(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】立体造形用樹脂粉末、造形装置、及び造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20221109BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221109BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221109BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20221109BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/268
C08L101/12
(21)【出願番号】P 2018209600
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 充
(72)【発明者】
【氏名】岩附 仁
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-301276(JP,A)
【文献】特開2004-182344(JP,A)
【文献】特開2010-254811(JP,A)
【文献】特開2012-031403(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088932(WO,A1)
【文献】特開昭52-057249(JP,A)
【文献】特開平08-260163(JP,A)
【文献】特表平11-509485(JP,A)
【文献】特開2010-007052(JP,A)
【文献】特開2018-086757(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043231(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/074353(WO,A1)
【文献】特許第6399165(JP,B2)
【文献】特許第6402810(JP,B2)
【文献】特許第3917888(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B33Y 10/00-99/00
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂粒子と、第2の樹脂粒子と、を少なくとも含有
する立体造形用樹脂粉末であって、
前記第1の樹脂粒子が、熱可塑性樹脂を含み、
前記第2の樹脂粒子が、熱可塑性樹脂を含み、
前記第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかであり、
前記第2の樹脂粒子の体積が、前記第1の樹脂粒子の体積以上であり、
前記第2の樹脂粒子の融点が、前記第1の樹脂粒子の融点より30℃以上180℃未満高
く、
前記第2の樹脂粒子の含有量が、前記立体造形用樹脂粉末全量に対して、5質量%以上80質量%以下であることを特徴とする
立体造形用樹脂粉末。
【請求項2】
前記第2の樹脂粒子が、示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、更に、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf2としたときに、次式、Tmf1>Tmf2、及び、次式、(Tmf1-Tmf2)≧3℃を満たす請求項1に記載の
立体造形用樹脂粉末。
【請求項3】
前記第2の樹脂粒子の高さが、前記第1の樹脂粒子の高さの3倍以上40倍以下である請求項1から
2のいずれかに記載の
立体造形用樹脂粉末。
【請求項4】
立体造形用樹脂粒子の硬化層を積層して、造形物を造形する造形装置であって、
請求項1から
3のいずれかに記載の
立体造形用樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、
前記供給槽に貯蔵された前記
立体造形用樹脂粉末を供給する供給手段と、
前記
立体造形用樹脂粒子を含む層を形成する層形成手段と、
前記層を熱により溶融した後に硬化する硬化手段と、
を有することを特徴とする造形装置。
【請求項5】
立体造形用樹脂粒子の硬化層を積層して、造形物を造形する造形方法であって、
請求項1から
3のいずれかに記載の
立体造形用樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、
前記層を熱により溶融した後に硬化する硬化工程と、を繰り返すことを特徴とする造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粉末、造形装置、及び造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆるプラスチック製品としての造形物や成形物の原料として樹脂粉末が多く用いられている。樹脂粉末としては、例えば、ミリメートル単位のサイズのペレット、マイクロメートル単位のサイズの粉体などが挙げられる。これらの樹脂粉末は、例えば、射出成形、押出成形などで溶融されて用いられており、また粉末床溶融結合方式のいわゆる3Dプリンタなどに用いられている。
【0003】
樹脂粉末の材料について研究・開発が進められており、例えば、溶融加工時の流動性を向上させ、かつ滞留安定性の低下と熱老性とを抑制することを目的に、半芳香族ポリアミドと多価アルコールと繊維状強化材とを含む半芳香族ポリアミド樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、造形物や成形物の原料として用いると、造形物や成形物の反りの発生を抑制できる樹脂粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段としての本発明の樹脂粉末は、
第1の樹脂粒子と、第2の樹脂粒子と、を少なくとも含有し、
前記第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかであり、
前記第2の樹脂粒子の融点が、前記第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、造形物や成形物の原料として用いると、造形物や成形物の反りの発生を抑制できる樹脂粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、円柱体の樹脂粒子の一例を示す概略斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の一例を示す概略側面図である。
【
図1D】
図1Dは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図1E】
図1Eは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図1F】
図1Fは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図1G】
図1Gは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図1H】
図1Hは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図1I】
図1Iは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、円柱体の樹脂粉末の一例を示す写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る立体造形装置を示す概略図である。
【
図4A】
図4Aは、立体造形物の製造方法を説明するための概略図である。
【
図4B】
図4Bは、立体造形物の製造方法を説明するための概略図である。
【
図5A】
図5Aは、立体造形物の製造方法を説明するための概略図である。
【
図5B】
図5Bは、立体造形物の製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の樹脂粉末は、第1の樹脂粒子と、第2の樹脂粒子と、を少なくとも含有し、第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかであり、第2の樹脂粒子の融点が第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高い。
【0009】
本発明の樹脂粉末は、従来の半芳香族ポリアミドと多価アルコールと繊維状強化材とを含む半芳香族ポリアミド樹脂組成物を用いて造形物や成形物を製造した場合には、造形物や成形物に反りが発生してしまう場合があるという知見に基づくものである。
【0010】
(樹脂粉末)
本発明の樹脂粉末は、第1の樹脂粒子と、第2の樹脂粒子と、を少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
