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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/00 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B65H9/00 A
B65H9/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019048298
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147426
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】山村 英介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 元春
(72)【発明者】
【氏名】江川 知宏
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-95478(JP,A)
【文献】特開2018-95466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00- 7/20
B65H 9/00- 9/20
B65H 43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの位置を検知する位置検知手段と、
前記シートを搬送しながら、前記位置検知手段によって検知された前記シートの位置に応じて、シート搬送面内での回転方向及びシート幅方向における前記シートの位置を補正する補正手段と、
前記補正手段が前記シートの位置補正を行った後、前記補正手段のシート搬送面内での回転方向の傾きを検知する検知手段と、
検知された前記補正手段の傾きに基づいて、前記補正手段を前記シート幅方向へ移動するように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記シートの後端部が前記補正手段よりも搬送方向上流側に配置された特定の前記位置検知手段を通過した後は、前記シートのシート搬送面内での回転方向における位置を補正せずに前記シートを搬送する搬送装置であって、
前記制御手段は、前記シートの後端部が前記特定の位置検知手段を通過してから前記補正手段を通過するまでの搬送距離と、前記検知された補正手段の傾きとに基づいて、前記補正手段のシート幅方向への移動量を算出する請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記補正手段は、補正ローラであって、
前記制御手段は、前記補正ローラが前記シートの位置補正を行った後に、前記補正ローラのローラ軸と直交するローラ搬送方向が、シート幅方向両端のうちのいずれか一方の側に向かうように傾いている場合は、前記ローラ搬送方向が傾いている方向とは反対のシート幅方向へ前記補正ローラを移動させる請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されたシートに画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送する搬送装置、及び、その搬送装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する搬送装置として、例えば、複写機、プリンタ等の画像形成装置において用紙や原稿等のシートを搬送する搬送装置がある。
【0003】
この種の搬送装置においては、シートの斜行を補正するため、搬送されたシートを停止している搬送ローラ対のニップに突き当ててシートの斜行を補正し、その後、所定のタイミングで搬送ローラ対の回転を開始することでシートを目標位置へ搬送する方法が採用されている。しかしながら、この方法は、シートを一旦停止させることになるため、生産性(画像形成速度)が低下するといった課題がある。
【0004】
斯かる課題に対して、特許文献1(特開2018-16492号公報)では、生産性を低下させずにシートを精度良く搬送できるようするため、一対の補正ローラでシートを搬送しながらその補正ローラをシートの位置ずれ方向と反対方向に移動させることで、シートの位置ずれを補正する搬送装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の搬送装置においては、補正手段の傾きに起因してシートの幅方向の位置ずれが生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、シートの位置を検知する位置検知手段と、前記シートを搬送しながら、前記位置検知手段によって検知された前記シートの位置に応じて、シート搬送面内での回転方向及びシート幅方向における前記シートの位置を補正する補正手段と、前記補正手段が前記シートの位置補正を行った後、前記補正手段の前記シート搬送面内での回転方向の傾きを検知する検知手段と、検知された前記補正手段の傾きに基づいて、前記補正手段を前記シート幅方向へ移動するように制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補正手段の傾きによるシートの幅方向の位置ずれを防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る搬送装置の平面図である。
図3】補正ローラを駆動させる駆動機構の側面図である。
図4】補正ローラを駆動させる駆動機構の平面図である。
