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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】保持テーブル及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018180032
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053508
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 秀次
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-177901(JP,A)
【文献】特開2017-037992(JP,A)
【文献】特開2015-154063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持テーブルであって、
該被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、
該保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が該保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、
該枠体には該凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、該保持部の外周縁に該ねじ穴に対応した係合部が形成され、該保持部は該枠体にねじで固定され、該保持面は該被加工物によって覆われるサイズに設定された、保持テーブル。
【請求項2】
前記被加工物は、ワークと、ワークの裏面に貼着されたテープと、該テープの外周が貼着された環状フレームと、からなり、ワークは該保持面より小さく、該ねじは、該保持面においてワークが保持された際に該ワークと重ならない位置にある
請求項1に記載の保持テーブル。
【請求項3】
前記多孔質材は樹脂からなる、請求項1または2に記載の保持テーブル。
【請求項4】
被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルを回転させる回転手段と、該保持テーブルで保持された該被加工物に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を備えた洗浄装置であって、
該保持テーブルは、該被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、
該保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が該保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、
該枠体には該凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、該保持部の外周縁に該ねじ穴に対応した係合部が形成され、該保持部は該枠体にねじで固定され、該保持面は該被加工物によって覆われるサイズに設定された、洗浄装置。
【請求項5】
前記被加工物は、ワークと、ワークが貼着されたテープと、該テープの外周が貼着された環状フレームと、からなり、ワークは該保持面より小さく、該ねじは、該保持面においてワークが保持された際に該ワークと重ならない位置にある、請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記保持部を構成する前記多孔質材は樹脂からなる、請求項4または5に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持する保持テーブル及び保持テーブルで保持された被加工物を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハ等の被加工物を保持する保持テーブル(例えば、特許文献1参照)は、吸引源に連通する吸引路を形成した金属からなる枠体にアルミナからなり板状に形成された多孔質材を接着剤で貼り合わせて製造していた。
または、従来の保持テーブルは、吸引源が生み出す吸引力で枠体上に多孔質材をバキューム固定する構成となっていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-062476号公報
【文献】特開2014-143295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に記載されているような保持テーブルにおいては、接着剤の劣化によって多孔質材が浮いてきたり剥離したりする等の不具合が生じることがあった。また、被加工物を吸引保持した後にリリースする際のエアブローによって多孔質材が浮いて落下して割れることもあった。
