(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光電変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20221109BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20221109BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221109BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20221109BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221109BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01G9/20 303C
H01L31/04 560
H01G9/20 303B
B05D7/00 H
B05D1/26 Z
B05D7/24 301N
B05D3/00 D
(21)【出願番号】P 2018219533
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】北川 祐也
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-165064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
H01L 31/048
B05D 7/00
B05D 1/26
B05D 7/24
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて配列された複数の光電変換素子を備える第1基板に、前記光電変換素子の周囲を取囲むようにディスペンサでシール材を塗布することでシールパターンを描画するシール材塗布工程と、
前記シール材塗布工程後の前記第1基板に、前記光電変換素子及び前記シール材を挟むように第2基板を重ね合わせ、シール材を硬化することにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合工程と、を含む光電変換装置の製造方法であって、
前記シール材塗布工程は、
前記シールパターンが前記光電変換素子の周囲をそれぞれ取囲む多角形の閉ループ部を形成し、
該閉ループ部の全ての角部が、前記シールパターンにおける2本の直線部が交差することにより形成されることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項2】
隣接する前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する、請求項1に記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
前記シール材塗布工程は、前記シールパターンの始点及び終点が、前記閉ループ部の外側に位置するように該シールパターンを描画する、請求項1又は2に記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
前記シールパターンは、直線部と屈曲部とで構成され、
前記シール材塗布工程は、前記屈曲部が、前記閉ループ部の外側に位置するように該シールパターンを描画する、請求項1~3の何れか一項に記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1基板には、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の光電変換素子が配列されており、
前記シール材塗布工程の前記閉ループ部が矩形となっており、
横方向に配列される全ての前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する、請求項1~4の何れか一項に記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1基板には、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の光電変換素子が配列されており、
前記シール材塗布工程の前記閉ループ部が矩形となっており、
縦方向に配列される全ての前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する、請求項1~5の何れか一項に記載の光電変換装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機系(薄膜)太陽電池などの光電変換装置の製造方法としては、例えば、第1の基板上に配列された複数の矩形の光電変換素子の周囲を取囲むようにシール材を塗布して閉ループ状のシールパターンを形成し、さらに第2の基板でこれらを挟み込んで電解液を閉ループ部の内側に封入する工程を含むものが知られている。
【0003】
