IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ・東レ株式会社の特許一覧

特許7173689固体シリコーン材料、それを用いてなる積層体および発光デバイス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】固体シリコーン材料、それを用いてなる積層体および発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20221109BHJP
   C08K 7/24 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 77/44 20060101ALI20221109BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20221109BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20221109BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221109BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20221109BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K7/24
C08G77/44
B32B27/00 101
H01L33/50
H01L33/56
H05B33/14 A
H05B33/12 E
H05B33/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019519540
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2018017492
(87)【国際公開番号】W WO2018216443
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017102355
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尼子 雅章
(72)【発明者】
【氏名】水上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 昌保
(72)【発明者】
【氏名】津田 武明
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-098235(JP,A)
【文献】特開2004-010751(JP,A)
【文献】特開2009-091380(JP,A)
【文献】特開2008-280420(JP,A)
【文献】特表2013-540170(JP,A)
【文献】国際公開第2016/116473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08G 77/00 - 77/62
B32B 1/00 - 43/00
H01L 33/48 - 33/64
H05B 33/00 - 33/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均粒子径1~100nmの中空若しくは多孔質の無機微粒子、および
(B)分子内にRASiO3/2(式中、RAは炭素原子数6~14のアリール基)で表されるアリールシロキサン単位および(RSiO2/2)n(式中、Rはハロゲン原子で置換されても良い炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~14のアリール基、nは3~1000の範囲の数)で表されるポリジオルガノシロキサン構造を有し、ホットメルト性を有するオルガノポリシロキサン
を含有してなり、成分(A)の含有量が10~95質量%の範囲である、固体シリコーン材料。
【請求項2】
成分(A)が数平均粒子径40~70nmの中空シリカ微粒子である無機微粒子であり、成分(A)の含有量が40~95質量%の範囲である、請求項1に記載の固体シリコーン材料。
【請求項3】
成分(B)が、RASiO3/2(式中、RAは前記同様の基)で表されるアリールシロキサン単位をオルガノポリシロキサン全体の20~80質量%含有するオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載の固体シリコーン材料。
【請求項4】
成分(B)が、{(RSiO2/2)}{RASiO3/21-a(式中、R,RAは前記同様の基でありaは0.8~0.2の範囲の数)で表されるオルガノポリシロキサンである、請求項1または請求項3に記載の固体シリコーン材料。
【請求項5】
フィルム状または薄膜状である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料。
【請求項6】
膜厚が50~300nmの範囲である、請求項5に記載の固体シリコーン材料。
【請求項7】
成分(A)の平均粒子径L(nm)に対して、膜厚がL~4L(nm)の範囲内にあることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の固体シリコーン材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる、光学部材。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた、積層体。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる固体層が、剥離層上に配置された構造を有する、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる固体層、および、少なくとも1種の蛍光体を含む層を有する、請求項9に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる固体層、および、少なくとも1種の蛍光体を含む層を有し、かつ、上記の固体シリコーン材料からなる固体層が空気との界面に配置された構造を有する、請求項9または請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
少なくとも1の光源、その上に形成された少なくとも1種の蛍光体を含む層、および空気との界面に配置された請求項1~7のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた、発光デバイス。
【請求項14】
以下の工程(i)~(iii)のいずれかの工程を備えた、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
(i)請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料を、他の構造体上でフィルム状または薄膜状に成型する工程
(ii)請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料を有機溶媒に分散させ、他の構造体上にフィルム状または薄膜状に塗工した後、有機溶媒を除去する工程
(iii)請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材上に、他の構造体を積層する工程
【請求項15】
以下の工程を備えた、請求項9、請求項11または請求項12に記載の積層体の製造方法。
(イ):剥離層上に、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の固体シリコーン材料を有機溶媒に分散させ、他の構造体上にフィルム状または薄膜状に塗工した後、有機溶媒を除去する工程、
(ロ):前記工程(イ)で得られたフィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料上に、同一または異なるシリコーン層を積層する工程、
(ハ):前記工程(ロ)で得られた、フィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料が積層されたシリコーン層を一体として、剥離層から分離する工程
