(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】洗浄方法および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221109BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
B08B3/02 B
(21)【出願番号】P 2018209527
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 俊悟
(72)【発明者】
【氏名】福士 暢之
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-107442(JP,A)
【文献】特開2016-150555(JP,A)
【文献】特開2008-028226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物にエアと水とを混合させた混合液を
二流体ノズルから噴射して該被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、
該二流体ノズルは、エアを取り入れるエア取入部と、水を取り入れる水取入部と、該エア取入部および該水取入部に連通されており、該エア取入部から取り入れられたエアと、該水取入部から取り入れられた水とが混合されて、混合液が生成される混合部と、該混合液を噴射する噴射口と、を備え、
スピンナテーブルに該被洗浄物を保持させる保持工程と、
該二流体ノズル
の該噴射口から該混合液を噴射して該被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、
該二流体ノズル内の水を
該噴射口から排出する排出工程と、
該二流体ノズル
の該噴射口からエアのみを噴射して該被洗浄物を乾燥させる乾燥工程と、
を備え、
該排出工程は、該二流体ノズル
の該混合部への水の供給を遮断すること、および、エアの供給と遮断とを繰り返して該
混合部に断続的にエアを供給することによって、
該混合部に滞留している水をエアの供給時に該噴射口から排出すること、および、エアの遮断時に該水取入部から該混合部に移った水を、エアの供給時に該噴射口から排出することを含む、
洗浄方法。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄方法によって被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、
該被洗浄物を保持するスピンナテーブルと、
該スピンナテーブルを、その中心を軸に回転させる回転手段と、
該二流体ノズルと、
該二流体ノズルと水供給源とを接続する水配管に配設される水バルブと、
該二流体ノズルとエア供給源とを接続するエア配管に配設されるエアバルブと、
該水バルブと該エアバルブとを制御する制御手段と、を備え、
該制御手段は、
該水バルブを閉じ、該エアバルブの開閉を繰り返して断続的に該二流体ノズル
の該混合部にエアを供給することによって
、該混合部に滞留している水をエアの供給時に該噴射口から排出するとともに、エアの遮断時に該水取入部から該混合部に移った水を、エアの供給時に該噴射口から排出し、その後、
該エアバルブを継続的に開いて該被洗浄物に向けてエアを噴射することによって、該被洗浄物を乾燥させる、
洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法および洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを洗浄する洗浄装置では、スピンナテーブルにウェーハを保持させ、ウェーハの上方に二流体ノズルを位置づけ、この二流体ノズルから水とエアとを混合させた混合液を噴射するとともにスピンナテーブルを回転させることによって、ウェーハを洗浄している。洗浄後には、ウェーハの上方に位置づけられた乾燥ノズルからエアを噴射することによって、ウェーハを乾燥させる(たとえば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-130818号公報
【文献】特開2015-109324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、従来の洗浄装置は、二流体ノズルと乾燥ノズルとの2つのノズルを備えているため、構造が複雑になる。そこで、乾燥ノズルを設ける代わりに、二流体ノズルからエアだけを噴射して、ウェーハを乾燥させることが考えられる。
【0005】