図5】(a)は保持フレームが幅方向のみに移動した状態を示す図、(b)は保持フレームが用紙搬送面内の回転方向のみに移動した状態を示す図、(c)は保持フレームが幅方向と用紙搬送面内の回転方向との両方向に移動した状態を示す図である。
図6】本実施形態に係る搬送装置の制御系を示すブロック図である。
図7】用紙位置ずれ量の算出方法を説明するための図である。
図8】用紙位置ずれ量の算出方法を説明するための図である。
図9】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図10】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図11】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図12】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図13】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図14】本実施形態に係る搬送装置の動きを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図15】搬送動作のフローチャートを示す図である。
図16】補正ローラがホームポジションの向きに配置された状態を示す平面図である。
図17】補正ローラがホームポジションの向きに対して傾斜して配置された状態を示す平面図である。
図18】算出された位置ずれ量に基づき補正ローラを幅方向の一方へ移動させた状態を示す平面図である。
図19】算出された位置ずれ量に基づき補正ローラを幅方向の他方へ移動させた状態を示す平面図である。
図20】本発明に係る搬送装置を電子写真式画像形成装置に適用した例を示す図である。
図21】本発明に係る搬送装置を後処理装置に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係るインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
[全体構成]
本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置100は、主に、給紙部1、画像形成部2、乾燥部3、排紙部4から構成されている。インクジェット式画像形成装置100においては、給紙部1から供給されるシートとしての用紙Pに対し、画像形成部2で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙P上に付着したインクを乾燥部3において乾燥させた後、用紙Pを排紙部4から排紙する。また、両面印刷する場合は、画像形成部2において用紙Pの表側の面に画像が形成された後、乾燥部3において乾燥処理をし、用紙Pを排紙することなく反転搬送経路150へ搬送する。用紙Pは、反転搬送経路150を通過することで、表裏反転された状態で再び画像形成部2に供給され、画像形成部2において用紙Pの裏側の面に画像が形成された後、乾燥部3において乾燥処理が行われ、排紙部4から排紙される。
【0012】
[給紙部]
給紙部1は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ5と、給紙トレイ5から用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置6と、給送装置6から送り出された用紙Pを搬送する搬送装置7とから構成されている。給送装置6には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置6により給紙トレイ5から送り出された用紙Pは、搬送装置7によって画像形成部2へ搬送される。
【0013】
[画像形成部]
画像形成部2は、主に、給紙された用紙Pを受け取って用紙担持ドラム9へ渡す第1の搬送回転体としての渡し胴8と、渡し胴8によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する第2の搬送回転体としての用紙担持ドラム9と、用紙担持ドラム9に担持された用紙Pに向けてインクを吐出するインク吐出部10と、用紙担持ドラム9によって搬送された用紙Pを乾燥部3へ受け渡す第3の搬送回転体としての渡し胴11とから構成されている。なお、上流側の渡し胴8、用紙担持ドラム9、及び下流側の渡し胴11は、用紙Pを搬送する搬送装置7の一部も兼ねている。
【0014】
給紙部1から画像形成部2へ搬送されてきた用紙Pは、渡し胴8の表面に設けられた受取部としての揺動可能なグリッパ16によって先端が把持され、渡し胴8の表面移動に伴って搬送される。渡し胴8により搬送された用紙Pは、用紙担持ドラム9との対向位置で用紙担持ドラム9へ受け渡される。なお、図1に示す例では、グリッパ16が1つのみ記載されているが、グリッパ16は渡し胴8に複数設けられていてもよい。
【0015】
用紙担持ドラム9の表面にも受取部として同様のグリッパが設けられており、用紙の先端がグリッパによって把持される。また、用紙担持ドラム9の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されており、各吸引孔には吸引装置12によって用紙担持ドラム9の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。渡し胴8から用紙担持ドラム9へ受け渡された用紙Pは、グリッパによって先端が把持されると共に、吸い込み気流によって用紙担持ドラム9の表面に吸着して、用紙担持ドラム9の表面移動に伴って搬送される。
【0016】
