(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】液体組成物、立体造形用材料セット、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20221109BHJP
C08F 20/58 20060101ALI20221109BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20221109BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221109BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221109BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
C08F 2/46 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08F2/44 C
C08F20/58
B29C64/40
B33Y70/00
B33Y30/00
B33Y10/00
C08F2/46
(21)【出願番号】P 2018185506
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇
(72)【発明者】
【氏名】森田 充展
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅秀
(72)【発明者】
【氏名】野口 宗
(72)【発明者】
【氏名】末永 武範
(72)【発明者】
【氏名】山口 竜輝
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070731(JP,A)
【文献】特開2018-080321(JP,A)
【文献】特開2017-222154(JP,A)
【文献】特開2018-087291(JP,A)
【文献】特開2015-227057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29C 64/00-64/40、67/00-67/08、
69/24-69/02、73/00-73/34
B29D 1/00-29/10、33/00、99/00
B33Y 10/00-99/00
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と、
炭素数3以上6以下のジオール、炭素数6以上のモノアルコール、炭素数6以上の環状アルコール、及び炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテルから選択される少なくとも1種である水素結合能を有する溶媒、
並びに、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールモノブチルエーテルから選択される少なくとも1種である水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかと、を含有し、
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、
前記水素結合能を有する溶媒及び前記水素結合能を有するポリマーのいずれかを含有する場合には、前記水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマー
のいずれかの含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、
前記水素結合能を有する溶媒及び前記水素結合能を有するポリマーを含有する場合には、前記水素結合能を有する溶媒及び前記水素結合能を有するポリマーの合計含有量が、20質量%以上75質量%以下であることを特徴とする液体組成物。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかを表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【請求項2】
前記水素結合能を有する溶媒が、炭素数3以上6以下のジオール、及び炭素数6以上のモノアルコールから選択される少なくとも1種である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記水素結合能を有する溶媒が、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1-ヘキサノール、及び1-ドデカノールから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項4】
前記水素結合能を有する溶媒を含有し、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量A(質量%)と、前記水素結合能を有する溶媒の含有量B(質量%)との質量比(A/B)が、
0.27以上2.5以下である請求項1から3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項5】
前記水素結合能を有するポリマーの数平均分子量が、400以上である請求項1から4のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項6】
更に重合開始剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項7】
活性エネルギー線硬化型液体組成物である請求項1から6のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項8】
前記水素結合能を有するポリマーがポリプロピレングリコールである請求項1から7のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項9】
立体造形物におけるサポート部の形成に用いるサポート材用液体組成物である請求項1から8のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物と、
モデル部の形成に用いるモデル材用液体組成物と、
を有することを特徴とする立体造形用材料セット。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物を用いて立体造形物を造形する造形工程を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項12】
前記造形工程が三次元プリンターを用いて行われる請求項11に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項13】
前記造形工程が成形金型を用いて行われる請求項11に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項14】
モデル材用液体組成物及び請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物を用いて液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜を硬化する硬化工程と、を繰り返すことにより、前記モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と前記液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、前記サポート部を液体により除去することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項15】
前記液体が、水又は水蒸気である請求項14に記載の立体造形物の製造方法。
【請求項16】
モデル材用液体組成物及び請求項1から9のいずれかに記載の液体組成物が収容された収容部と、
前記モデル材用液体組成物及び前記液体組成物を用いて液膜を形成する液膜形成手段と、
前記液膜を硬化する硬化手段と、
を有し、
