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特許7173494学習結果出力装置及び学習結果出力プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】学習結果出力装置及び学習結果出力プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20221109BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20221109BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20221109BHJP
【FI】
G06N20/00 130
G01N15/14 B
G06F3/0481
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019509964
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012708
(87)【国際公開番号】W WO2018181458
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2017064387
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進(さきがけ)事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】517110494
【氏名又は名称】シンクサイト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】亀澤 諒亮
(72)【発明者】
【氏名】太田 禎生
【審査官】杉浦 孝光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136801(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/080314(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169786(US,A1)
【文献】RAJWA, Bartek et al.,Automated Classification of Bacterial Particles in Flow by Multiangle Scatter Measurement and Suppor,Cytometry Part A,Vol.73A,2007年12月28日,pp.369-379
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-20/00
G01N 15/14
G06F 3/0481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の形態情報に基づいて、前記測定対象の属性のうちの少なくとも一つの属性について機械学習により学習モデルを作成する機械学習部と、
前記機械学習部が作成した前記学習モデルを用いて前記機械学習部が前記測定対象を前記形態情報に基づいて判定した判定結果について、前記判定の際における前記属性の程度を示す値である前記機械学習のスコアを少なくとも1つの評価軸としてグラフ情報を生成するグラフ情報生成部と
を備える学習結果出力装置。
【請求項2】
前記評価軸を選択する操作を検出する操作検出部を更に備え、
前記グラフ情報生成部は、
前記操作検出部が検出した操作によって選択された評価軸を軸にして前記グラフ情報を生成する
請求項1に記載の学習結果出力装置。
【請求項3】
前記操作検出部は、更に、
前記グラフ情報生成部が生成する前記グラフ情報に基づいて、前記測定対象から選択測定対象をゲーティングする操作であるゲーティング操作を検出する
請求項2に記載の学習結果出力装置。
【請求項4】
前記操作検出部が検出する前記ゲーティング操作に基づいて、前記測定対象のソーティングに用いる制御信号を生成する制御信号生成部を更に備える
請求項3に記載の学習結果出力装置。
【請求項5】
前記形態情報が、構造化された照明パターンを有する光学系又は光特性が互いに異なる複数の領域を有する構造化された検出系のいずれか又は両方を用い、前記測定対象と、前記光学系と、前記検出系とのうちのいずれかの間の相対位置を変化させつつ、一又は少数画素検出素子によって検出された前記測定対象を示す光信号の時系列信号である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の学習結果出力装置。
【請求項6】
コンピュータに