特許文献1には、2枚の基板の間に、配列された複数の矩形の表示領域と、表示領域の周囲を取囲むシールを備える平面表示装置の製造方法が記載されている。当該製造方法は、間隔をおいて配列された複数の矩形の表示領域(セル)の列が1行以上設けられた第1の基板を使用し、表示領域を囲む閉ループ状のパターンをもつシールを塗布する工程と、該第1の基板に、第2の基板を重ね合わせた後、該シールを硬化して接合を行う工程とを含むものであり、隣接する2つの表示領域を囲むそれぞれの矩形の閉ループパターンが、当該2つの表示領域の間で部分的に重なり合う重複領域を有するようにしている。このような方法により、シール材を塗布する際に、できるだけ表示領域に近づけてシールを形成し、狭額縁化を図っている。
【0004】
また、特許文献2には、一方の基板上にディスペンサによりシール材を閉ループ状に塗布する工程と、閉ループ内に液晶材料を滴下する工程と、一方の基板のシール材が形成された面側に他方の基板を対向させて重ね合せる工程と、を有する液晶表示素子の製造方法が開示されている。この方法においては、閉ループ状のシールパターンに二度描画する部分を設け、ディスペンサと基板とのギャップ、塗布速度、及び塗布圧の少なくとも何れかを調整することにより、二度描画する部分でのシール材の合計の塗布量を他の描画部分でのシール材の塗布量と同じにするようにしている。当該方法により、描画し始め兼描画し終わりの箇所でのシール切れやループ内へのシール糸曳きの発生を抑制し、表示不良の発生を防止している。
【0005】
特許文献3には、互いに対向する一対の電極と、一対の電極間に配置される電解質と、電解質の周囲に設けられる封止部とを備え、封止部が少なくとも1つの角部を有しており、角部における一対の電極の少なくとも一方との第1接触面は、湾曲している湾曲線を電解質側に含有する第1湾曲線含有面を有し、湾曲線が、最小の曲率半径が0.3mmより大きく500mm以下となるように構成した光電変換素子が開示されている。このような構成により、封止部の角部と作用極又は対極との接触面における応力集中を避けて、クラックの発生、及び電解質の漏洩を防止している。
【0006】
特許文献4には、第一電極と第二電極とが光硬化性樹脂材料からなる隔壁を用いて貼り合わされた色素増感太陽電池であって、第一電極は第一集電配線を備え、該第一集電配線は第一被覆層で被覆されており、第一被覆層は、該第一被覆層周辺部に第一段差下部、該第一被覆層中央部に第一段差上部を有する段差を有しており、第一被覆層の第一段差上部は、第二電極と接しており、隔壁は少なくとも、第一段差下部と第二電極との間に形成されているとともに、両電極の周縁部をも封止するように形成されている色素増感太陽電池が開示されている。この色素増感太陽電池は、集電配線の保護と電極間の接着のために、光硬化性樹脂を使用し、集電配線の電解液に対する高い耐腐食性と、セルの高い封止能を有するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5744767号公報
【文献】特許第4082910号公報
【文献】特許第5684916号公報
【文献】特許第5397585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法においては、各表示領域をそれぞれ取囲む矩形のシールの角部をディスペンサで連続的に描画(シール材を塗布)するため、当該角部は直角にならず、丸みを帯びた湾曲形状となり易い。また、隣接する2つの表示領域の間には重複領域を配置するための間隔が必要となるため、狭額縁化の観点では改善の余地がある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の方法においても、閉ループ状のシールの角部は、ディスペンサにより連続的に描画されるため、角部が湾曲し易く、また、二度描画する部分のシール材の線幅の調整のために、複雑なディスペンス量の制御が必要となる。
【0010】
また、上記特許文献3には、スクリーン印刷により封止部(シール)を形成する方法が開示されているものの、スクリーン印刷は使用できるペーストの制約があるため好ましくない。また、ディスペンサにより封止部を形成する場合、角部に曲率をつけようとすると、製造に時間がかかるだけでなく、ディスペンサの複雑な加減速制御が必要となり、装置に負荷が掛かるため装置の剛性を高くする必要がある。
【0011】
また、上記特許文献4に記載の色素増感太陽電池は、応力が集中し易い角部が、面ではなく点で構成されているため、応力集中によりクラックが生じ易くなる虞がある。
【0012】
それゆえ本発明は、基板上に配列された光電変換素子の外形に近接する位置に、閉ループ状のシールを形成する為のシール材を塗布するディスペンサ制御が容易な、光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明における光電変換装置の製造方法は、
間隔をおいて配列された複数の光電変換素子を備える第1基板に、前記光電変換素子の周囲を取囲むようにディスペンサでシール材を塗布することでシールパターンを描画するシール材塗布工程と、
前記シール材塗布工程後の前記第1基板に、前記光電変換素子及び前記シール材を挟むように第2基板を重ね合わせ、シール材を硬化することにより、前記第1基板と前記第2基板とを接合する基板接合工程と、を含む光電変換装置の製造方法であって、
前記シール材塗布工程は、
前記シールパターンが前記光電変換素子の周囲をそれぞれ取囲む多角形の閉ループ部を形成し、
