(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びフィルム状接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20221109BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20221109BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221109BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221109BHJP
C09J 171/10 20060101ALI20221109BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20221109BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J9/02
C09J11/04
C09J11/06
C09J163/00
C09J171/10
H01B1/20 B
H01B1/20 D
H01R11/01 501A
(21)【出願番号】P 2021150222
(22)【出願日】2021-09-15
(62)【分割の表示】P 2016108387の分割
【原出願日】2016-05-31
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】森谷 敏光
(72)【発明者】
【氏名】杜 暁黎
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152354(JP,A)
【文献】特開2016-172813(JP,A)
【文献】特開平5-132461(JP,A)
【文献】特開平5-132462(JP,A)
【文献】特開昭63-314206(JP,A)
【文献】特開2014-135207(JP,A)
【文献】特開2003-82318(JP,A)
【文献】特開平11-61034(JP,A)
【文献】特開2012-171980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01B 1/20- 1/24
H01R 11/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物をフィルム状にしてなるフィルム状接着剤組成物であって、
前記フィルム状接着剤組成物の片面のみに樹脂フィルムが設けられており、
前記接着剤組成物は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩と、カチオン重合性物質と、
導電性粒子と、を含有
し、
前記カチオン重合性物質がオキセタン化合物を含む、
フィルム状接着剤組成物。
【化1】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに結合して環構造を形成
せず、X
-は、SbF
6
-、PF
6
-、B(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
2F
2
-、Ga(C
6F
5)F
3
-又はC(CF
3SO
2)
3
-を表す。]
【請求項2】
接着剤組成物をフィルム状にしてなるフィルム状接着剤組成物であって、
前記フィルム状接着剤組成物の片面のみに樹脂フィルムが設けられており、
前記接着剤組成物は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩と、カチオン重合性物質と、を含有し、
前記カチオン重合性物質がオキセタン化合物を含み、
異方導電性を有する、フィルム状接着剤組成物。
【化2】
[式(1)中、R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに結合して環構造を形成せず、X
-
は、SbF
6
-
、PF
6
-
、B(C
6
F
5
)
4
-
、Ga(C
6
F
5
)
4
-
、Ga(C
6
F
5
)
2
F
2
-
、Ga(C
6
F
5
)F
3
-
又はC(CF
3
SO
2
)
3
-
を表す。]
【請求項3】
接着剤組成物をフィルム状にしてなるフィルム状接着剤組成物であって、
前記フィルム状接着剤組成物の片面のみに樹脂フィルムが設けられており、
前記接着剤組成物は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩と、カチオン重合性物質と、を含有し、
前記カチオン重合性物質がオキセタン化合物を含み、
回路接続用である、フィルム状接着剤組成物。
【化3】
[式(1)中、R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R
1
、R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに結合して環構造を形成せず、X
-
は、SbF
6
-
、PF
6
-
、B(C
6
F
5
)
4
-
、Ga(C
6
F
5
)
4
-
、Ga(C
6
F
5
)
2
F
2
-
、Ga(C
6
F
5
)F
3
-
又はC(CF
3
SO
2
)
3
-
を表す。]
【請求項4】
前記オニウム塩が、アニリニウム
塩である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項5】
一般式(1)におけるR
1、R
2、R
3及びR
4のいずれか一つが、置換若しくは未置換のベンジル基、置換若しくは未置換のナフチルメチル基、又は、置換若しくは未置換のシンナミル基である、請求項1
~4のいずれか一項に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項6】
前記カチオン重合性物質が、エポキシ化合物
を更に含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項7】
前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物である、請求項6に記載のフィルム状接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤組成物がフィルム性付与ポリマーを更に含有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項9】
前記接着剤組成物が導電性粒子を更に含有する、請求項
2又は3に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項10】
異方導電性を有する、請求項
1又は3に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【請求項11】
回路接続用である、請求項
1又は2に記載の
フィルム状接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びフィルム状接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、液晶ディスプレイ等の分野において、電子部品の固定、回路の接続等のために各種接着剤が使用されている。これらの用途では、ますます高密度化及び高精細化が進み、接着剤にも高い接着力及び信頼性が求められている。
【0003】
特に、液晶ディスプレイとTCP(Tape Carrier Package)との接続、FPC(Flexible Printed Circuit)とTCPとの接続、又は、FPCとプリント配線板との接続には、接着剤中に導電性粒子を分散させた異方導電性接着剤が回路接続材料として使用されている。また、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドではなく、半導体シリコンチップを基板に直接実装する、いわゆるCOG(Chip On Glass)が行われており、ここでも異方導電性接着剤が使用されている。
【0004】