測定対象の形態情報に基づいて、前記測定対象の属性のうちの少なくとも一つの属性について機械学習を行ない学習モデルを作成する機械学習ステップと、
前記機械学習ステップによって作成された学習モデルにより前記測定対象を前記形態情報に基づいて判定する判定ステップと、
前期判定ステップによる判定の判定結果について前記属性の程度を示す値である前記機械学習のスコアを少なくとも1つの評価軸にして、グラフ情報を生成するグラフ情報生成ステップと、
を実行させるための学習結果出力プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習結果出力装置及び学習結果出力プログラムに関する。本願は、2017年3月29日に、日本に出願された特願2017-064387号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象を蛍光染色し、この蛍光輝度の総量によって測定対象の特徴を評価するフローサイトメトリー法や、このフローサイトメトリー法を用いたフローサイトメーターが知られている(例えば、特許文献1)。また、測定対象となる細胞・細菌等の微粒子を画像によって評価する蛍光顕微鏡やイメージングサイトメーターが知られている。加えて、フローサイトメーターと同等のスループットで微粒子の形態情報を高速に撮影するイメージングフローサイトメーターが知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5534214号公報
【文献】米国特許第6249341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、蛍光輝度や散乱光の総量などの予め定められた評価軸によって測定対象の特徴を示す。この予め定められた評価軸は、測定対象を測定する測定者によって決定される。しかし、測定対象の特徴には、蛍光輝度や散乱光の総量だけではなく、細胞の形態情報や分子局在等の二次元空間上の特徴などの従来から利用されているヒストグラムや散布図等のグラフでは表現できない特徴や測定者が気付いていない特徴も含まれる。この特徴には、従来のグラフ表示法では表示ができない特徴や測定者が気付いていない特徴が含まれるため、従来の予め定められた評価軸やグラフ表示法では測定対象の特徴を表現しきれず、それらの特徴を備えた測定対象の粒子群を選択的に可視化(ゲーティング)し、それらを分取(ソーティング)できないという問題があった。
本発明の課題は、粒子群を測定対象の形態情報に基づいて分類する学習結果出力装置及び学習結果出力プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、測定対象の形態情報に基づいて、前記測定対象の属性のうちの少なくとも一つの属性について機械学習により学習モデルを作成する機械学習部と、前記機械学習部が作成した前記学習モデルを用いて前記機械学習部が前記測定対象を前記形態情報に基づいて判定した判定結果について、前記判定の際における前記属性の程度を示す値である前記機械学習のスコアを少なくとも1つの評価軸としてグラフ情報を生成するグラフ情報生成部とを備える学習結果出力装置である。
【0006】
また、本発明の一態様は、上記の学習結果出力装置において、前記評価軸を選択する操作を検出する操作検出部を更に備え、前記グラフ情報生成部は、前記操作検出部が検出した操作によって選択された評価軸を軸にして前記グラフ情報を生成する。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の学習結果出力装置において、前記操作検出部は、更に、前記グラフ情報生成部が生成する前記グラフ情報に基づいて、前記測定対象から選択測定対象をゲーティングする操作であるゲーティング操作を検出する。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の学習結果出力装置において、前記操作検出部が検出する前記ゲーティング操作に基づいて、前記測定対象ソーティングに用いる制御信号を生成する制御信号生成部を更に備える。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の学習結果出力装置において、前記形態情報、構造化された照明パターンを有する光学系又は光特性が互いに異なる複数の領域を有する構造化された検出系のいずれか又は両方を用い、前記測定対象と、前記光学系と、前記検出系とのうちのいずれかの間の相対位置を変化させつつ、一又は少数画素検出素子によって検出された前記測定対象を示す光信号の時系列信号である。
【0010】
