(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び構造体
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20221109BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20221109BHJP
C09J 171/00 20060101ALI20221109BHJP
C09J 171/10 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221109BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20221109BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J9/02
C09J171/00
C09J171/10
C09J11/04
H05K3/32 B
H05K1/14 J
(21)【出願番号】P 2019510011
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012897
(87)【国際公開番号】W WO2018181536
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017066012
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森尻 智樹
(72)【発明者】
【氏名】杜 暁黎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 直
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】田中 勝
(72)【発明者】
【氏名】松田 和也
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-285103(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052664(WO,A1)
【文献】特開2007-142117(JP,A)
【文献】特開2002-249544(JP,A)
【文献】特開2013-107814(JP,A)
【文献】特開2011-190339(JP,A)
【文献】特開2006-016580(JP,A)
【文献】特開2007-317563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
H01B1/00-1/24
C08K3/00-13/08
C08L1/00-201/14
H05K1/14;3/32-3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と、
前記エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、
前記第1のシラン化合物と反応する
、前記第1のシラン化合物に該当する化合物を除く第2のシラン化合物と、
フェノキシ樹脂と、
導電粒子と、
を含有する、接着剤組成物。
【請求項2】
回路接続用である、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と、
前記エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、
前記第1のシラン化合物と反応する、前記第1のシラン化合物に該当する化合物を除く第2のシラン化合物と、
フェノキシ樹脂と、
を含有し、
回路接続用である
、接着剤組成物。
【請求項4】
前記第1のシラン化合物の前記官能基が、エポキシ基、オキセタン基、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記第2のシラン化合物が、アルキル基、フェニル基、アルコキシシリル基、水酸基、フッ素含有基、(メタ)アクリロイル基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物又はその硬化物を備える、構造体。
【請求項7】
第一の回路電極を有する第一の回路部材と、
第二の回路電極を有する第二の回路部材と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置された回路接続部材と、を備え、
前記第一の回路電極及び前記第二の回路電極が電気的に接続されており、
前記回路接続部材が、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着剤組成物又はその硬化物を含む、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子(ディスプレイ表示素子)において、素子中の種々の部材を結合させる目的で従来から種々の接着剤が使用されている。接着剤に要求される特性は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等、多岐に亘る。また、接着に使用される被着体としては、プリント配線板、有機基材(ポリイミド基材等)、金属(チタン、銅、アルミニウム等)、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、SiNX、SiO2等の表面状態を有する基材などが用いられ、各被着体にあわせた接着剤の分子設計が必要である。
【0003】
従来、半導体素子用又は液晶表示素子用の接着剤では、高接着性及び高信頼性を示す熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、アクリル樹脂等)が用いられてきた。エポキシ樹脂を使用した接着剤の構成成分としては、エポキシ樹脂、及び、エポキシ樹脂に対する反応性を有するカチオン種又はアニオン種を熱又は光により発生させる潜在性硬化剤が一般に用いられている。潜在性硬化剤は、硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子であり、常温での貯蔵安定性及び加熱時の硬化速度の観点から、種々の化合物が用いられてきた。実際の工程では、例えば、温度170~250℃、10秒~3時間の硬化条件で硬化することにより所望の接着性を得ていた。
【0004】
また、近年、半導体素子の高集積化及び液晶表示素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼすおそれがある。更に、低コスト化のためには、スループットを向上させる必要があり、低温(90~170℃)且つ短時間(1時間以内、好ましくは10秒以内、より好ましくは5秒以内)での接着、換言すれば、低温短時間硬化(低温速硬化)での接着が要求されている。この低温短時間硬化を達成するためには、より活性が高い熱潜在性触媒を使用する必要があるが、常温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0005】
そのため、近年、オニウム塩を熱潜在性触媒として使用したエポキシ樹脂のカチオン硬化系が注目されている。カチオン硬化系は、反応活性種であるカチオンが非常に反応性に富むため、短時間硬化が可能であり、且つ、オニウム塩の分解温度以下では、触媒が安定に存在することから、低温短時間硬化と貯蔵安定性(例えば、常温付近での貯蔵安定性)とを両立した硬化系である。このようなカチオン硬化系の接着剤としては、例えば、カチオン重合が可能な官能基(エポキシ基等)を有するシラン化合物(シランカップリング剤等)を含有するカチオン硬化系の接着剤組成物が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0006】
