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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-16
(54)【発明の名称】アノードホルダ、及びめっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/10 20060101AFI20221109BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20221109BHJP
   C25D 21/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D17/00 H
C25D21/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019107724
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020200502
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】池田 大成
(72)【発明者】
【氏名】木村 誠章
(72)【発明者】
【氏名】長井 瑞樹
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151553(JP,A)
【文献】特開2002-275693(JP,A)
【文献】特表2007-505996(JP,A)
【文献】特開2008-038208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151218(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき装置に用いられるアノードを保持するためのアノードホルダであって、
前記アノードホルダの内部に形成され、前記アノードを収容するための内部空間と、
複数の孔を有し、前記内部空間の前面を覆うように構成されるマスクと、
隔膜であって、前記マスクにおける前記内部空間の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、
を備え
前記隔膜および前記マスクを介して前記アノードホルダの前記内部空間と外部とが仕切られ、
前記マスクは、前記隔膜における前記内部空間とは反対側に固定されており、
前記隔膜は、前記マスクと前記アノードとによって挟まれることにより前記マスクに固定される、
アノードホルダ。
【請求項2】
前記隔膜と前記マスクとを密着させる密着層を備える、請求項1に記載のアノードホルダ。
【請求項3】
前記隔膜と前記マスクとは互いに接着または溶着されている、請求項1又は2に記載のアノードホルダ。
【請求項4】
前記複数の孔による開口率が2%以上25%以下である、請求項1から3の何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項5】
前記隔膜と前記マスクとの少なくとも一方を支持する基体を備え、
前記隔膜と前記マスクとは、前記基体によって支持される第1領域とは異なる第2領域で互いに固定される、
請求項1から4の何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項6】
前記複数の孔のそれぞれは、前記隔膜から離れるほど径が大きくなるテーパ状である、請求項1からの何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項7】
前記隔膜と前記マスクとは、前記めっき装置において鉛直方向に延在するように配置される、請求項1からの何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項8】
前記マスクは樹脂で形成される、請求項1からの何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項9】
前記隔膜は、イオン交換膜又は中性隔膜である、請求項1からの何れか1項に記載のアノードホルダ。
【請求項10】
めっき液槽と、
複数の孔を有し、前記めっき液槽を、アノードが配置されるアノード槽とカソードが配置されるカソード槽とに区分けするマスクと、
隔膜であって、前記マスクにおける前記アノード槽の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、
を備え
前記隔膜および前記マスクを介して前記アノード槽と前記カソード槽とが仕切られ、
前記マスクは、前記隔膜における前記カソード槽側に固定されており、
前記隔膜は、前記マスクと前記アノードとによって挟まれることにより前記マスクに固定される、
めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノードホルダ、及びめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ等の表面に設けられた微細な配線用溝、ホール、又はレジスト開口部に配線を形成したり、半導体ウェハ等の表面にパッケージの電極等と電気的に接続するバンプ(突起状電極)を形成したりすることが行われている。この配線及びバンプを形成する方法として、例えば、電解めっき法、蒸着法、印刷法、ボールバンプ法等が知られているが、半導体チップのI/O数の増加、細ピッチ化に伴い、微細化が可能で性能が比較的安定している電解めっき法が多く用いられるようになってきている。
【0003】
電解めっき法に用いるめっき装置は、半導体ウェハ等の基板を保持した基板ホルダと、アノードを保持したアノードホルダと、多種類の添加剤を含むめっき液を収容するめっき液槽とを有する。このめっき装置において半導体ウェハ等の基板表面にめっき処理を行うときは、基板ホルダとアノードホルダとがめっき液槽内で対向配置される。この状態で基板とアノードとを通電させることで、基板表面にめっき膜が形成される。なお、添加剤は、めっき膜の成膜速度を促進又は抑制する効果や、めっき膜の膜質を向上させる効果等を有する。
【0004】
従来、アノードホルダに保持されるアノードとして、めっき液に溶解する溶解性アノード又はめっき液に溶解しない不溶性アノードが用いられている。不溶性アノードを用いてめっき処理を行った場合、アノードとめっき液との反応により酸素が発生する。めっき液の添加剤はこの酸素と反応して分解される。添加剤が分解されると、添加剤は上述した効果を失い、基板表面に所望の膜を得ることができないという問題がある(たとえば、特許文献1参照)。また、溶解性アノードとしてたとえば含リン銅を用いた場合、非電解時にアノードから発生する一価銅との反応により、添加剤、特に促進剤の変質が生じることも知られている。これを防止するためには、めっき液中の添加剤の濃度が一定以上に保たれるように添加剤をめっき液に随時追加すればよい。しかしながら、添加剤は高価であるので、できる限り添加剤の分解を抑制することが望ましい。
【0005】
このため、めっき液槽内において、アノードが配置される空間(アノード槽)と、基板およびカソードが配置される空間(カソード槽)とを、隔膜で仕切り、めっき液中の添加剤がアノードへ到達することを抑制して添加剤の分解を抑制することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第2510422号
