(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】光変調器及びそれを用いた光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/035 20060101AFI20221109BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20221109BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G02F1/035
H01P5/08 B
H05K1/02 T
H05K1/02 P
H05K1/02 C
(21)【出願番号】P 2019061560
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】菅又 徹
【審査官】井部 紗代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191871(JP,A)
【文献】国際公開第2014/192687(WO,A1)
【文献】特開2011-013646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0086288(US,A1)
【文献】特開2010-028800(JP,A)
【文献】特開2016-194600(JP,A)
【文献】特開2014-149394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107995776(CN,A)
【文献】特開2009-054667(JP,A)
【文献】特開2018-106091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
H05K 1/00 - 1/02
H05K 1/11
H05K 3/40 - 3/42
H05K 3/46
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号電極を備える光変調素子と、
前記信号電極のそれぞれに印加する電気信号を入力する複数の信号入力端子と、
前記信号入力端子のそれぞれと前記信号電極のそれぞれとを電気的に接続する複数の信号導体パターン及び複数のグランド導体パターンが形成された中継基板と、
前記光変調素子及び前記中継基板を収容する筺体と、
を備える光変調器であって、
前記中継基板のうち、前記信号入力端子からの電気信号が前記信号導体パターンに入力される信号入力辺において、前記信号入力端子は、当該信号入力辺から前記信号導体パターンの上に延在するよう配され、
前記中継基板は、前記信号導体パターンが形成されたオモテ面において、隣接する前記信号導体パターンの間に形成された少なくとも一つの前記グランド導体パターン
の領域内に、
または隣接する2つの前記グランド導体パターンの間に、前記信号入力辺から延在する少なくとも一つの溝を有し、
前記溝は、前記信号入力辺から延在する長さが、前記信号入力端子が前記信号入力辺から延在する長さよりも長くなるように形成されている、
光変調器。
【請求項2】
前記溝は、前記中継基板のうち電気信号が前記信号導体パターンから前記光変調素子の前記信号電極へ出力される信号出力辺まで延在する、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記溝は、前記信号入力辺における前記オモテ面から測った前記溝の端部の深さが、前記溝の他方の端部において前記オモテ面から測った溝の深さよりも深く形成されている、
請求項1に記載の光変調器。
【請求項4】
前記溝は、前記オモテ面から測った深さが、前記溝の他方の端部から前記信号入力辺に向かって階段状に又は連続的に深くなるよう形成されている、
請求項3に記載の光変調器。
【請求項5】
前記溝は、前記信号入力辺において前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで形成されているか、又は前記信号入力辺から所定距離の範囲において前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで形成されている、
請求項2ないし4のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項6】
前記溝の内側面、または前記溝の内側面と底面には、金属膜が形成されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項7】
前記溝の内側面および底面には金属膜が形成されており、
前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面には、グランド用導体が形成されており、
前記溝の前記底面には、当該底面の前記金属膜と前記ウラ面の前記グランド用導体とを接続するビアが形成されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記溝は、前記中継基板のうち電気信号が前記信号導体パターンから前記光変調素子の前記信号電極へ出力される信号出力辺まで延在せず、当該溝の全体が、前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで貫通して形成されている、請求項1に記載の光変調器。
【請求項9】
前記溝の内側面には金属膜が形成されている、
請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
前記溝は、前記信号入力辺から延在する長さが、当該延在する方向に対し直交する方向に沿って測った幅よりも長くなるように形成されている、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の光変調器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の光変調器と、
当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、
を備える、
光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号入力端子と光変調素子電極との間の電気信号の伝搬を中継する中継基板を備える光変調器及び当該光変調器を用いた光伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO3(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
このLN基板を用いた光変調素子では、マッハツェンダ型光導波路と、当該光導波路に変調信号である高周波電気信号を印加するための信号電極が設けられている。そして、光変調素子に設けられたこれらの信号電極は、当該光変調素子を収容する光変調器の筺体内に設けれた中継基板を介して、当該筺体に設けられた信号入力端子であるリードピンやコネクタと接続される。これらの信号入力端子である上記リードピンやコネクタが、光変調器に変調動作を行わせるための電子回路が搭載された回路基板に接続されることで、当該電子回路から出力された電気信号が、上記中継基板を介して上記光変調素子の信号電極に印加される。
【0004】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられるほか、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0005】
QPSK変調を行う光変調器(QPSK光変調器)やDP-QPSK変調を行う光変調器(DP-QPSK光変調器)は、所謂ネスト型と呼ばれる入れ子構造になった複数のマハツェンダ型光導波路を備え、そのそれぞれが少なくとも一つの信号電極を備える。したがって、これらの光変調器は、複数の信号電極を備えるものとなり、これらの信号電極に与えられる高周波電気信号が協働して上記DP-QPSK変調動作を行う。
【0006】
そして、このような複数の信号電極にそれぞれ与えられる高周波電気信号が協働する光変調器においては、すべての高周波電気信号が雑音等の影響を受けることなく光変調素子の信号電極に入力されることが必要となる。しかしながら、その一方で、光変調器の小型化への要請は不変であり、光変調器の筺体の小型化に伴って中継基板の小型化が進んでいる。その結果、複数の異なる高周波信号が狭い中継基板に近接集中して伝搬することとなり、中継基板上に形成された高周波信号線路間での電気的なクロストークが無視し得なくなりつつある。
【0007】
また、商用のDP-QPSK変調器は、現在では100Gb/sの伝送レートで使用さることが多いが、この伝送レートを400Gb/sへ拡大するための開発も進んでいる。今後、伝送レートが拡大されれば上記中継基板で発生する高周波信号線路間のクロストークの問題は、更に深刻な課題となり得る。
【0008】
上記クロストークを抑制する方法として、隣接する高周波信号線路間の距離を拡大することが考えられるが、この方法は、上記のような光変調器の小型化への要請に反することとなり、採用は困難である。このため、例えば高周波信号線路間に設けられたグランド電極にビアを設けて中継基板裏面のグランド層に接続することで、当該グランド電極を強化して上記高周波信号線路間のシールド効果を上げる方法等が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