該閉ループ部の全ての角部が、前記シールパターンにおける2本の直線部が交差することにより形成されることを特徴とするものである。
【0014】
なお、本発明の光電変換装置の製造方法にあっては、隣接する前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画することが好ましい。
【0015】
また、本発明の光電変換装置の製造方法にあっては、前記シール材塗布工程は、前記シールパターンの始点及び終点が、前記閉ループ部の外側に位置するように該シールパターンを描画することが好ましい。
【0016】
また、本発明の光電変換装置の製造方法にあっては、前記シールパターンは、直線部と屈曲部とで構成され、
前記シール材塗布工程は、前記屈曲部が、前記閉ループ部の外側に位置するように該シールパターンを描画することが好ましい。
【0017】
また、本発明の光電変換装置の製造方法にあっては、
前記第1基板には、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の光電変換素子が配列されており、
前記シール材塗布工程の前記閉ループ部が矩形となっており、
横方向に配列される全ての前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画することが好ましい。
【0018】
また、本発明の光電変換装置の製造方法にあっては、
前記第1基板には、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の光電変換素子が配列されており、
前記シール材塗布工程の前記閉ループ部が矩形となっており、
縦方向に配列される全ての前記閉ループ部における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板上に配列された光電変換素子の外形に近接する位置に、閉ループ状のシールを形成する為のシール材を塗布するディスペンサ制御が容易な、光電変換装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態において、光電変換素子が配列された基板上に形成されるシールパターンを示す平面図である。
【
図2】光電変換素子が配列された基板上に形成されるシールパターンの変形例を示す図である。
【
図3】光電変換素子が配列された基板上に形成されるシールパターンの他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、間隔をおいて配列された複数の矩形の光電変換素子11~18を備える第1基板10上に、ディスペンサから吐出されるシール材(シール剤)を塗布することによって形成されるシールパターンP1の描画経路を示した平面図である。
【0022】
シール材としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性放射線(光、電子線)硬化性樹脂がある。素材としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等がある。取扱い性に優れるという観点から、光硬化性アクリル系樹脂を使用することができるが、これに限定されない。
【0023】
第1基板10は、例えば、厚さが50μm以上、1000μm以下の矩形の樹脂フィルムと、当該樹脂フィルムに積層配置された厚さが50nm以上、1000nm以下の矩形の透明導電膜とで構成されたものとすることができるが、これに限定されず、第1基板10の形状、厚さ、及び材質等は適宜変更可能である。
【0024】
光電変換素子11~18(セル)は、電解質、半導体膜等を有するものとすることができるが、これに限定されない。
【0025】
第1基板10の一方の面には、2行、4列の合計8個の光電変換素子11~18が配列されている。より具体的に、
図1における上方には、第1光電変換素子11、第2光電変換素子12、第3光電変換素子13、第4光電変換素子14が横方向に等間隔で配置され、その下方には、第5光電変換素子15、第6光電変換素子16、第7光電変換素子17、第8光電変換素子18が横方向に等間隔で配置されている。
【0026】
また、第1光電変換素子11と第5光電変換素子15とは縦方向に間隔をあけて配列されている。同様に、第2光電変換素子12と第6光電変換素子16とが縦方向に間隔をあけて配列され、第3光電変換素子13と第7光電変換素子17とが縦方向に間隔をあけて配列され、第4光電変換素子14と第8光電変換素子18とが縦方向に間隔をあけて配列されている。
【0027】
図1に示すように、本例のディスペンサによるシールパターンP1は、始点Sから終点Eまで連続する一筆書き状に構成されている。なお、シールパターンP1の始点Sと終点Eとは相互に異なる位置に配置されており、また、始点Sと終点Eは、各光電変換素子11~18の周囲をそれぞれ取囲む第1閉ループ部R1~第8閉ループ部R8の閉ループ部の外側に配置されている。また、シールパターンP1の始点S及び終点Eは、第1基板10の外側に配置されている。
【0028】