前記モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と前記液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、前記サポート部を液体により除去することを特徴とする立体造形物の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、立体造形用材料セット、立体造形物の製造方法、及び立体造形物の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マテリアルジェッティング法により液状の光硬化性樹脂を造形物の必要箇所に像形成し、これを多層化することで三次元の立体物を造形する方式が知られている。
【0003】
このようなマテリアルジェッティング法、即ち、インクジェット方式による光造形技術としては、モデル部を造形する場合に原理的に造形が困難な形状(例えば、オーバーハング部を有する形状等)を作製できることが知られている。このような技術においては、形状支持用にサポート部を同時に造形し、モデル部を支持する方法が一般的に採用されている。サポート部をモデル部と同じ材料で造形し、切削や研磨等の後加工により除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、インクジェット方式による光造形技術では、種類や物性の異なる複数の光硬化性樹脂組成物のそれぞれをノズルから微小な液滴状に吐出させて光造形を行うことが可能であることから、本体を水不溶性の硬化物を形成する光硬化性樹脂組成物を用いて形成し且つサポート材を水溶性の硬化物を形成する光硬化性樹脂組成物を用いて形成し、造形後にサポート部を水に溶解することによりサポート部を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サポート部の除去が容易に可能な立体造形物を造形することができる液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかと、を含有し、一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかの含有量が、20質量%以上75質量%以下である。
【化1】
ただし、一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかを表す。
【化2】
ただし、一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*はXとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*はXとの結合部位を表す。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、サポート部の除去が容易に可能な立体造形物を造形することができる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の立体造形物の立体造形装置を用いて液膜を形成する方法の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した液膜を積層して立体造形物とする方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかと、を含有し、一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかの含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【化4】
ただし、一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかを表す。
【化5】
ただし、一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*はXとの結合部位を表す。
【化6】
ただし、一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*はXとの結合部位を表す。
【0009】
本発明の液体組成物は、従来技術では、造形後のサポート部の溶解性、及びモデル部との離型性には未だ改善の余地があるという知見に基づくものである。
【0010】
本発明の液体組成物は、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかと、を含有し、一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかの含有量が、20質量%以上75質量%以下であることにより、立体造形物におけるサポート部の形成に好適であり、造形後にサポート部の除去が容易に可能である。
【0011】
本発明の液体組成物としては、硬化型液体組成物が好ましい。硬化型液体組成物としては、熱硬化型液体組成物、活性エネルギー線硬化型液体組成物などが挙げられるが、活性エネルギー線硬化型液体組成物がより好適である。
なお、本願明細書においては、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0012】
<アクリルアミド化合物>
アクリルアミド化合物は、上記一般式(1)で表される。
一般式(1)におけるR1は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
一般式(1)におけるXは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキレン基を表す。
炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
一般式(1)におけるYは、上記一般式(2)及び一般式(3)のいずれかを表す。
【0013】
一般式(2)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
一般式(2)における*は、Xとの結合部位を表す。
【0014】
一般式(3)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
一般式(3)における*は、Xとの結合部位を表す。
一般式(1)におけるR1は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
一般式(1)におけるXは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~6のアルキレン基を表す。
炭素数1~6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
一般式(1)におけるYは、上記一般式(2)又は一般式(3)を表す。
【0015】
一般式(2)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
一般式(2)における*は、Xとの結合部位を表す。
【0016】
一般式(3)におけるR2は、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
一般式(3)における*は、Xとの結合部位を表す。
エステル構造を有するアクリルアミド化合物は、一般式(1)中のYが一般式(3)で表されることが好ましい。
一般式(3)のR2が炭素数1~2のアルキル基であることが好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、単官能で環構造を有しない3級アクリルアミドの末端にエステル構造を有している。一般に、低分子量の3級アクリルアミド化合物は、揮発性を有していることからモノマー独特の臭気を強く感じ、これらの化合物を含む液体組成物を扱う上で不快感が生じることになる。
このような低分子量の3級アクリルアミド化合物に対して、極性の強い官能基を導入することや、分子量を大きくすることによってアクリルアミド化合物の揮発性を抑え、臭気を低減することは可能である。しかし、その場合には、粘度の上昇を伴うことになり、液体組成物、その中でも、インクジェット用インクに対する利用上の制約が大きくなってしまうという問題がある。
