(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】製造装置によって実施されるプロセスのリスクベース制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221109BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20221109BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221109BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 302R
G06Q50/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183497
(22)【出願日】2021-11-10
(62)【分割の表示】P 2018538836の分割
【原出願日】2017-01-26
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ シューシア ヂュー
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0033081(US,A1)
【文献】特表2010-505636(JP,A)
【文献】特表2010-541111(JP,A)
【文献】米国特許第7536311(US,B1)
【文献】特開平6-241956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G05B 23/02
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造装置を制御する制御システムによって実行されるコンピュータ実装のプロセス制御方法であって、
複数の物理的なアイテムおよびそれらの各構成要素を処理するように前記製造装置を制御するための動作指令を代表するプロセス制御データを受信するステップと、
前記プロセス制御データに基づいて、第1の動作期間で、第1の物理的なアイテムのセットを処理するステップと、
各構成要素に関連する部分リスク値に基づいて、前記第1の物理的なアイテムのセットの各物理的なアイテムの総リスク値を決定するステップと、
物理アイテムのサブセット内の各物理アイテムが、既定のリスク閾値よりも低い総リスク値を有する、前記第1の物理的なアイテムのセットから物理的なアイテムのサブセットを決定するステップと、
前記プロセス制御データに基づいて、第2の動作期間の間に、前記物理アイテムのサブセットを処理するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記部分リスク値は、前記物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する既存のIPL対象に関連するIPリスク値、および/または、物理アイテムとその各構成要素に関する、既存のIPL対象に関連しない非IPリスク値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の動作期間でのアイテムの処理は、第2の動作期間でのアイテムの処理とは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1の動作期間の間のアイテムの処理は、アイテムのテストまたはスクリーニング、またはアイテムに関する情報の取得である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第1の動作期間の間および第2の動作期間の間のアイテムの処理が、アイテムのテストまたはスクリーニング、またはアイテムに関する情報の取得である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
非一時的なコンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、物理的なアイテムを生産するために製造装置を制御させるためのコンピュータ可読命令を格納しているコンピュータ可読媒体であって、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサにプロセッサ制御データを受信させるプロセス制御データ受信モジュールであって、前記プロセス制御データは、前記製造装置を制御して複数の構成要素を処理するための動作指令の代表である、プロセス制御データ受信モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、前記プロセス制御データに基づいて、第1の動作期間の間に、第1の物理的なアイテムのセットを処理させる第1の処理モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、各構成要素に関連する部分リスク値に基づいて、第1の物理的なアイテムのセットの各物理的なアイテムの総リスク値を決定させる、第1の総リスク値決定モジュールと、
プロセッサによって実行されるときに、プロセッサに、第1の物理アイテムのセットから物理アイテムのサブセットを決定させ、物理アイテムのサブセット内の各物理アイテムは、既定のリスク閾値よりも低い総リスク値を有する物理アイテムサブセット決定モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、前記プロセス制御データに基づいて、第2の動作期間の間に、前記物理的なアイテムのサブセットを処理させる第2の処理モジュールと、を備える、コンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記部分リスク値は、前記物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する既存のIPL対象に関連するIPリスク値、および/または、前記物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する既存のIPL対象とは無関係の非IPリスク値を含む、請求項6に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記第1の動作期間におけるアイテムの処理は、前記第2の動作期間におけるアイテムの処理とは異なる、請求項6に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
第1の動作期間の間のアイテムの処理は、アイテムのテストまたはスクリーニング、またはアイテムに関する情報の取得である、請求項8に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
第1の動作期間の間および第2の動作期間の間のアイテムの処理が、アイテムのテストまたはスクリーニング、またはアイテムに関する情報の取得である、請求項6に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
物理的なアイテムの第1の総リスク値は、技術的問題または非技術的問題から選択された異なるリスクカテゴリに関連する部分リスク値を含む、請求項6に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
物理的なアイテムを製造する製造装置を有するプロセス制御システムであって、
メモリ上に格納されたプロセス制御データ受信モジュールであって、プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサにプロセッサ制御データを受信させ、プロセス制御データは、複数の構成要素を処理するために製造装置を制御する動作指令の代表である、プロセス制御データ受信モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、前記プロセス制御データに基づいて、第1の動作期間の間に、第1の物理的なアイテムのセットを処理させる、前記メモリ上に格納された第1の処理モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、各構成要素に関連する部分リスク値に基づいて、前記第1の物理的なアイテムのセットの各物理的なアイテムの総リスク値を決定させる、メモリ上に格納された総リスク値決定モジュールと、
メモリ上に格納された物理アイテムサブセット決定モジュールであって、前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、物理アイテムの第1のセットから物理アイテムのサブセットを決定させ、物理アイテムのサブセット内の各物理アイテムは、予め定義されたリスク閾値よりも低い第1の総リスク値を有する物理アイテムサブセット決定モジュールと、
前記プロセッサによって実行されるときに、前記プロセッサに、前記プロセス制御データに基づいて、第2の動作期間の間に、前記物理アイテムのサブセットを処理させる、前記メモリ上に格納された第2の処理モジュールと、を備える、プロセス制御システム。
【請求項13】
前記部分リスク値は、前記物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する既存のIPL対象に関連するIPリスク値、および/または、既存のIPL対象に関連しない前記物理アイテムとその各構成要素に関する非IPリスク値を含む、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
物理アイテムが、機械、機械部品、電気部品、装置、楽器、車両、建築要素、消費財、食品、飲料、分子、化合物、化学物質、化学組成物、生きている状態の有機体、死んでいる状態の有機体、生きている状態の植物、死んでいる状態の植物、生きている状態の微生物、死んでいる状態の微生物、から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
構成要素が物理アイテムの物理的に存在する部分である、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
第1の部分リスク値は、
人間の感覚器官によって決定される特徴、他の生物の感覚器官によって決定される特徴、物理的に存在する機器によって決定される特徴、物理的特徴、化学的特徴、生物学的特徴、重量、形状、密度、温度、色、粘度、導電性、耐久性、分析的な意味での化学組成、構成要素に含まれる分子、構成要素に含まれる化学物質、溶解性、反応性、反応速度、化学構造、不妊性、繁殖速度、生殖能力、遺伝子配列、コンピュータデータからなる物理的なアイテム、コンピュータデータからなる構成要素、特定の物理的プロセスを経た物理的なアイテム、特定の化学的プロセスを経た物理的なアイテム、特定の物理的プロセスを経た構成要素、または特定の化学的プロセスを経た構成要素、から選択される技術的特徴を代表するものである、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
生産設備が、物理的なアイテムの少なくとも1つの構成要素を処理するのに適した物理的に存在する設備、または物理的なアイテムを処理するのに適した物理的に存在する設備、から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記部分リスク値は、非IPLオブジェクト関連リスク因子、技術リスク、商業リスク、財務リスク、EHSリスク、毒性、病原性、電磁放射、粒子放射、音響放射、IT関連リスク、データ損失、またはデータの不正流用から選択される、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の動作期間におけるアイテムの処理は、前記第2の動作期間におけるアイテムの処理とは異なる、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、製造プロセスの制御に関し、具体的には、リスクアセスメントに従った製造プロセスの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
物理的な製品を自動的に製造する製造装置を制御するための製造制御システムは、当該分野において公知である。自動化度は様々である。人間の操作員との大幅なインタラクションを要する製造ラインも依然として存在する。他に、ロボットおよび/またはサイバー物理的システムを使用して、人間とのインタラクションに依存せずに稼働する種類の製造ラインもあり、ロボットおよび/またはサイバー物理的システムは相互間で通信し、かつ制御システムとも通信することができ、制御システムは、製造プロセスの各工程を自動的に実施するために製造装置の種々の構成要素へ適切な動作指令を供給する。典型的には、製造装置は、当該製造装置の各機能の技術的制御パラメータを含む制御指令を受け取り、この制御パラメータは、最終製品(物理的なアイテム)を製造するための製造工程のシーケンスを製造装置に実施させるためのものである。典型的にはかかるプロセスでは、最初に製品の構成要素を製造してから、その後にこの構成要素を組み立てて最終製品にする。製造の深さ、すなわち最終製品の構成要素構造における階層レベルの数は、製品の種類が異なると大きく変わり得る。
【0003】
自動化度が高くなるほど、人間の操作員が製造装置を支配できる余地は小さくなる。高度な自動化が達成される場面では、廃棄品の製造に繋がり得る製造プロセスに係る潜在的なリスクを操作員がアセスメントできない可能性が高くなる。たとえば、製造装置の稼働中、リスクを無視すると使用不可の最終製品の製造に繋がる特定のリスクが生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、リスクを無視することに起因する使用不可の製品(物理的なアイテム)の製造を回避するため、製造装置によって実施される自動プロセスに対応した、製造装置の制御メカニズムの改善が要請されている。ここで、本願の開示内容で使用されている「製造装置」とは、適切な動作指令に応答して自動プロセスの各工程を自動的に実施するように制御され得る全ての機械または工具(製造モジュール)をいう。典型的には製造装置は、製品および/または構成要素に適用されるプロセス工程を実施するために順次または並行して使用される複数の製造モジュールを備えている。製造装置が1つの製造モジュールのみを備え得る事例も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の技術的課題は、独立請求項に記載の制御システムおよび制御方法によって解決される。独立請求項によれば制御システムは、各製品および/または各製品の構成要素の実際のリスク値を求め、調整されたプロセス制御データを製造装置へ供給することによって、製造装置により実施されるプロセスを制御するために直接、当該リスク値を使用するように構成されている。調整されたプロセス制御データは、特定のリスク値に関連付けられた処理モードから、より低いリスク値に関連付けられた他の処理モードへ、プロセスを切り替えるように構成されている。求められたリスク値に基づくプロセス制御データの調整は、人間の操作員とのいかなるインタラクションも用いずに自動的に行われるのが有利となり得る。ここで、本願の開示内容において使用されている「リスク値」は、スカラー値、リスクベクトル、または多次元のリスクマトリクスとすることができ、これは、複数の異なるリスクカテゴリをリスク値の種々の要素によって反映することができる。制御システムは、1つまたは複数のプロセッサと少なくとも1つのメモリ要素とを備えており、これらは、制御システムの実行時に、メモリ要素に記憶されたソフトウェアモジュールを用いて、これを1つまたは複数のプロセッサによって実行することにより、制御システムの機能を具現化するように構成されている。
【0006】
一実施形態では、製造装置によって実施されるプロセス(たとえば製造プロセス、試験プロセス、洗浄プロセス等)を制御するための制御システムは、データ供給モジュールからプロセス制御データを取得する第1のインタフェースを備えている。プロセス制御データは、1つまたは複数の物理的なアイテム(製品)とその各構成要素とを自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令に関するものである。具体的にはプロセス制御データは、製造プロセスの種々の工程を実施するように製造装置を動作させるための制御データを既に有するか、または少なくともこれに変換できるものである。プロセス制御データは、製造された製品の材料構成表からの情報と、これに応じて作業工程に関する情報とを有することができる。かかるデータは典型的には、たとえばエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムまたはこれに類するシステム等のデータ供給モジュールによって供給される。プロセス制御データはまた、制御製造装置固有指令(たとえばコンピュータ統合生産(CIM)データ)、たとえば実施すべき製造工程に応じてロボットの動きを制御するための指令等を有することもできる。かかるデータは、装置固有のライブラリによって供給することができる。以下使用されている「データ供給モジュール」は、製造装置によって実施されるプロセスの制御に関連するデータを供給する全てのソフトウェアまたはハードウェアシステムとすることができる。
【0007】
制御システムはさらに、アイテム(製品)ごとに製品の各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいて総リスク値を求めるように構成されたリスク評価モジュールを備えている。このリスク評価部はさらに、求めたリスク値を時間の経過と共に監視し、求めた総リスク値の変化を検出することができる。