しかしながら、400Gb/s又はこれを超える高伝送レートのDP-QPSK変調器では、上述のようなビアだけでは十分にクロストークを抑制しきれない問題が発生している。
【0010】
本願発明の発明者が鋭意行った実験によれば、上記のような高伝送レートのDP-QPSK変調器では、上記クロストークは、近接した高周波信号線路間における直接的な信号エネルギの授受だけでなく、中継基板の主に高周波信号の入力部(信号入力部)において信号伝搬モードの変換(以下、伝搬モード変換)が発生することに伴う、当該入力部での高周波信号の漏洩の影響も無視し得ないことが分かってきている。
【0011】
即ち、光変調器への高周波信号入力には一般にコネクタやリードピン等が用いられるため、中継基板に入力されるまでの高周波信号は同軸モードで伝搬する。これに対し、光変調素子基板や中継基板に設けられる高周波信号線路は、一般にコプレーナ線路であって、当該線路での伝搬モードはコプレーナモード(以下、CPWモード)である。
【0012】
このため、中継基板の信号入力部では、同軸モードからCPWモードへの伝搬モード変換(すなわち、異種モード変換)が発生し、同軸モードで伝搬してきた高周波信号のエネルギの一部が中継基板の内部や外部(空中)へ、放射モードとなって放出されることとなる。そして、このような、中継基板の内部や外部(空中)へ放出された高周波信号エネルギの一部が、上記クロストークの発生に付加的に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記背景より、光変調素子の信号電極のそれぞれと信号入力端子のそれぞれとを電気的に接続する中継基板を備えた光変調器において、伝送レートの高速化に伴う中継基板上の信号導体パターン間のクロストーク増加を効果的に抑制して、良好な光変調特性を実現することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一の態様は、複数の信号電極を備える光変調素子と、前記信号電極のそれぞれに印加する電気信号を入力する複数の信号入力端子と、前記信号入力端子のそれぞれと前記信号電極のそれぞれとを電気的に接続する複数の信号導体パターン及び複数のグランド導体パターンが形成された中継基板と、前記光変調素子及び前記中継基板を収容する筺体と、を備える光変調器であって、前記中継基板のうち、前記信号入力端子からの電気信号が前記信号導体パターンに入力される信号入力辺において、前記信号入力端子は、当該信号入力辺から前記信号導体パターンの上に延在するよう配され、前記中継基板は、前記信号導体パターンが形成されたオモテ面において、隣接する前記信号導体パターンの間に形成された少なくとも一つの前記グランド導体パターンの領域内に、または隣接する2つの前記グランド導体パターンの間に、前記信号入力辺から延在する少なくとも一つの溝を有し、前記溝は、前記信号入力辺から延在する長さが、前記信号入力端子が前記信号入力辺から延在する長さよりも長くなるように形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記中継基板のうち電気信号が前記信号導体パターンから前記光変調素子の前記信号電極へ出力される信号出力辺まで延在する。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記信号入力辺における前記オモテ面から測った前記溝の端部の深さが、前記溝の他方の端部において前記オモテ面から測った溝の深さよりも深く形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記オモテ面から測った深さが、前記溝の他方の端部から前記信号入力辺に向かって階段状に又は連続的に深くなるよう形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記信号入力辺において前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで形成されているか、又は前記信号入力辺から所定距離の範囲において前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝の内側面、または前記溝の内側面と底面には、金属膜が形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝の内側面および底面には金属膜が形成されており、前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面には、グランド用導体が形成されており、前記溝の前記底面には、当該底面の前記金属膜と前記ウラ面の前記グランド用導体とを接続するビアが形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記中継基板のうち電気信号が前記信号導体パターンから前記光変調素子の前記信号電極へ出力される信号出力辺まで延在せず、当該溝の全体が、前記中継基板の前記オモテ面に対向するウラ面まで貫通して形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝の内側面には金属膜が形成されている。
本発明の他の態様によると、前記溝は、前記信号入力辺から延在する長さが、当該延在する方向に対し直交する方向に沿って測った幅よりも長くなるように形成されている。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調器と、当該光変調器に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中継基板を備えた光変調器において、伝送レートの高速化に伴う中継基板上の信号導体パターン間におけるクロストークの増加を効果的に抑制して、良好な光変調特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調器の平面図である。
【
図4】
図1に示す光変調器に用いられる中継基板のオモテ面を、信号入力端子が配される側から見た斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る光変調器に用いられる中継基板の第1の変形例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る光変調器に用いられる中継基板の第2の変形例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係る光変調器に用いられる中継基板の第3の変形例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る光変調器に用いられる中継基板の第4の変形例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る光変調器に用いられる中継基板の第5の変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に示す実施形態及びその変形例は、上述した課題を解決すべく、光変調器の小型化の要請に反することなく従来と同程度もしくはそれ以下のコストで、且つ製造容易性にも配慮しつつ、伝送レートの高速化に伴う中継基板上の隣接する信号導体パターン間のクロストークの増加を抑制する。具体的には、中継基板上の信号導体パターンを高周波が伝搬することに伴って当該信号導体パターンに沿って発生する放射モード(以下、伝搬放射マイクロ波という)、および、信号入力端子と信号導体パターンとの接続点における異種モード変換に伴って発生する放射モード(以下、接続点放射マイクロ波という)の2つの放射マイクロ波が中継基板内を伝搬するのを同時に抑制し、隣接する信号導体パターン間での高周波エネルギの授受の発生を抑制するものである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1および
図2は、本発明の第1の実施形態に係る光変調器100の構成を示す図である。ここで、
図1、
図2は、それぞれ本光変調器100の平面図および側面図である。
【0020】
本光変調器100は、光変調素子102と、光変調素子102を収容する筺体104と、光変調素子102に光を入射するための入力光ファイバ108と、光変調素子102から出力される光を筺体104の外部へ導く出力光ファイバ110と、を備える。
【0021】
光変調素子102は、例えば400Gb/sの光変調を行うDP-QPSK変調器であり、例えばLN基板上に設けられた4つのマッハツェンダ型光導波路を備える。4つのマッハツェンダ型光導波路には、当該マッハツェンダ型光導波路を伝搬する光波をそれぞれ変調する4つの信号電極112a、112b、112c、112dが設けられている。また、従来技術として知られているように、光変調素子102のLN基板の表面には、上記4つの信号電極112a、112b、112c、112dのそれぞれに、例えばコプレーナ線路(CPW、Coplanar Waveguide)を構成するように、グランド電極122a、122b、122c、122d、122e(
図3参照。
図1においては不図示。)が設けられている。
【0022】
具体的には、上記グランド電極122a、122b、122c、122d、122eは、LN基板表面の面内において信号電極112a、112b、112c、112dをそれぞれ挟むように配され、4つの信号電極112a、112b、112c、112dと共に所定の動作周波数において所定の特性インピーダンスを有するコプレーナ線路を構成する。
【0023】