一方、従来の、例えば、温度170~250℃、10秒~3時間の硬化条件で使用されている接着剤についても、生産性向上及び在庫管理の簡易化のために、より長期間の貯蔵安定性が求められるようになってきた。上記接着剤では、例えば、アニオン重合が可能な官能基(エポキシ基等)を有するシラン化合物(シランカップリング剤等)を含有するアニオン硬化系の接着剤組成物が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したシラン化合物は、接着剤組成物の接着性を向上させるために用いられている。しかしながら、シラン化合物としてカチオン又はアニオン硬化系で反応する官能基を有するシラン化合物のみを含有する従来の接着剤組成物(混合物)を保存した場合、シラン化合物の特性劣化が著しく、接着剤組成物の接着性が低下するという問題がある。そのため、従来の接着剤組成物に対して、保存安定性を向上させることが求められている。
【0009】
そこで、本開示は、優れた保存安定性を有する接着剤組成物、及び、それを用いた構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、従来の接着剤組成物においてシラン化合物の特性が劣化する要因について以下のとおりと推測している。すなわち、接着剤組成物の保存中に、シラン化合物とは異なる他の開始剤が重合反応を開始した際、シラン化合物がその重合反応に取り込まれることで接着剤組成物の構成材料(樹脂等)の内部に取り込まれる。これにより、接着剤組成物と被着体との界面へ作用できるシラン化合物の分子数が減少するために特性が劣化すると推測される。
【0011】
本発明者らは、シラン化合物を含むアニオン又はカチオン重合系(例えば、エポキシ樹脂のアニオン硬化系又はエポキシ樹脂のカチオン硬化系)の接着剤組成物において、保存安定性(ポットライフ特性)を改善するために鋭意検討を重ねた結果、エポキシ基含有化合物であるエポキシ樹脂、又は、オキセタン基含有化合物であるオキセタン樹脂を含有する接着剤組成物において、エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物と、を併用した場合、接着剤組成物の保存安定性が著しく向上することを見出した。
【0012】
すなわち、本開示の一側面は、アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と、上記エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物と、を含有する、接着剤組成物を提供する。
【0013】
本開示の一側面に係る接着剤組成物は、従来に比べて優れた保存安定性を有する。このような接着剤組成物は、保存中に接着剤組成物の接着性が経時的に低下することを抑制することができる。このような効果が得られる要因について、本発明者らは、下記のとおりと推測している。すなわち、エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物とが接着剤組成物中に存在することにより、保存中に第1のシラン化合物がアニオン又はカチオン硬化系の重合反応により重合して重合体中に取り込まれる場合であっても、第2のシラン化合物が重合体中の第1のシラン化合物と被着体とを架橋することで、接着剤組成物又はその硬化物と被着体との接着性を維持できると推測される。
【0014】
上記第1のシラン化合物の上記官能基は、エポキシ基、オキセタン基、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上記第2のシラン化合物は、アルキル基、フェニル基、アルコキシシリル基、水酸基、フッ素含有基、(メタ)アクリロイル基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
本開示の接着剤組成物は、導電粒子を更に含有していてもよい。
【0016】
本開示の接着剤組成物は、回路接続用(回路接続用接着剤組成物)であってもよい。
【0017】
本開示の別の側面は、上記本開示の一側面に係る接着剤組成物又はその硬化物を備える、構造体を提供する。
【0018】
本開示の別の側面は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、上記第一の回路部材及び上記第二の回路部材の間に配置された回路接続部材と、を備え、上記第一の回路電極及び上記第二の回路電極が電気的に接続されており、上記回路接続部材が上記本開示の一側面に係る接着剤組成物又はその硬化物を含む、構造体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、従来に比べて優れた保存安定性を有する接着剤組成物、及び、それを用いた構造体を提供することができる。
【0020】
本開示によれば、構造体又はその製造への接着剤組成物又はその硬化物の応用を提供することができる。本開示によれば、回路接続への接着剤組成物又はその硬化物の応用を提供することができる。本開示によれば、回路接続構造体又はその製造への接着剤組成物又はその硬化物の応用を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本開示の構造体の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について説明するが、本開示はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「常温」とは、25℃を意味する。
【0024】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0025】
<接着剤組成物>
本実施形態の接着剤組成物は、アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂(アニオン又はカチオン重合性物質)と、上記エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物と、を含有する。本実施形態の接着剤組成物は、シラン化合物として、エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基(アニオン又はカチオン硬化系の重合反応に関与する官能基。アニオン又はカチオン重合系においてエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応し得る官能基)を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物(上記第1のシラン化合物に該当する化合物を除く)とを含有する。本実施形態の接着剤組成物は、アニオン又はカチオン硬化系(アニオン重合系又はカチオン重合系)の接着剤組成物である。本実施形態の接着剤組成物は、回路接続用接着剤組成物として好適に用いることができる。以下、各成分について説明する。
【0026】
(シラン化合物)
本実施形態の接着剤組成物は、アニオン又はカチオン重合系においてエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有する第1のシラン化合物と、上記第1のシラン化合物と反応する第2のシラン化合物とを含有する。第2のシラン化合物は、第1のシラン化合物に該当しない化合物であり、アニオン又はカチオン重合系においてエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を有していない。シラン化合物は、シランカップリング剤であってもよい。例えば、第1及び第2のシラン化合物の両方がシランカップリング剤である場合、第2のシラン化合物は、アルコキシシリル基の加水分解・縮合反応により、第1のシラン化合物と反応することができる。
