(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
F24F 3/00 20060101AFI20221109BHJP
F24T 10/20 20180101ALI20221109BHJP
【FI】
F24F3/00 B
F24T10/20
(21)【出願番号】P 2018152611
(22)【出願日】2018-08-14
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】崔 林日
(72)【発明者】
【氏名】坂井 正頌
(72)【発明者】
【氏名】山口 徹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 正喜
(72)【発明者】
【氏名】中曽 康壽
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205086(JP,A)
【文献】特開2000-154985(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181586(WO,A1)
【文献】特開2011-021804(JP,A)
【文献】特開平09-280689(JP,A)
【文献】特開平09-159228(JP,A)
【文献】特開昭60-228855(JP,A)
【文献】特開2010-117081(JP,A)
【文献】特開2018-173257(JP,A)
【文献】特許第4897934(JP,B1)
【文献】国際公開第2020/059788(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/00
F24T 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、
前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、
第一配管と、
第二配管と、
前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、
前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備え、
前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から前記第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、
前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から前記第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である
地中熱利用システム。
【請求項2】
夏期において、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方に、温水を貯蓄し、
冬期において、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方に、冷水を貯蓄する
請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
さらに、前記第二配管を介して、前記第二上部開口部から前記第一上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、
さらに、前記第一配管を介して、前記第一下部開口部から前記第二下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である
請求項1又は2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記第一井戸が、
前記第一上部開口部の上方に設けられ、第一ポンプを有する第一貯留部と、
前記第一貯留部と前記第一上部開口部とを接続するモードと、前記第一貯留部と前記第一下部開口部とを接続するモードと、を切り替え可能な第一切替部と、をさらに備え、
前記第二井戸が、
前記第二上部開口部の上方に設けられ、第二ポンプを有する第二貯留部と、
前記第二貯留部と前記第二上部開口部とを接続するモードと、前記第二貯留部と前記第二下部開口部とを接続するモードと、を切り替え可能な第二切替部と、をさらに備える
請求項1から3の何れか一項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、
前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、
第一配管と、
第二配管と、
前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、
前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、
を備える地中熱利用システムの運転方法であって、
前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水させるステップと、
前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水させるステップと、を含む
地中熱利用システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、帯水層の地下水を井戸からくみ上げて、温熱源又は冷熱源として利用する地中熱利用システムが提案されている。
【0003】
これに関連する技術として、特許文献1には、井戸の開口部において、上部帯水層の地下水を取水し、下部帯水層へ環水する地中熱利用システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上部帯水層の地下水の水質と、下部帯水層の地下水の水質が異なっている場合、特許文献1のような地中熱利用システムを利用すると、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水が混ざってしまう。地下水が混ざると、生成された反応物によって井戸の開口部が閉塞されることがある。