【0008】
一実施形態では、求められたリスク値のうち少なくとも1つのリスク値の特定の変化が既定の許容範囲を超える場合、求められた総リスク値の変化が検出される。すなわち、総リスク値の変化が既定の閾値(許容範囲)を超えるのに十分な大きさになった場合のみ、リスク評価部によって、(製造)プロセスの調整を要する関連する変化であると認識される。
【0009】
制御システムはさらに、製造装置の各製造モジュールへ動作指令を送信することによってプロセスを実施するように製造装置を制御する制御ユニットも備えている。一般的にかかる自動的な制御ユニットは、全てのリスク関連のプロセス(具体的には制御、処理、分析/試験/スクリーニング(高スループットスクリーニングを含む)、サプライチェーン、調達、販売、ソフトウェア公開等)を制御するために使用することができ、制御ユニットは複数の異なる制御モードを実行することができ、この制御モードは、リスク評価モジュールの入力に依存し得る。
【0010】
動作指令は、製造モジュールによって実行されるときに、製造プロセスの各対応する処理工程の実施を製造モジュールにさせる。こうするためには制御システムは、対応する動作指令を製造装置の製造モジュールへ供給するために製造モジュールと通信する第2のインタフェースを備える。第2のインタフェースを介して制御ユニットは、第1の動作期間中に最も低い総リスク値を有する特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始する。具体的にはたとえば、製造装置による製造の候補である製品(物理的なアイテム)の総リスク値をリスク評価部が求めた場合、リスク評価部は、全てのアイテムのうち最も低いリスク値を有する特定のアイテムを、第1の動作期間中に製造装置によって処理すべきアイテムであると特定することができる。第1の動作期間は、規定された開始時点および終了時点を有する規定された期間であって、製造装置が特定のアイテムを処理するように動作する期間である。典型的には、動作期間は製造計画システムによって与えられる。
【0011】
求められた総リスク値が変化したことによって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、または特定のアイテムに関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合、制御ユニットは、当該特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了を開始する。とりわけ、求められた総リスク値が変化したことによって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなり、かつ当該他のアイテムの当該総リスク値と当該特定のアイテムの更新された総リスク値との差が既定の閾値の差値を超えることとなった場合、制御ユニットは、当該特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了を開始する。オプションとして当該他のアイテムは、複数の物理的なアイテムの中から当該特定のアイテムの製品仕様に従って、特定のアイテムに類似の機能または非常に類似の機能または同一の機能を果たす他のアイテムを選択することができる。たとえば特定のアイテムが、表面からライムスケールを除去する機能を有する洗浄液である場合、ライムスケール除去成分を含まないアイテムを他のアイテムとして検討対象に入れないことができる。「類似の機能」の「類似」との用語は、機能1および機能2に関しては以下の意味である:機能1が特定のパラメータの100%値(たとえば、ライムスケールについて特定の条件下で5分以内に100%の洗浄効率)を達成し、機能2が当該パラメータの少なくとも50%の値、最大で200%の値を達成する(たとえば、ライムスケールについて同一条件下で5分以内に少なくとも50%または最大で200%の洗浄効率を達成する)ことを前提とする。「非常に類似の機能」の「非常に類似」との用語は、機能1および機能2に関しては以下の意味である:機能1が特定のパラメータの100%値(たとえば、ライムスケールについて特定の条件下で5分以内に100%の洗浄効率)を達成し、機能2が当該パラメータの少なくとも70%の値、最大で140%の値を達成する(たとえば、ライムスケールについて同一条件下で5分以内に少なくとも70%または最大で140%の洗浄効率を達成する)ことを前提とする。
【0012】
動作指令の実行の終了は、特定のアイテムに関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合にも開始される。かかる場合、特定のアイテムは依然として、全ての求められたリスク値のうち最も低いリスク値に関連付けられたものであり得るが、かかる場合には、総リスク値の絶対値は実行の終了を要する。
【0013】
具体的には、現在処理されている特定のアイテムが最も低いリスク値に関連付けられたものでなくなることにより、またはそのリスク値が実質的に増加したことにより(既定の閾値を超えることにより)、総リスク値の変化がリスク評価部によって検出された場合には、制御ユニットによって送信された対応する終了指令に応答して、各製造モジュールによって当該特定のアイテムの処理が停止される。求められた総リスク値の変化によって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、制御ユニットは第2のインタフェースを介して、第2の動作期間中に当該他のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始する。第2の動作期間は、第1の動作期間の次の期間である。第2の動作期間の開始は典型的には、第1の動作期間の終了時に対して、製造モジュールのコンフィギュレーションを特定のアイテムから他のアイテムへ切り替えるために必要な設定期間だけ遅延する。
【0014】
本願開示内容において使用されている「他のアイテム」との用語は、特定のアイテムに対して少なくとも1つの技術的特徴が異なるアイテムを含む。「他のアイテム」との用語は、特定のアイテムとは物理的に異なるアイテム(たとえば、異なる物理的構成または化学的組成を有するアイテム)を含み、また、特定のアイテムと物理的に同一である(たとえば同一の物理的構成または化学的組成を有する)が、当該他のアイテムに適用されるプロセスが特定のアイテムに適用されるプロセスとは異なるアイテムを含む。
【0015】
本願開示内容において使用されている「最も低い総リスク値」との用語は、「求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値」を意味する。
【0016】
現在製造中のアイテムの処理の中断に関しては、一実施形態では、制御ユニットは複数の異なる制御モードをサポートすることができる。たとえば第1の制御モードでは、特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を終了するための指令によって、第1の動作期間の終了時にプロセスの終了を引き起こすことができる。これは、直ちにアクションを要しない場合に有利となり得る。第2の制御モードでは、特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を終了するための指令によって、プロセスの終了を第1の動作期間中に引き起こすことができる。これは、直ちにアクションを要する緊急事態において有利となり得る。たとえば、製品構成要素のうち1つが技術的仕様に準拠していないこと(たとえば、溶剤の純度が不十分であること)を部分リスク値が示す場合、プロセスを直ちに停止することができる。
【0017】
一実施形態では、リスク評価モジュールはさらに、物理的なアイテムおよびその各構成要素、プロセス、方法、用途に関する存続中の知的財産権に関連するIPリスク値(とりわけ、物理的なアイテムにおいて使用されまたは包含される特徴を保護する特許に関連するIPリスク値)を含む部分リスク値と、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する非IPリスク値とに基づいて、総リスク値を求めるように構成されている。つまり、1つの物理的なアイテムの総リスク値は典型的には、複数の異なるリスクカテゴリに関連付け得る複数のリスク構成要素(部分リスク値)を含む。たとえば、アイテムおよび/または構成要素の技術的仕様、もしくは特定のアイテム/構成要素の処理に必要な製造モジュールの保守状態等の技術的事項に、部分リスク値を関連付けることができる。また、たとえば特定の製品および/または構成要素の使用に影響を及ぼす知的財産権、もしくは製造された物理的なアイテムの商業的価値に影響を及ぼす非技術的リスク等の非技術的事項に、部分リスク値を関連付けることもできる。
【0018】
本願開示内容において「IPL対象」との用語は、以下のものを含む:
(a)知的財産権(以下「IPR対象」という)。これには、特許、意匠権、商標、トレードドレス、著作権、データ保護権、独占的使用権、または製品登録におけるデータ権、データベース保護権、ビジネスモデル、営業秘密、集積回路配置設計保護権、育成者権、地理的表示が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
(b)知的財産権以外の、法律および/または契約において規定された権利および/または義務(以下「法的対象」という)。これには、以下のものが含まれる。
(b1)一般的な法律および/または契約において規定された権利(以下「一般的な法的対象」という)。これには、所有権または所有する権利、処分権、使用する権利、利用する権利、支配する権利、所有者の義務、所有しない義務、処分しない義務、使用する義務、使用しない義務、支配する義務、および支配しない義務が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
(b2)製造/R&D関連の法律および/または契約において規定された権利および/または義務(以下「技術上の法的対象」という)。これには、処理する権利、製造する権利、組み立てる権利、変換する権利、複製する権利、研究を行う権利、開発する権利、試験する権利、評価する権利、公表する権利、破壊する権利、分解する権利、保留する権利、処理する義務、処理しない義務、製造しない義務、組み立てる義務、組み立てない義務、変換する義務、変換しない義務、複製する義務、複製しない義務、研究を行う義務、研究を行わない義務、開発する義務、開発しない義務、試験する義務、試験しない義務、評価する義務、評価しない義務、公表する義務、秘密保持義務、公表しない義務、破壊する義務、破壊しない義務、分解する義務、分解しない義務、保留する義務、保留しない義務が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
(b3)市場流通関連の法律および/または契約において規定された権利および/または義務(以下「商業上の法的対象」という)。これには、頒布する権利、購入する権利、貸与する権利、申出を行う権利、販売する権利、(たとえば特定の国へ)輸入する権利、(たとえば特定の国へ)輸出する権利、輸送する権利、頒布する義務、頒布しない義務、購入する義務、購入しない義務、貸与する義務、貸与しない義務、申出を行う義務、申出を行わない義務、販売する義務、販売しない義務、輸入する義務、輸入しない義務、輸出する義務、輸出しない義務、輸送する義務、輸送しない義務が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
(b4)支払い関連の法律および/または契約において規定された権利および/または義務(以下「トランザクション法的対象」という)。これには、支払いを行う権利、支払い(たとえば料金、ライセンス料、税金等)を受ける権利、支払う義務(たとえば料金、ライセンス料、税金等)、支払わない義務、支払いを保留する義務、支払いを受ける義務、支払いを受けない義務が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
(b5)規制関連の法律および/または契約において規定された権利および/または義務(以下「規制上の法的対象」という)。これには、(たとえば第三者および/または政府機関等へ)通知または報告する義務、認可を申請する義務、認可を付与する義務、認可を付与しない義務、通知または報告を受ける権利、登録を受ける権利、標識から情報を取得する権利、標識を付し、または外す権利、検査する権利、監視する権利、検疫に供する権利、サンプルを保持する権利、没収する権利、通知または報告しない義務、登録しない義務、標識から情報を取得する義務、標識を付する義務、標識を外す義務、検査を受ける義務、監視を受ける義務、検疫に供する義務、サンプルを保持する義務、サンプルを保持しない義務、没収する義務、没収しない義務、および登録義務が含まれるが、これらは限定列挙ではない。また、登録義務には、登録する義務、製品登録法の下で登録する義務、消費者製品登録法または食品登録法または食品安全法の下で登録する義務、化学製品、農薬製品またはバイオ製品登録法の下で登録する義務[たとえばREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)法、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)]が含まれるが、これらは限定列挙ではない。本願開示内容において使用されている「登録する」または「登録」との用語は、登録に関連する全ての行為が含まれ、これには、認可、証明書、使用許可、公認、公証、通知、登録、翻訳の申請、延長、取得、回復、レビュー、更新および/またはステータスの確認が含まれるが、これらは限定列挙ではなく、またこれには、登録法または規制のステータスの確認が含まれ、また、記録、文書、署名、スタンプ、サンプルまたは標識の追加、支度または提供も含まれる。
【0019】
本願開示内容において使用されている「特許」との用語には、特許、特許出願、分割出願、再発行、再審査、継続出願、一部継続出願、追加特許、実用新案、イノベーション特許、ビジネスモデル特許、対象ビジネス方法(CBM)特許、意匠特許、および、かかる特許の全ての延長が含まれ、これには、補充的保護証明書およびその出願が含まれる。
【0020】
「IPL対象」について「存続中」との用語は、そのIPL対象についての情報を任意の形態で入手し得る全てのIPL対象を意味し、これには、関係者に提出、公表または入手可能にされ、されており、またはされた全てのIPL対象が含まれる。IPL対象はそれぞれ、国別または地域別とすることができる。
【0021】
「IPリスク」との用語は、IPL対象に関連する全てのリスクを意味する。
【0022】
「非IPリスク」との用語は、IPL対象に関連しない全てのリスクを意味する。
【0023】
「IPデータベース」との用語は、IPL対象についての情報を含む全てのデータベースを意味し、特に、IPL対象に関連しない情報より多くの、または格段に多くのIPL対象関連情報を含む全てのデータベースを意味する。
【0024】
「非IPデータベース」との用語は、IPL対象関連情報よりも、IPL対象に関連しない情報を多く含む、全てのデータベースを意味する。
【0025】
一実施形態では、IPL対象はIPR対象である。他の一実施形態では、IPL対象は法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象は一般的な法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象は技術上の法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象は商業上の法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象はトランザクション法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象は規制上の法的対象である。他の一実施形態では、IPL対象は登録義務であり、とりわけ、製品登録法の下で登録する義務、消費者製品登録法または食品登録法または食品安全法の下で登録する義務、化学製品、農薬製品またはバイオ製品登録法の下で登録する義務(たとえばREACH、GHS)である。他の一実施形態では、IPL対象は特許、意匠および商標である。他の一実施形態では、IPL対象は特許および商標である。他の一実施形態では、IPL対象は特許である。
【0026】
いずれの場合においても、本願開示内容において使用されるリスク値は、1つまたは複数の処理された物理的なアイテムの可能性のある後の使用についての不確かさに関するもの、ならびに/もしくは物理的なアイテムに適用されるプロセスに関するものであり、リスク値は、人間とのいかなるインタラクションも行わずに、各製造モジュールによって実施されるプロセスをリスク評価部の調査結果に従って制御するために直接使用される。
【0027】
