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特許7173082気相成長用のシリコン単結晶基板、気相成長基板及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】気相成長用のシリコン単結晶基板、気相成長基板及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20221109BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 25/18 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 13/00 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 33/10 20060101ALI20221109BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C30B29/06 501A
C30B29/38 D
C30B25/18
C30B33/02
C30B29/06 B
C30B13/00
C30B33/10
C30B29/06 A
C23C16/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020073795
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169397
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】土屋 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 勝
(72)【発明者】
【氏名】曲 偉峰
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111044(JP,A)
【文献】国際公開第2005/010243(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 29/38
C30B 25/18
C30B 33/02
C30B 13/00
C30B 33/10
C23C 16/34
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長用のシリコン単結晶基板であって、
前記シリコン単結晶基板は、抵抗率が1000Ωcm以上のFZ結晶からなるものであり、
表面に、他の領域より窒素濃度が高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上である、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を備えるものであることを特徴とする気相成長用のシリコン単結晶基板。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコン単結晶基板上に半導体単結晶の気相成長層を有するものであることを特徴とする気相成長基板。
【請求項3】
前記半導体単結晶の気相成長層が窒化物半導体を含むものであることを特徴とする請求項2に記載の気相成長基板。
【請求項4】
気相成長用のシリコン単結晶基板の製造方法であって、
FZ法により製造された抵抗率が1000Ωcm以上のシリコン単結晶基板を、窒素含有ガス雰囲気でRTA処理して、前記シリコン単結晶基板の表面に、窒素濃度が他の領域より高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上であり、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を形成することを特徴とする気相成長用基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の気相成長用基板の製造方法により製造した気相成長用基板上に、半導体単結晶層を気相成長することを特徴とする気相成長基板の製造方法。
【請求項6】
前記半導体単結晶層が窒化物半導体を含むことを特徴とする請求項5に記載の気相成長基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長用のシリコン単結晶基板、気相成長基板及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波デバイスは、小型化、低コスト化に向けて、アンテナやアンプ、スイッチ、フィルター等のデバイスをインテグレーションする開発が進められている。また、周波数の高周波化に従い、回路が複雑化し、使用されるデバイスの材料もシリコンCMOS、III-V族半導体や窒化物半導体を用いたデバイス、圧電体を用いたフィルターなど多岐にわたっている。
【0003】
これらのデバイスの下地となる基板は、安価で大直径のウェーハが流通しているシリコン単結晶基板が適していると考えられる。特に、高周波デバイス用の基板としては、高抵抗で、サーマルドナーによる抵抗率の変化が少ないFZ(Floating-Zone)法によって作製されたFZ結晶からなるシリコン単結晶基板(「FZ基板」ということもある)が適していると考えられる。
【0004】