【0006】
本発明は、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞を抑制できる地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の地中熱利用システムは、上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、第一配管と、第二配管と、前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、
前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備え、前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から前記第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から前記第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である。
【0008】
本態様によれば、地中熱利用システムは、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水とを別々に送水可能であるため、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本態様の地中熱利用システムでは、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【0009】
第2の態様の地中熱利用システムは、夏期において、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの一方に、温水を貯蓄し、冬期において、前記上部帯水層及び前記下部帯水層のうちの他方に、冷水を貯蓄する第1の態様の地中熱利用システムである。
【0010】
本態様によれば、温水と冷水の注水域が重なりにくい。このため、各帯水層の注水域を大きくすることができる。
さらに、第一井戸と第二井戸との間におけるショートサーキットの発生が抑制される。このため、本態様の地中熱利用システムは、蓄熱損失を抑制できる。
【0011】
第3の態様の地中熱利用システムは、さらに、前記第二配管を介して、前記第二上部開口部から前記第一上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水可能であり、さらに、前記第一配管を介して、前記第一下部開口部から前記第二下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水可能である第1又は第2の態様の地中熱利用システムである。
【0012】
本態様によれば、地中熱利用システムは、上部帯水層及び下部帯水層の各帯水層において、送水により貯蓄した熱を、逆に送ることができる。このため、送水により貯蓄した熱を利用することができる。
【0013】
第4の態様の地中熱利用システムは、前記第一井戸が、前記第一上部開口部の上方に設けられ、第一ポンプを有する第一貯留部と、前記第一貯留部と前記第一上部開口部とを接続するモードと、前記第一貯留部と前記第一下部開口部とを接続するモードと、を切り替え可能な第一切替部と、をさらに備え、前記第二井戸が、前記第二上部開口部の上方に設けられ、第二ポンプを有する第二貯留部と、前記第二貯留部と前記第二上部開口部とを接続するモードと、前記第二貯留部と前記第二下部開口部とを接続するモードと、を切り替え可能な第二切替部と、をさらに備える第1から第3の何れかの態様の地中熱利用システムである。
【0014】
本態様によれば、第一ポンプによって、上部帯水層の地下水を揚水できると共に、下部帯水層の地下水を揚水できる。同様に、本態様によれば、第二ポンプによって、上部帯水層の地下水を揚水できると共に、下部帯水層の地下水を揚水できる。このため、各井戸のポンプの利用効率を上げることができる。
【0015】
第5の態様の地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層で開口している第一上部開口部と、下部帯水層で開口している第一下部開口部と、を備える第一井戸と、前記上部帯水層で開口している第二上部開口部と、前記下部帯水層で開口している第二下部開口部と、を備える第二井戸と、第一配管と、第二配管と、前記第一配管に接続されている第一熱交換器と、前記第二配管に接続されている第二熱交換器と、を備える地中熱利用システムの運転方法であって、前記第一配管を介して、前記第一上部開口部から第二上部開口部へ向かって、前記上部帯水層の地下水を送水させるステップと、前記第二配管を介して、前記第二下部開口部から第一下部開口部へ向かって、前記下部帯水層の地下水を送水させるステップと、を含む。
【0016】
本態様によれば、地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層の地下水と、下部帯水層の地下水とを別々に送水可能であるため、上部帯水層の地下水と下部帯水層の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本態様の地中熱利用システムの運転方法では、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地中熱利用システム及び地中熱利用システムの運転方法は、上部帯水層及び下部帯水層の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る第一実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図2】本発明に係る第一実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図3】本発明に係る第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図4】本発明に係る第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図5】本発明に係る第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図6】本発明に係る第二実施形態における地中熱利用システムの系統図である。