4つの信号電極112a、112b、112c、112dには、4つの高周波の電気信号(変調信号)がそれぞれ入力される。これらの高周波電気信号は、協働して上記4つのマッハツェンダ型光導波路における光波の伝搬を制御し、全体として400Gb/sのDP-QPSK変調の動作を行う。
【0024】
光変調素子102から出力される2つの光は、例えばレンズ光学系(不図示)により偏波合成され、出力光ファイバ110を介して筺体104の外部へ導かれる。
【0025】
筺体104は、光変調素子102が固定されるケース114aとカバー114bとで構成されている。なお、筺体104内部における構成の理解を容易するため、
図1においては、カバー114bの一部のみを図示左方に示しているが、実際には、カバー114bは、箱状のケース114aの全体を覆うように配されて筺体104の内部を気密封止する。ケース114aは、金属、又は例えば金メッキされたセラミック等で構成されており、電気的には導電体として機能する。また、筺体104には通常、DC制御用等の複数のピンが設置されるが、本図面では省略している。
【0026】
ケース114aは、光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dのそれぞれに印加する高周波の電気信号を入力する信号入力端子124a、124b、124c、124dを備えた電気コネクタ116a、116b、116c、116dが設けられている。また、筺体104の内部には、また、中継基板118が収容されている。中継基板118には、後述するように、信号入力端子124a、124b、124c、124dのそれぞれと、光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dのそれぞれの一端とを電気的に接続する信号導体パターン330a、330b、330c、330dと、グランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eと、が形成されている。
【0027】
光変調素子102の信号電極112a,112b、112c、112dの他端は、所定のインピーダンスを有する終端器120により終端されている。これにより、信号電極112a、112b、112c、112dのそれぞれの一端に入力された電気信号は、進行波として信号電極112a、112b、112c、112d内を伝搬する。
【0028】
電気コネクタ116a、116b、116c、116dのそれぞれは、例えば、プッシュオン型の同軸コネクタのソケットである。これらの電気コネクタ116a、116b、116c、116dの円柱状のグランド導体は、ケース114aに電気的に接続され固定される。したがって、ケース114aは、グランド電位に接続される構造物に対応する。なお、信号入力端子124a、124b、124c、124dは、例えば、電気コネクタ116a、116b、116c、116dであるコネクタソケットのそれぞれにおいて上記グランド導体の円柱形状の中心線にそって延在する中心導体(芯線)で構成される。
【0029】
図3は、
図1におけるA部の部分詳細図であり、中継基板118及びその周囲の構成を示す図である。また、
図4は、中継基板118単体のオモテ面418e(
図1及び
図3における図示の面)を、信号入力端子124a等の配される側から見た斜視図である。
【0030】
中継基板118のオモテ面418eには、信号導体パターン330a、330b、330c、330dと、グランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eと、が設けられている。
【0031】
これらのグランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eは、信号導体パターン330a、330b、330c、330dのそれぞれを中継基板118のオモテ面418eの面内において挟むように設けられている。これにより、信号導体パターン330a、330b、330c、330dは、それぞれ、グランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eと共にコプレーナ線路を構成している。
【0032】
図3に示すように、光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dは、それぞれ、例えば導体ワイヤ126を用いたワイヤボンディングにより、中継基板118の信号導体パターン330a、330b、330c、330dの一端と電気的に接続されている。ここで、導体ワイヤ126は、例えば金ワイヤであるものとすることができる。
【0033】
また、光変調素子102において信号電極112a、112b、112c、112dと共にコプレーナ線路を構成するグランド電極122a、122b、122c、122d、122eは、それぞれ、上記と同様に例えば導体ワイヤ126を用いたワイヤボンディングにより、中継基板118のグランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eの一端と電気的に接続されている。なお、上述した導体ワイヤ126を用いたワイヤボンディングは一例であって、これには限られない。導体ワイヤ126のワイヤボンディングに代えて、例えば金リボン等の導体リボンを用いたリボンボンディングを用いることもできる。
【0034】
図3、
図4に示すように、筺体104のケース114aに配された電気コネクタ116a、116b、116c、116dの信号入力端子124a、124b、124c、124dは、それぞれ、中継基板118の信号導体パターン330a、330b、330c、330dの他端に固定され電気的に接続されている。これらの固定および電気的接続は、例えば、ハンダ、ロウ材、又は導電性接着剤により行うものとすることができる。
【0035】
ここで、中継基板118のうち、信号導体パターン330a、330b、330c、330dと信号入力端子124a、124b、124c、124dとがそれぞれ接続される側の辺を信号入力辺418aといい、信号入力辺418aを1辺とする中継基板118の側面を入力側側面418bというものとする。また、中継基板118のうち、信号入力辺418aに対向する辺、すなわち、信号導体パターン330a、330b、330c、330dと光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dとが接続される側の辺を信号出力辺418cといい、信号出力辺418cを1辺とする中継基板118の側面を出力側側面418dというものとする。また、
図3において、中継基板118のうち、入力側側面418bと直交する図示右側の側面を右側面418g、図示左側の側面を左側面418hといものとする。さらに、中継基板118の、オモテ面418e対向する面を、ウラ面418fというものとする。
【0036】
中継基板118の信号導体パターン330a、330b、330c、330d上には、
図3に示すように、電気コネクタ116a、116b、116c、116dの信号入力端子124a、124b、124c、124dが、信号入力辺418aから所定の長さaで延在するよう配されている。ここで、信号入力辺418aおよびその近傍において信号導体パターン330a、330b、330c、330dが信号入力端子124a、124b、124c、124dに接続されるそれぞれの部分を、入力接続点というものとする。
【0037】
特に、本実施形態の光変調器100の中継基板118は、信号導体パターン330a、330b、330c、330dが形成されたオモテ面418eにおいて、グランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eに、それぞれ、信号入力辺418a(又は入力側側面418b)から延在する溝350a、350b、350c、350d、350eが設けられている。また溝350a、350b、350c、350d、350eは中継基板118単体のオモテ面418eから(中継基板118を貫通しない)所定の深さを有している。ここで、本実施形態では、一例として、溝350a、350b、350c、350d、350eは互いに同じサイズで構成されているものとする。
【0038】
以下、光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dを総称して信号電極112ともいい、グランド電極122a、122b、122c、122d、122eを総称してグランド電極122ともいう。また、電気コネクタ116a、116b、116c、116dを総称して電気コネクタ116ともいい、信号入力端子124a、124b、124c、124dを総称して信号入力端子124ともいう。また、中継基板118の信号導体パターン330a、330b、330c、330dを総称して信号導体パターン330ともいい、グランド導体パターン340a、340b、340c、340d、340eを総称してグランド導体パターン340ともいう。さらに、溝350a、350b、350c、350d、350eを総称して溝350ともいう。
【0039】
ここで、4つの信号入力端子124は、上述のとおり同軸コネクタである4つの電気コネクタ116の中心導体であるため、当該信号入力端子124を伝搬する高周波電気信号の伝搬モードは同軸モードである。また、上述のとおり、中継基板118上の信号導体パターン330は、それぞれ、6つのグランド導体パターン340と共にコプレーナ線路を構成しており、高周波電気信号をコプレーナモード(CPWモード)で伝搬させる。