しかし、この場合、エジェクター効果によってエア流に水が引き込まれるので、二流体ノズルから噴射されるエアに水分が含まれる。長時間にわたって二流体ノズルからエアを噴射すれば、エアに含まれる水分が減少するので、二流体ノズルを乾燥ノズルとして流用することができる。しかし、この手法では、乾燥の開始までに時間がかかるため、効率が悪い。そのため、二流体ノズルを備える洗浄装置から乾燥ノズルを省略することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、二流体ノズルを用いて、ウェーハなどの被洗浄物を乾燥させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄方法(本洗浄方法)は、被洗浄物にエアと水とを混合させた混合液を二流体ノズルから噴射して該被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、該二流体ノズルは、エアを取り入れるエア取入部と、水を取り入れる水取入部と、該エア取入部および該水取入部に連通されており、該エア取入部から取り入れられたエアと、該水取入部から取り入れられた水とが混合されて、混合液が生成される混合部と、該混合液を噴射する噴射口と、を備え、スピンナテーブルに該被洗浄物を保持させる保持工程と、該二流体ノズルの該噴射口から該混合液を噴射して該被洗浄物を洗浄する洗浄工程と、該二流体ノズル内の水を該噴射口から排出する排出工程と、該二流体ノズルの該噴射口からエアのみを噴射して該被洗浄物を乾燥させる乾燥工程と、を備え、該排出工程は、該二流体ノズルの該混合部への水の供給を遮断すること、および、エアの供給と遮断とを繰り返して該混合部に断続的にエアを供給することによって、該混合部に滞留している水をエアの供給時に該噴射口から排出すること、および、エアの遮断時に該水取入部から該混合部に移った水を、エアの供給時に該噴射口から排出することを含む。
【0008】
本発明の洗浄装置(本洗浄装置)は、本洗浄方法によって被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、該被洗浄物を保持するスピンナテーブルと、該スピンナテーブルを、その中心を軸に回転させる回転手段と、該二流体ノズルと、該二流体ノズルと水供給源とを接続する水配管に配設される水バルブと、該二流体ノズルとエア供給源とを接続するエア配管に配設されるエアバルブと、該水バルブと該エアバルブとを制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、該水バルブを閉じ、該エアバルブの開閉を繰り返して断続的に該二流体ノズルの該混合部にエアを供給することによって、該混合部に滞留している水をエアの供給時に該噴射口から排出するとともに、エアの遮断時に該水取入部から該混合部に移った水を、エアの供給時に該噴射口から排出し、その後、該エアバルブを継続的に開いて該被洗浄物に向けてエアを噴射することによって、該被洗浄物を乾燥させる。
【発明の効果】
【0009】
本洗浄方法および本洗浄装置では、二流体ノズルへの水の供給を遮断し、エアの供給と遮断とを繰り返して二流体ノズルに断続的にエアを供給することにより、二流体ノズル内の水を、エジェクター効果の発生を抑制できる程度にまで、徐々に減らすことができる。これにより、二流体ノズルから噴出されるエアを用いて、被洗浄物を良好に乾燥することができる。したがって、乾燥ノズル、および、乾燥ノズルを被洗浄物の径方向に移動させるための機構が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるスピンナ洗浄装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】スピンナ洗浄装置の混合液噴射部の構成を示す説明図である。
【
図3】混合液噴射部の二流体ノズルの構成を示す説明図である。
【
図4】洗浄工程における二流体ノズルを示す説明図である。
【
図5】排出工程の開始時における二流体ノズルを示す説明図である。
【
図6】排出工程において、エアのみが供給されている状態の二流体ノズルを示す説明図である。
【
図7】排出工程において、エアの供給が遮断されている状態の二流体ノズルを示す説明図である。
【
図8】排出工程において、再度、エアのみが供給されている状態の二流体ノズルを示す説明図である。
【
図9】排出工程において、再度、エアの供給が遮断されている状態の二流体ノズルを示す説明図である。
【
図10】排出工程において、再々度、エアのみが供給されている状態の二流体ノズルを示す説明図である。
【
図11】排出工程が完了したときの二流体ノズルを示す説明図である。
【
図12】洗浄工程、排出工程および乾燥工程における、二流体ノズルに供給されるエアおよび水の流量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すスピンナ洗浄装置1は、エアと水とを混合させた混合液を用いて、被洗浄物Wを洗浄する。スピンナ洗浄装置1は、下方の円筒部10、円筒部10を包囲する容器部2、円筒部10の内部から上方に延びる回転軸3、回転軸3の上端に取り付けられ被洗浄物Wを吸引保持するスピンナテーブル4、スピンナテーブル4に保持された被洗浄物Wに混合液を噴射する混合液噴射部6、混合液の飛散を抑制するためのカバー7、および、スピンナ洗浄装置1の動作を制御する制御手段8を含んでいる。