【0027】
エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基としては、例えば、エポキシ基、オキセタン基、アミノ基、酸無水物基、イソシアネート基、及びメルカプト基が挙げられる。エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基は、更に優れた保存安定性及び接着性を得る観点から、エポキシ基及びオキセタン基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
【0028】
第2のシラン化合物は、アニオン又はカチオン重合反応に関与しない(アニオン又はカチオン重合系においてエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応しない)官能基を有していてもよい。アニオン又はカチオン重合反応に関与しない官能基としては、アルキル基、フェニル基、アルコキシシリル基、水酸基、フッ素含有基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、ウレイド基等が挙げられる。第2のシラン化合物は、更に優れた保存安定性を得る観点から、アルキル基、フェニル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、アルコキシシリル基を有することがより好ましい。
【0029】
シラン化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物を用いることができる。式(I)で表される化合物は、例えば、オルガノクロロシランとアルコールとを反応させる等の方法で合成できる。
【0030】
【化1】
[式中、Xは、有機基を示し、R
1及びR
2は、それぞれ独立にアルキル基を示し、mは、0~2の整数を示し、sは、0以上の整数を示す。R
1が複数存在する場合、各R
1は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。R
2が複数存在する場合、各R
2は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。R
1、R
2及びC
sH
2sのそれぞれは、分岐していてもよい。]
【0031】
有機基Xとしては、エチレン性不飽和結合含有基(エチレン性不飽和結合を含む基)、窒素原子含有基(窒素原子を含む基)、硫黄原子含有基(硫黄原子を含む基)、エポキシ基、等が挙げられる。エチレン性不飽和結合含有基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基等が挙げられる。窒素原子含有基としては、アミノ基、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、イソシアネート基、イミダゾール基、ウレイド基、マレイミド基等が挙げられる。モノ置換アミノ基としては、アルキルアミノ基(メチルアミノ基等)、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロアルキルアミノ基(シクロヘキシルアミノ基等)などが挙げられる。ジ置換アミノ基としては、非環状ジ置換アミノ基、環状ジ置換アミノ基等が挙げられる。非環状ジ置換アミノ基としては、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基等)などが挙げられる。環状ジ置換アミノ基としては、モルホリノ基、ピペラジノ基等が挙げられる。硫黄原子含有基としては、メルカプト基等が挙げられる。エポキシ基は、グリシジル基、グリシドキシ基等のエポキシ基含有基(エポキシ基を含む基)において含まれていてもよい。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基において含まれていてもよい。
【0032】
第1のシラン化合物として上記一般式(I)で表される化合物を用いる場合、有機基Xとしては、上記の中からエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応する官能基を選択する。また、第2のシラン化合物として上記一般式(I)で表される化合物を用いる場合、有機基Xとしては、上記の中からエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂と反応しない(アニオン又はカチオン重合反応に関与しない)官能基を選択する。
【0033】
R1及びR2のアルキル基の炭素数は、例えば1~20である。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。R1及びR2としては、上記アルキル基の各構造異性体を用いることができる。R1のアルキル基の炭素数は、アルコキシシリル基部分が被着体と反応する際に立体障害となり難く、被着体との更に優れた接着性を得る観点から、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。R2のアルキル基の炭素数は、被着体との更に優れた接着性を得る観点から、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0034】
mは、0~2の整数である。mは、アルコキシシリル基部分が被着体と反応する際に立体障害となり難く、被着体との更に優れた接着性を得る観点から、0~1が好ましく、0がより好ましい。sは、0以上の整数である。sは、更に優れた保存安定性を得る観点から、1~20の整数が好ましく、1~10の整数がより好ましい。
【0035】
第1のシラン化合物としては、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリエトキシシラン等)、グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシラン(例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルメチルジエトキシシラン等)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-アミノオクチルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)オクチルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、8-メルカプトオクチルメチルジメトキシシラン、8-メルカプトオクチルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピルトリアルコキシシラン(例えば、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリエトキシ)シラン等)、イソシアネートアルキルトリアルコキシシラン(例えば、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリメトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリエトキシシラン等)、イソシアネートアルキルアルキルジアルコキシシランなどが挙げられる。第1のシラン化合物としては、更に優れた保存安定性及び接着性を得る観点から、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、及びグリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。第1のシラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
