう変調器筐体1504における非対称な温度分布は、“四方の辺の壁厚を同じにして変形を抑制する”という従来の変調器筐体1504の設計思想が予定する温度変化、すなわち、変調器筐体1504における“均等な温度変化”とは大きく異なるものであり、設計者の予測を超える特性変動及び長期信頼性の低下を招き得る。
【0022】
例えばTelcodiaやJIS等の工業標準に規定された、電子部品及び光部品の長期信頼性予測のための加速劣化試験では、種々の温度(例えば100℃、125℃等)に設定された恒温槽のそれぞれに試験対象である光変調器を入れ、所定の経過時間が到来する毎にそれぞれの光変調器の特性変動量が測定される。すなわち、このような加速劣化試験から予測されるのは、光変調器1500が均等な温度状態で使用され続けた場合の長期信頼性である。したがって、上記のように光モジュール内において非対称な温度分布が発生する実際の光変調器1500の長期信頼性は、上記予測とは大きく異なるものとなり得る。
【0023】
また、変調器筐体1504の上記非対称な温度分布に起因して、光変調素子1502を構成する基板の面内にも非対称な温度分布が発生する。これにより、特に、光変調素子1502として、上記のようにマッハツェンダ型光変調器のような干渉型光変調素子を用いる場合、当該基板上の隣接する並行導波路間には、非対称な温度分布に起因する互いに異なる付加的な位相差が発生し、光変調素子1502自身の特性及び信頼性にも好ましくない影響が生じ得る。すなわち、干渉型光変調素子を用いる光変調器では、発熱電子部品との近接配置に起因して長期的に生ずる非対称な温度分布によって、加速劣化試験等では予見できなかった特性変動及び信頼性の低下が特に顕著に発生することが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】特開2016-99508号公報
【文献】特開2015-102786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上記背景より、電子部品等の熱源が近接して配置されることに起因する特性変動や長期信頼性の低下を抑制し得る光変調器の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一の態様は、基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子と、前記光変調素子を収容する筐体と、を備え、前記筐体は、平面視が四辺形の底面壁と、前記底面壁の互いに対向する2つの辺につながる第1の長辺壁及び第2の長辺壁と、前記第1の長辺壁及び前記第2の長辺壁よりも長さの短い、前記底面壁の互いに対向する他の2つの辺につながる第1の短辺壁及び第2の短辺壁と、を有し、前記光変調素子は、前記底面壁、前記第1の長辺壁及び前記第2の長辺壁、並びに前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁により囲まれる空間内に収容されており、前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させる干渉部を有する干渉型光変調素子であり、前記第2の長辺壁は、前記長手方向に沿った前記干渉部に対応する範囲の部分の壁厚が、一様であって且つ前記第2の長辺壁の他の部分の壁厚より厚く、且つ、前記第2の長辺壁および前記第1の長辺壁は、それらの壁厚が、前記筐体の幅方向中心線に関して非対称に構成されており、前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁のうち少なくとも一つは、前記第1の長辺壁の壁厚より薄い壁厚を有する光変調器である。
本発明の他の態様によると、前記第1の長辺壁又は前記第2の長辺壁の内面に、前記光変調素子に向かって延在する少なくとも一つの突出部を有する。
本発明の他の態様によると、前記光変調素子の光入力端及び光出力端は、それぞれ、前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁と対向し、前記第2の長辺壁のうち、前記第1の短辺壁の内面から前記光変調素子の光入力端までの範囲である光入力部、及び第2の短辺壁の内面から前記光変調素子の光出力端までの範囲である光出力部の少なくとも一方を含む範囲が、前記第1の長辺壁の壁厚よりも薄い壁厚を有する。
本発明の他の態様によると、前記第1の短辺壁には、前記光変調素子に光を入力する入力光ファイバを保持する光入力端末部が固定され、前記第2の短辺壁には、前記光変調素子から出力される光を前記筐体の外部へ導く出力光ファイバを保持する光出力端末部が固定され、前記光入力端末部若しくは前記光出力端末部に光部品が取り付けられ、又は前記筐体の前記光入力部若しくは前記光出力部に光部品が取り付けられている。
本発明の他の態様によると、前記底面壁の外面には、前記第1の短辺壁及び前記第2の短辺壁にそれぞれつながる辺の少なくとも一方から、長手方向に沿って所定距離の範囲の部分にへこんだ凹部が設けられている。
本発明の他の態様によると、前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子である。
本発明の他の態様によると、前記光変調素子は、当該光変調素子の長手方向に延在する2つの前記光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子であり、前記少なくとも一つの突出部は、前記第1の長辺壁又は前記第2の長辺壁のうち、前記光変調素子の前記2つの前記光導波路が形成された部分を含む範囲において、前記光変調素子に向かって延在する。
本発明の他の態様によると、前記壁厚は、それぞれ対応する壁の部分又は全体の厚さの平均値である。
本発明の他の態様は、いずれかの前記光変調器と、発熱体である電子部品と、を備える光モジュールである。
本発明の他の態様によると、前記電子部品の少なくとも一つは、前記光変調器に対し、前記筐体の幅方向中心線に関して壁厚が非対称に構成された前記第1の長辺壁および前記第2の長辺壁のうち、前記第1の長辺壁よりも壁厚の厚い前記第2の長辺壁に近接して配されている。
本発明の他の態様によると、前記光変調器及び前記電子部品は回路基板上に実装されており、前記電子部品の少なくとも一つは、前記光変調器に対し前記第2の長辺壁のある側に、その一部が平面視において前記光変調器と重なるように配されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光変調器において、電子部品等の熱源が近接して配置された場合にも変調器筐体における非対称な温度分布の発生を抑制して、上記配置に起因する特性変動や長期信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図3】
図1に示す光変調器のAA断面矢視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図7】
図6に示す光変調器のBB断面矢視図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態に係る光変調器の変形例を示す平面図である。
