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特許7173400無線通信システム、無線制御方法及び無線基地局装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線制御方法及び無線基地局装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20221109BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20221109BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20221109BHJP
【FI】
H04W72/04 132
H04W16/26
H04W72/04 131
H04W16/28
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022508699
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011946
(87)【国際公開番号】W WO2021186608
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
【審査官】大濱 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-510338(JP,A)
【文献】杉原 裕一郎 Yuichiro Sugihara,ミリ波 Massive Relay MIMO を用いたセルラネットワークの検討,電子情報通信学会2019年通信ソサイエティ大会講演論文集1 PROCEEDINGS OF THE 2019 IEICE COMMUNICAT,2019年09月13日,p.1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直交周波数分割多重(OFDM)方式による無線通信を行う無線基地局装置と、
到来波の再放射方向を前記無線基地局装置から動的に制御可能な複数の動的制御中継器と、
前記動的制御中継器を介した又は介さない複数の伝搬パスを用いて、前記無線基地局装置との間で無線通信を行う無線端末装置と、
を備え、
前記無線基地局装置と前記無線端末装置との間で、前記動的制御中継器を介した前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合、前記動的制御中継器を介さない前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合に使用する第1のOFDMサブキャリア間隔よりも狭い間隔である第2のOFDMサブキャリア間隔が使用される、
無線通信システム。
【請求項2】
前記動的制御中継器を介した前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合に、予め決められた条件を満たさないときには、前記第1のOFDMサブキャリア間隔が使用される、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線基地局装置は、前記無線端末装置に応じて前記複数の動的制御中継器のなかから使用する動的制御中継器を選択し、
前記予め決められた条件は、前記選択された動的制御中継器が前記第2のOFDMサブキャリア間隔を用いるべき中継器であることであり、
前記予め決められた条件を満たす場合には、前記第2のOFDMサブキャリア間隔として、前記選択された動的制御中継器に対応するOFDMサブキャリア間隔が使用される、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記予め決められた条件は、前記無線基地局装置と前記複数の動的制御中継器それぞれとの間の最長距離が予め決められた閾値距離以上であることである、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記予め決められた条件は、前記複数の動的制御中継器のなかにアクティブ装置が含まれることである、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線基地局装置は、前記無線端末装置に応じて前記複数の動的制御中継器のなかから使用する動的制御中継器を選択し、前記選択された複数の動的制御中継器を経由する前記複数の伝搬パスそれぞれについての経路を推定し、
前記予め決められた条件は、前記推定した経路のなかの最大長が予め決められた閾値経路長以上であること、または、前記推定した経路のなかの最大長と最小長との差が予め決められた閾値長さ以上であることである、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
無線基地局装置と到来波の再放射方向を動的に制御可能な複数の動的制御中継器とを備え、前記無線基地局装置が無線端末装置との間で前記動的制御中継器を介した複数の伝搬パスを用いて、直交周波数分割多重(OFDM)方式による無線通信を行う無線通信システムにおける無線制御方法であって、
前記無線基地局装置において、無線通信を行うべき前記無線端末装置に応じて、前記複数の動的制御中継器のなかから前記複数の伝搬パスを用いる前記無線通信に使用する動的制御中継器を選択し、
前記無線基地局装置において、前記OFDM方式による前記無線通信に使用するOFDMサブキャリア間隔として、前記動的制御中継器を介さない前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合に使用する第1のOFDMサブキャリア間隔よりも狭い間隔である第2のOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する、
無線制御方法。
【請求項8】
無線基地局装置と到来波の再放射方向を動的に制御可能な複数の動的制御中継器とを備え、前記無線基地局装置が無線端末装置との間で前記動的制御中継器を介した複数の伝搬パスを用いて、直交周波数分割多重(OFDM)方式による無線通信を行う無線通信システムにおける無線基地局装置であって、
無線通信を行うべき前記無線端末装置に応じて、前記複数の動的制御中継器のなかから前記複数の伝搬パスを用いる前記無線通信に使用する動的制御中継器を選択する中継器制御部と、
前記OFDM方式による無線通信に使用するOFDMサブキャリア間隔として、前記動的制御中継器を介さない前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合に使用する第1のOFDMサブキャリア間隔よりも狭い間隔である第2のOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定するサブキャリア間隔選択部と、
を備える、無線基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、無線通信システム、無線制御方法及び無線基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線アクセスの高速大容量化のため、広帯域を確保可能な高周波数帯を活用することが注目されている。例えば、第5世代移動通信システムでは28GHz帯を用いて、また、無線LAN(Local Area Network)規格であるIEEE802.11ad(ミリ波無線LANシステム)では60GHz帯を用いて、高速大容量化が実現されている。
【0003】
高周波数帯は、低周波数帯と比較して電波減衰が大きく、また回折しづらい電波特性を有する。そのため、高周波数帯では、伝送距離が短いことや遮蔽により受信品質が大きく劣化することが課題となっている。
【0004】
電波減衰を補償するため、送受信局において多素子アンテナを用いたビームフォーミングが有効である。ビームフォーミング利得により電波減衰が補償され、伝送距離が延ばされことができる。ビームフォーミングでは、送受信局双方において特定の方向からの電波が強く送受信されるため、受信局では、電力の高い1つの伝搬パスが主に受信されることになる。その結果、空間多重数は1(もしくは、偏波多重により2)にとどまり、また、同一信号を受信することによる空間ダイバーシチ効果も得づらい。