(ニ):前記工程(ハ)で得られた積層体を、他の構造体上に積層する工程
【請求項16】
積層体が発光デバイスであり、固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材を、空気との界面に配置することを特徴とする、請求項14または請求項15に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体シリコーン材料、それを用いた積層体および発光デバイスに関し、特に、均一なナノメートルスケールの膜厚で薄膜化が容易であり、発光デバイスである積層体の空気との界面に配置することで、光取り出し効率等を改善可能な固体シリコーン材料に関する。また、本発明は、当該固体シリコーン材料を用いた、積層体および光学デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体シリコーン材料は成形性に優れ、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有することから、幅広い産業分野で利用されている。特に、硬化性シリコーン組成物の硬化物は、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料、特に発光デバイス(無機または有機発光ダイオード)の封止剤としても適している。
【0003】
近年、新たな発光デバイスの製造プロセスのために、室温で固体状または半固体状であり、高温で加熱溶融する、ホットメルト性を有するシリコーン含有材料が提案されている。ホットメルト性を有するシリコーン含有材料は、通常の液状材料と異なり、取扱作業性と均一塗工性に優れ、たとえば、本出願人らは、特許文献1において、分子内に樹脂状シロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有する反応性または非反応性のシリコーン含有ホットメルト組成物を封止材膜に用いた光学アセンブリを提案している。当該封止材は、特に高屈折率を有し、光源からの波長を変換する蛍光材を有する封止材膜(蛍光体層)と組み合わせて用いることで、生産性および発光効率に優れた発光デバイスを提供できるものである。しかしながら、発光デバイスの分野では、特に、上記の蛍光体層を用いた場合、より高い光取り出し効率が求められており、上記の発光デバイスにおいても、改善の余地を残していた。なお、特許文献1には、特定の中空若しくは多孔質の無機微粒子を配合することや、光取り出し効率を改善するための薄膜、特にナノメートルスケールの薄膜の使用は何ら開示されていない。
【0004】
他方、小粒子径の中空若しくは多孔質の無機微粒子は、内部または細孔内に空気を含有する構造を有し、バインダーとなる樹脂に配合することで空気層に対して低い屈折率を与えるため、反射防止フィルムの反射防止層として利用されている。具体的には、基材層に対して低屈折率の当該反射防止層の界面において入射光(外部光源からの入射光)が反射され、入射光と反射光の干渉により反射防止を実現するものである。例えば、特許文献2~4には、シリコーンをバインダー樹脂として用いた、中空若しくは多孔質の無機微粒子を含有する反射防止膜が開示されている。しかしながら、これらの特許文献には、高屈折率を与え、かつ、ホットメルト性を有するシリコーン材料、特に、分子内に樹脂状シロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有するシリコーン材料の使用は何ら開示されておらず、光源を内部に有する発光デバイスにおける光取り出し効率を改善するための薄膜の使用は何ら開示されていない。また、特許文献5には、電子部品用途樹脂注型材料においてベースレジンとしてのシリコーン樹脂マトリックスに球状のシリカ中空ビーズ粒子を配合した硬化物が提案されているが、分子内に樹脂状シロキサン構造と直鎖状シロキサン構造を有するシリコーン材料の使用は何ら開示されておらず、シリカ中空ビーズ粒子は5~15μmと極めて粗大であり、薄膜の使用は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-508290号公報
【文献】国際特許公開2009-001723号公報
【文献】国際特許公開2008-117652号公報
【文献】特開2004-258267号公報
【文献】特開平06-84642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、取扱作業性および特にナノメートルの膜厚さで均一な薄膜化が用意であり、かつ、発光デバイスである積層体に適用した場合、その封止性能を何ら損なう事無く、光取り出し効率を改善可能なシリコーン材料、それを用いた積層体および発光デバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、当該シリコーン材料を用いた積層体および発光デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意検討の結果、本発明者らは、(A)数平均粒子径1~100nmの中空若しくは多孔質の無機微粒子、および
(B)分子内にRASiO3/2(式中、RAは炭素原子数6~14のアリール基)で表されるアリールシロキサン単位および(RSiO2/2)n(式中、Rはハロゲン原子で置換されても良い炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~14のアリール基、nは3~1000の範囲の数)で表されるポリジオルガノシロキサン構造を有するオルガノポリシロキサン
を含有してなり、成分(A)の含有量が10~95質量%の範囲である、固体シリコーン材料を用いることで、上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。当該固体シリコーン材料は、ホットメルト性を有し、特にナノメートルスケールの薄膜化が容易であり、光学部材として、発光デバイスに適用することで、その光取り出し効率を改善できる。
【0008】
さらに、本発明者らは、上記の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた、積層体により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0009】
同様に、本発明者らは、少なくとも1の光源、その上に形成された少なくとも1種の蛍光体を含む層、および空気との界面に配置された上記の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた、発光デバイスにより上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【0010】
加えて、本発明者らは、上記の固体シリコーン材料をフィルム状または薄膜状に成型する工程を備えた積層体または発光デバイスの製造方法により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
本発明の固体シリコーン材料を用いることにより、取扱作業性および特にナノメートルの膜厚さで均一な薄膜化が用意であり、かつ、発光デバイスである積層体に適用した場合、その封止性能を何ら損なう事無く、光取り出し効率を改善可能なシリコーン材料、それを用いた積層体および発光デバイスを提供することができる。また、上記の固体シリコーン材料をフィルム状または薄膜状に成型する工程を備えた積層体または発光デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[固体シリコーン材料]
まず、本発明の固体シリコーン材料について説明する。当該固体シリコーン材料は、内部または細孔内に空気を含有する構造を有し、小粒子径(ナノメートルスケール)の中空若しくは多孔質の無機微粒子を、分子内にRASiO3/2で表されるアリールシロキサン単位(T分岐単位または樹脂構造)および(RSiO2/2)nで表されるポリジオルガノシロキサン構造(シロキサン直鎖構造)を併せ持つレジン-リニアブロックコポリマー型のオルガノポリシロキサンからなるポリマーマトリックス中に一定量分散させてなることを特徴とする。
【0013】
より具体的には、本発明の固体シリコーン材料は、
(A)数平均粒子径1~100nmの中空若しくは多孔質の無機微粒子、および