本実施形態に係るインク吐出部10は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成するものであり、インクごとに個別の液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kを備えている。液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0017】
インク吐出部10の液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム9に担持された用紙Pがインク吐出部10との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド10C,10M,10Y,10Kから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。なお、本実施形態において、画像形成部2は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0018】
[乾燥部]
乾燥部3は、主に、画像形成部2で用紙P上に付着したインクを乾燥させるための乾燥機構13と、画像形成部2から搬送されてくる用紙Pを搬送する搬送機構14とから構成されている。画像形成部2から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構14に受け取られた後、乾燥機構13を通過するように搬送され、排紙部4へ受け渡される。乾燥機構13を通過する際、用紙P上のインクには乾燥処理が施され、これによりインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着すると供に、用紙Pのカールが抑制される。
【0019】
[排紙部]
排紙部4は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ15から構成されている。乾燥部3から搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ15上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部4は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0020】
[その他の追加機能部]
本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置100は、給紙部1、画像形成部2、乾燥部3、排紙部4から構成されているが、他の機能部を適宜追加してもよい。例えば、給紙部1と画像形成部2との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加したり、乾燥部3と排紙部4との間に画像形成の後処理を行う後処理部を追加したりすることができる。
【0021】
前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。また、後処理部としては、例えば、画像形成部2で画像が形成された用紙Pを反転させて再び画像形成部2へ送って用紙Pの両面に画像を形成するための用紙反転搬送処理や、画像が形成された複数枚の用紙Pを綴じる処理などが挙げられるが、後処理の内容についても特に制限はない。
【0022】
なお、用紙に形成される「画像」は、文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではなく、例えば、それ自体意味を持たないパターン等も含まれる。また、画像が形成される「シート」は、材質を限定されるものではなく、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど、液体が一時的でも付着可能なものであればよく、例えば、フィルム製品、衣料用等の布製品、壁紙や床材等の建材、皮革製品などに使用されるものであってもよい。また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0023】
また、「インクジェット式画像形成装置」は、液体吐出ヘッドとシート材とが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0024】
また、「液体吐出ヘッド」とは、吐出孔(ノズル)から液体を吐出・噴射する機能部品である。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどの吐出エネルギー発生手段を使用することができるが、使用する吐出エネルギー発生手段が限定されるものではない。
【0025】
続いて、本実施形態に係る給紙部1が備える搬送装置7について説明する。
【0026】
図2は、本実施形態に係る搬送装置の平面図である。
【0027】
図2に示すように、搬送装置7は、搬送される用紙Pの位置を検知する位置検知手段としての3つのCIS101~103と、用紙Pを搬送しながら用紙Pの位置を変更してその位置を補正する補正手段としての一対の補正ローラ31と、補正ローラ31よりも搬送方向上流側に配置された上流側搬送手段としての一対の上流側ローラ44とを備える。以下の説明において、複数のCIS101~103は、用紙搬送方向の上流側から順に、第1のCIS(第1位置検知手段)101、第2のCIS(第2位置検知手段)102、第3のCIS(第3位置検知手段)103と称することにする。
【0028】