【0040】
このため、信号導体パターン330が信号入力端子124と接続される入力接続点では、同軸モードからCPWモードへの伝搬モードの変換(異種モード変換)が発生する。したがって、上記入力接続点のそれぞれにおいて、異種モード変換に伴って接続点放射マイクロ波が発生し、中継基板118の内部を伝搬し得る。
【0041】
また、中継基板118の信号導体パターン330は、上記入力接続点を起点とする長さ方向に高周波電気信号が伝搬する際に伝搬放射マイクロ波を発生させ、この伝搬放射マイクロ波が中継基板118内を伝搬し得る。なお、この伝搬放射マイクロ波は、信号導体パターン330の長さ方向の各部から発生し得るものであり、その発生強度は一般的に、例えば入力接続点において最大強度を持ち、信号入力辺418aから離れるに従って減少していく。
【0042】
上記の構成を有する光変調器100は、グランド導体パターン340に、それぞれ、信号入力辺418aから延在する溝350が設けられているので、上記入力接続点において発生し得る接続点放射マイクロ波、および信号導体パターン330の入力接続点近傍で発生する伝搬放射マイクロ波は、それぞれ溝350が形成する空気壁により中継基板118内部における伝搬が阻止されることとなる。
【0043】
すなわち、光変調器100では、接続放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波のそれぞれを介した信号導体パターン330間の高周波エネルギの授受が、溝350の存在により抑制される。
【0044】
その結果、光変調器100では、400Gb/s以上の伝送レートで動作される場合でも、信号導体パターン330どうしの間隔を広げることなく(従って中継基板118及び光変調器100のサイズ増加を招くことなく)、且つ、従来と同程度もしくはそれ以下のコストで、信号導体パターン330間のクロストークを効果的に低減して、良好な光変調特性を実現することができる。
【0045】
ここで、本願発明の発明者の知見によれば、溝350のサイズは、信号入力端子124がそれぞれ信号入力辺418aから信号導体パターン330上を延在する長さをL1、当該溝350が信号入力辺418aから延在する長さをL2、当該長さ方向に直交する方向に測った幅をWとしたとき(
図3参照)、以下のいずれかの関係を有することが好ましい。ここで、長さL1は、上述のとおり、信号入力端子124がそれぞれ信号入力辺418aから信号導体パターン330上を延在する長さである。以下、長さL1を端子延在長さL1という。
L2>L1 (1)
L2>W (2)
【0046】
なお、長さL2は、溝350が信号入力辺418aから溝350に沿って延在する長さであり、信号入力辺418aと溝350の端部との間の信号入力辺418aと直交する方向成分の距離ではないことに留意されたい。例えば、溝350が直線でなく曲線状に形成される場合には、当該曲線に沿って測った長さ(例えば、溝350の幅方向中心線が延在する長さ)である。また、幅Wは、溝350の延在方向に沿って変動する場合には、各部における幅の平均値又は最大値とすることができる。
【0047】
式(1)は、信号入力端子124が信号入力辺418aから延在する端子延在長さL1に対し、信号入力辺418aから延在する溝350の長さL2が長くなるよう構成されることを意味する。ここで、L2>L1であることが望ましいのは、入力接続点において接続点放射マイクロ波が端子延在長さL1の範囲に亘って発生し得るため、溝の長さL2が端子延在長さL1より短いと、当該接続点放射マイクロ波に対する伝搬抑制効果が低下するためである。
【0048】
また、式(2)は、溝350が、信号入力辺418aから延在する方向に対し直交する方向に沿って測った幅Wに対し、当該延在する長さL2が長くなるように形成されることを意味する。ここで、L2>Wであることが望ましいのは、溝350の長さL2が幅Wより短いと、信号入力辺418a近傍の信号導体パターン330から発生し得る伝搬放射マイクロ波を十分抑制することができない場合があり得るためであり、また、W>L2とすると溝350の幅を不要に大きくし、中継基板118の機械的強度が低下する結果となり得るためである。
【0049】
なお、
図3では、信号入力端子124aおよび溝350aを例にとり、上記端子延在長さL1並びに溝350の長さL2及び幅Wを示したが、これらは、他の溝350b、350c、350d、350eにおいても同様に定義され得る。また、本実施形態では、5つの溝350は互いに同じサイズで形成されるものとしたが、これには限られない。それぞれの溝350において式(1)又は式(2)の関係を満たす限りにおいて、溝350は互いに異なるサイズで構成されるものとすることもできる。また、上述した端子延在長さL1、溝350の長さL2及び幅W、並びに式(1)又は式(2)に示す好ましい条件は、後述する第1ないし第5の変形例においても同様に定義され、及び適用され得る。
【0050】
さらに、溝350の内面に金属膜を形成すれば(メタライズを施せば)、上記接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の中継基板118内への伝搬抑制効果をより高めることができる。これらの金属膜は、少なくとも、溝350の内面のうち信号入力辺418aの方向において対向する2つの内側面に設けられることが望ましい。これに加えて、溝350の底面(オモテ面418eに並行な面)及び又は端面(入力側側面418bに並行な面)にも金属膜が形成されていれば、更に望ましい。
【0051】
なお、本実施形態では、5つのグランド導体パターン340のそれぞれに一つの溝350を設けるものとしたが、これには限られない。隣接する信号入力端子124間及び又は隣接する信号導体パターン330間のクロストークを低減する観点からは、少なくとも隣接する信号導体パターン330の間に形成されたグランド導体パターン340(すなわち、本実施形態では、グランド導体パターン340b、340c、340d)に、少なくとも一つの溝350を有していればよい。
【0052】
ただし、本実施形態のように隣接する信号導体パターン330の間に挟まれないグランド導体パターン340a、340eにも溝350を形成すれば、例えば最も外側に位置する信号導体パターン330a、330dの入力接続点から発生して中継基板118の入力側側面418bと直交する右側面418gおよび左側面418hへ伝搬して反射する接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の伝搬をも低減することができる。これにより、例えば、信号導体パターン330a、330dから発生して自身へ戻って来る接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波を低減し、当該戻ってくる反射マイクロ波に起因して当該信号導体パターン330a、330dに発生するノイズを低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、隣接する信号導体パターン330の間にそれぞれ一つのグランド導体パターン340を設けるものとしたが、これには限られない。隣接する信号導体パターン330の間に設けるグランド導体パターン340は複数でもよい。この場合には、隣接する信号導体パターン330の間に設けられた少なくとも一つのグランド導体パターン340に、溝350と同様の溝が形成されるものとすることができる。あるいは、溝350と同様の溝は、隣接する信号導体パターン330の間に設けられた複数のグランド導体パターン340のうち、信号導体パターン330のそれぞれに隣接する(それぞれの信号導体パターン330に最も近い)グランド導体パターン340に、それぞれ設けられるものとすることができる。
【0054】
また、本実施形態では、信号導体パターン330のそれぞれは、一例として、信号入力辺418aと直交する方向に延在する直線形状で形成されるものとしたが、これには限られない。信号導体パターン330は、信号入力端子124の間隔、光変調素子102における信号電極112の間隔、あるいはその他の電気的要求条件に応じて、信号入力辺418aと直交しない直線や曲線で形成されていてもよい。
【0055】
また、
図3においては信号導体パターン330とグランド導体パターン340とのパターン間隔は略一定であるものとして描かれているが、これには限られない。上記パターン間隔は、従来技術に従い、信号導体パターン330とグランド導体パターン340とが形成するコプレーナ線路の分布インピーダンスが光変調素子102の動作周波数の範囲において所定の値の範囲となるように、例えば溝350が形成された信号入力辺418aから長さL2の範囲の部分と、それ以外の部分とで、異なる間隔で形成されるものとすることができる。
【0056】
次に、第1の実施形態に係る光変調器100に用いることのできる、中継基板118の変形例について説明する。
【0057】
<第1の変形例>
図5は、第1の変形例に係る中継基板518の構成を示す図である。この中継基板518は、
図1に示す光変調器100において中継基板118に代えて用いることができる。
図5において、
図4に示す中継基板118と同じ構成要素については、
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図4についての説明を援用する。
【0058】
図5に示す中継基板518は、