(B)分子内にRASiO3/2(式中、RAは炭素原子数6~14のアリール基)で表されるアリールシロキサン単位および(RSiO2/2)n(式中、Rはハロゲン原子で置換されても良い炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~14のアリール基、nは3~1000の範囲の数)で表されるポリジオルガノシロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンを含有してなり、成分(A)の含有量が10~95質量%の範囲である、固体シリコーン材料であり、以下、詳細を説明する。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分は、平均粒子径1~100nmの中空若しくは多孔質の無機微粒子であり、内部または細孔内に空気を含有する構造を有し、ポリマーマトリックスの屈折率を低下させて、低屈折率の固体層を実現することができる。このような小粒子径の中空若しくは多孔質の無機微粒子はナノメータースケールの薄膜状にした場合に、薄膜の低屈折率性を実現し、かつ、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率を向上させる成分である。
【0015】
ここで、中空の無機微粒子とは、内部に空洞を有する略球形の微粒子であり、表面が平滑または凹凸を有しても良い、真球状乃至楕円球状の微粒子である。この中空の無機微粒子自体が低屈折率(例えば、屈折率:1.20~1.45)を有している。具体例としては、中空シリカ微粒子等を挙げることができる。同様に、多孔質の無機微粒子とは、空洞が1つの微粒子に複数設けて形成された構造を有する無機微粒子である。無機微粒子の種類は特に限定されるものではないが、コロイダルシリカ、多孔質シリカゾル、中空シリカゾル、MgF2ゾル等の無機微粒子等であることが好ましく、特に、コロイダルシリカである中空シリカ微粒子を主成分とする無機微粒子が好適に例示される。なお、これらのシリカ微粒子は、アクリル修飾等の公知の表面修飾がなされていてもよく、更に、分散性の向上の点から、無機微粒子の表面をシラザンまたは公知のシランカップリング剤で処理したものであってもよい。さらに、これらの無機微粒子は、1種を単独で用いてもよく、種類又は平均粒子径の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明の中空の無機微粒子は、上記のとおり略球形の形状であることが好ましく、非球形、すなわち、粒子の長短径を有する板状粒子、針状粒子、チューブ状粒子等を含まないことが特に好ましい。
【0016】
(A)成分の平均粒子径は凝集していない個々の無機微粒子についての数平均粒子径であり、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置等を用いて測定可能な平均一次粒子径である。当該数平均粒子径は、1~100nmの範囲であり、とくに、平均粒子径40~70nmの中空シリカ微粒子を主成分とする無機微粒子であることが好適である。無機微粒子の平均粒子径が前記上限よりも大きくなると、ナノメータースケールの膜厚よりも粒子が大きくなる場合があるほか、製造される薄膜においてレイリー散乱によって光が乱反射されて当該固体層が白っぽく見え、その透過率が低下することがある。一方、無機微粒子の平均粒子径が前記下限よりも小さくなると、無機微粒子の分散性が低下して凝集の原因となるほか、後述する薄膜状部材について、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率を向上することができない場合がある。
【0017】
(A)成分の屈折率は、特に制限されるものではなく、製法によっても異なるものであるが、本発明の技術的効果の見地から、屈折率が1.20~1.45の範囲であるもの用いるのが好ましく、1.25~1.37であることが好ましい。(A)成分の屈折率は、低いほど好ましいが、中空シリカ微粒子においては、1.20が実質上の下限であり、また1.45を超えると十分な高屈折率に近づくために、十分な光取り出し効率の向上効果を得ることができない場合がある。
【0018】
[(B)成分]
(B)成分は、上記の(A)成分のバインダーとなる、アリール基を有するT単位を含むレジン-リニアポリマー型のオルガノポリシロキサンであり、屈折率が高く、かつ、ホットメルト性を有することから、容易に均一かつ膜厚がナノメータースケールの薄膜状の固体層を形成することができる。
【0019】
このような(B)成分は、分子内にRASiO3/2(式中、RAは炭素原子数6~14のアリール基)で表されるアリールシロキサン単位および(RSiO2/2)n(式中、Rはハロゲン原子で置換されても良い炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数6~14のアリール基、nは3~1000の範囲の数)で表されるポリジオルガノシロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンである。
【0020】
ここで、炭素原子数6~14のアリール基は、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、であり、工業生産上の見地から、好適にはフェニル基である。また、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基であり、工業生産上の見地から、好適にはメチル基またはフェニル基である。
【0021】
より具体的には、(B)成分は、T単位:RSiO3/2(Rは一価有機基、水酸基または炭素原子数1~6のアルコキシ基であり、分子内の全てのRのうち、少なくとも1以上は炭素原子数6~14のアリール基である)、任意でQ単位:SiO4/2で表されるシロキサン単位を有するレジン構造ブロックと(RSiO2/2)n (式中、nは前記同様の数であり、Rは前記同様の基)で表されるリニア構造ブロックとが、シルアルキレン結合又はSi-O-Si結合により連結された構造を有し、かつ、RASiO3/2単位を有するレジン-リニアオルガノポリシロキサンブロックコポリマーであり、ポリマー中のレジン構造ブロックとリニア構造ブロックを連結するシルアルキレン結合またはSi-O-Si結合において、レジン構造に結合するSi原子がRASiO3/2単位を構成していることが好ましい。
【0022】
(B)成分中のレジン構造ブロックは、(B)成分全体としてホットメルト性を付与する部分構造であり、レジン(樹脂)状オルガノポリシロキサン構造である。かかる構造は、RASiO3/2で表されるアリールシロキサン単位を必須として、T単位またはQ単位が多数結合したレジン状のオルガノポリシロキサンからなる部分構造を形成している。特に、分子内にフェニル基等のアリール基を多数含む場合、(B)成分の屈折率を上昇させることができる。好適には、成分(B)は、RASiO3/2(式中、RAは前記同様の基)で表されるアリールシロキサン単位をオルガノポリシロキサン全体の20~80質量%含有するオルガノポリシロキサンであり、レジン構造が実質的にRASiO3/2で表されるアリールシロキサン単位のみから形成されていることが、上記のホットメルト性および屈折率の見地から、特に好ましい。
【0023】
リニア構造は(RSiO2/2)nで表される非反応性のブロックであり、RSiO2/2で表されるジオルガノシロキシ単位が、少なくとも3単位以上、好適には5単位以上、鎖状に連結した構造である。かかるリニア構造ブロックは、本コポリマーにより形成される固体層に適度な柔軟性を与える部分構造である。式中、nは、当該部分構造を構成するジオルガノシロキシ単位の重合度であり、3~250の範囲が好ましく、5~250、50~250、100~250、200~250の範囲がより好ましい。部分構造におけるnが上記上限を超えると、リニア構造に由来する線形分子としての性質が強く発現して、薄膜形成性が低下する場合がある。一方、nが上記下限未満では、線形分子としての性質が十分ではなく、特に薄膜化した場合にハジキ等が発生しやすくなって均一に塗工できない等の(B)成分の特徴的な物性が実現できない場合がある。
【0024】