一実施形態では、制御システムは第1のインタフェースを介して、IPリスク値を計算するための情報を1つまたは複数のIPデータベースから検索することができる。さらに、非IPリスク値を計算するための情報を1つまたは複数の非IPデータベースから検索することができる。リスク評価モジュールは、1つまたは複数のIPデータベース内の対応するIPL対象の状態変化の結果としてIP部分リスク値の変化に基づき、特定のアイテムの総リスク値の変化を検出することができる。たとえば、係属中の特許出願が、処理対象のアイテムによって使用されている化合物を対象としており、監視されているIPデータベース内における当該特許出願のステータスが、当該処理対象のアイテムに関連する市場である国について「特許査定済み」に切り替わった場合、そのIP部分リスク値は典型的には増加する。他方、特許出願が拒絶され、または当該特許が無効になった場合、そのIP部分リスク値は典型的には減少する。対応するIPL対象の評価の変化は、IPL対象の状態変化とみなすことができる。たとえば、対応するIPL対象が、内部の有効性分析によって無効であるとみなされた権利に関連付けられている場合には、この情報はデータベースへ供給され、これによりIPL対象の状態が変化し、かかる場合、対応するIP部分リスク値が典型的には減少する。
【0028】
一部の実施形態では、特定のアイテムの特定の総リスク値の変化を、1つまたは複数の特定の構成要素のリスク寄与度に関連付けることができる。つまり、特定のアイテムの総リスク値は、当該特定のアイテムの構成要素のリスク値に依存する。このようにして、リスク評価部は特定のアイテムについて、適切なデータベース内で少なくとも1つの類似または非常に類似の構造、機能および/または技術的特徴を有する構成要素を探索することにより、より低いリスク値寄与度を有する代替要素として1つまたは複数の他の構成要素を特定することができる。たとえば、化学プロセスにおいて使用される化学成分の分野において上述の構造/機能/技術的特徴の分析のための確立されたデータベースは、たとえばSciFinder、REAXYS、ChemSpider、PubChem、ChemlDplus、SPRESIデータベース、CAMPUS(Computer Aided Material Preselection by Uniform Standards)データベース、バイルシュタイン・データベースまたはDrugBankである。かかる他の構成要素が特定されると、制御ユニットは、当該特定のアイテムの総リスク値が最も低い総リスク値となるように、1つまたは複数の特定の構成要素のうち少なくとも1つを特定された他の構成要素と置換するように製造装置に指令することができる。本実施形態では、製造装置は、より低いリスク値を有する全く異なる最終製品に切り替わるのではなく、高リスクの構成要素を低リスクの代替構成要素と置換することによって、現在製造中のアイテムの構成要素構造を変化させることにより、修正された現在製造中の製品が再び、当該製造装置によって製造され得る全ての物理的なアイテムのうち最も低いリスク値を有するようにする。
【0029】
一実施形態では、上記にて開示した制御システムによって実施される制御方法を使用して製造装置を制御し、当該制御方法は、製造装置を動作させるためのプロセス制御データであって、1つまたは複数の物理的なアイテムおよびその各構成要素を自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令を有するプロセス制御データを、データ供給モジュールから取得するステップと、アイテムごとに、各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるステップと、第1の動作期間中、最も低い総リスク値を有する特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップと、求めた総リスク値の変化を検出するステップと、求めた総リスク値の変化によって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、または特定のアイテムに関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合、当該特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了を開始するステップと、求めた総リスク値の変化によって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、第2の動作期間中に、他のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップとを使用する。
【0030】
他の一実施形態では、コンピュータプログラム指令をコンピュータ可読媒体に記憶して、制御システムの1つまたは複数のプロセッサによって実行されるときに上述の制御方法を制御システムに実施させるコンピュータプログラム製品を構成することができる。
【0031】
特に添付の特許請求の範囲に記載された要素および組み合わせを使用して、本発明の他の側面を認識および達成することができる。上記の一般的な説明および下記の詳細な説明はいずれも単なる一例であり、かつ説明に過ぎず、記載されているように本発明を限定するものではないと解すべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態の製造装置により実施されるプロセスを制御するための制御システムの簡素化したブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態の制御システムによって実施される制御方法の簡素化したフローチャートである。
【
図3】複数の異なる制御モードにおける制御システムの挙動の一例を示す表である。
【
図4】本発明の一実施形態のオプションの自動探索モジュールの機能を制御するために使用できる決定木の一例を示している。
【
図5】本発明の一実施形態のオプションの自動探索モジュールを備えた制御システムの簡素化した構成要素図である。
【
図6】複数の異なるアイテムのリスク値と、当該リスク値の場合における製造ラインの製造産出量とを示すシナリオ例を示している。
【
図7】本発明の実施形態において使用できる一般的なコンピュータ装置および一般的なモバイルコンピュータ装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、製造装置200により実施されるプロセスを制御するための製造制御システム100の簡素化した構成要素図である。製造制御システムの動作については、製造制御システム100によって実施される、
図2に示された製造制御方法1000の簡素化したフローチャートを参照して、説明する。よって、次段落以降では両図(
図1、
図2)の参照符号を使用する。
【0034】
製造装置200は、1つまたは複数の製造モジュールPM1~PMn(たとえばロボット、化学反応器等)を備えている。たとえば、これら複数の製造モジュールが、1つまたは複数の物理的なアイテムI1,I2を製造するための製造工程を実施することができる。一部の実施形態では製造装置200は、複数の構成要素C1~Cmに基づいて物理的なアイテムI1,I2の組立を行うための製造ラインとすることができる。各物理的なアイテムI1,I2(たとえば最終製品)はそれぞれ、複数の構成要素C1~Cmの異なるサブセットに基づくことができる。各構成要素は製造装置へ自動的に(たとえばロボット、コンベアベルト、管、バルブ等を介して)供給される。一部の実施形態では、製造装置200は、化学プロセスを実施するように構成された化学プラント装置とすることができる。化学プロセスの場合、最終製品の各構成要素は、たとえば化学物質である。一実施形態では、製造装置は製造プロセスを調整するための試験製造運転を実施するように構成することができる。製造装置200は制御システム100によって、複数の異なる物理的なアイテムI1,I2を対応する動作期間OTV1,OTV2中に自動的に製造するように制御される。具体的にはたとえば、製造装置200は第1の動作期間OTV1中に第1のアイテムI1を製造するように設定される。その後、第2の動作期間OTV2中に第2のアイテムI2を製造するように製造装置をコンフィギュレーション変更することができる。第1および第2のアイテムI1,I2はそれぞれ異なる構成要素に基づくことができ、また、それぞれ異なる製造モジュールを用いることができる。自動製造装置は当該分野(たとえば自動車産業、化学産業、および他の多くの産業)において周知であり、自動製造プロセスの分野の知識を有する者には、これ以上詳細な開示を要しない。
【0035】
「物理的なアイテム」とは、物理的に存在する全てのアイテムであり、これには、
(a)機械、機械部品、電気部品、デバイス、道具、車両、建物要素、
(b)消費財、食品、飲料、
(c)分子、化学化合物、化学物質、化学組成物、
(d)生きている状態または死んでいる状態の有機体(たとえば、生きている状態または死んでいる状態の植物または微生物)
が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0036】
「物理的に存在する」とは、物質の状態を有する全てのものを意味し、この状態には、たとえば固体、液体、気体およびプラズマ等の古典的な低エネルギー状態が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0037】
「構成要素」との用語は、物理的なアイテムの物理的に存在する全ての部分を意味する。2つの構成要素が少なくとも1つの技術的特徴において異なる場合、これら2つの構成要素は互いに異なる。
【0038】
「技術的特徴」との用語は、人間の感覚器または他の生物の感覚器または物理的に存在する道具によって特定できる全ての特徴を意味する。技術的特徴には、物理的特徴、化学的特徴および生物学的特徴が含まれるが、これらは限定列挙ではない。物理的特徴の例は、たとえば重量、幾何形態、密度、温度、色、粘度、伝導度および耐久性等の物理的パラメータである。化学的特徴の例は、分析における化学的組成(すなわち、何の分子または化学物質が1つの構成要素に含まれているか)、可溶性、反応性、反応速度、化学的構造である。生物学的特徴の例は、生殖不能性、増殖率、生殖能および遺伝子配列である。物理的なアイテムまたは構成要素がコンピュータデータを有することも、技術的特徴の一例である。物理的なアイテムまたは構成要素に特定の物理的または化学的プロセスが施されたことも、技術的特徴の一例である。たとえば、物理的なアイテムI1と物理的なアイテムI2とが物理的に同一である(すなわち、同一の物理的構成または化学的組成を有する)が、アイテムI1はプロセスP1によって製造され、アイテムI2は別のプロセスP2によって製造された場合、両構成要素は製造プロセスに関する技術的特徴において異なる。たとえば、構成要素C1と構成要素C2とが物理的に同一である(すなわち、同一の物理的構成または化学的組成を有する)が、構成要素C1はプロセスP1によって製造され、構成要素C2は別のプロセスP2によって製造された場合、両構成要素は製造プロセスに関する技術的特徴において異なる。
【0039】
物理的なアイテムが1つの構成要素のみから成る場合、この1つの構成要素がそのまま物理的なアイテムとなる。
【0040】
「製造装置」との用語は、物理的なアイテムの少なくとも1つの構成要素を処理するために適した、または物理的なアイテムそのものを処理するために適した、物理的に存在する全ての装置を意味する。「構成要素を処理する」とは、(a)構成要素の技術的特徴のうち少なくとも1つを変化させること、または(b)構成要素の技術的特徴のうち少なくとも1つについての情報を取得すること(たとえば試験、測定もしくは分析すること)、または(c)構成要素を製造もしくは生産すること、(d)構成要素を処理、精製、洗浄または再利用すること、(e)構成要素を他の構成要素に、もしくは他の構成要素の一部に変換すること、または(f)当該構成要素を物理的なアイテムに追加し、もしくは物理的なアイテムから当該構成要素を除去すること、を意味する。物理的なアイテムに関しては、「物理的なアイテムを処理する」とは、物理的なアイテムを製造もしくは生産すること、または物理的なアイテムの構成要素を処理することを意味する。
【0041】
図1の実施例では、制御システム100はモノリシックのブロック(たとえば1つのハードウェアリソース上に実装されたもの)として示されている。しかし一部の実施形態では、制御システム100のモジュールを複数のハードウェアリソースにわたって分散させ、これらのハードウェアリソースが論理レベルで制御システムを構成することもできる。たとえば実際の実装では、制御システムの制御ユニット120を製造装置200の不可分の一部とすることができ、かつリスク評価部のサブモジュール111,112を各データベース320,330の不可分の一部とすることができる。他の一実装では制御システム100は、中央事業制御システムの一モジュールであって、外部のデータベースおよび製造装置と通信するための適切なインタフェース191,192を備えた一モジュール、たとえば、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システム等の一モジュールとすることができる。
【0042】
他の一実施形態では制御システム(100)は、製造装置(200)に接続された他の製造装置、たとえば、製造装置(200)の上流側または下流側にある製造装置等を制御し、またはこれと通信することもできる。
【0043】
第1のインタフェース191は、製造装置200を動作させるための製造制御データ311をデータ供給モジュール310から取得する(1100)ように構成されている。本実施例ではプロセス制御データは、1つまたは複数の物理的なアイテムI1,I2とその各構成要素C1~Cnとを自動的に処理するように製造装置200を制御するための動作指令を有する製造制御データ(PCD)311に相当する。たとえばPCD311は、各アイテム/構成要素に適用すべき複数の製造工程のリストを含む、いわゆる手順計画を有することができる。複数の異なるアイテムに係る材料構成表のルーティング等の情報は、典型的にはERPシステムによって供給される。この情報は制御ユニットによって、技術的制御パラメータ情報に変換することができ、この技術的制御パラメータ情報は、PCD311に従って製造工程を実施するように製造モジュールに指令するため、第2のインタフェース192を介して複数の製造モジュールPM1~PMnへ供給される。上述のようなデータ供給モジュール310からの製造制御データをどのようにして、(たとえば遠隔機能呼び出しインタフェースまたは適切なウェブサービスインタフェースを介して)検索して、各製造モジュールに直接適用できる技術的制御パラメータに変換するかは、当業者には周知である。
【0044】
制御システム100はさらに、アイテムI1,I2ごとに各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいて総リスク値を求める(1200)ように構成されたリスク評価モジュール110を備えている。このリスク評価部110はさらに、求めた総リスク値に何らかの変化が生じたか否かを検出することもできる。つまり、リスク評価部110は複数の物理的なアイテムI1,I2の初期の総リスク値を計算し、さらに、この総リスク値を時間の経過と共に更新および監視することができる。これにより、リスク値の時間的な変化を検出することができる。
【0045】
制御システム100の制御ユニット(CU)120は、第2のインタフェース192を介して製造装置200と通信することができる。第2のインタフェース192を実装するために、CU120から制御データを製造モジュールPM1~PMnへ伝送するために適した任意のインタフェース技術を使用することができる。これは、各プロトコルによる無線通信インタフェースも含む。CU120は、物理的なアイテムI1,I2に係る製造制御データを含むPCD311を受け取る。CU120はさらに、どの物理的なアイテムが最も低い総リスク値を有するかの情報を、リスク評価部110から受け取る。
図1の実施例では、特定のアイテムI1が最も低い総リスク値を有する。本実施例では、CU120は第2のインタフェース192を介して、第1の動作期間OTV1中に特定のアイテムI1を製造するための動作指令の実行を開始する(1300)。
【0046】
一実施形態では、リスク評価部110は、複数の物理的なアイテム全てのリスク順位をCU120へ供給することができ、CU120は、製造について最も低い総リスク値を有するアイテムを選択する。代替的な一実施形態では、リスク評価部110が既にリスク順位のフィルタリングを行い、最も低い総リスク値を有するアイテムのみをCU120へ供給する。
【0047】
一実施形態では、CU120はその後、最も低いリスク値を有するアイテムI1に係るPCD311を検索するためにデータ供給モジュール310に問い合わせることができる。代替的な一実施形態ではCU120は、可能なアイテムを製造装置によって製造するためのPCD311を記憶するためのキャッシュメモリを備えることができる。代替的な一実施形態では、CU120は、キャッシュ保存されたPCDデータであって、最も低い総リスク値を有するアイテムI1に対応するPCDデータを単に選択するだけも可能である。CU120はさらに、データ供給モジュール310から受け取った製造制御データを、製造装置200の複数の製造モジュールによって処理できる形式に変換することができる変換モジュールを備えることもできる。
【0048】