CISは、近年、装置の小型化を目的として、形状の小さいLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を光源に利用し、レンズを介してリニアセンサで画像を直接読み取るコンタクト・イメージ・センサ(Contact Image Sensor)と呼ばれるものである。各CIS101~103は、用紙Pの幅方向に設けられた複数のラインセンサにより、用紙Pの幅方向の一端側の側端部Paを検知することが可能である。なお、本明細書において、「用紙の幅方向」、又は「幅方向」とは、用紙搬送面内で用紙の理想の搬送方向X(図16参照)に対して直交又は交差する方向を意味する。第1のCIS101は、上流側ローラ44よりも搬送方向上流側に配置され、第2のCIS102は、補正ローラ31と上流側ローラ44との間に配置されている。第3のCIS103は、補正ローラ31とこれよりも搬送方向下流側に配置されている下流側搬送手段としての上記渡し胴8との間に配置されている。また、各CIS101~103は、用紙Pの幅方向に対して平行に配置されている。
【0029】
一対の補正ローラ31は、搬送中の用紙Pを挟持しながら、用紙Pの幅方向(図2中の矢印S方向)に移動したり、支軸73を中心に用紙搬送面内で(図2中の矢印W方向に)回転したりして、用紙Pの位置を変更する。これにより、用紙Pの幅方向の位置ずれαと斜行の位置ずれβとが補正される。本実施形態では、支軸73が補正ローラ31の軸方向一端部側に設けられているが、支軸73は補正ローラ31の軸方向中央位置に設けられていてもよい。
【0030】
図3及び図4に、補正ローラを駆動させる駆動機構の構成を示す。図3は、駆動機構の側面図、図4は、駆動機構の平面図である。
【0031】
図3に示すように、補正ローラ31は、ローラ軸回りに回転駆動される駆動ローラ31aと、これと一緒に従動回転する従動ローラ31bとで構成されている。これらの補正ローラ31は、保持部材としての保持フレーム72によってローラ軸回りに回転可能に保持されている。保持フレーム72は、画像形成装置の本体フレーム70に固定されたベースフレーム71によって支持されている。
【0032】
図4に示すように、保持フレーム72は、中継支持部材としてのフリーベアリング(ボールトランスファー)95を介してベースフレーム71上に設けられている。これにより、保持フレーム72は、ベースフレーム71に対してその上面に沿って用紙搬送面内(シート搬送面内)のいずれの方向にも移動可能に構成されている。このように、フリーベアリング95を用いて保持フレーム72を支持することで、保持フレーム72が移動する際の摩擦負荷を極めて小さくすることができる。このため、後述する用紙の位置ずれ補正を高速でかつ高精度に行うことができる。本実施形態では、4つのフリーベアリング95によって保持フレーム72を支持しているが、フリーベアリング95の個数は3箇所以上であればよい。
【0033】
また、図3に示すように、保持フレーム72には、補正ローラ31の用紙搬送面内での回転中心となる上記支軸73が下方へと伸びるように設けられている。支軸73の下端部は、ベースフレーム71に形成された幅方向ガイド部71aに挿入されている。幅方向ガイド部71aは、幅方向(図4中の矢印S方向)に略直線状に伸びるように形成された穴部である。また、支軸73の下端部にはガイドコロ79が回転可能に設けられており、このガイドコロ79を介して支軸73が幅方向ガイド部71aに接触するように挿入されている。支軸73が幅方向ガイド部71aに沿って幅方向に移動することで、保持フレーム72及びこれに保持される補正ローラ31も幅方向に移動する。また、保持フレーム72は支軸73を中心に用紙搬送面内で(図4中の矢印W方向に)回転するようにも構成されている。保持フレーム72が支軸73を中心に回転することで、補正ローラ31は用紙搬送面内で回転する。
【0034】
図3に示すように、本体フレーム70の図の右端側に設けられたブラケット69には、補正ローラ31に対して用紙搬送のための駆動力を付与する搬送駆動モータ(搬送駆動手段)61が設けられている。搬送駆動モータ61と補正ローラ31の駆動ローラ31aとは、複数のギア66,67から成るギア列とカップリング機構65とを介して連結されている。カップリング機構65は、駆動ローラ31aの回転軸とギア67の回転軸とが互いに軸方向に離間又は接近したり、互いに傾斜する方向へ駆動したりしても、駆動力伝達可能に連結を保持する二段スプラインカップリングである。このように、カップリング機構65を介して駆動ローラ31aとギア67とが連結されていることで、補正ローラ31が幅方向に移動したり用紙搬送面内で回転したりして駆動ローラ31aと搬送駆動モータ61との相対的位置が変化しても、搬送駆動モータ61から駆動ローラ31aへの駆動力伝達を良好に行うことができる。
【0035】
また、図3に示すように、駆動ローラ31aの端部(搬送駆動モータ61側とは反対側の端部)には、駆動ローラ31aの搬送速度(搬送駆動モータ61の回転速度)を検知する搬送速度検知手段としてのロータリーエンコーダ96が設けられている。補正ローラ31は、このロータリーエンコーダ96の検知結果に基づいて搬送速度が制御される。
【0036】
また、本実施形態に係る搬送装置7は、保持フレーム72及び補正ローラ31を用紙の幅方向に移動させる幅方向駆動機構38と、保持フレーム72及び補正ローラ31を用紙搬送面内の回転方向に回転させる斜行方向駆動機構39とを備えている。
【0037】
図3及び図4に示すように、幅方向駆動機構38は、幅方向駆動モータ(幅方向駆動手段)62、タイミングベルト97、カム45、引張バネ59等で構成されている。引張バネ59は、保持フレーム72を幅方向の一方向(図4における左方向)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。カム45は、その回転軸45aを中心に回転可能にベースフレーム71に設けられている。また、カム45は、引張バネ59の付勢力によって支軸73に設けられたカムフォロワ46に接触した状態で保持されている。カム45が回転すると、引張バネ59の付勢力に抗してカムフォロワ46が押されることで、保持フレーム72が幅方向(図4における右方向)に移動する。