第2のシラン化合物としては、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、フルオロアルキルトリアルコキシシラン、フルオロアルキルアルキルジアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシラン、(メタ)アクリロキシトリアルキルアルコキシシラン、アルケニルトリアルコキシシラン、アルケニルアルキルジアルコキシシラン、スチリルトリアルコキシシラン、スチリルアルキルトリアルコキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、8-ウレイドオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
ジアルキルジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、ヘプチルメチルジメトキシシラン、ヘプチルメチルジエトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、ノニルメチルジメトキシシラン、ノニルメチルジエトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0039】
フェニルトリアルコキシシランとしては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
フルオロアルキルトリアルコキシシランとしては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
フルオロアルキルアルキルジアルコキシシランとしては、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランとしては、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリロキシアルキルアルキルジアルコキシシランとしては、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロキシオクチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
アルケニルトリアルコキシシランとしては、ビニルトリアルコキシシラン、オクテニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0045】
ビニルトリアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
オクテニルトリアルコキシシランとしては、7-オクテニルトリメトキシシラン、7-オクテニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0047】
アルケニルアルキルジアルコキシシランとしては、ビニルアルキルジアルコキシシラン、オクテニルアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0048】
ビニルアルキルジアルコキシシランとしては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0049】
オクテニルアルキルジアルコキシシランとしては、7-オクテニルメチルジメトキシシラン、7-オクテニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
スチリルトリアルコキシシランとしては、p-スチリルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0051】
スチリルアルキルトリアルコキシシランとしては、p-スチリルオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
第2のシラン化合物は、更に優れた保存安定性を得る観点から、アルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、及び(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、メチルトリメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。第2のシラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
式(I)で表される化合物以外の第2のシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。このような第2のシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。式(I)で表される化合物以外の第2のシラン化合物としては、更に優れた保存安定性を得る観点から、アルキルトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。式(I)で表される化合物以外の第2のシラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
シラン化合物(第1のシラン化合物、第2のシラン化合物及びその他のシラン化合物を含む)の含有量は、特に限定されないが、被着体(回路部材等)と接着剤組成物又はその硬化物(回路接続部材等)との界面の剥離気泡(接着剤組成物と被着体の界面で剥離が発生し、その結果として気泡に見える箇所)の発生を抑制しやすい観点から、接着剤組成物の接着剤成分(接着剤組成物中の導電粒子以外の固形分。以下同様)の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。シラン化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、2質量%以上であることが極めて好ましく、3質量%以上であることが非常に好ましい。シラン化合物の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。これらの観点から、シラン化合物の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.25~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましく、1~5質量%であることが特に好ましく、2~5質量%であることが極めて好ましく、3~5質量%であることが非常に好ましい。
【0055】
第1のシラン化合物の含有量は、被着体(回路部材等)と接着剤組成物又はその硬化物(回路接続部材等)との界面の剥離気泡の発生を抑制しやすい観点から、接着剤組成物の接着剤成分の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第1のシラン化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、1.5質量%以上であることが極めて好ましい。第1のシラン化合物の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、3質量%以下であることが極めて好ましい。これらの観点から、第1のシラン化合物の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.25~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましく、1~5質量%であることが特に好ましく、1.5~3質量%であることが極めて好ましい。
