(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】経路探索装置、経路探索方法、及び経路探索プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
G01C21/34
(21)【出願番号】P 2021519188
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019189
(87)【国際公開番号】W WO2020230277
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤田 恭太
(72)【発明者】
【氏名】望月 充
(72)【発明者】
【氏名】松田 治
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 仁志
【審査官】菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096713(JP,A)
【文献】特開2012-189461(JP,A)
【文献】特開2012-159433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得する探索条件取得部と、
リンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報を記憶した経路データ記憶部と、
ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データを記憶した案内文用データ記憶部と、
前記探索条件、及び前記道路ネットワーク情報に基づいて、最短経路を含む経路候補
について、所定のアルゴリズムを適用して、経路長の短い順に経路候補の各々を生成し、
最短経路に対して予め指定した倍率の経路長以下の前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて
、前記指定した倍率の経路長以下の経路候補に含まれる各リンクの長さの和である経路長を低減又は増加するように補正した指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する経路生成部と、
を含む経路探索装置。
【請求項2】
前記指定した倍率の経路長以下の経路候補に含まれる各リンクの長さを、前記リンクに含まれる前記ノードIDにかかる前記種別に対応する係数によって補正することで、前記指標値を算出する
請求項1に記載の経路探索装置。
【請求項3】
前記探索経路に前記値が含まれる場合に、前記探索経路に対応する前記値に関する情報を含む請求項1
又は請求項2に記載の経路探索装置。
【請求項4】
出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、
前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路
について、所定のアルゴリズムを適用して、経路長の短い順に経路候補の各々を生成し、
最短経路に対して予め指定した倍率の経路長以下の前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて
、前記指定した倍率の経路長以下の経路候補に含まれる各リンクの長さの和である経路長を低減又は増加するように補正した指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、
ことを含む処理をコンピュータが実行することを特徴とする経路探索方法。
【請求項5】
出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、
前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路を含む経路候補
について、所定のアルゴリズムを適用して、経路長の短い順に経路候補の各々を生成し、
最短経路に対して予め指定した倍率の経路長以下の前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて
、前記指定した倍率の経路長以下の経路候補に含まれる各リンクの長さの和である経路長を低減又は増加するように補正した指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、
ことをコンピュータに実行させる経路探索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、経路探索装置、経路探索方法、及び経路探索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、スマートフォンなどの地図アプリケーションや歩行者ナビゲーション、カーナビゲーション等に於いて、利用者が目的地に到達するための移動経路を探索し、探索した経路に基づく案内を行う技術がある。経路探索の手法の例として、非特許文献1のダイクストラ法などの最短経路探索アルゴリズムに基づいて出発地から目的地までの経路を探索する技術がある。また、Turn-by-turn形式と呼ばれる、右左折等の動作に応じて「30m先を右に曲がります」といった案内を行う方法がある(例えば、非特許文献2)。
【0003】
また、Turn-by-turn形式の案内文を生成する際に、目印、及び突き当りなどの交差点の形状に関する情報を含めることができる。目印は、例えば、右左折を行う交差点の曲がる方向にあるコンビニエンスストアや郵便局などのPOI(Point of Interest)と呼ばれる情報である。これらの情報を含めることで、「郵便局の角を左に曲がります」といった案内文や、「突き当りを右に曲がります」といった案内文を生成し、利用者が曲がるべき交差点をより判別しやすくする取組みが広く行われている(例えば、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】E. W. Dijkstra “A Note on Two Problems in Connexion with Graphs,” Numerische Mathematik, vol.1, 1959, pp. 269-271, doi:10.1007/BF01386390.
【文献】Kacorri, Hernisa, et al. "Environmental Factors in Indoor Navigation Based on Real-World Trajectories of Blind Users." Proceedings of the 2018 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. ACM, 2018.
【文献】Furukawa H., Nakamura Y. (2013) A Pedestrian Navigation Method for User’s Safe and Easy Wayfinding. In: Kurosu M. (eds) Human-Computer Interaction. Users and Contexts of Use. HCI 2013. Lecture Notes in Computer Science, vol 8006. Springer, Berlin, Heidelberg.