また、本発明の一態様は、コンピュータに測定対象の形態情報に基づいて、前記測定対象の属性のうちの少なくとも一つの属性について機械学習を行ない学習モデルを作成する機械学習ステップと、前記機械学習ステップによって作成された学習モデルにより前記測定対象を前記形態情報に基づいて判定する判定ステップと、前期判定ステップによる判定の判定結果について前記属性の程度を示す値である前記機械学習のスコアを少なくとも1つの評価軸にして、グラフ情報を生成するグラフ情報生成ステップと、を実行させるための学習結果出力プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒子群を測定対象の形態情報に基づいて分類する学習結果出力装置及び学習結果出力プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】細胞測定システムの外観構成を示す図である。
図2】学習結果出力装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】機械学習部がある信号情報を判定した判定結果の一例を示す図である。
図4】表示データ生成部が生成するグラフ情報の一例を示す図である。
図5】従来のフローサイトメーターが表示するグラフと、表示データ生成部が生成するグラフ情報の一例を示す図である。
図6】表示データ生成部が生成するグラフ情報の一例を示す図である。
図7】学習結果出力装置の動作の一例を示す流れ図である。
図8】2つの軸をそれぞれ学習結果に基づく評価軸を軸にしたグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態]
以下、図面を参照して学習結果出力装置の実施形態について説明する。
図1は、細胞測定システム1の外観構成を示す図である。
細胞測定システム1は、フローサイトメーター20と、学習結果出力装置10と、表示部11と、操作部12とを備える。学習結果出力装置10は、フローサイトメーター20が測定した測定対象の情報が含まれる信号を機械学習する。学習結果出力装置10は、この機械学習によって測定対象の特徴を解析する。
【0014】
[フローサイトメーターについて]
フローサイトメーター20は、細胞などの測定対象の光信号を検出する。測定対象とは、学習対象物の一例である。具体的には、測定対象とは、細胞である。以下の説明では、測定対象のことを、微粒子群とも記載する。フローサイトメーター20は、不図示の流路を備える。フローサイトメーター20は、この流路を流される測定対象の光信号の時系列信号を生成する。
【0015】
[光信号について]
光信号は、構造化された照明パターンを有する光学系又は光特性が互いに異なる複数の領域を有する構造化された検出系のいずれか又は両方を用い、測定対象と、光学系と、検出系とのうちのいずれかの間の相対位置を変化させつつ、一又は少数画素検出素子によって検出された測定対象を示す光信号の時系列信号である。
具体的には、光信号とは、フローサイトメーター20が備える不図示のセンサが検出した光の強度を示す情報である。センサとは、一又は少数画素検出素子の一例である。一又は少数画素検出素子とは、具体的には、PMT(photomultiplier tube;光電子倍増管)、ライン型PMT素子、APD(Avalanche Photo-diode、アバランシェフォトダイオード)、Photo-detector(PD:光検出器)などの単一受光素子及び少数受光素子、CCDカメラ及び、CMOSセンサなどである。センサが検出する光とは、フローサイトメーター20が備える不図示の照射部から、測定対象と、不図示の光空間変調器とによって変調された光である。ここで、光空間変調器とは、構造化された照明パターンの一例である。
フローサイトメーター20は、測定対象と、光学系と、検出系とのうちのいずれかの間の相対位置を変化させつつ、一又は少数画素検出素子によって光信号を検出する。この一例では、測定対象が流路を流されることにより、光学系と検出系との相対位置が変化する。
【0016】
[光学系と検出系とについて]
ここで、光学系について説明する。光学系が照射部と光空間変調器とを備える場合には、検出系は上述したセンサを備える。この構成のことを、構造化照明の構成とも記載する。
光学系が照射部を備える場合には、検出系は光空間変調器とセンサとを備える。この構成のことを、構造化検出の構成とも記載する。
フローサイトメーター20は、構造化照明の構成と、構造化検出の構成とのいずれの構成であってもよい。
[光信号の時系列信号について]
光信号の時系列信号とは、複数の光信号が取得された時刻と、光の強度の情報とがそれぞれ対応付けられた信号である。