【0056】
第2のシラン化合物の含有量は、被着体(回路部材等)と接着剤組成物又はその硬化物(回路接続部材等)との界面の剥離気泡の発生を抑制しやすい観点から、接着剤組成物の接着剤成分の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第2のシラン化合物の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが特に好ましく、1.5質量%以上であることが極めて好ましい。第2のシラン化合物の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましく、3質量%以下であることが極めて好ましい。これらの観点から、第2のシラン化合物の含有量は、0.1~20質量%であることが好ましく、0.25~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましく、1~5質量%であることが特に好ましく、1.5~3質量%であることが極めて好ましい。
【0057】
第2のシラン化合物の含有量に対する第1のシラン化合物の含有量の比率(質量比。第2のシラン化合物の含有量1に対する相対値)は、更に優れた保存安定性及び接着性を得る観点から、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましく、0.5以上が特に好ましく、1以上が極めて好ましい。上記比率は、更に優れた保存安定性及び接着性を得る観点から、100以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下が特に好ましく、2以下が極めて好ましい。
【0058】
(アニオン又はカチオン重合性成分:アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂)
アニオン又はカチオン重合性成分であるアニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂等が挙げられる。また、アニオン又はカチオン重合性成分であるアニオン重合又はカチオン重合可能なオキセタン樹脂としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート等が挙げられる。アニオン又はカチオン重合性成分は、ハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。アニオン又はカチオン重合性成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
アニオン又はカチオン重合性成分の含有量は、被着体との接着性を更に向上させる観点から、接着剤組成物の接着剤成分の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。アニオン又はカチオン重合性成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましい。アニオン又はカチオン重合性成分の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、アニオン又はカチオン重合性成分の含有量は、5~90質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、15~70質量%が更に好ましい。
【0060】
(硬化剤)
本実施形態の接着剤組成物は、硬化剤を更に含んでいてもよい。硬化剤としては、アニオン重合又はカチオン重合可能なエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されない。硬化剤としては、熱又は光によりアニオン種を発生することができる硬化剤(アニオン重合性の触媒型硬化剤等)、熱又は光によりカチオン種を発生することができる硬化剤(カチオン重合性の触媒型硬化剤等)、重付加型の硬化剤などが挙げられる。硬化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、速硬化性に優れ、且つ、化学当量的な考慮が不要である観点から、熱又は光によりアニオン種又はカチオン種を発生することができる硬化剤が好ましく、アニオン重合性又はカチオン重合性の触媒型硬化剤がより好ましい。
【0061】
アニオン重合性の触媒型硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、ヒドラジド系硬化剤、三フッ化ホウ素-アミン錯体、アミンイミド、第3級アミン類、ジアミノマレオニトリル、メラミン及びその誘導体、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらの変性物も使用することができる。カチオン重合性の触媒型硬化剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられ、これらの変性物も使用することができる。重付加型の硬化剤としては、ポリアミン類、ポリメルカプタン類、ポリフェノール類、酸無水物等が挙げられる。
【0062】
アニオン重合性の触媒型硬化剤として第3級アミン類、イミダゾール系硬化剤等を用いる場合、エポキシ樹脂又はオキセタン樹脂を160~200℃程度の中温で数10秒~数時間程度の加熱により硬化させることができる。そのため、可使時間(ポットライフ)を比較的長くすることができる。
【0063】
カチオン重合性の触媒型硬化剤としては、例えば、エネルギー線照射によりエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂を硬化させることができる感光性オニウム塩(芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩等)が好ましい。また、エネルギー線照射以外に熱によって活性化しエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂を硬化させるものとして、脂肪族スルホニウム塩等が挙げられる。このような硬化剤は、速硬化性を有することから好ましい。
【0064】
硬化剤を、高分子物質(ポリウレタン系、ポリエステル系等)、金属(ニッケル、銅等)の薄膜、無機物(ケイ酸カルシウム等)などで被覆してマイクロカプセル化した硬化剤は、可使時間が延長できるため好ましい。
【0065】
硬化剤の含有量は、被着体との接着性を更に向上させる観点から、アニオン又はカチオン重合性成分100質量部に対して下記の範囲が好ましい。硬化剤の含有量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましい。硬化剤の含有量は、500質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、硬化剤の含有量は、10~500質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましく、30~70質量部が更に好ましい。
【0066】
(フィルム形成材)