【0012】
円筒部10は、主に、スピンナ洗浄装置1における装置ベースとして機能する。円筒部10の下端には、円筒部10の径方向外向きに延出するフランジ部100が設けられている。フランジ部100は、複数のネジ孔を有しており、ボルト等によって、図示しない研削装置等の基台に接続されることができる。
【0013】
容器部2は、円筒部10の上部側を包囲するように、円筒部10と一体的に形成されている。容器部2の外形は、たとえば多角形上に形成されている。容器部2の底板には排水管201が接続されており、排水管201は排水装置202に連通している。
【0014】
回転軸3はZ軸方向に延びており、回転軸3の上端は、スピンナテーブル4の中心に固定されている。回転軸3の下端側は、回転軸3を回転させる図示しないモータに連結されている。このモータは、円筒部10の内部に収容されている。回転軸3は、スピンナテーブル4を、その中心を軸に回転させる回転手段の一例に相当する。
【0015】
スピンナテーブル4は、円形の外形を有しており、その中央に保持面5を備えている。保持面5は、ポーラス材等からなり、被洗浄物Wを吸着する。保持面5には、回転軸3の内部を通り、吸引源に連通する吸引路(ともに図示せず)が連通されている。吸引源の吸引力により、スピンナテーブル4は、保持面5によって被洗浄物Wを吸引保持する。スピンナテーブル4の下方には、連結部材41が配設されている。連結部材41は、混合液が円筒部10の内部に進入することを抑制する。
【0016】
混合液の飛散を抑制するためのカバー7は、容器部2の上方を覆う上部カバー70、スピンナテーブル4の側部を包囲可能な側部カバー71、および、ブラケットカバー72を備えている。
【0017】
側部カバー71は、筒状に形成されており、容器部2の内側に位置している。側部カバー71の上縁には、外向きに延出されるフランジ部710が形成されている。そして、側部カバー71は、エアシリンダ79によって、容器部2に対してZ軸方向に沿って上下に移動可能である。
【0018】
エアシリンダ79は、容器部2の側面に固定されたシリンダチューブ791、および、シリンダチューブ791に挿入されたピストンロッド790を備える。ピストンロッド790の上端は、側部カバー71のフランジ部710に固定されている。シリンダチューブ791の内圧が変化することで、ピストンロッド790がZ軸方向に沿って上下動し、これに伴って側部カバー71が上下動する。
【0019】
側部カバー71は、スピンナテーブル4に対して被洗浄物Wを着脱する際には、下降してスピンナテーブル4を開放する開状態となる。一方、側部カバー71は、被洗浄物Wを洗浄および乾燥する際には、上昇してスピンナテーブル4の側部を覆う閉状態となり、混合液の飛散を抑制する。
【0020】
板状のブラケットカバー72は、容器部2の-X方向側の側面上部に、ボルト等の止め具によって固定されている。ブラケットカバー72の中央部には、たとえば、エアシリンダ79を配設するための図示しない切り欠き部が設けられている。エアシリンダ79のピストンロッド790は、この切り欠き部内において上下動する。
【0021】
上部カバー70は、容器部2と同様の多角形状に形成されており、ブラケットカバー72の上端部に、ボルト等の止め具によって固定されている。
図1に示すように、上部カバー70の略中央部には、アクリル板等の透明材料からなる覗き窓701が設けられている。ユーザは、覗き窓701を介して、洗浄中の被洗浄物Wの状態を、+Z方向から確認することができる。
【0022】
混合液噴射部6は、容器部2の上方に配設され、スピンナテーブル4に保持された被洗浄物Wに混合液を噴射する。
図2に示すように、混合液噴射部6は、Z軸方向に延びるシャフト61とともに回転可能に構成されている。すなわち、シャフト61は、その末端に従動ギア612を有しており、従動ギア612は、旋回モータ614に連結された駆動ギア613に歯合している。混合液噴射部6は、駆動ギア613および従動ギア612を介してシャフト61に伝達される旋回モータ614の回転力により、シャフト61を回転軸として回転する。これにより、混合液噴射部6はスピンナテーブル4の上方の中心から外周までの洗浄位置と、スピンナテーブル4の上方から外れた退避位置との間で移動可能である。
なお、従動ギア612、駆動ギア613を用いないで、シャフト61に旋回モータ614を直結してもよい。
【0023】
また、
図2に示すように、混合液噴射部6は、エア配管62、エア配管62に沿うように設けられた水配管63、および、エア配管62および水配管63の先端に取り付けられた二流体ノズル64を備えている。