フローサイトメーター20は、この時系列信号から測定対象の像を再構成することができる。この時系列信号には、測定対象の属性の情報が含まれる。属性とは、具体的には、測定対象の形状や、測定対象を構成する構成要素などが含まれる。測定対象が蛍光染色されている場合には、測定対象からの蛍光の輝度の程度などの情報が含まれる。なお、学習結果出力装置10は、測定対象の像を再構成することなく、測定対象の特徴を解析する。
【0017】
[学習結果出力装置10について]
学習結果出力装置10は、フローサイトメーター20が検出した光信号の時系列信号を取得する。学習結果出力装置10は、フローサイトメーター20から取得した時系列信号を機械学習する。学習結果出力装置10は、この機械学習により測定対象の属性を解析する。
表示部11は、学習結果出力装置10が解析した結果を表示する。
操作部12は、学習結果出力装置10を操作する操作者からの入力を受け付ける。操作部12とは、具体的には、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0018】
ここで、図2を参照して、学習結果出力装置10の機能構成について説明する。
図2は、学習結果出力装置10の機能構成の一例を示す図である。
学習結果出力装置10は、信号取得部101と、機械学習部102と、記憶部STと、操作検出部103と、表示データ生成部104と、表示部11と、制御信号生成部105とを備える。ここで、表示データ生成部104とは、グラフ情報生成部の一例である。
【0019】
信号取得部101は、上述したフローサイトメーター20から、時系列信号を示す信号情報を取得する。ここで、信号情報とは、学習対象物の形状を示す形態情報の一例である。信号取得部101は、フローサイトメーター20から取得した信号情報を、機械学習部102に対して供給する。
【0020】
機械学習部102は、学習対象物の属性のうちの少なくとも一つの属性について、この属性の程度を評価軸にして機械学習する。具体的には、機械学習部102は、信号取得部101から信号情報を取得する。機械学習部102は、信号取得部101から取得した信号情報を機械学習することにより判定器を形成する。ここで、機械学習部102は、サポートベクターマシン等の機械学習アルゴリズムによって判定器が形成される。この判定器は、FPGA(field-programmable gate array)の論理回路によって構成される。なお、判定器は、などのプログラマブルロジックデバイス(programmable logic device;PLD)や、ASIC(application specific integrated circuit)などによって構成されてもよい。判定器とは、学習モデルの一例である。
また、本実施形態では、機械学習部102は、予め教師ありの機械学習によって判定器が形成される。
機械学習部102は、取得した信号情報を判定器によって判定する。
機械学習部102は、この信号情報を判定した判定結果を、表示データ生成部104に対して供給する。この判定結果には、測定対象の属性のうちの少なくとも一つの属性について、この属性の程度を評価軸にする情報が含まれる。
【0021】
操作検出部103は、判定器の判定結果に基づく評価軸を選択する操作を検出する。具体的には、操作検出部103は、操作者が複数の属性の程度の評価軸のうちから、評価軸を選択する操作を検出する。操作検出部103は、検出した操作に基づいて、操作者が選択した評価軸を示す情報を表示データ生成部104に対して供給する。また、操作検出部103は、更に、表示データ生成部104が生成するグラフ情報に基づく測定対象の可視化の操作を検出する。具体的には、操作検出部103は、後述する表示データ生成部104が生成するグラフ情報に基づいて、ユーザーが測定対象をゲーティングする操作を検出する。ゲーティングについては、後述する。
【0022】
表示データ生成部104は、機械学習部102が信号情報を判定器によって判定した判定結果に基づいて、評価軸を軸にして判定結果を表すグラフを示すグラフ情報を生成する。具体的には、表示データ生成部104は、機械学習部102から判定結果を取得する。
表示データ生成部104は、操作検出部103から操作者が選択した評価軸を示す情報を取得する。
【0023】
[判定結果について]
ここで、図3を参照して、判定結果LIについて説明する。
図3は、機械学習部102がある信号情報を判定した判定結果の一例を示す図である。
判定結果LIとは、測定対象の属性を示す評価軸と、その属性の程度を示す値とが対応付けられた情報である。具体的には、判定結果LIには、評価軸の情報として“SVM-based Scores1”と、属性の程度を示す値として“VAL1”とが対応付けられた状態で含まれる。また、判定結果LIには、評価軸の情報として“SVM-based Scores2”と、属性の程度を示す値として“VAL2”とが対応付けられた状態で含まれる。
【0024】