【文献】Yen, Jin Y. "Finding the k shortest loopless paths in a network." management Science 17.11 (1971): 712-716.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1のような最短経路を探索するアルゴリズムを用いて、非特許文献2、及び非特許文献3のように案内文を生成する際に、最短経路に目印となるPOI等が含まれない場合がある。そのため、経路の案内文にもPOI等を含めることができないといった課題があった。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ユーザの利便性が高い案内が可能な経路を探索できる経路探索装置、経路探索方法、及び経路探索プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、経路探索装置であって、出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得する探索条件取得部と、リンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報を記憶した経路データ記憶部と、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データを記憶した案内文用データ記憶部と、前記探索条件、及び前記道路ネットワーク情報に基づいて、最短経路を含む経路候補の各々を生成し、前記経路候補の各々について、前記案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する経路生成部と、を含む。
【0008】
本開示の第2態様は、経路探索方法であって、出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路を含む経路候補の各々を生成し、前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、ことを含む処理をコンピュータが実行することを特徴とする。
【0009】
本開示の第3態様は、経路探索プログラムであって、出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路を含む経路候補の各々を生成し、前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、ユーザの利便性が高い案内が可能な経路を探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の経路探索システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】経路探索装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態における経路データ記憶部のデータベースのテーブルのイメージである。
【
図4】本実施形態における案内文用データ記憶部のデータベースのテーブルのイメージである。
【
図5】経路探索装置による経路探索処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】経路生成処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7】従来手法及び本実施形態の手法の探索経路における目印の関係を比較したイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
以下、本実施形態の構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の経路探索システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、経路探索システム1は、経路探索装置10と、ナビゲーション装置40とを含んで構成されている。経路探索装置10は、探索条件取得部110、経路生成部120、出力部130、経路データ記憶部200、及び案内文用データ記憶部300から構成される。ナビゲーション装置40は、案内文生成部400、及び表示部410から構成される。
【0016】
図2は、経路探索装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、経路探索装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0018】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、経路探索プログラムが格納されている。
【0019】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0020】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0021】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0022】
通信インタフェース17は、端末等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0023】
なお、ナビゲーション装置40も経路探索装置10と同様のハードウェア構成でよいため詳細な説明を省略する。
【0024】
次に、経路探索装置10の各機能構成について説明する。各機能構成は、CPU11がROM12又はストレージ14に記憶された経路探索プログラムを読み出し、RAM13に展開して実行することにより実現される。
【0025】
図3は、本実施形態における経路データ記憶部200のデータベースのテーブルのイメージである。経路データ記憶部200のテーブルでは、交差点などの道路の結節点をノード、道路ネットワークで区切られる1つの道路をリンクとする。道路のIDであるリンクIDをキーとして、当該道路の始点のノードである始点ノードID、終点のノードである終点ノードID、及びリンク(道路)の長さdがそれぞれ参照できるようなデータベースとなっている。これらのリンクの長さdを含む道路ネットワークに関する情報を、以下、道路ネットワーク情報と記載する。以下、道路ネットワーク情報に含まれる各種情報は、経路データ記憶部200に格納されていることを前提に記載する。
【0026】