【
図7】各方式の期間注水半径及び井戸間距離を比較する表である。
【
図8】W-ATESの期間注水半径及び井戸間距離を説明する図である。
【
図9】QW-ATESの期間注水半径及び井戸間距離を説明する図である。
【
図10】各方式の期間注水半径及び期間積算注水量を比較する表である。
【
図11】本発明に係る各実施形態の切替部の例の斜視図である。
【
図14】本発明に係る各実施形態の切替部の例の斜視図である。
【
図15】本発明に係る各実施形態の切替部の例の斜視図である。
【
図18】本発明に係る各実施形態の切替部の例の斜視図である。
【
図19】本発明に係る各実施形態の切替部の例の系統図である。
【
図20】本発明に係る各実施形態の切替部の例の系統図である。
【
図21】本発明に係る各実施形態の切替部の例の系統図である。
【
図22】本発明に係る各実施形態の切替部の例の系統図である。
【
図23】本発明に係る各実施形態の切替部の例の部分断面図である。
【
図24】本発明に係る各実施形態の切替部の例の部分断面図である。
【
図25】本発明に係る各実施形態の切替部の例の部分断面図である。
【
図26】本発明に係る各実施形態の切替部の例の部分断面図である。
【
図27】本発明に係る各実施形態における地中熱利用システムの運転方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。
【0020】
<第一実施形態>
本発明に係る地中熱利用システムの第一実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
なお、
図1及び
図2に示す矢印は、各部分における(地下水を含む)冷媒の流れを示す。
【0021】
(地中熱利用システムの構成)
地中熱利用システム10は、2つの異なる帯水層である上部帯水層LY1と下部帯水層LY2とに蓄熱する。上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2は、例えば、洪積粘土層LYmを挟んで形成されている。
図1に示すように、地中熱利用システム10は、第一井戸20と第二井戸30とを備える。
地中熱利用システム10は、第一配管40と、第二配管50と、第一熱交換器60と、第二熱交換器70と、をさらに備える。
【0022】
(第一井戸の構成)
第一井戸20は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第一井戸20は、第一貯留部21と、第一切替部22と、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、を備える。
第一井戸20は、地表SGから下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL1に埋め込まれたケーシング20aを備える。
ケーシング20a内において、第一貯留部21と、第一切替部22と、第一上部開口部23と、第一下部開口部24と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0023】
第一貯留部21は、第一上部開口部23の上方に設けられている。
第一貯留部21は、第一貯留部21内の地下水を揚水可能な第一ポンプ21aを有する。
【0024】
第一切替部22は、第一貯留部21と第一上部開口部23との間に設けられている。
第一切替部22は、第一貯留部21に開口している第一ポート22aと、第二配管50に接続されている第二ポート22bとを備える。
第一切替部22は、第一上部開口部23に開口している第三ポート22cと、第一上部開口部23を通り過ぎて第一下部開口部24に向かって延びて開口している第四ポート22dと、をさらに備える。
第一切替部22は、内部配管の切り替えによって、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続するモードと、第一貯留部21と第一下部開口部24とを接続するモードと、を切り替え可能である。
例えば、
図1の場合、第一切替部22は、第一ポート22aと第三ポート22cとを接続することによって、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続している。
また、
図1の場合、第一切替部22は、第二ポート22bと第四ポート22dとを接続することによって、第二配管50と第一下部開口部24とを接続している。
【0025】
第一上部開口部23は、上部帯水層LY1で開口している。
第一上部開口部23は、第一井戸20のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第一上部開口部23には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング20aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー23aが設けられている。ストレーナー23aを介して、第一上部開口部23は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0026】
第一下部開口部24は、下部帯水層LY2で開口している。
第一下部開口部24は、第一井戸20のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第一下部開口部24には、地下水が貯留されている。