【
図9】本発明の第5の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態に係る光モジュールの平面図である。
【
図13】本発明の第7の実施形態に係る光モジュールの平面図である。
【
図15】従来の光変調器の構成を示す平面図である。
【
図16】従来の光変調器を回路基板上に実装した場合の、変調器筐体に発生する温度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本発明に係る光変調器は、変調器筐体自身をヒートシンク又は良熱伝導体として積極的に作用させるよう、変調器筐体の側壁厚を調整するものである。また、その際、従来技術のように光変調素子への熱伝導を回避するのではなく、従来とは全く逆の発想に立ち、光変調素子全体に熱が伝導し易い筐体構成とする一方、光学部品が搭載される光入出力部については、熱伝導し難い構成とする。これにより、光変調素子における非対称な温度分布を回避すると共に、光学部品への熱伝導を回避し、光変調器全体として特性変動及び長期信頼性の低下を回避する。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す平面図、
図2は、光変調器100の側面図、
図3は、
図1に示す光変調器100のAA断面矢視図である。
【0031】
光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する変調器筐体104と、光変調素子102に光を入力する入力光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を変調器筐体104の外部へ導く出力光ファイバ110と、を備える。
【0032】
なお、変調器筐体104は気密封止されているため、実際には変調器筐体104の内部を視認することはできないが、
図1においては、変調器筐体104内部における構成の理解を容易にするため、変調器筐体104内部の構成要素を実線で示している。
【0033】
変調器筐体104は、金属(例えば、ステンレス、コバール等)で構成されており、平面視が矩形あるいは四辺形(例えば、長方形又は略長方形)である。すなわち、変調器筐体104は、平面視が四辺形の底面壁128と、底面壁128の互いに対向する2つの辺(
図1の図示上下の2辺)につながる長辺壁124及び長辺壁126と、を有する。また、変調器筐体104は、長辺壁124、126よりも長さの短い、底面壁128の互いに対向する他の2つの辺(図示左右の辺)につながる短辺壁120及び短辺壁122と、を有する。そして、光変調素子102は、底面壁128、長辺壁124、126、及び短辺壁120、122により囲まれる空間内に収容されている。ここで、変調器筐体104の平面視において、変調器筐体104の幅方向の中心に沿って図示左右方向に延在する線を幅方向に対する中心線130、及び、変調器筐体の長手方向の中心に沿って図示上下方向に延在する線を長手方向に対する中心線132とする。
【0034】
光変調素子102は、例えば、光導波路106のうち光変調素子102の長手方向に延在する2つの光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子である。具体的には、本実施形態では、光変調素子102は、LiNbO3基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上にそれぞれ設けられて光導波路内を伝搬する光波を変調する4つのRF電極(不図示)と、を備えたDP―QPSK光変調器である。
【0035】
図1において、光変調素子102の図示右側の端部は、光が入力される光入力端152であり、図示左側の端部は、変調した光を出力する光出力端154である。光変調素子102は、光入力端152及び光出力端154が、それぞれ、短辺壁120及び短辺壁122と対向するように配されている。短辺壁120には、入力光ファイバ108を保持する光入力端末部150が固定され、短辺壁122には、出力光ファイバ110を保持する光出力端末部148が固定されている。
【0036】
光入力端末部150を介して変調器筐体104の内部に導入された入力光ファイバ108の端部は、光部品であるキャピラリ140に挿入されて、光変調素子102の光入力端152に固定されている。キャピラリ140は、例えばガラスで構成される。尚、光変調素子102への光の入力は入力光ファイバ108でなく空間光学系であってもよい。
【0037】
光変調素子102から出力される2つの光は、光部品であるマイクロレンズアレイ142が備える2つのマイクロレンズによりコリメートされる。マイクロレンズアレイ142は、例えば光変調素子102の光出力端154に固定されている。上記コリメートされた2つの光は、偏波合成プリズム144により偏波合成される。偏波合成された光は、レンズ146を介して出力光ファイバ110と結合して出力される。ここで、光部品である偏波合成プリズム144及びレンズ146は、光出力端末部148の内部に設けられている。光出力端末部148は、出力光ファイバ110が固定された後、変調器筐体104の短辺壁122に固定される。
【0038】
図3に示すように、光変調素子102は、底面壁128の内面(図示上面)に固定されている。
図3には、変調器筐体104の長辺壁124及び126が形成する図示上部の開口部に、変調器筐体104の一部を構成する薄い板厚のカバー160も図示されている。カバー160は、光変調素子102が収容された変調器筐体104の内部空間を気密封止するため、
図1において長辺壁124、126、及び短辺壁120、122が構成する4辺に例えばシーム溶接される。
【0039】
なお、変調器筐体104の内部には、光変調素子102を動作させる高周波信号を入力するための複数のリードピンや、当該複数のリードピンから入力された高周波信号を光変調素子102のRF電極のそれぞれに導くための中継基板等が設けられ得る(いずれも不図示)。このため、変調器筐体104の短辺壁120、122、長辺壁124、126の内面、及び又は底面壁128の内面には凹凸が設けられ得る。しかしながら、本実施形態においては、不要に細かい説明となるのを避けて理解を容易にするため、変調器筐体104の短辺壁120、122、長辺壁124、126、及び底面壁128を一様な厚さを持つものとして記載している。
【0040】
特に、本実施形態の光変調器100では、
図1において、変調器筐体104のうち図示下側の長辺壁126の壁厚t3が、これに対向する図示上側の長辺壁124の壁厚t2に対して、t3≧t2となるように構成されている。また、短辺壁120の壁厚t11、及び短辺壁122の壁厚t12が、t11<t2及びt12<t2となるように構成されている。ここで、最も大きい壁厚t3をもつ長辺壁126は、例えば光モジュール内の回路基板上に光変調器100が実装されるときに、例えば発熱電子部品であるDSPが実装される側を向くように配される。
【0041】
なお、上述したように、本実施形態では、
図1、
図2、
図3には、実際の変調器筐体104において設けられる可能性のある、リードピンや中継基板等を配するための凹凸を示していない。従って、