他のアイテムI2が最も低い総リスク値を有することとなる、求めた総リスク値の変化を、リスク評価部110が検出した(1400)場合、または特定のアイテムI1に関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合、CU120は、当該特定のアイテムI1を処理するための動作指令(たとえば製造するための動作指令)の実行の終了を開始する。とりわけ、他のアイテムI2が最も低い総リスク値を有することとなる、求めた総リスク値の変化であって、当該他のアイテムI2の当該総リスク値と当該特定のアイテムI1の更新された総リスク値との差が既定の閾値の差値を超えることとなる総リスクの変化を、リスク評価部110が検出した(1400)場合、CU120は、当該特定のアイテムI1を処理するための動作指令(たとえば製造するための動作指令)の実行の終了を開始する。「特定のアイテムの総リスク値」についての「更新」とは、「求めた総リスク値の当該変化による更新」を意味する。たとえば第1のシナリオでは、求めた総リスク値の変化によって他のアイテムI2が30%と最も低い総リスク値を有し、特定のアイテムI1は32%の更新された総リスク値を有することとなるが(両総リスク値の差は2%)、既定の閾値の差値はΔ=15%であるから、本シナリオではCU120は、当該特定のアイテムI1を処理するための動作指令の実行の終了を開始しない。たとえば第2のシナリオでは、求めた総リスク値の変化によって他のアイテムI2が10%と最も低い総リスク値を有し、特定のアイテムI1は32%の更新された総リスク値を有することとなり(両総リスク値の差は22%)、既定の閾値の差値はΔ=15%であるから、本シナリオではCU120は、当該特定のアイテムI1を処理するための動作指令の実行の終了を開始する。
【0049】
つまり、リスク評価部が複数の物理的なアイテムに係る総リスク値を更新し、変化が検出されて、当該変化の後に特定のアイテムI1が最も低い総リスク値に関連付けられたものでなくなった場合は、CU120は、当該特定のアイテムI1の製造の終了を対応する製造モジュールにさせる動作指令を、製造装置へ送信する(すなわち、実行の終了を開始する(1500))。たとえば標準制御モードでは、これは第1の動作期間OTV1の終了時(すなわち、アイテムI1の製造バッチが完了したとき)に行うことができる。しかし一部の態様では、(たとえば緊急制御モード中)第1の動作期間の終了前であっても、当該動作指令が製造装置200に、特定のアイテムI1の製造を直ちに停止させることができる。一部の実施形態では、総リスク値の変化が既定の許容範囲(たとえば、(1つまたは複数の)閾値によって規定された許容範囲)を超える場合にのみ、かかる変化をリスク評価部によって検出することが可能である。つまり、総リスク値の小さい変化は、制御システムによって補正措置をトリガしないことによって無視することができる。
【0050】
特定のアイテムI1の製造が製造装置200によって終了されると、CU120は第2のインタフェース192を介して、第2の動作期間OTV2中に他のアイテムI2を処理するための動作指令(たとえば製造するための動作指令)の実行を開始する(1600)。換言すると、製造は自動的に、最も低い総リスク値を有するようになった他のアイテムI2に切り替えられる。変化の検出が既定の許容範囲に依存する場合において、総リスク値の変化が各閾値を下回る小さい変化の場合には、制御システムは製造装置を他のアイテムI2の製造に切り替えない。有利には、総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合にのみ製造切替の結果としての大きな利点を達成できるように、既定の許容範囲を選択する。
【0051】
ここで留意すべき点は、他のアイテムI2は、I1の構成要素のうち1つまたは複数を、より低いリスク値に関連付けられた代替構成要素と置き換えた、特定のアイテムI1の変形態様とすることができることである。かかるシナリオでは、特定のアイテムの総リスク値の変化を、当該特定のアイテムの1つまたは複数の構成要素のリスク寄与度に関連付ける。その後、制御ユニット120は特定のアイテムについて、少なくとも1つの類似または非常に類似の構造、機能および/または技術的特徴を有する構成要素を適切なデータベース内で探索することにより、より低いリスク値寄与度を有する代替要素として1つまたは複数の他の構成要素を特定することができる。その後、修正された特定のアイテム(すなわち他のアイテムI2)の総リスク値が全てのアイテムのうち最も低い総リスク値となるように、1つまたは複数の特定の構成要素のうち少なくとも1つを、特定された他の構成要素と置き換えることができる。
【0052】
一実施形態では、リスク評価部110は、IPリスク値を含む部分リスク値を求めるための第1のサブモジュール(IRA)111を備えており、このIPリスク値は、物理的なアイテムI1,I2およびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するものである。リスク評価部110はさらに、非IPリスク値を含む部分リスク値を求めるための第2のサブモジュール(NIRA)112を備えており、この非IPリスク値は、物理的なアイテムI1,I2およびその各構成要素に関するものである。よってリスク評価部110は、サブモジュールIRA111およびNIRA112によって供給された部分リスク値を統合して、各物理的なアイテムに係る総リスク値にすることができる。
【0053】
たとえば、IPリスク値を計算するためには、IRAサブモジュール111は第1のインタフェース191を介して1つまたは複数のIPデータベース320からIPL対象関連の情報を検索することができる。IPデータベース320は、たとえば欧州特許庁により提供されているESPACENETデータベースまたは世界知的所有権機関により提供されているPATENTSCOPEデータベース等の公共のデータベースを含むことができる。かかるIPデータベースは有利には、特許に係る法的ステータス情報と、特許詳細、特許権者詳細、国詳細、技術分野詳細についての公開情報との双方を保有する。有利には、公共のIPデータベースは定期的に更新される。IPデータベース320はまた、製造装置を稼働させまたはリスク評価サービスを提供する主体の私設内部データベースを含むこともできる。内部IPデータベースは、特許詳細、特許権者詳細、国詳細、技術分野詳細、検出確率についての付加的な非公開情報を保有することができる。有利には、私設内部データベースも定期的に更新される。
【0054】
非IPリスク値を計算するためには、NIRAサブモジュール112は1つまたは複数の非IPデータベース330から、当該計算に関連する情報を検索することができる。非IPL対象関連のリスクファクタの例は、技術的リスク、商業的リスクおよび/または財務的リスク、EHS(環境、健康および安全)リスク(毒性、病原性、電磁放射、粒子放射および音響放射に関連するリスクを含む)、IT関連リスク(データ損失または誤用)等である。関連する製品/サービスの商売についての実データ、履歴データまたは予測データ、たとえば量、価格、顧客、収益、現在の純価値等も、商業的および/または財務的リスクの計算に含めることができる。たとえば、関連する製品/サービスについて高い商業的価値を予測できる場合には、商業的および/または財務的リスクの値は比較的低くなる。たとえば、関連する製品/サービスについて非常に低い商業的価値を予測できる場合には、商業的および/または財務的リスクの値は比較的高くなる。よって、非IPリスク値の自動計算は、動作モードの変化に関わるコストおよびリスク(たとえば、他のアイテムを製造できるようにするために機械をオンオフ切り替えすることに係るコスト)を計算するための組み込まれた変更コスト計算ツール(CCC)を含むことができる。非IPデータベースも、公共データベース(たとえば日用品の公表価格一覧)または各主体の私設内部データベースとすることができる。内部私設データベースの例は、関連する製品/サービスの商売についての定期的に更新される非公開の情報、たとえば量、価格、顧客、収益、現在の純価値等を保有する、ERPシステムのデータベースである。
【0055】
たとえば、IRAサブモジュール111はIP部分リスク値を、1つまたは複数のIPデータベース320内の対応するIPL対象の状態情報に基づいて計算することができる。特定のアイテム/構成要素について第1のIPリスク値の計算がなされた後に状態情報が変化すると、これによって、この状態変化の後の第2のIPリスク値計算においてIPリスク値の変化が生じ得る。IP部分リスク値の変化は、(他の変化によって相殺されない場合)特定のアイテムの総リスク値の変化を生じ得るものであり、総リスク値の変化によって最終的に、他のアイテムがより低いリスク値を有する状況になり得る。
【0056】
コンピュータプログラムおよび/または人間の操作員によってIRAサブモジュール111を動作させることができる。一実施形態では、コンピュータプログラムによってIRAサブモジュール111を動作させる。他の一実施形態では、コンピュータプログラムおよび人間の操作員によってIRAサブモジュール111を動作させる。他の一実施形態では、主にコンピュータプログラムによってIRAサブモジュール111を動作させ、一部の例外的な状況においてのみ人間の操作員がこれを補助する。IRAサブモジュール111は、データ入力インタフェースとデータ出力インタフェースとを備えている。IRAサブモジュール111はデータ入力インタフェースを介して、たとえば
(i)IPリスクをアセスメントすべきターゲットアイテムについての非公開の入力情報
(ii)関心対象の国(非公開入力)、たとえば、ターゲットアイテムを市場に投入できる国等
(iii)可能性のある侵害の検出確率(非公開入力)
(iv)IPリスクアセスメントに関連する他のデータ(非公開入力)
等のデータを受け取ることができる。
【0057】
IPデータベース320は、IP部分リスク値の計算に必要なIPリスクアセスメントパラメータ(「IPリスクファクタ」ともいう)の計算のために必要とされる全ての情報を保有する公開部分および非公開部分を備えることができる。以下、可能性のあるIPリスクファクタの一部の例を提示する:
【0058】
a)公衆が入手可能な、特許明細書および/または特許請求の範囲に記載の情報に基づくIPリスクファクタ。これは、自動もしくは半自動のクレーム照合(たとえば、Lucid Patent LLC.社(米国ミネアポリス)のClaimBot(商標)またはClaimScape(商標)ソフトウェア等を参照のこと)および/または上記の情報(i)によるターゲットアイテムの半自動探索によって取得することができる。たとえば、ターゲットアイテムを技術的特徴について記述し、意味論的探索結果の類似度をIPリスク値の計算に使用することができる。高い類似度は、高いIPリスクと関連付けることができる。意味論的探索ツールは市場において入手可能である。一例として、infoapps社(独国ミュンヘン)によって提供されているツールSem‐IPがある。
【0059】
b)特許明細書および/または特許請求の範囲以外の特許に関する公衆が入手可能な情報に基づくIPリスクファクタ。これには、特許の法的ステータス(係属中、特許査定済み、異議申立て係属中、取消し、満了)、特許期間(特許期間がもうすぐ満了する場合、リスクは低くなる)、本件特許に関する第三者のアクションの数(すなわち、第三者の監視/提出、特許庁または他の機関における異議申立ておよび無効手続)、特許付与された場合、出願係属期間(すなわち、出願後xヶ月以内に特許査定がなされた)、特許査定までに受領したオフィスアクションの数、パテントファミリーの規模および/または国の範囲(たとえば、パテントファミリーの規模が当該特許権者について典型的でない場合(たとえば、多国籍の特許権者が本件特許を1ヶ国でしか出願していない場合、または中国の小さい大学が世界規模で10ヶ国に1つの特許を出願している場合)には、インド国特許庁のファイルから、または欧州特許庁によって提供されているESPACENETデータベースから、パテントファミリー情報を自動検索する)、本件特許についてどの者に対しても均一料金でライセンス契約を行えるか否か、先行引用文献の数、本件特許のIPC分類(たとえば、特定のIPC分類に属し2000~2010年に付与された特許については、国固有の判例の変更、たとえば米国のAlice or Mayo最高裁判決等によって、特許が無効にされるリスクが高くなり得る)が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0060】
c)特許権者に関する公衆が入手可能な情報に基づくIPリスクファクタ。これには、特許権者の法的形態(私設会社、大学等の公共研究機関、政府系機関、個人)、特許権者と当該アイテムを製造している主体との関係、特許権者が訴訟中、または一般的にその特許権を行使しているか否か(公共の情報源からの情報)、特許権者の出身国、特許権者の規模および「財務力」、特許権者が公に不争宣言をしたか否か、特許権者が不実施主体(NPE)であるか否か、特許権者の変更が発生したか否か、が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0061】
d)特許についての非公開情報に基づくIPリスクファクタ。これには、無効性分析がなされたか否か、本件特許に関して新規性を喪失させる従来技術が公知であるか否か、本件特許が監視されていたか否か、本件特許に関してライセンスの選択肢またはこれに類する合意があるか否か、本件特許を審査した審査官との特段の経験が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0062】
e)特許権者についての非公開情報に基づくIPリスクファクタ。これには、特許権者と使用者との関係の質(たとえば友人関係/提携パートナー/敵対関係/競業者、サプライヤ/顧客関係)、特許権者が訴訟中、または一般的に特許権を行使しているか否か、特許権者と契約を交渉することが容易か否か、特許権者の特許出願全般の質、が含まれるが、これらは限定列挙ではない。
【0063】
f)公開または非公開の国固有の情報(たとえば判例の傾向)に基づくIPリスクファクタ。一部の国では、特許権者が自己の特許権を行使することが難しく(たとえばインド)、たとえばブラジル等の他の国では、特許が付与されるまでに10年を要することがあり、欧州(EP)では、ソフトウェア特許は発明的特徴を獲得するためには技術的性質を要し、たとえば米国等の他の国では、侵害者は裁判手続後に高額の損害賠償を支払わなければならない。
【0064】
g)公開または非公開の技術固有の情報に基づくIPリスクファクタ。たとえば、ITC分野では化学等の伝統的な分野よりも、許容し得るリスクが高く、たとえば、これは対応するIPC分類に関連し得る。
【0065】
h)可能性のある侵害の検出確率(非公開)に基づくIPリスクファクタ:たとえば、ターゲット製品/サービスが視認不可能であり、その構成要素を分析することができない(「ブラックボックス」)。
【0066】
上述のIPリスクファクタは、既定のスキームおよび規則に従って特定のアイテムのIPリスク値を計算するために使用することができる。かかる規則は事前に規定しておくことができ、または(1つまたは複数の)特定のアイテムを製造する主体によってコンフィギュレーションすることができる。
【0067】
特定のアイテムのIP総リスク値は、上記のIPリスクファクタの少なくとも1つのサブセットの重み付けに基づいて計算することができる。たとえば、製造装置を稼働させている主体「MASTERCOMPANY」が、化学製品である物理的なアイテム「MASTERADDITIVE」を製造しているとする。IRAサブモジュール111は、入力として以下の情報を受け取ることができる:
【0068】
関心対象国:米国のみ
【0069】
上記a)のIPリスクファクタ:70%(たとえば、クレーム文言と比較した、対応する意味論的探索結果の類似度70%によって得られる);
重み付け係数(既定):20%
【0070】
上記b)のIPリスクファクタ:90%(たとえば、関連する特許のみが付与されており、本件特許に対して係属している第三者のアクションは無く、IPC分類によれば、米国において対応する判例が存在するため、本件特許が無効になる確率は低い);
重み付け係数(既定):20%
【0071】
上記c)のIPリスクファクタ:10%(たとえば、唯一の関連する特許の特許権者が「MASTERUNI」大学であり、公開記録によれば当該大学はライセンスを提供する用意がある);
重み付け係数(既定):10%
【0072】
上記d)のIPリスクファクタ:5%(たとえば、内部の無効性分析がなされており、これがIPデータベース320の非公開部分に入力されている);
重み付け係数(既定):20%
【0073】
上記e)のIPリスクファクタ:10%(たとえば、「MASTERCOMPANY」と「MASTERUNI」との間には良好な協力関係がある);
重み付け係数(既定):10%
【0074】
上記f)およびg)のIPリスクファクタ:合わせて50%(たとえば、米国において化学物質についての特許に関して特段の状況がない);
重み付け係数(既定):10%
【0075】
上記h)のIPリスクファクタ:80%(たとえば、「MASTERADDITIVE」の成分は既存の技術を用いて分析することができる);
重み付け係数(既定):10%
【0076】
よって、アイテム「MASTERADDITIVE」のIP総リスク値は、0.7×0.2+0.9×0.2+0.1×0.1+0.05×0.2+0.1×0.1+0.5×0.1+0.8×0.1=0.48=48%として計算することができる。その後、リスク評価部110によってアイテム「MASTERADDITIVE」のIPリスク値を、NIRAサブモジュール112によって供給された部分リスク値と統合して、当該アイテムの総リスク値にすることができる。また、当該アイテムの推定された商業的価値を考慮することによって、総リスク値を金銭値に変換することも可能である。
【0077】