【文献】特開2009-155726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、添加剤を構成する分子の平均的な大きさよりも小さい微細孔を有する隔膜によって、カソード槽内のめっき液に含まれる添加剤がアノード槽内へ移動することが抑制され、添加剤の分解が抑制される。ここで、従来、隔膜は、アノードホルダ、アノードボックス、又はレギュレートプレートにおける開口を覆うように設けられていた。しかしながら、本発明者らの研究により、従来の構成では、隔膜がカソード槽内のめっき液と
作用する領域が広いために添加材が消耗しており、改良の余地があることが分かった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、めっき装置における添加剤の消耗を抑制することができるアノードホルダ、及びめっき装置を提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、めっき装置に用いられるアノードを保持するためのアノードホルダが提案され、前記アノードホルダは、前記アノードホルダの内部に形成され、前記アノードを収容するための内部空間と、複数の孔を有し、前記内部空間の前面を覆うように構成されるマスクと、隔膜であって、前記マスクにおける前記内部空間の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、を備える。かかるアノードホルダによれば、マスクによって隔膜とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、アノードへ添加剤が到達することをより抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0010】
本発明の別の一実施形態によれば、めっき装置が提案され、前記めっき装置は、めっき液槽と、複数の孔を有し、前記めっき液槽を、アノードが配置されるアノード槽とカソードが配置されるカソード槽とに仕切るマスクと、隔膜であって、前記マスクにおける前記内部空間の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、を備える。かかるめっき装置によれば、マスクによって隔膜とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、アノードへ添加剤が到達することをより抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るアノードホルダの平面図である。
図3図2に示した3-3断面におけるアノードホルダ60の側断面図である。
図4】ホルダベースカバーを取り外した状態のアノードホルダの分解斜視図である。
図5】ホルダベースカバーを取り外した状態のアノードホルダの平面図である。
図6A図3における隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図6B図6Aに示すマスクの取付構造の別の一例を模式的に示す図である。
図7】第1変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図8】第2変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図9】第3変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図10】第4変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図11】第5変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図12】第6変形例による隔膜及びマスクの取付構造を模式的に示す図である。
図13】第1例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図14】第2例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図15】第3例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図16】第4例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図17】第5例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図18】第6例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図19】第7例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図20】第8例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図21】第9例の隔膜とマスクとの固定部分を示している。
図22】第2の実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。
図23】第3の実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係るめっき装置、及びアノードホルダの実施形態を添付図面とともに説明する。添付図面において、同一または類似の要素には同一または類似の参照符号が付され、各実施形態の説明において同一または類似の要素に関する重複する説明は省略することがある。また、各実施形態で示される特徴は、互いに矛盾しない限り他の実施形態にも適用可能である。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。図1に示すように、めっき装置は、内部にめっき液を保持するめっき液槽50と、めっき液槽50内に配置されたアノード40と、アノード40を保持するアノードホルダ60と、基板ホルダ18とを備えている。基板ホルダ18は、ウェハなどの基板Wを着脱自在に保持し、かつ基板Wをめっき液槽50内のめっき液に浸漬させるように構成されている。本実施形態に係るめっき装置は、めっき液に電流を流すことで基板Wの表面を金属でめっきする電解めっき装置である。
【0014】
基板Wは、例えば、半導体基板、ガラス基板、または樹脂基板である。基板Wの表面にめっきされる金属は、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、Sn-Ag合金、またはコバルト(Co)である。
【0015】
アノード40および基板Wは鉛直方向に延在するように、つまりアノード40および基板Wの板面が水平方向に向くように配置され、且つめっき液中で互いに対向するように配置される。アノード40はアノードホルダ60を介して電源90の正極に接続され、基板Wは基板ホルダ18を介して電源90の負極に接続される。アノード40と基板Wとの間に電圧を印加すると、電流は基板Wに流れ、めっき液の存在下で基板Wの表面に金属膜が形成される。
【0016】
めっき液槽50は、基板Wおよびアノード40が内部に配置されるめっき液貯留槽52と、めっき液貯留槽52に隣接するオーバーフロー槽54とを備えている。めっき液貯留槽52内のめっき液はめっき液貯留槽52の側壁を越流してオーバーフロー槽54内に流入するようになっている。
【0017】
