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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221109BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20221109BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221109BHJP
【FI】
H04N5/232 380
H04N5/232 930
H04N5/232 290
G06T3/00 710
G03B15/00 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019506032
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2018009648
(87)【国際公開番号】W WO2018168823
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017048861
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】栗林 英範
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-211105(JP,A)
【文献】特開2011-188163(JP,A)
【文献】特開2016-027704(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169369(WO,A1)
【文献】特開2013-218432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G06T 3/00
G03B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被写体と第2被写体とが撮像された画像の一部であって、表示部に表示された、前記画像の一部を第1方向に移動させて、前記画像の前記表示部に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、前記第1被写体が表示された後に前記第2被写体が表示され、再度前記第1被写体が前記表示部に表示されるのに使用される第1画像データを入力する入力部と、
前記第1被写体が前記表示部に表示されてから前記第2被写体が前記表示部に表示されるまでに、前記表示部に表示される画像が移動した第1距離が、
前記第2被写体が前記表示部に表示されてから前記第1被写体が前記表示部に表示されるまでに、前記表示部に表示される画像が移動した第2距離よりも長い場合は、前記第1被写体と前記第2被写体とを含み、前記第1被写体の前記第1方向側に前記第2被写体を配置した第2画像データを前記第1画像データから生成する画像生成部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記画像の前記表示部に表示されていない部分を表示させる制御は、前記画像の前記表示部に表示されていない部分の少なくとも一部を表示させる制御である画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記第1画像データは、全天球画像データである画像処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記第1画像データは、全天球よりも狭い範囲の撮像による画像データである画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記第1画像データは、半天球画像データである画像処理装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記第1画像データは、垂直方向および水平方向についての少なくともいずれか一方について360度の範囲の撮像による画像データである画像処理装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記第1画像データは、垂直方向および水平方向についての少なくともいずれか一方について360度の範囲よりも狭い範囲の撮像による画像データである画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超広角カメラにより撮影された撮影画像の一部を切り出して表示ないし記録を行うカメラが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2012-119804号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、画像処理装置は、第1被写体と第2被写体とが撮像された画像の一部であって、表示部に表示された、前記画像の一部を第1方向に移動させて、前記画像の前記表示部に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、前記第1被写体が表示された後に前記第2被写体が表示され、再度前記第1被写体が前記表示部に表示されるのに使用される第1画像データを入力する入力部と、前記第1被写体が前記表示部に表示されてから前記第2被写体が前記表示部に表示されるまでに、前記表示部に表示される画像が移動した第1距離が、前記第2被写体が前記表示部に表示されてから前記第1被写体が前記表示部に表示されるまでに、前記表示部に表示される画像が移動した第2距離よりも長い場合は、前記第1被写体と前記第2被写体とを含み、前記第1被写体の前記第1方向側に前記第2被写体を配置した第2画像データを前記第1画像データから生成する画像生成部と、を備える
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】画像処理システムの構成を模式的に示すブロック図
図2】撮像装置の構成を模式的に示すブロック図
図3】撮像部の撮像範囲および全天球画像の模式図
図4】画像処理装置および再生装置の構成を模式的に示すブロック図
図5】全天球画像の再生処理の説明図
図6】二次元画像作成処理の説明図
図7】二次元画像を例示する図
図8】二次元動画作成処理のフローチャート
図9】全天球画像の変形例の模式図
図10】画像処理装置と再生装置とを兼ね備える電子機器を模式的に示すブロック図
図11】二次元画像作成処理の説明図
図12】二次元画像作成処理の説明図
図13】二次元画像作成処理の説明図
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、画像処理システム1の構成を模式的に示すブロック図である。画像処理システム1は、撮像装置2、画像処理装置3、および再生装置4を有する。撮像装置2は、例えばデジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末などの電子機器である。画像処理装置3は、例えばデジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどの電子機器である。再生装置4は、例えばデジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、デジタルフォトフレーム、ヘッドマウントディスプレイなどの電子機器である。
【0007】
撮像装置2は、静止画撮像機能と、動画撮像機能とを有する。静止画撮像機能は、全天球画像(後述)を撮像する機能である。動画撮像機能は、全天球画像を繰り返し撮像し、各々のフレームが全天球画像である全天球動画を作成する機能である。画像処理装置3は、撮像装置2により作成された全天球動画から、各々のフレームが全天球画像よりも画角が狭い二次元画像である二次元動画(後述)を作成する。再生装置4は、全天球画像や二次元動画を再生(表示)する。
【0008】
(撮像装置2の説明)
図2は、撮像装置2の構成を模式的に示すブロック図である。撮像装置2は、撮像部20、第1撮像光学系21、第2撮像光学系22、および記憶部23を有する。撮像部20は、第1撮像素子201および第2撮像素子202を有する。
【0009】
第1撮像光学系21および第2撮像光学系22は、いわゆる魚眼レンズである。第1撮像光学系21は、半天球の範囲の被写体像を第1撮像素子201の撮像面に結像させる。換言すると第1撮像素子201は、水平方向に360度、垂直方向に180度の範囲を撮像可能に構成される。第1撮像素子201の撮像範囲を第1半天球と称する。
【0010】
第2撮像光学系22は、第1半天球とは異なる半天球の範囲の被写体像を第2撮像素子202の撮像面に結像させる。換言すると第2撮像素子202は、水平方向に360度、垂直方向に180度の範囲を撮像可能に構成される。第2撮像素子202の撮像範囲を第2半天球と称する。
【0011】
第1半天球と第2半天球は全天球を構成する。つまり撮像部20は、第1撮像素子201および第2撮像素子202により、水平方向に360度、垂直方向に360度の全天球の範囲を撮像する。以下の説明では、水平方向に360度、垂直方向に360度の画角を有する、全天球の範囲を撮像した画像を、全天球画像と称する。
【0012】