【0038】
また、図3に示すように、カム45の回転軸45aと幅方向駆動モータ62のモータ軸とにはタイミングベルト97が掛け渡されている。これにより、タイミングベルト97を介して、幅方向駆動モータ62からカム45へ駆動力が伝達される。また、カム45の回転軸45aには、カム45の回転角(回転量)を検知する回転角検知手段としてのロータリーエンコーダ57が設けられている。このロータリーエンコーダ57の検知結果に基づき幅方向駆動モータ62の駆動を制御することで、カム45の回転角度が制御されて、保持フレーム72の幅方向への移動量が調整される。すなわち、このロータリーエンコーダ57は、保持フレーム72及び補正ローラ31が幅方向へ移動する際の移動量を検知する幅方向移動量検知手段として機能する。
【0039】
図3及び図4に示すように、斜行方向駆動機構39は、斜行方向駆動モータ(斜行方向駆動手段)63、タイミングベルト98、カム47、引張バネ60、レバー部材50等で構成されている。引張バネ60は、保持フレーム72を斜行方向の一方向(図4における支軸73を中心とする時計回り)に付勢するように、保持フレーム72とベースフレーム71とに接続されている。カム47は、その回転軸47aを中心に回転可能にベースフレーム71に設けられている。また、カム47は、引張バネ60の付勢力によってレバー部材50の一端部に設けられたカムフォロワ48に接触した状態で保持されている。また、レバー部材50の反対側の端部には作用コロ49が回転可能に設けられている。作用コロ49は、引張バネ60の付勢力によって保持フレーム72に設けられた突起部72aに接触した状態で保持されている。このように構成されていることで、カム47が回転し、カム47によってカムフォロワ48が押されると、レバー部材50がその回転軸50aを中心に回転する。これに伴って、レバー部材50に設けられた作用コロ49が保持フレーム72の突起部72aを引張バネ60の付勢力に抗して押すことで、保持フレーム72が用紙搬送面内の回転方向に(図4における反時計回りに)回転する。
【0040】
また、図3に示すように、カム47の回転軸47aと斜行方向駆動モータ63のモータ軸とにはタイミングベルト98が掛け渡されている。これにより、タイミングベルト98を介して、斜行方向駆動モータ63からカム47へ駆動力が伝達される。また、カム47の回転軸47aには、カム47の回転角(回転量)を検知する回転角検知手段としてのロータリーエンコーダ58が設けられている。このロータリーエンコーダ58の検知結果に基づき斜行方向駆動モータ63の駆動を制御することで、カム47の回転角度が制御されて、保持フレーム72の用紙搬送面内での回転量が調整される。すなわち、このロータリーエンコーダ58は、保持フレーム72及び補正ローラ31が用紙搬送面内で回転する際の斜行方向の移動量を検知する斜行方向移動量検知手段として機能する。
【0041】
図5(a)に示すのは、幅方向駆動機構38のカム45のみが回転して、保持フレーム72が幅方向に移動した状態、図5(b)に示すのは、斜行方向駆動機構39のカム47のみが回転して、保持フレーム72が用紙搬送面内で回転した状態である。また、図5(c)は、両方のカム45,47が回転して、保持フレーム72が幅方向に移動すると共に、用紙搬送面内で回転した状態を示している。
【0042】
図6は、本実施形態に係る搬送装置の制御系を示すブロック図である。
【0043】
本実施形態に係る搬送装置は、用紙の位置ずれ補正を行うために補正ローラ31を制御する制御手段としての制御部20を備えている。図6に示すように、制御部20は、CIS101~103の検知結果から用紙の位置ずれ量を算出する位置ずれ量算出部21と、補正ローラ31の搬送に伴って生じる用紙の幅方向のずれ量を算出する幅方向ずれ量算出部22とを備えている。制御部20は、位置ずれ量算出部21によって算出された用紙の位置ずれ量や、幅方向ずれ量算出部22によって算出された幅方向のずれ量に基づいて、幅方向駆動モータ62や斜行方向駆動モータ63の駆動を制御し、補正ローラ31を幅方向や用紙搬送面内での回転方向に駆動させる。
【0044】
続いて、図7及び図8を用いて、CIS101~103の検知結果に基づく用紙位置ずれ量の算出方法について説明する。
【0045】
図7に示すように、用紙Pの先端部Pbが第1のCIS101を通過し、第2のCIS102に到達すると、用紙Pの幅方向の位置ずれ量αと斜行の位置ずれ量βとが検知される。
【0046】
具体的に、幅方向の位置ずれ量αは、第2のCIS102によって検知された用紙Pの幅方向の位置(用紙Pの側端部Paの位置)に基づいて算出される。すなわち、第2のCIS102によって検知された幅方向の位置と搬送基準位置Kと比較し、これらの間の幅方向の距離K1が用紙Pの幅方向の位置ずれ量αとなる。
【0047】
また、斜行の位置ずれβは、第1のCIS101及び第2のCIS102のそれぞれによって検知された用紙Pの幅方向の位置の差から算出される。つまり、図7に示すように、用紙Pの先端部Pbが第2のCIS102に到達した時点で、第1のCIS101と第2のCIS102とによって搬送基準位置Kからの幅方向の距離K1,K2が検知される。そして、これらの距離K1,K2と、予め設定されている第1のCIS101と第2のCIS102との間の距離M1とから、tanβ=(K1-K2)/M1の式を用いて、斜行の位置ずれ量βが算出される。
