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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20221109BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221109BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221109BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20221109BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20221109BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L9/02
C08L27/12
C08L33/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019543511
(86)(22)【出願日】2018-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2018031988
(87)【国際公開番号】W WO2019058911
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2017182849
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】上野 真寛
(72)【発明者】
【氏名】武山 慶久
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-108476(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136275(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208203(WO,A1)
【文献】特開2013-204009(JP,A)
【文献】特開2014-80550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、フィラーと、を含有する、ゴム組成物であって、
該フィラーが、該ゴム組成物中に分散された状態において、主に、複数個の一次粒子が凝集した凝集体として存在し、
該凝集体の平均最長径が100nm以上1000nm以下であり、
前記フィラーがシリカを含む、ことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記繊維状炭素ナノ構造体を、前記ゴム100体積部に対して、0.1体積部以上10体積部以下含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記フィラーを、前記ゴム100体積部に対して、1体積部以上100体積部以下含む、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記繊維状炭素ナノ構造体が、単層カーボンナノチューブを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記t-プロットの屈曲点が、0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にある、請求項5に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記t-プロットから得られる全比表面積S1および内部比表面積S2が、0.05≦S2/S1≦0.30を満たす、請求項5又は6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴムが、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物に関し、特には、ゴムと繊維状炭素ナノ構造体とフィラーとを含むゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性や熱伝導性などに優れる材料として、ゴム等の高分子材料にカーボン材料を配合してなる複合材料が使用されている。そして、近年では、導電性や熱伝導性の向上効果が高いカーボン材料として、繊維状炭素材料、特にはカーボンナノチューブ(以下「CNT」と称することがある。)等の繊維状炭素ナノ構造体が注目されている。
【0003】
また、ゴム等の高分子材料の組成物には、従来から、補強、機能性付与、コスト低減等の目的で、粒子状や粉体状のフィラーが配合されている。例えば、特許文献1では、カーボンナノチューブとハイストラクチャーカーボンブラックとを含むフッ素ゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-108476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体とフィラーとを含むゴム組成物において、該ゴム組成物中でのフィラーの分散状態によっては、引張強度や引張伸び等の特性が必ずしも十分でない場合があった。
【0006】
そこで、本発明では、繊維状炭素ナノ構造体とフィラーとを含み、引張強度および引張伸びに優れるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ゴム組成物中に分散して存在するフィラー凝集体の平均最長径を特定の範囲内に制御することによって、引張強度および引張伸びに優れるゴム組成物が得られることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記課題を有利に解決するものであり、本発明のゴム組成物は、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、フィラーと、を含有し、該フィラーが、該ゴム組成物中に分散された状態において、主に、複数個の一次粒子が凝集した凝集体として存在し、該凝集体の平均最長径が100nm以上1000nm以下である、ことを特徴とする。繊維状炭素ナノ構造体と、フィラーとを含有するゴム組成物において、フィラーを主に凝集体として分散させ、該凝集体の平均最長径を100nm以上1000nm以下とすることにより、引張強度および引張伸びに優れたゴム組成物を提供することができる。
なお、本発明において、フィラーの「凝集体の平均最長径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、任意に選択した10個以上のフィラー凝集体について各々の最長径を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