オーバーフロー槽54の底部には、めっき液循環ライン58aの一端が接続され、めっき液循環ライン58aの他端はめっき液貯留槽52の底部に接続されている。めっき液循環ライン58aには、循環ポンプ58b、恒温ユニット58c、及びフィルタ58dが取り付けられている。めっき液は、めっき液貯留槽52の側壁をオーバーフローしてオーバーフロー槽54に流入し、さらにオーバーフロー槽54からめっき液循環ライン58aを通ってめっき液貯留槽52に戻される。このように、めっき液は、めっき液循環ライン58aを通じてめっき液貯留槽52とオーバーフロー槽54との間を循環する。
【0018】
めっき装置は、基板W上の電位分布を調整する調整板(レギュレーションプレート)14と、めっき液貯留槽52内のめっき液を攪拌するパドル16とをさらに備えている。調整板14は、パドル16とアノード40との間に配置されており、めっき液中の電場を制限するための開口14aを有している。パドル16は、めっき液貯留槽52内の基板ホルダ18に保持された基板Wの表面近傍に配置されている。パドル16は例えばチタン(Ti)または樹脂から構成されている。パドル16は、基板Wの表面と平行に往復運動することで、基板Wのめっき中に十分な金属イオンが基板Wの表面に均一に供給されるようにめっき液を攪拌する。
【0019】
図2は、アノードホルダ60の平面図であり、図3は、図2に示した3-3断面におけるアノードホルダ60の側断面図であり、図4は、ホルダベースカバー63を取り外した状態のアノードホルダ60の分解斜視図であり、図5は、ホルダベースカバー63を取り外した状態のアノードホルダ60の平面図である。なお、図5においては便宜上、把持部64-2が透過した状態のアノードホルダ60が示されている。また、図4及び図5においては、便宜上、アノード40が取り外された状態のアノードホルダ60が示されている。また、本明細書において、「上」及び「下」はアノードホルダ60がめっき液槽50に鉛直に収容された状態における上方向及び下方向をいう。同様に、本明細書において、「前面」は、アノードホルダ60が基板ホルダと対向する側の面をいい、「背面」は前面と逆側の面をいう。
【0020】
図2図4に示すように、本実施形態に係るアノードホルダ60は、アノード40を収容する内部空間61を有する略矩形状のホルダベース62と、ホルダベース62の上部に形成された一対の把持部64-1,64-2と、同じくホルダベース62の上部に形成された一対のアーム部70-1,70-2と、を備える。また、アノードホルダ60は、ホルダベース62の前面を部分的に覆うホルダベースカバー63と、内部空間61を覆うようにホルダベースカバー63の前面に設けられた隔膜66と、複数の孔67aを有して隔膜66に固定されたマスク67と、隔膜66及びマスク67の前面に設けられた外縁マスク68と、を有する。なお、本実施形態では、隔膜66とマスク67とを支持するホルダベースカバー63が「基体」に当たる。
【0021】
図2及び図5に示すように、ホルダベース62は、その下部の外表面から内部空間61まで延在し、内部空間61に連通する孔71を有する。また、ホルダベース62は、その上部の把持部64-1,64-2間に、内部空間61の空気を排出するための空気排出口81を有する。ホルダベース62がめっき液に浸漬されたとき、めっき液が孔71から内部空間61に流入するとともに、内部空間61の空気が空気排出口81から排出される。また、アノード40として不溶性アノードを用いた場合、めっき処理中にアノード40から発生する酸素も、空気排出口81を通じて排出される。空気排出口81は、空気の排出を妨げないように形成された蓋83により閉止される。
【0022】
また、図3に示すように、ホルダベースカバー(基体)63の略中央部には、アノード40の径よりも大きい径を有する環状の開口63aが形成されている。ホルダベースカバー63は、ホルダベース62とともに内部空間61を形成する。隔膜66は、開口63aの前面に設けられ、内部空間61を閉鎖する。本実施形態では、隔膜66の一方の板面には、複数の孔67aを有するマスク67が固定されている。隔膜66及びマスク67の外周縁部の前方には、隔膜押え69が取り付けられ、隔膜押え69の前方に外縁マスク68が設けられる。また、ホルダベースカバー63の前面には、開口63aに沿って、例えばO-リング等からなる環状の第1のシール部材84が設けられる。隔膜押え69により隔膜66及びマスク67が第1のシール部材84に押圧されることで、開口63aが密閉される。即ち、第1のシール部材84は、隔膜66と内部空間61との間を密閉することができる。これにより、隔膜66及びマスク67を介して内部空間61と外部空間とが仕切られる。
【0023】
隔膜66は、例えば陽イオン交換膜のようなイオン交換膜、又は中性隔膜である。隔膜66は、めっき液中の添加剤を通過させることなく、めっき処理時にアノード側からカソード側へ陽イオンを通過させることができる。隔膜66の具体的な一例として、(株)ユアサメンブレン製のユミクロン(登録商標)が挙げられる。
【0024】
マスク67は、複数の孔67aを有する板状の部材であり、隔膜66とめっき液とが接触する領域を低減するために設けられている。マスク67の板厚は、例えば約1mmであ
る。マスク67は、例えば、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)といった樹脂、又はチタン(Ti)といった金属などで形成される。マスク67は、隔膜66の板面に固定される。図2図5に示す例では、マスク67は、隔膜66の前方、つまり隔膜66における外部空間側(内部空間61とは反対側)に固定されている。ただし、こうした例に限定されず、マスク67は、隔膜66の後方、つまり隔膜66における内部空間61側に固定されてもよいし、隔膜66の前方および後方の両方に固定されてもよい。
【0025】
マスク67には、複数の孔67aが形成されている。複数の孔67aのそれぞれは、例えば一端から他端までの最大距離(複数の孔67aが円形である場合には内径)が10mm以下であることが好ましく、特に、8mm以下、5mm以下、3mm以下、又は2mm以下であることが好ましい。また、複数の孔67aのそれぞれは、円形であることが好ましいが、楕円形、又は多角形等であってもよい。さらに、図2図5に示す例では、複数の孔67aのそれぞれは同一寸法であるものとしているが、こうした例に限定されない。例えば、複数の孔67aは、アノード40の中心に近いほど寸法が大きくアノード40の中心から離れるほど寸法が小さくされてもよいし、反対にアノード40の中心に近いほど寸法が小さくアノード40の中心から離れるほど寸法が大きくされてもよい。また、図2図5に示す例では、複数の孔67aは、マスク67の板面における二軸方向において均等な間隔で設けられるものとしているが、こうした例に限定されない。例えば、複数の孔67aは、アノード40の中心に近いほど互いの距離が小さくアノード40の中心から離れるほど互いの距離が大きくなるように配置されてもよいし、反対にアノード40の中心に近いほど互いの距離が大きくアノード40の中心から離れるほど互いの距離が小さくなるように配置されてもよい。さらに、複数の孔67aは、放射状に配置されてもよい。
【0026】