図1、
図3に示す短辺壁120、122、長辺壁124、126、及び底面壁128の壁厚は、上記凹凸を有する場合には、それぞれの壁における壁厚の平均値を示すものと理解されたい。すなわち、本実施形態においては、短辺壁120の壁厚t11、短辺壁122の壁厚t12、長辺壁124の壁厚t2、及び長辺壁126の壁厚t3は、それぞれの壁における壁厚の平均値であって、それらの平均値が、t11<t2≦t3、及びt12<t2≦t3の関係を有している。
【0042】
なお、本明細書において、壁厚の「平均値」とは、対応する壁又は壁の部分厚さの平均値をいい、当該壁又は壁の部分が隣接する壁に接続又は交わる場合であっても、当該接続又は交わる部分を含まない、いわゆる“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいうものとする。例えば、対応する壁又は壁の部分の内面(変調器筐体内部の面)が、隣接する壁の内面と、曲線部(R加工部)を介して接続されている場合には、当該曲線部を除く、“壁”そのもの又は“壁”の部分そのものの厚さの平均値をいう。
【0043】
ここで、長辺壁126の壁厚t3は、従来の光変調器における長辺壁よりも低い熱抵抗が実現されるように、従来の光変調器において通常用いられる壁厚t2である1.5mm前後の値より大きく、例えば2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲とすることが望ましい。また、壁厚t11、t12は、変調器筐体104の機械的強度も考慮すると、短辺壁120及び短辺壁122の熱抵抗が長辺壁124及び126の熱抵抗に比べて大きな値となるように、例えば0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲に設定することが望ましい。
【0044】
例えば、長辺壁126が凹凸を有する構成である場合には、長辺壁126を厚さ1.7mmから4mmの範囲で形成し、平均壁厚である壁厚t3が2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲であるものとすることができる。また、例えば、短辺壁120及び短辺壁122が凹凸を有する構成である場合には、短辺壁120及び短辺壁122をそれぞれ厚さ0.3mmから1mmの範囲で形成し、平均壁厚である壁厚t11及びt12をそれぞれ0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲とすることができる。
【0045】
上記の構成を有する光変調器100では、長辺壁126の壁厚t3を最も厚くすることで、変調器筐体104の長辺に沿った長辺壁126の熱抵抗が低減されている。このため、例えば光変調器100を光モジュール内の回路基板上に実装した場合に、発熱電子部品であるDSP等から当該回路基板や空間を経て変調器筐体104の一部から流入する熱は、最も壁厚の大きい長辺壁126に沿って従来の構成よりも早く伝わる。そして伝わる熱は即座に上記回路基板上へ流れ出る。その結果、変調器筐体104の長手方向の温度勾配は、従来の光変調器(例えば、
図15に示す光変調器1500)に比べて低減される。そして、変調器筐体104の長手方向の温度勾配が低減されれば、変調器筐体104の全体としてみたときの温度勾配の方向は、
図16に示す方向1604に比べてより長手方向に近い方向となる。
【0046】
すなわち、光変調器100では、DSP等の発熱電子部品が近接して配された場合でも、変調器筐体104の温度勾配を、その長手方向に沿うように、且つ従来より緩やかとなるように発生させることができる。このため、変調器筐体104の長手方向に対する中心線132及び幅方向に対する中心線130に対する温度分布の対称性が向上する。
【0047】
その結果、光変調器100を発熱電子部品に近接して配置した場合に変調器筐体104に発生する応力は低減され、且つ分散される。また、変調器筐体104の温度分布の対称性が向上することで、変調器筐体104内に収容された干渉型光変調器である光変調素子102の温度分布もより対称性を有するものとなる。その結果、光変調素子102を構成する並行導波路間の光路長変化又は位相変化の多くが相殺され、光変調素子102の特性変動(例えば、動作点変動)も抑制される。
【0048】
さらに、変調器筐体104では、長辺壁126の壁厚t3を最も厚く形成することで、変調器筐体104の長辺に沿った長辺壁126の熱抵抗が低減されており、変調器筐体104の剛性は、主に長辺壁124及び126、底面壁128により確保され得る。このため、短辺壁120、122の壁厚t11、t12を、従来技術における光変調器に比べてより薄くして、これらの壁の熱抵抗を増加させることができる。従って、変調器筐体104の剛性を損なうことなく、上記のようにt11<t2≦t3及びt12<t2≦t3として、温度上昇に起因して特性変動及び又は長期信頼性低下の要因となり得る光ファイバや光部品などが固定される短辺壁120、122及びその周囲への熱の流入を抑制することができる。
【0049】
以上の結果として、光変調器100では、光モジュール内においてDSP等の発熱電子部品が近接して配置された場合でも、変調器筐体104の温度分布をより対称性のある状態にして、特性変動や長期信頼性の低下を低減することができる。また、変調器筐体104の温度分布がより対称性のある状態になった結果、光モジュール内における変調器筐体104は恒温槽における長期信頼性試験のように一様な温度環境に置かれた状態に近づく。よって変調器筐体104の長期信頼性は恒温槽による長期信頼性試験結果に近づくため、従来の構成よりもより高めることが可能となる。
【0050】
なお、上述した温度勾配の対称性を向上する効果は、上述のように従来の平均壁厚1.5mmに対し長辺壁126の壁厚t3を2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲とし、短辺壁120の壁厚t11及び短辺壁122の壁厚t12を0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲とすることで特に顕著となり得る。
【0051】
また、上記実施形態において、
図3に示す変調器筐体104の長辺壁124の壁厚t2、長辺壁126の壁厚t3、および底面壁128の壁厚t4(具体的には、底面壁128の壁厚の平均値t4)の関係は、壁厚が同じ場合、長辺方向より短辺方向への熱の伝達の方が遅いこと、および長手方向に対する中心線132と幅方向に対する中心線130に対する温度分布の対称性を考慮すると、例えば、t3>t4>t2であることが望ましい。
【0052】
また、短辺壁120の壁厚t11と短辺壁122の壁厚t12は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。また、短辺壁120の壁厚t11と短辺壁122の壁厚t12は、必ずしもその両者が長辺壁124の壁厚t2より小さい値である必要はない。例えば、短辺壁120、122の温度変動が入力光ファイバ108、出力光ファイバ110、あるいはマイクロレンズアレイ142、偏波合成プリズム144、又はレンズ146の位置ズレや特性変動に与える影響の大きさ(感度)に応じて、t11又はt12の少なくとも一方が、壁厚t2より小さな値であるものとすることができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態に係る光変調器400の構成を示す平面図である。