よって保持テーブルにおいては、接着剤の劣化等に起因した保持テーブルの破損を防止するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、被加工物を保持する保持テーブルであって、該被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、該保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が該保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、該枠体には該凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、該保持部の外周縁に該ねじ穴に対応した係合部が形成され、該保持部は該枠体にねじで固定され、該保持面は該被加工物によって覆われるサイズに設定された、保持テーブルである。
【0006】
前記保持テーブルで保持される前記被加工物は、ワークと、ワークの裏面に貼着されたテープと、該テープの外周が貼着された環状フレームと、からなり、ワークは該保持面より小さく、該ねじは、該保持面においてワークが保持された際に該ワークと重ならない位置にあると好ましい。
【0007】
前記保持テーブルの前記多孔質材は樹脂からなると好ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明は、被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルを回転させる回転手段と、該保持テーブルで保持された該被加工物に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を備えた洗浄装置であって、該保持テーブルは、該被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、該保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が該保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、該枠体には該凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、該保持部の外周縁に該ねじ穴に対応した係合部が形成され、該保持部は該枠体にねじで固定され、該保持面は該被加工物によって覆われるサイズに設定された、洗浄装置である。
【0009】
前記洗浄装置の前記保持テーブルで保持される被加工物は、ワークと、ワークが貼着されたテープと、該テープの外周が貼着された環状フレームと、からなり、ワークは該保持面より小さく、該ねじは、該保持面においてワークが保持された際に該ワークと重ならない位置にあると好ましい。
【0010】
前記洗浄装置の前記保持テーブルの前記保持部を構成する前記多孔質材は樹脂からなると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る保持テーブルは、被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、枠体には凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、保持部は枠体にねじで固定され、保持面は被加工物によって覆われるサイズに設定されているため、接着剤を使用せずに多孔質材からなる保持部を枠体にねじ止めすることで、接着剤の劣化に起因した保持テーブルの破損を防止できる。
【0012】
保持テーブルで保持される被加工物は、ワークと、ワークが貼着されたテープと、テープの外周が貼着された環状フレームと、からなることで、ワークが保持面よりも小さいサイズであっても、保持テーブルはテープと環状フレームとによってバキュームリーク無く被加工物を吸引保持することが可能となる。
【0013】
保持テーブルの多孔質材を樹脂からなるものとすることで、ねじ止めを行う際に多孔質材が変形してくれることで、多少ねじの締め付けを強くしても保持部が破損しないようになる。
【0014】
本発明に係る洗浄装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、保持テーブルを回転させる回転手段と、保持テーブルで保持された被加工物に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、を備えた洗浄装置であって、保持テーブルは、被加工物を保持する保持面を含む多孔質材からなる保持部と、保持部を収容する凹部が形成されるとともに一端が保持部に連通し他端が吸引源に接続された吸引路が形成された枠体と、を備え、枠体には凹部の外周側の底にねじ穴が形成され、保持部は枠体にねじで固定され、保持面は被加工物によって覆われるサイズに設定されているため、接着剤を使用せずに多孔質材からなる保持部を枠体にねじ止めすることで、洗浄液等を要因とする接着剤の劣化に起因した保持テーブルの破損を防止できる。