また、複数の孔67aは、開口率が2%以上25%以下であることが好ましく、特に、開口率が3%以上、5%以上、10%以下、又は12.5%以下であることが好ましい。これは、開口率が大きいと、隔膜66とめっき液との接触領域が大きいため添加剤の消耗を低減させる効果が小さくなると共に、隔膜66とマスク67とを十分に固定させることが困難になることに基づく。また、開口率が小さいと、孔67aから気体(泡)を取り除くことが困難になるとと共に、隔膜66を通じたアノード側からカソード側への陽イオンの通過が不足してしまうことに基づく。本実施形態では、複数の孔67aは、概ね均等に配置されており、複数の孔67aによる開口率は6%である。ただし、こうした例に限定されず、例えば、マスク67は、アノード40の中心に近いほど開口率が小さくアノード40の中心から離れるほど開口率が大きくなるように形成されてもよいし、反対にアノード40の中心に近いほど開口率が大きくアノード40の中心から離れるほど開口率が小さくなるように形成されてもよい。
【0027】
また、複数の孔67aは、前後方向において同一の径で形成されてもよいし、テーパ状に形成されてもよい。特に、マスク67の複数の孔67aは、隔膜66に近いほど径が小さく、隔膜66から離れるほど径が大きいテーパ状に形成されることが好ましい。こうすれば、気体または泡などの異物が孔67a内に留まることを抑制することができる。
【0028】
マスク67は、隔膜66に固定されている。換言すれば、隔膜66は、マスク67に固定されている。隔膜66は、マスク67における内部空間61の前面を覆う領域、つまりホルダベースカバー63の開口63aを覆う領域において、少なくとも一部がマスク67に固定されている。ただし、隔膜66とマスク67とは、内部空間61の前面を覆う領域以外の領域においても互いに固定されてもよい。なお、マスク67は、隔膜66に「固着」されている、と言い換えることもできる。
【0029】
本実施形態では、マスク67は、溶着によって隔膜66に貼り付けられている。しかしマスク67と隔膜66を固定する方法は、溶着に限定されない。例えば、隔膜66とマス
ク67は、密着層を介して着脱不能に、溶着、圧着、又は接着(以下、合わせて「密着」ともいう)されるとよい。具体的には、隔膜66とマスク67とは、シーラー等による熱溶着、レーザ溶着、超音波溶着、又は振動溶着によって互いに密着されてもよい。また、隔膜66とマスク67とは、パウチ加工技術、ラミネート加工技術、又は塩化ビニル等の接着剤、を用いて互いに密着されてもよい。パウチ加工技術、及びラミネート加工技術としては、PET材などのシート材料を高温および高圧で貼り付けること、PET材などのシート材料をプラズマ処理で貼り合わせること、及びPE材などのシート材料を用いた押出しラミネートを採用することができる。また、接着剤としては、タキロン製のPVC用接着剤であるタキボンド(登録商標)、PE及びPET用のエポキシ系樹脂接着剤、又はサンスター技研製の低アウトガス接着剤を採用することができる。
【0030】
マスク67と隔膜66とは、マスク67のすべての領域において着脱不能に密着されてもよいし、一部の領域において着脱不能に密着されることにより互いに固定されてもよい。ただし、マスク67と隔膜66との隙間にめっき液が侵入することによって隔膜66とめっき液との接触領域が増える。特に本実施形態のめっき装置は、パドル16によってめっき液が撹拌されるため、マスク67と隔膜66との隙間にめっき液が侵入しやすい。このため、マスク67と隔膜66とは、めっき液の隙間への侵入が低減されるように、広い領域において着脱不能に密着されることが好ましい。
【0031】
このように本実施形態のアノードホルダ60は、内部空間61の前面を覆うように複数の孔67aを有するマスク67が設けられ、隔膜66がマスク67に固定して設けられている。これにより、マスク67が設けられていない場合に比して、隔膜66がめっき液と接触する領域を小さくすることができ、アノード40へ添加剤が到達することを抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0032】
外縁マスク68は、中央部に環状の開口を有する板状の部材であり、隔膜押え69の前面に着脱自在に取り付けられる。外縁マスク68の開口の径は、アノード40の外径よりも小さい。このため、外縁マスク68は、外縁マスク68が隔膜押え69に取り付けられたときに、図2に示した平面から見てアノード40の外周縁部を覆うように構成されている。これにより、外縁マスク68は、めっき処理時にアノード40の表面の電場を制御することができる。
【0033】
ホルダベースカバー63はホルダベース62に対してねじ結合や溶着などにより固定されており、ホルダベースカバー63とホルダベース62との結合部は密着されている。なお、ホルダベースカバー63とホルダベース62は一体に形成してもよい。
【0034】
図2図4及び図5に示すように、把持部64-1,64-2は、ホルダベース62の上部に形成された連結部62-1,62-2を介してホルダベース62と連結している。把持部64-1,64-2は、連結部62-1,62-2からホルダベース62の中央方向に延在して形成される。把持部64-1,64-2は、アノードホルダ60がめっき液槽50に搬送されるときに、図示しないチャックによって把持される。
【0035】
連結部62-1,62-2から外側方向に延在するアーム部70-1の下部には、アノード40に電圧を印加するための電極端子82が設けられている。電極端子82は、アノードホルダ60がめっき液槽に収容されたときに、電源90の正極に接続される。また、アノードホルダ60は、電極端子82から内部空間61の略中央部まで延在する給電部材89を有する。給電部材89は、略板状の導電部材であり、電極端子82と電気的に接続される。
【0036】
図3に示すように、給電部材89の前面には、例えばねじ等からなる固定部材88によ
り、アノード40が固定されている。これにより、電極端子82及び給電部材89を介して電源90によりアノード40に電圧を印加することができる。
【0037】
ホルダベース62の略中央部、即ち固定部材88に対応する位置には、アノード40を交換するための環状の開口部62aが形成されている。開口部62aは、内部空間61の背面側に連通しており、蓋86により覆われる。ホルダベース62の背面側には、開口部62aに沿って、例えばO-リング等からなる環状の第2のシール部材85が設けられている。この第2のシール部材85により、開口部62aと蓋86との間が密閉される。
【0038】
蓋86は、アノード40を交換するときに取り外される。具体的には、例えばアノード40が耐用年数を経過したときに、オペレータにより蓋86が取り外され、開口部62aを介して固定部材88が取り外される。オペレータは外縁マスク68を隔膜押え69から取り外し、アノード40を内部空間61から取り出す。続いて、別のアノード40を内部空間61に収容し、開口部62aを介して固定部材88によりアノード40を給電部材89の前面に固定する。最後に、蓋86により開口部62aを封止し、外縁マスク68を隔膜押え69に取り付ける。
【0039】
ホルダベース62の背面には、重り87が取り付けられている。これにより、アノードホルダ60をめっき液に浸漬したときに、浮力によりアノードホルダ60が水面上に浮き上がることを防止することができる。
【0040】
図5に示すように、アノードホルダ60は、孔71を封止可能に構成された弁91と、弁91が閉じるように弁91を付勢するためのばね96と、ばね96の付勢力を弁91に伝達するためのシャフト93と、弁91の開閉を操作する操作部であるプッシュロッド95と、プッシュロッド95に加えられた力をシャフト93に伝達するための中間部材94と、をさらに備える。
【0041】
弁91は、孔71をホルダベース62の内部側から封止できるように、ホルダベース62の内部に配置される。シャフト93は、上下方向に沿ってホルダベース62の内部に配置される。シャフト93は、その一端が弁91に連結され、他端がばね96に連結される。これによりシャフト93は、ばね96の付勢力を弁91に伝達し、弁91が孔71をホルダベース62の内部側から封止するように弁91を付勢する。