図4に示す中継基板118と同様の構成を有するが、溝350a、350b、350c、350d、350eに代えて、溝550a、550b、550c、550d、550eが設けられている点が異なる。溝550a、550b、550c、550d、550eは、溝350a、350b、350c、350d、350eと同様の構成を有するが、中継基板518のうち電気信号が信号導体パターン330から光変調素子102の信号電極112へ出力される信号出力辺418cまで延在せず、溝550a、550b、550c、550d、550eのそれぞれの全体が、中継基板518のオモテ面418eから、当該オモテ面418eに対向するウラ面418fまで貫通して形成されている点が異なる。
【0059】
また、溝550a、550b、550c、550d、550eは、それぞれが有する3つの内側面に金属膜が形成されている(メタライズが施されている)点が、溝350a、350b、350c、350d、350eと異なる。以下、溝550a、550b、550c、550d、550eを総称して溝550ともいう。
【0060】
上記の構成を有する中継基板518は、中継基板518のオモテ面418eにおいて信号入力辺418aから延在する溝550のそれぞれの全体が、中継基板518のウラ面418fまで貫通して形成されている。このため、入力接続点及びその近傍で発生する2つの接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の、中継基板518内部の伝搬が、
図4に示す中継基板118の場合に比べて更に抑制される。また、本変形例では、溝550の3つの全ての内側面に金属膜が形成されているので、接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の伝搬抑制効果は、中継基板118の場合に比べて更に強化される。これにより接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受の低減効果は、中継基板118の場合に比べて更に強化される。
【0061】
<第2変形例>
図6は、第2の変形例に係る中継基板618の構成を示す図である。この中継基板618は、
図1に示す光変調器100において中継基板118に代えて用いることができる。
図6において、
図4に示す中継基板118と同じ構成要素については、
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図4についての説明を援用する。
【0062】
図6に示す中継基板618は、
図4に示す中継基板118と同様の構成を有するが、溝350a、350b、350c、350d、350eに代えて、溝650a、650b、650c、650d、650eが設けられている点が異なる。溝650a、650b、650c、650d、650eは、溝350a、350b、350c、350d、350eと部分的に同様の構成を有するが、中継基板618の信号入力辺418aから、中継基板618のうち電気信号が信号導体パターン330から光変調素子102の信号電極112へ出力される信号出力辺418cまで延在する点が異なる。
【0063】
言い換えれば、本変形例は、
図3に示した中継基板118において、溝350の長さL2を中継基板118の幅Ws(
図3参照)と同じ値に設定した場合(L2=Ws)に相当する。以下、溝650a、650b、650c、650d、650eを総称して溝650ともいう。尚、本例は一例であり溝350が直線でない場合は(L2=Ws)とはならない。
【0064】
上記の構成を有する中継基板618は、信号導体パターン330の長さ方向の各部から発生し得る伝搬放射マイクロ波の中継基板618内部への伝搬が、溝650により信号入力辺418aから信号出力辺418cまで連続して抑制されるので、
図4の中継基板118に比べて、信号導体パターン330間での高周波エネルギの授受がさらに低減される。また、このように信号入力辺418aから信号出力辺418cまで達するように溝650を形成することで、中継基板618は、構造が単純化されるため、
図4の中継基板118に比べて製造が容易となる。
【0065】
なお、上記の高周波エネルギ授受の低減効果は、それぞれの溝650の2つの内側面(すなわち、中継基板618の信号入力辺418aの方向において対向する2つの内側面)に金属膜を形成することにより強化される。さらに、それぞれの溝650の底面(オモテ面418eと平行な面)にも金属膜を形成すれば、中継基板618内を伝搬して当該底面から空中へ放射されるマイクロ波のエネルギをも低減して、上記信号導体パターン330間のクロストークを更に低減することができる。
【0066】
ここで、溝650の上記底面に金属膜を形成した場合、ハンダやロウ材を用いて中継基板618を筺体104へ固定する際に、中継基板618のウラ面418fからはみ出た上記ハンダやロウ材が溝650の底面の金属膜に達し、当該溝650の上記内側面の金属膜を伝わってグランド導体パターン340に達する場合があり得る。このようなグランド導体パターン340に達したハンダやロウ材は、例えば光変調素子102のグランド電極122とグランド導体パターン340との間のワイヤボンディングの際に、グランド導体パターン340におけるワイヤ溶着を困難にする。したがって、このような当該溝650の金属膜を経由したハンダやロウ材のグランド導体パターン340への到達が発生する場合には、例えば、信号出力辺418c近傍においては、溝650の底面に金属膜を形成しないものとしてもよい。
【0067】
なお、本変形例では、溝650を信号出力辺418cまで設けるので、信号導体パターン330における高周波信号の閉じ込め強度が弱い場合や、信号出力辺418cの信号出力点(信号導体パターン330と信号電極112との接続点)における伝搬モードの整合性に違いがある場合などには、信号出力辺418cの信号出力点において、溝650の存在に起因する伝搬モードの乱れ(高周波電気信号の反射や放射など)が発生する場合があり得る。したがって、本変形例は、特に、信号導体パターン330における高周波信号の閉じ込め強度が十分確保されている設計において、中継基板618の構造を単純化してその製造を容易すると共に信号導体パターン330間のクロストークを更に低減したい、という場合に好適な構成であると言うことができる。
【0068】
<第3変形例>
図7は、第3の変形例に係る中継基板718の構成を示す図である。この中継基板718は、
図1に示す光変調器100において中継基板118に代えて用いることができる。
図7は、
図4とは異なり、斜視図ではなく三面図を用いて中継基板718の構成を示している。
図7において、
図4に示す中継基板118と同じ構成要素については、
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図4についての説明を援用する。
【0069】
図7に示す中継基板718は、
図4に示す中継基板118と同様の構成を有するが、溝350a、350b、350c、350d、350eに代えて、溝750a、750b、750c、750d、750eが設けられている点が異なる。
【0070】
溝750a、750b、750c、750d、750eは、溝350とは異なり、信号入力辺418aにおいてオモテ面418eから測ったこれらの溝750a、750b、750c、750d、750eの端部の深さが、それらの溝750a、750b、750c、750d、750eの他方の端部においてオモテ面418eから測ったこれらの溝750a、750b、750c、750d、750eの深さよりも深く形成されている。具体的には、溝750a、750b、750c、750d、750eは、それらの底面が階段状に形成され、信号入力辺418aから所定距離L3(e<b)の範囲において、中継基板518のウラ面418fまで貫通して形成されている。
【0071】
すなわち、溝750a、750b、750c、750d、750eは、その深さが、階段状に(本変形例では2段階で)深くなり、信号入力辺418aから所定距離L3においてウラ面418fに達するように形成されている。逆に言えば、溝750a、750b、750c、750d、750eは、その深さが、信号出力辺418cに向かって階段状に浅くなるように形成されている。以下、溝750a、750b、750c、750d、750eを総称して溝750ともいう。
【0072】
上記の構成を有する中継基板718では、溝750のうち信号入力辺418aから所定距離L3の範囲の部分がウラ面418fまで貫通して設けられているので、変形例1の場合と同様に、入力接続点およびその近傍における接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の中継基板718内への伝搬が効果的に抑制される。
【0073】
また、中継基板718では、溝750が、信号出力辺418cに向かって中継基板118の溝350よりも長く延在し且つ深さが階段状に浅くなるように形成されている。従って、溝750の存在に起因して発生し得る信号導体パターン330における伝搬モードの乱れは、信号出力辺418cに向かって段階的に減少し、信号出力辺418cにおいては発生しないこととなる。その一方、信号導体パターン330の長さ方向各部から発生する伝搬放射マイクロ波は信号出力辺418cに向かって徐々に減少するため、溝750の深さが信号出力辺418cへ向かって段階的に減少しても、信号導体パターン330の各部から発生して中継基板718内を伝搬していく伝搬放射マイクロ波の量は、信号導体パターン330の長さ方向に沿ってほぼ一定の値に抑制され得る。
【0074】