【0005】
一方、遮蔽や見通し外における受信品質の劣化を改善するためには、多数の送信点を設置する方法がある。例えば、多くの送信アンテナが設置されることにより、遮蔽や見通し外となる範囲が少なくされることができる。また、この構成は、上述のビームフォーミングにおける課題を解決することも可能である。しかし、多数の送信アンテナを設置することは、ネットワークコストの増加や設置場所の不足を招くという課題がある。
【0006】
多数の送信点を設けるという観点では、より低コストかつ設置規模や制約の小さい反射板やリピータなどの活用も有効である。従来、これらの機器では、動的な制御が難しかった。しかし、近年、メタサーフェスを用いて反射方向を動的に制御する反射板やビームフォーミングが可能なリピータなども開発可能となったことから、これらの機器を活用して遮蔽や見通し外の範囲を小さくしつつ、空間多重化や空間ダイバーシチ利得を得る方法が実現できる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】杉原 裕一郎、阪口 啓、“ミリ波 Massive Relay MIMO を用いたセルラネットワークの検討”2019 年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-5-54、2019年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
動的に制御可能な反射板やリピータである動的制御中継器を多数設置し、送信局からの信号を複数の動的制御中継器が中継することにより、送受信局間でビームフォーミングを行う場合でも複数の伝搬経路つまり伝搬パスを形成することができる。送受信局は、各伝搬パスの状態を把握しつつ送受信信号処理を行うことにより、空間多重数3以上の空間多重化や、伝搬パス選択またはすべての伝搬パスの合成受信による空間ダイバーシチ利得を得ることができる。
【0009】
ところで、高周波数帯を用いる第5世代移動通信システムやミリ波無線LANシステムでは、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が用いられている。OFDM方式では、遅延波対策として、OFDMシンボル間にサイクリックプリフィクス(CP:Cyclic Prefix)と呼ばれるガード区間が挿入され、遅延波によるOFDMシンボル間干渉を除去している。CP長は、システムが想定するシナリオとCP挿入によるオーバーヘッドによる特性劣化を考慮し、適当なCP長がシステムの標準規格等で規定される。例えば、第5世代移動通信システムでは、OFDMシンボル長の約7%のCP長を挿入することを想定している。
【0010】
CP長を超える遅延波を受信した場合、OFDMシンボル間干渉を除去しきれず通信品質が劣化してしまうため問題となる。上述した動的制御中継器により多数の伝搬パスを形成する場合、通常よりも大きい伝搬遅延を有する伝搬パスの発生が想定される。例えば、複数の動的制御中継器を経由した伝搬パスは、送受信局間の直接パスに比べて大きな経路差遅延となる。また、動的制御中継器としてリピータを用いる場合は、リピータ内の増幅処理等による処理遅延が付加されることになる。多数の伝搬パスを合成受信する場合、CP長を超える遅延の伝搬パスが含まれる可能性が高まるうえ、メタサーフェスによる位相制御、リピータの増幅処理やビームフォーミング制御によって、電力が比較的大きい遅延波を受信する可能性もある。
【0011】
特に、第5世代移動通信システムで規定される高周波数帯では、位相雑音等の影響を考慮してOFDMサブキャリア間隔を広げた信号が用いられる。OFDM信号帯域幅が一定の仮定の下で、OFDMサブキャリア間隔を広げる(すなわち、OFDMサブキャリア数を少なくする)と、OFDMサブキャリア幅が広がり、一次変調信号をより広い周波数帯域で伝送できるため、OFDMサブキャリア信号のシンボル長は短くなる。OFDM信号は各OFDMサブキャリア信号の重ね合わせであるため、OFDMサブキャリア信号のシンボル長が短くなれば、結果的にOFDMシンボル長も短くなる。このように、OFDMサブキャリア間隔に比例して、OFDMシンボル長は短くなる。第5世代移動通信システムでは、CP長によるオーバーヘッドを考慮し、OFDMシンボル長に対するCP長の比率は、すべてのOFDMサブキャリア間隔のオプションについて基本的には一定としている。そのため、もし高周波数帯において動的制御中継器により多数伝搬パスが発生されると、CP長を超える遅延波の影響により、これがかえってシステム全体の性能を劣化させてしまうことも考えられる。
【0012】
なお、長遅延波を想定して通常のCP長よりも長い拡張CP長が規定される場合もある。拡張CP長を用いることで上記課題を解決し得るが、常に拡張CP長を用いることはオーバーヘッドの観点から好ましくない。
【0013】
また、ユーザ毎に遅延波の影響が異なることも考えられる。そのような場合、ユーザ毎にCP長を制御する必要も生じる。
【0014】
この発明は、複数の動的制御中継器を用いて発生させる多数の伝搬パスを用いて送受信を行う無線通信システムにおいて、ユーザ毎に遅延波の影響が異なる場合であっても、システム全体の効率を低下させることなく、OFDMシンボル間干渉の発生を抑制することができ、無線通信品質の劣化の低減が可能となる技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、この発明の一態様に係る無線通信システムは、直交周波数分割多重(OFDM)方式による無線通信を行う無線基地局装置と、到来波の再放射方向を前記無線基地局装置から動的に制御可能な複数の動的制御中継器と、前記動的制御中継器を介した又は介さない複数の伝搬パスを用いて、前記無線基地局装置との間で無線通信を行う無線端末装置と、を備え、前記無線基地局装置と前記無線端末装置との間で、前記動的制御中継器を介した前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合、前記動的制御中継器を介さない前記複数の伝搬パスを用いて前記無線通信を行う場合に使用する第1のOFDMサブキャリア間隔よりも狭い間隔である第2のOFDMサブキャリア間隔が使用される。
【発明の効果】
【0016】
この発明の一態様によれば、複数の動的制御中継器を用いる又は用いない多数の伝搬パスを用いて送受信を行う無線通信システムにおいて、複数の動的制御中継器を用いる場合には、複数の動的制御中継器を用いない場合よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することにより、ユーザ毎に遅延波の影響が異なる場合であっても、システム全体の効率を低下させることなく、OFDMシンボル間干渉の発生を抑制することができ、無線通信品質の劣化の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る無線通信システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る無線基地局装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、第1実施形態に係る無線基地局装置として機能するコンピュータの構成の一例を示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態における無線端末装置が備える無線送信に係わるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、この発明の第2実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、この発明の第3実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、この発明の第4実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、この発明の第5実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、この発明の第6実施形態に係る無線基地局装置のサブキャリア間隔選択部におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明に係わる実施形態を説明する。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、この発明の第1実施形態に係る無線通信システム1の構成の一例を示す模式図である。図1に記載の無線通信システム1では、無線基地局装置2を送信局、無線端末装置3を受信局とした例を記載している。通信開始後はこの送受信局の関係が逆になること、すなわち、無線基地局装置2が受信局、無線端末装置3が送信局となる場合もある。