図2に戻り、表示データ生成部104は、操作者が選択した評価軸を軸とするグラフ情報を生成する。グラフ情報とは、測定対象の判定結果を表すグラフを示す情報である。具体的には、グラフ情報とは、少なくとも1軸に判定結果LIの評価軸を軸にした情報を含む情報である。
表示データ生成部104は、生成したグラフ情報を、表示部11に供給する。表示部11は、グラフ情報を表示画像として表示させる。
【0025】
表示データ生成部104は、操作検出部103から、ユーザーがゲーティングした操作を示すゲーティング操作を取得する。表示データ生成部104は、このゲーティング操作によって選択された測定対象を示す情報を、制御信号生成部105に対して供給する。以下の説明では、ゲーティング操作によって選択された測定対象のことを、選択測定対象とも記載する。具体的には、選択測定対象は、学習結果出力装置10を操作するユーザーが関心のある測定対象をゲーティングすることにより決定される。以下の説明では、ゲーティングすることを、選択的に可視化するとも記載する。このゲーティングにより、学習結果出力装置10は、測定対象の中に含まれるゴミや、目的の細胞以外の粒子を除いた解析を行うことができる。
【0026】
より具体的には、ソーティングとは、学習結果出力装置10を操作するユーザーによってゲーティングされた微粒子群を、フローサイトメーター20が振り分けることである。
ゲーティングは、学習結果出力装置10を操作するユーザーによって行われる。ユーザーは、表示データ生成部104によって生成されたグラフ情報に基づいて、ゲーティングする操作を行う。操作検出部103は、このユーザーの操作を検出する。
【0027】
制御信号生成部105は可視化の操作に基づいて、学習対象物の振分に用いる制御信号を生成する。制御信号生成部105は、表示データ生成部104から、選択測定対象を示す情報を取得する。制御信号生成部105は、表示データ生成部104から取得した選択測定対象を示す情報に基づいて、ソーティングに用いる制御信号を生成する。ソーティングとは、測定対象を選択的に分取することである。分取とは、この一例では、評価軸に応じて選択的に振り分けることである。ソーティングは、振分の一例である。制御信号とは、フローサイトメーター20が備えるソーティング部21を制御する信号である。制御信号生成部105は、生成した制御信号をソーティング部21に対して供給する。
【0028】
ソーティング部21は、制御信号生成部105から制御信号を取得する。ソーティング部21は、制御信号生成部105から取得した制御信号に基づいて、流路を流される測定対象のうちから、選択測定対象をソーティングする。
【0029】
[グラフ情報]
ここで、図4から図6を参照して、表示データ生成部104が生成するグラフ情報について説明する。
図4は、表示データ生成部104が生成するグラフ情報の一例を示す図である。
図4に示すグラフは、判定結果LIに基づいて生成されるグラフである。このグラフは、評価軸に示す属性の程度毎に、該当する測定対象の数を示す。
図4に示すグラフの横軸は、評価軸“SVM-based Scores of Green Waveforms”である。上述したように、この評価軸は、機械学習部102によって機械学習された結果である判定結果LIに含まれる軸である。このグラフの縦軸は、測定対象の数である。
【0030】
図5は、従来のフローサイトメーターが表示するグラフと、表示データ生成部104が生成するグラフ情報の一例を示す図である。図5に示す測定対象は、DAPI(4’,6-diamidino-2-phenylindole)と、FG(fixable green)とによって蛍光染色された、複数の細胞である。機械学習部102は、細胞毎に信号情報を機械学習する。DAPIとは、青色蛍光の染色剤である。FGとは、緑色蛍光の染色剤である。
【0031】
図5(a)は、従来のフローサイトメーターが生成するグラフである。図5(a)の横軸は、予め定められた軸である“Total Intensity of FG”である。図5(a)の縦軸は、測定対象の数である。
【0032】
図5(b)は、本実施形態の表示データ生成部104が生成するグラフである。図5(b)の横軸は、判定結果LIに含まれる評価軸である“Total Intensity of DAPI”である。この評価軸“Total Intensity of DAPI”とは、2種類の細胞のDAPIによる青色の蛍光輝度の強さの程度の評価軸である。図5(b)の縦軸は、測定対象の数である。ここで、このグラフ中に示す、“MIA PaCa-2”と、“MCF-7”とは、上述した測定対象である。機械学習部102は、この2種類の細胞からの青色の蛍光輝度の強さの程度が含まれる判定結果LIを生成する。表示データ生成部104は、2種類の細胞の青色の蛍光輝度の強さの程度が含まれるグラフを生成する。