以下では、まず第1の樹脂粒子について説明し、次に第2の樹脂粒子について第1の樹脂粒子とは異なる点を説明する。なお、第1の樹脂粒子と第2の樹脂粒子とを区別しないときは「樹脂粒子」と称することもある。また、第2の樹脂粒子を「有機フィラー」と称することがある。
【0011】
<第1の樹脂粒子>
<<第1の樹脂粒子の形状>>
第1の樹脂粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱体、多角柱体、球体などの形状が挙げられる。これらの中でも、円柱体が好ましい。
【0012】
円柱体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、真円柱体、楕円柱体などが挙げられる。これらの中でも、真円柱体が好ましい。
なお、円柱体には、略円柱体が含まれる。ここで、略円とは、短径に対する長径の比(長径/短径)が、1以上10以下であることを意味する。また、円柱体の円形部分は、一部が欠けていてもよい。
多角柱体としては、円柱体と同様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、多角柱体における多角形部分の一部が欠けていてもよい。
球体としては、円柱体と同様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、球体の一部が欠けていてもよい。
【0013】
円柱体の円形部分の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上200μm以下が好ましい。なお、円柱体の円形部分が楕円形である場合、直径とは長径を意味する。
多角柱体の多角形部分の一辺の長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多角形部分を全て含むような最小の円(最小包含円)の直径が5μm以上200μm以下であることが好ましい。
球体の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0014】
円柱体の高さ、即ち対向する2つの円形部分の距離(上面-底面間の距離)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
多角柱体の高さ、即ち対向する2つの多角形部分の距離(上面-底面間の距離)としては、円柱体の高さと同様に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上200μm以下が好ましい。
【0015】
円柱体における、対向する2つの円形部分(上面及び底面)の面積は、互いに異なっていてもよい。ただし、面積が小さいほうの円形部分の直径r1に対する面積が大きいほうの円形部分の直径r2の比(r2/r1)としては、2つの円形部分の面積に差がないほうが嵩密度を高めることができる点で、1.5以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
多角柱体における、対向する2つの多角形部分(上面及び底面)の面積は、互いに異なっていてもよい。ただし、多角形部分の小さいほうの面積(S1)に対する多角形部分の大きいほうの面積(S2)の比(S2/S1)としては、2つの多角形部分の面積に差がないほうが嵩密度を高めることができる点で、1に近いことが好ましい。
粉末床溶融結合方式(PBF;Part Bed Fusion)で立体造形物を造形する際には、樹脂粒子の嵩密度を高めることにより、造形物や成形物の精度を向上させることができる。
【0016】
円柱体や多角柱体などの柱体の樹脂粒子においては、嵩密度を高めるため、頂点を持たないことが好ましい。なお、頂点とは、柱体の中に存在する角の部分をいう。
【0017】
ここで、円柱体の樹脂粒子の形状について、
図1Aから
図1Iを用いて説明する。
図1Aは、円柱体の樹脂粒子の一例を示す概略斜視図である。
図1Bは、
図1Aに示した円柱体の樹脂粒子の概略側面図である。
図1Cは、円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の一例を示す概略側面図である。
図1Dから
図1Iは、いずれも円柱体の樹脂粒子において端部に頂点を持たない形状の他の一例を示す概略側面図である。
【0018】
図1Aに示す円柱体を、側面から観察すると、
図1Bに示すように長方形の形状を有しており、角の部分、即ち頂点が4箇所存在する。この端部に頂点を持たない形状の一例が
図1Cから
図1Iである。
柱体の樹脂粒子の頂点の有無の確認は、柱体の樹脂粒子の側面に対する投影像から判別することができる。例えば、柱体の樹脂粒子の側面に対して走査型電子顕微鏡(装置名:S4200、株式会社日立製作所製)等を用いて観察し、二次元像として取得する。この場合、投影像は4辺形となり、各々隣り合う2辺によって構成される部位を端部とする。すると、隣り合う2つの直線のみで構成される場合は、角が形成され頂点を持つことになり、
図1Cから
図1Iのように端部が円弧によって構成される場合は端部に頂点を持たないことになる。
【0019】
例えば、
図2に示すように、柱体の樹脂粒子21は、第1の面22と、第2の面23と、側面24とを有する。
第1の面22は、第1の対向面22aと、側面24に沿って延伸した形状である第1の面の外周領域22bと、を有する。第1の面の外周領域22bは、曲面を介して第1の対向面22aと連続する面であり、第1の対向面22aと略直交する。
第2の面23は、第1の対向面22aと対向する第2の対向面23aと、側面24に沿って延伸した形状である第2の面の外周領域23bと、を有する。第2の面の外周領域23bは、曲面を介して第2の対向面23aと連続する面であり、第2の対向面23aと略直交する。
側面24は、第1の面22及び第2の面23に隣接する。また、側面24上に、第1の面の外周領域22b及び第2の面の外周領域23bが延伸している。
【0020】
なお、第1の面の外周領域22b及び第2の面の外周領域23b(以下、「外周領域」とも称する)の形状は、側面24とSEM(Scanning Electron Microscope)画像上で区別可能な形状であればよい。具体的には、外周領域の形状としては、例えば、外周領域の一部が側面24と一体化している形状、外周領域が側面24と接している形状、外周領域と側面24との間に空間が存在する形状などが挙げられる。
また、外周領域は、側面24の面方向と略同一の面方向となるように設けられていることが好ましい。
さらに、
図2に示すように、外周領域は、側面24に沿って延伸してなり、側面24上に位置する。また、外周領域と側面24との接続領域近辺を覆う第1の面及び第2の面の構造は、ボトルキャップ形状とも称する。
【0021】
第1の樹脂粒子が頂点を有さない形状にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高速回転式の機械粉砕、高速衝撃式の機械粉砕、機械摩擦による表面溶融等の球形化処理装置を使用した公知の方法などが挙げられる。
【0022】
<<第1の樹脂粒子の融点>>
第1の樹脂粒子の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造形物や成形物の外装の造形に用いるときの耐熱温度などを考慮すると、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましい。
【0023】
第1の樹脂粒子の融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)により測定することができる。具体的には、第1の樹脂粒子の融点は、ISO3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)に準じて、例えば、株式会社島津製作所製、DSC-60Aなどの示差走査量測定装置を用いて測定することができる。測定方法としては、例えば、10℃/minにて温度を上昇させ、第1の樹脂粒子のDSC測定を行い、得られた吸熱ピークの頂点の温度あるいは融点ピークの頂点の温度を融点とする。なお、樹脂粒子に複数の融点が存在する場合には、高温側の融点としてもよい。
【0024】
<<第1の樹脂粒子の材質>>
第1の樹脂粒子の材質としては、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、更に必要に応じて後述するその他の成分を含む樹脂組成物などが挙げられる。
【0025】
-熱可塑性樹脂-
熱可塑性樹脂とは、熱を加えると可塑化し、溶融する樹脂を意味する。
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、結晶性樹脂であってもよいし、非結晶性樹脂あってもよい。