【0009】
本発明のゴム組成物は、前記繊維状炭素ナノ構造体を、前記ゴム100体積部に対して、0.1体積部以上10体積部以下含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記範囲内であれば、導電性等の物性に優れたゴム組成物を形成することができる。
【0010】
本発明のゴム組成物は、前記フィラーを、前記ゴム100体積部に対して、1体積部以上100体積部以下含むことが好ましい。フィラーの含有量が上記範囲内であれば、ゴム組成物における補強効果を十分に発揮することができる。
【0011】
本発明のゴム組成物では、前記繊維状炭素ナノ構造体が、単層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体が、単層カーボンナノチューブを含むことにより、少ない配合量でゴム組成物の物性を向上させることができる。
【0012】
本発明のゴム組成物では、前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。t-プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を更に向上させることができる。
【0013】
そして、前記t-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にあることが好ましい。t-プロットの屈曲点が0.2≦t(nm)≦1.5の範囲にある繊維状炭素ナノ構造体を使用することにより、繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を一層向上させることができる。
【0014】
また、前記t-プロットから得られる全比表面積S1および内部比表面積S2は、0.05≦S2/S1≦0.30を満たすことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のS2/S1の値がかかる範囲内であれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を一層向上させることができる。
【0015】
本発明のゴム組成物では、前記フィラーが、カーボンブラックおよびシリカからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。カーボンブラックおよびシリカからなる群より選択される少なくとも一種を含むフィラーを使用することにより、引張強度および引張伸びを更に向上させることができる。
【0016】
本発明のゴム組成物では、前記ゴムが、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。ゴムがフッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を含むことにより、ゴム組成物を良好に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、繊維状炭素ナノ構造体とフィラーとを含み、引張強度および引張伸びに優れたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、フィラーと、を含有するゴム組成物である。そして、本発明のゴム組成物は、該フィラーが、該ゴム組成物中に分散された状態において、主に、複数個の一次粒子が凝集した凝集体として存在し、該凝集体の平均最長径が100nm以上1000nm以下である、ことを特徴とする。
【0019】
<ゴム>
ゴムとしては、特に限定されることなく、複合材料としてのゴム組成物に使用し得る既知のゴムを用いることができる。
【0020】
中でも、ゴムとしては、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、フッ素ゴム、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムおよびアクリルゴムからなる群より選択される少なくとも一種のゴムを使用すれば、複合材料としてのゴム組成物を良好に形成することができる。
【0021】
<繊維状炭素ナノ構造体>
繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
そして、上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、少ない配合量であってもゴム組成物の物性を向上させることができる。
【0023】
ここで、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。カーボンナノチューブの層数が少ないほど、配合量が少量であってもゴム組成物の物性を向上させることができる。
【0024】
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が1nm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散したゴム組成物を得ることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径が60nm以下であれば、少ない配合量であってもゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0025】
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.40超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、製造されるゴム組成物の性能を更に向上させることができる。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
【0026】
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
【0027】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、平均長さが、10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましく、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。平均長さが上記下限値以上であれば、少ない配合量であってもゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。そして、平均長さが上記上限値以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散したゴム組成物を得ることができる。