たとえば商業的リスクおよび/または財務的リスク、EHS(環境、健康および安全)リスク(毒性、病原性、電磁放射、粒子放射および音響放射に関連するリスクを含む)、IT関連リスク(データ損失またはデータ誤用)に関する他の部分リスク値の計算を対象とする他のサブモジュールを追加して、たとえばIRAおよびNIRAサブモジュールを備えたリスク評価部110等のスマートリスクアセスメントツールを拡張することができる。これによってかかるサブモジュールは、たとえば製造、処理、分析/試験/スクリーニング(高スループットスクリーニングを含む)、サプライチェーン、調達、販売、ソフトウェア公開、R&D、シミュレーションプロセス等の、上記リスクファクタに影響を受け得るプロセスの制御に使用される自動制御ユニット、たとえばCU120等と統合される。
【0078】
図1の実施例では、リスク評価部110はCU120と通信結合されている。制御システム100が分散システムでない一実施形態では、この通信結合は制御システム100の内部バスを介して実現することができる。分散実装の場合には通信結合は、任意の適切なワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)または無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)接続を介して実現することができる。リスク評価部110はリスク情報をCU120へ供給し、CU120は、後で使用可能なアイテムのみが製造されることを保証する動作指令を製造装置へ送信しなければならない。上記にて開示した実施例では、リスク評価部110はデータベース320,330と、オプションとしてデータ供給モジュール310とから、入力情報を受け取っている(たとえば、アイテムの名前および化学構造)。
【0079】
リスク評価部110は、CU120から入力を受け取ることもできる。たとえば、製造プロセスが変更したため、アイテム「MASTERADDITIVE」の現在の組成が製造プロセスにおいて動作期間OTV1中に変化したとする。その結果、アイテムは現在、製造制御データPCD311に含まれる元の仕様から派生した仕様に従って製造されることとなることがあり得る。CU120はまた、(たとえば、複数の製造モジュールPM1~PMnの状態を監視する適切なセンサデータを受け取ることによって)製造装置200についての監視機能を実施し、かかる変化を認識することもできる。その後、CU120は現在の組成をリスク評価部110へ供給し、リスク評価部110は、現在製造中のアイテムの更新された総リスク値を計算することができる。現在製造中のアイテムの更新された総リスク値が変化することにより、他のアイテムがより低いリスク値を有することとなっていることがあり得る。かかる場合、CU120は、次の動作期間OTV2について製造をこの他のアイテムに切り替えるための動作指令を製造装置へ供給することができる。
【0080】
さらに、IRAサブモジュール111は、ターゲットアイテムに依存して意味論的探索の類似値またはクレーム照合結果の生成をサポートする機能を具備することができる。さらに、既定のIPもしくは特許探索およびフィルタを(たとえばCUの出力に依存して)設定することができ、かつ/または出力の品質を改善するために機械学習を実施することができる。
【0081】
図3は、現在製造中のアイテム(たとえば「MASTERADDITIVE」)の総リスク値が定期的に更新される場合の制御システム挙動の一例を示す表3000である。リスク評価部は、総リスク値の更新計算を定期的に行うことができる。たとえば、更新間隔を毎月、毎週、毎日、毎時、毎秒、またはリアルタイムとすることができる。本実施例では、リスク評価部は総リスク値を自動的に毎時計算すると仮定する。表3000の総リスク値の列は、現在製造中のアイテムの総リスク値の閾値を示している。動作指令列は、現在の総リスク値が各閾値を超えた場合にCU120によって製造装置へ送信される動作指令に関する情報を含んでいる。
【0082】
本実施例では、最大40%の全ての総リスク値に制御モード1が関連付けられている。つまり、総リスク値が0%~40%の許容範囲内になる総リスク値の変化は全て、制御システムに無視される。制御システムはこの許容範囲内の変化を、関連する変化として取り扱わないので、これ以上の措置がとられることはなく、製造プロセスは変化しない。
【0083】
しかし、総リスク値が40%の閾値を超えることによって変化が検出されると、CUは、現在のリスク状態についての通知の送信を含む制御モード2を作動する。換言すると、制御システムは各ターゲット(たとえば監視システムまたは人間の操作員)に対して、検出された変化について通知する、ということである。そうでない場合は、制御システムは他のいかなる補正措置も自動的にトリガしない。
【0084】
しかし、総リスク値が60%の閾値を超えることによって変化が検出されると、CUは制御モード3を作動する。この制御モード3は、その後の動作期間中に他のアイテムを製造するため、製造プロセスを既定の他のプロセスに変更すること(設計上のソリューション)を含むことができる。これは、他のアイテムのIP総リスク値が40%超でないとの条件の下で高リスクの構成要素に代えて低リスクの代替構成要素を使用することを含むことができる。制御システムはさらに、代替構成要素に切り替える切替イベントの準備をするための動作指令を製造モジュールへ送信する。システムはまた、現在のリスク状態についての通知を各ターゲットへ送信する。
【0085】
総リスク値が80%の閾値を超えることによって変化が検出されると、CUは制御モード4を作動する。この制御モード4は、現在の動作期間の満了後(たとえば1日以内)に製造プロセスを終了することと、切替イベントの準備をすることと、を含むことができる。リスク変化を求めるための更新頻度を、切替イベントが行える頻度より高く選択すると、有利となり得る。これによって、切替指令が製造装置へ送信される前に、最近のリスク変化を含めたいかなるリスク再評価も制御システムによって考慮できることが保証される。システムはまた、現在のリスク状態についての通知を各ターゲットへ送信する。
【0086】
総リスク値が90%の閾値を超えることによって変化が検出されると、CUは制御モード5(緊急モード)を作動する。この制御モード5は、現在の動作期間中(たとえば1時間以内)に製造プロセスを終了することと、切替イベントの準備をすることと、を含むことができる。システムはまた、現在のリスク状態についての通知を各ターゲットへ送信する。
【0087】
図3に示されているものと同一または類似のスキームを、たとえば処理、分析/試験/スクリーニング(高スループットスクリーニングを含む)、サプライチェーン、調達、販売、ソフトウェア公開、R&D、シミュレーションプロセス等のリスク関連の他のプロセスに適用することもできる。
【0088】
一実施形態では、上記の制御モード2~5のいずれか1つのモードにおいて、CUは現在製造中のアイテムに関して最も関連する特許を得るため、自動的な特許性/有効性評価の要求をIRAサブモジュールへ送信することができる。
【0089】
一実施形態では、CUは自動的に、リスク評価部とのインタラクションで設計上の選択肢を探索して、最良の総リスク値を有する選択肢を選択するように構成されている。
【0090】
一実施形態では、CUは、1つまたは複数の製造モジュールに対する保守措置を、製造プロセスが停止された後に予定するように構成されている(動作指令の終了を行う制御モード4および5)。かかる場合には、各製造モジュールの保守状態の公の通知(たとえば「システムは・・・現在保守中である」)が制御システムの出力手段(たとえばモニタ、タッチスクリーン、音声出力等)によって自動的に公開され、かつ/または各製造モジュールの(1人または複数人の)操作員へ送信される。
【0091】
以下、自動的なリスクベース製造制御システムの本発明のコンセプトの用途を詳解するため、一部の複数のシナリオ例を説明する。
【0092】
第三者の特許(たとえば欧州特許第9999999号)がリスク評価部(IRAサブモジュール)によって監視されている。本件特許は欧州において付与されており、関連する請求項1を有し、製造モード中の特定のアイテム(すなわち、当該アイテムが既に製造中であるか、または製造が予定されている)がこの関連の請求項1を侵害する可能性がある。IRAサブモジュールはこの状況で、以下のステップを有するリスク評価を要するトリガイベントを検出する:
a)(たとえばグーグルの従来技術のFinder等のツールを使用した)EP9999999の関連する請求項を無効にするために有効な従来技術の自動探索、
b)たとえば、EP9999999の請求項1の文言との比較における意味論的従来技術探索の類似度をアセスメントすることによる、ステップa)で発見された従来技術の自動的な関連性検査、
c)ステップb)における関連性検査の結果に依存して、IRAは、当該特定のアイテムのIP総リスク値の変化を生じさせる、対応するIPアセスメントパラメータ(IPリスクファクタ)を調整する。たとえば、ステップa)で発見された従来技術が、IRAによって関連性が高いまたは新規性を喪失させるとみなされる場合には、対応するIPアセスメントパラメータはEP9999999の特許査定後、全くまたはほぼ変更されないままである。たとえば、ステップa)において従来技術が発見されなかった場合は、対応するIPアセスメントパラメータはEP9999999の特許査定後に有意に変化することとなり、これによってIP総リスク値が有意に変化(たとえば増加)し得る。
【0093】
図5は制御システム100の一実施形態を示しており、制御システム100はさらに、処理対象の他のアイテムの自動探索を実施するように構成されたモジュール130(ASPA)を備えている。ASPAモジュール130は、IPL対象関連の代替構成要素の自動探索を実施するように構成されたサブモジュール131(ASIPA)と、非IPL対象関連の代替構成要素の自動探索を実施するための他のサブモジュール132(ASNIPA)とを備えることができる。当業者であれば、製造を他のアイテムに自動的に切り替えるように製造システムが判断するために必要な関連する情報を検索するための各データベースと組み合わせて、公知の探索技術を使用することができる。
【0094】
ASIPAサブモジュール131は、製造アイテムの1つまたは複数の他のソリューション(以下「ASIPAソリューション」という)を出力することができる。ASIPAソリューションは、IRA/NIRAサブモジュール111,112によって当該ASIPAソリューションの関連付けられたIP/非IPリスクに関して評価されることができる。たとえば、技術的リスク等(たとえばアイテムの技術的実行可能性)の非IPリスクを評価するためには、オプションとしてNIRA112を自動的な高速スクリーニングまたは試験装置に通信結合することができ、その高速スクリーニングまたは試験の結果を技術的リスクまたは非IPリスクに変換することができる。総リスク値は、各他のソリューションに係るIPリスクおよび非IPリスクに基づいて算出される。1つのASIPAソリューションによって、製造モード中の現在のソリューション(すなわち、現在製造されているまたは製造を予定されているアイテム)より総リスク値が良好になる場合は、リスク評価部は、製造プロセスを現在のソリューションからASIPAソリューションに切り替えるための信号をCUへ出力することができる。
【0095】
ASNIPAサブモジュール132は、いかなるIPL対象関連事項も考慮することなく他の構成要素の自動探索を実施することができる。たとえば、ASNIPAは技術的な他の構成要素を探索することができ、特定された他の構成要素の技術的実行可能性を判断するために、(たとえばNIRAサブモジュール112を介して)ASNIPAを自動的な高速スクリーニングまたは試験装置に通信結合することができる。そのASNIPAソリューションは、IRA/NIRAサブモジュールによってIP/非IPリスクに関して評価されることができる。その際にも、特定された他のソリューションの総リスク値は、IPリスク値と、対応する非IPリスク値とに基づいて算出される。特定されたASNIPAソリューションが、製造モード中の現在のソリューションより良好な総リスク値を有する場合は、リスク評価部は、製造プロセスを現在のソリューションからこの特定されたASNIPAソリューションに切り替えるための信号をCUへ出力することができる。
【0096】
図4は、オプションのASPAモジュール130の機能を制御するために使用できる決定木4000を示している。関連するIPL対象関連のイベントがリスク評価部によって検出される(4100)。たとえば、現在の(現在製造中または現在予定されている)アイテムに関連する請求項を有する特許が付与される。
【0097】
その後、リスク評価部は自己の自動探索機能を使用して(適切な探索ツールを用いて)、関連する請求項を無効にできる有用な従来技術があるか否かを特定することができる。この探索が成功し、有用な従来技術が特定された場合(4110)、現在のアイテムに係るIPリスクを変更なしで維持することができる。有用な従来技術を特定できない場合(4120)、現在のアイテムに係る各IP部分リスクが増加する。その結果として、他にリスク相殺がなされない場合には、現在のアイテムに係る総リスク値も増加する。ここで、制御システムはオプションのASIPAサブモジュールを使用して、現在のアイテムの総リスク値より低い総リスク値を有する他のソリューションを探索することができる。かかる他のASIPAソリューションを特定できた場合、CUは、製造を現在のアイテムからこの特定されたASIPAソリューションに切り替える(4121)ための動作指令を製造装置へ送信することができる。しかし、この他のASIPAソリューションの探索は失敗し得る(4122)。かかる場合は、ASNIPAサブモジュールを使用して、現在のアイテムの総リスク値より低い総リスク値を有する他のASNIPAソリューションを探索することができる。他のASNIPAソリューションを特定できた場合、CUは、製造を現在のアイテムからこの特定されたASNIPAソリューションに切り替える(4122‐1)ための動作指令を製造装置へ送信することができる。他のASNIPAソリューションを特定できない場合、CUは、現在の総リスク値に関連付けられている制御モード(たとえば通常動作状況または緊急状況。
図3参照)に応じて製造を終了する(4122‐2)ための動作指令を製造装置へ送信することができる。
【0098】
IPL対象の関連する請求項、特にIPR対象もしくは特許の関連する請求項、および/または特にIPR対象もしくは特許であるIPL対象において請求項に既に記載されたまたは記載することができる関連する主題が、
(1)特定のアイテム、化合物、構造、材料、成分および/または物質分類への限定[かかる限定を「(Li1)」という]、ならびに/もしくは
(2)特定の範囲、物理的パラメータ、非物理的パラメータ、物理的パラメータ範囲および/または非物理的パラメータ範囲への限定[かかる限定を「(Li2)」という]、ならびに/もしくは
(3)特定のプロセス、手法、工程および/または工程順序への限定[かかる限定を「(Li3)」という]、ならびに/もしくは
(4)特定の使用および/または目的への限定[かかる限定を「(Li4)」という]、ならびに/もしくは
(5)特定の条件付き限定[かかる限定を「(Li5)」という](たとえば、特定の条件が満たされている場合のみ、特定のアイテム、化合物、構造、材料、成分、物質分類、範囲、物理的パラメータ、非物理的パラメータ、物理的パラメータ範囲、非物理的パラメータ範囲、プロセス、手法、工程、工程順序、使用、目的への限定を適用できる旨の条件付き限定等)、ならびに/もしくは
(6)特定の除外および/またはディスクレーマー放棄をIPL対象の請求項および/またはIPL対象の請求項に既に記載されたまたは記載することができる主題に含まないようになされる限定[かかる限定を「(Li6)」という]、ならびに/もしくは
(7)IPL対象に係る出願当初および/または以前提出されたときの特許請求の範囲に含まれていなかった限定[かかる限定を「(Li7)」という]、ならびに/もしくは
(8)対応する独立請求項または高順位の請求項であって、リスク評価部によって無効である、無効である可能性が非常に高い、または無効である可能性が高いとみなされた独立請求項または高順位の請求項に含まれていなかった限定[かかる限定を「(Li8)」という]
を含む場合、ASIPAサブモジュールは当該限定を自動的に特定し、当該限定(Li1),(Li2),(Li3),(Li4),(Li5),(Li6),(Li7)および/または(Li8)の中で当該特定された限定に該当しない他のソリューションを自動探索することができる。
【0099】
「関連する」との用語は、請求項に既に記載されたまたは記載することができる主題または請求項と共に用いる場合、当該主題または請求項が総リスク値またはIP総リスク値に影響を及ぼして、総リスク値またはIP総リスク値がたとえば既定値、閾値等の特定の値を超えることを意味する。
【0100】
「他の」との用語は、他のアイテム、化合物、構造、材料、成分、物質分類、範囲、物理的パラメータ、非物理的パラメータ、物理的パラメータ範囲、非物理的パラメータ範囲、プロセス、手法、工程、工程順序、使用および/または目的を意味する。
【0101】
ASIPAサブモジュールが限定(Li7)を特定した場合、ASIPAサブモジュールは第一に、IPL対象に係る(a)関連する請求項および/または主題と(b)出願当初および/または以前提出された特許請求の範囲との「デルタ領域」すなわち差分領域において他のソリューションの自動探索も行う。
【0102】