なお、結晶性樹脂とは、ISO3146(プラスチック転移温度測定方法、JIS K7121)に準拠した測定において、融点ピークが検出される樹脂である。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)、ポリアセタール(POM:Polyoxymethylene)、ポリイミド、フッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0028】
ポリアミドとしては、例えば、ポリアミド410(PA410)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66、融点:265℃)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA612)、ポリアミド11(PA11)、及びポリアミド12(PA12);並びにポリアミド4T(PA4T)、ポリアミドMXD6(PAMXD6)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミド9T、及びポリアミド10T(PA10T)などの半芳香族性のポリアミドが挙げられる。
【0029】
なお、PA9Tは、ポリノナメチレンテレフタルアミドとも呼ばれ、炭素が9つのジアミンとテレフタル酸モノマーとを含み、カルボン酸側が芳香族である半芳香族である。カルボン酸側だけでなく、ジアミン側も芳香族である全芳香族として、p-フェニレンジアミンとテレフタル酸モノマーとから生成されるアラミドもポリアミドに含まれる。
【0030】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性を付与する点で、テレフタル酸やイソフタル酸を一部に含む芳香族を有するものが好ましい。
【0031】
ポリエーテルとしては、例えば、ポリアリールケトン、ポリエーテルスルフォンなどが挙げられる。
ポリアリールケトンとしては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)などが挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、例えば、PA9Tのように2つの融点ピークを有するものでもよい。2つの融点ピークを有する熱可塑性樹脂は、高温側の融点ピーク以上の温度になると完全に溶融する。なお、樹脂粉末は、100℃以上の融点の熱可塑性樹脂を1種以上含むことが好ましい。
【0033】
[樹脂粒子の製造方法]
樹脂粒子の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂組成物を粉砕又は切断して所定の粒径にする方法が好ましい。
【0034】
樹脂組成物を粉砕して所定の粒径にする方法としては、例えば、熱可塑性樹脂を含むペレット形状の樹脂組成物を粉砕装置により粉砕し、所定の粒径以外の樹脂粒子を分級又はフィルターにより濾過する方法などが挙げられる。また、樹脂組成物の脆弱性を利用して粉砕する場合、粉砕時の環境温度としては、樹脂組成物の脆弱温度以下がよく、室温以下が好ましく、0℃以下がより好ましく、-25℃以下が更に好ましく、-100℃以下が特に好ましい。分級操作では、樹脂粒子の流動性を向上させるために、例えば、25μm以上80μm以下の樹脂粒子を捕集することが好ましい。
【0035】
樹脂組成物を切断して所定の粒径にする方法としては、例えば、押出成形により繊維化した樹脂組成物を所定の粒径になるように切断する方法などが挙げられる。
【0036】
これらの中でも、押出成形により繊維化した樹脂組成物を所定の粒径になるように切断する方法が好ましい。樹脂粒子の製造方法が押出成形により繊維化した樹脂組成物を所定の粒径になるように切断する方法であると、繊維径(上面と底面の面積)とカット幅(柱体の高さに該当)によって樹脂粒子の形状を変化させることが比較的容易にできる点で有利である。
【0037】
-結晶性制御-
樹脂粒子における結晶性樹脂の結晶サイズ及び結晶配向を制御することで、例えば、PBF方式で立体造形物を造形する際には、高温環境下の造形プロセスにおいて粉末層を成膜するリコート処理によるエラーの発生を低減させることができる。
結晶サイズ及び結晶配向を制御する方法としては、例えば、熱処理、延伸処理、超音波処理、外部電場印加処理等の外部刺激を用いる方法;結晶核剤を用いる方法;樹脂を溶媒に溶解し、溶媒をゆっくりと揮発させて結晶性を高める方法などが挙げられる。
【0038】
熱処理としては、例えば、結晶性を高めるために、樹脂組成物をガラス転移温度以上の温度に加熱するアニーリング処理などが挙げられる。
アニーリング処理としては、例えば、結晶核剤が添加されている樹脂組成物をガラス転移温度から50℃高い温度で3日間保温し、その後、室温までゆっくりと冷却する処理などが挙げられる。
【0039】
延伸処理は、樹脂の延伸により樹脂の配向を高め、結晶性を高めるために行われる。延伸された樹脂は、粉砕、裁断などの加工が施され樹脂粒子となる。
延伸処理としては、例えば、押出加工機を用いて、樹脂を融点より30℃以上高い温度にて溶融させ撹拌しながら、溶融物を1倍以上10倍以下程度に延伸して繊維状にする処理などが挙げられる。
延伸処理における最大延伸倍率は、樹脂の溶融粘度などに応じて、適宜設定される。押出加工機を用いる場合、ノズル口の数は、特に限定されないが、多いほど生産性が向上する。
延伸の倍率としては、高ければ高いほど結晶配向性が向上することから、2.0倍以上が好ましく、2.5倍以上が理想的な結晶・配向性を得られやすくなる点でより好ましい。延伸処理後には、アニーリング工程やリラックス工程を入れてもよく加熱時の繊維の変形が起こらないようにしてもよい。
【0040】
また、延伸処理を行う場合には、樹脂粒子の形状は、押出加工機のノズル口の形状により決まる。例えば、円柱体の樹脂粒子を得るためには、ノズル口の形状を円形にすればよく、多角柱体の樹脂粒子の形状を得るためには、ノズル口の形状を多角形にすればよい。
【0041】
超音波処理としては、例えば、グリセリン(試薬グレード、東京化成工業株式会社製)溶媒を樹脂粉末に対して5倍ほど加えた後、樹脂の融点より20℃高い温度まで加熱し、ヒールシャー社製、ultrasonicator UP200Sなどの超音波発生装置にて24kHz、振幅60%での超音波を2時間与える処理などが挙げられる。この場合、超音波を与える処理後、室温にて樹脂粉末をイソプロパノールの溶媒で洗浄して真空乾燥することが好ましい。
【0042】
外部電場印加処理としては、例えば、樹脂粉末をガラス転移温度以上にて加熱した後に600V/cmの交流電場(500Hz)を1時間印加した後にゆっくりと冷却する処理などが挙げられる。
【0043】
結晶層変化についての温度幅(温度窓)、即ち加熱時の溶融開始温度と冷却時の再結晶温度との差としては、3℃よりも大きいほうが造形物の反りを防ぐ点で好ましく、5℃以上大きいほうが高精細な造形物を形成できる点でより好ましい。また、PBF方式でレーザーにより立体造形物を造形する際には、レーザーによる加熱温度よりも高い分解温度を有する樹脂やその他の成分を選択することで、レーザー照射による発煙を抑制することができる。
【0044】
<第2の樹脂粒子>
<<第2の樹脂粒子の形状>>
第2の樹脂粒子の形状としては、円柱体及び多角柱体のいずれかである。第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかでないと、第1の樹脂粒子が融解した状態から凝固する相変換の際に体積が収縮しやすくなるため、造形物や成形物の反りが発生しやすくなる。
【0045】
第2の樹脂粒子の高さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上2mm以下が好ましく、PBF方式で立体造形物を造形する際には、30μm以上500μm以下がPBF方式とのマッチング性の点でより好ましい。第2の樹脂粒子の高さが好ましい範囲であると、造形物や成形物の強度が向上し、かつ造形物や成形物の反りを抑制できる点で有利である。
【0046】
第2の樹脂粒子が円柱体である場合には、第2の樹脂粒子の上面又は底面の円形部分の直径に対する高さの比としては、0.6倍以上250倍以下が好ましく、1倍以上100倍以下が加工性及び反り抑制の点でより好ましい。
また、第2の樹脂粒子が多角柱体である場合には、第2の樹脂粒子の上面又は底面の多角形部分を全て含むような最小の円(最小包含円)の直径に対する高さの比としては、0.6倍以上250倍以下が好ましく、1倍以上100倍以下が加工性及び反り抑制の点でより好ましい。
【0047】
第1の樹脂粒子の高さ(h1)に対する第2の樹脂粒子の高さ(h2)の比(h2/h1)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3以上40以下が好ましい。h2/h1が3以上40以下であると、造形時や成形時に、第1の樹脂粒子よりも融点が高い第2の樹脂粒子のほうが溶融しにくいため、溶融しにくい第2の樹脂粒子の高さ(長さ)により造形物や成形物の反りの発生を抑制できる点で有利である。