そこで、上記一般式(1)で表される3級アクリルアミド化合物は、末端部にエステル構造を有している。そのため、エステル構造による揮発性の低下により、臭気を抑制することができる。また、エステル構造の存在による分子間の相互作用により、硬化性も向上すると考えられる。更に、エステル構造を有する3級アクリルアミド化合物は、強い水素結合を形成しないことから、粘度の上昇も小さく、低粘度を維持できると考えられる。その結果、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、液体組成物、その中でも、インクジェット用インクとして好適に用いることができる。
一般に、アクリルアミド化合物は急性経口毒性が大きいことから、これらの化合物を含む液体組成物は安全性に懸念があり、また、取扱上の注意が必要である。
これに対し、本発明の上記一般式(1)で表されるエステル構造を有するアクリルアミド化合物は、急性経口毒性が低くなる傾向がある。その中でも、上記一般式(1)におけるYが、上記一般式(3)の場合に、急性経口毒性が非常に低くなる傾向がある。したがって、本発明のアクリルアミド化合物を含有する液体組成物は、急性経口毒性が低くなることが期待され、安全性を高めることができる。
【0018】
上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0019】
【化7】
ただし、一般式(4)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~3のアルキレン基を表し、R
2は炭素数1~4のアルキル基を表す。
R
1で表される炭素数1~6のアルキル基としては、上記一般式(1)のR
1と同様である。
Xで表される炭素数1~3のアルキレン基としては、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基が好ましく、メチレン基、メチルメチレン基がより好ましい。
R
2で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基が好ましく、R
2が炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0020】
次に、上記一般式(1)及び一般式(4)で表されるアクリルアミド化合物の具体例として、例示化合物a群からh群を示すが、これらに限定されるものではない。
【0021】
例示化合物a群としては、例えば、以下に示すa1からa6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
例示化合物b群としては、例えば、以下に示すb1からb6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
例示化合物c群としては、例えば、以下に示すc1からc6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
例示化合物d群としては、例えば、以下に示すd1からd6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
例示化合物e群としては、例えば、以下に示すe1からe6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
例示化合物f群としては、例えば、以下に示すf1群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
【0058】
例示化合物g群としては、例えば、以下に示すg1からg6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
例示化合物h群としては、例えば、以下に示すh1群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
【0067】
上記例示化合物a群からh群の中でも、例示化合物a1-1、例示化合物a1-4、例示化合物a6-1、例示化合物d1-1、例示化合物d1-2、例示化合物d1-4、例示化合物d1-5、例示化合物d3-2、例示化合物d4-1、例示化合物d4-5、例示化合物d6-1、例示化合物d6-4、例示化合物g1-1、例示化合物g1-2、及び例示化合物g1-5が好ましく、例示化合物d1-1、例示化合物d1-2、例示化合物g1-1、例示化合物g1-2、及び例示化合物g1-5がより好ましい。
【0068】
一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、異なる化合物同士を2種以上混合して用いることができ、この場合の異なる化合物には構造異性体も含まれる。混合比は特に限定されない。
一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量としては、液体組成物の全量に対して、20質量%以上75質量%以下であり、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましい。
一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、1H-NMRスペクトル、及びIRスペクトルを用いることにより、構造解析することができる。
【0069】
-その他の硬化性化合物-
本発明の液体組成物は、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物以外にもその他の硬化性化合物を用いることができる。
上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物以外の硬化性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合することが可能なエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマーなどを含む化合物などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、これらの塩、又はこれらから誘導される化合物、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンが好ましい。
【0071】
ラジカル重合性化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体;メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル酸誘導体;N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド誘導体;アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体;エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;ジビニルエーテル化合物、又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物;2-エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキシド付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
アニオン重合性化合物としては、例えば、ラクトン化合物、アクリル化合物、メタクリル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体が好ましい。
【0074】
その他の硬化性化合物の含有量としては、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物100質量部に対して、0.01質量部以上100質量部以下が好ましく、0.1質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0075】