【0028】
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、通常、アスペクト比が10超である。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
【0029】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、BET比表面積が、200m/g以上であることが好ましく、400m/g以上であることがより好ましく、600m/g以上であることがさらに好ましく、2000m/g以下であることが好ましく、1800m/g以下であることがより好ましく、1600m/g以下であることがさらに好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が200m/g以上であれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を十分に高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2000m/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散したゴム組成物を得ることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0030】
また、繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。なお、「t-プロット」は、窒素ガス吸着法により測定された繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットが得られる(de Boerらによるt-プロット法)。
【0031】
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
【0032】
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
【0033】
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のt-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を高めることができる。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
【0034】
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のS2/S1の値がかかる範囲内であれば、少ない配合量でゴム組成物の物性を向上させることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0035】
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t-プロットの作成、および、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
【0036】
更に、繊維状炭素ナノ構造体として好適なCNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
【0037】
また、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が0.5以上5.0以下であることが好ましい。G/D比が0.5以上5.0以下であれば、ゴム組成物の物性を更に向上させることができる。
【0038】
なお、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物およびキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
そして、スーパーグロース法により製造された繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTに加え、例えば、非円筒形状の炭素ナノ構造体等の他の炭素ナノ構造体を含んでいてもよい。
【0039】
なお、スーパーグロース法により製造した単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、単層CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
【0040】
そして、本発明のゴム組成物に含まれる繊維状炭素ナノ構造体の量は、ゴム100体積部当たり、0.1体積部以上であることが好ましく、0.5体積部以上であることがより好ましく、1体積部以上であることが更に好ましく、1.4体積部以上であることが更に好ましく、10体積部以下であることが好ましく、8.5体積部以下であることがより好ましく、7体積部以下であることが更に好ましく、5.3体積部以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の量が上記下限値以上であれば、ゴム組成物および成形体の導電性を高め、成形体の表面抵抗率を十分に低下させることができると共に、成形体の機械的強度を十分に確保することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の量が上記上限値以下であれば、成形体の導電性にムラが生じるのを抑制することができる。従って、繊維状炭素ナノ構造体の量を上記範囲内とすれば、成形体の機械的強度を十分に確保しつつ、成形体に十分な帯電防止能を発揮させることができる。
【0041】
<フィラー>
フィラーとしては、特に限定されることなく、ゴム組成物に使用し得る既知のフィラーを用いることができる。
【0042】
中でも、フィラーとしては、カーボンブラックおよびシリカからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0043】
フィラーとして用いることができるカーボンブラックとしては、特に限定されず、ゴム組成物に使用し得る既知のカーボンブラックを用いることができる。
具体的には、SAF、ISAF、CF、SCF、EPC、MPC、HAF、FF、FEF、HMF、GPF、APF、SRF、MPF、FT、MT等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
フィラーとして用いることができるシリカとしては、特に限定されず、ゴム組成物に使用し得る既知の種類のものを用いることができる。