しかしながら、高抵抗のFZ基板は、機械的特性が低抵抗CZ基板と比較して悪く、転位の伸長によって塑性変形を起こしやすいという問題がある。特に、シリコン単結晶基板上のGaNの成長では、格子定数差や熱膨張係数差による応力によって、反りの増大や塑性変形が起こりやすいので、成長条件や緩和層による応力低減が行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、周期的に複数回積層された窒化ガリウム系化合物半導体の中間層を用いて、応力緩和を行い、反りやクラックが小さいウェーハを作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-79952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、複雑な中間層を作製することにより、成長時間が長くなり、設計の自由度が小さくなることが懸念される。
【0008】
また、特に、高周波デバイスでは、高周波特性を改善するため、デバイスやその支持基板、周辺のパッケージの寄生容量を減少させる必要がある。寄生容量の低減のため、サーマルドナーの発生しない高抵抗のFZシリコン単結晶基板を支持基板やパッケージに利用すると、特性が改善されるとともに、コスト上もメリットがあると考えられる。
【0009】
一方、デバイス作製工程は、基板上へのエピタキシャル成長や熱処理、貼り合わせなどの工程を含むが、その過程で異種の材料間の格子定数差や熱膨張係数差で基板に応力が発生する。しかしながら、FZ基板は、通常の低抵抗CZ基板と比較して、有転位化した時のヤング率が低く、塑性変形しやすいデメリットがある。塑性変形が起こるとウェーハが大きく歪み、形状が元に戻らないため、反り異常や接合不良が発生する恐れがある。
【0010】
FZ基板の窒素濃度を高くして機械的特性を向上させることも考えられるが、FZ法によるシリコン単結晶の製造ではバルク中の窒素濃度が高い単結晶を取得することは難しく、歩留まりが低いという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、反り異常や接合不良の発生を抑制するために、塑性変形し難い気相成長用のシリコン単結晶基板、塑性変形が抑制された気相成長基板及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、気相成長用のシリコン単結晶基板であって、前記シリコン単結晶基板は、抵抗率が1000Ωcm以上のFZ結晶からなるものであり、表面に、他の領域より窒素濃度が高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上である、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を備える気相成長用のシリコン単結晶基板を提供する。
【0013】
このような高抵抗率のFZ結晶からなる気相成長用のシリコン単結晶基板であれば、寄生容量が低減されるため高周波デバイス用の基板に適しているとともに、基板の表面に高濃度の窒素を含有しているため機械的特性に優れ、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形が起こりにくく、反り異常や接合不良の発生が抑制されたものとなる。
【0014】
このとき、上記シリコン単結晶基板上に半導体単結晶の気相成長層を有する気相成長基板とすることができる。
【0015】
このような気相成長基板であれば、高周波デバイスに適しているとともに、気相成長用基板の表面に高濃度の窒素を含有しているため、塑性変形が抑制され、反り異常や接合不良の発生が抑制されたものとなる。
【0016】
このとき、前記半導体単結晶の気相成長層が窒化物半導体を含むものである気相成長基板とすることができる。
【0017】
これにより、高周波デバイスにより好適な基板となる。また、特に、格子定数差や熱膨張係数差による応力によって、反りの増大や塑性変形が起こりやすい、シリコン単結晶基板上にGaNなどの窒化物半導体を形成した気相成長基板において、本発明の効果が顕著である。
【0018】
本発明は、また、気相成長用のシリコン単結晶基板の製造方法であって、FZ法により製造された抵抗率が1000Ωcm以上のシリコン単結晶基板を、窒素含有ガス雰囲気でRTA処理して、前記シリコン単結晶基板の表面に、窒素濃度が他の領域より高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上であり、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を形成する気相成長用基板の製造方法を提供する。
【0019】
このような気相成長用基板の製造方法によれば、高周波デバイス用の基板に適し、気相成長用のシリコン単結晶基板の表面に高濃度の窒素を含有し機械的特性に優れた気相成長用基板であって、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形し難く、反り異常や接合不良の発生を抑制することが可能な気相成長用基板を、容易に製造することができる。
【0020】
このとき、上記気相成長用基板の製造方法により製造した気相成長用基板上に、半導体単結晶層を気相成長する気相成長基板の製造方法とすることができる。
【0021】
これにより、反りや塑性変形が抑制された気相成長基板を、容易に製造することができる。
【0022】
このとき、前記半導体単結晶層が窒化物半導体を含む気相成長基板の製造方法とすることができる。
【0023】
これにより、高周波デバイスを製造するのに極めて好適な、反りや塑性変形が抑制された気相成長基板を、容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明の気相成長用のシリコン単結晶基板によれば、寄生容量が低減されるため高周波デバイス用の基板に適しているとともに、機械的特性に優れ、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形し難く、反り異常や接合不良の発生を抑制することが可能なものとなる。また、本発明の気相成長用のシリコン単結晶基板の製造方法によれば、高周波デバイス用の基板に適し、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形し難く、反り異常や接合不良の発生を抑制することが可能な気相成長用基板を、容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る気相成長用のシリコン単結晶基板の概念図を示す。