また、近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、電極幅及び電極間隔が極めて狭くなっている。このため、従来のエポキシ樹脂を用いた回路接続用接着剤の接続条件では、回路(配線)の脱落、剥離、位置ずれ等が生じるという問題があり、COGでは、チップと基板との熱膨張差に起因する反りが発生するという問題がある。さらに、低コスト化のためにはスループットを向上させる必要があり、比較的低温(例えば150~170℃)かつ短時間(例えば10秒以内)で硬化可能な接着剤(低温速硬化可能な接着剤)が要求されている。
【0005】
このような要求に対して、例えば、所定の構造を有するスルホニウムカチオンを含むオニウム塩を重合開始剤として接着剤に用いることが知られている(下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2706833号公報
【文献】特開平6-345726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の重合開始剤を用いた場合、40~60℃程度の温度でも重合が開始することがあり、保存中に接着剤の硬化が進行するおそれがある。一方、特許文献1及び2に記載の重合開始剤より反応性の低い重合開始剤(例えばヨードニウム塩化合物)を用いた場合、保存安定性は確保されるものの、比較的低温(例えば150~170℃)かつ短時間(例えば10秒以内)で接着剤を硬化させることは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、保存安定性に優れ、比較的低温(例えば150~170℃)かつ短時間(例えば10秒以内)で硬化可能な接着剤組成物及びフィルム状接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明者らは種々検討する中で、所定の窒素オニウムカチオン及び対アニオンを含むオニウム塩を用いることで、保存安定性と、比較的低温かつ短時間における硬化性とを両立できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるオニウム塩と、カチオン重合性物質と、を含有する、接着剤組成物を提供する。
【化1】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、X
-は、SbF
6
-、PF
6
-、B(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
2F
2
-、Ga(C
6F
5)F
3
-又はC(CF
3SO
2)
3
-を表す。]
【0011】
本発明に係る接着剤組成物は、保存安定性に優れ、比較的低温(例えば150~170℃)かつ短時間(例えば10秒以内)で硬化可能である。このような接着剤組成物は、回路接続用接着剤組成物として好適に用いることができる。
【0012】
前記オニウム塩は、アニリニウム塩及びピリジニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0013】
一般式(1)におけるR1、R2、R3及びR4のいずれか一つは、置換若しくは未置換のベンジル基、置換若しくは未置換のナフチルメチル基、又は、置換若しくは未置換のシンナミル基であることが好ましい。
【0014】
前記カチオン重合性物質は、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0015】
前記接着剤組成物は、フィルム性付与ポリマーを更に含有していてもよい。前記接着剤組成物は、導電性粒子を更に含有していてもよい。
【0016】
前記接着剤組成物は、異方導電性を有していてもよい。前記接着剤組成物は、回路接続用であってもよい。
【0017】
また、本発明は、前記接着剤組成物をフィルム状にしてなる、フィルム状接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保存安定性に優れ、比較的低温(例えば150~170℃)かつ短時間(例えば10秒以内)で硬化可能な接着剤組成物及びフィルム状接着剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】異方導電性を有するフィルム状接着剤組成物の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】
図2の構造体の製造方法を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0021】
本実施形態に係る接着剤組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるオニウム塩(オニウム塩化合物。以下「(A)成分」ともいう)と、(B)カチオン重合性物質(以下「(B)成分」ともいう)と、を含有する。
【0022】
【化2】
[式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、各々独立に、水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、置換若しくは未置換のアリール基、置換若しくは未置換のアルケニル基、置換若しくは未置換の複素環基、置換若しくは未置換のアルコキシル基、置換若しくは未置換のアリールオキシ基、又は、置換若しくは未置換の複素環オキシ基を表し、R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、X
-は、SbF
6
-、PF
6
-、B(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
4
-、Ga(C
6F
5)
2F
2
-、Ga(C
6F
5)F
3
-又はC(CF
3SO
2)
3
-を表す。]
【0023】
上記のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、アラルキル基等が挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、ナフチルメチル基、シンナミル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、置換基を有していてもよい。
【0024】
上記のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。これらのアリール基は、置換基を有していてもよい。
【0025】
上記のアルケニル基としては、プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンタニル基、2-ヘキサニル基等が挙げられる。上記の複素環基としては、ピリジニル基等が挙げられる。上記のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。上記のアリールオキシ基としては、4-フェニルメトキシ基、4-フェニルエトキシ基、4-フェニルオキシカルボニルメチル基等が挙げられる。上記の複素環オキシ基としては、4-シクロヘキサンオキシド基等が挙げられる。これらの基は、置換基を有していてもよい。
【0026】
上記のアルキル基、アリール基等の各基における置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、デシルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイルオキシ基等のエステル基;フェニルチオ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基などが挙げられる。これらの置換基の置換位置は、特に限定されるものではなく、いずれの位置であってもよい。
【0027】
式(1)のX-は、窒素オニウムカチオンの対アニオンを表す。X-としては、例えば、SbF6
-、PF6
-、B(C6F5)4
-、Ga(C6F5)4
-、Ga(C6F5)2F2
-、Ga(C6F5)F3