【0048】
第2の樹脂粒子の体積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、第1の樹脂粒子の体積以上であることが好ましい。第2の樹脂粒子の体積が第1の樹脂粒子の体積以上であると、造形時や成形時に、第1の樹脂粒子よりも融点が高い第2の樹脂粒子のほうが溶融しにくいため、溶融しにくい第2の樹脂粒子の体積により造形物や成形物の反りの発生を抑制できる点で有利である。
【0049】
<<第2の樹脂粒子の融点>>
第2の樹脂粒子の融点は、第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高くなるように、第2の樹脂粒子の材質を選定する。第2の樹脂粒子の融点が第1の樹脂粒子の融点より15℃未満の高さであると、樹脂が完全に溶融してしまうため、強度保持が困難になる。また、第2の樹脂粒子の融点が第1の樹脂粒子の融点より200℃以上高いと、樹脂が溶融することによる樹脂同士の界面融着の補強効果が得にくくなる。
また、第2の樹脂粒子の融点は、第1の樹脂粒子の融点より30℃以上180℃未満高いことが好ましい。第2の樹脂粒子の融点が好ましい範囲内であると、造形物や成形物の反りの発生を抑制できる点で有利である。
【0050】
第2の樹脂粒子は、示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、更に、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf2としたときに、次式、Tmf1>Tmf2、及び、次式、(Tmf1-Tmf2)≧3℃、を満たすことが好ましい。第2の樹脂粒子が、上記の2つの式を満たすと、溶融開始の制御ができ、少ない添加量で高い強度を実現できる点で有利である。
なお、前記吸熱ピークの融解開始温度は、融点での吸熱が終了した後に、熱量の一定となった所から低温側へx軸に対して平行な直線を引き、前記直線から-15mW下がった時点での温度である。
【0051】
<<第2の樹脂粒子の材質>>
第2の樹脂粒子の材質としては、第2の樹脂粒子の融点が第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高くなるような材質であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の樹脂粒子の材質としては、第1の樹脂粒子と同様に、樹脂成分として熱可塑性樹脂を含み、更に必要に応じて後述するその他の成分を含む樹脂組成物などが挙げられる。
【0052】
[第2の樹脂粒子の製造方法]
第2の樹脂粒子の製造方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1の樹脂粒子の製造方法などが挙げられる。
【0053】
第2の樹脂粒子の含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、樹脂粉末全量に対して、5質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上80質量%以下がより好ましい。第2の樹脂粒子の含有量が5質量%以上であると、造形物や成形物の強度を向上させることができ、かつ造形物や成形物の反りを抑制することできる点で有利である。また、第2の樹脂粒子の含有量が20質量%以上であると、造形物や成形物の強度を向上させ、かつ造形物や成形物の反りを抑制する効果が顕著となる点で有利である。さらに、第2の樹脂粒子の含有量が80質量%以下であると、造形性の悪化を回避できる点で有利である。
【0054】
<その他の成分>
樹脂粉末におけるその他の成分としては、例えば、劣化防止剤、流動化剤、強化剤、難燃剤、可塑剤、結晶核剤等の添加剤や、非結晶性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、その他の成分は、各樹脂粒子に混合して使用しても、各樹脂粒子の表面に被覆して使用してもよい。
【0055】
<<劣化防止剤>>
分子の熱安定性を維持し、架橋又は分解などの樹脂劣化を抑制するために、樹脂粉末は、劣化防止剤を含有してもよい。
劣化防止剤としては、例えば、金属キレート材、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤などが挙げられる。
【0056】
金属キレート材としては、例えば、ヒドラジド系、ホスフェート系、ホスファイト系等の化合物などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系の化合物などが挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、酢酸銅などが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系の化合物などが挙げられる。
【0057】
ヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、例えば、ラジカル捕捉剤等の各種の添加剤などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼンなどが挙げられる。
これらの中でも、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが、高温安定性の点で好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
リン系の酸化防止剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸;ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネイト化合物などのこれらのエステル;第3級ホスフィンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトが、高温安定性の点で好ましい。
【0060】
これらのホスファイト化合物としては、市販品を使用してもよい。
ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトの市販品としては、例えば、アデカスタブPEP-8(登録商標、株式会社ADEKA製)、JPP681S(登録商標、城北化学工業株式会社製)などが挙げられる。
ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの市販品としては、例えば、アデカスタブPEP-24G(登録商標、株式会社ADEKA製)、Alkanox P-24(登録商標、Great Lakes社製)、Ultranox P626(登録商標、GE Specialty Chemicals社製)、Doverphos S-9432(登録商標、Dover Chemical社製)、Irgaofos126、126FF(登録商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)などが挙げられる。
ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの市販品としては、例えば、アデカスタブPEP-36(登録商標、株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
ビス{2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイトの市販品としては、例えば、アデカスタブPEP-45(登録商標、株式会社ADEKA製)、Doverphos S-9228(登録商標、Dover Chemical社製)などが挙げられる。
【0061】
他のホスファイト化合物としては、二価フェノール類と反応し、環状構造を有する化合物などが挙げられる。
二価フェノール類と反応し、環状構造を有する化合物としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
【0062】
ホスフェート化合物としては、例えば、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、オクタデシルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、トリフェニルホスフェート、オクタデシルホスフェート、トリメチルホスフェートが、高温安定性の点で好ましい。
【0063】
ホスホナイト化合物としては、例えば、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトなどが挙げられる。
【0064】
ホスホナイト化合物のうち、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが、ホスファイト化合物と併用可能である点で好ましい。
【0065】
