IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-レーザー加工装置 図1
  • 特許-レーザー加工装置 図2
  • 特許-レーザー加工装置 図3
  • 特許-レーザー加工装置 図4
  • 特許-レーザー加工装置 図5
  • 特許-レーザー加工装置 図6
  • 特許-レーザー加工装置 図7
  • 特許-レーザー加工装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20221109BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20221109BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/00 M
B23K26/382
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018171804
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020040113
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦充
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-047786(JP,A)
【文献】特開平08-090261(JP,A)
【文献】特開2012-240114(JP,A)
【文献】特開2001-276987(JP,A)
【文献】特開2009-125756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザービームを照射してレーザー加工を施すレーザー加工装置であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム照射手段と、
該チャックテーブルと該レーザービーム照射手段を相対的に移動させる移動手段と、
該被加工物と離接自在に構成され、該レーザービームを照射した際に被加工物から発生する弾性波を検出するAEセンサを含む弾性波検出手段と、
該AEセンサを該被加工物に当接させた状態で該チャックテーブルと該レーザービーム照射手段を相対的に移動させながら、該弾性波検出手段のAEセンサからの弾性波信号に基づいて被加工物の材質を判定し、該レーザービーム照射手段を制御する制御手段と、を備え、
該被加工物はデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域を有し、
該弾性波検出手段のAEセンサは、該被加工物の外周余剰領域に当接するように構成されることを特徴とするレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの小型化、高機能化を図るため、複数のデバイスを積層し、積層されたデバイスに設けられたボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造は、半導体ウエーハにおけるボンディングパッドが設けられた箇所に貫通孔(ビアホール)を形成し、この貫通孔(ビアホール)にボンディングパッドと接続するアルミニウム等の導電性材料を埋め込む構成である(例えば、特許文献1参照)。このようなウエーハに対して、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを効率よく形成するウエーハの穿孔方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
ところが、ビアホールを形成する際に、基板に形成されたビアホールがボンディングパッドに達した時点でパルスレーザー光線の照射を停止することが困難であり、ボンディングパッドが溶融して穴が開くという問題がある。この問題を解消するために、レーザー光線の照射によって物質がプラズマ化し、そのプラズマが発する物質固有のスペクトルを検出することによりレーザー光線が金属からなるボンディングパッドに達したと判定するレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。ところが、ボンディングパッドはレーザー光線の照射によって形成された細孔の底に位置するため、レーザー光線が照射されてプラズマが発生しても、プラズマが発する物質固有のスペクトルを確実に判定することが難しいという問題がある。この問題に対して、被加工物で発するプラズマ光を反射する反射手段を設け、この反射手段で反射された光の波長の検出することにより、金属からなるボンディングパッドを確実に検出することができるレーザー加工装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-163323号公報
【文献】特開2007-67082号公報
【文献】特開2009-125756号公報