本実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、フィルム形成材を含有してもよい。フィルム形成材は、液状の接着剤組成物をフィルム状に固形化した場合に、通常の状態(常温常圧)でのフィルムの取扱い性を向上させ、裂け難い、割れ難い、べたつき難い等の特性をフィルムに付与することができる。フィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール、ポリスチレン、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、キシレン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、接着性、相溶性、耐熱性及び機械的強度に優れる観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。フィルム形成材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
フェノキシ樹脂としては、例えば、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類とを重付加させることにより得られる樹脂、及び、2官能フェノール類とエピハロヒドリンとを高分子化するまで反応させることにより得られる樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂は、例えば、2官能フェノール類1モルと、エピハロヒドリン0.985~1.015モルとをアルカリ金属水酸化物等の触媒の存在下、非反応性溶剤中で40~120℃の温度で反応させることにより得ることができる。フェノキシ樹脂としては、樹脂の機械的特性及び熱的特性に優れる観点から、特に、2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類との配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9~1/1.1とし、アルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下、沸点が120℃以上の有機溶剤(アミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等)中で、反応固形分が50質量%以下の条件で50~200℃に加熱して重付加反応させて得た樹脂が好ましい。フェノキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。2官能フェノール類は、2個のフェノール性水酸基を有する化合物である。2官能フェノール類としては、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類などが挙げられる。フェノキシ樹脂は、ラジカル重合性の官能基、又は、その他の反応性化合物により変性(例えば、エポキシ変性)されていてもよい。
【0069】
フィルム形成材の含有量は、接着剤組成物の接着剤成分全量を基準として、10~90質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることが更に好ましい。
【0070】
(導電粒子)
本実施形態の接着剤組成物は、導電粒子を更に含有していてもよい。導電粒子の構成材料としては、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、はんだ等の金属、カーボンなどが挙げられる。また、非導電性の樹脂、ガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属(金属粒子等)又はカーボンを被覆した被覆導電粒子でもよい。被覆導電粒子又は熱溶融金属粒子は、加熱加圧により変形性を有するため、接続時に回路電極の高さのばらつきを解消し、接続時に電極との接触面積が増加することから信頼性が向上するため好ましい。
【0071】
導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1~50μmであることが好ましく、2~30μmであることがより好ましく、3~20μmであることが更に好ましい。導電粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折法等の機器分析を用いて測定することができる。
【0072】
導電粒子の含有量は、導電性に優れる観点から、接着剤組成物の接着剤成分の全体積100体積部に対して、0.1体積部以上が好ましく、1体積部以上がより好ましい。導電粒子の含有量は、電極(回路電極等)の短絡を抑制しやすい観点から、接着剤組成物の接着剤成分の全体積を基準として、50体積部以下が好ましく、20体積部以下がより好ましく、10体積部以下が更に好ましく、5体積部以下が特に好ましく、3体積部以下が極めて好ましい。これらの観点から、導電粒子の含有量は、0.1~50体積部が好ましく、0.1~20体積部がより好ましく、1~20体積部が更に好ましく、1~10体積部が特に好ましく、1~5体積部が極めて好ましく、1~3体積部が非常に好ましい。なお、「体積部」は、23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して質量から体積に換算することができる。また、対象成分を溶解したり膨潤させたりせず且つ対象成分をよくぬらす適当な溶剤(水、アルコール等)をメスシリンダー等に入れた容器に対象成分を投入し増加した体積を対象成分の体積として求めることもできる。
【0073】
(その他の成分)
本実施形態の接着剤組成物は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びアクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー成分を重合させて得られる単独重合体又は共重合体を更に含有していてもよい。本実施形態の接着剤組成物は、応力緩和に優れる観点から、グリシジルエーテル基を有するグリシジル(メタ)アクリレートを重合させて得られる共重合体であるアクリルゴム等を含有することが好ましい。上記アクリルゴムの重量平均分子量は、接着剤組成物の凝集力を高める観点から、20万以上が好ましい。アクリルゴムの含有量は、接着剤組成物の接着剤成分全量を基準として、1~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが更に好ましい。
【0074】
本実施形態の接着剤組成物は、上記導電粒子の表面を高分子樹脂等で被覆した被覆微粒子を含有してもよい。このような被覆微粒子を上記導電粒子と併用した場合、導電粒子の含有量が増加した場合であっても、導電粒子同士の接触による短絡を抑制しやすいことから、隣接した回路電極間の絶縁性を向上させることができる。導電粒子を用いることなく上記被覆微粒子を単独で用いてもよく、被覆微粒子と導電粒子とを併用してもよい。なお、接着剤組成物が被覆微粒子を含む場合、本明細書における「接着剤組成物の接着剤成分」は、接着剤組成物中の導電粒子及び被覆微粒子以外の固形分を意味する。
【0075】
本実施形態の接着剤組成物は、ゴム微粒子、充填剤(シリカ粒子等)、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等を含有することもできる。また、本実施形態の接着剤組成物は、増粘剤、レベリング剤、耐候性向上剤等の添加剤を適宜含有してもよい。
【0076】
ゴム微粒子は、導電粒子の平均粒径の2倍以下の平均粒径を有し、且つ、常温での貯蔵弾性率が、導電粒子及び接着剤組成物の常温での貯蔵弾性率の1/2以下である粒子が好ましい。特に、ゴム微粒子の材質がシリコーン、アクリルエマルジョン、SBR(Styrene-Butadiene Rubber)、NBR(Nitril-Butadiene Rubber)又はポリブタジエンゴムである場合、ゴム微粒子は、単独で又は2種以上を混合して用いることが好適である。3次元架橋したゴム微粒子は、耐溶剤性に優れており、接着剤組成物中に容易に分散される。