ホスホネイト化合物としては、例えば、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。
【0066】
第3級ホスフィンとしては、例えば、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィンなどが挙げられる。これらの中でも、トリフェニルホスフィンが、高温時の長期安定性の点で好ましい。
【0067】
2種類以上の劣化防止剤を併用する場合には、より顕著な効果が得られる組み合わせも存在する。例えば、劣化防止剤としてヒンダートフェノール及びリン系の酸化防止剤を組み合わせて用いることで、相補的に安定性を向上させる効果があることから、より長期熱安定性がよくなる効果が得られる。
【0068】
劣化防止剤の含有量としては、長時間の劣化を防止する点で、樹脂粉末全量に対して0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下が更に好ましい。2種類以上の劣化防止剤を併用する場合の各劣化防止剤の含有量の好ましい範囲は、上記の範囲と同様である。劣化防止剤の含有量が好ましい範囲内であれば、樹脂の熱劣化を防止する効果が十分に得られ、造形に使用した樹脂粉末をリサイクルしたときの造形物の物性が向上し、樹脂粉末の熱による変色を防止する効果も得られる。
【0069】
<<流動化剤>>
流動化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機材料からなる球状粒子などが挙げられる。
無機材料からなる球状粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm未満であることが好ましい。
流動化剤の含有量としては、粒子表面上に覆うために十分な量であればよく、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂粉末全量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0070】
球状粒子における無機材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化鉄、酸化銅、水和シリカ、シランカップリング剤により表面を変性させたシリカ、ケイ酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、シリカ、チタニア、水和シリカ、及びシランカップリング剤により表面を変性させたシリカが流動性の改良の効果の点で好ましく、シランカップリング剤により表面を疎水性に変性させたシリカがコストの点でより好ましい。
【0071】
<<強化剤>>
強化剤としては、強度向上の点から、無機ファイバーフィラー、ビーズフィラー、国際公開第2008/057844号パンフレットに記載のガラスフィラー、ガラスビーズ、カーボンファイバー、アルミボールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
無機ファイバーフィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンファイバー、無機ガラスファイバー、金属ファイバーなどが挙げられる。
【0073】
ビーズフィラーとしては、特に限定されないが、カーボンビーズ、無機ガラスビーズ、金属ビーズが例示される。
【0074】
無機ファイバーフィラーやビーズフィラーの熱伝導率は、樹脂粉末の熱伝導率よりも高いため、SLS(Selective Laser Sintering)造形において樹脂粉末の表面にレーザーを照射すると、照射部の熱がレーザー照射部外へ拡散する。このため、シャープメルト性を有さない樹脂粉末に対して、ファイバーフィラー又はビーズフィラーを混合すると、レーザー照射部外の樹脂粉末が、熱拡散により加熱され、過剰に溶融することで、造形精度が低くなる。ところが、結晶性熱可塑性樹脂を含有し、シャープメルト性を有する樹脂粉末に対して、ファイバーフィラーやビーズフィラーを混合すると、レーザー照射部外の樹脂粉末が、熱拡散により加熱されたとしても溶融しにくくなるため、高い造形精度を維持することができる。
【0075】
無機ファイバーフィラーの平均繊維径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上30μm以下が好ましい。
無機ファイバーフィラーの平均繊維長さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm以上500μm以下が好ましい。
無機ファイバーフィラーの平均繊維径及び平均繊維長さが好ましい範囲であると、造形物の強度が向上し、かつファイバーフィラーを含まない造形物の表面粗さと同程度とすることができる点で有利である。
【0076】
無機ファイバーフィラーの含有量としては、樹脂粉末全量に対して、5質量%以上60質量%以下が好ましい。無機ファイバーフィラーの含有量が5質量%以上であると造形物の強度が向上し、60質量%以下であると造形性が向上する。
【0077】
ビーズフィラーの円形度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.8以上1.0以下が好ましい。
なお、円形度は、面積(ビーズフィラーを撮像したときのビーズフィラーを示す画素数)をS、周囲長をLとしたときに、次式、円形度=4πS/L2、により求められる。
【0078】
ビーズフィラーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上200μm以下が好ましい。
体積平均粒径は、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて測定することができる。
【0079】
ビーズフィラーの含有量としては、樹脂粉末全量に対して、5質量%以上60質量%以下が好ましい。含有量が5質量%以上であると、造形物の強度が向上し、60質量%以下であると、造形性が向上する。
【0080】
<<難燃剤>>
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系、リン系、無機水和金属化合物系、窒素系、シリコーン系等の各種難燃剤などが挙げられる。建築、車両、又は船舶艤装用などの各種の難燃剤を樹脂粉末に用いてもよい。難燃剤を2種以上併用する場合には、ハロゲン系と無機水和金属化合物系とを組合せることで難燃性能が向上する。
【0081】
また、樹脂粉末は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維状物質;若しくはタルク、マイカ、モンモリロナイト等の無機層状珪酸塩などの無機強化剤を含有してもよい。このような実施形態によると、物性強化と難燃性強化とを両立できる。
【0082】
樹脂粉末の難燃性は、例えば、JIS K6911、JIS L1091(ISO6925)、JIS C3005、発熱性試験(コーンカロリメータ)などにより評価することができる。
【0083】
難燃剤の含有量としては、樹脂粉末全量に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、より難燃性を高める点で、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。難燃剤の含有量が1質量%以上であると、十分な難燃性が得られる。難燃剤の含有量が50質量%以下であると、樹脂粉末の溶融固化特性が変化することが抑制され、造形精度の低下や造形物の物性劣化を防止できる。
【0084】
<<樹脂粉末の諸特性>>
樹脂粉末の比重としては、0.8g/mL以上であることが好ましい。樹脂粉末の比重が0.8g/mL以上であると、造形時に粉末層を成膜するリコート処理において、粒子の2次凝集を抑止することができる。一方、金属代替などの用途では、軽量化のニーズから、樹脂粉末の比重としては、3.0g/mL以下であることが好ましい。
樹脂粉末の比重は、真比重の測定により得られる。真比重は、例えば、気相置換法を用いた乾式自動密度計(アキュピック1330、株式会社島津製作所製)を用いて一定温度で気体(Heガス)の体積と圧力を変化させて、サンプルの体積を求め、及びこのサンプルの質量を計測し、密度を算出することで得られる。
【0085】
樹脂粉末の50%累積体積粒径としては、5μm以上200μm以下が好ましく、寸法安定性の点で5μm以上50μm以下がより好ましい。また、樹脂粉末の体積平均粒径(Mv)を個数平均粒径(Mn)で除した比(Mv/Mn)は、造形精度向上の点で、2.00以下が好ましく、1.50以下がより好ましく、1.20以下が更に好ましい。なお、50%累積体積粒径及びMv/Mnは、例えば、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて測定することができる。
【0086】