【文献】特開2012-240114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献4に記載された技術は、被加工物から発せられる物質固有のプラズマの波長に限定された装置であるため、被加工物(ウエーハ)の材質(素材)が異なる場合にはそのまま適用できないという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異なる材質を貼り合わせた被加工物に対して穿孔加工した際に、ビアホールが異なる材質に達したか否かを被加工物の材質によらず検出可能なレーザー加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物にレーザービームを照射してレーザー加工を施すレーザー加工装置であって、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザービームを照射するレーザービーム照射手段と、該チャックテーブルと該レーザービーム照射手段を相対的に移動させる移動手段と、該被加工物と離接自在に構成され、該レーザービームを照射した際に被加工物から発生する弾性波を検出するAEセンサを含む弾性波検出手段と、該AEセンサを該被加工物に当接させた状態で該チャックテーブルと該レーザービーム照射手段を相対的に移動させながら、該弾性波検出手段のAEセンサからの弾性波信号に基づいて被加工物の材質を判定し、該レーザービーム照射手段を制御する制御手段と、を備え、該被加工物はデバイス領域と該デバイス領域を囲む外周余剰領域を有し、該弾性波検出手段のAEセンサは、該被加工物の外周余剰領域に当接することを特徴とするものである。
【0008】
この構成によれば、被加工物と離接自在に構成され、該レーザービームを照射した際に被加工物から発生する弾性波を検出するAEセンサを含む弾性波検出手段と、該AEセンサを該被加工物に当接させた状態で該チャックテーブルと該レーザービーム照射手段を相対的に移動させながら、該弾性波検出手段のAEセンサからの弾性波信号に基づいて被加工物の材質を判定し、該レーザービーム照射手段を制御する制御手段とを備えるため、例えば、表面にボンディングパッドが形成されたウエーハのように、異なる2つの材質を積層した被加工物に対して、レーザービームを照射した際に生じる被加工物の溶融や蒸発に基づく弾性波を、AEセンサを用いて検知し、その強度等の変化によって、加工している被加工物の材質の変化を検出することができる。このため、被加工物の材質によらず、例えば、レーザービームの照射によって被加工物に形成されるビアホールが異なる材質に達したか否かを高感度に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザービームを照射した際に生じる被加工物の溶融や蒸発に基づく弾性波を、AEセンサを用いて検知し、その強度等の変化によって、加工している被加工物の材質の変化を検出することができるため、被加工物の材質によらず、例えば、レーザービームの照射によって被加工物に形成されるビアホールが異なる材質に達したか否かを高感度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、レーザー加工装置の加工対象であるウエーハの一例を示す平面図である。
図3図3は、図2に示すウエーハを裏面側から見た部分拡大図である。
図4図4は、図2に示すウエーハの部分拡大断面図である。
図5図5は、レーザービーム照射手段の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、ビアホールを形成する動作を説明する図である。
図7図7は、ウエーハに形成されたビアホールを示す部分拡大断面図である。
図8図8は、ウエーハにビアホールを形成する場合の音波強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
図1は、本実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、レーザー加工装置の加工対象であるウエーハの一例を示す平面図である。図3は、図2に示すウエーハを裏面側から見た部分拡大図である。図4は、図2に示すウエーハの部分拡大断面図である。図5は、レーザービーム照射手段の構成例を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態に係るレーザー加工装置1は、被加工物としてのウエーハ100に対して、レーザービームを照射することにより、ウエーハ100を穿孔する装置である。本実施形態では、ウエーハ100を穿孔する構成について説明するが、ウエーハ100に対してレーザー溝加工をすることも可能である。
【0015】
レーザー加工装置1により穿孔されるウエーハ100は、例えばシリコン、サファイア、LT(タンタル酸リチウム)、LN(ニオブ酸リチウム)などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。ウエーハ100の表面101には、図2に示すように、複数の分割予定ライン103によって格子状に区画された領域にIC,LSI等のデバイス104が形成されている。これら各デバイス104は、すべて同一の構成をしている。また、ウエーハ100は、これらデバイス104が形成されたデバイス領域105と、このデバイス領域105を囲繞し、かつデバイス104が形成されていない外周余剰領域106とを備えている。