ASIPAサブモジュールが限定(Li8)を特定した場合、ASIPAサブモジュールは第一に、(a)関連する請求項および/または主題と(b)リスク評価部によって無効である、無効である可能性が非常に高い、または無効である可能性が高いとみなされた、対応する独立請求項または高順位の請求項との「デルタ領域」すなわち差分領域において他のソリューションの自動探索も行う。
【0103】
以下のシナリオ例は、ASPAモジュールと、特にそのASIPAサブモジュールの動作を詳細に説明するものである。以下のシナリオ全てに係る一般的な前提の概要は、以下の通りである:
【0104】
現在のアイテムは、「90重量%のエタノール(アルコール類を代表するもの)+8重量%の酢酸(カルボン酸類を代表するもの)+2重量%のグルコース(単糖類を代表するもの)の組成例で製造され、床洗浄剤として使用される。均等範囲およびクレーム解釈の問題についての国内の規定または司法判断が、ASIPAによって考慮される。たとえば独国については、ASIPAは独国連邦裁判所判決「閉塞装置」事件(BGH,X ZR 16/09)、「ジグリシジル化合物」事件(BGH,X ZR 69/10)および「切断機用刃第1事件」(BGH,X ZR 168/00)に基づく判例を考慮する。
【0105】
シナリオ1:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定の化合物/構造/成分/分類の限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物」と解される。ASIPAは、当該請求項がアルコールのこの一部への特定の化合物限定を含んでいると自動的に認識することができ、対応するデータベースにおける類似探索を介して、またはEP9999999もしくは他の特許文献における探索を介して、エタノールに代わる他のアルコールを自動探索する。たとえば、化学構造データベースにおける探索は、メタノールおよびプロパノールが、エタノールと置き換わる最も類似する構造のアルコールであると特定することができる。当該特許文献における探索により、EP9999999の当初の特許出願の当該請求項は「エタノール/プロパノール+カルボン酸+単糖類」と解されることを発見することができ、さらに他の特許文献において、かかる場合にはエタノールをプロパノールと置き換えることができる旨を発見することができる。当該関連する請求項に包含される成分の代わりになり得る代替成分を自動的に特定するため、ウェブベースのサーチエンジン(たとえばグーグル)を用いた類似探索を使用することもできる。ASIPAサブモジュールはその後、たとえば
・「エタノールをメタノールと置き換える」または
・「エタノールをプロパノールと置き換える」
等の他の推奨ソリューションを出力することができる。
【0106】
シナリオ2:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定の範囲/物理的パラメータの限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「88~92重量%のエタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物」と解される。ASIPAは、当該請求項がアルコールのこの一部について特定の範囲限定を含んでいると自動的に認識し、たとえば、
・「90重量%のエタノールを85重量%のエタノールと置き換える」、または
・「90重量%のエタノールを95重量%のエタノールと置き換える」、または
・「90重量%のエタノールを90重量%のメタノールと置き換える」、または
・「90重量%のエタノールを90重量%のプロパノールと置き換える」
等の他の推奨ソリューションを出力することができる。
【0107】
シナリオ3:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定のプロセス/手法/工程/工程順序の限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物であって、当該単糖類は最初にエタノール中に完全に溶解される組成物」と解される。ASIPAは、当該請求項が単糖類の溶解に関する特定のプロセス/工程順序の限定を含むことを自動的に認識することができ、たとえば、
・「90重量%のエタノール+8重量%の酢酸+2重量%のグルコースを含む組成物であって、グルコースを最初に酢酸中に完全に溶解した組成物」
等の他の推奨ソリューションを出力する。
【0108】
シナリオ4:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定の使用/目的の限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物の、カーペット洗浄剤としての使用」と解される。ASIPAは、当該請求項が特定の使用/目的の限定を含むことを自動的に認識することができ、製造された組成物の使用をチェックし、たとえば、
・「当該組成物は、カーペット以外の床材、たとえばラミネート床材、木製床材またはタイル床材等にのみ使用することができる」
等の他の推奨ソリューションを出力する。
組成物の使用がラベルに印刷されている場合、ASIPAはたとえば、「カーペットの洗浄に使用しない」との文言を含むことによってラベルを変更するプロセスをトリガすることができる。
【0109】
シナリオ5:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定の条件付き限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物であって、カルボン酸が酢酸である場合、単糖類はグルコースであり、カルボン酸がプロピオン酸である場合、単糖類はガラクトースである組成物」と解される。ASIPAは、当該請求項が特定の条件付き限定を含んでいることを自動的に認識することができ、たとえば、
・「酢酸をプロピオン酸と置き換える」または
・「グルコースをガラクトースと置き換える」
等の他の推奨ソリューションを出力することができる。
【0110】
シナリオ6:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、特定の除外/ディスクレーマーを含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物であって、当該カルボン酸はプロピオン酸ではない組成物」と解される。ASIPAは、当該請求項が特定の除外/ディスクレーマーを含んでいることを自動的に認識することができ、たとえば、
・「酢酸をプロピオン酸と置き換える」
等の他の推奨ソリューションを出力することができる。
【0111】
シナリオ7:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項が、当該第三者の当該特許出願の出願当初の請求項に対して特定の限定を含んでいる。たとえば、当該関連する請求項は「エタノール+酢酸+単糖類を含む組成物」と解される。出願当初の対応する請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物」と解される。ASIPAは、当該関連する請求項が、特許手続中に導入されたカルボン酸の当該一部への特定の限定を含んでいることを自動的に認識することができ、たとえば、
・「酢酸をギ酸と置き換える」または
・「酢酸をプロピオン酸と置き換える」
等の、当該請求項限定に応じた他の推奨ソリューションを出力することができる。
ASIPAは第一に、出願当初の請求項と当該関連する請求項との「デルタ領域」(差分領域)において他のソリューションを探索することができる。
【0112】
シナリオ8:付与された第三者の特許(たとえばEP9999999)の関連する請求項は、より広い独立請求項1の従属請求項であり、独立請求項1はリスク評価部によって無効であるとみなされ、当該従属請求項は有効かつ関連するとみなされる。当該関連する従属請求項は「エタノール+酢酸+単糖類を含む組成物」と解される。その独立請求項は「エタノール+カルボン酸+単糖類を含む組成物」と解される。たとえば、独立請求項はリスク評価部によって、「エタノール+プロピオン酸+グルコースを含む組成物」を開示する非特許先行技術文献(たとえば、IPデータベースのうちいずれか1つにおいてアクセス可能な先行技術文献)に基づき無効であるとみなされるとする。ASIPAは、当該関連する請求項が、無効の独立請求項に対してカルボン酸の当該一部への特定の限定を含んでいることを自動的に認識することができ、たとえば、
・「酢酸をギ酸と置き換える」または
・「酢酸をプロピオン酸と置き換える」
等の、当該請求項限定に応じた他の推奨ソリューションを出力することができる。
ASIPAは、対応する独立請求項または高順位の請求項がリスク評価部によって無効とみなされた理由を自動的にチェックすることができ、無効のアセスメント結果が先行技術文献に基づいている場合、ASIPAはその先行技術文献を分析することができる。対応する特許権が消滅、期間満了または放棄された特許先行技術または非特許先行技術の場合、ASIPAは当該先行技術ソリューション(たとえば先行技術組成物)と同一のソリューションすなわち組成物に、(独国「フォルムシュタイン抗弁」の規範(BGH 29.04.1986X ZR 28/85)によって最も好適な他のソリューションとの標識を付することができる。
【0113】
有利には、ASIPAは第一に、無効な従属請求項と次の従属レベルの関連する有効な従属請求項との「デルタ領域」(差分領域)において他のソリューションを探索することができる。ASIPAによって他のソリューションが他に特定できない場合は、ライセンス締結を他のソリューションとみなすことができる。IPリスク値の計算に際しては、IRAサブモジュールが、既に締結されたライセンス合意の一部にEP9999999が含まれ得るか否かを検査することもできる。
【0114】
ASPAモジュールが他の推奨を提示するどのシナリオにおいても、リスク評価部は制御ユニットと共に、最も低い総リスク値を有する他のアイテムを自動的に選択する点に留意すべきである。2つ以上の他のアイテムが同一の最も低いリスク値を有する場合、1つの他のアイテムが制御システムによって選択される。この選択は無作為とすることができ、または他の判断基準に基づくこと、たとえば他のアイテムの商業的可能性、製造を切り替えるために必要な労力、保守要件または製造モジュール等の他の検討事項等に基づくことができる。
【0115】
特定のアイテムの総リスク値が既定の閾値を超え、かつASPAモジュールによって推奨された全ての他のアイテムの総リスク値が、当該特定のアイテム(I1)の総リスク値より高い場合、または当該特定のアイテム(I1)の総リスク値より有意に低くない場合、制御ユニット(120)は他のアイテム(I2)を処理するための動作指令の実行を開始することなく、当該特定のアイテム(I1)を処理する動作指令の実行の終了を開始する。「有意に低くない」とは、他のアイテムの総リスク値と特定のアイテムの総リスク値との差が既定の閾値の差値を超えないことを意味する。
【0116】
図6Aおよび
図6Bは、制御システムの制御ユニットCUによって送信された動作指令に応答して、リスク評価部によって供給された結果に基づいてなされる、製造装置の自動製造切替を表す2つの表610,620である。表610,620の各列の定義は、以下の通りである:
t: 製造のタイムライン(単位:日)
アイテム: アイテム番号(I1~I8)
C1: 構成要素1
C2: 構成要素2
C3: 構成要素3
RNIP: 非IPリスク値
RIP: IPリスク値
Rt: 総リスク値
PO L1: 製造ラインL1の製造産出量
【0117】
これらの実施例では、化学製品I1~I8は構造/機能クラスA,BおよびCの構成要素C1~C3から成る。C1は、Aの構造/機能クラスに属する分子A_1またはA_2とすることができる(一具体例として、C1はアルコールであり、A_1はエタノールであり、A_2はプロパノールである)。C2は、Bの構造/機能クラスに属する分子B_1またはB_2とすることができる(一具体例として、C2はカルボン酸であり、B_1は酢酸であり、B_2はプロピオン酸である)。C3は、Cの構造/機能クラスに属する分子C_1またはC_2とすることができる(一具体例として、C3は単糖類であり、C_1はグルコースであり、C_2はガラクトースである)。製品/アイテムI1~I8は全て、同一の技術的特性を有する。
【0118】
図6Aの実施例では、製品/アイテムI1~I8は、当該製品のうち少なくとも1つの製品のリスクが変化した場合に製造装置(製品ラインL1)によって製造できる既定の他の製品であると仮定する。また、製造ラインL1は同一日に1つの製品しか製造することができないと仮定する。第0日には、リスク評価部が、第1日の製造を計画するためにアイテムI1~I8のリスク値を計算する。本実施例では、総リスク値RtはRt=0.5×RNIP+0.5×RIPとして計算される。最も低い総リスク値は、RNIP値が10%、RIP値が20%であるアイテムI1のRt(I1)=15%として計算される。よって、アイテムI1の製造が第1日に予定される。
【0119】
第1日に、制御ユニットCUから受け取った動作指令に従って、総リスク値に基づいて製造が開始される。リスク評価部は、製造が開始する前にアイテムI1~I8の全てのリスク値を再計算し、リスク値を周期的に更新することができる。本実施例では、全てのリスク値が変更なしで維持される。依然として最も低い総リスク値を有するアイテムであるアイテムI1について、製造ラインL1が開始される。L1は一度に1つのアイテムしか製造できないので、アイテムI1についてのL1の製造産出量は100%になる。
【0120】
第2日に、L1がI1の製造を開始する前または開始した後のいずれかにおいて、製品中に「A_1+B_1+C_1およびA_1+B_1+C_2」の組み合わせが含まれる旨を記載した請求項1を有する第三者の特許EP9999999が欧州(EP)において付与されたことを、リスク評価部が認識する。IRAサブモジュールはこの情報を、公共のIPデータベース(たとえば欧州特許庁の案件調査データベース)における特許EP9999999の各データファイルのステータス変化から検索することができる。この受け取ったステータス情報と特許付与された請求項とに基づいて、リスク評価部は、EP9999999の特許付与された請求項1の有効性アセスメントを行うこともできる。本実施例では、リスク評価部は既定の有効性アセスメント規則に従って、50%を超える有効性確率を算出する。これによって、影響を受ける製品I1およびI3のIPリスク値RIPが、第1日の20%から第2日の70%に増加する。RNIP値は変更なしで維持され、その結果、アイテムI1の総リスク値Rtは40%になり、アイテムI3の総リスク値Rtは55%になる。他のアイテムの総リスク値も変化しない。本実施例では、第2日のI1の製造産出量PO L1は変化しないままである。その理由は、総リスク値が25%増加しても、製造の即座の終了を要求する緊急制御モードをトリガしないからである。この時点で、最も低い20%の総リスク値Rtを有するアイテムはアイテムI2となる。よって制御ユニットCUは、リスク評価部によって供給された新たな総リスク値に基づく制御モードでL1の製造をI2に切り替える準備をする。これは、組み込まれた変更コスト計算ツール(CCC)を用いた製造切替のコストの計算を含むことができる。
【0121】
第3日には、リスク評価部が、第2日に製品I1~I8について計算された総リスク値を確認する。CCC計算によれば、I1からI2への製造切替に係る追加のコストまたはリスクはない。よって第3日には、CUはI1からI2への製造切替を開始し、製造装置L1は、制御ユニットから受け取った動作指令に従って動作することとなり、アイテムI2に係るL1の製造産出量は100%になる。
【0122】
図6Bの実施例では、アイテムI1は、L1によって製造される予定の製品であると仮定する。I1の総リスク値が増加してI1の製造の終了を要する既定の閾値を超えた場合にL1によって製造できる他の製品は、既定されていない。本実施例でも、製造ラインL1は同一日に1つの製品しか製造することができない。
【0123】
第0日の計画期間中、リスク評価部は10%のRNIP値と20%のRIP値とに基づいて、製品I1の総リスク値Rtを15%として算出する。アイテムI1は唯一の製品であるから、当然、最も低い総リスク値を有するアイテムでもあり、よってI1は、翌日にL1での製造を予定される。
【0124】
第1日に、製造の開始前または開始後、リスク評価部はアイテムI1のリスク値を再計算し、全てのリスク値が変化なしのままであると判断する。よって、第1日では、L1でのI1の製造産出量は100%になる。その後第1日中に、公共のIPデータベースのステータス変化が、製品中に「A_1+B_1+C_1およびA_1+B_1+C_2」の組み合わせが含まれる旨を記載した請求項1を有する第三者の特許EP9999999がEPにおいて付与されたことを示す。IRAサブモジュールが(たとえば、IPまたは特許監視リストに含まれる特許に関するステータス情報の周期的にスケジューリングされたスキャンによって)この情報を検索し、EP9999999の請求項1の有効性アセスメントを実施することができる。このアセスメントに基づき、リスク評価部は、影響を受ける製品I1についてIR総リスク値の20%から70%への増加を算出する。ここでは、RNIP値の計算結果は変化なしのままである。25%の総リスク値の増加によって、製造の切替を要するがI1の製造の即座の終了を要しない制御モードがトリガされる。
【0125】