樹脂粉末は、造形に影響を及ぼさない程度に乾燥していることが好ましい。このため、真空乾燥機やシリカゲルにより乾燥させた樹脂粒子を用いて造形してもよい。
【0087】
<用途>
本実施形態の樹脂粉末は、粒度、粒度分布、熱移動特性、溶融粘度、嵩密度、流動性、溶融温度、及び再結晶温度のようなパラメータについて適切なバランスを有し、SLS方式、SMS(Selective Mask Sintering)方式、MJF(Multi Jet Fusion)方式、又はBJ(Binder Jetting)法などの樹脂粉末を用いた各種立体造形方法において好適に利用される。本実施形態の樹脂粉末は、表面収縮剤、スペーサー、滑剤、塗料、砥石、添加剤、二次電池セパレーター、食品、化粧品、衣服等において好適に利用される。このほか、自動車、精密機器、半導体、航空宇宙、医療等の分野において用いられる材料や金属代替材料として用いてもよい。
【0088】
本実施形態の樹脂粉末を用いて、レーザー焼結により形成される立体造形物は、反りが少ない。また、レーザー焼結以外にもフィルム加工時に有機繊維を添加してもよく、一般的なフィルムを作るのが難しいものでも、反りを抑制することができる。
【0089】
本実施形態の樹脂粉末は、優れた長期リサイクル性を有する。本実施形態の新品の樹脂粉末、及びリサイクル粉末を用いて、PBF方式、MJF方式などで造形することで、(a)オレンジピール性、又は(b)リサイクルによる機械性能における顕著な低下(引張強度の30%以上の低下)のいずれも示さない造形物や成形物が得られる。
【0090】
リサイクル粉末は、例えば、PBF方式の造形装置(株式会社リコー製、AM S5500P)を用いて50時間、造形したときに、造形に用いられなかった樹脂粉末である。このリサイクル粉末に対し新品の樹脂粉末を30質量%足して、さらに50時間の造形を更に2回繰り返しても、上記の(a)(b)の低下のいずれも示さない立体物が得られる。なお、(a)、(b)の評価は、樹脂粉末により形成されるISO(国際標準化機構)3167 Type1A 150mm長さ多目的犬骨様試験標本を用いて実施することできる。
【0091】
<立体造形装置>
図3を用いて、樹脂粉末を用いて造形する立体造形装置について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る立体造形装置を示す概略図である。
【0092】
図3に示すように、造形装置1は、造形用の樹脂粉末Pを収容する収容手段の一例としての供給槽11、供給槽11に収容されている樹脂粉末Pを供給するローラ12、ローラ12によって供給された樹脂粉末Pが配され、レーザーLが走査されるレーザー走査スペース13、電磁線としてのレーザーLの照射源である電磁照射源18、及び電磁照射源18によって照射されたレーザーLをレーザー走査スペース13の所定位置へ反射させる反射鏡19を有する。また、造形装置1は、供給槽11、及びレーザー走査スペース13に収容される樹脂粉末Pをそれぞれ加熱するヒータ11H,13Hを有する。
【0093】
電磁照射源18としては、特に限定されないが、CO2レーザー、赤外照射源、マイクロウエーブ発生器、放射加熱器、LEDランプ、又はこれらの組合せなどが例示される。
反射鏡19の反射面は、電磁照射源18がレーザーLを照射している間、3D(three-dimensional)モデルの2次元データに基づいて、移動する。3Dモデルの2次元データは、3Dモデルを所定間隔でスライスしたときの各断面形状を示す。これにより、レーザーLの反射角度が変わることで、レーザー走査スペース13のうち、2次元データによって示される部分に、選択的にレーザーLが照射される。レーザーL照射位置の樹脂粉末は、溶融し、焼結して層を形成する。すなわち、電磁照射源18は、樹脂粉末Pから造形物の各層を形成する層形成手段として機能する。
【0094】
また、造形装置1の供給槽11、及びレーザー走査スペース13には、ピストン11P,13Pが設けられている。ピストン11P,13Pは、層の造形が完了すると、供給槽11及びレーザー走査スペース13を造形物の積層方向に対し、上方向又は下方向に移動させる。これにより、供給槽11からレーザー走査スペース13へ、新たな層の造形に用いられる新たな樹脂粉末Pを供給することが可能になる。
【0095】
造形装置1は、反射鏡19によってレーザーの照射位置を変えることにより、樹脂粉末Pを選択的に溶融させるが、本発明はこのような実施形態に限定されない。本発明の樹脂粉末は、選択的マスク焼結方式の造形装置においても好適に用いられる。SMS方式では、例えば、樹脂粉末の一部を遮蔽マスクによりマスクし、電磁線が照射され、マスクされていない部分に赤外線などの電磁線を照射し、選択的に樹脂粉末を溶融することにより造形する。SMSプロセスを用いる場合、樹脂粉末Pは、赤外吸収特性を増強させる熱吸収剤、又は暗色物質などを1種以上含有することが好ましい。熱吸収剤又は暗色物質としては、カーボンファイバー、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びセルロースナノファイバーなどが例示される。SMSプロセスについては、例えば、米国特許第6,531,086号明細書に記載されているものを好適に用いることができる。
【0096】
【0097】
供給槽11に収容された樹脂粉末Pは、ヒータ11Hによって加熱される。供給槽5の温度としては、樹脂粉末Pをレーザー照射により溶融するとき反りを抑制する点では、樹脂粉末Pの融点以下のなるべく高い温度が好ましいが、供給槽11での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より10℃以上低いことが好ましい。
図4Aに示すように、造形装置1のエンジンは、供給工程の一例として、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。レーザー走査スペース13へ供給された樹脂粉末Pは、ヒータ13Hによって加熱される。レーザー走査スペース13の温度としては、樹脂粉末Pをレーザー照射により溶融するときに反りを抑制する点では、なるべく高い方が好ましいが、レーザー走査スペース13での樹脂粉末Pの溶融を防ぐ点では、樹脂粉末Pの融点より5℃以上低温であることが好ましい。
【0098】
造形装置1のエンジンは、3Dモデルから生成される複数の二次元データの入力を受け付ける。
図4Bに示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。レーザーの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、10ワット以上150ワット以下が好ましい。レーザーの照射により、粉末層のうち、最も底面側の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側の二次元データが示す形状の焼結層が形成される(層形成工程の一例)。
【0099】
焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。また、焼結層の厚みTとしては、特に限定されないが、平均値として、200μm未満が好ましく、150μm未満がより好ましく、120μm未満が更に好ましい。
【0100】
図5Aに示すように、最も底面側の焼結層が形成されると、造形装置1のエンジンは、レーザー走査スペース13に1層分の厚さTの造形スペースが形成されるように、ピストン13Pによりレーザー走査スペース13を1層分の厚さT分降下させる。また、造形装置1のエンジンは、新たな樹脂粉末Pを供給可能とするため、ピストン11Pを上昇させる。続いて、
図5Aに示すように、造形装置1のエンジンは、ローラ12を駆動して、供給槽5の樹脂粉末Pをレーザー走査スペース13へ供給して整地することで、1層分の厚さTの粉末層を形成する。
【0101】
図5Bに示すように、造形装置1のエンジンは、複数の二次元データのうち最も底面側から2層目の二次元データに基づいて、反射鏡19の反射面を移動させつつ、電磁照射源18にレーザーを照射させる。これにより、粉末層のうち、最も底面側から2層目の二次元データによって示される画素に対応する位置の樹脂粉末Pが溶融する。レーザーの照射が完了すると、溶融した樹脂は硬化して、最も底面側から2層目の二次元データが示す形状の焼結層が、最も底面側の焼結層に積層された状態で形成される。
【0102】
造形装置1は、供給工程と、層形成工程と、を繰り返すことで、焼結層を積層させる。複数の二次元データのすべてに基づく造形が完了すると、3Dモデルと同形状の立体物が得られる。
【0103】
<立体造形物>
樹脂粉末によって造形される立体造形物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子機器パーツや自動車部品のプロトタイプ、強度試験用の試作品、エアロスペース、又は自動車産業のドレスアップツールなどに使われる少量製品などが挙げられる。PBF方式については、FFF(Fused Filament Fabrication)方式やインクジェット方式などの他の方式と比較し、強度が優れることが期待されるため、実用の製品としても使用に耐える。