【0016】
デバイス104には、それぞれ図3に示すようにウエーハ100の裏面102から表面101側に向けて延びる複数のビアホール(穿孔)107が形成される。図3に示す例では、デバイス104には、それぞれX軸方向に沿って5つのビアホール107がほぼ等間隔に形成され、Y軸方向に沿って2つのビアホール107が形成されている。
【0017】
また、デバイス104の表面には、図4に示すように、複数のボンディングパッド108が設けられ、各ビアホール107(破線で示す)は、ボンディングパッド108に対応する位置に該ボンディングパッド108に達するように形成される。このボンディングパッド108は、ウエーハ100の母材とは異なる材料(例えば、銅、アルミニウム、白金、窒化ガリウム)で形成され、例えばデバイス104の電極として機能する。このように、ウエーハ100は、異なる2つ(複数)の材料が積層(貼り合せて)形成されており、一方の材料(母材)から他方の材料に達するビアホール(穿孔)107が形成される。本実施形態のレーザー加工装置1は、ビアホール107がウエーハ100の他方の材料(ボンディングパッド108)に達したことを、簡易な構成で正確に検出する。
【0018】
次に、レーザー加工装置1の構成について説明する。レーザー加工装置1は、図1に示すように、基台部2と、この基台部2に立設する壁部3と、ウエーハ100を保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100にレーザービームを照射するレーザービーム照射手段20と、X軸移動手段(移動手段)30と、Y軸移動手段(移動手段)40と、弾性波検出手段50と、制御手段60とを備える。
【0019】
チャックテーブル10は、ウエーハ100を保持する保持面11aを有するテーブル本体11と、このテーブル本体11を支持するテーブルベース12とを備える。テーブル本体11は、保持面11aを構成する部分がポーラスセラミックス等から形成された円盤形状であり、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面11aに保護テープ(不図示)を介して載置されたウエーハ100を吸引することで該ウエーハ100を保持する。本実施形態では、テーブル本体11は、ウエーハ100よりも小径に形成されており、ウエーハ100は、外周余剰領域106(図2)がテーブル本体11の外周にはみ出した状態でテーブル本体11に保持される。テーブルベース12は、回転駆動源(不図示)を備え、テーブル本体11を中心軸線(鉛直軸と平行である)回りに回転自在に支持する。
【0020】
レーザービーム照射手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100に向けて、該ウエーハ100に吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザービームを照射し、ウエーハ100の裏面102側からビアホール107を形成する。すなわち、レーザービーム照射手段20は、ウエーハ100の裏面102側に吸収性を有する波長のレーザービームを照射して、ウエーハ100にアブレーション加工を施すものである。なお、レーザービームの波長は、上記した355nmの他に、532nmや267nmを使用することが可能である。
【0021】
レーザービーム照射手段20は、壁部3から水平方向(Y軸方向)に延在するケーシング21と、このケーシング21の前端部に横並びに設けられる照射ヘッド22と撮像部23とを備える。この撮像部23は、レーザービーム照射手段20によってレーザー加工すべき加工領域を撮像する。撮像部23は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)を備えた構成であってもよいし、ウエーハ100(被加工物)に赤外線を照射する赤外線照明手段と、赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等を備えた構成であってもよい。また、これら通常のCCDと赤外線CCDとの両方を備えた構成であってもよい。撮像部23が撮像した画像信号は制御手段60に送られる。
【0022】
また、レーザービーム照射手段20は、図5に示すように、ケーシング21内に配置されたパルスレーザー発振手段25と、パルスレーザー発振手段25が発振したパルスレーザービームの光軸を加工送り方向(X軸方向)に偏向する光偏向手段としての音響光学偏向手段26と、照射ヘッド22内に配置されて該音響光学偏向手段26を通過したパルスレーザービームをチャックテーブル10に保持されたウエーハ100(図2)に照射する集光器27とを備える。
【0023】
パルスレーザー発振手段25は、YAGレーザー発振器やYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー発振器251と、これに付設された繰り返し周波数設定手段252とから構成されている。パルスレーザー発振器251は、繰り返し周波数設定手段252によって設定された所定周波数のパルスレーザービーム(以下、レーザービームLBという)を発振する。繰り返し周波数設定手段252は、パルスレーザー発振器251が発振するレーザービームLBの繰り返し周波数を設定する。