シールパターンP1の描画経路は、始点Sから順に、第1直線部L1~第23直線部L23まで直線部と、各直線部から次の直線部に向けて方向が変化する部分(曲がる部分)に位置する第1屈曲部B1~第22屈曲部B22までの屈曲部とで構成されている。なお、各屈曲部B1~B22は、必ずしも直角に屈曲する必要はなく、湾曲していてもよい。第1屈曲部B1~第22屈曲部B22は、各閉ループ部(第1閉ループ部R1~第8閉ループ部R8)の内側には配置されず、各閉ループ部の外側に配置されている。なお、本例において、第17屈曲部B17~第22屈曲部B22は、第1基板10の外側に配置されている。
【0029】
シールパターンP1は、光電変換素子11~18の周囲をそれぞれ隙間なく取囲む矩形の第1閉ループ部R1~第8閉ループ部R8を有する。具体的に、例えば第1閉ループ部R1は、第1光電変換素子11の周囲を隙間なく取り囲んでいる。
【0030】
第1閉ループ部R1は、シールパターンP1の第2直線部L2、第21直線部L21、第4直線部L4、及び第19直線部L19により形成されている。また、第1閉ループ部R1は、第1角部C1~第4角部C4を有する。第1角部C1は、直交する第4直線部L4と第19直線部L19との交点に形成され、第2角部C2は、直交する第19直線部L19と第2直線部L2との交点に形成され、第3角部C3は、直交する第2直線部L2と第21直線部L21との交点に形成され、第4角部C4は、直交する第21直線部L21と第4直線部L4との交点に形成される。このように、第1閉ループ部R1における4つの角部(第1角部C1~第4角部C4)は全て、直交する2本の直線部(L4、L19、L2、L21)が交差することにより形成されており、ディスペンス時にシール材を曲げて形成する屈曲部(第1屈曲部B1~第22屈曲部B22)で構成されていない。
【0031】
第1閉ループ部R1と同様に、他の閉ループ部(第2閉ループ部R2~第8閉ループ部R8)も、すべてシールパターンP1の直線部のみで取囲むように形成されており、各閉ループ部における4つの角部は全て、直交する2本の直線部が交差することにより形成されている。第2閉ループ部R2は、第5角部C5~第8角部C8を有し、第3閉ループ部R3は、第9角部C9~第12角部C12を有し、第4閉ループ部R4は、第13角部C13~第16角部C16を有し、第5閉ループ部R5は、第17角部C17~第20角部C20を有し、第6閉ループ部R6は、第21角部C21~第24角部C24を有し、第7閉ループ部R7は、第25角部C25~第28角部C28を有し、第8閉ループ部R8は、第29角部C29~第32角部C32を有する。なお、第1閉ループ部R1~第8閉ループ部R8における全ての角部C1~C32のうちの一部が、2本の直線部が交差することにより形成されていればよい。
【0032】
また、横方向に隣接する第1閉ループ部R1、第2閉ループ部R2、第3閉ループ部R3、及び第4閉ループ部R4の全ての下辺(下側に位置する辺)は、同一の連続した直線部である第21直線部L21で構成されている。また、第1閉ループ部R1、第2閉ループ部R2、第3閉ループ部R3、及び第4閉ループ部R4の全ての上辺(上側に位置する辺)は、同一の連続した直線部である第19直線部L19で構成されている。同様に、横方向に隣接する第5閉ループ部R5~第8閉ループ部R8の全ての下辺は、同一の連続した直線部である第23直線部L23で構成され、全ての上辺は、同一の連続した直線部である第21直線部L21で構成されている。
【0033】
また、縦方向に隣接する第1閉ループ部R1及び第5閉ループ部R5の左側に位置する辺は、同一の連続した直線部である第4直線部L4で構成されている。同様に、第1閉ループ部R1及び第5閉ループ部R5の右側に位置する辺は、同一の連続した直線部である第2直線部L2で構成されている。
【0034】
本実施形態における光電変換装置の製造方法は、上記光電変換素子11~18を備える第1基板10に、ディスペンサでシール材を塗布することでシールパターンP1を描画するシール材塗布工程と、シール材塗布工程後の第1基板10に、光電変換素子11~18及びシール材(シールパターンP1)を挟むように第2基板を重ね合わせ、シール材を硬化することにより、第1基板10と前記第2基板とを接合する基板接合工程と、を含むものである。また、シール材塗布工程は、シールパターンP1が光電変換素子11~18の周囲をそれぞれ取囲む矩形の閉ループ部R1~R8を形成し、各閉ループ部R1~R8が、シールパターンP1における2本の直線部L1~L23が交差することにより形成される角部C1~C32を有し、隣接する閉ループ部R1~R8における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する工程を含む。
【0035】