リニア構造を構成するジオルガノシロキシ単位上の官能基Rは、アルキル基またはアリール基であり、これらは、同一分子中のレジン構造およびその官能基に対して非反応性であり、分子内で縮合反応等の重合反応を起こさず、リニア構造を維持することが必要である。これらのアルキル基およびアリール基は上記同様の基であり、工業的見地から、メチル基またはフェニル基が好ましい。
【0025】
(B)成分中のレジン構造ブロックとリニア構造ブロックは、アルケニル基とケイ素原子結合水素原子間のヒドロシリル化反応に由来するシルアルキレン結合、又はレジン構造またはリニア構造の末端の縮合性反応基に由来するSi-O-Si結合により連結されていることが好ましい。特に、本発明においては、レジン構造に結合するSi原子がRSiO3/2単位を構成していることが特に好ましく、下記の部分構造(T-Dn)を有することが特に好ましい。工業的見地から、Rはフェニル基であることが好ましく、Rはメチル基またはフェニル基が好ましい。
【0026】
部分構造(T-Dn)
【化1】
(T-Dn)
【0027】
好適には、上記の部分構造において、T単位を構成する左側のSi-O-結合の末端は、各々、水素原子またはレジン構造を構成する他のシロキサン単位、好適には他のT単位に結合する。一方、右側のSi-O-結合の末端は、リニア構造またはレジン構造を形成する他のシロキサン単位、トリオルガノシロキシ単位(M単位)または水素原子に結合する。なお、Si-O-結合の末端に水素原子が結合する場合、シラノール基(Si-OH)を形成することは言うまでもない。
【0028】
(B)成分のホットメルト性、光取り出し効率を改善するために求められる屈折率、および特に薄膜化した場合の均一塗工性の見地から、成分(B)は、RASiO3/2で表されるアリールシロキサン単位およびRSiO2/2で表されるジオルガノシロキサン単位のみからなる、非反応性のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。より具体的には、成分(B)は、
{(RSiO2/2)}{RASiO3/21-a
で表されるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。式中、R,RAは前記同様の基であり、aは0.8~0.2の範囲の数であり、より好適には、0.80~0.40の範囲の数である。
【0029】
[ホットメルト性]
(B)成分は、好ましくはホットメルト性を示し、具体的には、25℃において非流動性であり、100℃の溶融粘度が200,000Pa・s以下であることが好ましい。非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、25℃において非流動性であるためには、軟化点が25℃よりも高い必要がある。好適には、(B)成分は、100℃の溶融粘度が200,000Pa・s以下、100,000Pa・s以下、50,000Pa・s以下、20,000Pa・s以下、あるいは10~20,000Pa・sの範囲内である。100℃の溶融粘度が上記の範囲内であると、ホットメルト後、25℃に冷却した後の薄膜等の密着性が良好である。また、上記の溶融粘度が100~15,000Pa・sである(B)成分を用いることで、成型加工後の薄膜等の変形や剥離を抑制できる場合がある。
【0030】
[配合量]
本発明の固体シリコーン材料は、(A)成分の含有量が10~95質量%の範囲であり、(B)成分が上記の好適な中空シリカ微粒子を主成分とする無機微粒子である場合、(A)成分の含有量が40~95質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0031】
[任意成分]
本発明の固体シリコーン材料は、本発明の目的を妨げない限り、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の有機官能性アルコキシシラン化合物等の接着性向上剤等の任意の添加剤さらに、その他の任意成分として、本発明の技術的効果を損なわない限り、フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、チオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、アンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;染料、顔料などを添加しても良い。ただし、薄膜化する場合、(A)成分以外の固体粒子、特に平均一次粒子径が100nmを超えるような粒子成分は添加しないことが好ましい。
【0032】
本発明の固体シリコーン材料は、後述するフィルム又は薄膜として成膜する目的等で、有機溶媒に分散して塗工することができる。使用する有機溶媒としては、組成物中の全構成成分または一部の構成成分を溶解させ得る化合物であれば、その種類は特に限定されず、沸点が80℃以上200℃未満のものが好ましく使用される。例えば、i-プロピルアルコール、t-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,4-ジオキサン、ジブチルエーテル、アニソール、4-メチルアニソール、エチルベンゼン、エトキシベンゼン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、2-メトキシエタノール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチルアセテート、ブチルアセテート、プロピルプロピオネート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、1-エトキシ-2-プロピルアセテート、オクタメチルシクロテトラシロキサン、及びヘキサメチルジシロキサン等の非ハロゲン系溶媒、トリフルオロメチルベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、トリフルオロメチルクロロベンゼン、トリフルオロメチルフルオロベンゼン、ハイドロフルオロエーテル等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、二種以上を混合して使用してもよい。本発明の固体シリコーン材料の取扱作業性、固体層の均一性および耐熱性向上の見地から、i-プロピルアルコール、メチルイソブチルケトン等が好適に用いられる。
【0033】
[フィルム又は薄膜としての使用]
本発明の固体シリコーン材料は、所望の形態の部材として利用可能であるが、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率を向上する目的で利用する場合には、フィルム状または薄膜状であることが好ましい。特に、本発明の固体シリコーン材料は、ナノメータースケールの膜厚を有する、均一な薄膜状に設計することが可能であり、好適には、膜厚が50~300nmの範囲であるフィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料を提供することができる。
【0034】
ここで、フィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料の膜厚は、所望により設計することが可能であるが、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率を向上する目的にあっては、(A)成分の平均一次粒子径L(nm)に対して、膜厚がL~4L(nm)の範囲にあることが好ましく、膜厚が1.5L~2.5L(nm)の範囲にあることが特に好ましい。この範囲においては、固体シリコーン材料に担持された(A)成分の無機微粒子が層内で平均して1~4個、好適には膜の厚み方向に対して2個程度積み重なった構造をとることができるので、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率が最も改善される実益がある。一例として、平均一次粒子径(L)が50nmの中空シリカ微粒子を主成分とする無機微粒子を用いる場合には、1.5L~2.5L(nm)の範囲とは、膜厚にして75~125nmの範囲である。ただし、上記の膜厚以外、例えば、50~150nm程度の膜厚であっても、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率の向上は可能である。なお、後述する積層体(固体層としてにおいても、本発明の固体シリコーン材料としての膜厚は上記範囲内であることが好ましい。