<水素結合能を有する溶媒>
水素結合能を有する溶媒は、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と水素結合能を有し、アクリルアミド化合物と水素結合を形成することにより、サポート部の機能を発揮することができる。
水素結合能を有する溶媒は、25℃にて液体であることが好ましい。
【0076】
水素結合能を有する溶媒としては、例えば、炭素数3以上6以下のジオール、炭素数6以上のモノアルコール、炭素数6以上の環状アルコール、炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテル、カルボン酸化合物、アミン化合物、エステル化合物、ケトン化合物、ウレア化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数3以上6以下のジオール、炭素数6以上のモノアルコール、炭素数6以上の環状アルコール、炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテルが好ましく、炭素数3以上6以下のジオール、炭素数6以上のモノアルコールがより好ましい。
【0077】
-炭素数3以上6以下のジオール-
炭素数3以上6以下のジオールとしては、硬化時のラジカル重合反応を阻害しないこと、常温にて流動性があり、水に可溶な材料であることが好ましい。
また、炭素数3以上6以下のジオールとしては、単官能性、多官能性のいずれも使用することができる。
炭素数3以上6以下のジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、22MPa1/2以下のSP値を有するアルコールであることが好ましい。
【0078】
炭素数3以上6以下のジオールとしては、例えば、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましい。
炭素数としては、3以上6以下であり、3以上5以下が好ましい。炭素数が、3以上であると、1%圧縮時の圧縮応力を向上でき、6以下であると、液体組成物の粘度を低くすることができる。
なお、炭素数3以上6以下のジオールの炭素鎖としては、直鎖でもよく、枝分かれしていてもよい。
【0079】
-炭素数6以上のモノアルコール-
炭素数6以上のモノアルコールとしては、環状構造を有さない方が水素結合能上好ましく、炭素数6以上の直鎖モノアルコールがより好ましい。炭素数の上限は、特に限定されず、水崩壊性の観点で適宜選択すればよいが、20以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0080】
炭素数6以上のモノアルコールとしては、光硬化時のラジカル重合反応を阻害しないこと、常温にて流動性を有することが好ましい。
【0081】
炭素数6以上のモノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級アルコール(例えば、1-ヘキサノール、1-デカノール、1-ドデカノール等)、環状アルコールであるシクロヘキサノールやシクロペンタノール、オキシプロピレン基やオキシエチレン基を有し、モノアルコールのアルキレンオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
炭素数6以上のモノアルコールとしては、炭素数6以上のモノアルコールを含むことが好ましい。
炭素数6以上のモノアルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級アルコールなどが挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、1-ヘキサノール、炭素数10以上の1-デカノール、1-ドデカノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、1-デカノール、1-ドデカノールが好ましい。
炭素数6以上のモノアルコールは、疎水的で、炭素数が多く、アルキル鎖が配向したり、絡まり合うことにより造形される硬化物を硬くすることができる。
【0083】
-炭素数6以上の環状アルコール-
環状アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0084】
-炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテル-
炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
【0085】
更に、本発明の液体組成物には、硬化性、及び液体崩壊性などの諸特性を調整するために以下に示す物質も含有することができる。
【0086】
-カルボン酸化合物-
カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキシル酸等の直鎖脂肪族酸;イソブチル酸、t-ブチル酸、イソペンチル酸、イソオクチル酸、2-エチルヘキシル酸等の各種分岐型脂肪族カルボン酸;安息香酸、ベンゼンスルホン酸等の芳香族系カルボン酸;グリコール酸、乳酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水への溶解性の点から、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、乳酸が好ましく、ブタン酸、乳酸がより好ましい。
【0087】
-アミン化合物-
アミン化合物としては、例えば、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等の1~3級アミン;エチレンジアミン等の2価アミン;トリエチレンジアミン等の3価アミン;ピリジン、アニリン等の脂肪族系アミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水素結合による架橋強度、及び水への溶解性の点から、2価又は3価の1級アミンが好ましく、エチレンジアミンがより好ましい。
【0088】
-エステル化合物-
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等の単官能エステル;コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等の多官能脂肪族エステル;テレフタル酸ジメチル等の多官能芳香族エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水への溶解度、造形中の蒸発や臭気、及び安全性の点から、アジピン酸ジメチルが好ましい。
【0089】
-ケトン化合物-
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等の単官能ケトン、アセチルアセトン、2,4,6-ヘプタトリオン等の多官能ケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、揮発性や水への溶解度の点から、アセチルアセトンが好ましい。
【0090】
水素結合能を有する溶媒の含有量としては、液体組成物の全量に対して、20質量%以上75質量%以下であり、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましい。含有量が、20質量%以上75質量%以下であると、サポート部として十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0091】
上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量A(質量%)と、水素結合能を有する溶媒の含有量B(質量%)との質量比(A/B)としては、0.20以上2.5以下が好ましく、0.3以上1.5以下がより好ましい。質量比(A/B)が、0.20以上2.5以下であると、サポート部として十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0092】
<水素結合能を有するポリマー>
