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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】残留塩素濃度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 31/00 20060101AFI20221109BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20221109BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20221109BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N31/00 Q
G01N21/77 B
G01N27/06 Z
G01N21/59 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018226613
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020091118
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】森山 仁
(72)【発明者】
【氏名】福澤 耕太郎
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169859(JP,A)
【文献】特開2012-007969(JP,A)
【文献】特開2005-127763(JP,A)
【文献】米国特許第11053144(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00 -31/22
G01N 21/00 -21/77
G01N 27/00 -27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検水にDPD試薬を添加して着色させ、該着色水の吸光度を測定し、この吸光度から該検水の残留塩素濃度を求める残留塩素濃度測定方法において、検水の電気伝導率と吸光度と残留塩素濃度との関係を求めておき、
検水の電気伝導率と吸光度とを測定し、該関係に基づいて残留塩素濃度を求めることを特徴とする残留塩素濃度の測定方法。
【請求項2】
電気伝導率の異なる水について、吸光度と残留塩素濃度との検量線を求めておき、吸光度測定値と該検量線とに基づいて残留塩素濃度を求めることを特徴とする請求項1の残留塩素濃度の測定方法。
【請求項3】
200mS/mから1000mS/mまでの範囲において選択された複数の電気伝導率において、それぞれ前記検量線を求めておくことを特徴とする請求項2の残留塩素濃度の測定方法。
【請求項4】
200±4mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求めると共に、1000±20mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求める工程と、
残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cの係数a,b,cが前記電気伝導率EC,EC間において電気伝導率ECに比例定変化すると仮定して、
a=α・EC+a
b=β・EC+b
c=γ・EC+c
と表したときの
α及びaの値をa,a,Y,Yに基づいて求め、
β及びbの値をb,b,Y,Yに基づいて求め、
γ及びcの値をc,c,Y,Yに基づいて求める工程と、
求めたa,b,c値を代入した式Y=aRabs+bRabs+cに吸光度測定値Rabsを代入して残留塩素濃度Yを求める工程と
を有する請求項1の残留塩素濃度の測定方法。
【請求項5】
前記検水は、バラスト水である請求項1~4のいずれかの残留塩素濃度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の残留塩素濃度を測定する方法に係り、詳しくは、バラスト水等の比較的高濃度で残留塩素を含む水の残留塩素濃度を的確に測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
貨物船などの船舶では、貨物の量の変動による船舶の喫水変動を抑制するため、船舶に積載されるバラスト水の量が調整される。このバラスト水は、貨物が陸揚げされる寄港地で積載され、貨物が積載される寄港地で排出される。
【0003】
バラスト水に含まれる水生生物及び病原体の移動による海洋汚染を防止するため、水生生物や病原体を殺滅するように、バラスト水に次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を注入することが行われており、バラスト水中の塩素系酸化剤濃度の管理のために、バラスト水の残留塩素濃度を測定する必要がある。
【0004】
従来、水中の残留塩素濃度の測定は、吸光度法(DPD法、検出波長512nm)によって行われている(特許文献1)。具体的には、DPD試薬を添加することで検水を赤色に着色させ、その着色の程度を波長512nmの光の吸光度で検出し、残留塩素濃度に換算する。