【0020】
図1に記載の無線通信システム1では、送信局と受信局の間の無線チャネル内に、動的制御中継器4が設置される。設置される動的制御中継器4の数は、任意に決めてよい。各動的制御中継器4は、例えば、反射板またはリピータである。これらの動的制御中継器4は、機械的に移動や回転をすること、または電気的に位相や振幅を制御することにより、到来波を任意の方向に再放射することができる。図1は、無線基地局装置2から無線端末装置3へ、動的制御中継器4を介さない伝搬パスPA1と、動的制御中継器4を介した3つの伝搬パスPA2,PA3,PA4と、が発生されている例を示している。伝搬パスは、伝搬パスPA3のように、複数の動的制御中継器4を用いて発生される場合もある。
【0021】
無線基地局装置2は、中継器制御部5と無線通信機6とを含む。各動的制御中継器4は、再放射方向の制御のために、有線または無線通信により、無線基地局装置2の中継器制御部5と接続される。中継器制御部5は、動的制御中継器4のなかから無線伝送に用いる動的制御中継器4並びにその再放射方向の情報を決定し、各動的制御中継器4に通知する機能を有する。また、中継器制御部5は、動的制御中継器4の状態や動的制御中継器4が得られる情報を収集する機能を有する。ここで、動的制御中継器4が得られる情報とは、例えばセンシング機能を有する動的制御中継器4が自身のセンシング機能により取得した情報、を意味する。センシング機能により取得した情報とは、例えば、GPS(Global Positioning System)センサ等により取得した位置情報、ジャイロセンサ等により取得した動的制御中継器4の設置角度、等である。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る無線基地局装置2のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。上述の通り、無線基地局装置2は、中継器制御部5と無線通信機6とを含む。
【0023】
中継器制御部5は、上述の通り、無線伝送に用いる動的制御中継器4や再放射方向の情報を決定し、各動的制御中継器4に通知し、また、動的制御中継器4の状態や動的制御中継器4が得られる情報を収集する。中継器制御部5におけるこれらの決定、通知及び収集動作のタイミング(又は時間スパン)は、任意である。
【0024】
例えば、動的制御中継器4の反射再放射方向を無線端末装置3にピンポイントに合わせていく場合は、中継器制御部5は、無線基地局装置2がビーム制御を実行するタイミングで、上記の無線伝送に用いる動的制御中継器4や再放射方向の情報を決定する。具体例として、ビーム探索を同期信号を用いて実行するときは、上記決定を行うタイミングは、同期信号を送信し、すべてのビーム及びすべての反射再放射方向の組合せの探索を完了するタイミングとなる。このとき、中継器制御部5は、最もよい受信品質となるビーム、動的制御中継器4及び反射再放射方向が選択されるように、無線伝送に用いる動的制御中継器4や再放射方向の情報を決定する。また、中継器制御部5は、同期信号を送信し、すべてのビームのみの探索をしてもよい。このときは、中継器制御部5は、例えば無線端末装置3の測位結果を用いて動的制御中継器4及び反射再放射方向を決定し、ビーム探索によりビームを決定する。測位結果は、無線基地局装置2での測位にて得られたものでもよいし、無線端末装置3が測位した結果をフィードバックしたものでもよく、測位手法は特に規定しない。
【0025】
また、反射再放射方向は、無線端末装置3に対して合わせる制御のほかに、エリアに合わせてもよい。例えば、動的制御中継器4としてメタマテリアル反射板を用いれば、幅広い方向に電波を反射させることが可能であり、また、動的制御中継器4としてビームフォーミングが可能なリピータを用いれば、ビーム制御を行って広いビーム幅で電波を再放射することができる。この場合、必ずしも無線端末装置3の移動に合わせて動的制御中継器4の反射再放射方向を制御する必要はないため、中継器制御部5は、上記の無線伝送に用いる動的制御中継器4や再放射方向の情報を、数ミリ秒乃至数秒の範囲で、任意に決定してもよいし、日単位で決定してもよい。このとき中継器制御部5が決定の基礎とする情報は、上述した通り無線端末装置3の測位結果であってもよいし、過去の測位結果から得られる無線端末装置3の分布を用いてもよい。あるいは、その決定の基礎として、中継器制御部5は、カメラを用いて現地画像を取得し画像を解析した結果を用いてもよいし、シミュレーションにより得られる電波伝搬情報を用いてもよいし、無線基地局装置2と無線端末装置3との通信の際に得られる受信電力、通信品質、トラヒックの統計情報を用いてもよい。
【0026】
また、動的制御中継器4の配置情報が既知であるという前提であれば、ビームと反射再放射方向が決定されれば、無線基地局装置2から無線端末装置3へ電波が到来するルートが推定できる。よって、中継器制御部5は、その結果から、使用する動的制御中継器4を決定することができる。
【0027】
無線通信機6は、図2に示すように、サブキャリア間隔選択部601、スケジューリング部602、ユーザ情報選択部603、逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)部604、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)部605、CP付加部606、CP除去部607、デジタルアナログ変換器(DAC:Digital to Analog Converter)608、アナログデジタル変換器(ADC:Analog to Digital Converter)609、RF(Radio Frequency)アンテナ部610、及び信号処理部611,612を備える。IFFT部604、FFT部605、CP付加部606、CP除去部607、信号処理部611,612は、対応するOFDMサブキャリア間隔の数分用意される。もしくは、送信信号のOFDMサブキャリア数に対応するFFT(IFFT)ポイントでのFFT(IFFT)処理を切り替えて実行可能なIFFT部604及びFFT部605を用い、単一のCP付加部606、CP除去部607、信号処理部611,612により構成されてもよい。
【0028】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5において決定した無線伝送に用いる動的制御中継器4の情報に基づいて、各ユーザに送信する信号のOFDMサブキャリア間隔を決定する。また、サブキャリア間隔選択部601は、その決定したOFDMサブキャリア間隔を無線端末装置3に通知するために、決定したOFDMサブキャリア間隔の情報を信号処理部611、IFFT部604及びCP付加部606を介して無線信号とし、RFアンテナ部610を介して対象の無線端末装置3に通知する。当該通知は、無線通信システム1における制御チャネルを用いて行ってもよいし、その他のチャネルを用いて行ってもよい。具体的なOFDMサブキャリア間隔の決定方法については、後述する。
【0029】
スケジューリング部602は、サブキャリア間隔選択部601によって決定されたOFDMサブキャリア間隔に基づく信号処理を行うために、上位レイヤから送られてくる各ユーザの情報を振り分け、対応するOFDMサブキャリア間隔の信号を生成する信号処理部611へ出力する。