ユーザが静止画撮影機能を利用しているとき、記憶部23は、撮像部20により撮像された単一の全天球画像を、記憶媒体51(例えばメモリーカード等)に記憶する。ユーザが動画撮影機能を利用しているとき、記憶部23は、撮像部20により繰り返し撮像された複数の全天球画像を含む全天球動画を、記憶媒体51に記憶する。前述の通り、全天球動画の各フレームは、全天球画像である。なお、図2において記憶媒体51は撮像装置2に挿抜可能なものとしているが、撮像装置2が記憶媒体51を内蔵していてもよい。
【0013】
(全天球画像の説明)
図3(a)は、撮像部20の撮像範囲の模式図である。撮像部20は、撮像部20の設置位置(カメラ位置)を原点Oとして、図3(a)に示す全天球60の範囲を撮像する。図3(b)は、撮像部20により撮像された全天球画像を例示する模式図である。図3(b)に例示した全天球画像61は、第1撮像素子201により撮像された第1半天球画像62と、第2撮像素子202により撮像された第2半天球画像63とを含む。第1半天球画像62は、第1撮像光学系21が結像した円形像64を含む。第2半天球画像63は、第2撮像光学系22が結像した円形像65を含む。
【0014】
図3(b)に例示した全天球画像61の一部を切り出して変形することで、任意の画角の画像を得ることができる。例えば、図3(a)に示す画角66の画像を得たい場合は、図3(b)の領域67を切り出して長方形に変形すればよい。また、図3(a)に示すように、全天球の上半分の半天球のうち、図3(a)に網掛けで示した、線分A-Bを水平方向に一周した範囲68の画像を得たい場合には、図3(b)の領域69を切り出して長方形に変形すればよい。このとき得られる画像70を図3(c)に例示する。画像70は、横長のパノラマ画像である。なお、図3(c)に例示した画像70の左端71と右端72は、実際には図3(a)に示すように連続している。すなわち、図3(c)に例示した画像70は、撮像部20の周囲360度の範囲を撮像した全周画像である。全周画像70は、全天球60の表面を一周する経路600を含む。経路600は、原点Oを中心とし、全天球60の直径と同一の直径を有する円の円周である。原点Oは全天球60の中心であるので、その円は、全天球60の中心を通る平面による全天球60の断面の円周と一致する。
【0015】
線分A-Bの長さは、任意に設定することができる。例えば、点Aをいわゆる北極に設定し、点Bをいわゆる南極に設定することにより、全天球画像61に撮像される範囲と、全周画像である画像70に撮像される範囲は一致する。すなわち、全周画像は、全天球画像61を2次元の画像に投影(マッピング)したものといっても良い。
【0016】
図3(c)に例示した画像70は、撮像部20の水平方向に周囲360度の範囲を撮像した全周画像である。したがって、全周画像70は、いわゆる赤道に相当する経路600を含んでいる。全周画像は、撮像部20の水平方向に限定されず、撮像部20のあらゆる方向に周囲360度の範囲を撮像した画像であってよい。例えば、全天球60の経線に沿って撮像部20の周囲360度の範囲を撮像した画像とすることができる。
【0017】
以下の説明では、説明の簡単のため、全天球画像を、図3(c)に例示したような、水平方向に360度の範囲を撮像した全周画像として例示する。つまり、以下の説明において図3(c)の画像70のようにあたかも全周画像のように図示された全天球画像は、特に記載のない限りにおいて、実際には図3(a)に示す全天球60の範囲が撮像された画像である。
【0018】
なお、撮像部20が第1撮像素子201、第2撮像素子202の2つではなく、より多数の撮像素子を有していてもよい。このようにすることで、個々の撮像素子が撮像可能な範囲が、半天球より狭い範囲であっても、全天球画像を得ることができる。つまり、半天球の範囲を撮像する2つの撮像素子を組み合わせて全天球60の範囲を撮像するのではなく、より狭い範囲を撮像する3つ以上の撮像素子を組み合わせて全天球60の範囲を撮像するようにしてもよい。個々の撮像素子の撮像範囲は互いに一部が重複していてもよい。例えば、第1撮像素子201の撮像範囲と第2撮像素子202の撮像範囲は一部が重複していてもよい。同様に、撮像装置2が第1撮像光学系21、第2撮像光学系22の2つではなく、各々が半天球よりも狭い範囲の被写体像を結像させる、より多数の撮像光学系を有していてもよい。
【0019】
また、撮像部20が第1撮像素子201、第2撮像素子202の2つではなく、単一の撮像素子を有していてもよい。例えば、ミラー等により第1撮像光学系21からの光と第2撮像光学系22からの光を共に単一の撮像素子に向かわせることで、円形像64と円形像65を単一の撮像素子により撮像することができる。このようにすることで、撮像素子の個数を減らすことができ、撮像部20のコストダウンを図ることができる。
【0020】
(画像処理装置3の説明)
図4(a)は、画像処理装置3の構成を模式的に示すブロック図である。画像処理装置3は、画像生成部30、入力部31、および出力部32を有する。入力部31は、全天球動画が記憶されている記憶媒体51から全天球動画を読み出して画像生成部30に入力する。画像生成部30は、入力された全天球動画に対して後述する二次元動画作成処理を実行する。二次元動画作成処理は、全天球動画から二次元動画を作成する処理である。つまり画像生成部30は、入力された全天球動画から二次元動画を作成する。二次元動画は、各々のフレームが、全天球画像よりも狭い画角の画像により構成される動画である。例えば二次元動画は、図3(a)の原点Oに一般的な50度~25度程度の画角を有するビデオカメラを置いて撮像した動画と同等の内容を有する。出力部32は、画像生成部30により作成された二次元動画を記憶媒体52に記憶する。記憶媒体52は、撮像装置2が全天球動画を記憶した記憶媒体51と同一の記憶媒体であってもよいし、それとは別の記憶媒体であってもよい。なお、図4(a)において記憶媒体51および記憶媒体52は画像処理装置3の外部に設けられているが、画像処理装置3が記憶媒体51および記憶媒体52の一方もしくは両方を内蔵していてもよい。また、記憶媒体51および記憶媒体52は、画像処理装置と有線または無線のネットワークを介して接続する構成としても良い。また、記憶媒体51の代わりに、撮像装置2からネットワークを介して全天球動画を直接入力する構成としてもよい。
【0021】
また、全天球動画から作成される二次元動画の各々のフレームは、全天球画像よりも狭い画角の1枚の画像のみならず、全天球画像よりも狭い画角の2枚以上の画像を有してもよい。
【0022】
(再生装置4の説明)
図4(b)は、再生装置4の構成を模式的に示すブロック図である。再生装置4は、表示部40、入力部41、制御部42、および操作部43を有する。入力部41は、全天球画像が記憶されている記憶媒体51から全天球画像を読み出して制御部42に入力する。入力部41は、二次元動画が記憶されている記憶媒体52から二次元動画を読み出して制御部42に入力する。制御部42は、入力された全天球画像や二次元動画を表示部40に表示させる制御を行う。表示部40は、例えば液晶パネル等により構成される表示画面を有する。表示部40は、制御部42による制御に基づき、全天球画像または二次元動画を、表示画面に表示する。なお、図4(b)において記憶媒体51および記憶媒体52は再生装置4の外部に設けられているが、再生装置4が記憶媒体51および記憶媒体52の一方もしくは両方を内蔵していてもよい。表示部40は、例えばスマートフォンの液晶ディスプレイであり、タブレット端末の液晶ディスプレイであり、ヘッドマウントディスプレイである。したがって、表示部40に全天球画像の全ての画像領域を一度に表示すると、360度の範囲が2次元ディスプレイに表示されることになりユーザは視認しにくい。そこで、360度の画角を有する全天球画像の一部を切り出し、二次元平面の表示画面(表示部40)に全天球画像の一部を表示して再生する方法が知られている。以降の説明では、表示部40に全天球画像の一部を表示して再生する方法を前提とする。
【0023】
操作部43は、ユーザによる操作が入力される操作部材である。本実施の形態において、操作部43は、表示部40の表示画面に重畳されるタッチセンサである。操作部43は、ユーザの手指等が表示画面に接触した位置を検出して制御部42に伝達する。すなわち操作部43は、ユーザのタッチ操作を検出して制御部42に入力する。タッチ操作には、例えば、ユーザが表示画面のある位置に手指等を接触させ、接触状態を維持したままその手指等を上下左右のいずれかの方向にスライドさせ、その後その手指等を表示画面に接触しない状態にするスクロール操作等がある。本実施形態において、手指等を左方向に動かすスクロール操作は、左方向へのスクロール操作である。
ここでスクロール操作とは、表示部40に表示された画像を表示部40において任意の方向に移動させる操作のことである。
【0024】
なお、操作部43をタッチセンサとは異なる操作部材としてもよい。例えば、再生装置4がヘッドマウントディスプレイである場合には、ユーザが左に首を振る操作を左方向へのスクロール操作とすることもできる。この場合、操作部43は、ユーザの首の動きに伴い、ヘッドマウントディスプレイの変位(向き、位置など)を検出するセンサである。ヘッドマウントディスプレイの変位に相当する量、表示部40に表示された画像が移動する。例えば、首を左に振る操作をすることにより、表示部40に表示された画像は右に移動して表示される。
なお、操作部43に用いられる操作部材は、表示部40に表示された画像を表示部40において任意の方向に移動させるものであれば、上述したものに限定されない。
【0025】