【0042】
このようにアノードホルダ60が孔71を封止する弁91を備えることにより、アノードホルダ60をめっき液に浸漬して内部空間61にめっき液を満たした後に、孔71を封止することができる。これにより、アノード40近傍で酸素、次亜塩素酸、又は一価の銅が発生しても、外部空間と内部空間61とが仕切られているため、添加剤の分解の進行を抑制することができる。なお、めっき装置では、めっき液貯留槽52にベース液を入れた状態でめっき液貯留槽52内にアノードホルダ60を配置し、アノードホルダ60の内部空間61にベース液が満たされて封止された後に、めっき液貯留槽52内に添加剤を含む液体が入れられて外部空間におけるめっき液が用意されてもよい。こうすれば、アノードホルダ60の内部空間61に添加剤が含まれないため、アノード40近傍において添加剤が消耗されることをより抑制することができる。ただし、こうした例に限定されず、めっき液貯留槽52に添加剤を含むめっき液を入れた状態でめっき液貯留槽52内にアノードホルダ60を配置し、アノードホルダ60の内部空間61に添加剤を含むめっき液が満たされて封止されてもよい。
【0043】
次に、アノードホルダ60における隔膜66とマスク67との固定について説明する。図6Aは、図3における隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。なお、図6A及び以降の図では、隔膜66とマスク67とを密着する密着層を符号100で
示している。また、図6A及び以降の図では、隔膜66は、マスク67の前面または背面の一方に固定されているが、こうした例に限定されず、マスク67の前面または背面の他方に固定されてもよい。また、マスク67の前面と背面との両方に隔膜66が固定されてもよいし、隔膜66の前方と後方との両方にマスク67が固定されてもよい。
【0044】
図6Aに示す例では、隔膜66とマスク67との両方が隔膜押え69の開口よりも大きい寸法を有し、隔膜66とマスク67との両方が隔膜押え69とホルダベースカバー63との間に挟まれることによって、アノードホルダ60において支持されている。また、隔膜66とマスク67とは、密着層100で密着されている。こうした構成によれば、アノードホルダ60と隔膜66との間をより確実に密閉することができると共に、マスク67を隔膜66と隔膜押え69とで物理的に挟んで強固に支持することができる。図6Aに示す例では、隔膜66は、マスク67の背面(図6中下側)に密着されている。マスク67が隔膜66の前方に位置することで、アノード40が配置される内部空間61で酸素が発生しても、酸素が孔67a内に侵入することを抑制することができ、酸素が孔67a内に位置することで電場が遮蔽される不都合を抑制できる。
【0045】
図6Bは、図6Aに示す取付構造の別の一例を模式的に示す図である。図6Bに示す例は、隔膜66とマスク67とが密着層100によって密着されるのに代えて、隔膜66がアノード40によってマスク67に押し付けられて固定されている点で、図6Aに示す例と異なり、その他の点は図6Aに示す例と同一である。図6Bに示す例では、隔膜66は、内部空間61側からアノード40によってマスク67に押し付けられて固定されている。換言すれば、隔膜66は、ホルダベース62の開口63aを覆う領域において、マスク67とアノード40とによって挟まれて支持される。こうした構成によっても、図6Bと同様の効果を奏することができる。なお、図6Bに示す例では、密着層100を有しないものとしたが、こうした例に限定されず、隔膜66は、マスク67とアノード40とによって挟まれて支持されると共に、密着層100によってマスク67に密着されてもよい。また、以下の図7図9に示すような密着層100によって隔膜66とマスク67とが密着される取り付け構造の例においても、密着層100に代えて又は加えて隔膜66をマスク67とアノード40とで挟んで固定させてもよい。
【0046】
図7は、第1変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図7に示す例では、隔膜66は、隔膜押え69の開口の寸法より大きく、マスク67は、隔膜押え69の開口の寸法より小さく形成されている。そして、隔膜66は、隔膜押え69とホルダベースカバー63との間に挟まれることによって支持され、マスク67は、隔膜66の前面(図7中上側)に固定されることにより隔膜66を介して間接的に支持される。ここで、図7に示す構成を採用する場合には、マスク67の外周端部と隔膜押え69との間に隙間が生じることが想定されるため、当該隙間を封止するためにシール部材102が設けられてもよい。こうした構成によれば、アノードホルダ60と隔膜66との間をより確実に密閉することができる
【0047】
図8は、第2変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図8に示す例では、隔膜66は、隔膜押え69の開口の寸法より小さく、マスク67は、隔膜押え69の開口の寸法より大きく形成されている。そして、マスク67は、隔膜押え69とホルダベースカバー63との間に挟まれることによって支持され、隔膜66は、マスク67の背面(図8中下側)に固定されることによりマスク67を介して間接的に支持される。こうした構成によれば、マスク67を隔膜66と隔膜押え69とで物理的に挟んで強固に支持することができる。
【0048】
図9は、第3変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図9に示す例では、隔膜押え69が設けられておらずマスク67が直接にホルダベース
カバー63に固定されている点を除いて、図8に示す取付構造と同一である。図9に示す例では、隔膜66は、ホルダベースカバー63の開口の寸法より小さく、マスク67は、ホルダベースカバー63の開口の寸法より大きく形成されている。また、マスク67は、外周縁部周辺に厚みが大きい肉厚部106を有しており、肉厚部106においてホルダベースカバー63にねじ止めされている。隔膜66は、マスク67の背面(図9中下側)に固定されることによりマスク67を介して間接的に支持される。肉厚部106を設けることにより、外周縁部周辺の剛性を高くすることができ、例えば隔膜66とマスク67とを熱溶着する場合にマスク67が変形することを抑制できる。なお、マスク67の肉厚部106は、隔膜66と固定される面(図9中、下側)とは反対側(図9中、上側)に突出するように肉厚に形成されている。
【0049】