【0005】
バラスト水中の水生生物や病原体を殺滅するためには、バラスト水の残留塩素濃度を15~20mg/L程度に維持する必要があるが、現行DPD法の原理に基づくTRO(Total Residual Oxidants)計による残留塩素濃度の測定可能範囲は0~10mg/Lであり、この範囲を超えた場合には、検水を希釈する必要がある。この場合、残留塩素濃度の測定に加えて希釈のための操作が必要となり、特に連続測定を行う場合には、測定器の構成、操作も複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-83344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
船舶のバラスト水処理において残留塩素濃度測定をDPD比色法によって行う場合、検水の塩類濃度(電気伝導率)によって発色度合いが変化する。そのため、純水で作成した検量線を用いて海水を測定すると、測定値の誤差が大きくなる。
【0008】
本発明は、検水の電気伝導率の影響を受けることなく、残留塩素濃度を精度よく測定することができる残留塩素濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の残留塩素濃度測定方法は、次を要旨とする。
【0010】
[1] 検水にDPD試薬を添加して着色させ、該着色水の吸光度を測定し、この吸光度から該検水の残留塩素濃度を求める残留塩素濃度測定方法において、検水の電気伝導率と吸光度と残留塩素濃度との関係を求めておき、
検水の電気伝導率と吸光度とを測定し、該関係に基づいて残留塩素濃度を求めることを特徴とする残留塩素濃度の測定方法。
【0011】
[2] 電気伝導率の異なる水について、吸光度と残留塩素濃度との検量線を求めておき、吸光度測定値と該検量線とに基づいて残留塩素濃度を求めることを特徴とする[1]の残留塩素濃度の測定方法。
【0012】
[3] 200mS/mから1000mS/mまでの範囲において選択された複数の電気伝導率において、それぞれ前記検量線を求めておくことを特徴とする[2]の残留塩素濃度の測定方法。
【0013】
[4] 200±4mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求めると共に、1000±20mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求める工程と、
残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cの係数a,b,cが前記電気伝導率EC,EC間において電気伝導率ECに比例定変化すると仮定して、
a=α・EC+a
b=β・EC+b
c=γ・EC+c
と表したときの
α及びaの値をa,a,Y,Yに基づいて求め、
β及びbの値をb,b,Y,Yに基づいて求め、
γ及びcの値をc,c,Y,Yに基づいて求める工程と、
求めたa,b,c値を代入した式Y=aRabs+bRabs+cに吸光度測定値Rabsを代入して残留塩素濃度Yを求める工程と
を有する[1]の残留塩素濃度の測定方法。
【0014】
[5] 前記検水は、バラスト水である[1]~[4]のいずれかの残留塩素濃度の測定方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、検水の電気伝導率を測定して、あらかじめ準備した検水の電気伝導率と一致又はほぼ一致した検量線を用いて残留塩素濃度を測定するので、精度の高い残留塩素濃度測定値を得ることができる。
【0016】
このため、例えば、バラスト水のように、比較的残留塩素濃度の高い水の残留塩素濃度の測定において、従来法のように煩雑な希釈操作を行う必要がなくなり、直接残留塩素濃度の測定に供することができる。
【0017】
希釈操作が不要となることで、測定操作が簡略化され、また希釈のための配管部材等が不要になることで、測定装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0018】
本発明は、バラスト水の水生生物や病原体殺滅のための残留塩素濃度管理や、食品製造ラインでの殺菌効果確認のための残留塩素濃度管理等に有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の残留塩素濃度測定装置の実施の形態の一例を示す構成図である。
図2】残留塩素濃度と吸光度との関係を示すグラフである。
図3】残留塩素濃度と吸光度との検量線である。
図4】実験結果を示すグラフである。
図5】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明の残留塩素濃度測定方法の一態様では、検水にDPD試薬を添加して着色させ、該着色水に白色光を透過させて吸光度を測定し、検量線を用いて残留塩素濃度を測定する。この検量線を、検水の電気伝導率に応じて選択する。
【0022】
本発明者は、残留塩素濃度測定値に与える検水の塩類濃度(電気伝導率)の影響を調べたところ、図1に示すように、次の関係があることを見出した。
(1) 実際の残留塩素濃度が同一である場合でも、海水に比べて淡水での測定値は約60%の数値になる。
