(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】MEMS素子
(51)【国際特許分類】
H01L 29/84 20060101AFI20221109BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20221109BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L29/84 Z
H04R19/04
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2018229678
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 新一
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176035(JP,A)
【文献】特開平11-101818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0158279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0362292(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311083(US,A1)
【文献】特開2015-74034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/84
H04R 19/04
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックチャンバーを備えたハンドル基板上に、固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とが対向配置しているMEMS素子において、
前記固定電極膜は、スペーサーを介して前記ハンドル基板上に配置し、
前記可動電極膜は、前記固定電極膜と前記ハンドル基板の間に配置し、前記バックチャンバーを囲む
領域にわたって前記ハンドル基板表面に配置された該ハンドル基板よりも熱膨張係数の小さい支持膜上に、前記ハンドル基板が変形したときに前記可動電極が変位しないように変形可能な連結部材を配置し、前記支持膜と前記連結部材により前記可動電極と前記ハンドル基板とを接続し、
前記可動電極膜と対向する前記ハンドル基板の一部は導電性領域であり、該導電性領域上に少なくとも1つの前記連結部材と引出電極を配置し、前記可動電極と前記引出電極とを前記少なくとも1つの連結部材と前記導電性領域により電気的に接続していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
請求項1記載のMEMS素子において、
前記連結部材は、第1の端部と、該第1の端部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、第2の端部と、該第2の端部から立ち上がる第2の立ち上がり部と、前記第1の立ち上がり部の他端と前記第2の立ち上がり部の他端とを接続する頂部とからなるアーチ形状であり、
前記頂部が前記可動電極に接続し、
前記第1の端部が前記バックチャンバーの中心と反対方向に延出し、前記第2の端部が前記バックチャンバーの中心方向に延出し、それぞれ前記支持膜に接続するとともに前記第1の端部あるいは前記第2の端部の少なくとも一部が前記導電性領域に接続していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項3】
請求項
1記載のMEMS素子において、
前記連結部材は、
第1の端部と、該第1の端部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、第2の端部と、該第2の端部から立ち上がる第2の立ち上がり部と、前記第1の立ち上がり部の他端と前記第2の立ち上がり部の他端とを接続する頂部とからなるアーチ形状の前記第2の端部および前記第2の立ち上がり部を除いた前記第1の端部、前記第1の立ち上がり部および前記頂部とからな
る前記アーチ形状の片側のみの形状であって、前記第1の端部が前記導電
性領域に接続している第1型の連結部材、
または、
前記アーチ形状の前記第1の端部および前記第1の立ち上がり部を除いた前記第2の端部、前記第2の立ち上がり部および前記頂部とからな
る前記アーチ形状の片側のみの形状であって、前記第2の端部が前記導電性領域に接続している第2型の連結部材のいずれかからなることを特徴とするMEMS素子。
【請求項4】
請求項3記載のMEMS素子において、
前記連結部材は、前記第1型の連結部材および前記第2型の連結部材からなり、該第1型の連結部材と該第2型の連結部材とが交互かつ前記バックチャンバーを挟んで対向する位置に同じ型の連結部材を配置していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項5】
請求項
1記載のMEMS素子において、
複数の前記連結部材