具体的には、コロイダルシリカ、湿式シリカ、無定形シリカ、ヒュームドシリカ、シリカゾル、シリカゲルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、シリカの表面が、親水性、疎水性などの機能性官能基で修飾されていてもよい。
【0045】
フィラーは、通常、1~数mm程度の粒子径を有する粉体や造粒体として製造販売されている。これら粉体や造粒体の粒子は、ナノメートルオーダーの一次平均粒径を有する一次粒子が多数集合した凝集体が更に集合して形成された凝集塊である。これら凝集塊は、ゴム組成物に添加されて分散処理されることにより、細かく粉砕されて、主として、複数個の一次粒子が凝集した凝集体としてゴム組成物中に分散する。
【0046】
本発明のゴム組成物においては、フィラーが、該ゴム組成物中に分散された状態において、主に、複数個の一次粒子が凝集した凝集体として存在し、当該凝集体の平均最長径が100nm以上1000nm以下である。前記凝集体の平均最長径は、120nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、180nm以上であることが更に好ましく、220nm以上であることが更に好ましく、800nm以下であることが好ましく、700nm以下であることがより好ましく、650nm以下であることが更に好ましい。凝集体の平均最長径が上記下限値以上であれば、ゴム組成物および成形体の引張強度および引張伸びを十分に確保することができる。また凝集体の平均最長径が上記上限値以下であれば、ゴム組成物中において良好に分散することができ、ゴム組成物および成形体の引張強度および引張伸びを十分に向上させることができる。
【0047】
なお、本発明において、フィラーの「凝集体の平均最長径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、例えば、任意に選択した10個以上のフィラー凝集体について各々の最長径を測定し、個数平均値を算出することで求めることができる。
なお、本発明のゴム組成物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した場合、フィラーの粒子(凝集体、一次粒子など)のみを観察することができ、繊維状炭素ナノ構造体や他の添加剤などは観察されない。よって、フィラーの粒子のみを明確に識別し観察することができる。
【0048】
ここで「主に凝集体として存在する」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)画像上で、ゴム組成物中の任意に選択された100個以上のフィラー粒子のうち、一次粒子の割合が20%未満であることを意味する。ゴム組成物のフィラー粒子のうち、一次粒子の割合は、好ましくは10%未満であり、より好ましくは5%未満である。一次粒子の割合が20%未満であれば、ゴム組成物および成形体の引張強度を十分に確保することができる。
【0049】
フィラーの一次粒子径としては、特に限定されないが、10nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることが更に好ましく、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。一次粒子径がこの範囲内であれば、ゴム組成物中においてフィラーが平均最長径100nm以上1000nm以下の凝集体として良好に分散することができる。
なお、本明細書中において、「一次粒子径」は、透過型電子顕微鏡で測定した一次粒子の平均粒径を指す。
本発明のゴム組成物に含まれるフィラーの量としては、特に限定されないが、ゴム100体積部に対して、1体積部以上であることが好ましく、5体積部以上であることがより好ましく、8体積部以上であることが更に好ましく、100体積部以下であることが好ましく、90体積部以下であることがより好ましく、80体積部以下であることが更に好ましい。フィラーの量が上記範囲内であれば、ゴム組成物及び成形体における補強効果を十分に発揮することができ、引張強度および引張伸びを向上させることができる。
【0050】
<添加剤>
ゴム組成物に任意に配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、架橋剤、架橋助剤、共架橋剤、滑剤、老化防止剤、カップリング剤などの既知の添加剤を用いることができる。
【0051】
具体的には、架橋剤としては、特に限定されることなく、ゴム組成物に含まれているゴムを架橋可能な既知の架橋剤を用いることができる。より具体的には、架橋剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、パーオキサイド系架橋剤、ポリオール系架橋剤、ポリアミン系架橋剤などを用いることができる。
また、架橋助剤としては、特に限定されることなく、例えば亜鉛華などを用いることができる。
また、共架橋剤としては、特に限定されることなく、例えばトリアリルイソシアヌレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどを用いることができる。
滑剤としては、特に限定されることなく、ステアリン酸などを用いることができる
【0052】
老化防止剤としては、特に限定されることなく、例えば、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩、ジ-t-ブチル-P-クレゾール、ペンタエリスリチル-テトラキシ[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’メチレンビス(2-メチル-6-t-ブチルフェニル)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペラジル)セバケート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペラジル)セバケート等が挙げられる。
【0053】
カップリング剤としては、特に限定されることなく、例えば、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス-(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
これらの添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、添加剤の配合量は、所望の効果の発現が阻害されない限り、任意の量とすることができる。
【0055】
(ゴム組成物の製造方法)
なお、ゴム組成物は、例えば、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体と、フィラーと、任意成分である添加剤とを、所望の配合比で混合または混練することにより製造することができる。