【0030】
ユーザ情報選択部603は、信号処理部612を経由し復調された信号を、ユーザ毎の信号として上位レイヤに出力する。
【0031】
IFFT部604は、信号処理部611において生成された無線信号にIFFT処理を施し、このIFFT処理を施した無線信号をCP付加部606に出力する。
【0032】
FFT部605は、CP除去部607から出力された無線信号にFFT処理を施し、このFFT処理を施された無線信号を信号処理部612に出力する。
【0033】
CP付加部606は、IFFT部604から出力された無線信号にCPを付加し、このCPを付加された無線信号をDAC608に出力する。なお、CP付加部606の後段にフィルタ部を設けてもよい。
【0034】
CP除去部607は、RFアンテナ部610及びADC609を介して受信された無線信号からCPを除去し、このCPを除去した無線信号をFFT部605に出力する。なお、CP除去部607の前段にフィルタ部を設けてもよい。
【0035】
DAC608は、CP付加部606における処理を経た無線信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して、RFアンテナ部610に出力する。
【0036】
ADC609は、RFアンテナ部610を介して受信した無線信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して、CP除去部607に出力する。
【0037】
RFアンテナ部610は、送信処理として無線信号をシステム帯域にアップコンバージョンする。その後、RFアンテナ部610は、増幅器(Power Amplifier)により電力増幅された信号をアンテナ613を介して放射する。また、RFアンテナ部610の受信処理では、アンテナ613が受信した無線信号を低雑音信号増幅器(Low Noise Amplifier)にて増幅した後に、ダウンコンバージョンする。RFアンテナ部610は、複数のRF部及び複数のアンテナ613を有してもよい。RFアンテナ部610の送受信処理において、可変位相器及び可変利得制御器を用いて、アナログビームフォーミングを形成してもよい。
【0038】
信号処理部611は、送信する無線信号を生成する処理を行い、信号処理部612は、受信した無線信号を復号する処理を行う。当該信号処理部611及び612は、対象とする無線通信システム1で必要なすべての信号の生成及び復号を行う。また、信号処理部611は、サブキャリア間隔選択部601が決定したOFDMサブキャリア間隔の情報に基づき、無線端末装置3に当該OFDMサブキャリア間隔の情報を通知するための無線信号を生成する。
【0039】
無線基地局装置2を構成する中継器制御部5及び無線通信機6の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、などのIC回路によって実現されることができる。例えば、中継器制御部5を一つのASICとし、サブキャリア間隔選択部601、スケジューリング部602、ユーザ情報選択部603、IFFT部604、FFT部605、CP付加部606、CP除去部607、及び信号処理部611,612を一つのASICとすることができる。DAC608及びADC609は一つのICチップとして、またRFアンテナ部610も一つのICチップとして、商業的に入手可能である。また、中継器制御部5及び無線通信機6のうちのデジタル信号の処理部分については、DSP(Digital Signal Processor)で置き換え、DSP内部のソフトウェアによって、その機能を実現するようにしてもよいし、コンピュータとプログラムによって実現するようにしてもよい。
【0040】
図3は、無線基地局装置2として機能するコンピュータの構成の一例を示す模式図である。無線基地局装置2は、図2に示すように、コンピュータデバイスにより構成され、CPU等のプロセッサ201を有する。そして、無線基地局装置2では、このプロセッサ201に対し、プログラムメモリ202と、データメモリ203と、ストレージ204と、入出力インタフェース(図3では入出力IFと記す)205と、通信インタフェース206と、通信装置207とが、バス208を介して接続される。
【0041】
プログラムメモリ202は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、フラッシュメモリ等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このプログラムメモリ202には、プロセッサ201が各種制御処理を実行するために必要なプログラムが格納されている。
【0042】
データメモリ203は、有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、上記の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとが組合せて使用されたものである。このデータメモリ203は、各種処理が行われる過程で取得及び作成された各種データが記憶されるために用いられる。
【0043】
ストレージ204は、非一時的な有形のコンピュータ可読記憶媒体として、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の随時書込み及び読出しが可能な不揮発性メモリを用いた大容量の記憶媒体を有している。このストレージ204には、プロセッサ201が各種制御処理を実行するために必要な各種のプログラムやデータが格納されている。例えば、プロセッサ201が第1実施形態に係る無線基地局装置2としての制御処理を実行するために必要な通信制御プログラムが格納されている。ストレージ204に格納されているプログラムは、必要に応じてプロセッサ201によりデータメモリ203上に読み出されて、実行される。通信制御プログラムは、例えば、プロセッサ201に、図2に示した中継器制御部5、サブキャリア間隔選択部601、スケジューリング部602、ユーザ情報選択部603、IFFT部604、FFT部605、CP付加部606、CP除去部607、及び信号処理部611,612として機能させることができる。なお、通信制御プログラムは、ストレージ204ではなくて、プログラムメモリ202に格納されていてもよい。
【0044】
入出力インタフェース205には、入力部209及び表示部210が接続されている。入力部209及び表示部210は、例えば液晶または有機EL(Electro Luminescence)を使用した表示デバイスの表示画面上に、静電方式または圧力方式を採用した入力検知シートを配置した、いわゆるタブレット型の入力・表示デバイスを用いたものが用いられることができる。また、入力部209及び表示部210は独立するデバイスにより構成されてもよい。入出力インタフェース205は、上記入力部209において入力された操作情報をプロセッサ201に入力すると共に、プロセッサ201で生成された表示情報を表示部210に表示させる。なお、無線基地局装置2として機能するコンピュータは、これら入出力インタフェース205、入力部209及び表示部210は、有しなくてもよい。プロセッサ201への操作情報やプロセッサ201からの表示情報は、通信インタフェース206により、図示しないネットワークを介して送受信されて、ネットワークに接続された入力機器から入力されたり、表示機器で表示されたりすることができる。
【0045】
通信インタフェース206は、例えば一つ以上の有線または無線の通信モジュールを含むことができる。通信インタフェース206は、図示しないネットワークを介して、無線端末装置3のユーザ宛のデータを受信し、また、ユーザからのデータをその宛先に送信する。
【0046】
通信装置207は、図2に示したDAC608、ADC609及びRFアンテナ部610を含むことができる。通信装置207は、RFアンテナ部610であって、DAC608及びADC609を、通信装置207とバス208の間に配置してもよい。通信装置207には、図2に示したアンテナ613であるアンテナ211が接続されている。
【0047】