さらに、混合液噴射部6は、エア配管62の末端に接続されたエア供給源621、エア配管62に設けられたエアバルブ622、水配管63の末端に接続された水供給源631、および、水配管63に設けられた水バルブ632を有している。
【0024】
エア配管62は、一部がシャフト61の内部を延びるように配設され、他の部分がシャフト61の上端から側方に延びるように配設されており、略逆L字を形成している。エア配管62は、二流体ノズル64とエア供給源621とを接続する。
水配管63は、その一端が、側部カバー71の外部に設けられた水供給源631に接続されている。水配管63は、側部カバー71を貫通してシャフト61に接触し、シャフト61およびエア配管62に沿って二流体ノズル64にまで延びるように配設されている。水配管63は、二流体ノズル64と水供給源631とを接続する。
【0025】
エアバルブ622は、エア供給源621からエア配管62に流れるエアの量を調整するために用いられる。水バルブ632は、水供給源631から水配管63に流れる水の量を調整するために用いられる。これらエアバルブ622および水配管フランジ633は、制御手段8によって制御される。すなわち、水配管63に流れる水の量およびエア配管62に流れるエアの量は、制御手段8によって制御される。
【0026】
二流体ノズル64は、エアと水とを混合させた混合液を噴射して被洗浄物Wを洗浄する。
図3に示すように、二流体ノズル64は、エア配管62から供給されたエアを取り入れるエア取入部641、水配管63から供給された水を取り入れる水取入部642、エアと水とが混合されて混合液が生成される混合部643、および、混合液を噴射する噴射口644を備えている。
【0027】
エア配管62は、中空のエアチューブ624、および、エアチューブ624の先端に設けられたエア配管フランジ623を含んでいる。二流体ノズル64のエア取入部641には、エア配管62のエア配管フランジ623が取り付けられる。したがって、エア供給源621からのエアは、エアバルブ622、エア配管62のエアチューブ624およびエア配管フランジ623を介して、エア取入部641から二流体ノズル64に供給される。
【0028】
さらに、水配管63は、中空の水チューブ634、および、水チューブ634の先端に取り付けられた水配管フランジ633を含んでいる。二流体ノズル64の水取入部642には、水配管63の水配管フランジ633が取り付けられる。したがって、水供給源631からの水は、水バルブ632、水配管63の水チューブ634および水配管フランジ633を介して、水取入部642から二流体ノズル64に供給される。
【0029】
混合部643は、エア取入部641および水取入部642に連通されている。混合部643では、エア取入部641から取り入れられたエアと、水取入部642から取り入れられた水とが混合されて、二流体洗浄液である混合液となる。この混合液は、噴射口644から噴射される。なお、混合部643の一部は、
図3に示すように、エア取入部641と噴射口644との間に位置しており、エアの流路の一部を形成している。
【0030】
次に、スピンナ洗浄装置1の動作について説明する。
【0031】
(1)保持工程
スピンナ洗浄装置1では、まず、被洗浄物Wを、スピンナテーブル4によって保持する。
図1に示すように、被洗浄物Wは、たとえば円形状の半導体ウェーハであり、被洗浄物Wの表面Waには、図示しないデバイスが形成されている。被洗浄物Wの裏面Wbは、たとえば、図示しない研削装置により研削された状態となっており、スピンナ洗浄装置1により洗浄される被洗浄面となる。研削後の被洗浄物Wは、たとえば、図示しないロボットハンドに保持されて、研削装置からスピンナ洗浄装置1にまで運ばれる。
【0032】
保持工程では、制御手段8は、エアシリンダ79を制御してピストンロッド790を下降させることで、側部カバー71を下降させて容器部2内に収納する。これにより、上部カバー70と容器部2との間が開放され、被洗浄物Wを保持したロボットハンドの進入および退出が可能となる。そして、ロボットハンドがスピンナ洗浄装置1の内部の所定の位置にまで進入し、被洗浄物Wがスピンナテーブル4上に搬送され、被洗浄物Wが、裏面Wbが上側になるように、保持面5に載置される。
【0033】
その後、制御手段8は、保持面5に連通された吸引源および吸引路を用いて、スピンナテーブル4の保持面5を吸引する。これにより、保持面5の表面に負圧が生じる。保持面5は、この負圧によって、被洗浄物Wを吸引保持する。これにより、被洗浄物Wの裏面Wbが露出する。
【0034】
次いで、制御手段8は、エアシリンダ79を制御してピストンロッド790を上昇させることで、側部カバー71を容器部2内から上昇させる。これにより、上部カバー70と容器部2との間が側部カバー71によって塞がれて、被洗浄物Wを洗浄及び乾燥するための密閉空間が形成される。
【0035】
(2)洗浄工程