水素結合能を有するポリマーは、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と水素結合能を有し、アクリルアミド化合物と水素結合を形成することにより、サポート部の機能を発揮することができる。
水素結合能を有するポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素化合物などが挙げられる。
活性水素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、エーテル、アミド、エステル等の単官能性化合物、多官能性化合物のいずれも使用することができる。
活性水素化合物としては、例えば、アルキレンオキサイド付加物、1価以上4価以下のアルコール、アミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、アルキレンオキサイド付加物、1価以上2価以下のアルコールが好ましい。
アルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
水素結合能を有するポリマーの数平均分子量としては、サポート部の硬化物の高さの変化率と、水への溶解性の両立の観点から、400以上が好ましく、400以上5,000以下がより好ましく、400以上2,000以下が更に好ましい。
数平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することかできる。
水素結合能を有するポリマーの含有量としては、水への溶解性の観点から、液体組成物の全量に対して、20質量%以上75質量%以下であり、30質量%以上70質量%以下が好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましい。含有量が、20質量%以上75質量%以下であると、サポート部として十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0093】
なお、多価アルコールも、造形されるサポート部の親水性を向上することができ、サポート部の除去性を向上することができる。多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリンなどが挙げられる。多価アルコールの含有量としては、液体組成物の全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましい。含有量が、1質量%以上30質量%以下であると、サポート部として十分な圧縮応力と、水崩壊性とを両立することができる。
【0094】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、保存安定性の点から、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成するラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0095】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-塩、スルホン酸を発生することが可能なスルホン化物、ハロゲン化水素を発生することが可能なハロゲン化物、鉄アレン錯体などが挙げられる。
【0097】
アニオン重合開始剤としては、例えば、o-ニトロベンジルカルバメート誘導体、o-アシルオキシル誘導体、o-カルバモイルオキシムアミジン誘導体などが挙げられる。
【0098】
熱重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス(酸化還元)開始剤などが挙げられる。
アゾ系開始剤としては、例えば、VA-044、VA-46B、V-50、VA-057、VA-061、VA-067、VA-086、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(以上、DuPont Chemical社製)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)(V-601)(以上、和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0099】
過酸化物開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S、Akzo Nobel社製)、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11、Elf Atochem社製)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(Trigonox 21-C50、Akzo Nobel社製)、過酸化ジクミルなどが挙げられる。
【0100】
過硫酸塩開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0101】
レドックス(酸化還元)開始剤としては、例えば、過硫酸塩開始剤とメタ亜硫酸水素ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組合せ、有機過酸化物と第3級アミンとに基づく系(例えば、過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンとに基づく系)、有機ヒドロパーオキシドと遷移金属とに基づく系(例えば、クメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートとに基づく系)などが挙げられる。
【0102】
上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0103】
重合開始剤の含有量は、十分な硬化速度を得る点から、液体組成物の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下がより好ましく、1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。
【0104】
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、色材、界面活性剤、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、定着剤、粘度安定化剤、香料、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤などが挙げられる。
【0105】
-色材-
色材としては、液体組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。
色材の含有量は、特に制限はなく、所望の色濃度や液体組成物中における分散性等を考慮して適宜選択することができるが、液体組成物の全量に対して、0.1質量%以上20質量%以下が好ましい。なお、本発明の液体組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、造形物を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンなどが挙げられる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、塩基性染料などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
<液体組成物の調製>
本発明の液体組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、上記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれか等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて分散液を調製し、当該分散液に、更に重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0107】
<粘度>