図4は、無線端末装置3が備える無線送信に係わるハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、無線端末装置3は、サブキャリア間隔選択部301、ユーザ情報選択部303、IFFT部304、FFT部305、CP付加部306、CP除去部307、DAC308、ADC309、RFアンテナ部310、及び信号処理部311,312を備える。
【0048】
サブキャリア間隔選択部301は、無線基地局装置2から通知され、無線端末装置3のユーザ情報選択部303における処理を経て得られたOFDMサブキャリア間隔の情報に基づいて、無線端末装置3が送信する信号のOFDMサブキャリア間隔を決定する。
【0049】
ユーザ情報選択部303は、信号処理部312を経由し復調された信号を、ユーザ毎の信号として上位レイヤに出力する。また、ユーザ情報選択部303は、無線基地局装置2から通知されたOFDMサブキャリア間隔の情報を、サブキャリア間隔選択部301に通知する。
【0050】
IFFT部304は、信号処理部311において生成された無線信号にIFFT処理を施し、このIFFT処理を施した無線信号をCP付加部306に出力する。
【0051】
FFT部305は、CP除去部307から出力された無線信号にFFT処理を施し、このFFT処理を施された無線信号を信号処理部312に出力する。
【0052】
CP付加部306は、IFFT部304から出力された無線信号にCPを付加し、このCPを付加された無線信号をDAC308に出力する。なお、CP付加部306の後段にフィルタ部を設けてもよい。
【0053】
CP除去部307は、RFアンテナ部310及びADC309を介して受信された無線信号からCPを除去し、このCPを除去した無線信号をFFT部305に出力する。なお、CP除去部307の前段にフィルタ部を設けてもよい。
【0054】
DAC308は、CP付加部306における処理を経た無線信号をデジタル信号からアナログ信号に変換して、RFアンテナ部310に出力する。
【0055】
ADC309は、RFアンテナ部310を介して受信した無線信号をアナログ信号からデジタル信号に変換して、CP除去部307に出力する。
【0056】
RFアンテナ部310は、送信処理として無線信号をシステム帯域にアップコンバージョンする。その後、RFアンテナ部310は、増幅器(Power Amplifier)により電力増幅された信号をアンテナ313を介して放射する。また、RFアンテナ部310の受信処理では、アンテナ313が受信した無線信号を低雑音信号増幅器(Low Noise Amplifier)にて増幅した後に、ダウンコンバージョンする。RFアンテナ部310は、複数のRF部及び複数のアンテナ313を有してもよい。RFアンテナ部310の送受信処理において、可変位相器及び可変利得制御器を用いて、アナログビームフォーミングを形成してもよい。
【0057】
信号処理部311は、送信する無線信号を生成する処理を行い、信号処理部312は、受信した無線信号を復号する処理を行う。当該信号処理部311及び312は、対象とする無線通信システム1で必要なすべての信号の生成及び復号を行う。
【0058】
無線端末装置3が備える無線送信に係わるハードウェア構成の少なくとも一部は、ASICやFPGAなどのIC回路によって実現されることができる。例えば、サブキャリア間隔選択部301、ユーザ情報選択部303、IFFT部304、FFT部305、CP付加部306、CP除去部307、及び信号処理部311,312を一つのASICとすることができる。DAC308及びADC309は一つのICチップとして、またRFアンテナ部310も一つのICチップとして、商業的に入手可能である。また、無線送信に係わるハードウェア構成のうちのデジタル信号の処理部分については、DSPで置き換え、DSP内部のソフトウェアによって、その機能を実現するようにしてもよいし、コンピュータとプログラムによって実現するようにしてもよい。
【0059】
図5は、第1実施形態に係る無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0060】
なお、サブキャリア間隔選択部601は、任意のタイミング(時間スパン)で動作することができる。例えば、経由する動的制御中継器4が決まれば、遅延もある程度推定でき、サブキャリア間隔も決定できるため、中継器制御部5によって動的制御中継器4を決定するタイミングで、このフローチャートに示す動作を行ってもよい。
【0061】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS101)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否かを示す通知であってよい。
【0062】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS101のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS102)。
【0063】
これに対して、中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS101のNO)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS103)。
【0064】
当該動作により、当該無線通信システム1において動的制御中継器4を用いることにより生じる遅延波の影響を軽減することができる。
【0065】
なお、無線端末装置3のサブキャリア間隔選択部301におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作についても、動的制御中継器4を用いるか否かの判断を、中継器制御部5からの通知ではなく、ユーザ情報選択部303からの通知に基づいて行うことを除いて、これと同様である。
【0066】
以上のように、第1実施形態では、無線基地局装置2と到来波の再放射方向を動的に制御可能な中継器である複数の動的制御中継器4とを備え、無線基地局装置2が無線端末装置3との間で動的制御中継器4を介した複数の伝搬パスを用いて、OFDM方式による無線通信を行う無線通信システム1において、サブキャリア間隔選択部601は、動的制御中継器4を用いるか否かに応じて、OFDMサブキャリア間隔を変更する。すなわち、サブキャリア間隔選択部601は、動的制御中継器4を介した複数の伝搬パスを用いて無線通信を行う場合には、動的制御中継器4を介さない複数の伝搬パスを用いて無線通信を行う場合に使用する通常のOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。これにより、ユーザ毎に遅延波の影響が異なる場合であっても、システム全体の効率を低下させることなく、OFDMシンボル間干渉の発生が抑制でき、無線通信品質の劣化の低減が可能となる。つまり、伝搬パスの制御とOFDMサブキャリア間隔の制御とを連携して制御することにより、OFDMシンボル間干渉の発生が抑制でき、無線通信品質の劣化の低減が可能となる。さらに、ユーザ毎に遅延波の影響が異なる場合に、ユーザ毎に異なるOFDMサブキャリア間隔となる信号が同一周波数帯に収容され得る。
【0067】
この第1実施形態は、動的制御中継器4を用いるか否かに応じてOFDMサブキャリア間隔を選択しているが、動的制御中継器4の他の制御との連携によって、それを選択してもよい。
【0068】
以下、第2乃至第6実施形態として、動的制御中継器4を用いるかにより、ユーザ毎にOFDMサブキャリア間隔を選択し、伝搬経路つまり伝搬パスの異なる複数ユーザを周波数領域で多重する例を説明する。
【0069】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作が第1実施形態と異なっており、その他の構成及び動作は、上記第1実施形態のそれらと同様である。よって、この第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0070】