再生装置4による全天球画像の再生処理(表示処理)について説明する。図5は、全天球画像の再生処理の説明図である。図5(a)、図5(c)、および図5(e)は、再生対象の全天球画像73を例示する図である。全天球画像73は、被写体74と被写体75とが撮像された画像である。図5(b)、図5(d)、および図5(f)は、全天球画像73を再生している表示部40の表示画面を例示する図である。
【0026】
制御部42は、図5(a)に示す全天球画像73のうち一部の範囲76を切り出し、図5(b)のように表示部40に表示する。図5(b)において、表示部40は、被写体74を含む範囲76を表示している。ユーザが画面左方向へのスクロール操作を行うと、制御部42は、図5(c)および図5(d)に示すように、表示部40に表示された全天球画像73の一部を左方向に移動させて、図5(b)の時点では全天球画像73の表示部40に表示されていなかった部分を表示させる制御を行う。すなわち、制御部42は、表示部40に表示する画像を、表示部40に表示されていた全天球画像73の一部から、全天球画像73のより右側にある別の一部に置き換える。換言すると、制御部42は、現在表示部40に表示されている全天球画像73の一部をいったん消去し、図5(a)に示す範囲76を図5(c)に示す範囲77に変更し、範囲77に対応する全天球画像73の新たな一部を表示部40に表示する。このときユーザからは、全天球画像73が左方向に距離78だけ移動しているように見える。換言すると、ユーザからは、表示部40に表示される画像が左方向に距離78だけ移動しているように見える。なお、距離78は、表示部40を構成する画素を単位として計測することができる。例えば、画面左方向へのスクロール操作を最小にすることにより、全天球画像73は表示部40において1画素だけ左方向に移動する。範囲77が表示部40に表示されるまでに画像が何画素移動したかを計測することにより、距離78を画素を単位として規定することができる。以下の説明では、図5(a)および図5(b)に示す表示状態から図5(c)および図5(d)に示す表示状態への変化を、「表示部40に表示される画像が左方向に距離78だけ移動した」と表現する。
【0027】
ユーザが画面左方向へのスクロール操作を繰り返し行うと、制御部42は、上述の制御を繰り返す。その結果、図5(e)および図5(f)に示すように、制御部42は被写体75を含む範囲79を切り出して表示部40に表示するようになる。前述したように、全天球画像73の右端と左端は連続しているので、ユーザが更に画面左方向へのスクロール操作を繰り返すと、制御部42は、再度、被写体74を表示部40に表示するようになる。つまり、表示部40の表示内容は、再度、図5(a)および図5(b)に示す内容になる。
【0028】
以上のように、全天球画像73は、被写体74と被写体75とが撮像された画像の一部であって、表示部40に表示された、全天球画像73の一部を左方向に移動させて、全天球画像73の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、被写体74が表示された後に被写体75が表示され、再度被写体74が表示部40に表示されるのに使用される画像データである。
【0029】
このように、被写体74が表示部40に表示されてから、画面左方向へのスクロール操作を繰り返し、被写体75が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離80(図5(e))を、被写体74から被写体75までの左方向に関する距離と称する。同様に、被写体75が表示部40に表示されてから、画面左方向へのスクロール操作を繰り返し、被写体74が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離81(図5(e))を、被写体75から被写体74までの左方向に関する距離と称する。
【0030】
なお、図5(a)および図5(b)に示す状態から、ユーザが画面左方向ではなく画面右方向へのスクロール操作を繰り返し行った場合も同様に、被写体74が表示された後に被写体75が表示され、再度被写体74が表示部40に表示される。ただし、図5(a)および図5(b)の例において、被写体75が被写体74の右方向で無く、上方向に位置していた場合は、画面左右方向ではなく、例えば画面上方向などの方向にスクロール操作を行うことにより、被写体74が表示された後に被写体74が画面から消え、その後、被写体75が表示され、再度被写体74が表示されることになる。つまり、全天球画像73に撮像された2つの任意の被写体は、スクロール操作の方向を一定にすることにより、上述したように表示させることができる。
【0031】
以上のように、本実施の形態の再生装置4は、垂直方向および水平方向に360度の画角を有する全天球画像の一部を切り出し、二次元平面の表示画面により再生する。以上の説明では、全天球画像を静止画として説明したが、各フレームが全天球画像である全天球動画を同様の処理によって再生することも可能である。この場合、全天球動画を一時停止させて再生した場合は、上述した説明と全く同様である。全天球動画を再生すると、全天球動画を構成する各フレーム(全天球画像)は、時間的に変化する点のみ異なる。
【0032】
全天球画像の再生においては、ユーザが任意の方向のスクロール操作を実行することにより、主要な被写体を表示部40に表示し、視認するころができる。しかしながら、全天球動画の再生においては、全天球動画を構成する各フレーム(全天球画像)は極めて短時間しか表示部40に表示されないため、当該フレームの表示部40に表示されていない部分を表示させることは困難である。通常、スクロール操作は次のフレームに対する制御結果として表示部40に表示される。その結果、ユーザは例えば表示画面に現在再生されていない部分で主要な被写体が注目すべき動きをしているシーンを見逃してしまう可能性がある。また、ユーザはその全天球動画に自分が視認していない主要な被写体が存在していることすら気づかないかもしれない。また、動画を視聴する度に上述のようなスクロール操作を行い、表示位置を調節する必要があり、煩わしい。更に、例えば2つの主要な被写体が別々の箇所で注目したい動きをしている場合、その両方を見るためには動画を複数回再生する必要がある。このように、全天球動画の再生は、ユーザにとって負担が大きい。そこで本実施の形態の画像処理システム1は、全天球動画から適切な被写体に注目した二次元動画を自動的に作成し、その二次元動画を再生することにより、上述のような問題を解決する。
【0033】
再生装置4による二次元動画の再生処理(表示処理)について説明する。二次元動画は、後述するように、時系列順に並べられた複数の二次元画像から成る。二次元動画を構成する各々の二次元画像をフレームと呼ぶ。制御部42は、それら複数のフレームを順に表示部40に表示することにより、二次元動画を再生する。
【0034】
なお、撮像装置2から画像処理装置3への全天球動画の入力は、記憶媒体51を用いない方法により成されてもよい。例えば、撮像装置2および画像処理装置3を通信ケーブルにより電気的に接続し、データ通信によって全天球動画を画像処理装置3に入力してもよい。あるいは、撮像装置2および画像処理装置3が電波を介した無線通信によって全天球動画を授受してもよい。撮像装置2から再生装置4への全天球画像の入力、および、画像処理装置3から再生装置4への二次元動画の入力についても同様である。
【0035】
(二次元動画作成処理の説明)
画像生成部30が実行する二次元動画作成処理について説明する。画像生成部30は、二次元動画作成処理を実行することにより、全天球動画から二次元動画を作成する。二次元動画作成処理は、全天球画像から主要被写体を特定し、特定した主要被写体を含む二次元動画を作成する処理である。
【0036】
二次元動画作成処理は、被写体特定処理および二次元画像作成処理とを含む。被写体特定処理は、全天球動画に含まれる全天球画像から、主要被写体を特定する処理である。二次元画像作成処理は、全天球画像から、被写体特定処理により特定された主要被写体を含む二次元画像を作成する処理である。以下、被写体特定処理および二次元画像作成処理について順に説明する。
【0037】
(被写体特定処理の説明)
画像生成部30は、例えば顔認識やパターンマッチングなどの周知の技術を用いて、1つの全天球動画に含まれる各フレームから主要被写体を特定する。例えば、主要被写体が人物である場合には、人間の顔を認識する技術によって、全天球画像に含まれる顔を検出し、その顔の向きや位置、色などからその顔に対応する人物の全身を特定することができる。なお、「主要被写体を特定する」とは、全天球画像に写り込んでいる種々の被写体の位置および形状を認識(検出)し、かつ、それらの被写体から主要な被写体を選択することである。例えば、主要被写体が人物であり、全天球画像から3人以上の人物が検出されたときには、画像生成部30は、それらの人物の全員を主要被写体として特定する。
【0038】
主要被写体の認識は、画像における被写体のサイズ、サリエンシーなど様々な要素(パラメータ)に基づいて決定することができる。また、画像1枚ではなく時間的に連続した複数の画像を用いることにより被写体の動きなどに基づいて決定することができる。なお、パラメータを数値化し、閾値処理を用いることにより、所定の閾値以上の被写体を主要被写体とすることができる。閾値処理を用いると、複数の被写体が主要被写体と認定されることがある。主要被写体は、一つでも複数でもよい。なお、全天球画像においては、360度の範囲が撮像されているため、通常のカメラによる撮影と比べ、複数の被写体が主要被写体と認定される可能性が高い。
【0039】
(二次元画像作成処理の説明)