よって第2日には、他のアイテムがないので、製品I1についてL1の製造産出量が依然として100%である。しかし、制御システムはこの時点で、ASPAモジュールを用いて他の製品を探索することができる。たとえば第2日に、ASIPAサブモジュールが、製造プロセスにおいてI1と置き換えるための他のASIPAソリューションとして、アイテムI2~I8を特定することができる。リスク評価部は、特定された他の製品のリスク値計算を行い、最も低い総リスク値Rt(20%)を有する製品として製品I2を特定する。I1の総リスク値は変化しないので、I2が最も低い総リスク値を有する製品となり、その製造が翌日(第3日)に予定される。これも、組み込まれたCCC計算ツールを用いた切替のコストの計算を含むことができる。本実施例では、第2日のL1の製造産出量は、計算された総リスク値に基づいてCUが製造をI1からI2へ切り替える準備をしている間、変化なしのままである(I1について100%)。
【0126】
第3日には、リスク評価部が、第2日の製品I1~I8の総リスク値を確認する。さらに、I1からI2への切替に係る追加のコストまたはリスクがないことを、OCCが判定する。よって第3日には、CUはI1からI2への製造切替を開始し、製造装置L1は、制御ユニットから受け取った動作指令に従って動作することとなり、アイテムI2に係るL1の製造産出量は100%になる。
【0127】
以下の実施形態のリストは、本発明の他の変形態様を示している。
【0128】
実施形態X1:製造装置(200)により実施されるプロセスを制御するための制御システム(100)であって、
製造装置(200)を動作させるためのプロセス制御データ(311)であって、1つまたは複数の物理的なアイテム(I1,I2)とその各構成要素(C1~Cn)とを自動的に処理するように製造装置(200)を制御するための動作指令に関するプロセス制御データ(311)を、データ供給モジュール(310)から取得するように構成された第1のインタフェース(191)と、
各構成要素(C1~Cn)に関連付けられた部分リスク値に基づいてアイテムごとに総リスク値を求め、さらに、求めた総リスク値の変化を検出するように構成されたリスク評価モジュール(110)と、
制御ユニット(120)と
を備えており、
制御ユニット(120)は、
第1の動作期間(OTV1)中、求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する特定のアイテム(I1)を処理するための動作指令の実行を、第2のインタフェース(192)を介して開始し、
求められた総リスク値の変化によって他のアイテム(I2)が最も低い総リスク値を有することとなる場合、または特定のアイテム(I1)に関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合、当該特定のアイテム(I1)を処理するための動作命令の実行の終了を開始し、
求められた総リスク値の変化によって他のアイテム(I2)が最も低い総リスク値を有することとなる場合、第2の動作期間(OTV2)中に他のアイテム(I2)を処理するための動作指令の実行を、第2のインタフェース(192)を介して開始する
ように構成されている、制御システム(100)。
【0129】
実施形態X2:他のアイテム(I2)は特定のアイテム(I1)と物理的に同一であり、かつ他のアイテム(I2)に適用されるプロセスは、特定のアイテム(I1)に適用されるプロセスとは異なる、実施形態X1の制御システム(100)。
【0130】
実施形態X3:他のアイテム(I2)は特定のアイテム(I1)と物理的に異なる、実施形態X1の制御システム(100)。
【0131】
実施形態X4:求められた総リスク値の変化は、他のアイテム(I2)が最も低い総リスク値を有し、かつ当該他のアイテム(I2)の当該総リスク値と当該特定のアイテム(I1)の更新された総リスク値との差が既定の閾値の差値を超える結果をもたらすものである、実施形態X1の制御システム(100)。
【0132】
実施形態X5:他のアイテム(I2)は、特定のアイテム(I1)に類似の機能または非常に類似の機能または同一の機能を果たすことによって、当該特定のアイテム(I1)の製品仕様に準拠するものである、実施形態X1からX4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0133】
実施形態X6:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する非IPリスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX5までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0134】
実施形態X7:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX6までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4またはX5の制御システム(100)。
【0135】
実施形態X8:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX7までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4またはX5の制御システム(100)。
【0136】
実施形態X9:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX8までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4またはX5の制御システム(100)。
【0137】
実施形態X10:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX9までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0138】
実施形態X11:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の一般的な法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX10までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0139】
実施形態X12:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の技術上の法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX11までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0140】
実施形態X13:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の商業上の法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX12までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0141】
実施形態X14:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のトランザクション法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX13までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0142】
実施形態X15:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の規制上の法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態X1からX14までのいずれか1つ、とりわけ実施形態X1,X4,X5またはX9の制御システム(100)。
【0143】
実施形態X16:第1のインタフェース(191)はさらに、IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数のIPデータベース(320)から検索するように、かつ/または非IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数の非IPデータベース(330)から検索するように構成されている、実施形態X6からX15までのいずれか1つ、特に実施形態X9の制御システム(100)。
【0144】
実施形態X17:第1のインタフェース(191)はさらに、IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数のIPデータベース(320)から検索するように、かつ/または非IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数の非IPデータベース(330)から検索するように構成されており、リスク評価モジュール(110)はさらに、1つまたは複数のIPデータベース(320)内の対応するIPL対象の状態変化の結果として部分リスク値の変化に基づき、特定のアイテムの総リスク値の変化を検出するように構成されている、実施形態X6からX15までのいずれか1つ、特に実施形態X9の制御システム(100)。
【0145】
実施形態X18:制御システム(100)はさらに、
特定のアイテム(I1)に関連付けられた総リスク値の検出された変化が既定の閾値を超える場合、当該特定のアイテム(I1)に関して他のアイテムの自動的な探索を実施するように構成されている自動探索ツール(130)
を備えており、
探索の結果は他のアイテム(I2)を含む、
実施形態X16またはX17の制御システム(100)。
【0146】
実施形態X19:自動探索ツール(130)はさらに、
IPリスク値を分析して、特定のアイテム(I1)のIPリスク値より低いIPリスク値を有する1つまたは複数の他のアイテムを特定することによって、特定のアイテムの自動的な探索を行うように構成された第1のサブモジュール(131)と、
非IPリスク値を分析して、特定のアイテム(I1)の非IPリスク値より低い非IPリスク値を有する1つまたは複数の他のアイテムを特定することによって、他のアイテムの自動的な探索を行う第2のサブモジュール(132)と
を備えている、実施形態X18の制御システム(100)。
【0147】
実施形態X20:他のアイテム(I2)の物理的構成は特定のアイテム(I1)の物理的構成と一致し、CU(120)は、他のアイテムのIPリスク値の分析の結果に従って印刷情報を調整するための動作指令を製造装置の印刷モジュール(PMn)へ供給する、実施形態X1からX19までのいずれか1つ、特に実施形態X19の制御システム(100)。
【0148】
実施形態X21:特定のアイテムの特定の総リスク値の変化は、1つまたは複数の特定の構成要素のリスク寄与度に関連付けられており、
制御ユニット(120)はさらに、
対応するデータベースにおいて、少なくとも1つの類似または非常に類似の構造、機能および/または技術的特徴を有する構成要素を探索することによって、当該特定のアイテムについて、より低いリスク値寄与度を有する代替要素として1つまたは複数の他の構成要素を特定し、
当該特定のアイテムの総リスク値が最も低い総リスク値となるように、1つまたは複数の特定の構成要素のうち少なくとも1つを、特定された他の構成要素と置き換える
ように構成されている、実施形態X1からX20までのいずれか1つ、特に実施形態X9の制御システム(100)。
【0149】
実施形態X22: 制御ユニット(120)はさらに、
第1の制御モードでは、特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を第1の動作期間の終了時に終了し、
第2の制御モードでは、特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を第1の動作期間中に終了する
ように構成されている、実施形態X1からX21までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0150】
実施形態X23:製造装置(200)は、化学プロセスを実施し、または試験製造を実施するように構成されている、実施形態X1からX22までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0151】
実施形態X24:リスク評価モジュール(110)はさらに、求められたリスク値のうち少なくとも1つのリスク値の特定の変化が既定の許容範囲を超える場合、求められた総リスク値の変化を検出するように構成されている、実施形態X1からX23までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0152】
実施形態X25:制御システムによって製造装置を制御するために実施されるプロセス制御方法(1000)であって、
前記プロセス制御方法(1000)は、
製造装置を動作させるためのプロセス制御データであって、1つまたは複数の物理的なアイテムとその各構成要素とを自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令に関するプロセス制御データを、データ供給モジュールから取得するステップ(1100)と、
アイテムごとに、各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるステップ(1200)と、
第1の動作期間中、求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップ(1300)と、
求めた総リスク値の変化を検出するステップ(1400)と、
求めた総リスク値の変化によって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、または特定のアイテムに関連付けられた総リスク値の変化が既定の閾値を超える場合、当該特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了を開始するステップ(1500)と、
求めた総リスク値の変化によって他のアイテムが最も低い総リスク値を有することとなった場合、第2の動作期間中に、他のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップ(1600)と
を有する、プロセス制御方法(1000)。
【0153】
実施形態X26:他のアイテムは特定のアイテムと物理的に同一であり、かつ他のアイテムに適用されるプロセスは、特定のアイテムに適用されるプロセスとは異なる、実施形態X25のプロセス制御方法。
【0154】
実施形態X27:他のアイテムは特定のアイテムと物理的に異なる、実施形態X25のプロセス制御方法。
【0155】
実施形態X28:求められた総リスク値の変化は、他のアイテム(I2)が最も低い総リスク値を有し、かつ当該他のアイテム(I2)の当該総リスク値と当該特定のアイテム(I1)の更新された総リスク値との差が既定の閾値の差値を超える結果をもたらすものである、実施形態X25のプロセス制御方法。
【0156】
実施形態X29:前記プロセス制御方法はさらに、複数の物理的なアイテムの中から当該特定のアイテムの製品仕様に従って、類似の機能または非常に類似の機能または同一の機能を果たす他のアイテムを選択するステップを有する、実施形態X25からX28までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0157】
実施形態X30:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する、存続中のIPL対象に関連しない非IPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0158】
実施形態X31:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0159】
実施形態X32:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0160】
実施形態X33:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0161】
実施形態X34:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0162】
実施形態X35:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の一般的な法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0163】
実施形態X36:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の技術上の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0164】
実施形態X37:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の商業上の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0165】