【0024】
音響光学偏向手段26は、パルスレーザー発振手段25が発振したレーザービームLBの光軸を加工送り方向(X軸方向)に偏向する音響光学素子261と、音響光学素子261に印加するRF(radio frequency)を生成するRF発振器262と、RF発振器262によって生成されたRFのパワーを増幅して音響光学素子261に印加するRFアンプ263と、RF発振器262によって生成されるRFの周波数を調整する偏向角度調整手段264と、RF発振器262によって生成されるRFの振幅を調整する出力調整手段265とを備える。音響光学素子261は、印加されるRFの周波数に対応してレーザービームLBの光軸を偏向する角度を調整することができるとともに、印加されるRFの振幅に対応してレーザービームLBの出力を調整することができる。なお、光偏向手段としては音響光学偏向手段26に代えて電子光学素子を用いた電子光学偏向手段を使用してもよい。偏向角度調整手段264および出力調整手段265は制御手段60によって制御される。
【0025】
また、レーザービーム照射手段20は、音響光学素子261に所定周波数のRFが印加された場合に、図5において破線で示すように音響光学素子261によって偏向されたレーザービームLBを吸収するためのレーザービーム吸収手段266を備える。
【0026】
集光器27は、音響光学偏向手段26によって偏向されたレーザービームLBを下方に向けて方向変換する方向変換ミラー271と、方向変換ミラー271によって方向変換されたレーザービームLBを集光するテレセントリックレンズからなる集光レンズ272とを備える。
【0027】
レーザービーム照射手段20は次のように動作する。音響光学偏向手段26の偏向角度調整手段264に制御手段60から例えば1Vの電圧が印加され、音響光学素子261に1Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBは、その光軸が図5において1点鎖線で示すように偏向され集光点Paに集光される。また、偏向角度調整手段264に制御手段60から例えば5Vの電圧が印加され、音響光学素子261に5Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBは、その光軸が図2において実線で示すように偏向され、上記集光点PaからX軸方向(加工送り方向)に図5において左方に所定量変位した集光点Pbに集光される。一方、偏向角度調整手段264に制御手段60から例えば10Vの電圧が印加され、音響光学素子261に10Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBは、その光軸が図2において実線で示すように偏向され、上記集光点PbからX軸方向(加工送り方向)に図5において左方に所定量変位した集光点Pcに集光される。また、音響光学偏向手段26の偏向角度調整手段264に制御手段60から例えば0Vの電圧が印加され、音響光学素子261に0Vに対応する周波数のRFが印加された場合には、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBは、図2において破線で示すようにレーザービーム吸収手段266に導かれる。このように、レーザービームLBは、音響光学素子261によって、偏向角度調整手段264に印加される電圧に対応してX軸方向(加工送り方向)に偏向される。なお、レーザービームLBをX軸方向(加工送り方向)だけでなく、Y軸方向(割り出し送り方向)に偏向させる音響光学素子を更に備えた構成としてもよい。
【0028】
再び図1に戻って、レーザー加工装置1の説明を続ける。X軸移動手段30及びY軸移動手段40は、レーザービーム照射手段20に対して、ウエーハ100を保持するチャックテーブル10をX軸方向(加工送り方向)及びY軸方向(割り出し送り方向)にそれぞれ移動するものである。Y軸移動手段40は、基台部2の上面に配置されてY軸方向に延びる一対のガイドレール41と、ガイドレール41に沿って移動するY軸移動基台42と、ガイドレール41と平行に配設されてY軸移動基台42に設けられたナット(不図示)と螺合するボールねじ43とを備える。このボールねじ43の一端には、該ボールねじ43を回転させるモータ44が連結され、ボールねじ43の回転によって、Y軸移動基台42はガイドレール41に沿ってY軸方向に移動する。
【0029】
また、X軸移動手段30は、Y軸移動基台42上に配置されてX軸方向に延びる一対のガイドレール31と、ガイドレール31に沿って移動するX軸移動基台32と、ガイドレール31と平行に配設されてX軸移動基台32に設けられたナット(不図示)と螺合するボールねじ33とを備える。このボールねじ33の一端には、該ボールねじ33を回転させるモータ34が連結され、ボールねじ33の回転によって、X軸移動基台32はガイドレール31に沿ってX軸方向に移動する。このX軸移動基台32の上にはチャックテーブル10のテーブルベース12が固定されている。
【0030】