二次元画像作成処理は、全天球動画の各フレームから、主要被写体を含む二次元画像を作成する処理である。本実施の形態の画像処理システム1は、全天球動画から主要被写体を含む二次元動画を自動的に作成するものである。なお、二次元動画を構成する各画像をフレームと呼ぶ。、二次元画像作成処理は、全天球画像から、被写体特定処理で特定された主要被写体を含む二次元画像(フレーム)を作成する処理である。二次元画像作成処理では、主要被写体が1つであれば、主要被写体を1つ含むフレームを生成し、主要被写体が2つあれば、主要被写体を2つ含むフレームを生成する。
【0040】
図7(a)から(c)は、主要被写体が2つと認定された場合に、二次元画像作成処理により生成される二次元画像(フレーム)を例示する図である。第1被写体201と第2被写体202が主要被写体と認定された被写体である。図7(a)に例示した二次元画像610は、全天球画像から第1被写体201と第2被写体202とを含む部分画像(画角)を切出して二次元画像(フレーム)としてものである。また、図7(b)のように、第1被写体201を全天球画像から切り出し、第2被写体202を全天球画像から切り出し、それら切り出した2つの部分画像を上下左右に貼り合わせて二次元画像611を作成してもよい。また、図7(c)のように、第2被写体202を含む広い範囲を全天球画像から切り出した画像に、第1被写体201を全天球画像から切り出した部分画像613をスーパーインポーズ合成した二次元画像612を作成してもよい。
以下、バレーボールの試合を撮像装置2により撮像する例を用いて、二次元画像作成処理における課題を説明する。
【0041】
図6は、二次元画像作成処理の説明図である。図6(a)は、バレーボールのコートの上面図である。図6の例において、撮像装置2は、コート200の中央に設置される。コート200の紙面左側には、主要被写体である人物(以下、第1被写体201と称する)が存在する。コート200の紙面右側には、別の主要被写体である人物(以下、第2被写体202と称する)が存在する。すなわち、主要被写体が2つと認定されたケースである。図6(b)に、撮像装置2を中心とする三次元空間における第1被写体201および第2被写体202の配置を示す。
【0042】
ここで画像生成部30が、図7(a)のように第1被写体201と第2被写体202とを含む2次元画像(フレーム)を全天球画像から切り出す場合について考える。仮に、画像生成部30が、図6(b)の経路204を含むように2次元画像(フレーム)を生成すると、生成された二次元画像610は、第1被写体201が右側、第2被写体202が左側に配置されたものになる。一方で、仮に、画像生成部30が、図6(b)の経路209を含むように2次元画像(フレーム)を生成すると、生成された二次元画像610は、第1被写体201が左側、第2被写体202が右側に配置されたものになる。上記配置の問題は、二次元画像611、二次元画像612についても同様に生じる。すなわち、全天球画像の性質上、画像生成部30は、第1被写体201と第2被写体202を少なくとも2通りに配置(第1被写体201を左側、第2被写体202を右側に配置。または第1被写体201を右側、第2被写体202を左側に配置)することができる。なお、図7(a)には、理解を容易にするため図6(b)に示した経路204を図示している。
【0043】
ところで、画像生成部30が生成した2次元画像(または2次元動画)を再生した場合、ユーザの視認性は配置の仕方によって大きく異なる。例えば、本バレーボールの例において、第1被写体201をレシーバ、第2被写体202をアタッカーとすると、二次元画像610に撮像されたバレーボールとの関係から、第1被写体201と第2被写体202の配置によって、違和感のある画像(映像)となってしまう。したがって、画像生成部30は、複数の主要被写体(2つの主要被写体)を適切に配置した2次元画像(フレーム)を生成する必要がある。
【0044】
本実施形態の画像生成部30は、二次元画像作成処理において、第1被写体201および第2被写体202の両方の主要被写体を含む二次元画像を作成する。画像生成部30は、被写体特定処理により特定した第1被写体201および第2被写体202の位置を用いて、第1被写体201および第2被写体202を含む画角を二次元画像の画角として決定する。例えば、図6(a)に示す位置に第1被写体201および第2被写体202が存在する場合、画像生成部30は、第1被写体201および第2被写体202を含む画角203を二次元画像の画角として決定する。画像生成部30は、全天球画像からその画角203に相当する内容を切り出して長方形に変形することにより、二次元画像を作成する。
【0045】
第1被写体201および第2被写体202を含む画角は複数存在する。例えば、第1被写体201を画面左に、第2被写体202を画面右に配置した画角もあれば、第1被写体201を画面右に、第2被写体202を画面左に配置した画角もある。画像生成部30はそのような多数の画角の中から、「三次元空間において第1被写体201および第2被写体202を結ぶ最短の経路204を含み、かつ、第1被写体201および第2被写体202を含む」画角を選択する。例えば図6(a)において、第1被写体201および第2被写体202を含む画角は、画角203や画角205など、多数の画角が考えられる。画像生成部30は、それらの画角のうち、第1被写体201および第2被写体202を結ぶ最短の経路204を含み、かつ、第1被写体201および第2被写体202を含む画角203を選択する。なお、「最短の経路204を含む」とは、「最短の経路204に存在する第1被写体201および第2被写体202と異なる第3被写体を含む」と考えることもできる。
【0046】
「全天球画像において第1被写体201および第2被写体202を結ぶ最短経路」の特定方法について説明する。全天球60の中心を通り、第1被写体201および第2被写体202を通る平面で、全天球60を切断した場合に、全天球60の断面の円周の一部が第1被写体201および第2被写体202を結ぶ最短経路となる。図6(b)に示す全天球画像206において、第1被写体201および第2被写体202を点と見なすと、天球60の断面の円周は、経路204と経路209をつなぎ合わせたものといえる。経路204と経路209のうち、短い方が最短経路となる。すなわち、全天球画像において第1被写体201および第2被写体202を結ぶ最短経路は経路204である。第1被写体201と第2被写体202が全天球60の正反対に位置する場合を除いて、最短経路は一意に特定することができる。
【0047】
画像生成部30は、以下のようにして、第1被写体201と第2被写体202の最短経路を算出する。例えば図6(c)に示す全天球画像(全周画像)206において、画像生成部30は、第1被写体201の右方向に第2被写体202を配置する。あるいは、画像生成部30は、第1被写体201の右方向に第2被写体202が配置された全天球画像206を準備する。その結果、全天球画像206において第1被写体201と第2被写体202を結んだ直線は、全天球60の中心を通り、第1被写体201および第2被写体202を通る平面で、全天球60を切断した場合の全天球60の断面の円周と一致する。画像生成部30は、第2被写体202から左方向についての第1被写体201までの経路209と、第1被写体201から左方向についての第2被写体202までの最短経路204とを比較する。なお比較に際して、画像生成部30は、第1被写体201の左方向における第2被写体202までの距離208(以下、第1距離208と称する)を算出する。同様に、画像生成部30は、第2被写体202の左方向における第1被写体201までの距離207(以下、第2距離207と称する)を算出する。距離は、全天球画像(全周画像)206を構成する画素をカウントすることにより算出することができる。画像生成部30は、第1距離208と第2距離207とを比較する。図6の例では、第2距離207が第1距離208よりも長い。
【0048】
次に、画像生成部30による二次元画像(フレーム)の生成方法について説明する。画像生成部30は、上述したように第1距離208と第2距離207とを比較して、第2距離207が第1距離208よりも長いと判断した。そこで、画像生成部30は、第1被写体201が右に、第2被写体202が左に、それぞれ配置されるように、二次元画像(フレーム)を生成する。他方、第1距離208が第2距離207よりも長い場合、画像生成部30は、それとは逆に、第1被写体201が左に、第2被写体202が右に、それぞれ配置されるように、二次元画像(フレーム)を生成する。
【0049】
また、画像生成部30は、次のように二次元画像(フレーム)を生成しても良い。画像生成部30は、第1距離208と第2距離207とを比較して、第2距離207が第1距離208よりも長いと判断した際に、最短経路204を含み、かつ、第1被写体201および第2被写体202を含むように画角を決定する。決定した画角で全天球画像(全周画像)206から部分画像を切り出すと、部分画像において、第1被写体201は第2被写体202の右側に配置されている。そこで、画像生成部30は、第1被写体201が右に、第2被写体202が左に、それぞれ配置されるように、二次元画像(フレーム)を生成する。
【0050】