このため、中継基板718では、溝750の存在に起因する信号導体パターン330の伝搬モードの乱れを信号出力辺418cへ向かってスムーズに解消しつつ、上記接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受を効果的に低減することができる。
【0075】
ここで、本変形例において溝750が中継基板718のウラ面418fまで延在する部分の所定距離L3は、中継基板118における長さL2と同様の理由(上述した接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の伝搬抑制)から、以下のいずれかを満たすことが望ましい。
L3>L1 (3)
L3>W (4)
【0076】
式(3)(4)において、L1およびWは、それぞれ、上述した中継基板118の例と同様に定義される端子延在長さおよび溝750の幅である。
【0077】
なお、本変形例では、溝750の深さを、ウラ面418fまで2段階に深く形成するものとしたが、この段階の数は2には限られない。例えば、当該段階の数は1段階でもよい。すなわち、溝750の深さは、所定距離L3の位置から当該溝750の端部まで、一定であるものとしてもよい。あるいは、上記段階の数は3以上でもよい。
【0078】
また、あるいは、溝750の深さは、溝750の上記端部から連続的に深くなるように構成されていてもよい。この場合には、溝750の底面は、信号入力辺418aにおいてウラ面418fに達するものとすることもできる(すなわち、L3=0とすることができる)。
【0079】
また、本変形例においては、溝750が少なくとも信号入力辺418aにおいてウラ面418fに達するものとしたが、これには限られない。溝750は、信号入力辺418aにおいてオモテ面418eから測った深さが、それらの溝750の端部においてオモテ面418eから測った深さよりも深く形成されていればよい。例えば、溝750は、信号入力辺418aにおいて必ずしもウラ面418fに達っしていなくても、上記と同様の効果を奏することができる。
【0080】
また、本変形例においても、中継基板118、518、618と同様に、溝750の2つの内側面又は当該2つの内側面と溝750の底面とに金属膜を形成することにより、上記の高周波エネルギ授受の低減効果を強化することができる。
【0081】
<第4変形例>
図8は、第4の変形例に係る中継基板818の構成を示す図である。この中継基板818は、
図1に示す光変調器100において中継基板118に代えて用いることができる。
図8において、
図4に示す中継基板118と同じ構成要素については、
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図4についての説明を援用する。
【0082】
図8に示す中継基板818は、
図4に示す中継基板118と同様の構成を有するが、ウラ面418fに、筺体104に接してグランド電位となるグランド用導体840が設けられている点が異なる。また、中継基板818は、溝350a、350b、350c、350d、350eに代えて、溝850a、850b、850c、850d、850eが設けられている点が、中継基板118と異なる。以下、溝850a、850b、850c、850d、850eを総称して溝850ともいう。
【0083】
溝850は、溝350と同様の構成を有するが、それらの底面および2つの内側面には金属膜が形成されており、且つ、それらの底面のそれぞれに6個のビア860が設けられている点が、溝350と異なる。なお、
図8においては、理解を容易にするため、溝850の図示右端のビアにのみ符号860を付しているが、符号860を付したビアの左側に当該ビアと同じ径の円で描かれた5つのビアもビア860であるものと理解されたい。
【0084】
これらのビア860は、溝850の底面の金属膜と中継基板818のウラ面418fに形成されたグランド用導体840とを電気的に接続する。これにより、ウラ面418fのグランド用導体840は、ビア860と、溝850の底面及び2つの内側面に設けられた金属膜と、を介して、オモテ面418eのグランド導体パターン340と電気的に接続される。
【0085】
上記の構成を有する中継基板818は、溝850の底面の金属膜と中継基板818のウラ面418fのグランド用導体840とをつなぐビア860が形成されているので、上述した2つの放射マイクロ波(接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波)のうち、溝850の下をくぐって中継基板818の内部を伝搬しようとする放射マイクロ波を阻止することができる。このため、中継基板818では、上記2つの放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受を更に抑制することができる。
【0086】
また、中継基板818の厚さよりも長さの短いビア860によりオモテ面418eのグランド導体パターン340とウラ面418fのグランド用導体840とが接続されるので、中継基板118に比べてより高いグランド効果(グランド電位分布の一様化等)を得ることができる。尚、本実施例ではビアの個数を6個としたものを例示したが、これに限定されるものでは無い。またビアの外径は全て同じ構成としたが上記効果を奏する範囲であれば異なった外径としてもよい。特に信号入力端子と信号導体パターンとの接続点側におけるビアの外径をその他のビアの外径よりも大きくした場合、基板の機械的強度を維持したまま、上記2つの放射マイクロ波が発生しやすい信号入力端子と信号導体パターンとの接続点においてより高いグランド効果(グランド電位分布の一様化等)を得ることができる。
【0087】
<第5変形例>
図9は、第5の変形例に係る中継基板918の構成を示す図である。この中継基板918は、
図1に示す光変調器100において中継基板118に代えて用いることができる。
図9において、
図4に示す中継基板118と同じ構成要素については、
図4における符号と同じ符号を用いるものとし、上述した
図4についての説明を援用する。
【0088】
図9に示す中継基板918は、
図4に示す中継基板118と同様の構成を有するが、信号導体パターン330a、330b、330c、330dに代えて、信号導体パターン930a、930b、930c、930dが設けられている。以下、信号導体パターン930a、930b、930c、930dを総称して信号導体パターン930ともいう。
【0089】
信号導体パターン930a、930b、930c、930dは、それぞれ、信号導体パターン330a、330b、330c、330dと同様の構成を有するが、中継基板918上の平面形状が、信号導体パターン330a、330b、330c、330dと異なる。
【0090】
すなわち、信号導体パターン330a、330b、330c、330dは、それぞれ信号入力辺418aと直交する方向に延在する直線形状で形成されているのに対し、信号導体パターン930aおよび930dは、信号入力辺418aと直交する方向とは異なる方向に角度をもって延在する直線を含んで構成されている。また、信号導体パターン930bおよび930cは、それぞれ曲線部分を含んで構成されている。
【0091】
これにより、中継基板918は、信号入力辺418aにおいて、信号導体パターン930aおよび930bの端部が図示右側に隣接して配されて一つのグループを構成し、信号導体パターン930cおよび930dの端部が図示左側に隣接して配されて他の一つのグループを構成している。このような信号入力辺418aにおける信号導体パターン930の端部のグループ化は、例えば、光変調素子102がDP-QPSK変調器など小型、集積化された変調器である場合において、2つの直交偏波光をそれぞれ変調する2つのネスト型マッハツェンダ変調器に、高周波電気信号の2つのグループのそれぞれを入力する場合に採用され得る。
【0092】
中継基板918は、また、グランド導体パターン340a、340b、340c、340dに代えて、グランド導体パターン940a、940b、940c、940dが設けられている点が、中継基板118と異なる。以下、グランド導体パターン940a、940b、940c、940dを総称してグランド導体パターン940ともいう。
【0093】
グランド導体パターン940は、グランド導体パターン340と同様の構成を有するが、信号導体パターン930の形状に合わせてコプレーナ線路を構成すべく、信号導体パターン930に隣接するエッジが、直線及び又は曲線で形成されている点が異なる。
【0094】
中継基板918は、さらに、溝350a、350b、350c、350d、350eに代えて、溝950a、950b、950c、950d,950eが設けられている点が、中継基板118と異なる。以下、溝950a、950b、950c、950d、950eを総称して溝950ともいう。
【0095】
ここで、溝950a、950b、950c、950d,950eは、溝350a、350b、350c、350d、350eと同様の構成を有するが、以下の点が溝350a、350b、350c、350d、350eと異なる。
【0096】
まず、
図4の中継基板118では、グランド導体パターン340のそれぞれに一つの溝350が設けられているのに対し、
図9の中継基板918では、隣接する信号導体パターン930で挟まれないグランド導体パターン940a、940eには溝が設けられていない。中継基板918においては、信号導体パターン930a、930dからそれぞれ中継基板918の右側面418gおよび左側面418hへ向かって伝搬する伝搬放射マイクロ波は、他の信号導体パターン930へ直接的には到達しないため、信号導体パターン930間のクロストークにはあまり寄与しないためである。