本発明の液体組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該液体組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が60mPa・s以下であり、3mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上30mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下が更に好ましく、6mPa・s以上12mPa・s以下が特に好ましい。
また、当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0108】
<硬化手段>
本発明の液体組成物を硬化させる硬化手段としては、加熱硬化又は活性エネルギー線による硬化が挙げられる。これらの中でも、活性エネルギー線による硬化が好ましい。
液体組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の液体組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0109】
(立体造形用材料セット)
本発明の立体造形用材料セットは、本発明の液体組成物と、硬化物が液体崩壊性を有しないモデル材用液体組成物と、を有し、更に必要に応じてその他の材料を有する。
本発明の液体組成物としては、硬化物が液体崩壊性を有し、サポート部の形成に用いるサポート材用液体組成物が好適である。
液体崩壊性とは、液体に浸漬したときに、硬化物が細かく分解され、当初有していた形状や性質を維持できなくなることを意味する。
液体としては、例えば、水、水蒸気などが挙げられる。
モデル材用液体組成物としては、硬化物が液体崩壊性を有しなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0110】
(立体造形物の製造方法及び立体造形物の製造装置)
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の液体組成物を用いて立体造形物を造形する造形工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
造形工程は三次元プリンターを用いて行われることが好ましいが、成形金型を用いて行うこともできる。
【0111】
本発明の立体造形物の製造方法は、液膜形成工程と、硬化工程と、を繰り返すことにより、モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、サポート部を液体により除去する。
本発明の立体造形物の製造装置は、液膜形成手段と、硬化手段と、を有し、モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、サポート部を液体により除去する。
本発明の立体造形物の製造方法は、本発明の立体造形物の製造装置により好適に実施することができる。
【0112】
<液膜形成工程及び液膜形成手段>
液膜形成工程は、モデル材用液体組成物及び本発明の液体組成物を用いて液膜を形成する工程であり、液膜形成手段により実施される。
液体組成物としては、本発明の液体組成物と同様のものを用いることができる。
液膜形成工程としては、インクジェット方式及びディスペンサー方式のいずれかによって行われることが好ましい。
【0113】
<硬化工程及び硬化手段>
硬化工程は、液膜を硬化する工程であり、硬化手段により実施することができる。
硬化手段としては、例えば、紫外線照射装置などが挙げられる。
【0114】
-紫外線照射装置-
紫外線(UV)照射装置としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドなどが挙げられる。
高圧水銀灯は点光源であるが、光学系と組み合わせて光利用効率を高くしたDeepUVタイプは、短波長領域の照射が可能である。
メタルハライドは、波長領域が広いため着色物に有効であり、Pb、Sn、Feなどの金属のハロゲン化物が用いられ、重合開始剤の吸収スペクトルに合わせて選択できる。硬化に用いられるランプとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Fusion System社製のHランプ、Dランプ、又はVランプ等のような市販されているものも使用することができる。
立体造形物の製造装置としては、ヒーターレスであることが好ましく、常温にて造形可能であることが好ましい。
【0115】
形成されたサポート部は液体により除去する。液体としては、例えば、水、水蒸気、アルコールであるブタノールやヘキサノール、アミンであるヘキシルアミンやペンチルアミン、芳香族化合物であるベンゼンやトルエンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、安全性の点から、水、水蒸気が好ましい。
なお、液体に添加物を加えてもよい。
添加物としては、例えば、界面活性剤などが挙げられる。前記界面活性剤の種類や量を調整することにより直鎖アルキル鎖に対する親和性を上げることができる。
液体は、サポート部を軟化させ、内部に浸透しやすくする点から、40℃以上が好ましいが、立体造形物の反りを予防する点から、40℃より低い温度を選択することもできる。
【0116】
本発明の立体造形物の製造方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加熱なども挙げられる。本発明の液体組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の立体造形物の製造装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の液体組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には容器を収容してもよい。更に、本発明の液体組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0117】
ここで、
図1は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す概略図である。
図1の立体造形物の製造装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の液体組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の液体組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、
図1では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0118】
以下、本発明の液体組成物を用いて立体造形する具体的な実施形態について説明する。
まず、三次元CADで設計された三次元形状あるいは三次元スキャナやディジタイザで取り込んだ三次元形状のサーフェイスデータあるいはソリッドデータを、STLフォーマットに変換して積層造形装置に入力する。
【0119】
次に、入力されたデータに基づいて、造形しようとする三次元形状の造形方向を決める。造形方向は特に制約ないが、通常はZ方向(高さ方向)が最も低くなる方向を選ぶ。
造形方向を確定したら、その三次元形状のX-Y面、X-Z面、Y-Z面への投影面積を求める。得られたブロック形状を一層の厚みでZ方向に輪切り(スライス)にする。一層の厚みは使う材料によるが、通常は20μm以上60μm以下程度である。造形しようとする造形物が1個の場合はこのブロック形状がZステージ(一層造形毎に一層分ずつ下降する造形物をのせるテーブル)の真中に来るように配置される。また、複数個同時に造形する場合はブロック形状がZステージに配置されるが、ブロック形状を積み重ねることも可能である。これらブロック形状化や輪切りデータ(スライスデータ:等高線データ)やZステージへの配置は、使用材料を指定すれば自動的に作成することも可能である。
【0120】