なお、上述の第1距離207は、前述した再生装置4による全天球画像の再生処理において、ユーザが左方向へのスクロール操作を繰り返したときに、第1被写体201が表示部40に表示されてから第2被写体202が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離に相当する。上述の第2距離208は、前述した再生装置4による全天球画像の再生処理において、ユーザが左方向へのスクロール操作を繰り返したときに、第2被写体202が表示部40に表示されてから第1被写体201が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離に相当する。
【0051】
以上のように、画像生成部30は、第1被写体201が表示部40に表示されてから第2被写体202が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した第1距離207と、第2被写体202が表示部40に表示されてから第1被写体201が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した第2距離208とに基づいて、第1被写体201と第2被写体202とを配置した二次元画像を全天球画像から生成する。具体的には、画像生成部30は、第1距離207が第2距離208よりも長い場合は、第1被写体201と第2被写体202とを含み、第1被写体201の左方向側に第2被写体202を配置した二次元画像を全天球画像から生成する。
【0052】
図7(d)を用いて、第1被写体201の左方向側(第1方向側)とはどのような方向を指すのかについて詳述する。なお図7(d)では説明の簡単のため、第1被写体201の位置201aおよび第2被写体202の位置202aを点で表現している。第1被写体201の位置201aと第2被写体202の位置202aが判明しているとき、第1被写体201を始点とし、第2被写体202を終点とするベクトル615を求めることができる。ベクトル615を、左方向(横方向)の成分616と左方向に直交する方向(縦方向)の成分617に分解する。左方向の成分616が左方向に正であるとき、第2被写体202は第1被写体201の左方向側に配置されていることになる。つまり、「第2被写体202を第1被写体201の左方向側(第1方向側)に配置する」とは、第1被写体201の位置201aを始点とし、第2被写体202の位置202aを終点とするベクトル615が左方向(第1方向)の正の成分を有していることを指す。なお、このベクトル615の左方向(第1方向)に直交する方向(縦方向)の成分617がどのような状態であるかは問わない。
【0053】
なお、画像生成部30が二次元画像(フレーム)を生成するに際して、図6では第1距離207および第2距離208を用いた考え方を説明したが、距離ではなく三次元空間における角度を用いて説明することもできる。例えば、図6(b)において、原点Oから第1被写体201に向かうベクトルと、原点Oから第2被写体202に向かうベクトルとが成す角度を考える。これら2つのベクトルが成す角度は、鋭角と鈍角の2通りが考えられる。このうち、鋭角は最短経路204および画角203に対応し、鈍角は経路209および画角205に対応する。従って、画像生成部30は、これら2つのベクトルが成す角度が最小となり、かつ、第1被写体201および第2被写体202を含むように画角を決定する。決定した画角で全天球画像(全周画像)206から部分画像を切り出すと、部分画像において、第1被写体201は第2被写体202の右側に配置されている。そこで、画像生成部30は、第1被写体201が右に、第2被写体202が左に、それぞれ配置されるように、二次元画像(フレーム)を生成する。
【0054】
画像生成部30は、以上で説明した処理により二次元画像(フレーム)を生成(作成)する。画像生成部30は、それらの二次元画像を含む二次元動画を生成(作成)し、記憶媒体52に記憶する。
【0055】
図8は、二次元動画作成処理のフローチャートである。ステップS10において、画像生成部30は、全天球動画に含まれる各フレームに対して、被写体特定処理を実行する。これにより、各フレームについて、主要被写体が特定される。
【0056】
ステップS30において、画像生成部30は、全天球動画に含まれるフレームを1つ選択する。画像生成部30は、選択したフレームにおいて特定された主要被写体の数を取得する。主要被写体が1つの場合(ステップS30:YES)は、処理をステップS35に進める。ステップS35において、画像生成部30は、全天球画像(フレーム)に基づき、主要被写体を含む二次元画像(フレーム)を作成する。
【0057】
主要被写体が2つ以上ある場合(ステップS30:No)は、処理をステップS40に進める。ステップS40において、画像生成部30は、選択したフレームにおける第1距離を算出する。すなわち、画像生成部30は、2つの主要被写体の一方を第1被写体、他方を第2被写体とし、第1被写体から第1方向に向かい第2被写体に到達するまでの距離を算出する。ステップS50において、画像生成部30は、選択したフレームにおける第2距離を算出する。すなわち、画像生成部30は、第2被写体から第1方向に向かい第1被写体に到達するまでの距離を算出する。なお、第1方向とは、全天球動画に含まれるフレームの一部を表示部40に表示させた場合に、ユーザがある方向へのスクロール操作を繰り返したときに、第1被写体201が表示部40に表示された後に第1被写体201が表示部40から消え、その後、第2被写体202が表示され、再度第1被写体201が表示部40に表示されることになる方向である。
【0058】
ステップS60において、画像生成部30は、ステップS40で算出した第1距離がステップS50で算出した第2距離よりも長いか否かを判定する。第1距離が第2距離よりも長い場合、画像生成部30は、処理をステップS70に進める。ステップS70において、画像生成部30は、ステップS30で選択した全天球画像(フレーム)に基づき、第2被写体を第1被写体の第1方向側に配置した二次元画像を作成する。他方、ステップS60において第1距離が第2距離以下であった場合、画像生成部30は、処理をステップS80に進める。ステップS80において、画像生成部30は、ステップS30で選択したフレームに基づき、第1被写体を第2被写体の第1方向側に配置した二次元画像を作成する。
【0059】
ステップS90において、画像生成部30は、全天球動画に未選択のフレームが残っているか否かを判定する。未選択のフレームが残っていた場合、画像生成部30は、処理をステップS30に進める。他方、全てのフレームが既に選択されていた場合、画像生成部30は、処理をステップS100に進める。ステップS100において、画像生成部30は、ステップS70およびステップS80で作成された二次元画像からなる二次元動画を記憶媒体52に記憶するよう出力部32を制御する。
【0060】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の構成により、全天球画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0061】
(第1の実施の形態の変形例)
なお、撮像部20、画像生成部30、および表示部40のうち2つ以上を単一の装置が有していてもよい。例えば、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3の役割を兼ね備える。従って、画像処理装置3は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、画像処理装置3が画像生成部30に加えて表示部40を有していてもよい。この場合、画像処理装置3が再生装置4の役割を兼ね備える。従って、再生装置4は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30および表示部40を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3および再生装置4の役割を兼ね備える。すなわち、撮像装置2は、単独で画像処理システム1と同等の機能を提供する。
【0062】
図10は、画像処理装置3と再生装置4とを兼ね備える電子機器1000を模式的に示すブロック図である。電子機器1000は、例えばスマートフォンやタブレット端末である。電子機器1000は、画像生成部30、入力部31、出力部32、表示部40、制御部42、および操作部43を有する。電子機器1000は、二次元動画の作成、作成した二次元動画の表示部40による再生、作成した二次元動画の記憶媒体52への記憶、全天球画像(全天球動画)の表示部40による再生を行うことができる。なお、電子機器1000の各部の動作については、第1の実施の形態と同一であるので、説明を省略する。
【0063】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(2)本実施形態の構成により、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0064】
なお、画像生成部30による二次元動画の作成は、撮像部20による全天球動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、全天球動画の作成が完了してから開始されてもよい。同様に、表示部40による二次元動画の表示は、画像生成部30による二次元動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、二次元動画の作成が完了してから開始されてもよい。
【0065】