-及びC(CF3SO2)3
-が挙げられる。アニオンの求核性が低い場合に更に良好な硬化性を得られるため、SbF6
-、(C6F5)4B-、(CF3SO2)3C-が好ましい。
【0028】
R1、R2、R3及びR4のいずれか一つ(R1、R2、R3及びR4のうちの一つのみ)は、開始剤の分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、置換若しくは未置換のベンジル基、置換若しくは未置換のナフチルメチル基、又は、置換若しくは未置換のシンナミル基であることが好ましい。
【0029】
R1、R2、R3及びR4は、互いに結合して環構造を形成していてもよく、例えば、R1、R2、R3及びR4のうち隣接する基同士が互いに結合して環構造を形成する。環構造を有する窒素オニウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(2)で表されるカチオンが挙げられる。環構造Qとしては、複素環、芳香環、複素芳香環(ピリジニウム環等)、脂環などが挙げられる。また、環構造Qは、例えば、四員環、五員環、六員環、七員環等の多員環である。環構造Qは、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基等の各基について上述した置換基が挙げられる。mは1又は2を表す。R5は、R1、R2、R3及びR4と同等の基である。
【0030】
【0031】
(A)成分としては、保存安定性に更に優れる観点から、80~250℃の温度で活性を示す化合物が好ましく、具体的には、アニリニウム塩(アニリニウム塩化合物)及びピリジニウム塩(ピリジニウム塩化合物)からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0032】
アニリニウム塩としては、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-アルキルアニリニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、N,N,N-トリアルキルアニリニウム塩が好ましい。アニリニウム塩の具体例としては、N-ベンジル-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-(4-ニトロベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-(4-メトキシベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-(α-フェニルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-(α-メチルベンジル)-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、N-シンナミル-N,N-ジメチルアニリニウム六フッ化アンチモン、置換ベンジルアニリニウムカチオンを有するオニウム塩(例えば、K-PURE CXC-1612(KING Industries社製、対アニオン:SbF6)、K-PURE CXC-1738(KING Industries社製、対アニオン:PF6)、K-PURE CXC-1740(KING Industries社製、対アニオン:SbF6)、K-PURE CXC-1741(KING Industries社製、対アニオン:SbF6)、K-PURE CXC-1821(KING Industries社製、対アニオン:B(C6F5)4))等が挙げられる。これらの化合物において窒素原子に結合する芳香環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。芳香環が置換基を有するアニリニウム塩としては、N-(1-ナフチルメチル)-N,N-ジメチル(4-ブロモフェニル)アニリニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
【0033】
アニリニウム塩としては、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-ベンジル-N,N-ジアルキルアニリニウム塩、N-ナフチルメチル-N,N-ジアルキルアニリニウム塩が好ましく、N-ベンジル-N,N-ジメチルアニリニウム塩、N-ナフチルメチル-N,N-ジメチルアニリニウム塩がより好ましい。これらのアニリニウム塩の対アニオンとしては、カチオン重合反応の反応速度を向上させ、硬化性を更に向上させる観点から、SbF6
-が好ましい。
【0034】
ピリジニウム塩としては、分解温度を低くし、硬化性を更に向上させる観点から、N-ベンジルピリジニウム塩、N-ナフチルメチルピリジニウム塩、N-シンナミルピリジニウム塩が好ましい。これらのピリジニウム塩の対アニオンとしては、カチオン重合反応の反応速度を向上させ、硬化性を更に向上させる観点から、SbF6
-が好ましい。ピリジニウム塩の具体例としては、N-ベンジルピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(4-ニトロベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(4-メトキシベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(α-フェニルベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(α-メチルベンジル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N-(1-ナフチルメチル)ピリジニウム六フッ化アンチモン、N-シンナミルピリジニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。これらの化合物におけるピリジニウム環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。ピリジニウム環が置換基を有するピリジニウム塩としては、N-(α-フェニルベンジル)-4-シアノピリジニウム六フッ化アンチモン、ナフチルメチル-2-シアノピリジニウム六フッ化アンチモン、シンナミル-2-シアノピリジニウム六フッ化アンチモン等が挙げられる。
【0035】
(A)成分の含有量は、接着剤組成物が充分に硬化し易い傾向にある観点から、(B)成分100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。(A)成分の含有量は、相溶性が向上する傾向にある観点から、(B)成分100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0036】
(A)成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。また、(A)成分のカチオン発生効率及び(B)成分の反応率を高めるために、(A)成分及び(B)成分に加えて連鎖移動剤を適宜使用することもできる。連鎖移動剤としては、プロトン性化合物であれば特に制限されるものではなく、公知の化合物を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、シクロヘキセンジオール、2,3-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルコール及びこれらの誘導体を用いることができる。
【0037】
(B)カチオン重合性物質は、カチオン重合性置換基を有する物質である。カチオン重合性置換基としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、等が挙げられる。(B)成分としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。(B)成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0038】