次に、造形工程を実施する。異なるヘッド1とヘッド2(
図2)を双方向に動かして、モデル材前駆液体αと液体組成物βを吐出し、ドットを形成する。更に、連続したドットを形成することで、所望の位置に液膜を作製することができる。液膜に紫外(UV)光を照射することで硬化して、所望の位置にモデル材膜とサポート材膜を形成することができる。
モデル材膜とサポート材膜を一層形成した後に、ステージ(
図2)が一層分の高さだけ下降する。再度、モデル材膜とサポート材膜に連続したドットを形成し所望の位置に液膜を作製する。液膜に紫外(UV)光を照射することで硬化して、所望の位置にモデル材膜とサポート材膜を形成する。これらの積層を繰り返すことで、
図3のように立体造形が可能となる。
このように立体造形した造形物は、液体によりサポート部を容易に除去することが可能であり、所望の立体造形物(モデル部)を得ることができる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0122】
まず、合成例1~3に示す方法により、上記一般式(1)で示されるアクリルアミド化合物を合成した。合成したアクリルアミド化合物の同定は核磁気共鳴分光法(使用装置:日本電子株式会社製、「JNM-ECX500」)で実施し、純度の測定はガスクロマトグラフ法(使用装置:株式会社島津製作所製、「GCMS-QP2010 Plus」)で実施した。これらの化学分析は定法により実施した。
【0123】
(合成例1)
<N-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル(例示化合物d1-1)の合成>
N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩(シグマアルドリッチジャパン合同会社製、試薬)0.30モル、炭酸カリウム(関東化学株式会社製、試薬)0.45モル、及び水400mLを0~10℃で撹拌混合し、その温度を保ったままアクリル酸クロリド(和光純薬工業株式会社製、試薬)0.33モルをゆっくり滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(関東化学株式会社製、試薬)400mLで3回抽出し、酢酸エチル層を合わせて水400mLで1回洗浄した。酢酸エチルを減圧下40℃で留去して、目的のN-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル0.20モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.3質量%であった。
【0124】
(合成例2)
<N-アクリロイル-N-イソプロピルグリシンイソプロピルエステルの合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩を、N-イソプロピルグリシンイソプロピルエステル塩酸塩(東京化成工業株式会社製、試薬)に変更した以外は、合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイル-N-イソプロピルグリシンイソプロピルエステル0.22モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.5質量%であった。
【0125】
(合成例3)
<N-アクリロイル-N-イソプロピルグリシンメチルエステルの合成>
合成例1において、N-メチルグリシンメチルエステル塩酸塩を、N-イソプロピルグリシンメチルエステル塩酸塩(東京化成工業株式会社製、試薬)に変更した以外は、合成例1と同様にして、目的のN-アクリロイル-N-イソプロピルグリシンメチルエステル0.22モルをほぼ無色透明の液体として得た。純度は98.5質量%であった。
【0126】
(実施例1)
合成例1のN-アクリロイル-N-メチルグリシンメチルエステル50.0質量部、1,3-プロパンジオール(東京化成工業株式会社製)50.0質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF株式会社製)5.0質量部、及びフェノチアジン(東京化成工業株式会社製)0.1質量部を添加し、撹拌混合して、実施例1の液体組成物を得た。
【0127】
(実施例2~23及び比較例1~10)
実施例1において、表1から表6に示す組成及び含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~23及び比較例1~10の液体組成物を調製した。
【0128】
表1から表6中の各成分の詳細は以下のとおりである。
・1,4-ブタンジオール:東京化成工業株式会社製
・1,5-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
・1,6-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
・1-ヘキサノール:東京化成工業株式会社製
・1-ドデカノール:東京化成工業株式会社製
・1,2-エタンジオール:東京化成工業株式会社製
・1,7-ヘプタンジオール:東京化成工業株式会社製
・1-プロパノール:東京化成工業株式会社製
・ポリプロピレングリコール(ジオール型、Mn=400):和光純薬工業株式会社製
・ポリプロピレングリコール(Mn=1,000):和光純薬工業株式会社製
【0129】
次に、得られた各液体組成物(サポート材用液体組成物)について、以下のようにして、「硬化物(サポート部)」を作製し、「サポート部の除去性」、及び「サポート部除去時のサポート部の離型性」を評価した。結果を表1から表6に示した。
【0130】
<硬化物(サポート部)の作製>
縦20mm×横20mm×高さ5mmのシリコーンゴム型に、各液体組成物を流し込み、紫外線照射装置(装置名:SubZero-LED、インテグレーション・テクノロジー株式会社製)により、紫外線を照射量500mJ/cm2(照度:100mW/cm2、照射時間:5秒間)にて照射して縦20mm×横20mm×高さ5mmの硬化物であるサポート部を得た。
【0131】
<サポート部の除去性>
サポート部の除去性について、以下のようにして評価した。
内部にサポート部を形成した縦20mm×横20mm×高さ5mmのシリコーンゴム型を40℃の温水20mLに入れ、超音波(アズワン株式会社製、ASU-6)を30分間照射した。その後、シリコーンゴム型を取り出し、シリコーンゴム型中に残った残存サポート部の残存個体の体積をアルキメデス法で測定し、下記評価基準に基づいて、サポート部の除去性を評価した。
[評価基準]
◎:残存サポート部が10体積%未満である
○:残存サポート部が10体積%以上30体積%未満である
△:残存サポート部が30体積%以上50体積%未満である
×:残存サポート部が50体積%以上残存している
【0132】
<サポート部のモデル部との離型性評価>
得られた各液体組成物を用いて、以下のようにして、硬化物(モデル部とサポート部)を形成し、サポート部除去時におけるサポート部のモデル部との離型性を評価した。
【0133】
-モデル材用液体組成物の調製-
アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製)40.0質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(ARONIX M-309、東亞合成株式会社製)15.0質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、BASF株式会社製)5.0質量部、及びフェノチアジン(東京化成工業株式会社製)0.1質量部を添加し、撹拌混合してモデル材用液体組成物を得た。
【0134】
-硬化物(モデル部及びサポート部)の作製-
縦20mm×横20mm×高さ5mmのシリコーンゴム型に、上記で調製したモデル材用組成物をゴム型のおよそ半分の高さまで流し込み、紫外線照射装置(装置名:SubZero-LED、インテグレーション・テクノロジー株式会社製)により、紫外線を照射量500mJ/cm2(照度:100mW/cm2、照射時間:5秒間)にて照射して縦20mm×横20mm×高さ2.5mmの硬化物であるモデル部を得た。