第一上部開口部23と、第一下部開口部24とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング20aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー24aが設けられている。ストレーナー24aを介して、第一下部開口部24は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング20aの内部に取り込んだり、ケーシング20aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0027】
(第二井戸の構成)
第二井戸30は、地上から地下に向かって、上部帯水層LY1を貫通し、下部帯水層LY2に延びる井戸である。
第二井戸30は、第一井戸20と所定の距離を隔て設けられている。
第二井戸30は、第二貯留部31と、第二切替部32と、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、を備える。
第二井戸30は、地表から下部帯水層LY2に至る地下に向かって掘削された掘削孔HOL2に埋め込まれたケーシング30aを備える。
ケーシング30a内において、第二貯留部31と、第二切替部32と、第二上部開口部33と、第二下部開口部34と、の各間には、パッキングPKが設けられており、各間での地下水の行き来を抑制している。
【0028】
第二貯留部31は、第二上部開口部33の上方に設けられている。
第二貯留部31は、第二貯留部31内の地下水を揚水可能な第二ポンプ31aを有する。
【0029】
第二切替部32は、第二貯留部31と第二上部開口部33との間に設けられている。
第二切替部32は、第二貯留部31に開口している第一ポート32aと、第一配管40に接続されている第二ポート32bとを備える。
第二切替部32は、第二上部開口部33に開口している第三ポート32cと、第二上部開口部33を通り過ぎて第二下部開口部34に向かって延びて開口している第四ポート32dと、をさらに備える。
第二切替部32は、内部配管の切り替えによって、第二貯留部31と第二上部開口部33とを接続するモードと、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続するモードと、を切り替え可能である。
例えば、
図1の場合、第二切替部32は、第一ポート32aと第四ポート32dとを接続することによって、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続している。
また、
図1の場合、第二切替部32は、第二ポート32bと第三ポート32cとを接続することによって、第一配管40と第二上部開口部33とを接続している。
【0030】
第二上部開口部33は、上部帯水層LY1で開口している。
第二上部開口部33は、第二井戸30のうち、上部帯水層LY1に相当する深さに位置する部分である。
第二上部開口部33には、地下水が貯留されている。
例えば、ケーシング30aには、上部帯水層LY1において、複数のスリットからなるストレーナー33aが設けられている。ストレーナー33aを介して、第二上部開口部33は、上部帯水層LY1の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から上部帯水層LY1へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0031】
第二下部開口部34は、下部帯水層LY2で開口している。
第二下部開口部34は、第二井戸30のうち、下部帯水層LY2に相当する深さに位置する部分である。
第二下部開口部34には、地下水が貯留されている。
第二上部開口部33と、第二下部開口部34とは、上下に並んでいる。
例えば、ケーシング30aには、下部帯水層LY2において、複数のスリットからなるストレーナー34aが設けられている。ストレーナー34aを介して、第二下部開口部34は、下部帯水層LY2の地下水をケーシング30aの内部に取り込んだり、ケーシング30aの内部から下部帯水層LY2へ地下水を戻したりできるように構成されている。
【0032】
(第一配管の構成)
第一配管40は、第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)を介して、第一端40aから第二端40bへ延びている。
第一配管40の第一端40aは、第一ポンプ21aから第一配管40へ揚水可能に、第一ポンプ21aに接続されている。
第一配管40の第一端40aは、第一ポンプ21aに向かって、第一井戸20内に延びている。
第一配管40の第二端40bは、開閉弁、逆止弁等を介して、第二切替部32の第二ポート32bに向かって送水可能に、第二切替部32の第二ポート32bに接続されている。
第一配管40の第二端40bは、第二切替部32の第二ポート32bに向かって、第二井戸30内に延びている。
【0033】
(第二配管の構成)
第二配管50は、第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)を介して、第一端50aから第二端50bへ延びている。
第二配管50の第一端50aは、第二ポンプ31aから第二配管50へ揚水可能に、第二ポンプ31aに接続されている。
第二配管50の第一端50aは、第二ポンプ31aに向かって、第二井戸30内に延びている。
第二配管50の第二端50bは、開閉弁、逆止弁等を介して、第一切替部22の第二ポート22bに向かって送水可能に、第一切替部22の第二ポート22b接続されている。
第二配管50の第二端50bは、第一切替部22の第二ポート22bに向かって、第一井戸20内に延びている。
【0034】
(第一熱交換器の構成)
第一熱交換器60の一次側(一次側配管60a)は、第一配管40の途中に接続されている。
第一熱交換器60の二次側(二次側配管60b)は、冷暖房器具等の負荷Rに接続されている。
第一熱交換器60は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
【0035】
(第二熱交換器の構成)
第二熱交換器70の一次側(一次側配管70a)は、第二配管50の途中に接続されている。
第二熱交換器70の二次側(二次側配管70b)は、負荷Rに接続されている。
第二熱交換器70は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