図4においては、
図1における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素及び壁厚については、
図1における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器100についての説明を援用するものとする。また、光変調器400の側面及び断面は、
図2及び
図3に示す光変調器100の側面及び断面と同様であるものとする。また、
図4では、光変調器400の構成についての理解を容易にするため、
図1と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0054】
光変調器400は、光変調器100と同様の構成を有するが、変調器筐体104に代えて変調器筐体404を有する点が異なる。変調器筐体404は、変調器筐体104の短辺壁120、122、長辺壁124、126、及び底面壁128とそれぞれ同様の短辺壁420、422、長辺壁424、426、及び底面壁428を有するが、長辺壁426の図示左右部分に壁厚t3より薄い部分を有する点が、変調器筐体104と異なる。
【0055】
具体的には、長辺壁426のうち、短辺壁420の内面から光変調素子102の光入力端152までの範囲である光入力部460、及び短辺壁422の内面から光変調素子102の光出力端154までの範囲である光出力部462に、それぞれ、壁厚t11、t12と同等の薄い壁厚t31及びt32を持つ部分が設けられている。壁厚t31及びt32は、短辺壁420及び422の壁厚t11、t12と同様に、例えば1mm以下であることが望ましい。また、壁厚t31及びt32は、例えば短辺壁420及び422の壁厚t11及びt12とそれぞれ同じ値とするか、又は壁厚t31、t32、t11、t12を全て同じ壁厚とすることができる。
【0056】
なお、
図4に示す変調器筐体404は、
図1に示す変調器筐体104と同様に、実際の変調器筐体404において設けられる可能性のあるリードピンや中継基板等を配するための凹凸を示していない。すなわち、
図4に示す短辺壁420、422、長辺壁424、426の壁厚は、それぞれの壁における平均的な壁厚を示すものと理解されたい。すなわち、本実施形態においては、短辺壁420の壁厚t11、短辺壁422の壁厚t12、長辺壁424の壁厚t2は、それぞれの壁における壁厚の平均値を意味している。また、長辺壁426の壁厚t31及びt32は、それぞれ、光入力部460、光出力部462における長辺壁426の壁厚の平均値を示し、壁厚t3は、光入力部460及び光出力部462以外の部分における長辺壁426の壁厚の平均値を示している。
【0057】
上記の構成を有する光変調器400は、上記光入力部460及び光出力部462における長辺壁226の壁厚t31、t32が、壁厚t2よりも薄く、これらの部分における長辺壁226の熱抵抗が大きくなるように構成されている。このため、光変調器400では、変調器筐体404のうち光変調素子102の長手方向部分に沿った部分については、光変調器100と同様に熱抵抗を低減して温度勾配を緩和しつつ、特性及び長期信頼性に大きく影響する上記光入力部460及び光出力部462への熱の流入を抑制することができる。これにより、光変調器400では、光入力部460及び光出力部462の温度勾配を、光変調器100に比べて更に抑制して、発熱電子部品が近接して配置された場合の特性変動及び長期信頼性の低下を更に抑制することができる。この構成は、特に、キャピラリ140やマイクロレンズアレイ142等の光学部品が光変調素子102の光入力端152や光出力端154に、接着剤等により直接的に接合される場合に利点を有する。
【0058】
なお、本実施形態では、光入力部460及び光出力部462に、それぞれ、光部品であるキャピラリ140及びマイクロレンズアレイ142が配され、光出力端末部148に、光部品である偏波合成プリズム144及びレンズ146が配される構成したが、これには限られない。光入力端末部150若しくは光出力端末部148に光部品が取り付けられ、又は光入力部460若しくは光出力部462に光部品が取り付けられているものとしてもよい。このような場合でも、変調器筐体404の構成によれば、それら光部品に向かう熱の流れを抑制して、特性変動及び長期信頼性の低下を更に抑制することができる。また光部品は底面壁128の内面に取り付けられているものとしてもよい。
【0059】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は、第3の実施形態に係る光変調器500の構成を示す平面図である。
図5においては、
図1における第1の実施形態に係る光変調器100及び
図4に示す第2の実施形態に係る光変調器400と同じ構成要素及び壁厚については、ぞれぞれ、
図1及び
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器100及び400についての説明を援用するものとする。また、光変調器500の側面及び断面は、
図2及び
図3に示す光変調器100の側面及び断面と同様であるものとする。また、
図5では、光変調器500の構成についての理解を容易にするため、
図1と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0060】
光変調器500は、光変調器100と同様の構成を有するが、変調器筐体104に代えて変調器筐体504を有する点が異なる。変調器筐体504は、変調器筐体104と同様に、金属(例えば、ステンレス、コバール等)で構成されており、平面視が長方形又は略長方形である。また、変調器筐体504は、変調器筐体104と同様に、平面視が四辺形の底面壁528と、底面壁528の互いに対向する2つの辺(
図5の図示上下の2辺)につながる長辺壁524及び長辺壁526と、を有する。また、変調器筐体504は、長辺壁524、526よりも長さの短い、底面壁528の互いに対向する他の2つの辺(図示左右の辺)につながる短辺壁520及び短辺壁522と、を有する。
【0061】
また、本実施形態の光変調器500では、変調器筐体504のうち、短辺壁520、522は、それぞれ、変調器筐体104の短辺壁120、122と同じ壁厚t11、t12を有する。
【0062】
そして、光変調器500では、長辺壁526は、第2実施形態における変調器筐体404の長辺壁426と同様に、光入力部560及び光出力部562以外の部分が壁厚t3を有し、光入力部560及び光出力部562の部分が、それぞれ、壁厚t31及びt32を有する。ここで、光入力部560及び光出力部562は、第2実施形態における光入力部460及び光出力部462と同様に、それぞれ、短辺壁520の内面から光変調素子102の光入力端152までの部分、及び短辺壁522の内面から光変調素子102の光出力端154までの部分をいう。
【0063】