生産スピードは、射出成型のような大量に生産するのにはかなわないが、例えば、小さい部品を平面状に大量に作ることにより必要な生産量を得ることができる。また、本発明に用いられるPBF方式における立体造形物の製造方法は、射出成型のような金型を必要としないため、試作及びプロトタイプの作製においては、圧倒的なコスト削減と納期削減を達成することができる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0105】
(実施例1)
ポリプロピレン(PP)樹脂(商品名:プライムポリプロJ707G、株式会社プライムポリマー製、融点:160℃)99.8質量部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:AO-330、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、株式会社ADEKA製)を0.2質量部添加して一軸押出し機(装置名:D2020、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、一軸押出し機のノズル口を円形として延伸3倍で巻き取り、直径50μmの樹脂繊維を形成した。その後、形成した樹脂繊維を、自動切断機(装置名:NZI-0606、株式会社荻野精機製作所製)を用いて50μm以上60μm以下の高さの円柱体になるように切断して樹脂粒子を得た。
【0106】
次に、得られた樹脂粒子の表面を機械摩擦により溶融させるため、Qミキサー(メカノハイブリッド[MH型]、日本コークス工業株式会社製)を用いて、得られた樹脂粒子を、回転数1,000rpmで20分間処理して第1の樹脂粒子を得た。
【0107】
さらに、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂(商品名:150G、Victrex社製)99.8質量部に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:AO-330、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、株式会社ADEKA製)を0.2質量部添加して、第1の樹脂粒子と同様に、一軸押出し機(装置名:D2020、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、一軸押出し機のノズル口を円形として延伸3倍で巻き取り、直径50μmの樹脂繊維を形成した。その後、形成した樹脂繊維を、自動切断機(装置名:NZI-0606、株式会社荻野精機製作所製)を用いて150μm以上160μm以下の高さの円柱体になるように切断して樹脂粒子を得た。
次に、得られた樹脂粒子の表面を機械摩擦により溶融させるため、Qミキサー(メカノハイブリッド[MH型]、日本コークス工業株式会社製)を用いて、得られた樹脂粒子を、回転数1,000rpmで20分間処理して第2の樹脂粒子を得た。
【0108】
第2の樹脂粒子が30質量%の割合になるように、第1の樹脂粒子に第2の樹脂粒子を容器傾斜回転式混合かくはん機(装置名:まぜまぜマン、有限会社ミスギ製)に投入し、5分間攪拌して実施例1の樹脂粉末1を得た。
【0109】
<各樹脂粒子の融点及び融点差の算出>
得られた第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子に対して、ISO3146に準拠して、示差走査量測定装置(DSC-60A、株式会社島津製作所製)を用いて、融点を測定した。具体的には、昇温温度勾配を10℃/minとして樹脂粒子のDSC測定を行い、得られた吸熱ピークの頂点の温度あるいは融点ピークの頂点の温度を融点とした。なお、樹脂粒子に複数の融点が存在する場合には、高温側の融点とした。また、第2の樹脂粒子の融点から第1の樹脂粒子の融点を差し引いた融点差を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0110】
<各樹脂粒子の形状及び長さ>
得られた第1の樹脂粒子及び第2の樹脂粒子に対して、走査電子顕微鏡(装置名:JSM-7800FPRIME、日本電子株式会社製)により形状を観察し、上面又は底面の直径を測定した。結果を表1及び表2に示す。
なお、50%累積体積粒径は、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、microtrac MT3300EXII)を用いて測定すると60μmであった。
【0111】
<造形物の反り>
得られた樹脂粉末1を用いて、PBF方式で造形した造形物の反りを測定した。
具体的には、造形物としては、ISO(国際標準化機構)3167 Type1Aで規定されている長さ150mmの多目的犬骨様試験標本(標本は、長さ80mm、厚さ4mm、幅10mmの中心部分を有する)とした。造形物の造形方法としては、まず、
図3に示したSLS方式造形装置1(AM S5500P、株式会社リコー製)の供給槽11中に10kgの樹脂粉末1を充填した。次に、レーザー走査スペース13の中心部に、Y軸方向(
図3におけるローラ12の回転軸と平行方向)に試験標本の長辺が向くように、造形層を20層積層させて5個の試験標本を造形した。なお、造形時には、隣り合う試験標本の間隔を5mm空けるようにした。
造形した試験標本の反りは、試験標本の面積が大きい面を平坦な机の上に置き、試験標本の両端を抑えて試験標本の中心部が机の表面から浮いた高さをノギスにより測定した。これを試験標本5個について行い、得られた測定値の平均値を造形物の反りの値とし、以下の基準で評価した。結果を表1及び表2に示す。
[評価基準]
○:造形物(試験標本)の反りの値が1.0mm未満
△:造形物(試験標本)の反りの値が1.0mm以上1.5mm未満
×:造形物(試験標本)の反りの値が1.5mm以上
【0112】
(実施例2)
実施例1において、第2の樹脂粒子に用いたPEEK樹脂(融点:334℃)を液晶ポリマー(LCP)樹脂(商品名:トワロン、ポリプラスチック社製、融点:260℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の各樹脂粒子及び樹脂粉末2を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0113】
(実施例3)
実施例1において、第2の樹脂粒子に用いたPEEK樹脂(融点:334℃)をポリアミド9T(PA9T)樹脂(商品名:ジェネスタ(登録商標)N1000A、株式会社クラレ製、融点:300℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の各樹脂粒子及び樹脂粉末3を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0114】
(実施例4)
実施例3において、第1の樹脂粒子に用いたPP樹脂(融点:160℃)をポリアミド66(PA66)樹脂(商品名:レオナ(登録商標)1300S、旭化成株式会社製、融点:265℃)に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例4の各樹脂粒子及び樹脂粉末4を製造し、実施例3と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0115】
(実施例5)
実施例1において、第1の樹脂粒子に用いたPP樹脂(融点:160℃)をポリアセタール(POM)樹脂(商品名:NW02、東レプラスチック精工株式会社製、融点:175℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の各樹脂粒子及び樹脂粉末5を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0116】
(実施例6)
実施例3において、第1の樹脂粒子に用いたPP樹脂(融点:160℃)をポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂(商品名:ノバデュラン(登録商標)5020グレード、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、融点:224℃)に変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例6の各樹脂粒子及び樹脂粉末6を製造し、実施例3と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0117】
(実施例7)