第二熱交換器70の二次側配管70bと、第一熱交換器60の二次側配管60bとは、直列に接続されている。
【0036】
(動作)
本実施形態の地中熱利用システム10の動作について説明する。
まず、
図1の場合(第一モード)について説明する。
図1の場合、上述のとおり、第一切替部22は、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続する。これにより、第一上部開口部23において取水される地下水は、第一配管40へ揚水される。
図1の場合、上述のとおり、第二切替部32は、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続する。これにより、第二下部開口部34において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
このため、地中熱利用システム10は、第一配管40を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム10は、第二配管50を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
したがって、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の蓄熱を第一熱交換器60に供給でき、下部帯水層LY2の地下水の蓄熱を第二熱交換器70に供給できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60から得た熱(温熱又は冷熱)を上部帯水層LY1に蓄熱でき、第二熱交換器70から得た熱(温熱又は冷熱)を下部帯水層LY2に蓄熱できる。
【0037】
例えば、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1から取得した温水を、第一上部開口部23を介して第一熱交換器60に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60において取得した冷水を、第二上部開口部33を介して上部帯水層LY1に供給することによって貯蓄している。
また、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2から取得した温水を、第二下部開口部34を介して第二熱交換器70に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第二熱交換器70において取得した冷水を、第一下部開口部24を介して下部帯水層LY2に供給することによって貯蓄している。
ここで「温水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より高い温度の水のことをいい、「冷水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より低い温度の水のことをいう。
例えば、各帯水層の地下水の初期地中温度は18℃である。
【0038】
次に、
図2の場合(第二モード)について説明する。
図2は、第一切替部22及び第二切替部32の各内部配管を、
図1に実線で示す接続から
図1に点線で示す接続に切り替えた状態を示す。
この場合、第一切替部22は、第二ポート22bと第三ポート22cとを接続することによって、第二配管50と第一上部開口部23とを接続する。
また、第一切替部22は、第一ポート22aと第四ポート22dとを接続することによって、第一貯留部21と第一下部開口部24とを接続する。
また、第二切替部32は、第一ポート32aと第三ポート32cとを接続することによって、第二貯留部31と第二上部開口部33とを接続する。
また、第二切替部32は、第二ポート32bと第四ポート32dとを接続することによって、第一配管40と第二下部開口部34とを接続する。
これにより、第一下部開口部24において取水される地下水は、第一配管40へ揚水され、第二上部開口部33において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
このため、地中熱利用システム10は、第一配管40を介して、第一下部開口部24から第二下部開口部34へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
また、地中熱利用システム10は、第二配管50を介して、第二上部開口部33から第一上部開口部23へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
したがって、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2の蓄熱(温熱又は冷熱)を第一熱交換器60に供給でき、上部帯水層LY1の蓄熱(温熱又は冷熱)を第二熱交換器70に供給できる。
さらに、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60から得た熱(温熱又は冷熱)を下部帯水層LY2に蓄熱でき、第二熱交換器70から得た熱(温熱又は冷熱)を上部帯水層LY1に蓄熱できる。
【0039】
例えば、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1から取得した冷水を、第二上部開口部33を介して第二熱交換器70に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第二熱交換器70において取得した温水を、第一上部開口部23を介して上部帯水層LY1に供給することによって貯蓄している。
また、本実施形態の場合、地中熱利用システム10は、下部帯水層LY2から取得した冷水を、第一下部開口部24を介して第一熱交換器60に供給することによって消費している。他方で、地中熱利用システム10は、第一熱交換器60において取得した温水を、第二下部開口部34を介して下部帯水層LY2に供給することによって貯蓄している。
【0040】
(作用及び効果)