本実施形態では、レーザービーム照射手段20に対してチャックテーブル10をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動する構成としたが、チャックテーブル10とレーザービーム照射手段20とを相対的に移動する構成であれば、チャックテーブル10に対してレーザービーム照射手段20をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動してもよいし、チャックテーブル10とレーザービーム照射手段20との双方をX軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動する構成としてもよい。また、チャックテーブル10とレーザービーム照射手段20とを鉛直方向(X軸方向及びY軸方向に直交する方向)に相対的に移動する構成を更に備えてもよい。
【0031】
弾性波検出手段50は、レーザービームLBを照射した際にウエーハ100(被加工物)から発生する弾性波を検出するものであり、ウエーハ100に接離自在に構成されたAEセンサ(アコースティック・エミッションセンサ)51と、このAEセンサ51が検出した弾性波を解析するAE解析手段52とを備える。AEセンサ51は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛などで形成された圧電素子を備え、レーザービームLBを照射した際に生じるウエーハ100及びボンディングパッド108の溶融や蒸発に基づく弾性波(音波)信号を検出し、その信号を電圧(振動信号)に変換する。AE解析手段52は、AEセンサ51が検出した弾性波信号を増幅するアンプ等を備え、変換及び増幅された出力電圧が出力信号として制御手段60に入力される。
【0032】
制御手段60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有し、ROMに記憶されているコンピュータプログラムを実行して、レーザー加工装置1を制御するための制御信号を生成し、生成された制御信号は入出力インタフェース装置を介してレーザー加工装置1の各構成要素に出力される。制御手段60は、弾性波検出手段50からの出力信号と比較するための閾値を予め記憶する記憶部61と、この記憶部61に記憶された閾値と出力信号とを比較してレーザービームLBが照射されている材質の変化を判定する判定部62とを備える。
【0033】
本実施形態のウエーハ100のように、母材と異なる材料で形成されたボンディングパッド108が母材に積層された構造では、レーザー加工される材料によって検出される弾性波(音波)強度が異なることが判明した。このため、判定部62は、弾性波(音波)強度の大きさを記憶部61に記憶された所定の閾値と比較することで、例えばビアホール107がボンディングパッド108に達しているか否かを判定する。記憶部61には、被加工物の材質に対応する閾値が材質ごとに記憶されており、レーザー加工がなされるウエーハ100(被加工物)の材質によって適宜設定することが好ましい。このように、制御手段60は、AEセンサ51をウエーハ100に当接させた状態でチャックテーブル10とレーザービーム照射手段20とを相対的に移動させながら、AEセンサ51からの弾性波信号に基づいてウエーハ100の材質の変化を判定し、レーザービーム照射手段20を制御する。
【0034】
次に、上述したレーザー加工装置1を用い、ウエーハ100に形成されたデバイス104のボンディングパッド108に対応する位置にビアホール107を形成する動作について説明する。図6は、ビアホールを形成する動作を説明する図である。図7は、ウエーハに形成されたビアホールを示す部分拡大断面図である。図8は、ウエーハにビアホールを形成する場合の音波強度の変化を示すグラフである。
【0035】
ウエーハ100は、図6に示すように、裏面102を上側としてテーブル本体11の保持面11aに載置される。この場合、ウエーハ100の表面101側には、不図示の保護テープが貼着されて表面101のデバイス104を保護している。また、吸引手段(不図示)を作動することによりウエーハ100は、保護テープを介してチャックテーブル10のテーブル本体11上に吸引保持される。
【0036】
テーブル本体11は、ウエーハ100よりも小径に形成されているため、ウエーハ100の外周余剰領域106がテーブル本体11の外周にはみ出している。このはみ出した外周余剰領域106には、アーム53で支持されたAEセンサ51がウエーハ100の表面101に当接配置される。このように、AEセンサ51は、ウエーハ100の外周余剰領域106に配置されるため、AEセンサ51がデバイス104のボンディングパッド108に達するビアホール107の加工を阻害することが防止される。特に、本実施形態では、テーブル本体11をウエーハ100よりも小径に形成することで、AEセンサ51は、ウエーハ100を挟んでレーザービーム照射手段20と反対側に配置できるため、レーザー加工の加工性の向上を図ることができる。
【0037】