この工程では、制御手段8が、旋回モータ614を制御して、混合液噴射部6を、スピンナテーブル4の上方の洗浄位置に配置する。これにより、
図2に示す混合液噴射部6の二流体ノズル64が、被洗浄物Wの上方に位置する。
そして、制御手段8は、図示しないモータを制御して、回転軸3を回転させる。これにより、被洗浄物Wを保持したスピンナテーブル4が、その中心を軸に回転する。
【0036】
また、制御手段8は、エアバルブ622および水バルブ632を開ける。これにより、
図4に示すように、エア供給源621からのエアが、エア配管62を介して二流体ノズル64に供給されるとともに、水供給源631からの水が、水配管63を介して二流体ノズル64に供給される。なお、
図4~
図11では、エア配管62内にエアが流れていることを矢印Aによって示すとともに、水配管63内に水が流れていることを、矢印Hによって示している。
【0037】
また、
図12に示すように、時間t0~t1の間に実施される洗浄工程では、エア配管62におけるエアの流量および水配管63における水の流量は、略一定である。なお、
図12では、エアの流量を実線によって示す一方、水の流量を破線によって示している。
【0038】
二流体ノズル64では、
図4に示すように、供給されたエアと水とが、混合部643において混合されて混合液が生成される。この混合液は、二流体ノズル64の噴射口644から、スピンナテーブル4とともに回転している被洗浄物Wに向かって噴射される(
図3参照)。これにより、被洗浄物Wの裏面Wbの全面が洗浄される。
【0039】
被洗浄物Wの洗浄に用いられた混合液の大部分は、被洗浄物Wから、
図1に示した容器部2内に流下して、排水装置202に向かって排水される。
また、混合液の一部は、飛沫となってカバー7の上部カバー70等に付着した後、側部カバー71を伝って容器部2内に流下し、排水装置202に向かって排水される。
【0040】
(3)排出工程
この工程では、二流体ノズル64内の水が排出される。この工程は、二流体ノズル64への水の供給を遮断すること、および、二流体ノズル64へのエアの供給と遮断とを繰り返して、二流体ノズル64に断続的にエアを供給することによって、二流体ノズル64の内部の水を排出することを含む。すなわち、制御手段8は、エアバルブ622の開閉を繰り返して断続的に二流体ノズル64にエアを供給することによって、二流体ノズル64内の水を排出する。
【0041】
この工程では、まず、制御手段8が、時間t1~t2の間(たとえば約1秒間;
図12参照)、エアバルブ622および水バルブ632(
図3参照)を閉じる。これにより、
図5に示すように、二流体ノズル64へのエアおよび水の供給が遮断される。このとき、二流体ノズル64では、水取入部642および混合部643内に水が溜まっている。
【0042】
次に、制御手段8は、時間t2~t3の間(たとえば約2秒間;
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622を開ける。これにより、
図6に示すように、二流体ノズル64にエアのみが供給される。なお、排出工程では、制御手段8は、エアの流量を、洗浄工程におけるエア流量よりも多くする(
図12参照)。このエアの供給により、二流体ノズル64では、混合部643に滞留している水の一部、すなわち、混合部643におけるエアの流路の一部を形成している部分およびその近傍の水が、噴射口644から噴出される。また、エアの供給による混合部643内の圧力上昇によって、混合部643内の水の一部が、矢印K1によって示すように、水取入部642に移る。このため、混合部643では、エア取入部641の先端を囲む一部分(エアの流路となっていない部分)だけに水が残る。
【0043】
さらに、制御手段8は、時間t3~t4の間(たとえば約1秒間;
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622も閉じる。これにより、
図7に示すように、二流体ノズル64へのエアおよび水の供給が遮断される。このとき、二流体ノズル64では、混合部643内の圧力が下がるため(大気圧となるため)、水取入部642内の水の一部が、矢印K2によって示すように、混合部643内に移る。したがって、二流体ノズル64は、再度、水取入部642および混合部643内に水が溜まった状態となる。しかし、時間t2~t3の間に一部の水が排出されているため、
図7に示す状態では、
図5に示した状態に比して、二流体ノズル64内の水量が減少している。
【0044】
その後、制御手段8は、時間t4~t5の間(たとえば約2秒間;
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622を開ける。これにより、
図8に示すように、二流体ノズル64にエアが供給され、その結果、二流体ノズル64では、