【0015】
洗浄装置の保持テーブルで保持される被加工物は、ワークと、ワークが貼着されたテープと、テープの外周が貼着された環状フレームと、からなることで、ワークが保持面よりも小さいサイズであっても、保持テーブルはテープと環状フレームとによってバキュームリーク無く被加工物を吸引保持することが可能となる。
【0016】
本発明に係る洗浄装置においては、保持テーブルの多孔質材を樹脂からなるものとすることで、ねじ止めを行う際に多孔質材が変形してくれることで、多少ねじの締め付けを強くしても保持部が破損しないようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】保持テーブルの一例を示す斜視図である。
図2】保持テーブルの各構成の一例を示す分解断面図である。
図3】保持部が枠体にねじで固定されている状態を示す部分的な断面図である。
図4】保持テーブルの一例を示す断面図である。
図5】保持テーブルで被加工物を吸引保持している状態を示す断面図である。
図6】洗浄装置の一例を示す斜視図である。
図7】洗浄装置の保持テーブルに被加工物を載置している状態を示す断面図である。
図8】洗浄装置の保持テーブルで被加工物が吸引保持された状態を示す断面図である。
図9】洗浄装置で被加工物を洗浄している状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、2に示す保持テーブル3は、例えば、その外形が円形状であり、半導体ウェーハ等の被加工物を保持する保持面30aを含む多孔質材からなる保持部30と、保持部30を収容する凹部310が形成されるとともに一端が保持部30に連通し他端が吸引源39に接続された吸引路311が形成された枠体31と、を備えている。
【0019】
図2に示すように、例えばSUS等の金属又はアルミナ等の硬質セラミックからなる枠体31は、円形板状の外形を備えており、その上面が円形に切り欠かれて凹部310が形成されている。そして、凹部310の底面には、吸引溝312が形成されている。吸引溝312は、凹部310の底面に凹状に形成され、保持テーブル3の回転中心を中心とする同心円状に形成された複数の円環状の環状吸引溝と、保持テーブル3の周方向に均等に環状吸引溝同士を連結するように放射状に形成された連結溝とを備える。なお、吸引溝312の構成は上記例に限定されるものではない。
【0020】
図2に示すように、各吸引溝312の底には、複数の吸引路311が形成されており、該複数の吸引路311は、例えば、枠体31内で合流した後に枠体31の底を抜けて、保持テーブル3外に配設された配管390(金属パイプ又は、可撓性を有するチューブ等)を介して真空発生装置等の吸引源39に連通している。
枠体31には凹部310の外周側の底にねじ穴315が周方向に均等間隔を空けて複数(例えば8つ)形成されている。
【0021】
多孔質材からなる保持部30は、本実施形態においては、多孔質材として樹脂(例えば、多孔質ポリテトラフルオロエチレン)を用いている。なお、保持部30は、他の多孔質性を備える樹脂でもよいし、多孔質のセラミックス等であってもよい。保持部30は、円形板状に形成されており、例えば、その直径が凹部310に嵌合する大きさに設定されている。
【0022】
例えば、保持部30には、枠体31の凹部310の外周側の底のねじ穴315に対応する8つの係合部302が周方向に均等間隔を空けて形成されている。保持部30の外周縁を平面視略半円状に切り欠いてなる係合部302は、図2に示す段付きねじ34に係合する段差を備えた形状をしている。段付きねじ34は、ねじを切ってない円柱部340がねじの呼び径よりも大きいものである。
なお、係合部302は、保持部30の外周縁全周に段差を備えるように円環状に切り欠いて形成したものであってもよい。
【0023】
図2に示す保持部30の下面を枠体31の凹部310の底に接触させ、各係合部302と各ねじ穴315とを重ね合わせて、段付きねじ34を各ねじ穴315に螺合させ締め付けることにより、図3に示すように、段付きねじ34の円柱部340の下面が凹部310の底に当接し、かつ、段付きねじ34のヘッド部341の下面が係合部302の段差面を上から押さえつけることで、保持部30が枠体31に固定された状態になる。そして、図1、4に示すように、保持部30の露出した上面が保持面30aとなる。なお、図3、4に示すように、段付きねじ34のヘッド部341の上面の高さが、保持部30の保持面30aの高さと同じ又は保持面30aよりも低くなる。