上述した実施の形態では、撮像部20が全天球を撮像するとして説明した。すなわち、撮像部20は、撮像部20の周囲360度の範囲を撮像できるとして説明したが、撮像部20が、垂直方向および/または水平方向について、全天球よりも狭い範囲しか撮像できなくてもよい。例えば、撮像部20が半天球を撮像可能に構成してもよい。あるいは、撮像部20が、半天球よりも更に狭い範囲しか撮像できなくてもよい。例えば、図3(a)に網掛けで示した、範囲68の画像しか撮像できなくてもよい。二次元動画は、撮像部20の画角が全天球よりも狭い場合、それよりも更に狭い画角の画像により構成されることになる。
【0066】
また、全周画像は、必ずしも360度全ての範囲を撮像した画像でなくてもよい。例えば、300度程度の範囲を撮像した画像を、左右端が繋がった全周画像として扱うことも可能である。全天球画像についても同様であり、全天球の一部が欠落した画像を、全体が一続きになった全天球画像として扱うことも可能である。
【0067】
本明細書では、全天球画像とは、表示部40に表示された、画像の一部を第1方向に移動させて、画像の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、当該画像に含まれる第1被写体201が表示された後に第2被写体202が表示され、再度第1被写体201が表示部40に表示される画像のことである。全天球の一部が欠落した画像もまた、欠落した部分を一続きにすることにより、表示部40に表示された、画像の一部を第1方向に移動させて、画像の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、当該画像に含まれる第1被写体201が表示された後に第2被写体202が表示され、再度第1被写体201が表示部40に表示されるので全天球画像である。
【0068】
図9(a)は、全天球画像の例を示す模式図である。半天球に対応する像620および像621は、360度よりも小さい範囲を撮像した像であり、半天球の一部が欠落している。画像生成部30および制御部42は、辺E-Fと辺G-Fとを連続しているように扱うことができる。つまり、図9(a)に示す画像は全天球画像である。
【0069】
図9(b)は、全周画像の例を示す模式図である。図9(b)には、水平方向に非連続な範囲を撮像した画像622、画像623、および画像624を図示している。これら3つの画像は、水平方向について360度よりも小さい範囲を撮像した像であり、360度の一部が欠落している。画像生成部30および制御部42は、辺A-Bどうし、辺C-Dどうし、辺E-Fどうしを連続しているように扱うことができる。具体的には、制御部42は、画像622の一部が表示部40に表示されている状態で水平左方向に画像622を移動させて、画像622の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返す。その結果、辺C-Dが表示され、続いて辺E-Fが表示される。そして、さらに制御を繰り返すことにより、辺A-Bが表示され、画像622の一部が表示部40に表示されている状態に戻る。したがって、図9(b)に示す画像622、画像623、画像624は全周画像である。なぜならば、図9(b)に示す画像(画像622、画像623、画像624)は、当該画像に含まれる適当な被写体を第1被写体201、第2被写体202とすることにより、表示部40に表示された、画像の一部を第1方向に移動させて、画像の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、当該画像に含まれる第1被写体201が表示された後に第2被写体202が表示され、再度第1被写体201が表示部40に表示される画像だからである。なお、ここでいう全周画像(あるいは全天球画像)は、画像コンテンツの連続性は全く問題としていない。つまり、例えば、表示部40に辺C-Dを含む画像が表示された場合、ユーザは、辺C-Dの左側の画像コンテンツと、辺C-Dの右側の画像コンテンツが、画像コンテンツとして不連続であると視認するかもしれない。しかしながら、画像コンテンツの連続性は問題でなく、画像の連続性が重要である。つまり、辺C-Dの左側の画像と、辺C-Dの右側の画像が連続であればよい。
【0070】
例えば、画像622において、辺A-Bと辺C-Dを連続して扱うことにより、画像622は全周画像といえる。また、画像623において、辺C-Dと辺E-Fを連続して扱うことにより、画像623も全周画像といえる。全ての画像は、同様に扱うことにより、表示部40に表示された、画像の一部を第1方向に移動させて、画像の表示部40に表示されていない部分を表示させる制御を繰り返すことによって、当該画像に含まれる第1被写体201が表示された後に第2被写体202が表示され、再度第1被写体201が表示部40に表示される画像となるので、全天球画像(全周画像)である。
【0071】
なお、図9(b)のように、実際には連続していない全周画像や全天球画像(画像622、画像623、画像624)であっても、画像生成部30による2次元画像生成処理は、上述した実施の形態と何ら違いはない。すなわち、全周画像(画像622、画像623、画像624)から第1被写体201と第2被写体202をどのように配置した2次元画像(フレーム)を生成するかは、上述した実施の形態と同様に判断することができる。例えば、第1被写体201が表示部40に表示されてから、画面左方向へのスクロール操作を繰り返し、第2被写体202が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離と、第2被写体202が表示部40に表示されてから、画面左方向へのスクロール操作を繰り返し、第1被写体201が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離とを比較し、前者の距離が後者の距離よりも長い場合には、第2被写体202が第1被写体201の左方向に配置されるように二次元画像を作成すればよい。
【0072】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(3)本実施形態の構成により、全周画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0073】
なお、第1被写体201と第2被写体202を含む二次元画像(フレーム)は、上述した図7(a)から図7(c)以外の方法で作成してもよい。例えばシームカービング等の技術を用いて、第1被写体201と第2被写体202の間の空間を圧縮した二次元画像を作成してもよい。もしくは、第1被写体201と第2被写体202の間に位置する被写体を間引いたり縮小したりして二次元画像を作成してもよい。
【0074】
画像生成部30が、全フレームに対して被写体特定処理を実行するのではなく、一部のフレームに対してのみ被写体特定処理を実行するようにしてもよい。例えば、画像生成部30は、1フレーム目、31フレーム目、61フレーム目など、30フレームごとに主要被写体を特定する。画像生成部30は、1フレーム目と31フレーム目の間の29フレームに対しては、被写体特定処理を実行しない。
【0075】
例えば、全天球動画のフレームレートが60fpsであれば、30フレームは0.5秒間に相当する。0.5秒間程度の期間であれば、主要被写体の位置はほとんど変化していないことが期待される。つまり、それら29フレームにおける主要被写体の位置は、1フレーム目における主要被写体の位置と31フレーム目における主要被写体の位置から、容易に推定可能である。
【0076】
このように、一部の全天球画像に対してのみ被写体特定処理を実行する(一部の全天球画像からのみ主要被写体を特定する)ことで、二次元動画作成処理の実行に必要な演算量を削減することができる。
【0077】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る画像処理システムは、画像生成部30が実行する二次元動画作成処理の内容が、第1の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態で言及しない点は、第1の実施の形態で説明した内容と同一である。すなわち、第1の実施の形態で説明した内容は、第2の実施の形態に全て組込まれている。以下、第2の実施の形態に係る画像処理システムについて、第1の実施の形態に係る画像処理システムと異なる点を中心に説明する。
【0078】
画像生成部30は、第1の実施の形態と同様に、各フレームに対して被写体特定処理を実行する。画像生成部30は、これにより特定された主要被写体について、フレーム内における主要被写体の向きを特定する方向特定処理を実行する。本実施の形態において、主要被写体は人物であり、主要被写体の向きとは画像内における人物の顔の向きである。方向特定処理において、画像生成部30は、周知の顔認識処理を実行し、主要被写体の顔およびその顔の向きを認識する。画像生成部30は、画像内における主要被写体の顔の向きをその主要被写体の向きとして特定する。
【0079】
次に、画像における主要被写体の向きの特定方法について説明する。まず、三次元空間における主要被写体の向きを決定する。例えば、主要被写体が人間である場合に、鼻の向いている方向を主要被写体の向きとする。この場合、顔の中心を始点とし鼻の頂点を終点とするベクトルの向きを主要被写体の向きとすることができる。なお、三次元空間における主要被写体の向きの決定の仕方については後述する。三次元空間における主要被写体の向きを示すベクトルが特定されると、当該ベクトルを画像(または撮像面)に射影する。この結果、主要被写体が撮像された2次元画像に射影されたベクトル(射影ベクトル)が画像における主要被写体の向きとなる。