これらの混合または混練の方法や順序は、特に限定されないが、繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させる観点から、ゴムと、繊維状炭素ナノ構造体との混合物を得た後、得られた混合物とフィラーや添加剤とを混練することが好ましい。
【0056】
<混合・分散工程>
ゴムと繊維状炭素ナノ構造体との混合物の調製は、ゴム中に繊維状炭素ナノ構造体を分散させることが可能な任意の混合方法を用いて行うことができる。
例えば、有機溶媒などの分散媒にゴムを溶解または分散させてなるゴム分散液に対し、繊維状炭素ナノ構造体を添加し、既知の分散処理を行って、分散処理液を得ることができる。あるいは、繊維状炭素ナノ構造体を、ゴムを溶解または分散することができる有機溶媒または分散媒に添加して分散処理を行い、得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液にゴムを添加して、溶解または分散させて分散処理液を得ることもできる。
このようにして得られた分散処理液から、既知の方法により有機溶媒または分散媒を除去することより、ゴムと繊維状炭素ナノ構造体との混合物を調製することができる。
【0057】
当該分散処理は、既知の分散処理方法を用いて行うことができる。そのような分散処理方法としては、特に限定されず、例えば、超音波ホモジナイザーや湿式ジェットミルや高速回転せん断分散機などが挙げられるが、湿式ジェットミルが好ましい。適度に強いせん断力を印加することにより、繊維状炭素ナノ構造体を十分に分散させることができ、材質均一性が向上したゴム組成物および成形体を形成することができるからである。湿式ジェットミルによる混合液の分散処理にあたり印加する圧力は、10~180MPaであればよく、15~170MPaであることが好ましく、20~160MPaであることがより好ましく、20~150MPaであることが更に好ましい。処理回数(パス回数)は1回以上であり、2~20回が好ましい。分散処理の温度は、0~80℃が好ましい。分散処理において使用可能な湿式ジェットミルとしては、「ナノヴェイタ(登録商標)」(吉田機械興業株式会社製)、「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)、超高圧湿式微粒化装置(吉田工業株式会社製)、「ナノマイザー(登録商標)」(ナノマイザー株式会社製)、および「スターバースト(登録商標)」(株式会社スギノマシン製)等が挙げられる。なお、湿式ジェットミルの最小流路径は、目詰まり抑制の観点から、好ましくは100μm以上であり、効果的に加圧分散する観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。
【0058】
ゴムと繊維状炭素ナノ構造体との混合物は、得られた分散処理液から有機溶媒などの分散媒を除去することにより、調製することができる。なお、有機溶媒などの分散媒の除去には、例えば、凝固法、キャスト法または乾燥法を用いることができる。中でも、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を確保しつつ分散媒を効率的に除去する観点からは、分散処理液を直接乾燥することが好ましい。
ここで、乾燥方法としては、スプレードライ方式による乾燥、真空乾燥、不活性ガスの流通による乾燥などの既知の乾燥方法を使用することができる。
【0059】
<混練工程>
上述のようにして得られたゴムと繊維状炭素ナノ構造体とを含有する混合物に、フィラーや任意の添加剤などを更に配合して混練することによって、本発明のゴム組成物を得ることができる。当該混合物とフィラーや添加剤との混練は、例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー(登録商標)、押出機など、いずれか既知の混練装置を用いて行うことができる。
混練工程で用いる混練条件としては、特に限定されず、ゴム組成物の混練で通常用いられる混練条件を適宜用いることができる。
そして、混練条件を、ゴムと繊維状炭素ナノ構造体とを含有する混合物の粘度、フィラーや任意の添加剤の物性、配合量などに応じて調整することにより、フィラーを、主に、平均最長径100nm以上1000nm以下の凝集体として存在するようにゴム組成物中に分散させることができる。
【実施例
【0060】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、フィラー凝集体の平均最長径、ならびに引張強度および引張伸びは、それぞれ以下の方法を使用して測定または評価した。
【0061】
<フィラー凝集体の平均最長径>
実施例および比較例で得られた架橋ゴムシートから、クライオミクロトーム(Leica EM FC7、日本電子社製)を用いて厚さ100±10nmの凍結薄膜を作製した。この薄膜を測定サンプルとして、TEM(HT7700、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、凝集体の観察を行った。得られたTEM画像から任意に10個以上の凝集体を選定し、各凝集体の最長径を測長し平均値を算出することで、凝集体の平均最長径を求めた。結果を表1に示す。
【0062】
<引張強度TS・引張伸びE
実施例および比較例で得られた架橋ゴムシートを、ダンベル試験片状(JIS3号)に打ち抜き、試験片を作製した。引張試験機(ストログラフVG、東洋精機社製)を用い、JIS K6251:2010に準拠して、試験温度23℃、試験湿度50%、引張速度500±50mm/minの条件下で引張試験を行い、引張強度TS(試験片を切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の初期断面積で除した値)、および引張伸びE(試験片が切断したときの伸び。初期に対する比率(%))を測定した。
測定された引張強度TSおよび引張伸びEは、フィラーを配合しなかった以外は同一の配合組成の比較例のゴム組成物についての測定値を100として、指数表示した。結果を表1に示す。
指数値が大きい程、引張強度TSおよび引張伸びEが向上し、機械特性に優れることを示す。
【0063】
[実施例1-1]
有機溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)95kgに、フッ素ゴム(FKM;バイトンGBL600S、デュポン社製)5.0kgを投入し、攪拌機を用いて20℃で8時間以上攪拌して溶解させて、フッ素ゴム溶液を調製した。このフッ素ゴム溶液に、繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、比重:1.7、平均直径:3.5nm、平均長さ:400μm、BET比表面積:1050m/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸(屈曲点の位置:0.6nm)、内部比表面積S2/全比表面積S1:0.24)を200g添加して、撹拌機で10分間撹拌した。