図6に示した状態と同様に、混合部643に残存している水の一部が、噴射口644から噴出される。また、エアの供給による混合部643内の圧力上昇によって、混合部643内の水の一部が、矢印K1によって示すように水取入部642に移る。このため、混合部643では、エア取入部641の先端を囲む一部分だけに水が残る。噴射口644から一部の水が噴出されたため、混合部643における水の残存量は、
図6に示した状態よりも減少している。
【0045】
次に、制御手段8は、時間t5~t6の間(たとえば約1秒間;
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622も閉じる。これにより、
図7に示した状態と同様に、
図9に示すように、二流体ノズル64へのエアおよび水の供給が遮断される。このとき、二流体ノズル64では、混合部643内の圧力が下がるため(大気圧となるため)、水取入部642内の水が、矢印K2によって示すように、混合部643内に移る。したがって、二流体ノズル64は、再々度、水取入部642および混合部643内に水が溜まった状態となる。しかし、時間t2~t3の間および時間t4~t5の間に、一部の水が排出されているため、
図9に示す状態では、
図5および
図7に示した状態に比して、二流体ノズル64内の水量が減少している。
【0046】
さらに、制御手段8は、時間t6~t7の間(たとえば約2秒間;
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622を開ける。これにより、
図10に示すように、二流体ノズル64にエアが供給されて、混合部643に残存している水の一部が噴射口644から噴出される。また、エアの供給による混合部643内の圧力上昇によって、混合部643内の水の一部が、矢印K1によって示すように水取入部642に移る。また、噴射口644から一部の水がさらに噴出されたため、混合部643における水は、
図8に示した状態よりもさらに減少し、ほぼ残存していない状態となる。また、複数回の水の噴出により、水取入部642内の水圧が低くなるので、二流体ノズル64へのエアの供給を停止した場合でも(時間t7~t8;
図12参照)、
図11に示すように、表面張力により、水取入部642内の水が混合部643に漏れだすことが抑制される。
【0047】
(4)乾燥工程
この工程では、制御手段8は、二流体ノズル64からエアのみを噴射して、被洗浄物Wを乾燥させる。すなわち、制御手段8は、時間t8以降(
図12参照)、水バルブ632を閉じたまま、エアバルブ622を継続的に開ける。なお、乾燥工程では、制御手段8は、エアの流量を、排出工程と同程度とする。これにより、二流体ノズル64の噴射口644から被洗浄物Wに向けて、継続的にエアが噴射され、被洗浄物Wが乾燥される。
【0048】
なお、上記のように、排出工程の最終段階で、混合部643内の水がほぼ消失している。このため、乾燥工程では、二流体ノズル64内に残存している水がエアに引き込まれて噴出される、いわゆるエジェクター効果の発生を抑制することができる。したがって、被洗浄物Wに対して乾いたエアを吹きつけることが可能となるので、被洗浄物Wを良好に乾燥することができる。
【0049】
以上のように、スピンナ洗浄装置1では、排出工程において、二流体ノズル64への水の供給を遮断し、エアの供給と遮断とを繰り返して二流体ノズル64に断続的にエアを供給している。これにより、エアの供給時に、エアの流路の一部を形成している混合部643内の水を排出し、エアの遮断時に、二流体ノズル64の他の部位(水取入部642など)に残存している水を混合部643に入れて、さらに、この水を次のエアの供給時に排出することができる。したがって、エアの供給と遮断とを繰り返すことにより、二流体ノズル64内に残存している水を、エジェクター効果の発生を抑制できる程度にまで、徐々に減らすことが可能となる。これにより、乾燥工程において、二流体ノズル64から噴出されるエアを用いて、被洗浄物Wを良好に乾燥することができる。
【0050】
このように、スピンナ洗浄装置1では、乾燥ノズルを備えることなく、混合液噴射部6を用いて被洗浄物Wを乾燥させることができる。したがって、スピンナ洗浄装置1は、乾燥ノズル、および、乾燥ノズルを被洗浄物Wの径方向に移動させる機構を備えない簡易な構成を有する。このため、スピンナ洗浄装置1を安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:スピンナ洗浄装置、3:回転軸、4:スピンナテーブル、5:保持面、
8:制御手段、
6:混合液噴射部、61:シャフト、612:従動ギア、613:駆動ギア、
614:旋回モータ、62:エア配管、621:エア供給源、622:エアバルブ、
623:エア配管フランジ、624:エアチューブ、
63:水配管、631:水供給源、632:水バルブ、633:水配管フランジ、
634:水チューブ、
64:二流体ノズル、641:エア取入部、642:水取入部、643:混合部、
644:噴射口、
W:被洗浄物