【0080】
図11は、二次元画像作成処理の説明図である。図11に示す全天球画像300は、主要被写体である第1被写体301と第2被写体302を含んでいる。表示部40に表示された、全天球画像300の一部を左方向に移動させる制御によって、第1被写体が表示部40に表示されてから第2被写体が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離(第1被写体301から右方向に第2被写体302までの距離)は、第2被写体302から右方向に第1被写体301までの距離よりも長いので、仮に第1の実施の形態と同様の処理を行って二次元画像を作成する場合、第2被写体302が第1被写体301の左側に配置された二次元画像が作成されることになる。
【0081】
上述した通り、全天球画像の性質上、画像生成部30は、第1被写体201と第2被写体202を少なくとも2通りに配置(第1被写体201を左側、第2被写体202を右側に配置。または第1被写体201を右側、第2被写体202を左側に配置)することができる。一方で、画像生成部30が生成した2次元画像(または2次元動画)を再生した場合、ユーザの視認性は配置の仕方によって大きく異なる。画像生成部30は、複数の主要被写体(2つの主要被写体)を適切に配置した2次元画像(フレーム)を生成する必要がある。
【0082】
本実施の形態に係る画像処理部30は、画像内において第1被写体301が第2被写体302の方を向く二次元画像を作成する。図11に例示する画像において、第1被写体301は紙面右方向を向いている。第1被写体301が第2被写体302の方を向くように、第1被写体301と第2被写体302とを配置した二次元画像(フレーム)を作成することにより、ユーザに違和感のない画像(映像)とすることができる。画像処理部30は、第1被写体301が第2被写体302の左側に配置されるように二次元画像を作成する。
【0083】
次に、画像内において第1被写体301が第2被写体302の方を向く点について説明する。上述してように、三次元空間における主要被写体の向きを示すベクトルを画像(または撮像面)に射影した際、射影ベクトルが画像における主要被写体の向きである。例えば、図11において示されるベクトルが第1被写体301の射影ベクトルである。画像300において、第1被写体301を原点とし、第1被写体301から第2被写体302へ向かう方向にX軸をとる。このとき、第1被写体301の射影ベクトルのX軸方向の成分が正であれば、第1被写体301は第2被写体302の方を向いていると判断できる。逆に、第1被写体301の射影ベクトルのX軸方向の成分が負であれば、第1被写体301は第2被写体302の方を向いていないと判断できる。
【0084】
画像生成部30は、第1被写体301が表示部40に表示されてから第2被写体302が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した第1距離が、第2被写体302が表示部40に表示されてから第1被写体301が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した第2距離よりも長い場合に、第2被写体302が表示部40に表示されてから第1被写体301が表示部40に表示されるまでに表示部40に表示される画像において、第1被写体301が第2被写体302の方を向いていない場合に、第1被写体301と第2被写体302とを含み、第2被写体302の第1方向側に第1被写体301を配置した二次元画像を全天球画像から生成する。
【0085】
次に、三次元空間における被写体の向きの決定の仕方について説明する。例として人物の鼻の向きを説明したが、被写体(人物)の顔の向きでも良い。顔の向きとしては、目の向いている方向でも良いし、顔を平面としてモデル化した場合に、当該平面の法線方向としてもよい。また、被写体の向きとして人物の顔の向きではなく人物の体の向きを採用してもよい。体の向きを採用した場合、胸を平面としてモデル化し、当該平面の法線方向を体の向きとしてもよい。いずれにせよ、三次元空間における被写体の向きを予め規定することにより、三次元空間における被写体の向きは一意に決定することが可能である。また、主要被写体として人物以外の被写体を採用する場合には、被写体に合わせて適宜向きを規定すればよい。例えば主要被写体が車両やその他の移動体であれば、その車両の進行方向(移動方向)を主要被写体の向きとすればよい。また、主要被写体が建物であれば、その建物の正面の出入り口の向きを主要被写体の向きとすればよい。
【0086】
次に、三次元空間における被写体の向きの取得の仕方について説明する。上述したように、被写体に合わせて向きは規定されているので、例えば画像生成部30が、全天球画像を画像解析することにより、もしくは撮像部20とは別に設けたセンサの出力から、または撮像部20を用いた測距演算により、三次元空間における主要被写体の向きを取得することができる。三次元空間における主要被写体の向きを示すベクトルが取得できれば、当該ベクトルを射影することにより射影ベクトルを取得することができる。そして、画像生成部30は、上述したように、射影ベクトルに基づいて画像における主要被写体の向きを算出することができる。
【0087】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の構成により、全天球画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0088】
(第2の実施の形態の変形例)
なお、撮像部20、画像生成部30、および表示部40のうち2つ以上を単一の装置が有していてもよい。例えば、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3の役割を兼ね備える。従って、画像処理装置3は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、画像処理装置3が画像生成部30に加えて表示部40を有していてもよい。この場合、画像処理装置3が再生装置4の役割を兼ね備える。従って、再生装置4は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30および表示部40を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3および再生装置4の役割を兼ね備える。すなわち、撮像装置2は、単独で画像処理システム1と同等の機能を提供する。
【0089】
図10は、画像処理装置3と再生装置4とを兼ね備える電子機器1000を模式的に示すブロック図である。電子機器1000は、例えばスマートフォンやタブレット端末である。電子機器1000は、画像生成部30、入力部31、出力部32、表示部40、制御部42、および操作部43を有する。電子機器1000は、二次元動画の作成、作成した二次元動画の表示部40による再生、作成した二次元動画の記憶媒体52への記憶、全天球画像の表示部40による再生を行うことができる。なお、電子機器1000の各部の動作については、第1の実施の形態と同一であるので、説明を省略する。
【0090】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(2)本実施形態の構成により、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0091】
なお、画像生成部30による二次元動画の作成は、撮像部20による全天球動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、全天球動画の作成が完了してから開始されてもよい。同様に、表示部40による二次元動画の表示は、画像生成部30による二次元動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、二次元動画の作成が完了してから開始されてもよい。
【0092】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(3)本実施形態の構成により、全周画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る画像処理システムは、画像生成部30が実行する二次元動画作成処理の内容が、第1の実施の形態と異なっている。なお、本実施の形態で言及しない点は、第1の実施の形態で説明した内容と同一である。すなわち、第1の実施の形態で説明した内容は、第3の実施の形態に全て組込まれている。以下、第3の実施の形態に係る画像処理システムについて、第1の実施の形態に係る画像処理システムと異なる点を中心に説明する。本実施の形態の画像生成部30は、第1の実施の形態と同様に、被写体特定処理を実行する。その内容は第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0094】
図12および図13は、二次元画像作成処理の説明図である。図12(a)および図13(a)は、バレーボールのコートの上面図である。図12および図13の例において、撮像装置2は、コート400の中央に設置される。時刻t1におけるコート400の様子を図12(a)に、時刻t1に撮影された1フレーム目(以下、第1全天球画像500と称する)を図12(b)に、それぞれ示す。このとき、画像生成部30は、人物である被写体403(以下、第3被写体403と称する)を主要被写体として認定しているものとする。従って、画像生成部30は、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS35により、第3被写体403を含む二次元画像(フレーム)を作成する。