【0033】
図5(c)は、本実施形態の表示データ生成部104が生成するグラフである。図5(c)の横軸は、判定結果LIに含まれる評価軸である“SVM-based scores of FG”である。この評価軸“SVM-based scores of FG”とは、判定器によって判定されたFGで染色した細胞の形態情報を元にしたスコアを軸とする評価軸である。図5(c)の縦軸は、測定対象の数である。測定対象の形態の情報が含まれる“SVM-based scores of FG”を軸とすることにより、従来のFGの蛍光輝度の総量のヒストグラムでは表現することができなかった”MIA PaCa-2”と”MCF-7”との2つのピークを表現することができる。
【0034】
図6は、表示データ生成部104が生成するグラフ情報の一例を示す図である。
図6に示すグラフの点PT1は、上述した図5(b)及び図5(c)に示す判定結果LIを表す。このグラフは、複数の測定対象の数の比を示すグラフである。このグラフの横軸は、600個の細胞から“MCF-7”のみをDAPIによって染色し、この“MCF-7”が600個の細胞中に含まれる率を示す。
このグラフの縦軸は、600個の細胞から“MCF-7”と”MIA PaCa-2”との細胞質全体をFGによって染色したものであり、Blueの点はFGの蛍光輝度の総量に基づいて、600個の細胞の中から“MCF-7”の含まれる割合を判別した場合を示し、Redの点はFGによって染色された細胞質の形態情報をもとに、機械学習によって“MCF-7”が含まれると判定した率を示す。すなわち、このBlueの点は、横軸に正解データ、縦軸に細胞の形態情報を元に判別した結果をプロットしたものである。このように、学習結果出力装置10は、Blueの点が示すように従来の蛍光輝度の総量のみで判別する手法では正しく判別することができなかった細胞群に対し、Redの点が示すように、細胞形態に対して機械学習を用いることによって、より正確に細胞群を判別できることを示している。
【0035】
[学習結果出力装置10の動作の概要]
次に、図7を参照して学習結果出力装置10の動作の概要について説明する。
図7は、学習結果出力装置10の動作の一例を示す流れ図である。
【0036】
信号取得部101は、フローサイトメーター20から信号情報を取得する(ステップS10)。信号取得部101は、フローサイトメーター20から取得した信号情報を機械学習部102に対して供給する。
機械学習部102は、信号取得部101から信号情報を取得する。機械学習部102は、信号取得部101から取得した信号情報を機械学習する(ステップS20)。機械学習部102は、機械学習した結果である判定結果LIを、表示データ生成部104に対して供給する。機械学習部102は、判定結果LIを、制御信号生成部105に対して供給する。
【0037】
表示データ生成部104は、機械学習部102から判定結果LIを取得する。表示データ生成部104は、機械学習部102から取得した判定結果LIを、表示部11に表示させる。操作者は、表示部11に表示された判定結果LIに含まれる評価軸を選択する(ステップS30)。操作検出部103は、この操作者の操作を検出する。操作検出部103は、操作者が選択した評価軸を示す情報を、表示データ生成部104に対して供給する。
【0038】
表示データ生成部104は、操作検出部103から、操作者が選択した評価軸を示す情報を取得する。表示データ生成部104は、操作検出部103から取得した操作者が選択した評価軸を軸にするグラフ情報を生成する(ステップS40)。表示データ生成部104は、生成したグラフ情報を表示部11に対して供給する。
【0039】
表示部11は、表示データ生成部104からグラフ情報を取得する。表示部11は、グラフ情報に基づいて、表示画像を生成する(ステップS50)。表示部11は、生成した表示画像を表示する(ステップS60)。
【0040】
学習結果出力装置10を操作するユーザーは、表示画像に基づいて、ゲーティングする。操作検出部103は、このゲーティングの操作を、ゲーティング操作として検出する(ステップS70)。操作検出部103は、検出したゲーティング操作を、表示データ生成部104に対して供給する。表示データ生成部104は、操作検出部103からゲーティング操作を取得する。表示データ生成部104は、操作検出部103から取得したゲーティング操作に基づいて、ゲーティングされた細胞群のグラフ情報を生成する(ステップS80)。
【0041】
表示データ生成部104は、制御信号生成部105に対して、ゲーティング操作によって選択された選択測定対象を示す選択測定対象情報を供給する。制御信号生成部105は、表示データ生成部104から選択測定対象情報を取得する。制御信号生成部105は、表示データ生成部104から取得した選択測定対象情報に基づいて、この選択測定対象のソーティングに用いる信号を示す制御信号を生成する(ステップS90)。