(2) 電気伝導率1000mS/m以上の範囲では、電気伝導率が変化しても残留塩素濃度測定値は殆ど変化しない。また、電気伝導率200mS/m以下の範囲でも、電気伝導率が変化しても残留塩素濃度測定値は殆ど変化しない。
(3) 電気伝導率1000~200mS/mの範囲では、実際の残留塩素濃度が同一である場合でも、検水の電気伝導率に比例して測定値が増大する。
【0023】
そこで、本発明方法の一態様によって、検水中の残留塩素濃度を測定するに際しては、電気伝導率に応じた複数の残留塩素濃度-吸光度の検量線をあらかじめ準備しておき、検水の電気伝導率測定結果に基づいて、該当する電気伝導率の検量線を使用して残留塩素濃度濃度を求める。
【0024】
本発明方法の別態様では、1000~200mS/mの範囲においては、電気伝導率に比例して測定値が変化するものと仮定して、電気伝導率の測定値に基づいて検量線の係数を決定し、この検量線と吸光度に基づいて残留塩素濃度を求める。
【0025】
本発明において、検水となる残留塩素含有水としては、特に制限はないが、本発明によれば、0~25mg/Lという従来のDPD法よりも高い残留塩素濃度まで測定可能であることから、バラスト水、食品製造工場の殺菌水のように、比較的残留塩素濃度の高い水を検水とすることで、本発明の効果が有効に発揮される。
【0026】
検水に添加するDPD試薬は、市販品(N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(硫酸塩)と無水硫酸ナトリウムの混合粉末)を用いることができる。DPD試薬は通常リン酸緩衝液と共に使用され、検水にリン酸緩衝液を添加してpH6.5程度に調整した後、DPD試薬を添加して混合し、N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミンが残留塩素により酸化されて赤色に発色したときの着色の程度を検出する。
【0027】
吸光度に基づいて残留塩素濃度を測定する計器としては、レッド領域、グリーン領域及びブルー領域の光検出センサを有する市販のTRO(Total Residual Oxidants)計を用いることができる。
【0028】
図1は、本発明方法に従って検水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定装置の一例を示す模式的な構成図であり、TRO計2に検水をポンプ1によって送水するラインに電気伝導率計1を設置し、電気伝導率測定値とTRO計2の測定値とに基づいて残留塩素濃度を求める。
【0029】
前述の通り、海水など1000mS/m以上の範囲と、汽水など1000~200mS/mの範囲と、淡水など200mS/m以下の範囲とでそれぞれでTRO計の測定値への電気伝導率の影響が異なる。
【0030】
そこで、1000mS/m以上の範囲にて使用する検量線を切り換えると共に、200mS/m以下の範囲にて使用する検量線を切り換える。また、1000~200mS/mの範囲については、電気伝導率に比例して測定値が変化するため、細分化した(例えば100~200mS/m刻みで作成した)検量線を使い分ける方法(第1の方法)と、電気伝導率の測定値に基づいて検量線の係数を決定する方法(第2の方法)とのいずれかによって残留塩素濃度を求める。
【0031】
第2の方法では、例えば、200±4mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求めると共に、1000±20mS/mの範囲から選択された電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cを求める。
【0032】
また、後述の図4のように、残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線Y=aRabs+bRabs+cの係数a,b,cが前記電気伝導率EC,EC間において電気伝導率ECに比例変化すると仮定して、
a=α・EC+a
b=β・EC+b
c=γ・EC+c
と表したときの
α及びaの値をa,a,Y,Yに基づいて求め、
β及びbの値をb,b,Y,Yに基づいて求め、
γ及びcの値をc,c,Y,Yに基づいて求める。
【0033】
そして、a,b,c値を代入した式Y=aRabs+bRabs+cに吸光度測定値Rabsを代入して残留塩素濃度Yを求める。
【実施例
【0034】
[実験例1] 残留塩素濃度と検水の電気伝導率との関係の測定
<実験の概要>
以下の試験方法の通り、電気伝導率の異なる模擬海水、模擬汽水、及び模擬淡水を調製し、それぞれ規定量の次亜塩素酸ソーダを添加して実際の残留塩素濃度が25mg/Lの検水を作製した。各検水にDPD試薬を添加し、TRO計によって吸光度に基づく残留塩素濃度測定値を求めた。
【0035】
<試験方法>
純水に人工海水調製用塩類調合物(Lake Products Compamy LLC LOT 2781Z ASTM D1141-98準拠品)を所定の濃度になるように溶解させて模擬海水を調製した。模擬汽水と模擬淡水はこの模擬海水を純水で希釈して調製した。これに次亜塩素酸ソーダ(12%品)を残留塩素濃度が25mg/Lの濃度になるように添加した。発色試薬はDPD試薬を使用し、吸光度に基づく残留塩素濃度をTRO計(HACH(ハック)社製ポケット残留塩素計58700-00)を用いて測定した。