【0077】
充填剤は、回路電極間の電気特性(接続信頼性等)を向上させることができる。充填剤としては、例えば、導電粒子の平均粒径の1/2以下の平均粒径を有する粒子を好適に使用できる。導電性を有さない粒子を充填剤と併用する場合、導電性を有さない粒子の平均粒径以下の粒子を充填剤として使用できる。充填剤の含有量は、接着剤組成物の接着剤成分全量を基準として、0.1~60質量%であることが好ましい。上記含有量が60質量%以下であることにより、接続信頼性の向上効果を更に充分に得られる傾向がある。上記含有量が0.1質量%以上であることにより、充填剤の添加効果を充分に得られる傾向がある。
【0078】
本実施形態の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。接着剤組成物が常温で固体状である場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物中の成分に対して反応性がなく、且つ、充分な溶解性を示す溶剤であれば、特に制限はない。溶剤は、常圧での沸点が50~150℃である溶剤が好ましい。沸点が50℃以上であると、常温での溶剤の揮発性に乏しいため、開放系でも使用できる。沸点が150℃以下であると、溶剤を揮発させることが容易であるため、接着後に良好な信頼性が得られる。
【0079】
本実施形態の接着剤組成物は、フィルム状であってもよい。必要に応じて溶剤等を含有する接着剤組成物を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、剥離性基材(離型紙等)上に塗布した後、溶剤等を除去することによりフィルム状の接着剤組成物を得ることができる。また、不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置した後、溶剤等を除去することによりフィルム状の接着剤組成物を得ることができる。接着剤組成物をフィルム状で使用すると、取扱性等に優れる。
【0080】
本実施形態の接着剤組成物は、加熱又は光照射と共に加圧することにより接着させることができる。加熱及び光照射を併用することにより、更に低温短時間で接着できる。光照射は、150~750nmの波長域の光を照射することが好ましい。光源は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯(超高圧水銀灯等)、キセノンランプ、メタルハライドランプなどを使用することができる。照射量は、0.1~10J/cm2であってよい。加熱温度は、特に制限はないが、50~170℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限はないが、0.1~10MPaが好ましい。加熱及び加圧は、0.5秒~3時間の範囲で行うことが好ましい。
【0081】
本実施形態の接着剤組成物は、同一種の被着体の接着剤として使用してもよく、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用してもよい。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料;CSP(Chip Size Package)用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOC(Lead on Chip)テープ等に代表される半導体素子接着材料などとして使用することができる。
【0082】
<構造体及びその製造方法>
本実施形態の構造体は、本実施形態の接着剤組成物又はその硬化物を備える。本実施形態の構造体は、例えば、回路接続構造体等の半導体装置である。本実施形態の構造体の一態様として、回路接続構造体は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材と、第一の回路部材及び第二の回路部材の間に配置された回路接続部材と、を備える。第一の回路部材は、例えば、第一の基板と、当該第一の基板上に配置された第一の回路電極と、を有する。第二の回路部材は、例えば、第二の基板と、当該第二の基板上に配置された第二の回路電極と、を有する。第一の回路電極及び第二の回路電極は、相対向すると共に電気的に接続されている。回路接続部材は、本実施形態の接着剤組成物又はその硬化物を含んでいる。本実施形態に係る構造体は、本実施形態に係る接着剤組成物又はその硬化物を備えていればよく、上記回路接続構造体の回路部材に代えて、回路電極を有していない部材(基板等)を用いてもよい。
【0083】
本実施形態の構造体の製造方法は、本実施形態の接着剤組成物を硬化させる工程を備える。本実施形態の構造体の製造方法の一態様として、回路接続構造体の製造方法は、第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の回路電極を有する第二の回路部材との間に、本実施形態の接着剤組成物を配置する配置工程と、第一の回路部材と第二の回路部材とを加圧して第一の回路電極と第二の回路電極とを電気的に接続させると共に、接着剤組成物を加熱して硬化させる加熱加圧工程と、を備える。配置工程において、第一の回路電極と第二の回路電極とが相対向するように配置することができる。加熱加圧工程において、第一の回路部材と第二の回路部材とを相対向する方向に加圧することができる。
【0084】
以下、図面を用いて、本実施形態の一態様として、回路接続構造体及びその製造方法について説明する。
図1は、構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示す回路接続構造体100aは、相対向する回路部材(第一の回路部材)20及び回路部材(第二の回路部材)30を備えており、回路部材20と回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が配置されている。回路接続部材10は、本実施形態の接着剤組成物の硬化物を含む。
【0085】
回路部材20は、基板(第一の基板)21と、基板21の主面21a上に配置された回路電極(第一の回路電極)22とを備えている。基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が配置されていてもよい。
【0086】
回路部材30は、基板(第二の基板)31と、基板31の主面31a上に配置された回路電極(第二の回路電極)32とを備えている。基板31の主面31a上には、場合により絶縁層(図示せず)が配置されていてもよい。
【0087】
回路接続部材10は、絶縁性物質(導電粒子を除く成分の硬化物)10a及び導電粒子10bを含有している。導電粒子10bは、少なくとも、相対向する回路電極22と回路電極32との間に配置されている。回路接続構造体100aにおいては、回路電極22及び回路電極32が導電粒子10bを介して電気的に接続されている。
【0088】
回路部材20及び30は、単数又は複数の回路電極(接続端子)を有している。回路部材20及び30としては、例えば、電気的接続を必要とする電極を有する部材を用いることができる。回路部材としては、半導体チップ(ICチップ)、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品;プリント基板、半導体搭載用基板等の基板などを用いることができる。回路部材20及び30の組み合わせとしては、例えば、半導体チップ及び半導体搭載用基板が挙げられる。基板の材質としては、例えば、半導体、ガラス、セラミック等の無機物;ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、(メタ)アクリル樹脂、環状オレフィン樹脂等の有機物;ガラスとエポキシ等との複合物などが挙げられる。基板は、プラスチック基板であってもよい。