図2】本発明に係る気相成長基板の概念図を示す。
図3】本発明に係る気相成長基板の他の例(HEMT)の概念図を示す。
図4】実施例1,2、比較例1,2に係るエピタキシャル基板の、塑性変形を始める曲率の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、反り異常や接合不良の発生を抑制するために、塑性変形し難い気相成長用のシリコン単結晶基板が求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、気相成長用のシリコン単結晶基板であって、前記シリコン単結晶基板は、抵抗率が1000Ωcm以上のFZ結晶からなるものであり、表面に、他の領域より窒素濃度が高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上である、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を備えるものである気相成長用のシリコン単結晶基板により、寄生容量が低減されるため高周波デバイス用の基板に適しているとともに、基板の表面に高濃度の窒素を含有しているため機械的特性に優れ、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形が起こりにくく、反り異常や接合不良の発生が抑制されたものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
本発明者らは、また、気相成長用のシリコン単結晶基板の製造方法であって、FZ法により製造された抵抗率が1000Ωcm以上のシリコン単結晶基板を、窒素含有ガス雰囲気でRTA処理して、前記シリコン単結晶基板の表面に、窒素濃度が他の領域より高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上であり、厚さが10~100μmの高窒素濃度層を形成する気相成長用基板の製造方法により、高周波デバイス用の基板に適し、気相成長用のシリコン単結晶基板の表面に高濃度の窒素を含有し機械的特性に優れた気相成長用基板であって、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、塑性変形し難く、反り異常や接合不良の発生を抑制することが可能な気相成長用基板を、容易に製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0030】
以下、本発明に係る気相成長用のシリコン単結晶基板、気相成長基板及びこれらの製造方法の一実施形態について、図1~3を参照しながら説明する。
【0031】
(気相成長用のシリコン単結晶基板)
本発明に係る気相成長用のシリコン単結晶基板の概念図を図1に示す。本発明に係る気相成長用のシリコン単結晶基板10としては、基板を通したリーク電流を低減するために、サーマルドナーの影響が少ないFZ法で製造された単結晶インゴットをウェーハ状にスライスした、FZ結晶からなり抵抗率が1000Ωcm以上のシリコン単結晶基板を使用する。また、本発明に係る気相成長用のシリコン単結晶基板10は、表面に、他の領域(バルクや裏面)より窒素濃度が高く、かつ、窒素濃度が5×1015atoms/cm以上である高窒素濃度層1を備えており、高窒素濃度層1の厚さは10~100μmである。なお、高窒素濃度層1の窒素濃度の上限は、5×1016atoms/cmとすることができる。また、高窒素濃度層1は、濃度を変えて複数形成されていても良い。なお、シリコン単結晶基板10の表面には、キャリアの寿命を低下させるトラップリッチ層が形成されていても良い。
【0032】
(気相成長基板)
本発明に係る気相成長基板の概念図を図2に示す。本発明に係る気相成長基板20は、シリコン単結晶基板10の高窒素濃度層1の上に、半導体単結晶の気相成長層2を有するものである。この気相成長層2は、熱CVD法、MOVPE法、MBE法、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相成長で形成されたものであり、例えば、デバイス層として機能する。
【0033】
半導体単結晶の気相成長層2の組成や膜厚等は特に限定されない。例えば、シリコン薄膜、炭化シリコンや、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaN、AlInN、AlScNなどの窒化物(III-V族)半導体を用いることができる。膜厚は、例えば1~10μmとすることができ、デバイスに合わせて設計することができる。
【0034】
また、図2に示すように、中間層3を備えていてもよい。中間層3は、デバイス層の結晶性改善や応力の制御のために挿入される緩衝層として働く。上記中間層3は、シリコンのホモエピなど、応力や結晶性の改善の必要が無い場合、省略することもできる。一方、高周波フィルターなどのデバイスの構成上、空間を作るための犠牲層や電極として用いることができる金属で作製されても良い。
【0035】
図3に、本発明に係る気相成長基板30の他の例の概念図を示す。例えば、図3に示す高移動度トランジスタ(HEMT)構造では、デバイス層として機能する気相成長層2は、窒化ガリウム2aとその上に形成されるAlGaNからなる電子供給層2bで構成される。気相成長層2は、デバイス特性の向上のため、結晶欠陥が少なく、炭素や酸素などの不純物が少ない結晶が望ましい。