次に、この形成したモデル部上に、各液体組成物をシリコーンゴム型の高さ上限まで流し込み、上記と同条件にて硬化してサポート部を形成し、モデル部とサポート部が接触する硬化物を得た。
作製した硬化物をシリコーンゴム型ごと40℃の温水20mLに入れ、超音波(アズワン株式会社製、ASU-6)を30分間照射した。その後、シリコーンゴム型を取り出し、シリコーンゴム型中に残った残存サポート部の残存個体の体積をアルキメデス法で測定し、下記評価基準に基づいて、サポート部の離型性を評価した。
[評価基準]
◎:残存サポート部が占める面積が30%未満である
○:残存サポート部が占める面積が30%以上50%未満である
△:残存サポート部が占める面積が50%以上70%以下である
×:残存サポート部が占める面積が70%以上である
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
上記実施例1~23及び比較例1~10は、シリコーンゴム型を用いて立体造形物の造形を行ったが、
図1に示す立体造形物の製造装置を用いて立体造形を行った場合でも、上記実施例1~23及び比較例1~10と同様の結果が得られた。
【0142】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物と、水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかと、を含有し、
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、20質量%以上75質量%以下であり、
前記水素結合能を有する溶媒及び水素結合能を有するポリマーの少なくともいずれかの含有量が、20質量%以上75質量%以下であることを特徴とする液体組成物である。
【化46】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)及び下記一般式(3)のいずれかを表す。
【化47】
ただし、前記一般式(2)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化48】
ただし、前記一般式(3)中、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
<2> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記一般式(4)で表される化合物である前記<1>に記載の液体組成物である。
【化49】
ただし、前記一般式(4)中、R
1は炭素数1~6のアルキル基を表し、Xは炭素数1~3のアルキレン基を表し、R
2は炭素数1~4のアルキル基を表す。
<3> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量が、30質量%以上70質量%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体組成物である。
<4> 前記水素結合能を有する溶媒が、炭素数3以上6以下のジオール、炭素数6以上のモノアルコール、炭素数6以上の環状アルコール、及び炭素数6以上のポリプロピレングリコールモノエーテルから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体組成物である。
<5> 前記水素結合能を有する溶媒が、炭素数3以上6以下のジオール、及び炭素数6以上のモノアルコールから選択される少なくとも1種である前記<4>に記載の液体組成物である。
<6> 前記水素結合能を有する溶媒の含有量が、30質量%以上70質量%以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量A(質量%)と、前記水素結合能を有する溶媒の含有量B(質量%)との質量比(A/B)が、0.20以上2.5以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 前記水素結合能を有するポリマーの数平均分子量が、400以上である前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物である。
<9> 前記水素結合能を有するポリマーの含有量が、30質量%以上70質量%以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体組成物である。
<10> 更に重合開始剤を含有する前記<1>から<9>のいずれかに記載の液体組成物である。
<11> 活性エネルギー線硬化型液体組成物である前記<1>から<10>のいずれかに記載の液体組成物である。
<12> インクジェット用である前記<1>から<11>のいずれかに記載の液体組成物である。
<13> 前記液体組成物の硬化物が、液体崩壊性を有する前記<1>から<12>のいずれかに記載の液体組成物である。
<14> 立体造形物におけるサポート部の形成に用いるサポート材用液体組成物である前記<1>から<13>のいずれかに記載の液体組成物である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物と、
硬化物が液体崩壊性を有しないモデル材用液体組成物と、
を有することを特徴とする立体造形用材料セットである。
<16> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物を用いて立体造形物を造形する造形工程を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<17> 前記造形工程が三次元プリンターを用いて行われる前記<16>に記載の立体造形物の製造方法である。
<18> 前記造形工程が成形金型を用いて行われる前記<16>に記載の立体造形物の製造方法である。
<19> モデル材用液体組成物及び前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物を用いて液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜を硬化する硬化工程と、を繰り返すことにより、前記モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と前記液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、前記サポート部を液体により除去することを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<20> 前記液体が、水又は水蒸気である前記<19>に記載の立体造形物の製造方法である。
<21> モデル材用液体組成物及び前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物が収容された収容部と、
前記モデル材用液体組成物及び前記液体組成物を用いて液膜を形成する液膜形成手段と、
前記液膜を硬化する硬化手段と、
を有し、
前記モデル材用液体組成物の硬化物からなるモデル部と前記液体組成物の硬化物からなるサポート部とを形成した後、前記サポート部を液体により除去することを特徴とする立体造形物の製造装置である。
【0143】
前記<1>から<14>のいずれかに記載の液体組成物、前記<15>に記載の立体造形用材料セット、前記<16>から<20>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法、及び前記<21>に記載の立体造形物の製造装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0144】
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
38 ステージ
39 立体造形物の製造装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】
【文献】特表2009-519143号公報
【文献】特許第4759165号公報