【0035】
フィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料の硬さは基材にも依存するため、特に限定されるものではないが、実用上、鉛筆硬度で2B以上であることが好ましい。
【0036】
以上のような固体シリコーン材料の用途は特に制限されるものではないが、特に、膜厚が50~300nmの範囲であるフィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料は、光源/蛍光体層を介して光取り出し効率を向上させるため、固体シリコーン材料単体または当該材料を含む積層体として、光学部材として有用である。
【0037】
[フィルム状または薄膜状に成膜する方法]
本発明にかかる固体シリコーン材料をフィルム状または薄膜状に成膜する方法は特に制限されるものではなく、以下のような方法で成膜することができる。
【0038】
(i)成型加工による成膜
本発明にかかる固体シリコーン材料はホットメルト性を有するので、一体成型等の公知の成型手法により、所望とする基材上に成膜することができる。一般的な成型手法としてはトランスファー成型、インジェクション成型、コンプレッション成型が挙げられる。例えば、トランスファー成型においては、本発明にかかる固体シリコーン材料を成型機のプランジャーに充填し、自動成型を行うことで成型物としてのフィルム状または薄膜状部材を得ることができる。成型機としては、補助ラム式成型機、スライド式成型機、二重ラム式成型機、低圧封入用成型機のいずれをも用いることができる。
【0039】
(ii)溶媒を用いた薄膜状塗工および溶媒除去による成膜
本発明にかかる固体シリコーン材料はi-プロピルアルコール、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒に均一に分散することが可能であるので、所望とする基材上に薄膜状に塗工し、乾燥等の手段により有機溶媒を除去することによってフィルム状または薄膜状部材を得ることができる。フィルム状に塗工する場合、全体粘度が100~10,000mPa・sとなる範囲に、溶媒を用いて粘度調整をすることが好ましく、溶媒で希釈する場合、上記の固形分の和(100質量部)に対して、0~2000質量部の範囲で用いることができる。塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、オフセット転写ロールコーター等を用いたロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンフローコーター等を用いたカーテンコート、コンマコート、マイヤーバー、スピンコートその他公知の硬化層を形成する目的で使用される方法が制限なく使用できる。また、塗工量は任意であるが、有機溶媒除去後の固形分として、上記の膜厚となるように塗工することが好ましい。なお、後述するように、剥離コーティング層上に本発明にかかる固体シリコーン材料のフィルム状または薄膜状部材を形成させた積層体を用いることにより、当該フィルム状または薄膜状部材、またはそれを含む積層部材を剥離層から分離して他の基材上に配置することができる。
【0040】
[積層体]
本発明の固体シリコーン材料は、特許文献1等で本件出願人が提案したような光学アセンブリ等の積層体構造を構成する固体層として、特に好適に用いることができ、特に、発光デバイスまたは発光デバイスに用いる積層部材を構成する固体層として、空気との界面に配置されることが好ましい。その際、積層体が発光デバイスであれば、光源と本発明の固体シリコーン材料との間に少なくとも1種の蛍光体を含む層(以下、「蛍光体層」)を有していることが、本発明の技術的効果の見地から特に好ましい。
【0041】
[剥離性の積層体]
まず、剥離層上に本発明にかかる固体シリコーン材料のフィルム状または薄膜状部材が配置された積層体について説明する。本発明の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材、それを含む積層部材(例えば、さらに蛍光体層を備えた積層シート)は、所望により、部材単独で取り扱うことが求められる。剥離層上に本発明にかかる固体シリコーン材料からなる固体層が配置されている場合、積層体を構成する剥離層から本発明の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材、それを含む積層部材を容易に分離して取り扱うことができる。このような積層体は、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層と対向する剥離層を有し、任意で、さらに、他の剥離層を備えていてもよく、以下の積層体の構成が例示できる。なお、以下の例において「/」は積層体の積層方向(一般に基材に対して垂直な厚み方向)について、各層が対向していることを意味する。また、基材と剥離層は一体または同一層(材質または物理的な凹凸を設けたりして剥離性を持たせた基材)であってもよい。

例1: 基材/剥離層/本発明の固体シリコーン材料からなる固体層/その他の任意の層(1層または2層以上であってよい)

例2: 基材/剥離層/本発明の固体シリコーン材料からなる固体層/その他の任意の層(1層または2層以上であってよい)/剥離層/基材

特に、例2のように、二つの剥離層で本発明の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材、それを含む積層部材がサンドイッチされた構成を有する場合、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた部材を、基材で保護した状態で輸送(国外への輸出を含む)することができ、所望のタイミングと場所で、積層体の両面から剥離層を備えた基材を分離して、本発明の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材、それを含む積層部材のみを所望の構造体、例えば発光デバイスの光源上等に配置ないし積層することができる。特に、かかる積層体は、積層部材が本発明の固体シリコーン材料からなる固体層と蛍光体層を備えた積層シート等である場合、その取り扱い作業性を改善することができる点で有用である。
【0042】
上記の基材は特に制限されるものではないが、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロポリオレフィン、ナイロンが例示される。基材はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されず、用途に応じて所望の厚さで設計することができる。なお、後述するように上記の基材それ自体が剥離層として機能するような材質ないし基材表面に物理的に微細な凹凸を形成したりして剥離性を持たせた構造であってもよい。
【0043】
剥離層は剥離ライナー、離型層あるいは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、またはフルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明の固体シリコーン材料と付着しにくい基材それ自体であってもよい。
【0044】
本発明の固体シリコーン材料からなる固体層は、上記の剥離層上に、前記の「フィルム状または薄膜状に成膜する方法」に記載したのと同様な方法で成膜することで配置可能である。特に、フィルム状基材またはシート状基材の剥離層上に、上記の方法によりi-プロピルアルコール、メチルイソブチルケトン等の有機溶媒に固体シリコーン材料を均一に分散させて塗工し、乾燥等の手段により有機溶媒を除去することによってフィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料の固体層を剥離層上に成膜することが好ましい。フィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料の膜厚は上記同様である。
【0045】