【0024】
本実施形態のように保持部30が樹脂からなる場合には、段付きねじ34による保持部30のねじ止め固定の際に保持部30が変形してくれるため、多少締め付けを強くしても保持部30が破損しない。保持部30がセラミックスからなる場合は、樹脂からなるワッシャーを、段付きねじ34のヘッド部341の下面と係合部302の段差面との間に噛ませてねじ止めすると好ましい。
【0025】
以下に、図1、5に示す保持テーブル3により被加工物である図5に示すウェーハW1を吸引保持する場合について説明する。ウェーハW1は、例えば、円形の半導体ウェーハである。なお、被加工物は、ウェーハW1がウェーハW1に貼着されたテープとテープに貼着された環状フレームとで支持されたワークセットであってもよい。図5に示すように、保持テーブル3の保持面30aは被加工物によって覆われるサイズに設定されている。即ち、保持面30aの直径は、ウェーハW1の直径以下に設定されており、枠体31の直径は、ウェーハW1の直径以上に設定されている。
【0026】
図5に示すように、保持テーブル3の中心とウェーハW1の中心とが略合致するようにして、ウェーハW1が保持部30の保持面30aと枠体31の環状の上面とに跨って載置される。図5に示すように、配管390上には例えばソレノイドバルブ391が配設されており、ソレノイドバルブ391が開かれた状態で吸引源39が作動することで、吸引源39が生み出す吸引力が配管390、吸引路311、及び吸引溝312を通り保持部30の保持面30aに伝達され、保持テーブル3は保持面30a上でウェーハW1を吸引保持する。
【0027】
本発明に係る保持テーブル3は、ウェーハW1を保持する保持面30aを含む多孔質材からなる保持部30と、保持部30を収容する凹部310が形成されるとともに一端が保持部30に連通し他端が吸引源39に接続された吸引路311が形成された枠体31と、を備え、枠体31には凹部310の外周側の底にねじ穴315が形成され、保持部30は枠体31に段付きねじ34で固定され、保持面30aはウェーハW1によって覆われるサイズに設定されているため、接着剤を使用せずに多孔質材からなる保持部30を枠体31にねじ止めすることで、従来の接着剤の劣化に起因した保持部30の剥がれ等による破損を防止できる。
【0028】
例えば、図5に示す配管390には、圧縮エアを供給可能な図示しないエア源が接続されていてもよい。即ち、配管390には、例えば図示しない切換弁が配設されており、切換弁の切り換え動作により、配管390と吸引源39とが繋がった状態と配管390とエア源とが繋がった状態とを切り換え可能となっている。エア源は、保持テーブル3により吸引保持されているウェーハW1を、保持面30aから離脱させる際に用いられる。即ち、エア源から配管390に供給されたエアは、配管390、吸引路311、及び吸引溝312を通り保持部30に到り、保持面30aから上方に向かって噴出する。このエアの噴出圧力でウェーハW1を保持面30aから押し上げ、保持面30aとウェーハW1との間に残存する真空吸着力(吸引源39による吸引を止めた後に残る真空吸着力)を排除し、ウェーハW1を保持テーブル3から確実に離脱可能とする。
【0029】
このように、ウェーハW1を保持テーブル3から離脱させる際にエアブローを行う場合、吸引源が生み出す吸引力で枠体上に多孔質材をバキューム固定する従来の構成の保持テーブルでは、エアブローにより多孔質材が浮き上がって落下して破損する可能性があった。一方、本発明に係る保持テーブル3は、保持部30を枠体31にねじ止めしていることで、エアブローによる保持部30の落下に伴う破損を防ぐことができる。
【0030】
図6に示す洗浄装置1は、例えば、被加工物WSを保持する先に説明した保持テーブル3と、保持テーブル3を回転させる回転手段4と、上端側に円形の開口を備えた有底円筒状のケーシング5と、保持テーブル3で保持された被加工物WSに洗浄液を供給する洗浄液供給手段6を備えている。
【0031】
図6に示すワークWは、例えば、円形の半導体ウェーハであり、ワークWの表面Wa上には、分割予定ラインSによって区画された格子状の領域にデバイスDが形成されている。ワークWは、その裏面WbにテープTが貼着された状態になっている。また、テープTの外周部分は環状フレームFに貼着されている。これにより、ワークWがテープTを介して環状フレームFに支持されハンドリング可能な被加工物WSとなっている。図7,8に示すように、保持面30aは被加工物WSによって覆われるサイズに設定されている。即ち、保持部30の直径は、例えばテープTの直径以下に設定されており、枠体31の直径は、テープTの直径以上に設定されている。
【0032】