【0097】
また、中継基板918では、信号導体パターン930b、930cの信号入力辺418aにおける端部は、互いの間が、有意なクロストークを生じないほどに離れて形成されている。このため、中継基板918では、信号導体パターン930b、930cに挟まれたグランド導体パターン940cにも、溝は設けられていない。
【0098】
そして、中継基板918では、信号導体パターン930a、930bに挟まれたグランド導体パターン940bに、信号導体パターン930a、930bのそれぞれの形状に沿うように、それぞれ直線および曲線で構成された2つの溝950a、950bが設けられている。また、中継基板918では、信号導体パターン930c、930dに挟まれたグランド導体パターン940dに、信号導体パターン930c、930dのそれぞれの形状に沿うように、それぞれ曲線および直線で構成された2つの溝950c、950dが設けられている。
【0099】
上記の構成を有する中継基板918は、信号導体パターン930の形状に合わせて、グランド導体パターン940に設ける溝の数や形状が定められている。すなわち、隣接する信号導体パターン330間のクロストーク発生に実質的に寄与しない放射マイクロ波の伝搬経路(本変形例では、中継基板918のうちグランド導体パターン940a、940c、940dが形成された基板部分)には溝を設けない。このため、中継基板918は、加工工程が簡易化され、容易且つ安価に製造され得る。
【0100】
また、中継基板918では、2つの信号導体パターン930に挟まれて当該信号導体パターン930間にクロストークを発生し得る2つの放射マイクロ波(接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波)の伝搬経路(本変形例では、グランド導体パターン940b、940dが形成された基板部分)には、曲線部分を有するそれぞれの信号導体パターン930に隣接する位置に、当該信号導体パターン930の形状に沿って直線部分または曲線部分を含む溝950が設けられている。
【0101】
これにより、中継基板918では、上記2つの放射マイクロ波が、隣接する信号導体パターン930間の中継基板918内を伝搬するのを阻止することができると共に、信号導体パターン930の曲線部分から放射される不要なマイクロ波の伝搬も抑制することが出来る。
【0102】
なお、本変形例では、それぞれ一つのグランド導体パターンとして構成されたグランド導体パターン940b、940dに、それぞれ2つの溝950a、950bおよび溝950c、950dが設けられるものとしたが、これには限られない。例えば、グランド導体パターン940bを図示左右に2分割し、当該分割した図示右側の部分に溝950aを形成し、当該分割した図示左側の部分に溝950bを設けてもよい。同様に、グランド導体パターン940dを図示左右に2分割し、当該分割した図示右側の部分に溝950cを形成し、当該分割した図示左側の部分に溝950dを設けてもよい。
【0103】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る光変調器100、及び第1の実施形態についての第1から第5の変形例に係る中継基板518、618、718、818、918を備える光変調器100、のいずれかに係る光変調器を搭載した光送信装置である。
【0104】
図10は、本実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。本光送信装置1000は、光変調器1002と、光変調器1002に光を入射する光源1004と、変調信号生成部1006と、変調データ生成部1008と、を有する。
【0105】
光変調器1002は、上述した第1の実施形態に係る光変調器100、及び第1の実施形態についての第1から第5の変形例に係る中継基板518、618、718、818、918を備える光変調器100、のいずれかに係る光変調器であるものとすることができる。ここで、冗長な記載を避けて理解を容易にするため、以下では、光変調器1002は、中継基板118を備える光変調器100であるものとする。
【0106】
変調データ生成部1008は、外部から与えられる送信データを受信して、当該送信データを送信するための変調データ(例えば、送信データを所定のデータフォーマットに変換又は加工したデータ)を生成し、当該生成した変調データを変調信号生成部1006へ出力する。
【0107】
変調信号生成部1006は、光変調器1002に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路(ドライブ回路)であり、変調データ生成部1008が出力した変調データに基づき、光変調器1002に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、光変調器1002に入力する。当該変調信号は、光変調器1002が備える光変調素子102の4つの信号電極112a、112b、112c、112dに対応する4つの高周波電気信号から成る。
【0108】
当該4つの高周波電気信号は、光変調器1002の電気コネクタ116a、116b、116c、116dのそれぞれの信号入力端子124a、124b、124c、124dから中継基板118の信号導体パターン330a、330b、330c、330dへ入力され、これらの信号導体パターン330a等を介して、光変調素子102の信号電極112a、112b、112c、112dに入力される。
【0109】
これにより、光源1004から出力された光は、光変調器1002により、例えばDP-QPSK変調され、変調光となって光送信装置1000から出力される。
【0110】
特に、光送信装置1000では、光変調器1002として、第1の実施形態に係る光変調器100、および第1の実施形態についての第1から第5の変形例に係る中継基板518、618、718、818、918を備える光変調器100、のいずれかに係る光変調器を用いる。このため、光送信装置1000では、光変調素子102を駆動する複数の高周波電気信号間の、伝送レートの高速化に伴うクロストーク増加を効果的に低減して、安定且つ良好な光変調特性を確保することができ、従って、安定且つ良好な伝送特性を実現することができる。
【0111】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0112】
例えば、上述した実施形態及び変形例において、中継基板118の説明において示した溝350についての式(1)(2)が示す好ましいサイズの条件は、中継基板518、618,718、818、918における溝550、650、750、850、950についても同様に適用され得る。この場合において、溝の長さL2は、当該溝が延在する長さとして定義されることから、溝950の例においては、直線又は曲線で構成される溝950の形状に沿って測った長さとなることに留意されたい。
【0113】
また、例えば、上述した実施形態及び変形例に示した中継基板118、518、618、718、818、918の特徴部分を組み合わせて一つの中継基板を構成するものとしても、上述した各変形例等に示した効果と同様の効果を得ることができる。例えば、溝350、550、650、750、850、950と同様の構成をそれぞれ有する複数の溝が、複数のグランド導体パターンに混在して、オモテ面418eに形成される少なくとも一つのグランド導体パターンのそれぞれに少なくとも一つ設けられるものとすることができる。
【0114】
あるいは、中継基板618、718、918において、溝650、750、950の内面全体に金属膜を設けると共にウラ面418fに金属膜を設け、且つ中継基板818と同様のビアを設けるものとしてもよい。また、あるいは、中継基板618において、中継基板718と同様に、溝650の深さが階段状に又は連続的に変化するものとすることができる。この場合には、溝650は、例えば、ウラ面418fまで達しない範囲において、その深さが階段状又は連続的に変化するよう構成されるものとすることができる。
【0115】
以上説明したように、上述した光変調器100は、複数の信号電極112を備える光変調素子102と、信号電極112のそれぞれに印加する電気信号を入力する複数の信号入力端子124と、信号入力端子124のそれぞれと信号電極112のそれぞれとを電気的に接続する複数の信号導体パターン330及び複数のグランド導体パターン340が形成された中継基板118と、を備える。また、光変調器100は、上記光変調素子102と中継基板118とを収容する筺体104を備える。中継基板118のうち信号入力端子124からの電気信号が信号導体パターン330に入力される信号入力辺418aにおいて、信号入力端子124は、当該信号入力辺418aから信号導体パターン330上に延在するよう配されている。中継基板118は、信号導体パターン330が形成されたオモテ面418eにおいて、隣接する信号導体パターン330の間に形成された少なくとも一つのグランド導体パターン340に、信号入力辺418aから延在する少なくとも一つの溝350を有する。そして、溝350は、信号入力辺418aから延在する長さが、信号入力端子124が信号入力辺418aから延在する長さよりも長くなるように形成されている。
【0116】