本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水と、下部帯水層LY2の地下水とを別々に送水可能であるため、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水とが混ざってしまうことを抑制できる。
したがって、本実施形態の地中熱利用システム10では、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の利用に際し、井戸の閉塞が抑制される。
例えば、上部帯水層LY1の地下水が酸素リッチであって、下部帯水層LY2の地下水が鉄分リッチである場合、上部帯水層LY1の地下水と下部帯水層LY2の地下水との両地下水が混ざると、酸化鉄が生成され、各井戸の開口部のストレーナーが閉塞されてしまう。
これに対し、本実施形態の地中熱利用システム10は、両地下水が混合しにくい構造であるため、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の利用に際し、井戸の閉塞を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2の各帯水層において、送水により貯蓄した熱を、逆に送ることができる。このため、送水により貯蓄した熱を利用することができる。
【0042】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一ポンプ21aによって、第一モードにおいて上部帯水層LY1の地下水を揚水できると共に、第二モードにおいて下部帯水層LY2の地下水を揚水できる。同様に、本実施形態の地中熱利用システム10は、第二ポンプ31aによって、第二モードにおいて上部帯水層LY1の地下水を揚水できると共に、第一モードにおいて下部帯水層LY2の地下水を揚水できる。このため、各モードにわたって各ポンプを利用でき、各ポンプの利用効率を上げることができる。
【0043】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、上部帯水層LY1の地下水を揚水及び環水できると共に、下部帯水層LY2の地下水を揚水及び環水できる。
このため、1つの帯水層の地下水を揚水及び還水する地中熱利用システムに比べて、蓄熱容量を2倍とすることができる。
【0044】
また、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一上部開口部23と、第一下部開口部24とは、上下に並んでおり、第二上部開口部33と、第二下部開口部34とは、上下に並んでいるため、敷地面積を有効に利用することができる。
特に、熱需要の高い高層ビルが密集する市街地では、大容量の熱源システムの実装が必要とされる一方で、敷地面積が限られているため、本実施形態の地中熱利用システム10は有効である。
例えば、本実施形態の地中熱利用システム10によれば、大都市域に共通した沖積平野に広く存在する地下水の熱利用ポテンシャルを生かした帯水層蓄熱利用が可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態の地中熱利用システム10は、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水させる一方、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水させている。
すなわち、各井戸において一方の帯水層から揚水する一方で、他方の帯水層に環水している。
このため、本実施形態の地中熱利用システム10は、地盤沈下や地盤上昇を抑制することができる。
【0046】
<第二実施形態>
本発明に係る地中熱利用システムの第二実施形態について、
図3~
図10を参照して説明する。
第二実施形態の地中熱利用システム100では、例えば、第一実施形態の地中熱利用システム10において、さらに、夏期において、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの一方にのみ温水を貯蓄し、冬期において、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のうちの他方にのみ冷水を貯蓄する。
ここで「温水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より高い温度の水のことをいい、「冷水」とは、各帯水層の地下水の初期地中温度より低い温度の水のことをいう。本実施形態では、各帯水層の地下水の初期地中温度が18℃であるものとして説明する。
なお、第二実施形態の地中熱利用システム100が備える各構成要素は、特に言及する場合を除き、第一実施形態の地中熱利用システム10が備える各構成要素と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明については省略する。
また、
図3~
図6に示す温度は、各部分における(地下水を含む)冷媒の温度を示す。
さらに、
図3~
図6に示す矢印は、各部分における(地下水を含む)冷媒の流れを示す。
【0047】
本実施形態の地中熱利用システム100では、夏期において、上部帯水層LY1に温水を貯蓄し、冬期において、下部帯水層LY2に冷水を貯蓄する。
【0048】
(冬期運転開始時期)
図3に示すように、まず初期状態として、冬期運転開始時期において、地中熱利用システム100により、地下には夏期に貯蓄された温水が上部帯水層LY1に貯蓄されている。
地中熱利用システム100は、冬期の間、冬期モードとして、以下のように運転される。
【0049】
図3に示すように、冬期モードでは、第一切替部22は、第一貯留部21と第一上部開口部23とを接続し、第二配管50と第一下部開口部24とを接続する。
また、第二切替部32は、第二貯留部31と第二下部開口部34とを接続し、第一配管40と第二上部開口部33とを接続する。
【0050】
これにより、第一上部開口部23において取水される地下水は、第一配管40へ揚水される。
また、第二下部開口部34において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