図6は、第2実施形態のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0071】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS201)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否か、及び、1つまたは複数の選択された動的制御中継器4の情報、つまり、何れの動的制御中継器4を使用するのかを示す通知であってよい。
【0072】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS201のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、その中継器制御部5から通知された、使用する動的制御中継器4を選択する(ステップS202)。
【0073】
その後、サブキャリア間隔選択部601は、選択されたすべての動的制御中継器4に事前に割り付けられたOFDMサブキャリア間隔情報を参照し、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とするべき動的制御中継器4があるか否か判断する(ステップS203)。
【0074】
ここで、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とするべき動的制御中継器4がないと判断した場合(ステップS203のNO)、サブキャリア間隔選択部601は、上記ステップS202で選択したすべての動的制御中継器4に対して評価したか否か判断する(ステップS204)。未だ評価していない動的制御中継器4があれば(ステップS204のNO)、サブキャリア間隔選択部601は、上記ステップS203の動作に戻る。
【0075】
通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とするべき動的制御中継器4があった場合(ステップS203のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、それらの動的制御中継器4に対するOFDMサブキャリア間隔のなかで最も狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS205)。
【0076】
これに対して、上記ステップS204において選択したすべての動的制御中継器4に対して評価したと判断した場合(ステップS204のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS206)。また、上記ステップS201において中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS201のNO)にも、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する。
【0077】
なお、OFDMサブキャリア間隔の事前割り付けは、動的制御中継器4を設置する際に決定して、サブキャリア間隔選択部601に保存しておくことができる。もしくは、この事前割り付けは、サブキャリア間隔選択部601ではなく、中継器制御部5に保存しておき、上記通知に含めて、使用する動的制御中継器4に割り付けられたOFDMサブキャリア間隔情報を中継器制御部5からサブキャリア間隔選択部601に送信するようにしてもよい。また、動的制御中継器4がGPSセンサやジャイロセンサを有する場合には、定期的に有線もしくは無線を用いて、動的制御中継器4のGPSセンサで取得した位置情報やジャイロセンサで取得した設置角度情報を、動的制御中継器4から無線基地局装置2の中継器制御部5に通知し、中継器制御部5において適切なOFDMサブキャリア間隔を決定し、更新保存してもよい。
【0078】
以上のように、第2実施形態では、サブキャリア間隔選択部601は、事前に中継器毎に割り付けられたOFDMサブキャリア間隔のうち最も狭いOFDMサブキャリア間隔とする。すなわち、サブキャリア間隔選択部601は、動的制御中継器4を介した複数の伝搬パスを用いて無線通信を行う場合、選択された中継器に対応するOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。このように通信パスに応じてOFDMサブキャリア間隔を選択することにより、遅延波の影響を緩和するCP長に動的に切り替える(例えば、OFDMシンボル長に対するCP長の比率が一定となるように切り替える)ことができる。よって、遅延波を考慮した固定的なCP長を用いる場合に比べて、必要以上に長いCP長が用いられることを防ぎ、CPによるオーバーヘッドを軽減することができる。
【0079】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作が第1実施形態と異なっており、その他の構成及び動作は、上記第1実施形態のそれらと同様である。よって、この第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0080】
図7は、第3実施形態のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0081】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS301)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否か、及び、1つまたは複数の選択された動的制御中継器4の情報、つまり、何れの動的制御中継器4を使用するのかを示す通知であってよい。
【0082】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS301のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、その中継器制御部5から通知された、使用する動的制御中継器4を選択する(ステップS302)。
【0083】
その後、サブキャリア間隔選択部601は、選択されたすべての動的制御中継器4と無線基地局装置2との距離を算出する(ステップS303)。なお、この距離を算出する代わりに、事前に算出しておいた距離を参照してもよい。
【0084】
そして、サブキャリア間隔選択部601は、選択された動的制御中継器4と無線基地局装置2との距離のなかで、最も長い距離が予め決められた閾値距離Xm以上であるか否かを判断する(ステップS304)。ここでXは任意の値であり、無線システムが許容できる伝搬遅延から算出してもよい。
【0085】
ここで、最長距離が閾値距離Xm以上であると判断した場合(ステップS304のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、それらの動的制御中継器4に対するOFDMサブキャリア間隔のなかで最も狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS305)。
【0086】
これに対して、上記ステップS304において最長距離が閾値距離Xm以上ではないと判断した場合(ステップS304のNO)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS306)。また、上記ステップS301において中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS301のNO)にも、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する。
【0087】
例えば、無線基地局装置2からの距離が短い動的制御中継器4しか使用されない場合、無線端末装置3において通常のCP長を超える遅延波が受信される可能性は低いため、通常のOFDMサブキャリア間隔を設定しても問題ない。一方、無線基地局装置2からの距離が一定以上長い動的制御中継器4も用いられる場合、無線端末装置3において通常のCP長を超える遅延波が受信される可能性があるため、通常よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を設定する。