図10は、第4変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図10に示す例では、図9に示す例と同様に、隔膜押え69が設けられておらず、マスク67が直接にホルダベースカバー63に固定されている。図10に示す例では、隔膜66は、ホルダベースカバー63の開口の寸法より小さく、マスク67は、ホルダベースカバー63の開口の寸法より大きく形成されている。また、マスク67は、外周縁部周辺に厚みが大きい肉厚部106を有しており、肉厚部106においてホルダベースカバー63にねじ止めされている。隔膜66は、マスク67の前面(図10中、上側)に固定されることによりマスク67を介して間接的に支持される。なお、図10に示す例では、マスク67の肉厚部106は、隔膜66と固定される面(図10中、上側)とは反対側(図10中、下側)に突出するように肉圧に形成されている。肉厚部106を設けることにより、外周縁部周辺の剛性を高くすることができ、例えば隔膜66とマスク67とを熱溶着する場合にマスク67が変形することを抑制できる。また、肉厚部106が後方に突出するように形成されることにより、内部空間61の体積を大きくすることができる。また、肉厚部106は、隔膜66が固定される領域と滑らかに連続するように、内周側の縁部がテーパ状に形成されている。これにより、内部空間61で発生した酸素が内部空間61内に留まることを防止して、酸素がスムーズに空気排出口81から排出されるようにすることができる。また、図10に示すようにマスク67が隔膜66の後方(内部空間61側)に位置することで、パドル16によってめっき液貯留槽52内のめっき液が攪拌されても、隔膜66とマスク67との固定が剥がれてしまう可能性を小さくすることができる。なお、図10に示す例では、隔膜66は、ホルダベースカバー63の開口の寸法より小さく形成されるものとしたが、ホルダベースカバー63の開口の寸法より大きく形成されてもよい。
【0050】
図11は、第5変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図11に示す例では、マスク67は、隔膜押え69の開口の寸法より大きく形成されており、隔膜押え69とホルダベースカバー63との間に挟まれることによってマスク67が支持される。一方、図11に示す例では、隔膜66は、マスク67の複数の孔67aのそれぞれに対応した形状で複数設けられている。そして、複数の隔膜66は、マスク67の複数の孔67aのそれぞれを覆うようにマスク67に固定されることにより、マスク67を介して間接的に支持される。ここで、図9に示す例では、マスク67における複数の孔67aは、隔膜66の寸法よりも小さくなるように形成された段差部67bを有し、隔膜66が段差部67bに固定されることにより、隔膜66とマスク67とが固定されている。また、図9に示すように、マスク67と隔膜66との封止をより確実にするために、マスク67と隔膜66との少なくとも一方に接着または溶着される円形のシール部材104が設けられてもよい。この場合には、隔膜66とマスク67とは、密着層100を介して互いに密着されてもよいし、密着層100を介することなくシール部材104を介して互いに固定されてもよい。こうした例においても、隔膜66がめっき液と接触する領域を小さくすることができ、添加剤の消耗を抑制することができる。
【0051】
図12は、第6変形例による隔膜66及びマスク67の取付構造を模式的に示す図である。図12に示す取付構造は、隔膜66とマスク67との固定方法を除いて、図7に示す取付構造と同一である。図10に示す例では、マスク67と隔膜66とは、密着層100を介することなく、ねじ止めによって互いに固定されている。ここで、マスク67と隔膜66とのねじ止めによる固定は、ホルダベースカバー63及び隔膜押え69の開口においてなされている。換言すれば、隔膜66とマスク67とは、ホルダベースカバー(基体)63及び隔膜押え69によって挟まれる領域(第1領域)ではなく、ホルダベースカバー63及び隔膜押え69によって支持されていない領域(第2領域)で互いに固定されている。ただし、隔膜66とマスク67とは、第2領域のみで互いに固定されるものに限定されず、第1領域で互いに固定されてもよい。具体的には、図10に示す例では、マスク67は、隔膜66の前方(図10中上側)に設けられる第1マスク部材111と、隔膜66の後方(図10中下側)に設けられる第2マスク部材112とを備えている。そして、隔膜66を挟んだ状態で、第1マスク部材111と第2マスク部材112とがねじ止めされることにより、マスク67と隔膜66とが固定されている。こうした例においても、他の例と同様に、隔膜66がめっき液と接触する領域を小さくすることができ、添加剤の消耗を抑制することができる。
【0052】
次に、隔膜66とマスク67との固定の具体的な一例について説明する。図13図21は、隔膜66とマスク67との固定部分を模式的に示す図であり、隔膜66とマスク67とが着脱不能に固定されている領域にハッチングが付されている。なお、図13図21に示す例では、隔膜66とマスク67とは、一部分の領域が互いに着脱不能に固定されるものとしているが、内部空間61の前面を覆う領域において、つまりホルダベースカバー63の開口63aを覆う領域において、隔膜・BR>U6の一部がマスク67に固定されていればよく、すべての領域が互いに着脱不能に固定されてもよい。なお、隔膜66とマスク67との着脱不能な固定としては、上記したように溶着、接着等を用いることができる。また、図13図21に示す例では、マスク67の複数の孔67aは、第1整列方向(図中、上下方向)と第2整列方向(図中、左右方向)とのそれぞれに均等な間隔で設けられるものとしている。さらに、図13図21においては、図中の上下方向は、図1の上下方向(鉛直方向)と同一であるが、こうした例に限定されず、図1の上下方向(鉛直方向)に対して傾斜していてもよい。また、図13図21では、説明の容易のため、隔膜66とマスク67との外形寸法を同一としているが、こうした例には限定されない。
【0053】
図13図16は、第1~第4例の隔膜66とマスク67との着脱不能な固定部分を示している。第1~第4例では、隔膜66とマスク67との外周縁部は、直接的には固定されておらず、内周側の領域における一部分の領域において互いに着脱不能に固定されている。こうした例は、隔膜66とマスク67との両方の外周縁部がホルダベースカバー63と隔膜押え69とによって挟まれて支持される図6に示すような構成において、特に有効であると考えられる。
【0054】
具体的には、図13に示す第1例では、隔膜66とマスク67とは、複数の孔67aの第1整列方向(図13中、上下方向)に沿った複数の密着領域120において着脱不能に密着されている。なお、図13に示す例では、第2整列方向(図中、左右方向)において、複数の孔67aと密着領域120とが交互に配置されているが、こうした例に限定されない。例えば、第1整列方向に沿った密着領域120は、第2整列方向において、2つ以上の孔67a毎に設けられてもよい。なお、図13に示す第1例において、密着領域120は、第1整列方向として鉛直方向または水平方向に長い長尺状であってもよいし、鉛直方向または水平方向に傾斜した長尺状であってもよい。
【0055】
図14に示す第2例では、隔膜66とマスク67とは、複数の孔67aの第1整列方向(図14中、上下方向)と第2整列方向(図14中、左右方向)とのそれぞれに沿った格
子状の密着領域120において着脱不能に密着されている。なお、図14に示す例では、第1整列方向と第2整列方向とのそれぞれにおいて2つの孔67aごとに密着領域120が配置されるようになっているが、こうした例に限定されない。例えば、密着領域120は、第1整列方向又は第2整列方向において1つの孔67a毎、又は3つ以上の孔67a毎に設けられてもよい。また、密着領域120は、第1整列方向と第2整列方向とにおいて異なる間隔で設けられてもよい。
【0056】
図15に示す第3例では、隔膜66とマスク67とは、複数の小さな領域からなる密着領域120において着脱不能に密着されている。換言すれば、隔膜66とマスク67とは、複数の小さな密着点で密着されている。なお、図15に示す例では、第1整列方向と第2整列方向とのそれぞれにおいて2つの孔67aごとに密着領域120が配置されるようになっているが、こうした例に限定されない。例えば、密着領域120は、第1整列方向又は第2整列方向において1つの孔67a毎、又は3つ以上の孔67a毎に設けられてもよい。また、密着領域120は、第1整列方向と第2整列方向とにおいて異なる間隔で設けられてもよい。