【0051】
このため、冬期モードでは、地中熱利用システム100は、第一配管40を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
また、冬期モードでは、地中熱利用システム100は、第二配管50を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
【0052】
したがって冬期の間、地中熱利用システム100は、上部帯水層LY1の温水を、第一熱交換器60に供給する。他方、地中熱利用システム100は、第二熱交換器70において取得した冷水を、下部帯水層LY2に貯蓄する。
本実施形態において、第一熱交換器60の二次側と、第二熱交換器70の二次側と、負荷Rとは、直列に接続されている、また、負荷Rに流れる冷媒は、第二熱交換器70の二次側、第一熱交換器60の二次側、負荷R、第二熱交換器70の二次側、・・・の順に循環させている。
【0053】
図3に示すように、地中熱利用システム100は、第二熱交換器70の下流に、第三熱交換器80をさらに備えてもよい。第三熱交換器80の一次側は、第二配管50に接続され、第三熱交換器80の二次側は、冷却塔CTに接続されてもよい。その際、第三熱交換器80は、一次側と二次側との間で熱交換可能である。
例えば、第三熱交換器80の一次側は、第二熱交換器70の一次側と直列に接続される。
これより、地中熱利用システム100は、第二熱交換器70で冷却した冷水を、第三熱交換器80でさらに冷却して下部帯水層LY2に貯蓄することができる。
【0054】
本実施形態では、地中熱利用システム100は、上部帯水層LY1から23℃で揚水した地下水を、上部帯水層LY1に18℃に冷却して環水している。
他方、本実施形態では、地中熱利用システム100は、下部帯水層LY2から18℃で揚水した地下水を、13℃未満に冷却して下部帯水層LY2に環水している。
【0055】
(冬期運転終了時期)
冬期の間、地中熱利用システム100が
図3に示すように運転されることにより、冬期運転終了時期において、
図4に示すように、上部帯水層LY1の温水がほぼ消費される一方で、下部帯水層LY2の広い範囲に亘り冷水が貯蓄される。
【0056】
(夏期運転開始時期)
図5に示すように、夏期運転開始時期において、冬期に貯蓄された冷水が下部帯水層LY2に貯蓄されている。
地中熱利用システム100は、夏期の間、夏期モードとして、以下のように運転される。
【0057】
図5に示すように、冬期モードでは、まず、各配管と各井戸との間の接続が以下のように切り替えられる。
すなわち、第一配管40の第一端40aが、第一切替部22の第二ポート22bに向かって送水可能に、第一切替部22の第二ポート22bに接続され、第一配管40の第二端40bが、第二ポンプ31aから第一配管40へ揚水可能に第二ポンプ31aに接続される。
また、第二配管50の第一端50aが、第二切替部32の第二ポート32bに向かって送水可能に、第二切替部32の第二ポート32bに接続され、第二配管50の第二端50bが、第一ポンプ21aから第二配管50へ揚水可能に第一ポンプ21aに接続される。 なお、各井戸と第一配管40との間の接続の切り替えは、各井戸外で行われてもよいし、各井戸内で行われてもよい。
同様に、各井戸に対する第二配管50の接続の切り替えは、各井戸外で行われてもよいし、各井戸内で行われてもよい。
【0058】
負荷Rに流れる冷媒の流れは、第一熱交換器60の二次側、第二熱交換器70の二次側、負荷R、第一熱交換器60の二次側、・・・の順に循環するように、切り替えられる。
【0059】
第一切替部22は、第一貯留部21と第一下部開口部24とを接続し、第一配管40(第一切替部22の第二ポート22b)と第一上部開口部23とを接続する。
第二切替部32は、第二貯留部31と第二上部開口部33とを接続し、第二配管50(第二切替部32の第二ポート32b)と第二下部開口部34とを接続する。
【0060】
これにより、第一下部開口部24において取水される地下水は、第二配管50へ揚水される。
また、第二上部開口部33において取水される地下水は、第一配管40へ揚水される。
【0061】
このため、夏期モードでは、地中熱利用システム100は、第二配管50を介して、第一下部開口部24から第二下部開口部34へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水できる。
また、夏期モードでは、地中熱利用システム100は、第一配管40を介して、第二上部開口部33から第一上部開口部23へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水できる。
【0062】
したがって夏期の間、地中熱利用システム100は、下部帯水層LY2の冷水を、第二熱交換器70に供給する。他方、地中熱利用システム100は、第一熱交換器60において取得した温水を、上部帯水層LY1に貯蓄する。
なお、本実施形態では、夏期モードにおいて、第三熱交換器80は、一次側と二次側との間で熱交換を行なわない。
【0063】
本実施形態では、地中熱利用システム100は、下部帯水層LY2から13℃未満で揚水した地下水を、下部帯水層LY2に18℃に冷却して環水している。
他方、本実施形態では、地中熱利用システム100は、上部帯水層LY1から18℃で揚水した地下水を、23℃に加熱して上部帯水層LY1に環水している。
【0064】
(夏期運転終了時期)
夏期の間、地中熱利用システム100が
図5に示すように運転されることにより、夏期運転終了時期において、
図6に示すように、下部帯水層LY2の冷水がほぼ消費される一方で、上部帯水層LY1の広い範囲に亘り温水が貯蓄される。
その後再び、冬期運転開始時期になると、地中熱利用システム100は、冬期モードに戻る。
【0065】
(作用及び効果)
第一実施形態の作用及び効果に加え、本実施形態の地中熱利用システム100は、以下の作用及び効果を有する。
本実施形態の地中熱利用システム100は、夏期において、上部帯水層LY1に温水を貯蓄し、冬期において、下部帯水層LY2に冷水を貯蓄する。