図4は、本実施形態における案内文用データ記憶部300のデータベースのテーブルのイメージである。案内文用データ記憶部300のデータベースは、案内文用データとして、ノードIDをキーとして、POIや交差点形状等の種別、コンビニ及び丁字路などの値、経路の探索時に案内文の生成に寄与する係数a(以下aを必要な場合を除き省略する)を含む。案内文用データ記憶部300のデータベースは、案内文用データに含まれる情報がそれぞれ参照できるような構成となっている。値は、種別の具体的な目印または特徴を示す対象である。係数は、例えば値が案内に寄与する度合いを示す係数である。種別、値、及び係数については、ナビゲーションの利用シーン及びアプリケーションの目的に応じて自由に設計してよい。例えば、観光名所などのランドマークをPOIとして含めるためには、「種別:POI,値:○○寺,係数:0.4」として追加する。また、交差点が混雑しやすい箇所かどうかを経路生成部120で考慮する目的で「種別:混雑度,値:大,係数:1.5」として追加したりしてもよい。なお、値は説明の便宜のためランドマークの名前、特徴を表記しているが、実際には識別可能な値である。以下、種別、値、及び係数は、案内文用データ記憶部300に格納されていることを前提に記載する。
【0027】
経路探索装置10は、入力として、出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得する。
【0028】
経路生成部120は、探索条件、及び道路ネットワーク情報に基づいて、最短経路を含む経路候補を生成する。経路生成部120は、経路候補の各々について、案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、経路候補の指標値が最短経路の指標値より改善する経路候補を、出力経路として出力する。具体的には、非特許文献4に記載のk-th shortest pathアルゴリズムを適用して、経路長の短い順に経路候補の各々を生成する。また、最短経路に対して予め指定した倍率の経路長以下の経路候補の各々について、案内文用データに含まれる情報に基づいて、経路候補に含まれる各リンクの長さの和である経路長を低減又は増加するように補正した指標値を算出する。
【0029】
なお、ナビゲーション装置40の各処理の詳細については、経路探索装置10の作用の説明の後に説明する。
【0030】
次に、経路探索装置10の作用について説明する。
【0031】
図5は、経路探索装置10による経路探索処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から経路探索プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、経路探索が行なわれる。経路探索装置10は、入力として、探索条件を受け付けて以下の処理を行う。
【0032】
ステップS200で、CPU11は、探索条件の取得処理として、探索条件取得部110において、出発地及び目的地を含む探索条件を取得し、経路生成部120へ出力する。探索条件は、ユーザや外部のシステムから案内する経路を表す。
【0033】
ステップS210で、CPU11は、次に、経路生成処理として、経路生成部120において、経路データ記憶部200から道路ネットワーク情報、及び案内文用データ記憶部300から案内文用データに含まれる情報を取得する。取得した情報に基づいて探索した経路である探索経路s*を生成し、出力部130へ出力する。
【0034】
ステップS220で、CPU11は、探索経路の出力処理として、出力部130において、探索経路s*をナビゲーション装置40に出力する。
【0035】
図6は、経路生成処理の詳細を示すフローチャートである。
図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る経路生成部120の経路生成処理について説明する。以下の処理は、CPU11が経路生成部120として実行する処理である。
【0036】
ステップS300で、CPU11は、探索条件取得部110から出発地及び目的地を含む探索条件を受け付ける。
【0037】
ステップS311で、CPU11は、ステップS300で取得した出発地及び目的地を含む探索条件を用いて、経路データ記憶部200から道路ネットワーク情報を取得する。取得する道路ネットワーク情報は、リンクID、リンクIDにかかる始点ノードID及び終点ノードID、並びにリンクの長さである。
【0038】
ステップS312で、CPU11は、続いて、Yenのアルゴリズム(非特許文献4)などのk-th shortest pathアルゴリズムを用いて、出発地と目的地との間の距離が短い順に、上位K件の経路候補を生成する。この経路候補の集合を、経路候補集合R、k番目に距離の短い経路候補をrkとする。最短経路はr1である。また経路候補集合Rの内、距離が最短となる1番目の最短経路r1を、出力する探索経路の暫定解s*とする(s*=r1)。このKの値は、5や10といった小さな値を設定すれば性能の低い計算機であっても実用的な計算時間となり、100や1000といった大きな値を設定すれば、より幅広く良い結果を探索することができる。
【0039】
ステップS320で、CPU11は、kの値(k=1,...,K)を設定する。ここでは、最短の経路候補である1を除く2から順に設定するようにすればよい。ループが完了するまで、すなわちk=Kとなるまで以下の処理を繰り返す。
【0040】
ステップS321で、CPU11は、経路候補集合Rの経路それぞれについて、まず経路rkの距離dist(rk)が、最短経路r1のw倍以下となっているかを以下(1)式のように比較して判断する。
【0041】
dist(rk)≦dist(r1)*w ・・・(1)
【0042】
(1)式の条件を満たすのであればステップS322へ移行する。満たさなければステップS330へ移行する。
【0043】
これにより、以降の処理によって経路候補の指標値が良い値であっても、最短路r1と比べて著しく移動距離が長くなってしまうような探索経路が出力されるのを避けることができる。また、経路候補集合Rの経路候補rkが距離順にソートされていることを用いて、不要な探索を打ち切ることで処理を高速化することができる。このwの値は応用例に応じて決めることができ、歩行者向けのナビゲーションアプリに組込む場合は、例えば1≦w≦2の間の1.5を設定する。
【0044】
ステップS322で、CPU11は、案内文用データ記憶部300から、当該経路rkについての案内文用データに含まれる情報(種別、値、及び係数)を取得する。
【0045】
ここで、案内文用データに含まれる情報に関して定義する。経路候補rkに含まれるノードのノードIDの集合をVk、リンクIDの集合をEkとし、各ノードIDをv∈Vk、各リンクIDをe∈Ekとする。始点ノードをiとし、リンクIDの集合Ekに含まれるリンクeiの始点ノードの集合をIk、リンクeiに含まれる始点ノードに対応する係数をai、リンクIDの集合Ekのリンクeiの長さをdiとする。そのためステップS322では、始点ノードの集合Ikに対応する種別、値、及び係数aiを取得すればよい。
【0046】
ステップS323で、CPU11は、取得したPOI等に関する情報(種別、値、及び係数)に基づいて、経路候補r