本発明の固体シリコーン材料からなる固体層は、単独で用いてもよいが、さらに、同一又は異なる層が当該固体層上に積層された積層部材であることがより好ましい。特に、当該積層部材中の他の層は、硬化反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサンを硬化させてなる硬化層または固体状のオルガノポリシロキサン(シリコーン層)であることが好ましく、ヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基、縮合または脱アルコール反応性基を有するオルガノポリシロキサンを触媒の存在下で硬化反応させてなるシリコーン硬化層または(B)成分と同様のレジン-リニアポリマー型のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。ここで、硬化反応性基を有するオルガノポリシロキサンは直鎖状、分岐鎖状、環状、または樹脂状であってよく、2種類以上の硬化反応を組み合わせて利用してもよい。
【0046】
特に好適には、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層上に配置される他のシリコーン層は、上記の(B)成分と同様のレジン-リニアポリマー型の固体状のオルガノポリシロキサンであり、当該固体状のオルガノポリシロキサンに、後述する蛍光体が分散されてなるシリコーン層であることが好ましい。
【0047】
上記の積層部材中の他の層は、1層以上であってよく、2層以上の異なる機能を備えた多層であってもよい。また、当該本発明の固体シリコーン材料からなる固体層上に積層された積層部材全体の厚さは特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、取扱作業性の見地から、50~10,000μmであってよく、100~1,000μmの範囲が特に好ましい。
【0048】
本発明の固体シリコーン材料からなる固体層上に積層される1層以上の層、特に当該固体層と異なるシリコーン層は、少なくとも1種類以上の蛍光体を含有する蛍光体層であることが好ましい。かかる蛍光体層は、特に、波長変換材料として機能するものであり、光源上に配置した場合、その発光波長を変換することができる。当該蛍光体としては、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)または有機電界発光素子(OLED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色~黄色発光蛍光体;セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体;セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色~黄色発光蛍光体が例示される。また、酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色~緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するYS系赤色発光蛍光体が例示される。本発明にかかる積層体では、これらの蛍光体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
上記の積層体において、当該固体層と異なるシリコーン層は、硬化物に機械的強度を付与し、保護性または接着性を向上させることから、補強性フィラーを含有するシリコーン層であってもよい。また、当該固体層と異なるシリコーン層は、硬化物に熱伝導性または電気伝導性を付与するため、熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーを含有するシリコーン層であってもよい。なお、上記の蛍光体とこれらのフィラーは組み合わせて用いてもよく、シリコーン層への分散性を改善するため、これらの粒子状成分の表面を、アルコキシシラン、オルガノハロシラン、オルガノシラザン、シロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。
【0050】
上記の積層体は、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層が、剥離層上に配置された構造、特に好適には、さらに、当該固体層と異なるシリコーン層であって蛍光体等を含有する蛍光体層を備えるものである。剥離層上に本発明にかかる固体シリコーン材料からなる固体層が配置されている場合、積層体を構成する剥離層から本発明の固体シリコーン材料からなる固体層、またはそれを含む積層部材を容易に分離した積層部材をそれ自体として光学部材等として他の構造体の製造に利用することができる。
【0051】
[光源と蛍光体を備えた積層体、発光デバイス]
本発明の固体シリコーン材料からなる固体層は、空気との界面に配置することが可能であり、発光ダイオード(LED)または有機電界発光素子(OLED)の光源上に配置する場合、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層は、空気との界面に配置して、光源を含む積層体全体の光取り出し効率を改善することができる。かかる積層体は、光源の波長変換材料として上記同様の蛍光体を含む蛍光体層、特に、蛍光体を含有するシリコーン層を有することが特に好ましい。ここで、光源から発した光は蛍光体層により波長変換され、空気との界面に配置された本発明の固体シリコーン材料からなる固体層に到達する配置であることが好ましく、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層は蛍光体層の一部又は全体を覆うように形成されていてもよく、他の積層体の機能層を介して蛍光体層の外側に配置されていてもよい。これらの積層体全体の厚さは特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、発光デバイス等の場合、光源部分の厚さを除いて、50~10,000μmであってよく、100~1,000μmの範囲が特に好ましい。
【0052】
[光取り出し効率の改善および耐熱性の改善]
かかる光源および蛍光体層を備えた積層体は、発光ダイオード(LED)または有機電界発光素子(OLED)等の発光デバイスであり、上記の光源、蛍光体層および本発明の固体シリコーン材料からなる固体層の配置を取ることにより、発光デバイスの光取り出し効率を改善可能である。さらに、固体シリコーン材料からなる固体層を選択することにより、発光デバイスの発熱に伴う着色等を防止できる場合があり、特に、発光デバイスの耐熱性を改善できる場合がある。
【0053】
[積層体の製造方法]
本発明にかかる積層体の製造方法は特に制限されるものではないが、本発明の固体シリコーン材料を薄膜状またはフィルム状に成膜して配置する見地から、以下の工程(i)~(iii)のいずれかの工程を備えた、積層体の製造方法であることが好ましい。なお、当該工程にかかる塗工方法等は上記同様の方法が例示される。
(i)本発明の固体シリコーン材料を、他の構造体上でフィルム状または薄膜状に成型する工程
(ii)本発明の固体シリコーン材料を有機溶媒に分散させ、他の構造体上にフィルム状または薄膜状に塗工した後、有機溶媒を除去する工程
(iii)本発明の固体シリコーン材料からなるフィルム状または薄膜状部材上に、他の構造体を積層する工程
【0054】
特に、本発明の固体シリコーン材料は、剥離性の積層体の形態で取り扱うことができ、本発明の固体シリコーン材料からなる固体層、またはそれを含む積層部材を剥離層から容易に分離して利用することができる。剥離層から分離された発明の固体シリコーン材料からなる固体層またはそれを含む積層部材は、それ自体が光学部材等として他の構造体の製造に利用することが好適であるので、以下の各工程を備えた、積層体の製造方法が特に好ましい。特に、他の構造体は、光源等を備えた発光デバイスの前駆体であることが好ましく、当該製造方法は、空気との界面に配置された本発明の固体シリコーン材料からなる固体層を備えた発光デバイスの製造方法であることが特に好ましい。

剥離性の積層体/本発明の固体シリコーン材料(薄層)を含む積層部材(シリコーン層)を用いることを特徴とする、積層体の製造方法の工程:
(イ):剥離層上に、本発明の固体シリコーン材料を有機溶媒に分散させ、他の構造体上にフィルム状または薄膜状に塗工した後、有機溶媒を除去する工程、