【0089】
図2は、構造体の他の実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す回路接続構造体100bは、回路接続部材10が導電粒子10bを含有していないこと以外は、回路接続構造体100aと同様の構成を有している。
図2に示す回路接続構造体100bでは、回路電極22と回路電極32とが導電粒子を介することなく直接接触して電気的に接続されている。
【0090】
回路接続構造体100a及び100bは、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、接着剤組成物がペースト状である場合、接着剤組成物を塗布及び乾燥することにより、接着剤組成物を含む樹脂層を回路部材20上に配置する。接着剤組成物がフィルム状である場合、フィルム状の接着剤組成物を回路部材20に貼り付けることにより、接着剤組成物を含む樹脂層を回路部材20上に配置する。続いて、回路電極22と回路電極32とが対向配置されるように、回路部材20上に配置された樹脂層の上に回路部材30を載せる。そして、接着剤組成物を含む樹脂層に加熱処理又は光照射を行うことにより、接着剤組成物が硬化して硬化物(回路接続部材10)が得られる。以上により、回路接続構造体100a及び100bが得られる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本開示についてより具体的に説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0092】
[実施例1~14及び比較例1~11]
(導電粒子の作製)
ポリスチレン粒子の表面に厚さ0.2μmのニッケル層を形成した。更に、このニッケル層の外側に厚さ0.04μmの金層を形成させた。これにより、平均粒径4μmの導電粒子を作製した。
【0093】
(フィルム状接着剤の作製)
表1及び表2に示す成分を、表1及び表2に示す質量比(固形分)で混合して混合物を得た。この混合物に上記導電粒子を1.5体積部の割合(基準:接着剤組成物の接着剤成分の全体積100体積部に対する割合)で分散させて、フィルム状接着剤を形成するための塗工液を得た。この塗工液を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、塗工装置を用いて塗布した。塗膜を70℃で10分熱風乾燥して、厚さ18μmの実施例1~14及び比較例1~11のフィルム状接着剤を形成させた。
【0094】
なお、表1及び表2に示す各成分の詳細は以下の通りである。
フェノキシ樹脂:PKHC(ユニオンカーバイド株式会社製、商品名、重量平均分子量45000)40gをメチルエチルケトン60gに溶解して調製した固形分40質量%の溶液の形態で用いた。
アクリルゴム:ゴム成分としてアクリルゴム(ブチルアクリレート40質量部-エチルアクリレート30質量部-アクリロニトリル30質量部-グリシジルメタクリレート3質量部の共重合体、重量平均分子量80万)を用意し、このアクリルゴムをトルエン/酢酸エチル=50/50(質量比)の混合溶剤に溶解して調製した固形分15質量%の溶液の形態で用いた。
硬化剤含有エポキシ樹脂:マイクロカプセル型潜在性硬化剤(マイクロカプセル化されたアミン系硬化剤)と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と、ナフタレン型エポキシ樹脂とを、質量比34:49:17で含有する液状の硬化剤含有エポキシ樹脂(エポキシ当量:202)を用いた。
【0095】
<第1のシラン化合物>
シラン化合物A1:3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM-402、信越化学工業株式会社製)を用いた。
シラン化合物A2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業株式会社製)を用いた。
シラン化合物A3:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(商品名:KBE-402、信越化学工業株式会社製)を用いた。
シラン化合物A4:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE-403、信越化学工業株式会社製)を用いた。
【0096】
<第2のシラン化合物>
シラン化合物B1:メチルトリメトキシシラン(商品名:KBM-13、信越化学工業株式会社製)を用いた。
シラン化合物B2:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-503、信越化学工業株式会社製)を用いた。
シラン化合物B3:テトラエトキシシラン(商品名:KBE-04、信越化学工業株式会社製)を用いた。
【0097】
(接続体の作製)
実施例1~14及び比較例1~11のフィルム状接着剤を用いて、ライン幅75μm、ピッチ150μm(スペース75μm)及び厚さ18μmの銅回路を2200本有するフレキシブル回路基板(FPC)と、ガラス基板、及び、ガラス基板上に形成された厚さ0.2μmの窒化珪素(SiNx)の薄層を有するSiNx基板(厚さ0.7mm)とを接続した。接続は、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用い、200℃、5MPaで15秒間の加熱及び加圧により行った。これにより、幅1.5mmにわたりFPCとSiNx基板とがフィルム状接着剤の硬化物により接続された接続体を作製した。加圧の圧力は、圧着面積を0.495cm2として計算した。
【0098】
(剥離評価)
上記接続体を85℃、85%RHの恒温恒湿槽中に250時間放置した後(高温高湿試験後)の接続外観を、光学顕微鏡を用いて観察した。スペース部分におけるSiNx基板と硬化物との界面において剥離が発生している面積(剥離面積)を測定し、剥離の有無を評価した。スペース全体に占める剥離面積の割合が30%を超える場合を「B」(剥離有り)と評価し、剥離面積の割合が30%以下の場合を「A」(剥離なし)と評価した。この評価結果を、未処理フィルムの剥離評価結果として表1及び表2に示す。
【0099】
(保存安定性(ポットライフ特性)の評価)
上記フィルム状接着剤を40℃の恒温槽にて3日処理した。このフィルム状接着剤を用いて、上記と同様の方法で接続体を作製した後、上記と同様の方法で高温高湿試験を行い、剥離評価を行った。この評価結果を、40℃3日処理フィルムの剥離評価結果として表1及び表2に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
表1及び表2より、実施例のフィルム状接着剤は、比較例のフィルム状接着剤と比較して、40℃の恒温槽にて3日処理した後のフィルム状接着剤を用いて接続体を作製して高温高湿処理した場合でも、基板(無機物基板)表面への密着力を良好に保つことが可能であり、保存安定性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0103】
10…回路接続部材、10a…絶縁性物質、10b…導電粒子、20…第一の回路部材、21…第一の基板、21a…主面、22…第一の回路電極、30…第二の回路部材、31…第二の基板、31a…主面、32…第二の回路電極、100a,100b…回路接続構造体。