kの指標値score(r
k)を算出する。ここで、ノードIDのvのすべての種別における係数の和をa
vとする。a
vは
図4の案内文用データ記憶部300のノードIDがv=1000の場合であれば、POI:コンビニの係数a=0.1、交差点形状:丁字路の係数a=0.3であるためa
1000=0.1+0.3=0.4となる。また、指標値score(r
k)は、例えば各リンクの長さdをノードIDであるvに含まれる種別の係数の和a
vで割引いた値として定義する場合、以下(2)式を用いることができる。ここで、max()は値の最大値を取得する関数、θはリンクの長さを割引く際の閾値であり0<θ<1の値として例えば0.5を用いる。
【0047】
score(rk)=Σidi*max((1-ai),θ) ・・・(2)
【0048】
ステップS324で、以下(3)式に従って、(2)式で算出した指標値score(rk)と、暫定解s*の指標値score(s*)を比較する。上記(2)式は経路長を低減させる指標値とする場合の式であるが、経路長を増加させる指標値とする場合にはaiを加算する等の式にすればよい。
【0049】
score(rk)<score(s*) ・・・(3)
【0050】
(3)式の条件を満たすのであればステップS325へ移行する。満たさなければループの繰り返しにより、k=KとなるまでステップS320で次のkを設定して処理を繰り返す。
【0051】
ステップS325で、CPU11は、指標値が改善したとして、暫定解s*をrkで更新する。更新後は、ループの繰り返しにより、k=KとなるまでステップS320で次のkを設定して処理を繰り返す。このように、ステップS321でループを抜けるか、k=Kとなるまで繰り返す。
【0052】
ステップS330で、CPU11は、s*を探索の結果得られた探索経路として出力部130に出力して処理を完了する。探索経路s*には、少なくとも経路の生成に必要なリンクID及びノードIDが含まれる。
【0053】
次に、本実施形態に係るナビゲーション装置40の案内処理について説明する。案内文生成部400は、出力部130から出力された探索経路s*を取得する。また、案内文生成部400は、探索経路s*に含まれるノードIDから、案内文用データ記憶部300を参照し、該当するノードIDの値の情報を取得して、案内情報を生成する。具体的な例を説明する。例えば、探索経路s*に含まれるノードIDが交差点の付近のノードで、ノードの付近にコンビニがあったとする。ノードIDをキーとして、種別の「POI」、値の「コンビニ」を取得し、案内情報として、取得した種別及び値に関する情報を生成する。
【0054】
図7は、従来手法及び本実施形態の手法の探索経路における目印の関係を比較したイメージを示す図である。
図7の例では、従来手法の一般的な経路探索アルゴリズムを用いた場合、探索経路の例の破線部のような、最短経路であるがPOIが含まれない交差点を曲がる探索経路が表示される。一方で、本実施形態の手法では実線部で示すような案内文に必要なPOIを含んだ探索経路を表示できるようになる。
【0055】
従来手法の案内情報としては、例えば「コンビニの角を右折します」といった案内文を生成する。また本実施形態の探索経路について、従来手法で一般的なTurn-by-turn形式の案内文では、「最初の交差点を右折します。」のような文を生成する。しかし、本実施形態では「最初の交差点で、天ぷら屋さんとコンビニの間を右折します。」のような文を生成できるようになる。案内文生成部400は、生成した案内情報を表示部410により表示する。
図7の例で、本実施形態の手法で表示される案内文は、「1.最初の交差点で、てんぷら屋さんとコンビニとの間を右折します。2.学校がある突き当たりまで進み、左折します。3.目的地まで直進します。」となる。このような案内を可能とするために、1.の案内で右折した道路のリンクのノードのノードIDには、案内文用データ記憶部300の値に「てんぷら屋さん」及び「コンビニ」が対応付けられており、それぞれに有効な係数が与えられた設定が与えられているとする。これにより、案内文生成部400の取得時に閾値以上の係数の値となっている値を参照したり、予め探索情報s
*に有効な係数を持つ値に関する情報を含める等しておくことで、適切な案内情報の生成が可能となる。このように、本実施形態の手法により、最短経路を出力するだけでは実現できなかった、ユーザの目印となるランドマークを含んだ案内が可能となる。
【0056】
以上説明したように本実施形態の経路探索システムによれば、ユーザの利便性が高い案内が可能な経路を探索できる。また、ユーザの利便性の高い探索経路の案内情報を表示できる。
【0057】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した経路探索を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、経路探索を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0058】
また、上記各実施形態では、経路探索プログラムがストレージ14に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0059】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0060】
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路を含む経路候補の各々を生成し、前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、
ように構成されている経路探索装置。
【0061】
(付記項2)
出発地及び目的地を含む経路を探索するための探索条件を取得し、前記探索条件と、記憶されているリンクID、リンクの始点及び終点のノードID、並びにリンクの長さを含む道路のネットワークに関する道路ネットワーク情報とに基づいて、最短経路を含む経路候補の各々を生成し、前記経路候補の各々について、ノードIDにかかる種別、前記種別に関する値、及び前記値に関する係数を含む案内文用データに含まれる情報に基づいて指標値を算出し、前記経路候補の前記指標値が前記最短経路の前記指標値より改善する経路候補を、探索経路として出力する、
ことをコンピュータに実行させる経路探索プログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【符号の説明】
【0062】
1 経路探索システム
10 経路探索装置
40 ナビゲーション装置
110 探索条件取得部
120 経路生成部
130 出力部
200 経路データ記憶部
300 案内文用データ記憶部
312 ステップ
324 ステップ
330 ステップ
400 案内文生成部
410 表示部