【0095】
時刻t1よりも後の時刻t2におけるコート400の様子を図13(a)に、時刻t2に撮影された31フレーム目(以下、第2全天球画像510と称する)を図13(b)に、それぞれ示す。このとき、コート400には、前述の時刻t1における主要被写体である第3被写体403と、時刻t2における人物である主要被写体404(以下、第4被写体404と称する)と、人物である主要被写体405(以下、第5被写体405と称する)が存在する。ここで、画像生成部30は、第4被写体404および第5被写体405を2つの主要被写体として特定したものとする。なお、時刻t2においては、第3被写体403は主要被写体として特定されていないものとする。
【0096】
撮像装置2と第4被写体404および第5被写体405の位置関係は、図6に示した例と同一である。すなわち、図13(b)において、表示部40に表示された、第2全天球画像510の一部を左方向に移動させる制御によって、第4被写体404が表示部40に表示されてから第5被写体405が表示部40に表示されるまでに、表示部40に表示される画像が移動した距離(第4被写体404の右方向における第5被写体405までの距離(以下、第1距離と称する))が、第5被写体405の右方向における第4被写体404までの距離(以下、第2距離と称する)よりも長い。従って、仮に第1の実施の形態と同様の処理を行って第2全天球画像510から二次元画像を作成する場合、第5被写体405が第4被写体404の左側に配置された二次元画像が作成されることになる。
【0097】
これに対して、本実施の形態の画像生成部30は、時間的に前のフレーム、すなわち、図12(b)に示す時刻t1において撮像された第1全天球画像500における主要被写体の位置を尊重して二次元画像を生成する。具体的には、画像生成部30は、時刻t1における主要被写体(第3被写体403)を含む画角である画角401を特定する。そして時刻t2において撮像された第2全天球画像510から画角401に相当する位置にある部分画像511を特定する。そして、画像生成部30は、第2全天球画像510における部分画像511と、第4被写体404と、第5被写体405の位置関係に基づいて第4被写体404と、第5被写体405とを配置した二次元画像を作成する。
【0098】
画像生成部30による二次元画像作成処理について詳述する。画像生成部30は、第2全天球画像における、第1全天球画像における第3被写体403を含む部分画像に相当する位置にある部分画像511(すなわち、第2全天球画像における、画角401に相当する部分画像。以下、第1部分画像511と称する)を想定する。画像生成部30は、第4被写体404と、第5被写体405と、第4被写体404および第5被写体405の間に第1部分画像511が含まれる部分画像(すなわち、第2全天球画像における、画角406に相当する部分画像。以下、第2部分画像と称する)を想定する。画像処理部30は、第2部分画像における、第4被写体404と第5被写体405の左右の位置関係が維持されるような二次元画像を作成する。
【0099】
なお、時刻t1において撮像された第1全天球画像500における主要被写体の位置を尊重して二次元画像を生成するのは、以下の理由による。画像生成部30は、時刻t1において撮像された第1全天球画像500から、第3被写体403を含む2次元画像(フレーム)を生成する。すなわち、ユーザは、2次元動画を再生した映像としては、画角401に相当する方向を所定期間観ていることになる。そして、時刻t2になって主要被写体が、第3被写体403から第4被写体404と、第5被写体405に変更になる。その結果、画像生成部30は、時刻t2において撮像された第2全天球画像510から、第4被写体404と第5被写体405とを含む2次元画像(フレーム)を生成する。2次元動画を再生した映像として、画角401に相当する方向を所定期間観ていたユーザにとって、第3被写体403の位置(すなわち、画角401に相当する方向)を基準として、第4被写体404と第5被写体405とを配置することによって、3次元空間の被写体の配置を理解しやすくなるからである。つまり、図13(a)において、撮像装置2からみて画角401の方向を基準にすると、第4被写体404は左に、第5被写体405は右に存在する。したがって、2次元動画の再生時に、第3被写体403を含む2次元画像(フレーム)から第4被写体404と、第5被写体405とを含む2次元画像(フレーム)に切り替わった際、当該2次元画像において、第4被写体404は左に、第5被写体405は右に配置することでユーザの違和感を減少させることができる。
【0100】
このように、時間的に前のフレームの画角を尊重して画角を決定することで、急なシーンチェンジによる鑑賞時の混乱を回避することができる。つまり、前フレームとは全く違う方向が急に再生されると、全天球画像のどの部分を切り出した画面なのかが分からなくなってしまう可能性がある。本実施形態の画像生成部30は、上述したように、前フレームの画角を尊重して画角を決定するので、空間の把握が容易な、鑑賞に適した二次元動画を作成することができる。
【0101】
なお、「左右の位置関係が維持される」とは、上下の位置関係を無視し、左右方向のみの位置関係を考えたときに、その関係が維持されていることを意味する。つまり、上下の位置関係がどれだけ変化しようとも、左右方向に関する位置関係が維持されてさえいれば、それは左右の位置関係が維持されたことになる。
【0102】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の構成により、全天球画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0103】
(第3の実施の形態の変形例)
なお、撮像部20、画像生成部30、および表示部40のうち2つ以上を単一の装置が有していてもよい。例えば、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3の役割を兼ね備える。従って、画像処理装置3は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、画像処理装置3が画像生成部30に加えて表示部40を有していてもよい。この場合、画像処理装置3が再生装置4の役割を兼ね備える。従って、再生装置4は画像処理システム1に含まれていなくてよい。別の例として、撮像装置2が撮像部20に加えて画像生成部30および表示部40を有していてもよい。この場合、撮像装置2が画像処理装置3および再生装置4の役割を兼ね備える。すなわち、撮像装置2は、単独で画像処理システム1と同等の機能を提供する。
【0104】
図10は、画像処理装置3と再生装置4とを兼ね備える電子機器1000を模式的に示すブロック図である。電子機器1000は、例えばスマートフォンやタブレット端末である。電子機器1000は、画像生成部30、入力部31、出力部32、表示部40、制御部42、および操作部43を有する。電子機器1000は、二次元動画の作成、作成した二次元動画の表示部40による再生、作成した二次元動画の記憶媒体52への記憶、全天球画像の表示部40による再生を行うことができる。なお、電子機器1000の各部の動作については、第1の実施の形態と同一であるので、説明を省略する。
【0105】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(2)本実施形態の構成により、上述した実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0106】
なお、画像生成部30による二次元動画の作成は、撮像部20による全天球動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、全天球動画の作成が完了してから開始されてもよい。同様に、表示部40による二次元動画の表示は、画像生成部30による二次元動画の作成と並行してリアルタイムに成されてもよいし、二次元動画の作成が完了してから開始されてもよい。
【0107】
上述した変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(3)本実施形態の構成により、全周画像から鑑賞に適した二次元画像を自動的に生成することができる。
【0108】
以上、左右方向に被写体が存在する例について説明したが、2つの主要被写体が左右以外の方向に存在する場合についても同様である。また、主要被写体が左右方向だけでなく上下方向にも移動するような場合には、左右の位置関係が維持されるのではなく、上下の位置関係が維持されるように二次元画像を作成してもよい。
【0109】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2017年第48861号(2017年3月14日出願)
【符号の説明】
【0110】
1…画像処理システム、2…撮像装置、3…画像処理装置、4…再生装置、20…撮像部、30…画像生成部、31…入力部、40…表示部、42…制御部
図1
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図10
図11
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図13