(ロ):前記工程(イ)で得られたフィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料上に、同一または異なるシリコーン層を積層する工程、
(ハ):前記工程(ロ)で得られた、フィルム状または薄膜状の固体シリコーン材料が積層されたシリコーン層を一体として、剥離層から分離する工程
(ニ):前記工程(ハ)で得られた積層体を、他の構造体上に積層する工程
【実施例
【0055】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、中空シリカ微粒子の数平均粒子径は、各社のカタログに記載の平均粒子径を記載した。
【0056】
(合成例1)
1L四ツ口丸底フラスコにフェニルシルセスキオキサン加水分解物(135.00 g、0.99 molのSi)とトルエン(135.00g)を充填した。窒素雰囲気下、当該混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を100℃に冷却した後、ジアセトキシ末端ポリフェニルメチルシロキサン(シロキサン重合度186)の溶液を添加した。反応混合物を還流させながら2時間にわたって加熱した。その後、メチルトリアセトキシシラン(20.23 g、0.09 molのSi)を添加し、混合物を1時間にわたって還流させた。水(30mL)を添加し、共沸蒸留により水相を除去した。この手順を更に2回繰り返して酢酸濃度を低下させ、さらにトルエンを一部留去することにより、透明なレジン-リニアポリマー構造を有するオルガノポリシロキサンのトルエン溶液(重量平均分子量=70300、固形分濃度 79.12%)を得た。
【0057】
(合成例2)
1L四ツ口丸底フラスコにフェニルシルセスキオキサン加水分解物(80.00 g、0.59 molのSi)とトルエン(235.00g)を充填した。こ窒素雰囲気下、当該混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を100℃に冷却した後、ジアセトキシ末端ポリジメチルシロキサン(シロキサン重合度105)の溶液を添加した。反応混合物を還流させながら2時間にわたって加熱したその後、メチルトリアセトキシシラン(5.35 g、0.02 molのSi)を添加し、混合物を1時間にわたって還流させた。水(45mL)を添加し、共沸蒸留により水相を除去した。この手順を更に4回繰り返して酢酸濃度を低下させ、さらにトルエンを一部留去することにより、透明なレジン-リニアポリマー構造を有するオルガノポリシロキサンのトルエン溶液(重量平均分子量=93500、固形分濃度 66.73%)を得た。
【0058】
(合成例3)
1L四ツ口丸底フラスコにフェニルシルセスキオキサン加水分解物(135.00 g、0.99 molのSi)とトルエン(360.00g)を充填した。窒素雰囲気下、当該混合物を還流させながら30分にわたって加熱した。反応混合物を100℃に冷却した後、ジアセトキシ末端ポリジメチルシロキサン(シロキサン重合度105)の溶液を添加した。反応混合物を還流させながら2時間にわたって加熱したその後、メチルトリアセトキシシラン(13.48 g、0.06 molのSi)を添加し、混合物を2.5時間にわたって還流させた。ビニルメチルジアセトキシシラン(12.65 g、0.07 molのSi)を添加し、混合物を2時間にわたって還流させたのち水(76mL)を添加し、30分共沸させ、有機層が分離するのを待ってから水層を下から除去した。次に水を
飽和食塩水に置き換え、これと同様の手順を更に2回繰り返して酢酸濃度を低下させたのち、水でさらに2回繰り返した。トルエンを一部留去することにより、透明なレジン-リニアポリマー構造を有するオルガノポリシロキサンのトルエン溶液(重量平均分子量=72000、固形分濃度 61.23%)を得た。
【0059】
[実施例1~3、比較例1~2]
(実施例1)
中空シリカ微粒子(日揮触媒化成(株)社製 スルーリア4320、シリカ固形分 20.5重量%、中空シリカ微粒子、数平均粒子径60nm、0.258 g)とメチルイソブチルケトン(6.30 g)を容器に入れ、撹拌し、合成例2で得られた66.73 重量%のオルガノポリシロキサン-トルエン溶液(0.020 g)を加えて1重量%の調整溶液1Aを得た。塗工機(PI-1210 FILM COATER)とバー(R.D.S. Webster, N.Y. No.3)を用いて、剥離シート(ダイセル社製 T788)上に調整溶液1Aをコートした。室温で30分ほど放置した後、40度のオーブン中で1時間乾燥させフィルム1を得た。コート層の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、188.2 nmであった。
【0060】
合成例1で得られたオルガノシロキサン-トルエン溶液(66.7 g)にジアザビシクロウンデセン(オルガノシロキサンに対し20ppmとなる量)と蛍光体(インテマティックス社製、NYAG 4454-L、10.1 g) を加え、真空脱気機構を備えた自公転式撹拌機(シンキー社製 ARV-310LED)を用いて均一のなるように撹拌し調整液1Bを得た。この調整液1Bを、フィルム1のコート面側に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでキャストした。このシートをオーブン中40Cで一晩乾燥させたのち、50Cの真空オーブン中でさらに2時間乾燥させ蛍光体シート1を得た。
【0061】
得られた蛍光体シート1を直径36mmの円状に切り抜いた後、剥離シートからはがしコート面が上になるようにLEDチップの上に設置し、真空ラミネーター(日清紡 ラミネーター 0505S)を用いて封止した。
【0062】
(実施例2)
中空シリカ微粒子(日揮触媒化成(株)社製 スルーリア4320、シリカ固形分 20.5重量%、中空シリカ微粒子、数平均粒子径60nm、0.068 g)とメチルイソブチルケトン(3.46 g)を容器に入れ、撹拌し、合成例2で得られた66.73 重量%のオルガノポリシロキサン-トルエン溶液(0.005 g)を加えて0.5重量%の調整溶液2Aを得た。塗工機(PI-1210 FILM COATER)とバー(R.D.S. Webster, N.Y. No.3)を用いて、剥離シート(ダイセル社製 T788)上に調整溶液2Aをコートした。室温で30分ほど放置した後、40度のオーブン中で1時間乾燥させフィルム2を得た。コート層の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、113.1 nmであった。
【0063】
実施例1と同様の調整液1Bを、フィルム2のコート面側に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでキャストした。このシートをオーブン中40Cで一晩乾燥させたのち、50Cの真空オーブン中でさらに2時間乾燥させ蛍光体シート2を得た。得られた蛍光体シート2について、実施例1と同様の方法で、LEDチップ上に設置し、真空ラミネーターを用いて封止した。
【0064】
(実施例3)
実施例1の調整溶液1A(0.30 g)にメチルイソブチルケトン(2.75 g)を加えて希釈し、0.1重量%の調整溶液3Aを調整した。塗工機(PI-1210 FILM COATER)とバー(R.D.S. Webster, N.Y. No.3)を用いて、剥離シート(ダイセル社製 T788)上に調整溶液3をコートした。室温で30分ほど放置した後、40度のオーブン中で1時間乾燥させフィルム3を得た。コート層の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、213 nmであった。
【0065】
実施例1と同様の調整液1Bを、フィルム3のコート面側に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでキャストした。このシートをオーブン中40Cで一晩乾燥させたのち、50Cの真空オーブン中でさらに2時間乾燥させ蛍光体シート3を得た。得られた蛍光体シート3について、実施例1と同様の方法で、LEDチップ上に設置し、真空ラミネーターを用いて封止した。
【0066】
(比較例1)