の1つを柱状とし、該柱状の連結部材を前記導電性領域上に配置することを特徴とするMEMS素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ等として用いられるMEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスを用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子として、半導体基板上に可動電極、犠牲層および固定電極を形成した後、犠牲層の一部を除去することで、スペーサーを介して固定電極と可動電極との間にエアーギャップ(中空)構造が形成された容量型のMEMS素子が知られている。
【0003】
例えば、容量型のMEMS素子では、複数の貫通孔を備えた固定電極と、音圧等を受けて振動する可動電極とを対向して配置し、振動による可動電極の変位を電極間の容量変化として検出する構成となっている。この種のMEMS素子は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
従来のMEMS素子の動作を
図10に模式的に示す。ハンドル基板21上に絶縁膜22を介して導電性の可動電極を含む可動電極膜23(振動膜に相当)と導電性の固定電極を含む固定電極膜24がスペーサー25を介して配置され、音圧等を受けて可動電極膜23が振動すると、固定電極膜24との間の距離が変化し、固定電極膜24の固定電極と可動電極膜23の可動電極との間で形成されているキャパシタの容量値が変化する。この容量値を図示しない電極から取り出すことで、可動電極膜23が受ける音圧等に応じた出力信号を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のMEMS素子は、熱膨張や熱収縮によりハンドル基板21の寸法が変動し、可動電極膜23を変形させ、可動電極膜23が固定電極膜24に近づくあるいは離れるという変位が生じる。そのため、可動電極膜23と固定電極膜24との間の寸法が変動して出力特性が変動してしまうという問題があった。本発明はこのような問題点を解消し、MEMS素子のハンドル基板に寸法変動があった場合でも特性変動の少ないMEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本願請求項1に係る発明は、バックチャンバーを備えたハンドル基板上に、固定電極を含む固定電極膜と可動電極を含む可動電極膜とが対向配置しているMEMS素子において、前記固定電極膜は、スペーサーを介して前記ハンドル基板上に配置し、前記可動電極膜は、前記固定電極膜と前記ハンドル基板の間に配置し、前記バックチャンバーを囲む領域にわたって前記ハンドル基板表面に配置された該ハンドル基板よりも熱膨張係数の小さい支持膜上に、前記ハンドル基板が変形したときに前記可動電極が変位しないように変形可能な連結部材を配置し、前記支持膜と前記連結部材により前記可動電極と前記ハンドル基板とを接続し、前記可動電極膜と対向する前記ハンドル基板の一部は導電性領域であり、該導電性領域上に少なくとも1つの前記連結部材と引出電極を配置し、前記可動電極と前記引出電極とを前記少なくとも1つの連結部材と前記導電性領域により電気的に接続していることを特徴とする。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、前記連結部材は、第1の端部と、該第1の端部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、第2の端部と、該第2の端部から立ち上がる第2の立ち上がり部と、前記第1の立ち上がり部の他端と前記第2の立ち上がり部の他端とを接続する頂部とからなるアーチ形状であり、前記頂部が前記可動電極に接続し、前記第1の端部が前記バックチャンバーの中心と反対方向に延出し、前記第2の端部が前記バックチャンバーの中心方向に延出し、それぞれ前記支持膜に接続するとともに前記第1の端部あるいは前記第2の端部の少なくとも一部が前記導電性領域に接続していることを特徴とする。
【0009】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、前記連結部材は、第1の端部と、該第1の端部から立ち上がる第1の立ち上がり部と、第2の端部と、該第2の端部から立ち上がる第2の立ち上がり部と、前記第1の立ち上がり部の他端と前記第2の立ち上がり部の他端とを接続する頂部とからなるアーチ形状の前記第2の端部および前記第2の立ち上がり部を除いた前記第1の端部、前記第1の立ち上がり部および前記頂部とからなる前記アーチ形状の片側のみの形状であって、前記第1の端部が前記導電性領域に接続している第1型の連結部材、または、前記アーチ形状の前記第1の端部および前記第1の立ち上がり部を除いた前記第2の端部、前記第2の立ち上がり部および前記頂部とからなる前記アーチ形状の片側のみの形状であって、前記第2の端部が前記導電性領域に接続している第2型の連結部材のいずれかからなることを特徴とする。
【0010】