この構成によれば、中継基板118に設けられた溝350により、高周波信号の伝搬に伴って入力接続点近傍の信号導体パターン330から発生する放射モード(伝搬放射マイクロ波)、および、信号入力端子124と信号導体パターン330との接続点における異種モード変換に伴って発生する放射モード(接続点放射マイクロ波)、の2つの放射マイクロ波が中継基板118内を伝搬するのを抑制して、隣接する信号導体パターン330間での高周波エネルギの授受の発生を抑制することができる。すなわち、光変調器100では、中継基板118に設けられた単純な構成の溝350により上記高周波エネルギの授受を抑制するので、光変調器100の小型化の要請に反することなく、コストの増加を伴うことなく、且つ製造容易性を確保しつつ、伝送レートの高速化に伴う信号導体パターン330間におけるクロストーク増加を効果的に抑制して、良好な光変調特性を実現することができる。
【0117】
また、光変調器100には、溝350とは異なる溝650が設けられた中継基板618を用いることができる。溝650は、中継基板118のうち電気信号が信号導体パターン330から光変調素子102の信号電極112へ出力される信号出力辺418cまで延在するよう形成されている。
【0118】
この構成によれば、信号導体パターン330の長さ方向の各部から発生し得る伝搬放射マイクロ波の中継基板618内部への伝搬が、溝650により信号入力辺418aから信号出力辺418cまで連続して抑制される。このため、中継基板118に比べて、信号導体パターン330間での高周波エネルギの授受がさらに低減される。また、このように信号入力辺418aから信号出力辺418cまで達するように溝650を形成することで、中継基板618は、構造が単純化されるため、製造が容易となる。
【0119】
また、光変調器100には、溝350とは異なる溝750が設けられた中継基板718を用いることができる。溝750は、信号入力辺418aにおける中継基板718のオモテ面418eから測った溝750の端部の深さが、当該溝750の他方の端部においてオモテ面418eから測った当該溝750の深さよりも深く形成されている。
【0120】
この構成によれば、溝750の深さが、信号入力辺418aから離れるに従って浅くなるように形成されるので、溝750の存在に起因して発生し得る信号導体パターン330における伝搬モードの乱れが、信号出力辺418cに向かって減少する。また、伝搬モードの乱れが大きい部分は、溝750がより深く形成されている部分に対応するので、当該乱れが大きく伝搬放射マイクロ波が多く発生する部分は、より深い溝部分により効果的にその伝搬が抑制される。このため、中継基板718では、溝750の存在に起因する信号導体パターン330の伝搬モードの乱れを信号出力辺418cへ向かってスムーズに解消しつつ、接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受を、信号導体パターン330の長さ方向に沿って一定レベル以下に抑制することができる。
【0121】
また、中継基板718では、溝750は、中継基板718のオモテ面418eから測った深さが、溝750の上記他方の端部から信号入力辺418aに向かって階段状に又は連続的に深くなるよう形成されるものとすることができる。この構成によれば、深さの変化する溝を単純な構成で形成することができる。
【0122】
また、中継基板718では、溝750は、信号入力辺418aにおいて中継基板718のオモテ面418eに対向するウラ面418fまで形成されているか、又は信号入力辺418aから所定距離L3の範囲において中継基板718のオモテ面418eに対向するウラ面418fまで形成されている。
【0123】
この構成によれば、接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波が最も発生し易い信号入力辺418aまたはその近傍において、当該接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波に対する中継基板718内での伝搬抑制効果を強化することができる。
【0124】
また、中継基板118、618、718、918の溝350、650、750、950の内側面には、金属膜が形成されているものとすることができる。この構成によれば、これらの溝による、これら中継基板内での接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の伝搬抑制効果を強化することができる。
【0125】
また、中継基板118、618、718、918の溝350、650、750、950には、さらに、これらの底面に金属膜が形成されているものとすることができる。この構成によれば、これら中継基板内を伝搬する接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波がこれらの溝の底面から空中へ放射されるのを抑制して、信号導体パターン330間のクロストーク抑制効果をさらに高めることができる。
【0126】
また、光変調器100には、溝350とは異なる溝850が設けられた中継基板818を用いることができる。中継基板818のオモテ面418eに対向するウラ面418fには、グランド用導体840が形成されており、溝850の底面には、当該底面の金属膜と中継基板818のウラ面418fのグランド用導体840とを接続するビア860が形成されている。
【0127】
この構成によれば、溝850の底面の金属膜と中継基板818のウラ面418fのグランド用導体840とをつなぐビア860が形成されているので、上述した接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波のうち、溝850の下をくぐって中継基板818の内部を伝搬しようとする放射マイクロ波を更に阻止することができる。このため、中継基板818では、接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受を更に抑制することができる。
【0128】
また、光変調器100には、溝350とは異なる溝550が設けられた中継基板518を用いることができる。溝550は、中継基板518のうち電気信号が信号導体パターン330から光変調素子102の信号電極112へ出力される信号出力辺418cまで延在せず、当該溝550の全体が、中継基板518のオモテ面418eに対向するウラ面418fまで貫通して形成されている。
【0129】
この構成によれば、溝550のそれぞれの全体が中継基板518のオモテ面418eに対向するウラ面418fまで貫通しているので、入力接続点及びその近傍で発生する接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の、中継基板518内部の伝搬が、更に抑制される。
【0130】
また、中継基板518は、オモテ面418eからウラ面418fまで貫通して形成された溝550には、さらに、その内側面に金属膜が形成されている。この構成によれば、溝550の内側面に金属膜が形成されているので、接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波の伝搬抑制効果、従ってこれらの放射マイクロ波を介した信号導体パターン330間の高周波エネルギ授受の低減効果が更に強化される。
【0131】
また、光変調器100の中継基板118、518、618、718、818、918では、溝350、550、650、750、850、950は、信号入力辺418aから延在する長さL2が、延在する方向に対し直交する方向に沿って測った幅Wよりも長くなるように形成される。この構成によれば、高周波信号の伝搬に伴って信号導体パターン330の長さ方向の各部から発生し得る接続点放射マイクロ波および伝搬放射マイクロ波がこれら中継基板の内部を伝搬するのを効果的に抑制することができる。
【0132】
また、上述した中継基板118、518、618、718、818、918のいずれかを備える光変調器100は、当該光変調器100に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路である変調信号生成部1006等と共に、光送信装置1000を構成する。この構成によれば、伝送レートの高速化に伴う光変調素子102を駆動する複数の高周波電気信号間のクロストークを効果的に低減して、安定且つ良好な伝送特性を実現することができる。
【符号の説明】
【0133】
100、1002…光変調器、102…光変調素子、104…筺体、108…入力光ファイバ、110…出力光ファイバ、112a、112b、112c、112d…信号電極、114a…ケース、114b…カバー、116a、116b、116c、116d…電気コネクタ、118、518、618、718、818、918…中継基板、120…終端器、122a、122b、122c、122d…グランド電極、124a、124b、124c、124d…信号入力端子、126…導体ワイヤ、330a、330b、330c、330d、930a、930b、930c、930d…信号導体パターン、340a、340b、340c、340d、340e、940a、940b、940c、940d、940e…グランド導体パターン、350a、350b、350c、350d、350e、550a、550b、550c、550d、550e、650a、650b、650c、650d、650e、750a、750b、750c、750d、750e、850a、850b、850c、850d、850e、950a、950b、950c、950d、950e…溝、418a…信号入力辺、418b…入力側側面、418c…信号出力辺、418d…出力側側面、418e…オモテ面、418f…ウラ面、418g…右側面、418h…左側面、840…グランド用導体、860…ビア。