【0057】
図16に示す第4例では、隔膜66とマスク67とは、複数の孔67aの縁部において着脱不能に密着されている。なお、図16に示す例では、すべての複数の孔67aの縁部が密着領域120とされているが、複数の孔67aのうち一部の孔67aの縁部が密着領域120とされてもよい。
【0058】
図17図21は、第5~第9例の隔膜66とマスク67との固定部分を示している。第5~第9例では、隔膜66とマスク67との外周縁部が密着領域120によって着脱不能に密着されている。こうした例は、隔膜66とマスク67との少なくとも一方の外周縁部がホルダベースカバー63と隔膜押え69とによって挟まれていない図7図10に示すような構成において、特に有効であると考えられる。
【0059】
具体的には、図17に示す第5例では、隔膜66とマスク67とは、隔膜66又はマスク67の外周縁部において着脱不能に固定され、内周側の領域においては直接的には着脱不能に固定されていない。また、図18図21に示す第6~第9例は、隔膜66又はマスク67の外周縁部において着脱不能に固定されている点を除いて、図13図16に示す第1~第4例と同一である。図18図21について、重複した説明は省略する。
【0060】
(第2実施形態)
図22は、第2実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。第2実施形態に係るめっき装置では、隔膜66とマスク67とが、アノードホルダ60ではなく、調整板14における開口14aに取り付けられている点で、第1実施形態に係るめっき装置と異なる。以下の説明では、第1実施形態と重複する説明については省略する。
【0061】
第2実施形態に係るめっき装置では、めっき液貯留槽52にシールドボックス160が配置され、これによって、めっき液貯留槽52の内部は、シールドボックス160内部のアノード槽170と、外部のカソード槽172と、に区分されている。図22に示す例では、アノード40を保持するアノードホルダ60と調整板14とがアノード槽170の内部に配置され、パドル16と基板ホルダ18(カソード)とがカソード槽172の内部に配置されている。
【0062】
シールドボックス160は、調整板14の開口14aに対応する位置に開口160aを有している。また、調整板14の開口14aを画定する筒状部は、シールドボックス160の開口160a内に嵌合されている。こうした構成により、アノード槽170とカソード槽172とは、調整板14の開口14aを通じて連通される。そして、第2実施形態で
は、調整板14の開口14aに隔膜66とマスク67とが取り付けられ、隔膜66とマスク67とによってアノード槽170とカソード槽172とが仕切られている。なお、隔膜66とマスク67とは、調整板14におけるアノード槽170側から取り付けられるものとしてもよいし、カソード槽172側から取り付けられるものとしてもよい。
【0063】
隔膜66及びマスク67は、一例として、環状の隔膜押え69によって調整板14に取り付けられる。ここで、調整板14における隔膜66とマスク67との固定については、第1実施形態のアノードホルダ60における隔膜66とマスク67との固定と同様になされるとよい。つまり、一例として、隔膜66とマスク67とは、図6図12に示される取付構造において、ホルダベースカバー63を調整板14に置き換えた取付構造で調整板14に取り付けられるとよい。また、隔膜66とマスク67との固定についても、第1実施形態と同様になされるとよい。
【0064】
第2実施形態のめっき装置では、カソード槽172内のめっき液は、めっき液貯留槽52の側壁をオーバーフローしてオーバーフロー槽54内に流入されるようになっている。一方、アノード槽170内のめっき液は、オーバーフローしないように構成されている。また、アノード槽170には、開閉弁186が設置された液排出ライン190が接続されている。こうした液排出ライン190によって、例えばアノード40として溶解性のアノードを用いた場合には、アノード槽170内で生じたブラックフィルムを外部に排出することができる。よって、第2実施形態のめっき装置によれば、アノード槽170内のめっき液(ベース液)に含まれるブラックフィルムの量を削減することができ、めっき液中に浮遊するブラックフィルムがカソード槽172内に入り込むことをほぼ完全に阻止することができる。
【0065】
また、第2実施形態のめっき装置では、めっき液循環ライン58aに、ベース液供給ライン158が接続されている。このベース液供給ライン158は、基板Wのめっき中にめっき液をめっき液貯留槽52に供給するためのものではなく、めっき処理を行うために最初にめっき液貯留槽52にベース液を供給する、いわゆる建浴のためにのみ使用されるものである。ベース液供給ライン158には、第1の供給弁151が設けられている。また、第2実施液体のめっき装置では、めっき液循環ライン58aと液排出ライン190とを接続する接続ライン192が設けられている。接続ライン192には、第2の供給弁152が設けられている。さらに、第2実施形態のめっき装置には、カソード槽172に添加剤を供給するための添加剤供給ライン159が設けられている。添加剤供給ライン159には、第3の供給弁153が設けられている。通常は、第1~第3の供給弁151~153は閉じられている。
【0066】
こうした第2実施形態のめっき装置によれば、建浴時にのみ第1の供給弁151と第2の供給弁152とが開かれ、ベース液供給ライン158からのベース液が液排出ライン190及びめっき液循環ライン58aを通ってアノード槽170及びカソード槽172内に供給される。そして、第3の供給弁153が開かれることにより、カソード槽172にのみ添加剤が供給される。こうした構成により、アノード槽170に添加剤が含まれないため、アノード40近傍において添加剤が消耗されることを抑制できる。
【0067】
以上説明した第2実施形態のめっき装置においては、めっき液貯留槽52がシールドボックス160と調整板14とによって、アノード槽170とカソード槽172とに区分されている。そして、調整板14の開口14aに、隔膜66と、複数の孔を有して隔膜66に固定されたマスク67と、が設けられている。こうした構成により、第1実施形態のめっき装置と同様に、隔膜66とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、アノード40へ添加剤が到達することを抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0068】
(第3実施形態)
図23は、第3実施形態に係るめっき装置を示す概略図である。第3実施形態に係るめ
っき装置では、第2実施形態と同様に、シールドボックス160を備え、隔膜66とマスク67とが、調整板14における開口14aに取り付けられている。第3実施形態に係るめっき装置は、めっき液貯留槽52とシールドボックス160とに関する構成が第2実施形態に係るめっき装置と異なり、その他の点においては第2実施形態に係るめっき装置と同一である。以下の説明では、第2実施形態と重複する説明については省略する。
【0069】