【0088】
なお、無線基地局装置2と各動的制御中継器4の間の距離の算出は、動的制御中継器4を設置した際に位置情報をサブキャリア間隔選択部601に登録しておき、その位置情報と無線基地局装置2の位置情報から算出してもよい。もしくは、動的制御中継器4にGPSを設置し、必要に応じて各動的制御中継器4と中継器制御部5とをつなぐ回線を介してサブキャリア間隔選択部601が当該GPS情報を取得して、算出してもよい。
【0089】
以上のように、第3実施形態では、サブキャリア間隔選択部601は、無線基地局装置2と動的制御中継器4との距離に応じたOFDMサブキャリア間隔のうち最も狭いOFDMサブキャリア間隔の使用を決定する。即ち、サブキャリア間隔選択部601は、無線基地局装置2と複数の動的制御中継器4それぞれとの間の最長距離が予め決められた閾値距離Xm以上であるとき、通常よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。このように、通信パスに応じたOFDMサブキャリア間隔を選択することにより、遅延波の影響を緩和するCP長に動的に切り替える(例えば、OFDMシンボル長に対するCP長の比率が一定となるように切り替える)ことができる。よって、遅延波を考慮した固定的なCP長を用いる場合に比べて、必要以上に長いCP長が用いられることを防ぎ、CPによるオーバーヘッドを軽減することができる。
【0090】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作が第1実施形態と異なっており、その他の構成及び動作は、上記第1実施形態のそれらと同様である。よって、この第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0091】
図8は、第4実施形態のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0092】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS401)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否か、及び、1つまたは複数の選択された動的制御中継器4の情報、つまり、何れの動的制御中継器4を使用するのかを示す通知であってよい。
【0093】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS401のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、その中継器制御部5から通知された、使用する動的制御中継器4を選択する(ステップS402)。
【0094】
その後、サブキャリア間隔選択部601は、選択された動的制御中継器4にリピータが含まれているかどうかを判断する(ステップS402)。
【0095】
ここで、リピータが含まれていると判断した場合(ステップS403のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS404)。
【0096】
これに対して、上記ステップS403においてリピータが含まれていないと判断した場合(ステップS403のNO)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS405)。また、上記ステップS401において中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS401のNO)にも、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する。
【0097】
以上のように、第4実施形態では、サブキャリア間隔選択部601は、使用する動的制御中継器4の種類に応じてOFDMサブキャリア間隔を決定する。アクティブ装置であるリピータは、リピータ内の増幅処理等による処理遅延が付加されることで、パッシブ装置である反射板よりも遅延が発生する。そこで、サブキャリア間隔選択部601は、使用する動的制御中継器4のなかにリピータが含まれるときには、通常よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。このようにすることで、動的制御中継器4としてリピータを使用する場合に、リピータ内の増幅処理等により生じる遅延に起因する遅延波の影響を軽減することができる。
【0098】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作が第1実施形態と異なっており、その他の構成及び動作は、上記第1実施形態のそれらと同様である。よって、この第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0099】
図9は、第5実施形態のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0100】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS501)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否か、及び、1つまたは複数の選択された動的制御中継器4の情報、つまり、何れの動的制御中継器4を使用するのかを示す通知であってよい。
【0101】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS501のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、その中継器制御部5から通知された、使用する動的制御中継器4を選択する(ステップS502)。
【0102】
その後、サブキャリア間隔選択部601は、各伝搬パスにおいて中継される動的制御中継器4の台数、つまり各伝搬パスが経由する動的制御中継器4の台数を算出する(ステップS503)。なお、ここで台数を算出する代わりに、事前に算出しておいた台数を参照してもよい。
【0103】
そして、サブキャリア間隔選択部601は、算出された動的制御中継器4の台数のなかで、最大数が予め決められた閾値台数N台以上であるか否か、つまり、最も多くの動的制御中継器4を使用する伝搬パスは最大N台以上の動的制御中継器4を経由するか否かを判断する(ステップS504)。
【0104】
ここで、閾値台数N台以上の動的制御中継器4を経由すると判断した場合(ステップS504のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS505)。
【0105】
これに対して、上記ステップS504において最大N台以上の動的制御中継器4を経由しないと判断した場合(ステップS504のNO)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS506)。また、上記ステップS501において中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS501のNO)にも、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する。
【0106】
中継する動的制御中継器4の数が多いほど伝搬パスが長くなるため、当該伝搬パスは遅延波になる可能性がある。よって、サブキャリア間隔選択部601は、中継する動的制御中継器4の数が一定以上である場合には、通常より狭いOFDMサブキャリア間隔を設定し、そうでない場合には通常のOFDMサブキャリア間隔を設定する。
【0107】
以上のように、第5実施形態では、サブキャリア間隔選択部601は、経由する動的制御中継器4の数に応じてOFDMサブキャリア間隔を決定する。即ち、サブキャリア間隔選択部601は、選択された動的制御中継器4を使用する複数の伝搬パスそれぞれについての経路を推定し、経路の最大長が予め決められた閾値経路長以上であれば、つまり、伝搬パスが経由する動的制御中継器4の台数が閾値台数N台以上であれば、通常よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。これにより、当該無線通信システム1において動的制御中継器4を用いることにより生じる遅延波の影響を軽減することができる。