<結果>
結果を図1に示す。図1より次の(1)~(3)が認められる
(1) 実際の残留塩素濃度が同一(25mg/L)であるにもかかわらず、模擬海水に比べて模擬淡水でのTRO計測定値は約60%の数値になる。
(2) 電気伝導率1000mS/m以上の範囲では、電気伝導率が変化してもTRO計測定値は殆ど変化しない。また、電気伝導率200mS/m以下の範囲でも、電気伝導率が変化してもTRO計測定値は殆ど変化しない。
(3) 電気伝導率1000~200mS/mの範囲では、実際の残留塩素濃度が同一であるにもかかわらず、検水の電気伝導率に比例してTRO計測定値が増大する。
【0036】
[実験例2]電気伝導率に応じた検量線の作成
実験例1で調整した模擬海水を用いて電気伝導率200、350、550、750、1000mS/mの模擬淡水、模擬汽水、模擬海水を調製し、それぞれ残留塩素濃度が1~25mg/Lとなるように次亜塩素酸ソーダ(12%品)を添加して残留塩素濃度既知の検水を調製した。各検水について吸光度を測定し、電気伝導率別の残留塩素濃度-吸光度検量線を作製した。結果を図3に示す。
【0037】
図3の通り、残留塩素濃度Yと吸光度Rabsとの検量線は次式の通りである。
[1000mS/mの場合]
Y=-45.067×Rabs+138.50×Rabs-0.284 …(1)
[750mS/mの場合]
Y=-46.542×Rabs+126.95×Rabs-0.209 …(2)
[550mS/mの場合]
Y=-47.722×Rabs+117.71×Rabs-0.149 …(3)
[350mS/mの場合]
Y=-48.902×Rabs+108.47×Rabs-0.089 …(4)
[200mS/mの場合]
Y=-49.784×Rabs+101.55×Rabs-0.038 …(5)
【0038】
なお、図3中に1000mS/mと200mS/mの検量線の上下に点線で±5%の線を加入した。350、550、750mS/mの検量線の±5%幅を考慮すると、測定値は必ずどれかの検量線で精度よく測定できることがわかる。
【0039】
従って、本発明の一態様では、1000mS/m以上の場合は検量線(1)を用い、電気伝導率1000~750mS/mの場合は検量線(2)を用い、電気伝導率750~550mS/mの場合は検量線(3)を用い、電気伝導率550~200mS/mの場合は検量線(4)を用い、電気伝導率200mS/m未満の場合は検量線(5)を用いる。
【0040】
この態様では、電気伝導率150又は200mS/m刻みで5本の検量線を引いているが、これに限定されるものではない。
【0041】
なお、図5は前記式(1),(3),(5)を用いて求めたTRO計測定値に基づく残留塩素濃度と、DPD手分析結果とを示すグラフである。
【0042】
図5の通り、電気伝導率に応じて検量線を使い分けることにより、TRO計を用いて精度の良い残留塩素濃度測定値が得られる。
【0043】
<電気伝導率200~1000mS/mの間における電気伝導率に応じた検量線の設定>
上記検量線を
[残留塩素濃度Y]=a・Rabs+b・Rabs+c …(6)
と表した場合、上記(1),(5)式におけるa,b,cの値(a,a,b,b,c,c値)は次の通りである。
【0044】
【表1】
【0045】
表1のa,b,cの各値を、(1)式の電気伝導率を1000mS/m、(5)式の電気伝導率を200mS/mとしてプロットすると、図4の通りとなる。
【0046】
1000mS/mと200mS/mとの間で検量線の係数a,b,cが検水の電気伝導率ECに比例して直線的に変化すると仮定した場合、電気伝導率ECと各係数a,b,cとの関係は、図4の通り次式で表される。
【0047】
a=0.0059×EC-51.0 …(7)
b=0.0462×EC+92.3 …(8)
c=-0.0003×EC+0.024 …(9)
【0048】
この関係を用いて(即ち、(7)~(9)式を(6)式に代入することにより)、200~1000mS/m間の任意の電気伝導率ECにおける残留塩素濃度Yと電気伝導率ECとの検量線を次式で表すことができる。
【0049】
Y=(0.0059×EC-51.0)×Rabs
+(0.0462×EC+92.3)×Rabs
-0.0003×EC+0.024 …(10)
【0050】
従って、TRO計の測定値が電気伝導率によって大きく影響を受ける200~1000mS/mの範囲においては、電気伝導率測定値ECを(10)式に代入して検量線(検量式)を設定し、この検量線に吸光度測定値Rabsを代入することにより、残留塩素濃度Y(mg/L)を算出することができる。
【0051】
なお、この態様でも、電気伝導率の範囲は200~1000mS/mに限定されるものではない。電気伝導率の下限値は200±4mS/m、上限値は1000±20mS/mの範囲から選択されればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 電気伝導率計
2 TRO計
図1
図2
図3
図4
図5