本願請求項4に係る発明は、請求項3記載のMEMS素子において、前記連結部材は、前記第1型の連結部材および前記第2型の連結部材からなり、該第1型の連結部材と該第2型の連結部材とが交互かつ前記バックチャンバーを挟んで対向する位置に同じ型の連結部材を配置していることを特徴とする。
【0011】
本願請求項5に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、複数の前記連結部材の1つを柱状とし、該柱状の連結部材を前記導電性領域上に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のMEMS素子は、熱収縮等によりハンドル基板に寸法変動があった場合でも、熱膨張係数の小さな支持膜および変形可能な連結部材を介してハンドル基板上に可動電極膜を配置するため、ハンドル基板の寸法変動により生じる応力を支持膜が抑制し、連結部材が変形して吸収することで、熱収縮等による可動電極膜への影響をなくし、安定した出力特性のMEMS素子を得ることができる。
【0013】
また、連結部材のうち1つを柱状とし、ハンドル基板の一部に形成した導電性領域上に配置し、出力信号を得る構造とすることで、可動電極と引出電極との導通経路を確保することができ、安定した出力特性かつ高出力のMEMS素子を得ることができる。
【0014】
さらにまた、本発明のMEMS素子は、支持膜をSiO2やSiNで構成することで、通常の半導体装置の製造工程でのみで形成することができるため、非常に簡便にMEMS素子を形成することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図2】本発明の第1の実施例のMEMS素子の一部拡大図である。
【
図3】本発明の第1の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図4】本発明の第2の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施例のMEMS素子の一部拡大図である。
【
図6】本発明の第3の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図7】本発明の第3の実施例のMEMS素子の一部拡大図である。
【
図8】本発明の第5の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図9】本発明の第5の実施例のMEMS素子を説明する図である。
【
図10】一般的なMEMS素子の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のMEMS素子は、熱膨張係数の小さな支持膜および変形可能な連結部材を介してハンドル基板上に可動電極膜を配置する構造のため、熱収縮等によりハンドル基板に寸法変動があったとしても、その寸法変動により生じる応力を支持膜が抑制し、さらに連結部材が変形することで吸収し、可動電極膜にその応力が伝わることがなく、可動電極膜が変位することがないので、出力特性の変動を抑制することが可能となる。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例について説明する。
図1は本発明の第1の実施例の説明図である。
図1に示すように本実施例のMEMS素子は、例えばシリコン基板からなるハンドル基板1上に絶縁膜2およびスペーサー3を介して、固定電極を含む固定電極膜4を配置している。一方可動電極を含む可動電極膜5は連結部材6および支持膜7を介して、ハンドル基板1上に固定電極膜4と対向するように配置している。連結部材6は、変形可能であって導電性を有しており、例えばドープドポリシリコン等で形成することができる。また支持膜7は、ハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さいものであって、例えばSiO
2やSiN等で形成することができる。
【0018】
図2は、可動電極膜5、連結部材6、支持膜7および導電性領域8の一部拡大図である。
図2に示すように連結部材6は、第1の端部6A、第1の立ち上がり部6B、頂部6C、第2の立ち上り部6Dおよび第2の端部6Eからなり可動電極膜5側に凸となるアーチ形状であり、第1の端部6Aがバックチャンバー9の中心と反対方向に延出し、ハンドル基板1上に形成された導電性領域8に接続しており、第2の端部6Eはバックチャンバー9の中心方向に延出し、ハンドル基板1上に形成された支持膜7に接続し、頂部6Cが可動電極膜5に接続している。
【0019】
図3は、可動電極膜5、連結部材6、支持膜7、導電性領域8およびハンドル基板1の配置を示す図である。
図3に示すように、バックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1上に支持膜7を形成し、この支持膜7上に連結部材6を形成し、支持膜7および連結部材6により可動電極膜5を支持している。また、
図1、
図2および