(B)成分であるグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、分子中にグリシジルエーテル基を有する化合物であって、硬化剤の存在下又は非存在下で活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよく、公知のものを使用できる。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリンとビスフェノール化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂;ポリグリシジルエーテル;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ化合物;ビフェニルジグリシジルエーテル、グリシジルアルキルイソシアヌレート、ポリグリシジルメタクリレート、グリシジルメタクリレートとこれと共重合可能なビニル単量体との共重合体等が挙げられる。グリシジルエーテル型エポキシ化合物は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0039】
(B)成分である脂環式エポキシ化合物としては、分子中にエポキシ基を有する化合物であって、硬化剤の存在下又は非存在下で活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよく、公知のものを使用できる。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、シクロヘキセン環含有化合物又はシクロペンテン環含有化合物を酸化して得られるシクロヘキセンオキシド又はシクロペンテンオキシド含有化合物が用いられる。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロエキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)が挙げられる。脂環式エポキシ化合物は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0040】
(B)成分であるオキセタン化合物としては、分子中にオキセタニル基を有しているオキセタン化合物であって、硬化剤の存在下又は非存在下で活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、オキセタニル基を2個以上有するオキセタン化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。硬化性に更に優れる観点から、分子中にオキセタニル基を2~6個有しかつ水酸基を1~6個有する脂肪族系化合物又は脂環系化合物が特に好ましい。オキセタン化合物は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0041】
オキセタン化合物の具体例としては、下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【化4】
【0042】
式(3)中、R11は水素原子、フッ素原子又は1価の炭化水素基を表し、R12は水素原子又はn価の炭化水素基を表し、nは1以上の整数を表す。R12が1価の炭化水素基を表す場合、当該炭化水素基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。R12が水素原子であるとき、nは1である。nが2以上の整数であるとき、R12に結合する複数の酸素原子は、互いにR12の同一炭素原子に結合していてもよく、R12の異なる炭素原子に結合していてもよい。なお、nは、例えば4以下の整数である。
【0043】
オキセタン化合物としては、1,4-ジ[(3-オキセタニル-n-ブトキシ)メチル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-オキセタニル-n-ブトキシ)メチル]ビフェニル、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン等が挙げられる。
【0044】
(B)成分であるビニルエーテル化合物としては、分子中にビニルエーテル基を有する化合物であって、硬化剤の存在下又は非存在下で活性光線の照射又は加熱によって硬化するものであればよい。中でも、1分子中に2個以上のビニルエーテル基を有するビニルエーテル化合物は、硬化させた際の架橋密度が高くなるので好ましい。ビニルエーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0045】
ビニルエーテル化合物の具体例としては、下記一般式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0046】
式(4)中、R13はp価の炭化水素基を表し、pは1以上の整数を表す。R13が1価の炭化水素基を表す場合、当該炭化水素基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。pが2以上の整数であるとき、R13に結合する複数の酸素原子は、互いにR13の同一炭素原子に結合していてもよく、R13の異なる炭素原子に結合していてもよい。なお、pは、例えば4以下の整数である。
【0047】
ビニルエーテル化合物としては、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。
【0048】
(B)成分のカチオン重合性置換基当量は、43~1000g/molが好ましく、50~800g/molがより好ましく、73~600g/molが更に好ましい。カチオン重合性置換基当量が43g/mol以上又は1000g/mol以下であると、後に説明する電極の接続時等において充分な接着強度を確保できる。
【0049】
(B)成分としては、不純物イオン(Na+、Cl-等)、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、腐食防止の観点から好ましい。
【0050】
(B)成分の含有量は、接着剤組成物の硬化物の更に優れた物性(ガラス転移温度、弾性率等)が得られる観点から、接着剤組成物全量に対して、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。(B)成分の含有量は、硬化時の接着剤組成物の収縮を抑制でき、接着力を維持できる観点から、接着剤組成物全量に対して、90質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0051】
本実施形態に係る接着剤組成物は、増粘化又はフィルム形成性の向上を目的として、(A)成分及び(B)成分と異なる成分として、(C)フィルム性付与ポリマー(以下「(C)成分」ともいう)を更に含有してもよい。(C)成分としては、(B)成分の硬化を阻害しないものであれば、制限なく公知のポリマーを使用することができる。このようなポリマーとしては、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルウレタン、ポリビニルブチラール、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)及びそのエポキシ変性体、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)及びその変性体、NBR(アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)及びその水素化体等を用いることができる。(C)成分は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。これらのポリマーは、シロキサン結合又はフッ素置換基を有していていもよい。このようなポリマーは、混合する樹脂同士が完全に相溶する状態、又は、ミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば接着剤組成物として好適に用いることができる。
【0052】