第3実施形態に係るめっき装置では、めっき液貯留槽52内に底板51が配置され、これによって、めっき液貯留槽52の内部は、上方の基板処理室と、下方のめっき液分散室53とに区分されている。シールドボックス160は、上方の基板処理室内に配置される。シールドボックス160によって、基板処理室は、アノード槽170と、カソード槽172とに区分される。
【0070】
第3実施形態のめっき装置は、第2実施形態のめっき装置と同様に、カソード槽172内のめっき液はオーバーフローしてオーバーフロー槽54内に流入することができ、アノード槽170内のめっき液はオーバーフローしないように構成されている。オーバーフロー槽54の底部には、めっき液循環ライン58aの一端が接続され、めっき液循環ライン58aの他端はめっき液分散室53の底部に接続されている。
【0071】
めっき液貯留槽52内の底板51には、下方に垂下してめっき液の流れを規制する遮蔽板51cが取付けられている。また、底板51には、カソード槽172とめっき液分散室53とを連通する第1めっき液流通口51aが形成されている。さらに、底板51にはアノード槽170の下方に位置する第2めっき液流通口51bが形成されている。シールドボックス160の底部には、第2めっき液流通口51bと対応する位置に底部開口が形成されている。めっき液分散室53は、第2めっき液流通口51b及びシールドボックス160の底部開口を通じてアノード槽170に連通している。シールドボックス160の底部開口は、通常、めっき液栓210で封止される。めっき液栓210は、上下方向に伸びてシールドボックス160の外まで延在するめっき液栓ぬき棒212に接続されている。めっき液栓ぬき棒212が鉛直方向に移動することにより、開口160bが開閉される。ここで、めっき液栓ぬき棒212は、手動で操作されるものとしてもよいし、モータ、ソレノイド、又は空気圧アクチュエータ等、種々の動力源によって操作されるものとしてもよい。
【0072】
こうした第3実施形態のめっき装置では、建浴時に、添加剤を含むめっき液がめっき液貯留槽52に貯められる。続いて、めっき液栓210が開けられた状態で、シールドボックス160がめっき液内に配置されて、アノード槽170内がめっき液で満たされる。そして、めっき液栓210が閉められることにより、アノード槽170とカソード槽172とが仕切られる。
【0073】
こうした第3実施形態のめっき装置においても、基板処理層がシールドボックス160と調整板14とによって、アノード槽170とカソード槽172とに区分されている。そして、調整板14の開口14aに、隔膜66と、複数の孔を有して隔膜66に固定されたマスク67と、が設けられている。このため、第1実施形態のめっき装置と同様に、隔膜66とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、カソード槽172内の添加剤がアノード40へ到達することを抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0074】
なお、上記した第1~第3実施形態では、隔膜66とマスク67とは、めっき装置において鉛直方向に延在するように(板面が水平方向に向くように)配置されるものとしたが、こうした例に限定されない。例えば、隔膜66とマスク67とは、めっき装置において水平方向に延在するように(板面が鉛直方向に向くように)配置されてもよい。
【0075】
以上説明した本実施形態は、以下の形態としても記載することができる。
[形態1]形態1によれば、めっき装置に用いられるアノードを保持するためのアノードホルダが提案される。前記アノードホルダは、前記アノードホルダの内部に形成され、前記アノードを収容するための内部空間と、複数の孔を有し、前記内部空間の前面を覆うように構成されるマスクと、隔膜であって、前記マスクにおける前記内部空間の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、を備える。形態1によるアノードホルダによれば、マスクによって隔膜とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、アノードへ添加剤が到達することをより抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0076】
[形態2]形態2によれば、形態1において、前記隔膜と前記マスクとは密着層を介して互いに密着される。
[形態3]形態3によれば、形態1又は2において、前記隔膜と前記マスクとは互いに接着または溶着されている。
[形態4]形態4によれば、前記複数の孔による開口率が2%以上25%以下である。
【0077】
[形態5]形態5によれば、形態1から4において、前記隔膜と前記マスクとの少なくとも一方を支持する基体を備え、前記隔膜と前記マスクとは、前記基体によって支持される第1領域とは異なる第2領域で互いに固定される。形態5によれば、隔膜とマスクとの隙間にめっき液が侵入することを抑制することができ、添加剤の消耗をより抑制することができる。
【0078】
[形態6]形態6によれば、形態1から5において、前記マスクは、前記隔膜における前記内部空間側に固定されている。
[形態7]形態7によれば、形態1から5において、前記マスクは、前記隔膜における前記内部空間とは反対側に固定されている。
[形態8]形態8によれば、形態7において、前記隔膜は、前記マスクと前記アノードとによって挟まれることにより前記マスクに固定される。
【0079】
[形態9]形態9によれば、形態1から8において、前記複数の孔のそれぞれは、前記隔膜から離れるほど径が大きくなるテーパ状である。形態9によれば、マスクの複数の孔に異物が留まることを抑制できる。
【0080】
[形態10]形態10によれば、形態1から9において、前記隔膜と前記マスクとは、前記めっき装置において鉛直方向に延在するように配置される。
[形態11]形態11によれば、形態1から10において、前記マスクは樹脂で形成される。
[形態12]形態12によれば、形態1から11において、前記隔膜は、イオン交換膜又は中性隔膜である。
【0081】
[形態13]形態13によれば、めっき装置が提案される。前記めっき装置は、めっき液槽と、複数の孔を有し、前記めっき液槽を、アノードが配置されるアノード槽とカソードが配置されるカソード槽とに仕切るマスクと、隔膜であって、前記マスクにおける前記内部空間の前面を覆う領域において当該隔膜の少なくとも一部が前記マスクに固定された隔膜と、を備える。形態13のめっき装置によれば、マスクによって隔膜とめっき液とが接触する領域を小さくすることができ、アノードへ添加剤が到達することをより抑制して添加剤の消耗を抑制することができる。
【0082】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明
には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0083】
14…調整板
14a…開口
16…パドル
18…基板ホルダ
40…アノード
50…めっき液槽
52…めっき液貯留槽
54…オーバーフロー槽
60…アノードホルダ
61…内部空間
62…ホルダベース
63…ホルダベースカバー
66…隔膜
67…マスク
67a…孔
68…外縁マスク
69…隔膜押え
100…密着層
102…シール部材
104…シール部材
106…肉厚部
108…シールドボックス
111…第1マスク部材
112…第2マスク部材
120…密着領域
160…シールドボックス
170…アノード槽
172…カソード槽
図1
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