次に、撮像部23を用いて、チャックテーブル10に保持されたウエーハ100に形成されている格子状の分割予定ライン103がX軸方向とY軸方向にそれぞれ平行に配設されているか否かのアライメント作業を実施する。本実施形態のように、ウエーハ100の分割予定ライン103が形成されている表面101が下側に位置している場合には、撮像部23として上記した赤外線CCDを備えた構成を用いることにより、ウエーハ100の裏面102から透かして分割予定ライン103を撮像することができる。また、例えば、ボンディングパッド(例えば銅)を2枚のウエーハ(例えばLT)で挟んだ構造の被加工物の場合には、デバイスが形成されたウエーハの表面側からレーザービームを照射することができる。このため、赤外線CCDを備えた構成でなくとも、通常のCCDを備えた構成によって分割予定ラインを撮像することができ、加工位置を確認することができる。
【0038】
次に、ウエーハ100の各デバイス104に形成されたボンディングパッド108(電極)にビアホール107を穿孔する穿孔工程を実施する。この場合、ビアホール107が形成される位置に対応するボンディングパッド108の座標位置は予め設定されている。所定のボンディングパッド108に対応する位置の直上に、照射ヘッド22を位置付け、X軸方向に所定の移動速度で加工送りするように上記X軸移動手段30を制御すると同時に、レーザービーム照射手段20を作動し照射ヘッド22からレーザービームLBを照射する。なお、照射ヘッド22(集光器27)から照射されるレーザービームLBの集光点Pは、ウエーハ100の裏面102付近に合わせる。このとき、制御手段60は、音響光学偏向手段26の偏向角度調整手段264および出力調整手段265を制御するための制御信号を出力する。
【0039】
一方、RF発振器262は偏向角度調整手段264および出力調整手段265からの制御信号に対応したRFを出力する。RF発振器262から出力されたRFのパワーは、RFアンプ263によって増幅され音響光学素子261に印加される。この結果、音響光学素子261は、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBの光軸を図5において1点鎖線で示す位置から2点鎖線で示す位置までの範囲で偏向するとともに、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームの出力を調整する。これにより、図7に示すように、ウエーハ100の裏面102側からボンディングパッド108に対応する位置に、該ボンディングパッド108に達するビアホール107を形成することができる。
【0040】
上述した穿孔工程を実施している際に、制御手段60は弾性波検出手段50を作動して、AEセンサ51が検出した弾性波(音波)信号を入力している。そして、制御手段60の判定部62は、弾性波(音波)強度と閾値とを比較する。例えば、図8に示すように、弾性波(音波)強度が所定の閾値αよりも大きい場合には、ウエーハ100の母材(例えばシリコン)を加工していると判定し、上記穿孔工程を継続する。弾性波(音波)強度が所定の閾値αよりも小さく変化した場合には、判定部62は、加工対象の材質が母材から異なる材料に変化し、例えば銅で形成されるボンディングパッド108が加工されていると判定する。これにより、制御手段60は、音響光学偏向手段26の偏向角度調整手段264に0Vの電圧を印加し、音響光学素子261に0Vに対応する周波数のRFを印加し、パルスレーザー発振手段25から発振されたレーザービームLBを図5において破線で示すようにレーザービーム吸収手段266に導く。従って、レーザービームLBがチャックテーブル10に保持されたウエーハ100に照射されない。このように、例えば、ボンディングパッド108に1パルス照射されると、AEセンサ51によってボンディングパッド108が加工されたことを検出して、ボンディングパッド108へのレーザービームLBの照射を止めるので、ボンディングパッド108が溶融して穴が開くことがない。この結果、図7に示すようにウエーハ100の母材にはボンディングパッド108に達するビアホール107を形成することができる。本実施形態では、材質によって、AEセンサ51が検出する弾性波(音波)強度が変化することに伴い、レーザー加工されている材質の変化を判定するため、閾値を適正に設定しておけば、被加工物の材質によらず、レーザービームの照射によって被加工物に形成されるビアホールが異なる材質に達したか否かを高感度に検出することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、テーブル本体11をウエーハ100よりも小径に形成して、テーブル本体11の外周にはみ出しウエーハ100の表面101側の外周余剰領域106にAEセンサ51を当接配置しているが、ウエーハ100の裏面102側の外周余剰領域106にAEセンサ51を配置することも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 テーブル本体
20 レーザービーム照射手段
22 照射ヘッド
30 X軸移動手段(移動手段)
40 Y軸移動手段(移動手段)
50 弾性波検出手段
51 AEセンサ
52 AE解析手段
60 制御手段
61 記憶部
62 判定部
100 ウエーハ
106 外周余剰領域
107 ビアホール
108 ボンディングパッド
LB レーザービーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8