(C)成分の重量平均分子量は、特に制限されないが、下記の範囲であることが好ましい。(C)成分の重量平均分子量は、フィルム形成性が容易に向上する観点、及び、接着剤組成物の流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。(C)成分の重量平均分子量は、(C)成分と他の成分との相溶性を充分に確保できる観点から、150000以下が好ましく、80000以下がより好ましい。(C)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算することにより算出することができる。測定条件としては、例えば下記の条件を用いることができる。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GL-A-160-S+GL-A150
試料濃度:120mg/3ml
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μl
圧力:30kgf/cm2
流量:1.00ml/min
【0053】
(C)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、20~320質量部が好ましい。含有量がこの範囲内である場合、接着剤組成物の流動性及び接着性を充分に確保できる傾向にある。
【0054】
本実施形態に係る接着剤組成物は、(D)導電性粒子を更に含有してもよい。(D)導電性粒子としては、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属、カーボンなどの粒子が挙げられる。(D)導電性粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等の核に上記の金属又はカーボンを被覆した粒子であってもよい。導電性粒子が、プラスチックの核に上記の金属若しくはカーボンを被覆した粒子、又は、熱溶融金属粒子である場合、この導電性粒子は加熱及び加圧により変形するので、接続時に導電性粒子と電極との接触面積が増加し、接続信頼性が向上するので好ましい。(D)導電性粒子は、上記の導電性粒子の表面が高分子樹脂等で更に被覆された被覆粒子であってもよい。被覆粒子は、粒子の配合量が増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性を向上させることができる。被覆粒子は、単独で用いてもよく、高分子樹脂等で被覆されていない導電性粒子と混合して用いてもよい。(D)導電性粒子は、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0055】
(D)導電性粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1~18μmであることが好ましい。(D)導電性粒子の含有量は、特に制限されないが、接着剤組成物全量に対して、0.1~30体積%が好ましく、0.1~10体積%がより好ましい。含有量が0.1体積%以上の場合、導電性が向上する傾向にあり、含有量が30体積%以下の場合、回路の短絡を充分に抑制できる傾向にある。なお、上記の含有量(体積%)は、硬化前の接着剤組成物の23℃における各成分の体積をもとに決定される。各成分の体積は、比重を利用して質量から体積に換算することができる。各成分の体積は、当該成分を溶解又は膨潤させずによく濡らす溶媒(水、アルコール等)が入れられたメスシリンダー等に、当該成分を投入したときの体積の増加分として求めることもできる。
【0056】
本実施形態に係る接着剤組成物は、被着体の腐食を防止することを目的として、金属水酸化物及び金属酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含有することができる。金属水酸化物としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。金属酸化物としては、具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化マンガン及び酸化ジルコニウムからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの金属水酸化物又は金属酸化物は、接着剤組成物への分散性、被着体への接着強度、被着体の腐食防止能に優れる観点から、粒径が10μm以下の粒子状であることが好ましい。
【0057】
金属水酸化物及び金属酸化物の合計の含有量は、(B)成分100質量部に対して、0.1~60質量部が好ましく、1~30質量部がより好ましい。含有量が0.1質量部以上の場合、充分な腐食防止効果が得られ、含有量が60質量部以下の場合、接着剤組成物への充分な分散性を確保できる。
【0058】
本実施形態に係る接着剤組成物は、(B)成分の硬化挙動を制御する目的で、(A)~(C)成分と異なる成分として、鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含有することができる。鎖状エーテル化合物又は環状エーテル化合物としては、1分子中に2個以上のエーテル基を有するものであれば特に制限はなく、公知のものを使用できる。鎖状エーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のポリエチレングリコール;これらのポリエチレングリコールの末端水酸基をエーテル結合又はエステル結合で官能化した誘導体;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等の単官能エポキシの重合体;多官能エポキシの架橋体;単官能又は多官能のオキセタンの重合体;単官能又は多官能のテトラヒドロフランの重合体などが挙げられる。環状エーテル化合物としては、例えば、12-クラウン-4-エーテル、14-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、21-クラウン-7-エーテル、24-クラウン-8-エーテル、30-クラウン-7-エーテル、ベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、トリベンゾ-18-クラウン-6-エーテル等の環状エーテル化合物;ポリエチレングリコールの環化物;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド等の単官能エポキシの重合体の環化物などが挙げられる。鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物のそれぞれは、1種単独で用いてもよく、複数種を併用することもできる。
【0059】
鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物の中でも、反応調節能に優れる観点から、環状エーテル化合物が好ましく、12-クラウン-4-エーテル、14-クラウン-4-エーテル、15-クラウン-5-エーテル、18-クラウン-6-エーテル、21-クラウン-7-エーテル、24-クラウン-8-エーテル、30-クラウン-7-エーテル、ベンゾ-18-クラウン-6-エーテル、ジベンゾ-18-クラウン-6-エーテル及びトリベンゾ-18-クラウン-6-エーテルがより好ましい。
【0060】
鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物の合計の含有量は、(A)成分に対して、0.05~20化学当量であることが好ましく、0.1~10化学当量であることがより好ましい。含有量が0.05化学当量以上の場合、高い接着強度が得られ易くなり、含有量が20化学当量以下の場合、硬化が好適になされ易く、結果として高い架橋密度が得られ易くなる。
【0061】