特に、光変調器500では、光変調器400に比べて更に、変調器筐体504の長辺壁524も、光入力部560及び光出力部562以外の部分が、壁厚t3と同程度の壁厚t5を有し、光入力部560及び光出力部562に、それぞれ、壁厚t31及びt32と同程度の壁厚t51及びt52をもつ部分を有する。すなわち、壁厚t5は、壁厚t3と同様に、望ましくは2.0mm以上、3.0mm以下の値の範囲に設定され、壁厚t51、t52は、壁厚t31、t32と同様に、望ましくは0.5mm以上、1.0mm以下の値の範囲に設定される。例えば、壁厚t5は、壁厚t3と同じ値とすることができ、壁厚t51及びt52は、それぞれ、壁厚t31、t32と同じ値、又は壁厚t11、t12と同じ値とすることができる。あるいは、壁厚11、t12、t31、t32、t51、t52を同じ値とすることができる。
【0064】
上記の構成を有する光変調器500は、長辺壁524の壁厚t5が、長辺壁526の壁厚t3と同程度に構成されているので、光変調器100及び400よりも更に、DSP等の発熱電子部品に近接して配された場合でも、変調器筐体504の温度勾配を低減し、及び温度分布の対称性を向上して、特性変動及び長期信頼性低下を抑制することができる。
【0065】
また、光変調器500では、長辺壁524及び526の双方において、光入力部560及び光出力部562の壁厚t51、t52、t31、t32が、壁厚t3及びt5よりも薄く形成されて、高い熱抵抗を有するように構成されている。光変調器500では、光変調器100及び400よりも更に、温度変動に対して敏感な光部品等を備え得る光出力部562及び光入力部560への熱の伝達を抑えて、特性変動及び長期信頼性低下を抑制することができる。
【0066】
光変調器500の構成は、光学系の位置ズレを更に抑制すべく変調器筐体の剛性をより高めたい場合、光入力部560及び又は光出力部562の温度勾配を更に小さくしたい場合、変調器筐体全体の応力バランスを高めたい場合、及び又は電子部品の発熱量が大きい場合などに、好適である。
【0067】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図6は、第4の実施形態に係る光変調器600の構成を示す平面図、
図7は、
図6に示す光変調器600のBB断面矢視図である。なお、
図6においては、
図4における第2の実施形態に係る光変調器400及び
図1における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素及び壁厚については、
図4及び
図1における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器400及び100についての説明を援用するものとする。また、光変調器600の側面は、光変調器400と同様に
図2に示す光変調器100の側面と同様であるものとする。また、
図6では、光変調器600の構成についての理解を容易にするため、
図1及び
図4と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。
【0068】
光変調器600は、光変調器400と同様の構成を有するが、変調器筐体404に代えて変調器筐体604を有する点が異なる。変調器筐体604は、変調器筐体404の短辺壁420、422、長辺壁424、426、及び底面壁428とそれぞれ同様の短辺壁620、622、長辺壁624、626、及び底面壁628を有する。ただし、長辺壁624及び626には、それぞれ、光変調素子102の干渉部650少なくとも一部を含む範囲において、光変調素子102に向かって突出する突出部664及び666(図示ハッチング部分)が形成されている。ここで干渉部650とは、光変調素子102のうち変調動作において互いに干渉させることとなる2つの光を伝搬する2本の並行導波路のペアの少なくとも一つが構成された部分、具体的にはマッハツェンダ型光導波路である光導波路106を構成する並行導波路が形成された部分をいう。
【0069】
なお、
図6に示す変調器筐体604においても、
図1及び
図4と同様に、短辺壁620、622、長辺壁624、626の壁厚は、それぞれの壁における平均的な壁厚を示すものと理解されたい。すなわち、本実施形態においては、短辺壁620の壁厚t11、及び短辺壁622の壁厚t12は、それぞれの壁における壁厚の平均値を意味している。また、長辺壁624の壁厚t2は、突出部664を除く長辺壁624の部分における壁厚の平均値を意味している。また、長辺壁626の壁厚t31及びt32は、それぞれ、光入力部660、光出力部662における長辺壁626の壁厚の平均値を示し、壁厚t3は、光入力部660及び光出力部662以外の部分であって且つ突出部666を除く部分における長辺壁626の壁厚の平均値を示している。ここで、光入力部660及び光出力部662は、それぞれ、
図4に示す光変調器400における光入力部460及び光出力部462と同様に、短辺壁620の内面から光変調素子102の光入力端152までの範囲、及び短辺壁622の内面から光変調素子102の光出力端154までの範囲をいう。
【0070】
なお、光変調器600では、突出部666が設けられているため、短辺壁622の壁厚t12は、必ずしもt3より薄く構成される必要はなく、長辺壁626のうち突出部666を含む部分の壁厚の平均値t39よりも薄く構成されていてもよい。これにより、短辺壁622は、突出部666を含む長辺壁626の部分よりも熱抵抗が高くなり、当該長辺壁626の部分からの熱の伝達が抑制される。
【0071】
上記の構成を有する光変調器600は、長辺壁624及び626に、光変調素子102の干渉部650を含む範囲において、それぞれ光変調素子102に向かって突出する突出部664及び666を有する。このため、光変調器600では、変調器筐体604のうち光変調素子102の干渉部650に沿って延在する長辺壁624及び626の部分の壁厚が実効的に増加し、熱抵抗が更に低減される。その結果、光変調器600では、光変調器400に比べて更に、発熱電子部品が近接して配置された場合に変調器筐体604に発生する温度勾配を低減し、且つ温度分布の対称性を向上することができ、従って特性変動及び信頼性低下を更に抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、2つの長辺壁624及び626にそれぞれ突出部664及び666が設けられるものとしたが、いずれか一方の長辺壁に突出部が設けられるものとしてもよい。また、本実施形態では、長辺壁624及び626にそれぞれ一つの突出部664及び666が設けられるものとしたが、これには限られない。長辺壁624又は626の少なくとも一方において、光変調素子102の干渉部650を含む範囲において当該光変調素子102に向かって一つ又は複数の(したがって、少なくとも一つの)突出部が設けられるものとしてもよい。
【0073】
また、本実施形態では、突出部664、666は、
図6に示すように平面視が略矩形上であるものとしたが、これには限られない。例えば、突出部は、平面視において台形の形状、大小の矩形又は台形を重ねた形状、光変調素子102の側に凹部のある形状等々、任意の形状であるものとすることができる。