【0108】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る無線通信システム1は、無線基地局装置2のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作が第1実施形態と異なっており、その他の構成及び動作は、上記第1実施形態のそれらと同様である。よって、この第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、その他の説明は省略する。
【0109】
図10は、第6実施形態のサブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作の一例を示すフローチャートである。サブキャリア間隔選択部601は、ユーザ毎つまり無線端末装置3毎に、OFDMサブキャリア間隔を決定するために、このフローチャートに示すような動作を実施する。無線基地局装置2をコンピュータで構成する場合、通信制御プログラムを実行することで、プロセッサ201は、このフローチャートに従った処理動作を実施し、サブキャリア間隔選択部601として機能することができる。
【0110】
サブキャリア間隔選択部601は、中継器制御部5から、動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から対象ユーザの無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されているか否かを判断する(ステップS601)。中継器制御部5からの通知は、動的制御中継器4を用いるか否か、及び、1つまたは複数の選択された動的制御中継器4の情報、つまり、何れの動的制御中継器4を使用するのかを示す通知であってよい。
【0111】
中継器制御部5からそのような通知がなされていると判断した場合(ステップS601のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、その中継器制御部5から通知された、使用する動的制御中継器4を選択する(ステップS602)。
【0112】
その後、サブキャリア間隔選択部601は、各伝搬パスにおいて中継される動的制御中継器4の数、つまり各伝搬パスが経由する動的制御中継器4の数を算出する(ステップS603)。なお、ここで算出する代わりに、事前に算出しておいた数を参照してもよい。
【0113】
そして、サブキャリア間隔選択部601は、算出された動的制御中継器4の数のなかで、最大値と最小値とを比較し、その差が予め決められた数M台以上であるか否かを判断する(ステップS604)。
【0114】
ここで、各伝搬パスにおいて経由する動的制御中継器4の数の最大値と最小値の差がM台以上であると判断した場合(ステップS604のYES)には、サブキャリア間隔選択部601は、通常使用するOFDMサブキャリア間隔よりも狭いOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS605)。
【0115】
これに対して、上記ステップS604において各伝搬パスにおいて経由する動的制御中継器4の数の最大値と最小値の差が予め決められた閾値台数M台以上ではないと判断した場合(ステップS604のNO)には、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する(ステップS606)。また、上記ステップS601において中継器制御部5から動的制御中継器4を用いて無線基地局装置2から無線端末装置3に無線伝送する決定が通知されていないと判断した場合(ステップS601のNO)にも、サブキャリア間隔選択部601は、用いるOFDMサブキャリア間隔を、通常のOFDMサブキャリア間隔とすることを決定する。
【0116】
経由する動的制御中継器4の数が多いほど伝搬パスが長くなるため、当該伝搬パスは遅延波になる可能性がある。一方で、経由する動的制御中継器4数が多かったとしても、すべての伝搬パスにおいて動的制御中継器4の数が同程度であれば、遅延波として受信されない場合がある。この場合、動的制御中継器4の数のみによってOFDMサブキャリア間隔を設定すると不要なオーバーヘッドが生じてしまうことがある。そこで、サブキャリア間隔選択部601は、各伝搬パスにおいて経由する動的制御中継器4の数の最大値と最小値の差分が一定以上である場合に、通常より狭いOFDMサブキャリア間隔を設定し、そうでない場合には通常のOFDMサブキャリア間隔を設定する。
【0117】
以上のように、第6実施形態では、サブキャリア間隔選択部601は、各伝搬パスが経由する動的制御中継器4の数の最大値と最小値の差に応じてOFDMサブキャリア間隔を決定する。即ち、サブキャリア間隔選択部601は、選択された動的制御中継器4を使用する複数の伝搬パスそれぞれについての経路を推定し、経路の最大長と最小長との差が予め決められた閾値長さ以上であれば、つまり、伝搬パスが経由する動的制御中継器4の最大台数と最小台数との差が閾値台数M台以上であれば、通常よりも狭いOFDMサブキャリア間隔を使用することを決定する。これにより、必要以上に異なるOFDMサブキャリア間隔を用いることを防ぎ、不要なオーバーヘッドを軽減することができる。
【0118】
[その他の実施形態]
以上のように第2乃至第6実施形態として説明した、サブキャリア間隔選択部601におけるOFDMサブキャリア間隔決定処理動作は、少なくとも2つを組合せて用いてもよい。
【0119】
また、各実施形態に記載した各手法は、計算機(コンピュータ)に実行させることができるプログラム(ソフトウェア手段)として、例えば磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD、MO等)、半導体メモリ(ROM、RAM、フラッシュメモリ等)等の記録媒体に格納し、また通信媒体により伝送して頒布することもできる。なお、媒体側に格納されるプログラムには、計算機に実行させるソフトウェア手段(実行プログラムのみならずテーブル、データ構造も含む)を計算機内に構成させる設定プログラムをも含む。本装置を実現する計算機は、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、また場合により設定プログラムによりソフトウェア手段を構築し、このソフトウェア手段によって動作が制御されることにより上述した処理を実行する。なお、本明細書でいう記録媒体は、頒布用に限らず、計算機内部あるいはネットワークを介して接続される機器に設けられた磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶媒体を含むものである。
【0120】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態で説明した構成は可能な限り適宜組合せて実施してもよく、その場合、組合せた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0121】
1…無線通信システム
2…無線基地局装置
3…無線端末装置
4…動的制御中継器
5…中継器制御部
6…無線通信機
201…プロセッサ
202…プログラムメモリ
203…データメモリ
204…ストレージ
205…入出力インタフェース
206…通信インタフェース
207…通信装置
208…バス
209…入力部
210…表示部
211,313,613…アンテナ
301,601…サブキャリア間隔選択部
303,603…ユーザ情報選択部
304,604…IFFT部
305,605…FFT部
306,606…CP付加部
307,607…CP除去部
308,608…DAC
309,609…ADC
310,610…RFアンテナ部
311,312,611,612…信号処理部
PA1,PA2,PA3,PA4…伝搬パス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10