次いで、高圧分散装置(「BERYU SYSTEM PRO」、美粒社製)を使用して、圧力100MPa、温度20℃の条件で粗分散液を5回分散処理して、分散処理液を得た。次いで、得られた分散処理液を400kgの水へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、得られた黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、フッ素ゴムとCNTとの混合物(フッ素ゴム100質量部(100体積部):CNT4質量部(5.3体積部))を得た。
その後、20℃のオープンロールを用いて、フッ素ゴムとCNTとの混合物104質量部(105.3体積部)と、フィラーとしてのカーボンブラックMT(Cancarb社製、「サーマックスMT」)10質量部(10.2体積部)、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)3質量部、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、「TAIC(登録商標)」)3質量部と、架橋剤としての2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油株式会社製、「パーヘキサ(登録商標)25B40」)2質量部とを混練し、ゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物を、温度160℃、圧力10MPaで15分間架橋して(一次架橋)、厚さ2mmのシート状の架橋物を得た。次いで、得られたシート状の架橋物を230℃で2時間架橋して(二次架橋)、架橋ゴムシートを得た。
【0064】
[実施例1-2]
フィラーとして、カーボンブラックFEF(東海カーボン社製、「シーストSO」)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0065】
[実施例1-3]
フィラーとして、カーボンブラックFT(旭カーボン社製、「旭#50」)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0066】
[実施例1-4]
フィラーとして、カーボンブラックHAF(東海カーボン社製、「シースト3」)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0067】
[実施例1-5]
フィラーとして、疎水性シリカ(Evonik社製「アエロジル(登録商標)R972V」)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0068】
[比較例1-1]
フィラーを配合しなかった以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0069】
[比較例1-2]
フィラーとして、カーボンブラックFEF(東海カーボン社製、「シーストSO」)を用い、20℃のオープンロールを用いて、フッ素ゴムとCNTとの混合物104質量部(105.3体積部)と、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)3質量部、共架橋剤としてのトリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製、「TAIC(登録商標)」)3質量部と、架橋剤としての2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油株式会社製、「パーヘキサ(登録商標)25B40」)2質量部とを混合した。ついで、50℃、ロール間隔2mmに調整したオープンロールを用いて、フィラーとしてのカーボンブラックFEF(東海カーボン社製、「シーストSO」)10質量部(10.2体積部)を混合してゴム組成物を得た以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0070】
[比較例1-3]
フィラーとして、カーボンブラックFEF(東海カーボン社製、「シーストSO」)を用い、混練時間を10倍とした以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0071】
[実施例2-1]
ゴム組成物中の繊維状炭素ナノ構造体の量を3質量部(3.9体積部)とした以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0072】
[実施例2-2]
フィラーとしてのカーボンブラックMTの配合量を2倍の20質量部(20.4体積部)とした以外は実施例2-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0073】
[比較例2]
フィラーを配合しなかった以外は実施例2-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0074】
[実施例3]
ゴム組成物中の繊維状炭素ナノ構造体の量を2質量部(2.6体積部)とし、フィラーとして、親水性シリカ(東ソー・シリカ社製「ニップシール(登録商標)ER」)を用いた以外は実施例1-1と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0075】
[比較例3]
フィラーを配合しなかった以外は実施例3と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0076】
[実施例4]
有機溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)195kgに繊維状炭素ナノ構造体カーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、比重:1.7、平均直径:3.5nm、平均長さ:400μm、BET比表面積:1050m/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸(屈曲点の位置:0.6nm)、内部比表面積S2/全比表面積S1:0.24)を500g添加して、撹拌機で10分間撹拌した。
次いで、高圧分散装置(「BERYU SYSTEM PRO」、美粒社製)を使用して、圧力100MPa、温度20℃の条件で粗分散液を5回分散処理して、0.25質量%のCNT分散液を得た。