さらに、ワークWは分割予定ラインSに沿ってダイシング加工が施されており、デバイスDを備える個々のチップCとなっている。なお、ワークWは、回転する切削ブレードによるダイシングによってチップCに分割されたものに限定されず、テープエキスパンドによりチップCに分割されたものや分割される前のものであってもよい。
【0033】
図6に示す保持テーブル3の枠体31の周囲には、環状フレームFを固定する固定クランプ36が例えば4つ均等に配設されている。固定クランプ36は、例えば振り子式の固定クランプであり、-Z方向から水平方向において回動可能な図示しない振り子(錘)を備えている。
なお、固定クランプ36は、振り子式のものに限定されず、メカニカルクランプであってもよい。
【0034】
保持テーブル3の下側に配設された回転手段4は、保持テーブル3の底面側に上端が固定されZ軸方向の軸心周りに回転可能なスピンドル40と、モータ等で構成されスピンドル40の下端側に連結する回転駆動源41とを少なくとも備えている。回転駆動源41がスピンドル40を回転させることで、スピンドル40に固定された保持テーブル3も回転する。回転駆動源41は、エアシリンダ等からなる支持機構44によって上下方向に移動可能に支持されている。支持機構44は、回転駆動源41を上昇させることで保持テーブル3を上昇させて、保持テーブル3を被加工物WSの搬入・搬出高さ位置に位置付け、また、回転駆動源41を下降させることで被加工物WSを保持した状態の保持テーブル3を下降させて、保持テーブル3をケーシング5内における洗浄作業高さ位置に位置付ける。
【0035】
保持テーブル3は、ケーシング5の内部空間に収容されている。なお、図6においては、ケーシング5の外側壁50等の一部を切欠いて内部が把握できるように示している。ケーシング5は、保持テーブル3を囲繞する外側壁50と、外側壁50の下部に一体的に連接し中央にスピンドル40が挿通される開口を有する底板51と、底板51の開口の内周縁から立設する内側壁52とから構成されている。ケーシング5は、底板51に一端が固定された脚部53により支持されている。底板51には、排出口51aが厚み方向に貫通形成されており、排出口51aには、保持テーブル3の保持面30a上からケーシング5内に流下した洗浄液等をケーシング5の外部に排出するドレンホース51bが接続されている。
【0036】
保持テーブル3の下面とケーシング5の内側壁52の上端面との間には、スピンドル40に挿嵌された円形状のカバー部材54が配設されており、カバー部材54は、スピンドル40と底板51の開口との隙間に、保持テーブル3の保持面30a上から流下する洗浄液を入り込ませないようにしている。
【0037】
底板51上には、洗浄液供給手段6を構成しZ軸方向に延在するノズルアーム60が立設されており、ノズルアーム60には、洗浄液ノズル61とエアブローノズル62とが接続されている。ノズルアーム60は回転駆動源602(図9参照)によって、Z軸方向の軸心周りに回転可能となっている。ノズルアーム60を回転軸として水平方向に延在する洗浄液ノズル61は、その先端部分に形成された噴射口610が保持テーブル3の保持面30aに向かって開口している。洗浄液ノズル61は、ワークWの表面Waに洗浄液(例えば、純水)を供給する洗浄液供給源617に連通している。
【0038】
ノズルアーム60を回転軸として例えば洗浄液ノズル61と並行するように延在するエアブローノズル62は、その先端部分に形成された噴射口620が保持テーブル3の保持面30aに向かって開口している。エアブローノズル62は、ワークWの表面Waに圧縮エアを供給するコンプレッサー等からなるエア供給源627に連通している。
【0039】
以下に、上記洗浄装置1によりワークWを洗浄する場合について説明する。
まず、図7に示すように、搬入高さ位置に位置付けられた状態の保持テーブル3の中心と被加工物WSの中心とが略合致するように、被加工物WSが、テープT側を下に向けて保持面30a上に載置される。そして、図8に示すように、吸引源39により生み出される吸引力が保持面30aに伝達されることにより、表面Waが上方に向かって露出した状態でワークWが保持テーブル3によって吸引保持される。なお、保持面30aは例えばテープTで覆われるため、バキュームリークは生じない。
次いで、ワークWを吸引保持する保持テーブル3が、図9に示すように、ケーシング5内における洗浄作業高さ位置まで下降する。
【0040】
ノズルアーム60によって洗浄液ノズル61が旋回移動し、洗浄液ノズル61の噴射口610が保持テーブル3により吸引保持されたワークWの表面Waの中央領域上方に位置付けられる。そして、洗浄液供給源617から洗浄液ノズル61に洗浄液が供給され、噴射口610からワークWの表面Waの中心部に向かって洗浄液が噴射される。さらに、洗浄液を噴射する洗浄液ノズル61が、ワークWの上方をZ軸方向の軸心周りに所定角度で往復するように旋回移動する。
【0041】