本実施形態における光電変換装置の製造方法にあっては、閉ループ部R1~R8の角部C1~C32を、直線部L1~L23の交差により形成したことで、シールパターンP1の屈曲部B1~B22の数を低減することができる。つまり、光電変換装置を取囲む閉ループ部の角部を屈曲部で形成する場合に比べて、シール材を塗布(ディスペンス)する際の、曲げの回数を減らすことができる。これにより、描画時のディスペンサの加減速の回数を削減できるので塗布量の変動によるシールパターンP1の均一性低下を抑制することができる。また、各閉ループ部R1~R8を構成する1辺をすべて同一の条件(塗布速度、吐出圧力、基板からの距離(高さ)等の条件)で描画することができ、吐出量の制御も容易になる。このように、本実施形態における光電変換装置の製造方法にあっては、シール材を塗布するディスペンサの複雑な制御が不要となり、その結果、タクトタイムが向上する。また、装置への負荷も軽減されるため、装置剛性を適度に下げることができ、装置のコスト上昇を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態における光電変換装置の製造方法にあっては、閉ループ部R1~R8の角部C1~C32を、直線部L1~L23が重なる交差部分で形成したことで、角部C1~C32のディスペンス量が2倍となり、シール材の面積が増大するため、応力が集中し易い当該角部からの電解液等の液漏れを確実に抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態における光電変換装置の製造方法にあっては、閉ループ部R1~R8の角部C1~C32を、直線部L1~L23の交差により形成したことで、角部C1~C32をディスペンスで描画する(角部をシールパターンの屈曲部で形成する)場合のように角部が外側に膨らむ(湾曲する)ことを抑制することができる。その結果、光電変換素子11~18に近接する位置に閉ループ部R1~R8をシールパターンP1で描画して形成することができる。また、隣接する光電変換素子11~18同士の位置が近い場合には、隣接する光電変換素子11~18の間に位置するシールパターンの直線部を当該隣接する2つの光電変換素子11~18で共有することができる。本例では、例えば、縦方向に隣接する第1光電変換素子11と第5光電変換素子15をそれぞれ取り囲む第1閉ループ部R1と第5閉ループ部R5とが、第21直線部L21を共有している。このように、本実施形態では、光電変換素子11~18同士を近接配置することができるので、色素増感太陽電池(DSC)などの用途で、一定面積により多くのセルを配置することによって、より大きな電流や電圧を発生させる構成とした場合には特に有効となる。
【0038】
また、本実施形態における光電変換装置の製造方法にあっては、閉ループ部R1~R8をそれぞれ独立してディスペンサで描画せずに、閉ループ部R1~R8の各辺よりも長い直線部L1~L23を交差させて形成したことで、シールパターンP1の始点S及び終点Eの数を減らすことができる。特に本例では、シールパターンP1の始点Sから終点Eまで一筆書き状に描画する構成としたことで、始点S及び終点Eをそれぞれ1つずつ、すなわち最小限数としている。その結果、始点Sにおけるディスペンサ内部の詰まり、及び、終点Eでの糸曳きに起因する問題を軽減することができる。さらに、閉ループ部R1~R8を独立してディスペンサで描画せずに、閉ループ部R1~R8の各辺よりも長い直線部L1~L23を交差させて形成したことで、シールパターンP1の始点S及び終点Eを閉ループ部R1~R8の外側に配置することができる。本例では、シールパターンP1の始点S及び終点Eを第1基板10の外側に配置したことで、始点Sにおけるディスペンサ内部の詰まり、及び、終点Eでの糸曳きに起因する問題をさらに抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、第1基板10に、縦方向及び横方向にそれぞれ複数の光電変換素子11~18が配列され、シール材塗布工程は、横方向に配列される全ての閉ループ部R1~R8における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する構成としたことにより、シールパターンP1の屈曲部B1~B22の数を低減することができ、より効率的に閉ループ部R1~R8を形成することができ、ディスペンサの制御も容易となる。
【0040】
また、本実施形態では、シール材塗布工程において、縦方向に配列される全ての閉ループ部R1~R8における少なくとも一方側の辺を、連続する同一の直線で描画する構成としたことにより、さらに効率的に閉ループ部R1~R8を形成することができ、ディスペンサの制御も容易となる。
【0041】
また、本実施形態では、シール材塗布工程において、シールパターンP1の始点Sから終点Eまでを連続する一筆書き状に描画する構成としたことにより、ディスペンサのシール材の吐出、停止等の制御が少なくなり、制御がさらに容易となる。また、シールパターンP1の始点Sから終点Eまで一筆書き状に描画する構成としたことで、上述の通り、始点Sでのディスペンサ内部の詰まり、及び、終点Eでの糸曳きに起因する問題を軽減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、シール材塗布工程において、シールパターンP1の始点S及び終点Eが閉ループ部R1~R8の外側に位置するようにシールパターンP1を描画する構成としたため、シールパターンP1の始点Sでのディスペンサ内部の詰まり、及び、終点Eでの糸曳きに起因する影響を、閉ループ部R1~R8の内側に与えないようにすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、シールパターンP1が直線部L1~L23と屈曲部B1~B22とで構成され、シール材塗布工程において、屈曲部B1~B22が、閉ループ部R1~R8の外側に位置するようにシールパターンP1を描画する構成としているため、光電変換素子11~18に近接する位置に閉ループ部R1~R8を形成することができ、また、隣接する光電変換素子11~18同士もより近い位置に配置することができる。