【0036】
窒化ガリウムは、シリコン(111)単結晶と格子定数差が17%、熱膨張係数差が116%あり、高温での成長中に薄膜や基板に応力がかかる。また、成長中は、通常1000℃以上に加熱されているため、ウェーハに応力がかかると脆性破壊せずに、延性を示すようになり、転位を発生させて塑性変形する。
【0037】
本発明に係るシリコン単結晶基板は、寄生容量が低減されるため高周波デバイス用の基板に適している。また、基板の表面に高濃度の窒素を含有しているため、機械的特性に優れたものである。このため、半導体単結晶の気相成長層を形成する場合に、シリコン単結晶基板の転位の進展を防止して、塑性変形を防ぐことができる。そして、塑性変形を防ぐことによって、反り異常を低減して歩留まりを向上させることができる。また、基板が応力に耐えることができるため、気相成長層の膜厚を厚くすることができ、デバイスの設計の自由度が向上する。
【0038】
(気相成長用のシリコン単結晶基板の製造方法)
上記のような気相成長用のシリコン単結晶基板10は、まず、FZ法により抵抗率が1000Ωcm以上のシリコン単結晶インゴットを製造し、該インゴットをウェーハ状にスライスしてシリコン単結晶基板とし、該基板を、アンモニアガス等の窒素含有ガス雰囲気にて、RTA(Rapid Thermal Annealing)処理することによって、窒素を注入する方法で作製する。RTA処理の条件は特に限定されず、高窒素濃度層1の窒素濃度及び厚さが上記のような範囲となる条件であればよい。
【0039】
上記のような処理を行うと、高窒素濃度層1の上にRTA処理によるシリコン窒化物層が形成されるが、このシリコン窒化物層は、エッチング又は研磨によって除去することができる。次の工程で、中間層や半導体単結晶の気相成長層を形成する側は、エッチング又は研磨による窒化物層の除去は必須だが、裏面及び端面は、シリコン窒化物層が残っていても、除去されていても良い。また、トラップリッチ層を形成する場合、その形成方法は特に限定されないが、イオン注入や電子線、X線、γ線などの電離放射線の照射によって形成することができる。
【0040】
(気相成長基板の製造方法)
本発明に係る気相成長基板20は、シリコン単結晶基板10の高窒素濃度層1の上に、必要な場合には中間層3を介して、半導体単結晶の気相成長層2を、例えば、熱CVD法、MOVPE法、MBE法、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相成長を行うことで、製造することができる。上述のHEMTの例で、気相成長層2としてGaNやAlGaNを形成する場合には、例えばMOVPE法を用いて、900℃~1350℃の成長温度で作製できる。これらの気相成長の条件は、一般に行われている条件で行えばよい。
【実施例
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0042】
まず、直径6インチ(150mm)、面方位(111)、抵抗率が1000Ωcm以上のFZ結晶からなるシリコン単結晶基板であって、窒素濃度の異なる2種類のウェーハを準備した。それぞれの窒素濃度をFT-IRとSIMS測定で分析した結果、窒素濃度の低い基板は、3.0×1014atoms/cmであり、窒素濃度の高い基板は、2.0×1015atoms/cmであった。
【0043】
(実施例1)
窒素濃度が3.0×1014atoms/cmのシリコン単結晶基板を用い、RTA法による熱処理で、表層に窒素を注入した。RTA処理条件は、NHとAr雰囲気で、1250℃、10secとし、シリコン単結晶基板の表層に窒素濃度5×1015/cm、厚さ38μmの高窒素濃度層を形成した。RTA処理後は、HF洗浄でシリコン窒化膜の除去を行った。その後、MOVPE法により、窒化物半導体であるGaNのエピタキシャル成長を行った。成長温度は1000~1200℃で、総膜厚4.5μmのエピタキシャル層を成長した。なお、エピタキシャル成長は、実施例1及び以下に述べる実施例2、比較例1,2のそれぞれで準備した成長用の基板を、同一のMOVPE炉で行った。
【0044】
(実施例2)
窒素濃度が2.0×1015atoms/cmのシリコン単結晶基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、窒化物半導体であるGaNのエピタキシャル層を形成した。
【0045】
(比較例1)
実施例1と同様のシリコン単結晶基板を用い、RTA処理を行わず(高窒素濃度層を形成せず)、エピタキシャル層を形成した。
【0046】
(比較例2)
実施例2と同様のシリコン単結晶基板を用い、RTA処理を行わず(高窒素濃度層を形成せず)、エピタキシャル層を形成した。
【0047】
(評価)
上記のようにしてエピタキシャル層を形成した実施例1,2、比較例1,2の気相成長基板について、塑性変形を始める曲率の比較を行った。この評価は、測定装置としてLAYTEC社製のEpiCurveTTを用い、成長中のウェーハの曲率を、2本のレーザー光をチャンバー内に平行に入射させ、反射したレーザースポットの位置の変化で計測を行った。
【0048】
結果を図4に示す。図4に示すように、バルク中の窒素濃度に関わらず、RTA処理を行い、高窒素濃度層を形成することによって、半導体単結晶層の気相成長中に塑性変形が始まる曲率が大きくなり、降伏応力が大きくなっていることが分かった。特に、バルクの窒素濃度が低いサンプルで、大きな改善が見られた。
【0049】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0050】
1…高窒素濃度層、 2…半導体単結晶の気相成長層、 2a…窒化ガリウム、
2b…電子供給層(AlGaN)、 3…中間層、
10…気相成長用のシリコン単結晶基板、 20,30…気相成長基板。
図1
図2
図3
図4