本実施形態に係る接着剤組成物は、発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、例えば、無機充填剤;強化剤;着色剤;安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤等);増量剤;粘度調節剤;テルペンフェノール共重合体、テルペン樹脂、ロジン誘導体、脂環族系炭化水素樹脂等に代表される粘着付与剤;難燃剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;変色防止剤;抗菌剤;防黴剤;老化防止剤;帯電防止剤;可塑剤;滑剤;発泡剤;離型剤などが挙げられる。
【0062】
着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料等の染料;カーボンブラック、マイカ等の無機顔料;カップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系等の有機顔料などが挙げられる。安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッドアニリド系等の化合物などが挙げられる。無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、銅繊維、真鍮繊維、マグネシウム繊維等の無機繊維;銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金、銀等の金属粉末;木粉;珪酸アルミニウム、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩等の塩;塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩等の塩基性塩;ガラス中空球、ガラスフレーク等のガラス材料;炭化珪素;窒化アルミニウム;タルク、クレイ、ムライト、コージェライト等の鉱物などが挙げられる。
【0063】
本実施形態に係る接着剤組成物は、室温(25℃。以下同じ)で液状である場合には、ペースト状で使用することができる。本実施形態に係る接着剤組成物は、室温で固体である場合には、加熱又は溶剤によりペースト状にして使用してもよい。溶剤としては、接着剤組成物との反応性がなくかつ充分な溶解性を示すものであれば、特に制限はないが、常圧での沸点が50~150℃である溶剤が好ましい。沸点が50℃以上の場合、室温で揮発することを抑制できるため、開放系での使用に好適である。沸点が150℃以下の場合、容易に溶剤を揮発させることができるため、接着後の信頼性を充分に確保できる。
【0064】
本実施形態に係る接着剤組成物は、フィルム状接着剤組成物として好適に用いることができる。フィルム状接着剤組成物は、本実施形態に係る接着剤組成物をフィルム状にしてなる。フィルム状接着剤組成物は、例えば、ペースト状の接着剤組成物をPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の樹脂フィルム上に塗布し、乾燥することによって得られる。
【0065】
本実施形態に係る接着剤組成物は、例えば、加熱処理を行うことにより硬化可能である。加熱温度は、40℃~250℃が好ましく、40℃~180℃がより好ましく、50℃~150℃が更に好ましい。加熱温度が40℃以上であると、硬化速度を充分に確保し易く、加熱温度が250℃以下であると、望まない副反応を抑制できる。加熱時間は、0.1秒~10時間が好ましく、1秒~1時間がより好ましい。加熱時間が0.1秒以上であると、硬化反応を好適に進行させることができ、10時間以下であると、硬化物の生産性を向上させることができると共に、望まない副反応を抑制できる。
【0066】
本実施形態に係る接着剤組成物は、加熱及び加圧を併用して被着体に接着させることができる。加熱温度は、特に制限されないが、50~190℃が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.1~30MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒~120秒間の範囲で行うことが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る接着剤組成物は、同種の被着体同士を接着させる接着剤として使用することが可能であり、また、異種の被着体(例えば、熱膨張係数の異なる被着体)同士を接着させる接着剤として使用することもできる。具体的には、本実施形態に係る接着剤組成物は、異方導電性接着剤;銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続用接着剤、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープなどに代表される半導体素子用接着剤として使用することができる。
【0068】
本実施形態に係る接着剤組成物は、異方導電性を有していてもよい。異方導電性を有する接着剤組成物(異方導電性接着剤)は、例えば、(D)導電性粒子を含有している。異方導電性を有する接着剤組成物は、異方導電性接着剤フィルム(異方導電性を有するフィルム状接着剤組成物)であってもよい。
【0069】
図1は、異方導電性接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、異方導電性接着剤フィルム1は、フィルム状の接着剤成分2と、接着剤成分2中に配置された複数の導電性粒子3とを備えている。
【0070】
異方導電性接着剤フィルム1の厚さは、10~50μmであることが好ましい。異方導電性接着剤フィルム1の厚さが10μm以上であると、回路接続材料として用いられた際、回路接続材料が回路電極間に充分に充填される。異方導電性接着剤フィルム1の厚さが50μm以下であると、回路接続材料として用いられた際、回路接続材料が回路電極間から流出することを抑制できる。
【0071】
本実施形態に係る接着剤組成物は、回路接続用(回路接続材料)として好適に用いられる。以下、導電性粒子3を含有する異方導電性接着剤フィルム1を用いた構造体(接続体、回路接続構造体等)、及び、当該構造体の製造方法の一例について説明する。
【0072】
図2は、構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示すように、構造体10は、相互に対向する第一の回路部材4及び第二の回路部材5と、第一の回路部材4及び第二の回路部材5の間において第一の回路部材4及び第二の回路部材5を接続する回路接続部材6と、を備えている。
【0073】
第一の回路部材4は、第一の回路基板41と、第一の回路基板41の主面41a上に形成された第一の回路電極42とを備えている。なお、第一の回路基板41の主面41a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0074】
第二の回路部材5は、第二の回路基板51と、第二の回路基板51の主面51a上に形成された第二の回路電極52とを備えている。また、第二の回路基板51の主面51a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0075】
第一の回路部材4及び第二の回路部材5としては、電気的接続を必要とする電極が形成された部材であれば特に制限はない。電極が形成された部材(回路部材等)としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機基板;TCP、FPC、COF等に代表されるポリイミド基板;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等のフィルム上に電極を形成した基板;プリント配線板などが用いられ、これらのうちの複数の組み合わせも用いられる。
【0076】
回路接続部材6は、異方導電性接着剤フィルム1の硬化物により形成され、接着剤成分2の硬化物である絶縁性物質7と、導電性粒子3とを含有している。導電性粒子3は、対向する第一の回路電極42と第二の回路電極52との間のみならず、第一の回路基板41の主面41aと第二の回路基板51の主面51aとの間に配置されていてもよい。構造体10においては、第一の回路電極42及び第二の回路電極52が、導電性粒子3を介して電気的に接続されている。すなわち、導電性粒子3が第一の回路電極42及び第二の回路電極52の双方に接触している。