【0074】
図8は、光変調器600の変形例である光変調器600´の構成を示す平面図である。光変調器600´の変調器筐体604´は、変調器筐体604と同様の構成を有するが、平面視略矩形の突出部666が一つ設けられた長辺壁626に代えて、長辺壁626´を備える点が異なる。長辺壁626´は、長辺壁626と同様の構成を有するが、光変調素子102の干渉部650を含む範囲において、当該光変調素子102に向かって突出する3つの突出部870、872、874を備える点が異なる。
【0075】
本変形例では、突出部870、872、874は、それぞれ異なる形状を有している。具体的には、突出部870は、平面視が一つの台形を成し、長辺壁626´の内壁から光変調素子102に向かって直線的に接近するように加工された図示左右の2つの辺を持つ。また、突出部872は、大小2つの矩形(又は略矩形)を重ねた平面視形状を有するように加工されている。また、突出部874は、平面視が略矩形の形状であって、光変調素子102の側に凹部を有する形状となっている。尚、ここでいう矩形は矩形を形成する辺の一部に曲線を有するものも含まれる。矩形を形成する辺は全て直線であるよりも少なくとも一部に曲線を有した方が、筐体の応力が一部に集中することを緩和できるためより望ましい。
【0076】
なお、本変形例では、長辺壁626´においてそれぞれ異なる平面視形状を有する3つの突出部870、872、874が設けられるものとしたが、これには限られない。長辺壁626´に、突出部870、872、874のいずれかの平面視形状を有する突出部を一つ設けてもよい。あるいは、長辺壁626´に設ける突出部の数は4以上であるものとすることができる。また、それぞれの突出部の平面視形状を互いに同じとしてもよいし、異なるものとしてもよい。また、長辺壁624にも、突出部664に代えて、任意の同一の形状又は異なる形状を持つ、複数の突出部を設けるものとすることができる。
【0077】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
図9は、第5の実施形態に係る光変調器900の構成を示す平面図、
図10は、光変調器900の側面図、
図11は光変調器900の底面図である。なお、
図9においては、
図1における第1の実施形態に係る光変調器100と同じ構成要素及び壁厚については、
図1における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光変調器100についての説明を援用するものとする。また、
図9では、光変調器900の構成についての理解を容易にするため、
図1と同様に、組み立てが完了した状態においては視認することのできない内部の構造も実線で示している。また、
図9に示す変調器筐体904においても、
図1と同様に、短辺壁920、922、長辺壁924、926の壁厚は、それぞれの壁における平均的な壁厚を示すものと理解されたい。
【0078】
光変調器900は、光変調器100と同様の構成を有するが、変調器筐体104に代えて変調器筐体904を有する点が異なる。変調器筐体904は、変調器筐体104と同様に平面視が矩形または略矩形の長方形をなし、変調器筐体104の短辺壁120、122、長辺壁124、126、及び底面壁128と同様の短辺壁920、922、長辺壁924、926、及び928を有する。ただし、底面壁928の外面は、底面壁128の外面とは異なり、底面壁928の外面(
図11に示す面)のうち短辺壁920及び922につながる端部からそれぞれ平面視で光入力部960及び光出力部962の少なくとも一部を含む距離L1及びL2の範囲が、変調器筐体904の厚さ方向(
図10の図示上下方向)へ向かって、他の部分に対してそれぞれ距離d1及びd2だけへこんだ凹部980及び982を備える。すなわち、光変調器900の上面(
図10に示す上の面)から凹部980、982の平面(
図11に示す面)までのそれぞれの距離t91、t92が、当該上面から、凹部980及び982以外の平面までの距離t90より小さい。
【0079】
所定距離L1及びL2は、凹部980及び982が、それぞれ光入力部960及び光出力部962を含む範囲として延在するように選択することが望ましい。ここで、光入力部960とは、短辺壁920の内面から光変調素子102の光入力端152までの範囲をいい、光出力部962とは、短辺壁922の内面から光変調素子102の光出力端154までの範囲をいう。なお、距離L1及びL2は、互いに同じ値でもよく、又は異なっていてもよい。同様に、所定距離d1及びd2は、互いに同じ値でもよく、又は異なっていてもよい。
【0080】
上記の構成を有する光変調器900は、凹部980、982があることにより、回路基板上に実装されたときに、変調器筐体904の底面のうち光入力部960及び光出力部962に対応する部分が回路基板から離間することとなる。これにより、光変調器900は、回路基板上において発熱電子部品に近接して配された場合でも、当該発熱電子部品からの熱が回路基板を伝わって光入力部960及び光出力部962へ伝搬するのを防止することができる。その結果、光変調器900では、発熱電子部品を近接配置することに起因する特性変動及び長期信頼性低下を更に抑制することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、変調器筐体904の底部に2つの凹部980、982を設けるものとしたが、これには限られない。凹部980又は凹部982のいずれか一方を底面壁928に設けるものとしてもよい。例えば、短辺壁920及び922とそれぞれつながる変調器筐体904の底面の2つの端部のうち、光変調器900を回路基板上に実装した場合にDSP等の発熱電子部品に対しより近接することとなる側の端部にのみ凹部を設けるものとすることができる。
【0082】
ここで、上述した第1、第2、第3、第4、第5の実施形態に係る光変調器100、400、500、600、600´、及び900のそれぞれにおいて、長辺壁124、424、524、624、924は、それぞれ第1の長辺壁に対応し、長辺壁126、426、526、626、926は、それぞれ第2の長辺壁に対応する。また、短辺壁120、420、520、620、920は、第1の短辺壁に対応し、短辺壁122、422、522、622、922は、第2の短辺壁に対応する。
【0083】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態は、本発明に係る光変調器を搭載した光モジュールである。
図12は、第6の実施形態に係る光モジュール1200の構成を示す平面図である。
【0084】
光モジュール1200は、モジュール筐体1202内に、光変調器100と、回路基板1206と、を収容する。回路基板1206には、光変調器100が搭載されるほか、送信光の光源であるLD(Laser Diode)1208、及び受信光の受光器であるPD(Photo Diode)1210が搭載される。また、回路基板1206には、これらの光部品を動作させるための電子回路を構成する電子部品が搭載される。
図12には、主要な電子部品であって且つ発熱量の多い電子部品の一例として、デジタル信号処理のためのDSP1212を示している。