【0048】
このようにして、幅方向の位置ずれ量αと斜行の位置ずれ量βとが算出される。なお、図8に示すように、斜行の位置ずれ補正が行われることにより、用紙がPの位置からP´の位置へ移動すると、幅方向の位置ずれ量がαからα´に変化する。従って、この幅方向の位置ずれ量α´を予め算出しておくことで、より高精度な位置ずれ補正を行うことが可能である。ただし、幅方向の位置ずれ量α´は、斜行の位置ずれ補正をどの位置を基準に行うかによって変化する。
【0049】
以上、用紙位置ずれ量の算出方法について、第1のCIS101と第2のCIS102とを例に説明したが、第2のCIS102と第3のCIS103を用いる場合も、同様の方法で用紙位置ずれ量を検知することが可能である。
【0050】
以下、図9図14、及び図15のフローチャートを参照しつつ、本実施形態に係る搬送装置の動作について説明する。
【0051】
図9(a)(b)に示すように、用紙Pが搬送されてきた場合、補正ローラ31は、そのローラ軸が搬送方向(図の左右方向)に対して直交するホームポジションに配置されている。また、この状態で、一対の補正ローラ31は互いに離間し、静止した状態で待機している。
【0052】
その後、図10(a)(b)に示すように、用紙Pの先端部Pbが第1のCIS101を通過し、第2のCIS102に到達すると、第1のCIS101と第2のCIS102とによって用紙Pの側端部Paの位置を検知する「第1位置検知」が行われる(図15のS1)。そして、これらのCIS101,102によって検知された位置情報に基づいて、幅方向の位置ずれ量α(又は斜行の位置ずれ補正に伴うずれ量も含めた位置ずれ量α´)と斜行の位置ずれ量βとが上記位置ずれ量算出部21(図6参照)によって算出される。そして、算出された位置ずれ量に基づいて、幅方向駆動モータ62及び斜行方向駆動モータ63が制御され、補正ローラ31を幅方向に(図10中の矢印S1方向に)移動させると共に、用紙搬送面内の回転方向に(図10中の矢印W1方向に)回転させる。これにより、補正ローラ31を用紙Pの先端部Pbに対して正対させる「迎え動作」が行われる(図15のS2)。
【0053】
その後、補正ローラ31同士が、所定のタイミングで接触し回転が開始されると、図11(a)(b)に示すように、用紙Pが正対する補正ローラ31に迎え入れられ、補正ローラ31によって用紙Pが挟持されながら搬送される。一方、上流側ローラ44は互いに離間した状態となる。
【0054】
その後、図12(a)(b)に示すように、補正ローラ31によって用紙Pを搬送しながら、補正ローラ31を上記迎え動作とは反対方向(図の矢印S2方向及び矢印W2方向)に駆動させる「戻し動作」を行う(図15のS3)。これにより、用紙Pの幅方向の位置ずれ及び斜行の位置ずれが補正される「第1補正」が行われる。
【0055】
さらに、図13(a)(b)に示すように、用紙Pの先端部Pbが第3のCIS103に到達すると、第2のCIS102と第3のCIS103とによって再度用紙Pの側端部Paの位置を検知する「第2位置検知」が行われる(図15のS4)。そして、これらのCIS102,103によって検知された位置情報に基づいて、幅方向の位置ずれ量と斜行の位置ずれ量とが位置ずれ量算出部21によって算出される。そして、算出された位置ずれ量に基づいて、幅方向駆動モータ62及び斜行方向駆動モータ63が制御され、補正ローラ31を幅方向に(図13中の矢印S3方向又は矢印S4方向に)移動させると共に、用紙搬送面内の回転方向に(図13中の矢印W3方向又は矢印W4方向に)回転させて、用紙Pの位置ずれを補正する「第2補正」が行われる(図15のS5)。
【0056】
このように、戻し動作(第1補正)の後にも、用紙Pの位置ずれを検知し(第2位置検知)、その検知結果に基づいて用紙Pの位置ずれを補正することで(第2補正)、補正ローラ31によって用紙Pが搬送される間に生じる位置ずれを解消することができる。また、このような戻し動作後の位置ずれ検知(第2位置検知)は、用紙が第2のCIS102と第3のCIS103との両方を通過中であれば、所定の間隔で複数回行うことができる。従って、本実施形態では、このような位置ずれ検知(第2位置検知)を、用紙Pが渡し胴8の用紙受取位置Aに到達するまでに繰り返し行い、そのたびに位置ずれ補正(第2補正)を行うようにしている(図15のS4~S7)。
【0057】
ところで、補正ローラ31は、第2補正を行った後、図14(a)(b)に示すように、渡し胴8のグリッパ16が用紙受取位置Aに到達するタイミングに合わせて用紙Pを用紙受取位置Aへ搬送するが、このとき、理想的には、図16に示すように、補正ローラ31のローラ軸31Mが理想の搬送方向Xに対して直交するホームポジションの向きHに配置されることが望ましい。しかしながら、実際は、補正ローラ31の用紙搬送面内での回転駆動に誤差があったり、補正ローラ31と用紙との間でスリップが生じたりするなどの理由で、第2補正を終了した時点で、図17に示すように、補正ローラ31がホームポジションの向きHに配置されない場合がある。このように、補正ローラ31のローラ軸31Mがホームポジションの向きHに対して傾斜した状態に配置されると、補正ローラ31による搬送方向Xrが理想の搬送方向Xに対して斜めになるため、図17の二点鎖線で示すように、搬送に伴って用紙Pが理想の位置から幅方向Yに位置ずれしてしまう。
【0058】