【0077】
構造体10においては、上述したように、対向する第一の回路電極42と第二の回路電極52とが導電性粒子3を介して電気的に接続されている。このため、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の接続抵抗が充分に低減される。したがって、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の電流の流れを円滑にすることが可能であり、第一の回路部材4及び第二の回路部材5が有する機能を充分に発揮させることができる。
【0078】
本実施形態に係る構造体の製造方法は、例えば、電極が形成された二つの基板の前記電極同士を相対向させる工程と、二つの基板の相対向する電極間に異方導電性接着剤フィルムを配置した状態で加熱加圧する圧着工程と、を備える。圧着工程では、異方導電性接着剤フィルムと電極とを接続することにより、異方導電性接着剤フィルムの導電性粒子を介して電極同士を電気的に接続すると共に、異方導電性接着剤フィルムにより基板同士を接着する。
【0079】
次に、
図3を用いて構造体の製造方法について具体的に説明する。
図3は、構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【0080】
まず、第一の回路部材4と、異方導電性接着剤フィルム1とを用意する(
図3(a)参照)。
【0081】
次に、異方導電性接着剤フィルム1を第一の回路部材4の主面41a上に配置する。異方導電性接着剤フィルム1が支持体(図示せず)上に積層されている場合には、当該積層体の異方導電性接着剤フィルム1側を第一の回路部材4に向けるようにして、積層体を第一の回路部材4上に配置する。
【0082】
そして、異方導電性接着剤フィルム1を、
図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、異方導電性接着剤フィルム1を第一の回路部材4に仮接続する(
図3(b)参照)。このとき、加圧と共に加熱を行ってもよい。
【0083】
続いて、
図3(c)に示すように、第一の回路部材4上に配置された異方導電性接着剤フィルム1上に、第二の回路電極52側を第一の回路部材4に向けるようにして(すなわち、第一の回路電極42と第二の回路電極52とが対向配置される状態にして)第二の回路部材5を更に配置する。異方導電性接着剤フィルム1が支持体(図示せず)上に積層されている場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材5を異方導電性接着剤フィルム1上に配置する。
【0084】
そして、異方導電性接着剤フィルム1を加熱しながら、
図3(c)の矢印A及びB方向に加圧する。これにより、異方導電性接着剤フィルム1が硬化され、本接続が行われる。その結果、
図2に示すような構造体10が得られる。
【0085】
上記のようにして得られる構造体10においては、対向する第一の回路電極42及び第二の回路電極52の双方に導電性粒子3を接触させることが可能であり、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の接続抵抗を充分に低減することができる。
【0086】
また、異方導電性接着剤フィルム1を加熱しながら加圧することにより、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の距離を充分に小さくした状態で接着剤成分2が硬化して絶縁性物質7となり、第一の回路部材4と第二の回路部材5とが回路接続部材6を介して強固に接続される。すなわち、構造体10においては、回路接続部材6は、上記接着剤組成物である回路接続材料の硬化物により構成されていることから、第一の回路部材4及び第二の回路部材5に対する回路接続部材6の接着強度が充分に高くなり、特に高温高湿条件下において充分に接着強度が高くなる。また、構造体10では、接着強度が充分に高い状態が長期間にわたって持続される。したがって、構造体10では、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の距離の経時的変化が充分に抑制され、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の電気特性の長期信頼性に優れる。
【0087】
上記実施形態では、取り扱いが容易である異方導電性接着剤フィルム1を用いて構造体10を製造している。このため、第一の回路部材4と第二の回路部材5との間に異方導電性接着剤フィルム1を容易に介在させることが可能であり、第一の回路部材4と第二の回路部材5との接続を容易に行うことができる。但し、異方導電性接着剤フィルム1に代えて、フィルム状ではない接着剤組成物を用いてもよい。この場合でも、接着剤組成物を溶媒に溶解させて得られる溶液を第一の回路部材4及び第二の回路部材5のいずれか一方に塗布し乾燥させることにより、第一の回路部材4及び第二の回路部材5間に接着剤組成物を介在させることができる。
【0088】
本実施形態によれば、回路接続への接着剤組成物の応用が提供される。本実施形態によれば、回路接続用接着剤の製造のための接着剤組成物の応用が提供される。本実施形態によれば、構造体の製造のための接着剤組成物の応用が提供される。
【実施例】
【0089】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
【0090】
[フィルム状接着剤組成物の作製]
(実施例1)
(A)成分としてN-(α-フェニルベンジル)-4-シアノピリジニウム六フッ化アンチモン、(B)成分として脂環式エポキシ化合物(製品名GT401、株式会社ダイセル製)、(C)成分としてフェノキシ樹脂(製品名YP-70、東都化成株式会社製)を混合した。各成分の混合比を表1に示した。また、導電性粒子を8体積%配合分散させて接着剤組成物を得た。導電性粒子としては、ポリスチレンを核とする粒子の表面に厚み0.2μmのニッケル層を設け且つこのニッケル層の外側に厚み0.02μmの金属を設けた平均粒径3μm、比重2.5の導電性粒子を用いた。さらに、塗工装置を用いて厚み40μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに接着剤組成物を塗布し、70℃、5分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤組成物を得た。
【0091】
(実施例2)
(A)成分としてナフチルメチル-2-シアノピリジニウム六フッ化アンチモンを用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
【0092】
(実施例3)
(A)成分としてシンナミル-2-シアノピリジニウム六フッ化アンチモンを用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
【0093】
(実施例4)
(A)成分としてナフチルメチルジメチル(4-ブロモフェニル)アニリニウム六フッ化アンチモンを用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
【0094】
(実施例5)
(A)成分として、下記の方法に従って合成したベンジルジメチルフェニルアンモニウム六フッ化アンチモンを用いた以外は、実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
<ベンジルジメチルフェニルアンモニウム六フッ化アンチモンの合成>
ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライド(6.19g(25mmol)、東京化成工業株式会社製)及びヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(7.11g(27.5mmol)、和光純薬工業株式会社製)の10%水溶液を混合し、1時間攪拌した。減圧下で溶剤を除去し、沈殿物を得た。その沈殿物に少量の水を加えて減圧濾過をし、回収した濾取物を乾燥して固体を得た。得られた固体がベンジルジメチルフェニルアンモニウム六フッ化アンチモンであることを、1H-NMRスペクトル及び19F-NMRスペクトルにより確認した。