図3示すように、1つの連結部材6の第2の端部6Eを支持膜7上に配置し、第1の端部6Aをハンドル基板1の一部に形成した導電性領域8上に配置し、この導電性領域8が引出電極10とも接続している。ここで、連結部材6は導電性を有しているため、可動電極膜5を構成する可動電極と引出電極10とが連結部材6および導電性領域8を介して電気的に接続している。なお、
図2に示す例では連結部材6の第1の端部6Aを導電性領域8上に配置し、第2の端部6Eを支持膜7上に配置したものを記載したが、第1の端部6Aあるいは第2の端部6Eの少なくとも一部が導電性領域8に配置していればよい。また、
図3に示す例では導電性領域8上に連結部材6を1つ配置したものを記載したが、導電性領域8を広く形成し導電性領域8上に複数の連結部材を配置してもよい。ただし、導電性領域8は支持膜7と比較して熱膨張係数が大きいため、支持膜7形成領域の一部に形成される導電性領域8の大きさや配置は、支持膜7の効果を損なわないよう適宜設定されることになる。さらにまた、
図3に示す例では連結部材6を8つ配置したものを記載したが、2つ以上配置すればよく、バランスよく配置すればよい。
【0020】
このような構造の本発明のMEMS素子は、可動電極膜5がバックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1に形成したハンドル基板1よりも熱膨張係数の小さい支持膜7と、この支持膜7上に形成したアーチ形状の変形可能な連結部材6とを介してハンドル基板1上に配置された構造であることから、熱収縮等によりハンドル基板1に寸法変動があったとしても、支持膜7はハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さく、熱収縮等による寸法変動が小さいため、ハンドル基板1の寸法変動により生じる応力が連結部材6に伝わることを抑制し、さらに連結部材6が変形することで吸収し、可動電極膜5にその応力が伝わることがなくなる。つまり、ハンドル基板1の寸法変動により可動電極膜5が固定電極膜4に近づくあるいは離れるという変位が生じることがなく、出力特性の変動を抑制することが可能となり、安定した出力特性を得ることができる。
【実施例2】
【0021】
次に本発明の第2の実施例について説明する。
図4は本発明の第2の実施例のMEMS素子の説明図であり、
図5は可動電極膜5、連結部材6-a(第1型の連結部材に相当)、支持膜7および導電性領域8の一部拡大図である。
図4および
図5に示すように本実施例のMEMS素子は、上記第1の実施例におけるアーチ形状の連結部材6の第2の端部6Eと第2の立ち上がり部6Dを除き、バックチャンバー9の中心と反対方向に延出する第1の端部6A、第1の立ち上がり部6Bおよび頂部6Cで構成する形状とし、頂部6Cが可動電極膜5に接続し、第1の端部6Aが前記ハンドル基板1上に形成された導電性領域8に接続する構造としている。
【0022】
このような構造の本発明のMEMS素子は、上記第1の実施例と同様に、可動電極膜5がバックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1に形成したハンドル基板1よりも熱膨張係数の小さい支持膜7と、この支持膜7上に形成した変形可能な連結部材6-aとを介してハンドル基板1上に配置された構造であることから、熱収縮等によりハンドル基板1に寸法変動があったとしても、支持膜7はハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さく、熱収縮等による寸法変動が小さいため、ハンドル基板1の寸法変動により生じる応力が連結部材6-aに伝わることを抑制し、さらに連結部材6-aが変形することで吸収し、可動電極膜5にその応力が伝わることがなくなる。つまり、ハンドル基板1の寸法変動により可動電極膜5が固定電極膜4に近づくあるいは離れるという変位が生じることがなく、出力特性の変動を抑制することが可能となり、安定した出力特性を得ることができる。
【実施例3】
【0023】
次に本発明の第3の実施例について説明する。
図6は本発明の第3の実施例のMEMS素子の説明図であり、
図7は可動電極膜5、連結部材6-b(第2型の連結部材に相当)、支持膜7および導電性領域8の一部拡大図である。
図6および
図7に示すように本実施例のMEMS素子は、上記第1の実施例におけるアーチ形状の連結部材6の第1の端部6Aと第1の立ち上がり部6Bを除き、バックチャンバー9の中心方向に延出する第2の端部6E、第2の立ち上がり部6Dおよび頂部6Cで構成する形状とし、頂部6Cが可動電極膜5に接続し、第2の端部6Eが前記ハンドル基板1上に形成された導電性領域8に接続する構造としている。
【0024】
このような構造の本発明のMEMS素子は、上記第1および第2の実施例と同様に、可動電極膜5がバックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1に形成したハンドル基板1よりも熱膨張係数の小さい支持膜7と、この支持膜7上に形成した変形可能な連結部材6-bとを介してハンドル基板1上に配置された構造であることから、熱収縮等によりハンドル基板1に寸法変動があったとしても、支持膜7はハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さく、熱収縮等による寸法変動が小さいため、ハンドル基板1の寸法変動により生じる応力が連結部材6-bに伝わることを抑制し、さらに連結部材6-bが変形することで吸収し、可動電極膜5にその応力が伝わることがなくなる。つまり、ハンドル基板1の寸法変動により可動電極膜5が固定電極膜4に近づくあるいは離れるという変位が生じることがなく、出力特性の変動を抑制することが可能となり、安定した出力特性を得ることができる。