得られたCNT分散液に、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR;日本ゼオン社製「ニポールDN3350」)5kgを投入し、撹拌機を用いて20℃で8時間撹拌して溶解させた。次いで、得られた溶液を800kgの水へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、得られた黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、ニトリルゴムとCNTとの混合物(ニトリルゴム100質量部(100体積部):CNT10質量部(7体積部))を得た。
その後、20℃のオープンロールを用いて、前記ニトリルゴムとCNTとの混合物33質量部(32.1体積部、うちCNT2.1体積部)と、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(日本ゼオン社製「ニポールDN3350」)70質量部(70体積部)と、フィラーとしての疎水性シリカ(Evonik社製、「アエロジルR972V」)20質量部(10.9体積部)、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)5質量部、ステアリン酸1質量部、第一老化防止剤としてのN-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製「ノクラック810NA」)2質量部、第二老化防止剤としての2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(大内新興化学工業社製「ノクラック224」)2質量部、加硫剤としての硫黄(S#325)0.3質量部、第一加硫促進剤としてのテトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業社製「ノクセラー-TT」)1質量部、第二加硫促進剤としてのN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製「ノクセラーCZG」)とを混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物に加硫処理(160℃、10分)を行い、厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。
【0077】
[比較例4]
フィラーを配合しなかった以外は実施例4と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0078】
[実施例5]
有機溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)195kgに繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブ(ゼオンナノテクノロジー社製、製品名「ZEONANO SG101」、単層CNT、比重:1.7、平均直径:3.5nm、平均長さ:400μm、BET比表面積:1050m/g、G/D比:2.1、t-プロットは上に凸(屈曲点の位置:0.6nm)、内部比表面積S2/全比表面積S1:0.24)を500g添加して、撹拌機で10分間撹拌した。
次いで、高圧分散装置(「BERYU SYSTEM PRO」、美粒社製)を使用して、圧力100MPa、温度20℃の条件で粗分散液を5回分散処理して、0.25質量%のCNT分散液を得た。
得られたCNT分散液に、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(HNBR;日本ゼオン社製「ゼットポール2020」)5kgを投入し、撹拌機を用いて20℃で8時間撹拌して溶解させた。次いで、得られた溶液を800kgの水へ滴下し、凝固させて黒色固体を得た。そして、得られた黒色固体を80℃で12時間減圧乾燥し、水素化ニトリルゴムとCNTとの混合物(水素化ニトリルゴム100質量部(100体積部):CNT10質量部(7体積部))を得た。
その後、20℃のオープンロールを用いて、前記水素化ニトリルゴムとCNTとの混合物22質量部(21.4体積部、うちCNT1.4体積部)と、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(日本ゼオン社製「ゼットポール2020」)80質量部(80体積部)と、フィラーとしてのカーボンブラックFEF(東海カーボン社製、「シーストSO」)15質量部(8.2体積部)、架橋助剤としての酸化亜鉛(亜鉛華二種)5質量部、ステアリン酸1質量部、第一老化防止剤としての4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラックCD」)1.5質量部、第二老化防止剤としての2-メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(大内新興化学工業社製「ノクラックMBZ」)1.5質量部、加硫剤としての1,3-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼン(VUL-CUP(登録商標)40KE)8質量部とを混練し、ゴム組成物を得た。
得られたゴム組成物に一次加硫(170℃、20分)および二次加硫(150℃、4時間)処理を行って、厚さ2mmの架橋ゴムシートを得た。
【0079】
[比較例5]
フィラーを配合しなかった以外は実施例5と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0080】
[実施例6]
ゴム組成物中の繊維状炭素ナノ構造体の量を2.5倍の5質量部(3.5体積部)とした以外は実施例5と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0081】
[比較例6]
フィラーを配合しなかった以外は実施例6と同様にして、架橋ゴムシートを得た。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から、ゴム組成物中でフィラーが凝集体として存在し、該凝集体の平均最長径が100nm以上1000nm以下である実施例のゴム組成物は、フィラーが配合されていない比較例のゴム組成物、並びにフィラーの凝集体の平均最長径が100nm未満または1000nm超である比較例のゴム組成物に比べて、引張強度および引張伸びが大幅に向上したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によれば、引張強度および引張伸びに優れた複合材料としてのゴム組成物を提供することができる。