制御信号生成部105は、生成した制御信号を、ソーティング部21に対して供給する(ステップS95)。
【0042】
ソーティング部21は、制御信号生成部105から制御信号を取得する。ソーティング部21は、この制御信号に基づいて、流路を流される測定対象のうちから選択測定対象を、ソーティングする。
【0043】
ここで、図8を参照して、操作検出部103が検出するゲーティングの操作の一例について説明する。
図8は、2つの軸をそれぞれ判定結果LIに基づく評価軸を軸にしたグラフの一例である。
【0044】
図8に示すグラフは、横軸に“SVM-based Scores1”、縦軸に“SVM-based Scores2”を軸にした測定信号の判定結果を示すグラフである。
領域AR1に含まれる点は、“SVM-based Scores1”が示す属性と、“SVM-based Scores2”が示す属性とを両方もつ測定対象を示す点である。領域AR2に含まれる点は、“SVM-based Scores1”が示す属性のみをもつ測定対象を示す点である。領域AR3に含まれる点は、“SVM-based Scores2”が示す属性のみをもつ測定対象を示す点である。領域AR4に含まれる点は、“SVM-based Scores1”が示す属性と、“SVM-based Scores2”が示す属性とを両方もたない測定対象を示す点である。
【0045】
学習結果出力装置10を操作するユーザーは、測定対象を示す点のうちから、目的の細胞群の点だと思われるエリアを選択して、境界GLを設定する。この境界GLを設定することが、ゲーティングすることである。なお、ユーザーは、過去のデータ等から散乱光又は蛍光の総量の強さ、形態情報を推測して、目的の細胞群だと思われるエリアを囲い込むことにより、境界を設定する。
操作検出部103は、このゲーティング操作を検出する。操作検出部103は、検出したゲーティング操作を、表示データ生成部104に対して供給する。表示データ生成部104は、ゲーティング操作に基づいて、境界GLを描画する。
また、表示データ生成部104は、この境界GLに含まれる細胞群のグラフ情報を生成してもよい。この境界GLに含まれる細胞群のグラフ情報とは、例えば、上述した図5及び図6に示すヒストグラムや散布図などのグラフである。
【0046】
[まとめ]
以上説明したように、学習結果出力装置10は、信号取得部101と、機械学習部102と、表示データ生成部104とを備える。信号取得部101は、フローサイトメーター20から信号情報を取得する。この信号情報には、測定対象の様々な情報が含まれる。機械学習部102は、この信号情報に基づいて判定する。機械学習部102は、判定結果LIを生成する。機械学習部102が生成する判定結果LIには、測定対象の属性を軸とする評価軸が含まれる。表示データ生成部104は、機械学習部102が機械学習した判定結果LIに基づいて、属性の程度の評価軸を軸にして判定結果LIを表すグラフ情報を生成する。これにより、学習結果出力装置10は、判定結果LIに含まれる評価軸を軸にもつグラフを生成することができる。また、学習結果出力装置10は、判定結果LIに含まれる評価軸を組み合わせたグラフを生成することができる。これにより、学習結果出力装置10は、測定対象の様々な属性の程度を軸にした情報を生成することができる。学習結果出力装置10は、この情報に基づいて、粒子群を測定対象の形態情報に基づいて分類することができる。
【0047】
なお、上述した説明では、信号取得部101は、フローサイトメーター20から信号情報を取得する構成について説明したが、これに限られない。信号取得部101は、信号情報を他の装置から取得してもよい。
【0048】
なお、上述した説明では、学習結果出力装置10が操作検出部103を備える構成について説明したが、必須ではない。学習結果出力装置10は、評価軸を軸にした機械学習結果を表すグラフ情報を生成すればよい。学習結果出力装置10は、操作検出部103を備えることにより、操作者の選択を検出することができる。学習結果出力装置10を操作する操作者は、判定結果LIに含まれる評価軸を選択することにより、気付いていない特徴を知ることができる。また、学習結果出力装置10は、操作者が気付いていない特徴に基づくグラフを生成することができるため、測定対象をより詳しく解析することができる。
また、学習結果出力装置10は、従来は分類することができなかった細胞の形態情報に基づく特徴量を、機械学習部102によって分類する。これにより、学習結果出力装置10は、従来は表示させることができなかった測定対象の特徴量を表示させることができる。