【実施例4】
【0025】
次に本発明の第4の実施例について説明する。本実施例のMEMS素子は、上記第2の実施例における連結部材6-aと上記第3の実施例における連結部材6-bを交互に配置し、かつバックチャンバー8を挟んで向かい合う連結部材は同じ形状のものを配置する構造とすることも可能である。
【0026】
このような構造の本発明のMEMS素子は、上記第1乃至第3の実施例と同様に、可動電極膜5がバックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1に形成したハンドル基板1よりも熱膨張係数の小さい支持膜7と、この支持膜7上に形成した変形可能な連結部材6-a、6-bとを介してハンドル基板1上に配置された構造であることから、熱収縮等によりハンドル基板1に寸法変動があったとしても、支持膜7はハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さく、熱収縮等による寸法変動が小さいため、ハンドル基板1の寸法変動により生じる応力が連結部材6-a、6-bに伝わることを抑制し、さらに連結部材6-a、6-bが変形することで吸収し、可動電極膜5にその応力が伝わることがなくなる。つまり、ハンドル基板1の寸法変動により可動電極膜5が固定電極膜4に近づくあるいは離れるという変位が生じることがなく、出力特性の変動を抑制することが可能となり、安定した出力特性を得ることができる。
【実施例5】
【0027】
次に本発明の第5の実施例について説明する。
図8は本発明の第5の実施例のMEMS素子の説明図であり、
図9は
図8に示す可動電極膜5、連結部材6、支持膜7、ハンドル基板1および導電性領域8の配置を示す図である。
図8および
図9に示すように本実施例のMEMS素子は、上記第1の実施例における連結部材6のうち少なくとも1つを柱状の連結部材11とし、導電性領域8上に配置する構造としている。ここで、
図9に示す例では導電性領域8上に柱状の連結部材11を1つ配置したものを記載したが、柱状の連結部材11は1つに限るものではない。ただし、アーチ形状の変形可能な連結部材6と比較して変形性が劣るため、配置する数はおのずと制限されることになる。なお、
図9に示す例では、柱状の連結部材11が円柱であるものを記載したが、角柱であってもよい。また、
図8および
図9に示す例では、柱状以外の連結部材6の形状が第1の実施例で説明した形状であるアーチ形状のものを記載したが、第2~第4の実施例で説明した連結部材の形状、配置であってもよい。
【0028】
このような構造の本発明のMEMS素子は、上記第1乃至第4の実施例と同様に、可動電極膜5がバックチャンバー9を囲むようにハンドル基板1に形成したハンドル基板1よりも熱膨張係数の小さい支持膜7と、この支持膜7上に形成したアーチ形状の変形可能な連結部材6とを介してハンドル基板1上に配置された構造であることから、熱収縮等によりハンドル基板1に寸法変動があったとしても、支持膜7はハンドル基板1よりも熱膨張係数が小さく、熱収縮等による寸法変動が小さいため、ハンドル基板1の寸法変動により生じる応力が連結部材6に伝わることを抑制し、さらに連結部材6が変形することで吸収し、可動電極膜5にその応力が伝わることがなくなり、安定した出力特性を得ることができるとともに、連結部材6のうち少なくとも1つを柱状の連結部材11とし、導電性領域8上に配置する構造のため、可動電極膜5を構成する可動電極あるいは引出電極10と導電性領域8の電気的接続が強くなり、上記実施例と比べて高出力を得ることができる。
【0029】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明の上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもなく、具体的には、支持膜はハンドル基板の寸法変動による応力を抑制すればよく、支持膜の大きさ、配置等は適宜変更可能であり、連結部材はハンドル基板の寸法変動による応力を変形することで吸収すればよく、連結部材の大きさ、配置等は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1: ハンドル基板、2:絶縁膜、3:スペーサー、4:固定電極膜、5:可動電極膜、6,6-a,6-b:連結部材、6A:第1の端部、6B:第1の立ち上がり部、6C:頂部、6D:第2の立ち上がり部、6E:第2の端部、7:支持膜、8:導電性領域、9:バックチャンバー、10:引出電極、11:柱状の連結部材、21:ハンドル基板、22:絶縁膜、23:可動電極膜、24:固定電極膜、25:スペーサー