【0085】
ただし、回路基板1206上には、光モジュール1200に求められる機能に応じて、その他の光部品や電子部品が搭載され得る。そのような電子部品には、例えば、光変調器100を駆動するためのドライバIC等が含まれる。これにより、光モジュール1200は、例えば一の伝送路光ファイバ(不図示)へ光変調器100を介して信号光(送信光)を出力し、及び他の伝送路光ファイバ(不図示)が伝送した光信号(受信光)をPD1210により受信する。
【0086】
光モジュール1200では、特に、光変調器100は、第2の長辺壁126の側の端部近傍に所定の間隔gを隔ててDSP1212が近接して配されるように、回路基板1206上に実装されている。ここで、間隔gは、例えば2.0mmである。
【0087】
上記の構成を有する光モジュール1200では、光変調器100は、当該光変調器100の図示下側の辺に対応する壁厚t3をもって熱抵抗が低減された第2の長辺壁126の側に、発熱電子部品であるDSP1212が配されるように実装されている。このため、光モジュール1200では、発熱電子部品であるDSP1212が光変調器100に近接配置されていても、当該近接配置に起因する光変調器100の特性の変動及び長期信頼性の低下が抑制される。その結果、光モジュール1200の小型化を図りつつ、光モジュール1200が出力する送信光の伝送品質を高く維持すると共に、光モジュール1200全体としての長期信頼性の低下も抑制することができる。
【0088】
なお、本実施形態においては、光変調器100を用いて光モジュール1200を構成するものとしたが、これには限られない。光変調器100に代えて光変調器400、500、600、600´、又は900を、
図12に示す回路基板1206上の光変調器100と同様の位置に配して、光モジュール1200を構成してもよい。この場合には、DSP1212の実装位置は、長辺壁426、526、626、626´、926のうち光入力部460、560、660、960及び光出力部462、562、662、962に対応する部分の近傍でないことが望ましい。
【0089】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態に係る光モジュールについて説明する。
図13は、第7の実施形態に係る光モジュール1300の構成を示す平面図、
図14は、
図13に示す光モジュールのCC断面矢視図である。
図13において、
図12に示す第6の実施形態に係る光モジュール1200と同じ構成要素については、
図12における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した光モジュール1200についての説明を援用する。
【0090】
光モジュール1300は、光モジュール1200と同様の構成を有するが、回路基板1206に代えて回路基板1306を備える点が異なる。回路基板1306は、回路基板1206と同様の構成を有するが、電子部品の一つであるDSP1212が、光変調器100の第2の長辺壁126の側に配され、且つ、DSP1212の一部が、平面視において光変調器100と重なるように配されている点が異なる。具体的には、光変調器100は、回路基板1306に対し、それぞれネジが挿通される孔を有する4つのスペーサ1310、1312、1314、1316を介して、4つのネジ1320、1322、1324、1326により固定されており、当該スペーサ1310、1312、1314、1316により光変調器100と回路基板1306との間に確保される空間に、DSP1212の一部が実装されている。
【0091】
上記の構成を有する光モジュール1300では、光モジュール1200と同様に、DSP1212からの熱は、光変調器100のうち壁厚t3をもって熱抵抗が低減された第2の長辺壁126を伝搬するので、DSP1212からの熱に起因する光変調器100の特性変動及び長期信頼性の低下が抑制される。その結果、光モジュール1300の小型化を図りつつ、光モジュール1300が出力する送信光の伝送品質を高く維持すると共に、光モジュール1300全体としての長期信頼性の低下も抑制することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、ネジを挿通する孔を有するスペーサ1310、1312、1314、1316により光変調器100の底面の全体が回路基板1306に対して離間するものとしたが、これには限られない。光変調器100の底面と回路基板1306との間の間隙のうち、DSP1212の一部が実装される領域を除く領域又はその一部に、例えば、ネジが挿通される孔を設けられていない単なる金属の塊である金属ブロック等を配し、光変調器100から回路基板1306へ当該金属ブロックを介して熱を流すものとすることができる。あるいは、光変調器100の底面のうちDSP1212の一部が実装される領域を含む付近にのみ凹部を設け、回路基板1306との固定は底面に凹部を設けなかった底面の平面部でされてもよい。
【0093】
また、本実施形態においては、光変調器100を用いて光モジュール1300を構成するものとしたが、これには限られない。光変調器100に代えて光変調器400、500、600、600´、又は900を、
図13に示す回路基板1306上の光変調器100と同様の位置に配して、光モジュール1300を構成してもよい。この場合には、DSP1212の実装位置は、長辺壁426、526、626、626´、926のうち光入力部460、560、660、960及び光出力部462、562、662、962に対応する部分の近傍でないことが望ましい。
【0094】
以上説明したように、本発明に係る光変調器100は、基板上に形成された光導波路106で構成される光変調素子102と、光変調素子102を収容する変調器筐体104と、を備える。変調器筐体104は、平面視が四辺形の底面壁128と、底面壁128の互いに対向する2つの辺につながる第1の長辺壁124及び第2の長辺壁126と、第1及び第2の長辺壁124、126よりも長さの短い、底面壁128の互いに対向する他の2つの辺につながる第1の短辺壁120及び第2の短辺壁122と、を有する。光変調素子102は、底面壁128、第1及び第2の長辺壁124、126、並びに第1及び第2の短辺壁120、122により囲まれる空間内に収容されている。そして、第2の長辺壁126は、第1の長辺壁124の壁厚t2以上の壁厚t3を有し、第1及び第2の短辺壁120、122のうち少なくとも一つは、第1の長辺壁124の壁厚t2より薄い壁厚t11、t12を有する。
【0095】
この構成によれば、変調器筐体104の一部から流入した熱は、最も厚い壁厚t3を有して最も熱抵抗の小さい第2の長辺壁126を介して即座に伝搬するので、光変調器100が電子部品等の熱源に近接して配置された場合にも、変調器筐体104における非対称な温度分布の発生を抑制して、上記配置に起因する特性変動や長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0096】