また、本実施形態では、用紙の斜行の位置ずれ量の算出に、2つのCISの検知結果が必要であるところ、図17に示すように、用紙Pの後端部Pcが第2のCIS102を通過した以降は、最下流の第3のCIS103のみでしか用紙の位置検知を行えないため、CISの検知結果に基づく第2補正は行えなくなる。従って、仮に本実施形態において、第2補正の終了後、補正ローラ31がホームポジションの向きHに対して傾いた状態で用紙Pを搬送すると、その搬送距離に応じた幅方向のずれが発生する。具体的に、このとき発生する用紙の幅方向の位置ずれ量Bは、ホームポジションの向きHに対する補正ローラ31のローラ軸31Mの傾斜角度θと、用紙Pの後端部Pcが第2のCIS102を通過してから補正ローラ31を通過するまでの搬送距離Aとの値から、下記式(1)に基づき求められる。
【0059】
B=Atanθ・・・・・(1)
【0060】
そこで、本実施形態においては、補正ローラ31の傾きによって生じる用紙の幅方向の位置ずれ量Bを算出し、その位置ずれ量Bに基づいて補正ローラ31の幅方向の位置を修正するようにしている(図15のS6)。以下、補正ローラ31の幅方向位置の修正方法について説明する。
【0061】
まず、第2補正(第2補正を複数回行う場合は全ての第2補正)を終了した時点で、幅方向ずれ量算出部22(図6参照)が、ホームポジションの向きHに対する補正ローラ31の傾斜角度θの情報を取得する。本実施形態では、幅方向ずれ量算出部22が、補正ローラ31の用紙搬送面内での回転量及び回転方向を検知する傾き検知手段としてのロータリーエンコーダ58から、ホームポジションの向きHに対する補正ローラ31の傾斜角度θの情報を取得する。そして、幅方向ずれ量算出部22は、補正ローラ31の傾斜角度θと、予め入力されている第2のCIS102から補正ローラ31までの搬送距離Aとに基づき、上記式1を用いて幅方向の位置ずれ量Bを算出する。
【0062】
そして、算出された幅方向の位置ずれ量Bに基づき、補正ローラ31を、算出された位置ずれ量B分、幅方向の一方へ移動させる。具体的には、図18に示すように、補正ローラ31がホームポジションの向きHに対して時計回り(Z1方向)に傾いている場合は、用紙Pの幅方向の位置ずれが図の上方に向かって発生するので、これとは反対の下方向(Y1方向)に、算出された位置ずれ量B分、補正ローラ31を移動させる。また、反対に、図19に示すように、補正ローラ31がホームポジションの向きHに対して反時計回り(Z2方向)に傾いている場合は、用紙の幅方向の位置ずれが図の下方に向かって発生するので、これとは反対の上方向(Y2方向)に、算出された位置ずれ量B分、補正ローラ31を移動させる。
【0063】
要するに、図18又は図19に示すように、補正ローラ31がホームポジションの向きHに対して用紙搬送面内での回転方向のいずれかに傾斜している場合は、その補正ローラ31のローラ軸31Mと直交する方向であるローラ搬送方向Xr(実際の搬送方向)に用紙Pの位置ずれが発生する。言い換えれば、ローラ搬送方向Xrが、用紙Pの幅方向両端のうちのいずれか一方の側に向かうように傾いている場合は(図18では、ローラ搬送方向Xrが用紙Pの両端のうち図の上側の端側に向かうように傾き、図19では、ローラ搬送方向Xrが、用紙Pの両端のうち図の下側の端側に向かうように傾いている。)、ローラ搬送方向Xrが傾いている用紙端部側に用紙Pの位置ずれが発生する。従って、補正ローラ31の傾きによる用紙Pの幅方向の位置ずれを修正するには、補正ローラ31を、ローラ搬送方向Xrが理想の搬送方向Xに対して傾いている方向とは反対の幅方向、又は、ローラ搬送方向Xrが用紙Pの幅方向両端のうちのいずれか一方の側に傾いている方向とは反対の幅方向へ移動させればよい。なお、第2補正を終えた時点で、補正ローラ31がホームポジションの向きHに対して傾いていない場合は、補正ローラ31の搬送に伴う用紙の幅方向の位置ずれも生じないので、補正ローラ31の幅方向位置の修正を行う必要はない。
【0064】
補正ローラ31を幅方向へ移動させる方法としては、用紙Pの後端部Pcが第2のCIS102を通過した後の所定のタイミングで瞬間的に補正ローラ31を幅方向へ移動させてもよいし、補正ローラ31が用紙Pを搬送している間に略一様な速度で補正ローラ31を幅方向へ移動させてもよい。また、補正ローラ31が用紙Pを搬送している間に、幅方向への移動速度を変化させながら(例えば、加速、等速、減速の順に変化させて)補正ローラ31を幅方向へ移動させてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態においては、補正ローラ31の傾きによって生じる用紙Pの幅方向の位置ずれ量を、修正すべき補正ローラ31の幅方向の移動量として算出し、その算出された位置ずれ量に基づいて補正ローラ31を幅方向の位置ずれを打ち消す方向に移動させることで、用紙Pの幅方向の位置ずれを解消することが可能である。これにより、補正ローラ31から渡し胴8へ用紙Pを高精度に搬送することができるようになり、用紙Pへの画像形成を精度良く行うことができるようになる。また、両面印刷を行う場合は、表側の画像と裏側の画像との相対的な位置ずれをなくすことが可能である。
【0066】
以上、本発明について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0067】
上述の実施形態では、理想の搬送方向Xに対して直交する方向をホームポジションの向きHとしているが、ホームポジションの向きHは任意に設定することが可能である。
【0068】
また、用紙の側端部の位置を検知する位置検知手段は、CISに限らず、用紙の幅方向に沿って複数配置されるフォトセンサなど、用紙の側端部を検知できるものであれば他の検知手段を用いてもよい。
【0069】
また、本発明に係る搬送装置は、図1に示すようなインクジェット式画像形成装置に限らず、電子写真式画像形成装置にも適用可能である。