【0095】
(実施例6)
(A)成分として、下記の方法に従って合成したベンジルジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(BABF)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
<ベンジルジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(BABF)の合成>
ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライド(6.19g(25mmol)、東京化成工業株式会社製)及びテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートナトリウム10%水溶液(193.19g(27.5mmol)、株式会社日本触媒製)を混合し、1時間攪拌した。減圧下で溶剤を除去し、沈殿物を得た。その沈殿物に少量の水を加えて減圧濾過をし、回収した濾取物を乾燥して固体を得た。得られた固体がベンジルジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(BABF)であることを、1H-NMRスペクトル及び19F-NMRスペクトルにより確認した。
【0096】
(実施例7)
(B)成分としてオキセタン化合物(製品名OXT-121、東亞合成株式会社製)を用いた以外は実施例6と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
【0097】
(実施例8)
(B)成分として脂環式エポキシ化合物(製品名GT401、株式会社ダイセル製)及びオキセタン化合物(製品名OXT-121、東亞合成株式会社製)を用いた以外は実施例6と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表1に示した。
【0098】
(比較例1)
(A’)成分としてスルホニム塩化合物(製品名サンエイドSI-60、三新化学工業株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0099】
(比較例2)
(B)成分としてオキセタン化合物(製品名OXT-121、東亞合成株式会社製)を用いた以外は比較例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0100】
(比較例3)
(B)成分として脂環式エポキシ化合物(製品名GT401、株式会社ダイセル製)及びオキセタン化合物(製品名OXT-121、東亞合成株式会社製)を用いた以外は比較例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0101】
(比較例4)
(A’)成分としてスルホニム塩化合物(製品名サンエイドSI-80、三新化学工業株式会社製)を用いた以外は比較例1と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0102】
(比較例5)
(A’)成分としてスルホニム塩化合物(製品名サンエイドSI-80、三新化学工業株式会社製)を用いた以外は比較例2と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0103】
(比較例6)
(A’)成分としてスルホニム塩化合物(製品名サンエイドSI-80、三新化学工業株式会社製)を用いた以外は比較例3と同様の方法でフィルム状接着剤組成物を得た。各成分の混合比を表2に示した。
【0104】
[DSCの測定]
電子天秤(製品名HR202、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて、各実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤組成物3.0±0.2mgを秤量し、測定試料とした。示差走査熱量測定(DSC)装置(製品名DSC7、PERKIN ELMER社製)を使用し、窒素気流下、測定温度範囲30℃~250℃、昇温速度10℃/分で測定を行い、発熱ピーク温度(硬化温度)を算出した。結果を表1及び2に示した。
【0105】
以上のDSC測定の結果から、実施例1~8及び比較例1~6のいずれの場合にも、発熱ピークが150℃以下であり、接着剤組成物が比較的低温で硬化することがわかる。特に、(A)成分としてCXC-1612又はCXC1821を用いると共に、(B)成分として脂環式エポキシ化合物GT401を用いた実施例5,6,8では、発熱ピークが約100℃であることから比較的低温で硬化することがわかる。また、実施例5,6,8の発熱ピークが、(A’)成分としてスルホニウム塩化合物を用いると共に、(B)成分として脂環式エポキシ化合物GT401を用いた比較例1,3,4,6と同等であることがわかる。
【0106】
[保存安定性の評価]
各実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤組成物の赤外線吸収スペクトルを測定し、(B)成分の官能基(エポキシ基(789cm-1)及びオキセタニル基(979cm-1))由来のピーク面積の合計値と、芳香族基(1610cm-1)由来のピーク面積の合計値との比R0((B)成分の官能基/芳香族基)を算出した。また、各実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤組成物を40℃の恒温装置に1日間放置した。40℃で放置した後のこれらのフィルム状接着剤組成物について、上記と同様に、赤外線吸収スペクトルにおけるピーク面積比Rx((B)成分の官能基/芳香族基)を算出した。下記式(I)によりフィルム状接着剤組成物の硬化率を算出した。結果を表1及び2に示した。
硬化率(%)=(1-Rx/R0)×100 …(I)
【0107】
以上の保存安定性の評価から、(A)成分を用いた実施例1~8では殆ど硬化が進行せずに、保存安定性が良好であることがわかる。一方、比較例1~6のようにスルホニウム塩化合物としてSI-60又はSI-80を用いた場合には、硬化が迅速に進行し、いずれの場合にも保存安定性が不良であることがわかる。
【0108】
【0109】
【0110】
[接続体の作製]
ガラス基板(コーニング#1737、外形38mm×28mm、厚さ0.5mm、表面にITO(酸化インジウム錫)配線パターン(パターン幅50μm、ピッチ50μm)を有するもの)に対して、各実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤組成物を2×20mmの大きさでPETフィルムから転写した。表3及び4に示す実装条件(温度及び時間)において荷重80MPa(バンプ面積換算)をかけて加熱加圧し、ICチップ(外形1.7mm×17.2mm、厚さ0.55mm、バンプの大きさ50μm×50μm、バンプのピッチ50μm)を実装した。また、保存安定性の評価後のフィルム状接着剤組成物を用いて同様に実装した。
【0111】
[接続抵抗の測定]
得られた接続体の隣接回路間の抵抗値(14端子測定した中の最大値)を測定した。結果を表3及び4に示した。
【0112】
実施例1~8のいずれについても、150℃5秒接続での接続抵抗の測定において、保存安定性評価前後で共に10Ω以下と良好な値を示した。また、実施例5,6,8については、130℃5秒接続での接続抵抗の測定においても、保存安定性評価前後で共に10Ω以下と良好な値を示した。一方、スルホニウム塩化合物を用いた比較例1~6では、いずれも保存安定性評価後に接続できなかった。
【0113】
【0114】
【符号の説明】
【0115】
1…異方導電性接着剤フィルム、2…接着剤成分、3…導電性粒子、4…第一の回路部材、5…第二の回路部材、6…回路接続部材、7…絶縁性物質、10…構造体、41…第一の回路基板、42…第一の回路電極、51…第二の回路基板、52…第二の回路電極。