すなわち、地中熱利用システム100は、温水と冷水とを別の帯水層に貯蓄している。
このため、本実施形態の地中熱利用システム100では、温水と冷水の注水域が重なりにくく、各帯水層の注水域を大きくすることができる。
さらに、ショートサーキットの発生が抑制され、地中熱利用システム100は、蓄熱損失を抑制できる。
【0066】
ここで、上部帯水層LY1及び下部帯水層LY2のいずれか一方しか利用しない地中熱利用システムを「S-ATES」、
図1及び
図2に示す地中熱利用システム10を「W-ATES」、及び本実施形態の地中熱利用システム100を「QW-ATES」と呼ぶ。
ある期間の積算注水量をVとし、S-ATESの期間注水半径をr(井戸間距離2×r)とすると、W-ATESの蓄熱半径は√(1/2)=0.7倍となる。このとき、
図7及び
図8に示すように、井戸間距離は1.4×rとなる。
これに対し、
図7及び
図9に示すように、QW-ATESでは期間注水半径はrであるが、井戸間距離もrでよい。
逆に井戸間距離を同一条件としたとき、S-ATESの場合に比べて、QW-ATESの場合、
図10に示すように、期間積算注水量Vは4倍になる。
図10において、sは、S-ATESの場合の期間積算注水量Vを示す。
なお、蓄熱半径rthと期間注水半径rとは一致せず、期間注水半径rより蓄熱半径rthのほうが小さくなる。
【0067】
本実施形態の地中熱利用システム100では、上部帯水層LY1に温水を貯蓄し、下部帯水層LY2に冷水を貯蓄しているが、変形例として、上部帯水層LY1に冷水を貯蓄し、下部帯水層LY2に温水を貯蓄してもよい。
【0068】
<切替部の例>
上述の熱利用システムの各実施形態における第一切替部22の各例を、
図11~
図26に示す。以下、第一切替部22の各例について説明するが、第二切替部32についても同様な構成とすることができる。
【0069】
例えば、第一切替部22は、
図11~
図14に示すように、リボルバー22Rを備えてもよい。
リボルバー22Rを、
図11に示す状態から、
図14に示す状態に90°回転することにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
【0070】
例えば、第一切替部22は、
図15~
図18に示すように、複数の三方弁22Tを備えてもよい。
三方弁22Tを切り替えることにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
なお、
図15は、第一切替部22を正面から見た斜視図であり、
図18は、第一切替部22を側面から見た斜視図である。
三方弁22Tは、例えば、ボール弁であってもよい。
【0071】
例えば、第一切替部22は、
図19に示すように、複数の三方弁22Tと複数の注水弁22Pを備えてもよい。
三方弁22Tと注水弁22Pとを切り替えることにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
他の例として、第一切替部22は、
図20に示すような複数の注水弁22Pの組み合わせや、
図21に示すような複数の三方弁22Tと複数の注水弁22Pとの組み合わせであってもよい。
【0072】
例えば、第一切替部22は、
図22に示すように、複数の四方弁22Fと複数の注水弁22Pを備えてもよい。
四方弁22Fと注水弁22Pとを切り替えることにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
【0073】
例えば、第一切替部22は、
図23及び
図24に示すように、2つのスライド機構22Sを備えてもよい。
スライド機構22Sを、
図23に示す状態から、
図24に示す状態に切り替えることにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
なお、第一切替部22は、さらに注水弁22Pを備えてもよい。
他の例として、
図25及び
図26に示すように、第一切替部22は、2つのスライド機構22Sが一体化された構成であってもよい。その際、
図25に示す状態から、
図26に示す状態に切り替えることにより、第一切替部22は、流路を変えることができる。
【0074】
<地中熱利用システムの運転方法>
地中熱利用システムの運転方法の実施形態を
図27に沿って説明する。
本運転方法は、上述の各実施形態の地中熱利用システムを用いて実行する。
【0075】
まず、
図27に示すように、第一配管40を介して、第一上部開口部23から第二上部開口部33へ向かって、上部帯水層LY1の地下水を送水させる(ST1:上部帯水層の地下水を送水させるステップ)。
ST1の実行と同時に、第二配管50を介して、第二下部開口部34から第一下部開口部24へ向かって、下部帯水層LY2の地下水を送水させる(ST2:下部帯水層の地下水を送水させるステップ)。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0077】
10 地中熱利用システム
20 第一井戸
20a ケーシング
21 第一貯留部
21a 第一ポンプ
22 第一切替部
22a 第一ポート
22b 第二ポート
22c 第三ポート
22d 第四ポート
22F 四方弁
22P 注水弁
22R リボルバー
22S スライド機構
22T 三方弁
23 第一上部開口部
23a ストレーナー
24 第一下部開口部
24a ストレーナー
30 第二井戸
30a ケーシング
31 第二貯留部
31a 第二ポンプ
32 第二切替部
32a 第一ポート
32b 第二ポート
32c 第三ポート
32d 第四ポート
33 第二上部開口部
33a ストレーナー
34 第二下部開口部
34a ストレーナー
40 第一配管
40a 第一端
40b 第二端
50 第二配管
50a 第一端
50b 第二端
60 第一熱交換器
60a 一次側配管
60b 二次側配管
70 第二熱交換器
70a 一次側配管
70b 二次側配管
80 第三熱交換器
100 地中熱利用システム
CT 冷却塔
HOL1 掘削孔
HOL2 掘削孔
LY1 上部帯水層
LY2 下部帯水層
LYm 洪積粘土層
PK パッキング
R 負荷
SG 地表