【0070】
図20に、本発明に係る搬送装置を電子写真式画像形成装置に適用した例を示す。
【0071】
図20に示すように、電子写真式画像形成装置300は、用紙Pに画像を形成する画像形成部301と、原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部302と、セットされた原稿Dを原稿読込部302に搬送する原稿搬送部310と、用紙Pが収納された給紙部(給紙カセット)312~314と、用紙P上の未定着画像を定着する定着装置320と、給紙部312~314から給送された用紙Pを画像形成部301へ搬送する搬送装置330とを備えている。また、画像形成部301は、感光体ドラム305と、原稿読込部302で読み込んだ画像情報に基づいて露光光Lを感光体ドラム305上に照射する露光部303と、感光体ドラム305上にトナー像(画像)を形成する現像部304と、感光体ドラム305上に形成されたトナー像を用紙Pに転写する転写部307などを備えている。
【0072】
電子写真式画像形成装置300の基本動作について簡単に説明する。
【0073】
原稿Dが原稿搬送部310によって図20中の矢印方向に搬送され、原稿Dの画像情報が原稿読込部302によって読み取られると、その画像情報に基づいて露光部303から感光体305上の帯電面に露光光Lが照射されて、感光体ドラム305上に静電潜像が形成される。続いて、感光体305上の静電潜像に対して現像部304からトナーが供給されトナー画像(可視画像)が形成される。また、給紙部312~314のいずれかから給送された用紙Pが、搬送装置330によって転写部307へ搬送され、感光体305上に形成されたトナー画像が用紙P上に転写される。その後、用紙Pは、定着装置320へ搬送され、トナー画像が定着された後、装置外に排出される。
【0074】
このような電子写真式画像形成装置300においては、搬送装置330によって用紙Pを感光体ドラム305上のトナー画像とタイミングを合わせて転写部307へ精度良く搬送することが求められる。従って、斯かる搬送装置330においても、上述の実施形態に係る搬送装置7と同様に、補正ローラ31が用紙の位置補正(第2補正)を行った後、所定のホームポジションに対する補正ローラ31の用紙搬送面内での回転方向の傾きを検知し、検知された補正ローラ31の傾きに基づいて、補正ローラ31の用紙幅方向の移動量を制御することで、用紙Pの幅方向の位置ずれを解消して、用紙Pを高精度に搬送することが可能となる。
【0075】
また、本発明に係る搬送装置は、画像形成装置に限らず、画像が形成された用紙に対してステープル処理や折り処理等の後処理を行う後処理装置にも適用可能である。
【0076】
図21に、本発明に係る搬送装置を後処理装置に適用した例を示す。
【0077】
図21に示す後処理装置400は、用紙にパンチ処理を行う穿孔装置410と、用紙に綴じ処理を行うステープル処理装置420と、用紙に中折り処理を行う折り処理装置430と、複数のトレイ(積載部)441,442,443と、画像形成装置100から搬送された用紙を穿孔装置410へ搬送する搬送装置450とを備えている。後処理装置400は、画像形成装置100から搬送された用紙を3つの搬送経路J1~J3のうちいずれかの搬送経路に搬送して、異なる後処理を施す。
【0078】
第1搬送経路J1は、穿孔装置410によってパンチ処理が施された用紙、又はパンチ処理が施されない用紙を、第1トレイ441へ搬送するための経路である。第2搬送経路J2は、用紙をステープル処理装置420へ搬送して、綴じ処理が施された用紙を第2トレイ442へ搬送するための経路である。第3搬送経路J3は、用紙を折り処理装置430へ搬送して、中折り処理された用紙を第3トレイ443へ搬送するための経路である。
【0079】
このような後処理装置400に設けられる搬送装置450においても、上述の実施形態に係る搬送装置7と同様に、補正ローラ31が用紙の位置補正(第2補正)を行った後、所定のホームポジションに対する補正ローラ31の用紙搬送面内での回転方向の傾きを検知し、検知された補正ローラ31の傾きに基づいて、補正ローラ31の用紙幅方向の移動量を制御することで、用紙Pの幅方向の位置ずれを解消して、用紙Pを高精度に搬送することが可能となる。
【0080】
また、本発明に係る搬送装置は、画像形成用のシートを搬送する搬送装置に限らない。例えば、原稿を搬送する搬送装置や、電子基板を搬送する搬送装置など、その他のシートを搬送する搬送装置にも本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
2 画像形成部
7 搬送装置
20 制御部(制御手段)
31 補正ローラ(補正手段)
31M ローラ軸
58 ロータリーエンコーダ(傾き検知手段)
100 インクジェット式画像形成装置
101 CIS(位置検知手段)
102 CIS(位置検知手段)
103 CIS(位置検知手段)
300 電子写真式画像形成装置
301 画像形成部
330 搬送装置
A 第2のCISから補正ローラまでの搬送距離
B 用紙の幅方向の位置ずれ量
H ホームポジションの向き
P 用紙(シート)
X 理想の搬送方向
Xr ローラ搬送方向
θ 補正ローラの傾斜角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【文献】特開2018-16492号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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