【0044】
図2、3は、本発明の変形例を示している。なお、上述した実施形態と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図2は、シールパターンP2の描画経路を示した平面図である。シールパターンP2は、それぞれ一筆書き状に連続する第1シールパターンP21と第2シールパターンP22とで構成されている。なお、第1シールパターンP21と第2シールパターンP22とを連続させてシールパターンP2全体を一筆書き状に形成してもよい。
【0046】
第1シールパターンP21は、直線部L1~L12と、屈曲部B1~B12とを有する。なお、第1シールパターンP21の始点及び終点の位置は、例えば屈曲部B12の位置とすることができるが、閉ループ部R1~R6の外側であれば特に限定されない。
【0047】
第2シールパターンP22は、直線部L13~L18と、屈曲部B13~B18とを有する。なお、第2シールパターンP22の始点及び終点の位置は、例えば屈曲部B18の位置とすることができるが、閉ループ部R1~R6の外側であれば特に限定されない。
【0048】
シールパターンP2は、三角形の光電変換素子21~26の周囲をそれぞれ隙間なく取囲む三角形の閉ループ部R1~R6を有する。例えば、閉ループ部R1は、直線部L11、直線部L13、及び直線部L17によって形成され、光電変換素子21を隙間なく取囲んでいる。各閉ループ部R1~R6は、各光電変換素子21~26に対応する形状(本例では三角形)となっている。閉ループ部R1~R6の全ての角部C1~C18が、2本の直線部が交差することにより形成される。
【0049】
本例においても、
図1に示す形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、光電変換素子21~26の外形に近接する位置に、複数の直線部からなる閉ループ状のシールを形成することができる。そして、シール材を塗布するディスペンサ制御が容易となる。
【0050】
図3は、シールパターンP3の描画経路を示した平面図である。シールパターンP3は、それぞれ一筆書き状に連続する第1シールパターンP31と第2シールパターンP32とで構成されている。なお、第1シールパターンP31と第2シールパターンP32とを直線部L15で連続させてシールパターンP3全体を一筆書き状に形成してもよい。その場合、屈曲部B13、14が形成される。
【0051】
第1シールパターンP31は、直線部L1~L11と、屈曲部B1~B10とを有する。第1シールパターンP31の始点S31及び終点E31は、
図3に示す位置とすることができるが、閉ループ部R1~R5の外側であれば特に限定されない。
【0052】
第2シールパターンP32は、直線部L12~L14と、屈曲部B11~B12とを有する。第2シールパターンP32の始点S32及び終点E32は、
図3に示す位置とすることができるが、閉ループ部R1~R5の外側であれば特に限定されない。
【0053】
シールパターンP3は、三角形の光電変換素子31~35の周囲をそれぞれ隙間なく取囲む三角形の閉ループ部R1~R5を有する。例えば、閉ループ部R1は、直線部L1、直線部L3、及び直線部L14によって形成され、光電変換素子31を隙間なく取囲んでいる。各閉ループ部R1~R5は、各光電変換素子31~35に対応する形状(本例では三角形)となっている。また、閉ループ部R1~R5の全ての角部C1~C15が、2本の直線部が交差することにより形成される。
【0054】
本例においても、
図1、2に示す形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、光電変換素子31~35の外形に近接する位置に、複数の直線部からなる閉ループ状のシールを形成することができる。そして、シール材を塗布するディスペンサ制御が容易となる。
【0055】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、本発明の光電変換装置の製造方法は、シール材塗布工程及び基板接合工程以外の他の工程を含むことができる。
【0056】
また、本発明の製造方法は、例えば、太陽電池の他、液晶表示装置、EL表示装置等の電子デバイスにも適用可能である。また、各光電変換素子の形状は、
図1に示す矩形及び
図2、3に示す三角形に限定されず、例えば、他の多角形、円形、楕円形等であってもよい。その場合、各光電変換素子の形状に対応する多角形状の閉ループ部が形成されることが好ましいが、光電変換素子が円形、楕円形のように多角形でない場合には、光電変換素子の外形に近い形状の多角形状の閉ループ部が形成される。何れの場合でも、本発明によれば、光電変換素子の外形に近接する位置に、多角形の閉ループ状のシールを形成することができ、シール材を塗布するディスペンサ制御が容易となる。
【符号の説明】
【0057】
10:第1基板
11~18、21~26、31~35:光電変換素子
P1~P3:シールパターン
S、S31、S32:始点
E、E31、E32:終点
L1~L23:直線部
B1~B22:屈曲部
R1~R8:閉ループ部
C1~C32:角部