【0049】
また、学習結果出力装置10は、操作検出部103を備えることにより、上述したゲーティング操作を検出することができる。
学習結果出力装置10は、制御信号生成部105を備える。制御信号生成部105は、操作検出部103が検出するゲーティング操作に基づいて、制御信号を生成する。このゲーティング操作により選択される細胞群は、学習結果LIに基づく評価軸のグラフに基づくものである。この評価軸が細胞の形態を示す形態情報の評価軸である場合には、細胞の形態に基づいて、ユーザーは、目的の細胞をゲーティングすることができる。制御信号生成部105によって生成される制御信号に基づいて、フローサイトメーター20は、目的の細胞をソーティングすることができる。
つまり、学習結果出力装置10は、従来の細胞群からの散乱光又は蛍光強度だけではなく、学習結果LIに含まれる評価軸を軸にしたグラフに基づく、ゲーティング操作を検出することができる。また、学習結果出力装置10は、このゲーティング操作を検出することにより、選択された細胞群を分取する制御信号を生成することができる。
【0050】
また、機械学習部102は、論理回路によって構成される判定器を備える。これにより、機械学習部102は、短い時間で測定対象を機械学習することができる。つまり、学習結果出力装置10は、短い時間で測定対象の様々な属性が含まれる判定結果LIを生成することができる。
【0051】
なお、上述した説明では、機械学習部102は、サポートベクターマシンによって機械学習する構成について説明したが、これに限られない。機械学習部102は、機械学習結果として測定対象の属性の程度を表示データ生成部104に対して供給する構成であればよい。例えば、機械学習部102は、ランダムフォレストやニューラルネットワークなどによって機械学習する構成が挙げられる。また、機械学習部102は、対象に関する属性を出力する機械学習モデルであれば教師なしでも構わない。対象に関する属性を出力する機械学習モデルとは、例えば、主成分分析やオートエンコーダーなどが挙げられる。
【0052】
なお、上述した説明では、学習結果出力装置10は、制御信号生成部105を備える構成について説明したが、制御信号生成部105は必須では無い。学習結果出力装置10は、制御信号生成部105を備えることにより、判定結果LIに含まれる評価軸に基づいて、フローサイトメーター20に対してソーティングの制御をすることができる。
【0053】
なお、上述したフローサイトメーター20は、測定対象が光学系又は検出系に対して相対位置が変化する構成について説明したが、これに限られない。静止した測定対象に対して光学系又は検出系を移動させてもよい。
【0054】
また、上述したフローサイトメーター20は、光信号の時系列信号を取得する構成について説明したが、これに限られない。フローサイトメーター20は、イメージングフローサイトメーターであってもよい。この場合には、イメージングフローサイトメーターとは、測定対象の像を、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary MOS;相補型MOS)、PMT(photomultiplier tube;光電子増倍管)などの撮像素子によって撮像するフローサイトメーターである。イメージングフローサイトメーターは、撮像した像を示す撮像画像を生成する。フローサイトメーター20は、この撮像画像を、学習結果出力装置10に対して信号情報として供給する。学習結果出力装置10は、この撮像画像に含まれる測定対象の像を機械学習部102が備える判定器によって判定することにより、判定結果LIを生成する。
【0055】
なお、上述した図8に示すグラフの表現は一例であって、これに限られない。表示データ生成部104は、2つの軸をそれぞれ判定結果LIに基づく評価軸を軸にしたグラフ情報を生成すればよい。
【0056】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0057】
なお、上述の学習結果出力装置10は内部にコンピュータを有している。そして、上述した装置の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0058】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…細胞測定システム、10…学習結果出力装置、20…フローサイトメーター、21…ソーティング部、11…表示部、12…操作部、101…信号取得部、102…機械学習部、103…操作検出部、104…表示データ生成部、105…制御信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8