また、保持テーブル3が所定の回転速度で回転することで、ワークWの表面Wa全面に洗浄液ノズル61から洗浄液が噴射される。そして、保持テーブル3の回転に伴って固定クランプ36の図示しない振り子に加わる遠心力により、振り子が例えば-Z方向から水平方向に向かうように持ち上げられていくことに連動して、固定クランプ36が径方向内側に向かって回動して、固定クランプ36と保持テーブル3との間で環状フレームFが挟持固定される。
【0042】
ワークWが洗浄され、保持テーブル3の回転により発生する遠心力によって、洗浄液が、ワークWの表面Wa上を中心側から外周側に向けて流れていき、保持テーブル3上からケーシング5の底板51へと流下する。
【0043】
洗浄液によって所定時間ワークWの洗浄が行われた後、洗浄液ノズル61からの洗浄液の噴射が止められる。次いで、エアブローノズル62の噴射口620からワークWの表面Waの中心部に向かってエアが噴射される。さらに、エアを噴射するエアブローノズル62が、ワークWの上方をZ軸方向の軸心周りに所定角度で往復するように旋回移動する。さらに、回転手段4が保持テーブル3を回転させることによって、ワークWの表面Wa全面がエアブローにより乾燥される。そして、被加工物WSの乾燥が完了すると、エアブローノズル62が保持テーブル3上から旋回移動して退避し、被加工物WSがケーシング5内から搬出可能となる。
【0044】
本発明に係る洗浄装置1は、被加工物WSを保持する保持テーブル3と、保持テーブル3を回転させる回転手段4と、保持テーブル3で保持された被加工物WSに洗浄液を供給する洗浄液供給手段6と、を備えた洗浄装置であって、保持テーブル3は、被加工物WSを保持する保持面30aを含む多孔質材からなる保持部30と、保持部30を収容する凹部310が形成されるとともに一端が保持部30に連通し他端が吸引源39に接続された吸引路311が形成された枠体31と、を備え、枠体31には凹部310の外周側の底にねじ穴315が形成され、保持部30は枠体31に段付きねじ34で固定され、保持面30aは被加工物WSによって覆われるサイズ(例えば、テープTによって覆われるサイズ)に設定されているため、接着剤を使用せずに多孔質材からなる保持部30を枠体31にねじ止めすることで、洗浄液等を要因とする接着剤の劣化に起因する保持部30の剥がれ等による破損を防止できる。
【0045】
洗浄装置1の保持テーブル3で保持される被加工物WSは、ワークWと、ワークWが貼着されたテープTと、テープTの外周が貼着された環状フレームFと、からなることで、ワークWが保持面30aよりも小さいサイズであっても、保持テーブル3はテープTと環状フレームFとによってバキュームリーク無く被加工物WSを吸引保持することが可能となる。
【0046】
吸引源が生み出す吸引力で枠体上に多孔質材をバキューム固定する従来の構成の保持テーブルを備える洗浄装置では、被加工物WS吸着用の吸引力を伝達するための吸引路及び多孔質材固定用の吸引力を伝達するための吸引路の2種の吸引経路を洗浄装置に配設する必要があり、そのためのスペースを確保することが難しいという問題があった。また、スピンナー洗浄装置では、被加工物WSを吸引保持する保持テーブルが洗浄時にある程度の速度で回転するため、該問題がより顕在化していた。さらに、該2種類の吸引経路は、例えば、保持テーブルを回転させる回転手段内等を通され回転手段の側面において、吸引力を遺漏無く移送するロータリージョイント等を介して吸引源と連通している。そして、ロータリージョイント等と2種類の吸引経路との間をシール材によって確実にシールすることは難しいという問題もあった。
一方、本発明に係る洗浄装置1では、保持テーブル3は、保持部30を枠体31にねじ止めしていることで、保持部30固定用の吸引力を伝達するための吸引路を洗浄装置1に設ける必要がないため、上記スペース確保の問題が発生しない。また、2種類の吸引経路をそれぞれ例えば回転手段4の側面においてシールする必要も無くなる。
【0047】
なお、本発明に係る保持テーブル3及び洗浄装置1は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
3:保持テーブル
30:保持部 30a:保持面 302:係合部
31:枠体 310:凹部 311:吸引路 312:吸引溝 315:ねじ穴
34:段付きねじ 340:円柱部 341:ヘッド部
39:吸引源 390:配管 391:ソレノイドバルブ
W1:ウェーハ WS:被加工物 W:ワーク T:テープ F:環状フレーム
1:洗浄装置
3:保持テーブル 36:固定クランプ 4:回転手段 5:ケーシング
6:洗浄液供給手段 60:ノズルアーム 61:洗浄液ノズル 62:エアブローノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9