実施例1において、第1の樹脂粒子に用いたPP樹脂(融点:160℃)をポリアミド9T(PA9T)樹脂(商品名:ジェネスタ(登録商標)N1000A、株式会社クラレ製、融点:304℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の各樹脂粒子及び樹脂粉末7を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0118】
(実施例8)
実施例1において、第1の樹脂粒子に用いたPP樹脂(融点:160℃)をポリエチレン(PE)樹脂(商品名:ハイゼックス2200J、日本ポリエチレン株式会社製、融点:134℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の各樹脂粒子及び樹脂粉末8を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0119】
(実施例9)
実施例1において、第2の樹脂粒子の含有量を30質量%から3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の各樹脂粒子及び樹脂粉末9を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0120】
(実施例10)
実施例1において、第2の樹脂粒子の含有量を30質量%から5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の各樹脂粒子及び樹脂粉末10を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0121】
(実施例11)
実施例1において、一軸押出し機の円形のノズル口を、1辺の長さが50μmの正方形のノズル口に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の各樹脂粒子及び樹脂粉末11を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、これにより、第2の樹脂粒子の形状は四角柱状になる。
【0122】
(実施例12)
実施例1において、第2の樹脂粒子の含有量を30質量%から60質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例12の各樹脂粒子及び樹脂粉末12を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0123】
(実施例13)
実施例1において、第2の樹脂粒子の円形部分の直径を50μmから10μmに変更し、かつ第2の樹脂粒子の高さを150μmから2,000μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例13の各樹脂粒子及び樹脂粉末13を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0124】
(実施例14)
実施例6において、第1の樹脂粒子のPBT樹脂を、低温粉砕システム(装置名:リンレックスミル(登録商標)LX1、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて液体窒素中で5μm以上200μm以下の幅になるように-200℃にて凍結粉砕し、25μm篩で微粉を、さらに85μm篩で粗粉を除くことにより、第1の樹脂粒子の形状を円柱体から直径50μmの球体に変更した以外は、実施例6と同様にして、実施例14の各樹脂粒子及び樹脂粉末14を製造し、実施例6と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、球体とした第1の樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法による濃厚系アナライザー(装置名:FPAR-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ50μmであった。また、平均粒径は、メジアン径(D50)ともいう。
【0125】
(比較例1)
実施例1において、第2の樹脂粒子に用いたPEEK樹脂(融点:334℃)をポリアセタール(POM)樹脂(商品名:NW02、東レプラスチック精工株式会社製、融点:175℃)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の各樹脂粒子及び樹脂粉末13を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0126】
(比較例2)
実施例6において、第2の樹脂粒子のPA9T樹脂を、低温粉砕システム(装置名:リンレックスミル(登録商標)LX1、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて液体窒素中で5μm以上200μm以下の幅になるように-200℃にて凍結粉砕し、25μm篩で微粉を、さらに85μm篩で粗粉を除くことにより、第2の樹脂粒子の形状を円柱体から直径50μmの球体に変更した以外は、実施例6と同様にして、比較例2の各樹脂粒子及び樹脂粉末14を製造し、実施例6と同様に評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお、球体とした第2の樹脂粒子の平均粒径(D50)は、動的光散乱法による濃厚系アナライザー(装置名:FPAR-1000、大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ50μmであった。
【0127】
【0128】
【0129】
表1及び表2の結果から、実施例1~14においては造形物の反りが少なく良好な結果であった。このことより、第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかであり、第2の樹脂粒子の融点が第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高い場合には、本発明の樹脂粉末を造形物や成形物の原料として用いると、造形物や成形物の反りの発生を抑制できることが分かった。
【0130】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 第1の樹脂粒子と、第2の樹脂粒子と、を少なくとも含有し、
前記第2の樹脂粒子の形状が円柱体及び多角柱体のいずれかであり、
前記第2の樹脂粒子の融点が、前記第1の樹脂粒子の融点より15℃以上200℃未満高いことを特徴とする樹脂粉末である。
<2> 前記第2の樹脂粒子の体積が、前記第1の樹脂粒子の体積以上である前記<1>に記載の樹脂粉末である。
<3> 前記第2の樹脂粒子の融点が、前記第1の樹脂粒子の融点より30℃以上180℃未満高い前記<1>から<2>のいずれかに記載の樹脂粉末である。
<4> 前記第2の樹脂粒子が、示差走査熱量測定において、ISO 3146に準拠して、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf1とし、その後、10℃/minにて、-30℃以下まで降温し、更に、10℃/minにて、融点より30℃高い温度まで昇温したときの吸熱ピークの融解開始温度をTmf2としたときに、次式、Tmf1>Tmf2、及び、次式、(Tmf1-Tmf2)≧3℃を満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載の樹脂粉末である。
<5> 前記第2の樹脂粒子の含有量が、前記樹脂粉末全量に対して、5質量%以上80質量%以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の樹脂粉末である。
<6> 前記第2の樹脂粒子の高さが、前記第1の樹脂粒子の高さの3倍以上40倍以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の樹脂粉末である。
<7> 樹脂粒子の硬化層を積層して、造形物を造形する造形装置であって、
前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、
前記供給槽に貯蔵された前記樹脂粉末を供給する供給手段と、
前記樹脂粒子を含む層を形成する層形成手段と、
前記層を硬化する硬化手段と、
を有することを特徴とする造形装置である。
<8> 樹脂粒子の硬化層を積層して、造形物を造形する造形方法であって、
前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、
前記層を硬化する硬化工程と、を繰り返すことを特徴とする造形方法である。
【0131】
前記<1>から<6>のいずれかに記載の樹脂粉末、前記<7>に記載の造形装置、及びに前記<8>に記載の造形方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0132】
【符号の説明】
【0133】
1 造形装置
11 供給槽
11H ヒータ
11P ピストン
12 ローラ
13 レーザー走査スペース
13H ヒータ
13P ピストン
18 電磁照射源
19 反射鏡