実施例1と同様の調整液1Bを剥離シート(ダイセル社製 T788)上に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでコートした。このシートをオーブン中40Cで一晩乾燥させたのち、50Cの真空オーブン中でさらに2時間乾燥させ蛍光体シート4を得た。得られた蛍光体シート4について、実施例1と同様の方法で、LEDチップ上に設置し、真空ラミネーターを用いて封止した。
【0067】
(比較例2)
合成例2で得られた66.73 重量%のオルガノシロキサン-トルエン溶液(3.29 g)に補強性シリカ (アエロジル200S、0.107 g)とメチルイソブチルケトン(1.00 g)を加え、デンタルミキサーを用いて20秒間撹拌し混合溶液1を得た。得られた混合溶液(0.05 g)をメチルイソブチルケトン(2.56 g)で希釈することで1重量%の溶液4Aを調整した。
【0068】
塗工機(PI-1210 FILM COATER)とバー(R.D.S. Webster, N.Y. No.3)を用いて、剥離シート(ダイセル社製 T788)上に調整溶液4Aをコートした。室温で30分ほど放置した後、40度のオーブン中で1時間乾燥させフィルム4を得た。コート層の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、110 nmであった。
【0069】
実施例1と同様の調整液1Bを、フィルム4のコート面側に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでキャストした。このシートをオーブン中40Cで一晩乾燥させたのち、50Cの真空オーブン中でさらに2時間乾燥させ蛍光体シート5を得た。得られた蛍光体シート5について、実施例1と同様の方法で、LEDチップ上に設置し、真空ラミネーターを用いて封止した。
【0070】
[評価方法]
全放射束の測定
上記工程によりLEDチップを封止して得た発光半導体装置(実施例1~3、比較例1~2)について、全光束測定装置(大塚電子(株)製)を用いて、全放射束(mW)を測定した。結果を下表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
[実施例5~6、比較例3]
以下の実施例5~6、比較例7は、以下の方法により得られた発光半導体装置を用いた。なお、実施例において、スピンコートにより得られた中空シリカ微粒子を含む薄膜層(コート層)の厚さは、別途同量の溶液を単独でスピンコートして測定した値を示している。
(光半導体パッケージの作製)
光半導体素子として、InGaNからなる発光層を有し主発光ピークが454.7-460 nmのLEDチップを装着した、MA5050パッケージ(W*N-045)の発光半導体装置を使用した。
【0073】
封止樹脂として、合成例1で得られたオルガノシロキサン-トルエン溶液(105.4 g)にジアザビシクロウンデセン(0.01 g、オルガノシロキサンに対し100ppmとなる量)と蛍光体(インテマティックス社製、NYAG 4454-L、17.348g)、接着付与剤 (信越化学社製 KBE-402、0.433 g)、及びシラノール末端ポリフェニルメチルシロキサン(シロキサン重合度4~5、11.22 g)を加え、真空脱気機構を備えた自公転式撹拌機(シンキー社製 ARV-310LED)を用いて均一のなるように撹拌し調整液1Cを得た。
【0074】
調整液1Cを、剥離フィルム(三井東セロ製SPPET5003BU)上に塗工機(PI-1210 FILM COATER)を用いて、925μmのギャップでキャストした。このシートを40度に設定した窒素循環式オーブン中で一晩乾燥させた後、50度の真空オーブン中でさらに2時間乾燥させた。
【0075】
得られた蛍光体シートを直径32 mmの円状に切り取り、真空ラミネーター(日清紡社製 ラミネーター 0505S)を用いて、LEDチップ上に封止した。高さ1.4 mmのスペーサーを設けたステンレス鋼(SUS)板に得られた発光半導体装置を置き、上に剥離フィルム、SUS板を順にのせ熱プレス機を用いて、135度で30分圧縮し加熱硬化した。その後、100度/1時間、120度/1時間、140度/1時間、150度/1時間、160度/3時間にセットしたプログラムオーブン中で完全に硬化させた。
【0076】
(実施例5)
中空シリカ微粒子(日揮触媒化成(株)社製 スルーリア4320、シリカ固形分 20.5重量%、中空シリカ微粒子、数平均粒子径60nm、0.378 g)とメチルイソブチルケトン(9.3 g)を容器に入れ、撹拌し、合成例2で得られた66.73 重量%のオルガノポリシロキサン-トルエン溶液(0.029 g)を加えて1重量%の溶液1を調整した。
【0077】
この溶液1を、得られた発光半導体装置の封止層の上に垂らし、スピンコーター(ミカサ スピンコーター 1H-DXII)を用いて始め300 rpmで15秒間スピンした後、1500 rpmに上げ30秒間スピンさせ表面上部にコートした。別途同量の溶液を用いたコート層単独の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、113nmであった。また、コート層と蛍光体シートを硬化させてなる硬化層を含む、層全体の膜厚は約400μmであった。発光半導体装置は70度/20分、150度/1時間にセットしたプログラムオーブン中で乾燥した。
【0078】
(実施例6)
中空シリカ微粒子(日揮触媒化成(株)社製 スルーリア4320、シリカ固形分 20.5重量%、中空シリカ微粒子、数平均粒子径60nm、0.2084 g)とメチルイソブチルケトン(5.00 g)を容器に入れ、撹拌し、合成例3で得られた61.23 重量%のオルガノポリシロキサン-トルエン溶液(0.017 g)とヒドロシリル基末端ポリオルガノシロキサン(0.0004 g)と0.1重量%の白金錯体-トルエン溶液(0.0003 g)をさらに加えて1重量%の溶液2を調整した。
【0079】
この溶液2を、得られた発光半導体装置の封止層の上に垂らし、スピンコーター(ミカサ スピンコーター 1H-DXII)を用いて始め300 rpmで15秒間スピンした後、1500 rpmに上げ30秒間スピンさせ表面上部にコートした。発光半導体装置は70度/20分、150度/1時間にセットしたプログラムオーブン中で乾燥した。別途同量の溶液を用いたコート層単独の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、113nmであった。また、コート層と蛍光体シートを硬化させてなる硬化層を含む、層全体の膜厚は約400μmであった。
【0080】
(比較例3)
合成例2で得られた66.73 重量%のオルガノポリシロキサン-トルエン溶液(3.29 g)にアエロジル(200S、0.107 g)とメチルイソブチルケトン(1.00 g)を加え、デンタルミキサーを用いて20秒間撹拌し混合溶液1を得た。得られた混合溶液1(0.05 g)をメチルイソブチルケトン(2.56 g)で希釈することで1重量%の溶液3を調整した。
【0081】
この溶液1を、得られた発光半導体装置の封止層の上に垂らし、スピンコーター(ミカサ スピンコーター 1H-DXII)を用いて始め300 rpmで15秒間スピンした後、1500 rpmに上げ30秒間スピンさせ表面上部にコートした。発光半導体装置は70度/20分、150度/1時間にセットしたプログラムオーブン中で乾燥した。別途同量の溶液を用いたコート層単独の厚みを膜厚測定機(フィルメトリックス社製 F20 thin film analyzer)で測定したところ、110nmであった。また、コート層と蛍光体シートを硬化させてなる硬化層を含む、層全体の膜厚は約400μmであった。
【0082】
[評価方法]
全放射束の測定
上記工程で得られた発光半導体装置を全光束測定装置(大塚電子(株)製)を用いて、調整溶液を塗布する前と塗布した後の全放射束(mW)を測定した。
【表2】


【0083】
本発明の実施例においては、発光半導体装置について、コート前後の全放射束の変化率が向上しており、LEDチップからの光取り出し効率を改善することが出きた。特に、本発明の固体シリコーン材料の膜厚を中空シリカ微粒子の平均粒子径(60nm)の約2倍である113nm程度の厚みに設計した実施例2において、最も光取り出し効率が改善された。