また、光変調器600、600´では、第2の長辺壁626の内面に、光変調素子102に向かって延在する少なくとも一つの突出部666、870等を有する。この構成によれば、第2の長辺壁626を全体として見たときの第2の長辺壁626の熱抵抗をより低減して、電子部品等の熱源の近接配置に起因する光変調器600、600´の特性変動や長期信頼性の低下を抑制することができる。
【0097】
また、光変調器400では、光変調素子102の光入力端152及び光出力端154は、それぞれ、第1の短辺壁420及び第2の短辺壁422と対向する。そして、第2の長辺壁426のうち、第1の短辺壁420の内面から光変調素子102の光入力端152までの範囲である光入力部460、及び第2の短辺壁422の内面から光変調素子102の光出力端154までの範囲である光出力部462の少なくとも一方を含む範囲が、第1の長辺壁424の壁厚t2よりも薄い壁厚t31、t32を有する。
【0098】
この構成によれば、電子部品等の熱源が近接して配置された場合でも、変調器筐体104のうち、キャピラリ140、マイクロレンズアレイ142等の光部品が取り付けられる光入力部460及び又は光出力部462の部分への熱の伝搬を抑制して、光変調器400の特性変動や長期信頼性の低下を更に抑制することができる。
【0099】
また、光変調器400では、第1の短辺壁420には光変調素子102に光を入力する入力光ファイバ108を保持する光入力端末部150が固定され、第2の短辺壁422には、光変調素子102から出力される光を変調器筐体404の外部へ導く出力光ファイバ110を保持する光出力端末部148が固定される。そして、光入力端末部150若しくは光出力端末部148、又は変調器筐体404の光入力部460若しくは光出力部462には、キャピラリ140、マイクロレンズアレイ142、偏波合成プリズム144等々の光部品が取り付けられている。
【0100】
この構成によれば、これら光部品への熱の伝搬を抑制して、光変調器900における特性変動の発生及び長期信頼性の低下を更に抑制することができる。
【0101】
また、光変調器900では、底面壁928の外面には、第1及び第2の短辺壁920、922につながる辺から、長手方向に沿って所定距離L1、L2の範囲の部分に、その平面が底面壁928の他の部分の平面に対して厚さ方向に所定距離d1、d2だけへこんだ凹部980、982が設けられている。ただし、この凹部980、982は、いずれか一方が底面壁928に設けられているものとすることができる。
【0102】
この構成によれば、光変調器900は、回路基板上に実装された場合には、光入力部960及び又は光出力部962の範囲を含む底面壁928の部分が、回路基板から離間した状態となる。このため、光変調器900が発熱電子部品の実装された回路基板上に実装された場合でも、発熱電子部品から光入力部960及び又は光出力部962へ向かう回路基板を介した熱の伝搬が抑制される。その結果、光変調器900における特性変動の発生及び長期信頼性の低下が更に抑制される。
【0103】
また、光変調器100、400、500、600、600´、及び900では、光変調素子102は、光導波路106のうち光変調素子102の長手方向に延在する2つの光導波路を伝搬する光を干渉させて動作する干渉型光変調素子である。この構成によれば上述した光変調器100、400、500、600、600´、及び900についての効果が、特に好適に発揮される。
【0104】
また、光変調器600、600´において、光変調素子102は干渉型光変調素子であり、少なくとも一つの突出部666、870等は、第2の長辺壁626のうち、干渉させる2つの光を伝搬する2つの光導波路が形成された部分である干渉部を含む範囲において、光変調素子102に向かって延在する。この構成によれば、特に、温度分布の発生に起因する特性変動の要因となりやすい光変調素子102の干渉部650において、発熱電子部品の近接配置に起因する温度勾配の発生を抑制して、光変調器600、600´としての特性変動の発生及び長期信頼性の低下を更に抑制することができる。
【0105】
また、光変調器100、400、500、600、600´、及び900における短辺壁120等、短辺壁122等、長辺壁124等、長辺壁126等、及び底面壁128等の壁厚t11等、t2、t3、t31等、t4、t51等は、それぞれ対応する壁の全体の平均値又は対応する壁の部分の厚さの平均値である。この構成によれば、それぞれの壁における細かな凹凸の存在に関わらず、それぞれの壁又はその部分の熱抵抗の互いの関係を規定して、変調器筐体104等の設計を容易に行うことができる。
【0106】
また、本発明は、光変調器100、400、500、600、600´、又は900と、発熱体であるDSP1212等の電子部品とを用いる光モジュール1200、1300である。この構成によれば、光変調器100等の特性変動や長期信頼性の低下を招くことなく、光変調器100等とDSP1212等の発熱電子部品とを近接配置して、より小型の光モジュールを構成することができる。
【0107】
また、光モジュール1200では、発熱体である電子部品の少なくとも一つとしてのDSP1212が、光変調器100に対し、第2の長辺壁126のある側に配されている。この構成によれば、発熱電子部品であるDSP1212からの熱を、熱抵抗の小さい第2の長辺壁126に即座に導いて、光変調器100の特性変動の発生及び長期信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0108】
また、光モジュール1300では、発熱体である電子部品の少なくとも一つとしてのDSP1212が、光変調器100に対し、第2の長辺壁126の側に、その一部が平面視において光変調器100と重なるように配されている。この構成によれば、発熱電子部品であるDSP1212からの熱を、熱抵抗の小さい第2の長辺壁126に即座に導いて、光変調器100の特性変動の発生及び長期信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
100、400、500、600、600´、900…光変調器、102、1502…光変調素子、104、404、504、604、604´、904…変調器筐体、106…光導波路、108、1508…入力光ファイバ、110、1510…出力光ファイバ、120、122、420、422、520、522、620、622…短辺壁、124、126、424、426、624、626、924,926…長辺壁、128、428、528、628、928…底面壁、130、1520…幅方向に対する中心線、132、1522…長手方向に対する中心線、140…キャピラリ、142…マイクロレンズアレイ、144…偏波合成プリズム、146…レンズ、148…光出力端末部、150…光入力端末部、152…光入力端、154…光出力端、160…カバー、460、560、660、960…光入力部、462、562、662、962…光出力部、664、666、870、872、874…突出部、980、982…凹部、1200、1300…光モジュール、1206、1306、1602…回路基板、1208…LD,1210…PD、1212、1600…DSP、1310、1312、1314、1316…スペーサ、1320、1322、1324、1326…ネジ。