実施形態X38:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のトランザクション法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0166】
実施形態X39:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の規制上の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態X25からX29までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0167】
実施形態X40:検出するステップ(1400)は、他のアイテムの総リスク値が、求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値となるように、特定のアイテムの総リスク値が増加したことを検出することを含む、実施形態X25からX39までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0168】
実施形態X41:検出するステップ(1400)は、他のアイテム(I2)の総リスク値が、求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値となるように、他のアイテムの総リスク値が減少したことを検出することを含む、実施形態X25からX39までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0169】
実施形態X42:IPデータベース内の対応するIPL対象の状態変化の結果としてのIP部分リスク値の変化によって、特定の総リスク値の変化が引き起こされる、実施形態X30からX39までのいずれか1つ、特に実施形態X33のプロセス制御方法。
【0170】
実施形態X43:各アイテムの特定のリスク値の変化は、1つまたは複数の特定の構成要素のリスク寄与度に関連付けられており、
前記プロセス制御方法はさらに、
対応するデータベースにおいて、少なくとも1つの類似または非常に類似の構造、機能および/または技術的特徴を有する構成要素を探索することによって、より低いリスク値寄与度を有する代替要素として1つまたは複数の他の構成要素を特定して、各リスク寄与度を求めるステップ
を有する、実施形態X25からX42までのいずれか1つ、特に実施形態X33のプロセス制御方法。
【0171】
実施形態X44:特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了(1500)を、第1の動作期間の終了時に行う、実施形態X25からX43までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0172】
実施形態X45:特定のアイテムを処理するための動作指令の実行の終了(1500)を、第1の動作期間中に行う、実施形態X25からX43までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0173】
実施形態X46:製造装置(200)によって実施されるプロセスを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、制御システムのメモリにロードされて当該制御システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、実施形態X25からX45までのいずれか1つのプロセス制御方法のステップを当該制御システムに実施させる指令を有する、コンピュータプログラム製品。
【0174】
図7は、本願において記載されている技術と共に使用できる一般的なコンピュータ装置900および一般的なモバイルコンピュータ装置950の一例を示す図である。計算装置900は、制御システム100(
図1参照)に関連するものである。計算装置950は、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話機、スマートフォン、およびこれらに類する他の計算装置等の、モバイル装置の種々の形態を代表するものである。本願開示内容では、計算装置950は、制御システム900のフロントエンド制御装置として用いることができる。図中に示されている構成要素、その接続および関係、ならびにその機能は、単なる一例に過ぎず、また、本願明細書および/または特許請求の範囲に記載の発明の実施態様を限定することを意図したものでもない。
【0175】
計算装置900は、プロセッサ902と、メモリ904と、記憶装置906と、メモリ904および高速拡張ポート910に接続される高速インタフェース908と、低速拡張ポート914および記憶装置906に接続される低速コントローラ912とを備えている。各構成要素902,904,906,908,910および912は種々のバスを用いて相互接続され、1つの共通のマザーボードに搭載することができ、または適切な場合には他の態様で搭載することができる。プロセッサ902は、計算装置900において実行される指令を処理することができ、この指令は、たとえば高速インタフェース908に結合されたディスプレイ916等の外部入/出力装置上にGUIに係るグラフィック情報を表示するための、メモリ904内または記憶装置906上に記憶された指令を含む。他の実装では、複数のプロセッサおよび/または複数のバスを使用することができ、適切な場合には、複数のメモリや複数の種類のメモリと共に使用することができる。また、(たとえば、サーババンク、ブレードサーバ群、またはマルチプロセッサシステムとしての)必要な演算の一部を提供する各装置に複数の計算装置900を接続することもできる。
【0176】
メモリ904は、計算装置900における情報を記憶する。一実装では、メモリ904は1つまたは複数の揮発性メモリユニットである。他の一実装では、メモリ904は1つまたは複数の不揮発性メモリユニットである。メモリ904は、他の形態のコンピュータ可読媒体、たとえば磁気ディスクまたは光学ディスク等とすることもできる。
【0177】
記憶装置906は、計算装置900に対して大容量記憶を提供することができる。一実装では記憶装置906は、たとえばフロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光学ディスクデバイスもしくはテープデバイス、フラッシュメモリもしくはこれに類する他のソリッドステートメモリデバイス、または記憶領域ネットワークもしくは他の構成のデバイスを含むデバイスのアレイ等のコンピュータ可読媒体とすることができ、またはこれを備えることができる。コンピュータプログラム製品は、情報媒体に有形に具現化されたものとすることができる。コンピュータプログラム製品は、実行されるときに1つまたは複数の方法、たとえば上記にて記載されている方法等を実施する指令を備えることもできる。情報媒体は、たとえばメモリ904、記憶装置906、またはプロセッサ902上のメモリ等の、コンピュータ可読または機械可読媒体である。
【0178】
高速コントローラ908は、計算装置900の帯域負荷が高い演算を扱うのに対し、低速コントローラ912は、それより帯域負荷が低い演算を扱う。機能のかかる割り当ては単なる一例である。一実装では、高速コントローラ908はメモリ904、ディスプレイ916(たとえばグラフィックプロセッサまたはアクセラレータを介して)および高速拡張ポート910に結合されており、高速拡張ポート910は種々の拡張カード(図示されていない)を受容することができる。本実装では、低速コントローラ912は記憶装置906および低速拡張ポート914に結合される。種々の通信ポート(たとえばUSB、ブルートゥース、イーサネット、無線イーサネット)を備えることができる低速拡張ポートは、たとえばキーボード、ポインティングデバイス、スキャナ等の1つもしくは複数の入/出力装置に結合することができ、またはたとえばネットワークアダプタを介してたとえばスイッチもしくはルータ等のネットワーク装置に結合することができる。
【0179】
計算装置900は、図中に示されているように、多数の異なる形態で具現化することができる。たとえば、1つの標準的なサーバ920として具現化することができ、または標準的なサーバの群で多重に具現化することができる。また、ラックサーバシステム924の一部として具現化することもできる。さらに、たとえばラップトップコンピュータ922等のパーソナルコンピュータに実装することもできる。これに代えて、計算装置900の構成要素を、たとえば装置950等のモバイル装置の他の構成要素(図示されていない)と組み合わせることもできる。かかる各装置は、1つまたは複数の計算装置900,950を備えることができ、システム全体を、相互間で通信する複数の計算装置900,950から構成することができる。
【0180】
計算装置950は特に、プロセッサ952と、メモリ964と、たとえばディスプレイ954等の入/出力装置と、通信インタフェース966と、送受信器968とを備えている。装置950には、追加の記憶容量を設けるため、たとえばマイクロドライブまたは他のデバイス等の記憶装置を設けることもできる。各構成要素950,952,964,954,966および968は種々のバスを用いて相互接続され、これらの構成要素のうち複数を1つの共通のマザーボードに搭載することができ、または適切な場合には他の態様で搭載することができる。
【0181】
プロセッサ952は計算装置950において指令を実行することができ、この指令には、メモリ964に記憶された指令が含まれる。プロセッサは、複数の別個のアナログおよびデジタルのプロセッサを有するチップのチップセットとして具現化することができる。プロセッサはたとえば、装置950の他の構成要素の協調制御を行うこともでき、たとえばユーザインタフェース、装置950により実行されるアプリケーション、および装置950による無線通信の制御等の協調制御を行うことができる。
【0182】
プロセッサ952は、ディスプレイ954に結合されたディスプレイインタフェース956および制御インタフェース958を介してユーザと通信することができる。ディスプレイ954はたとえば、TFT LCD(Thin-Film-Transistor Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイまたは他の適切なディスプレイ技術とすることができる。ディスプレイインタフェース956は、グラフィック情報および他の情報をユーザに提示するためにディスプレイ954を駆動するための適切な回路を備えることができる。制御インタフェース958は、ユーザからコマンドを受け取って、このコマンドをプロセッサ952へ送信するために変換することができる。さらに、装置950と他の装置との近距離通信を行えるようにするため、プロセッサ952と通信するように外部インタフェース962を設けることもできる。外部インタフェース962はたとえば、一部の実装では有線通信を提供することができ、または他の実装では無線通信を提供することができ、複数のインタフェースを使用することも可能である。
【0183】
メモリ964は、計算装置950における情報を記憶する。メモリ964は、コンピュータ可読媒体、揮発性メモリユニットまたは不揮発性メモリユニットのうち1つまたは複数として具現化することができる。拡張メモリ974を設けて、拡張インタフェース972を介して装置950に接続することもでき、この拡張インタフェース972はたとえば、SIMM(Single In Line Memory Module)カードインタフェースを備えることができる。かかる拡張メモリ974は、装置950に対して追加の記憶空間を提供することができ、または装置950用のアプリケーションもしくは他の情報を記憶することもできる。具体的には拡張メモリ974は、上記に記載されているプロセスを実施または補助するための指令を備えることができ、また、セキュア情報を備えることもできる。よってたとえば、拡張メモリ974は装置950に対してセキュリティモジュールとして機能することができ、装置950のセキュアな使用を可能にする指令を用いて拡張メモリ974をプログラミングすることができる。さらに、SIMMカードを介してセキュアアプリケーションを追加の情報と共に設けること、たとえば、SIMMカード上に識別情報をハッキング不能に配置することができる。
【0184】
メモリはたとえば、フラッシュメモリおよび/またはNVRAMメモリを含むことができ、これについては下記にて説明する。一実装ではコンピュータプログラム製品は、情報媒体に有形に具現化されたものである。コンピュータプログラム製品は、実行されるときに1つまたは複数の方法、たとえば上記にて記載されている方法等を実施する指令を備えている。情報媒体は、たとえばメモリ964、拡張メモリ974、またはプロセッサ952上のメモリ等の、コンピュータ可読または機械可読媒体であり、たとえば送受信器968または外部インタフェース962を介して受信することができる。
【0185】
装置950は通信インタフェース966を介して無線通信することができ、この通信インタフェース966は、必要な場合にはデジタル信号処理回路を備えることができる。通信インタフェース966は、たとえば特にGSM音声通話、SMS、EMSまたはMMSメッセージング、CDMA、TDMA、PDC、WCDMA、CDMA2000またはGPRS等の種々のモードまたはプロトコルでの通信を提供することができる。かかる通信はたとえば、無線周波数送受信器968を介して行うことができる。さらに、たとえばブルートゥース、WiFiまたは他のかかる送受信器(図示されていない)等を用いて、近距離通信を行うこともできる。さらに、GPS(Global Positioning System)受信モジュール970が装置950に付加的なナビゲーション関連および測位関連の無線データを供給することもでき、この無線データは、適切な場合には、装置950上で実行されるアプリケーションによって使用することができる。
【0186】
装置950は、オーディオコーデック960を用いて可聴通信することもでき、このオーディオコーデック960は、ユーザから音声情報を受け取って、使用可能なデジタル情報に変換できるものである。オーディオコーデック960は、たとえばスピーカ等を介して、たとえば装置950のヘッドセットのスピーカ等を介して、ユーザに対して可聴音を生成することもできる。この可聴音は、音声通話からの音を含むことができ、また、録音された音(たとえばボイスメッセージ、音楽ファイル等)を含むことができ、また、装置950上で動作するアプリケーションによって生成される音を含むこともできる。
【0187】
計算装置950は、図中に示されているように、多数の異なる形態で具現化することができる。たとえば、携帯電話機980として具現化することができる。また、スマートフォン982、パーソナルデジタルアシスタント、またはこれらに類する他のモバイル装置の一部として具現化することもできる。
【0188】
デジタル電子回路、集積回路、特殊設計のASIC(application specific integrated circuits)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはこれらの組み合わせで、本願にて記載されているシステムおよび技術の種々の実装を実現することができる。これらの種々の実装は、記憶システムと少なくとも1つの入力装置と少なくとも1つの出力装置とからデータおよび指令を受信し、またこれらへデータおよび指令を送信するように結合された少なくとも1つのプログラミング可能なプロセッサを備えたプログラミング可能なシステム上にて実行可能および/または解釈可能である1つまたは複数のコンピュータプログラムでの実装を含むことができ、プログラミング可能なプロセッサは、特殊用途プロセッサまたは汎用プロセッサとすることができる。
【0189】
かかるコンピュータプログラム(「プログラム」、「ソフトウェア」、「ソフトウェアアプリケーション」または「コード」としても知られている)は、プログラミング可能なプロセッサ用の機械命令を含み、高級手続プログラミング言語および/またはオブジェクト指向プログラミング言語で、ならびに/もしくはアセンブリ言語/機械語で実装することができる。本願にて使用されている「機械可読媒体」、「コンピュータ可読媒体」との用語は、機械命令を機械可読信号として受け取る機械可読媒体を備えたプログラミング可能なプロセッサへ機械命令および/またはデータを供給するために使用される全てのコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイス(たとえば磁気ディスク、光学ディスク、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(PLD))をいう。「機械可読信号」とは、プログラミング可能なプロセッサへ機械命令および/またはデータを供給するために使用される全ての信号をいう。
【0190】
ユーザとのインタラクションを可能にするためには、情報をユーザに対して表示するためのディスプレイ装置(たとえばCRT(cathode ray tube)またはLCD(liquid crystal display)モニタ)と、ユーザがコンピュータに入力するためのキーボードおよびポインティング装置(たとえばマウスまたはトラックボール)とを備えたコンピュータ上に、本願において記載されているシステムおよび技術を実装することができる。ユーザとのインタラクションを可能にするために他の種類の装置を用いることもでき、たとえば、ユーザへ供給されるフィードバックは、あらゆる形態の感覚フィードバック(たとえば視覚フィードバック、聴覚フィードバックまたは触覚フィードバック)とすることができ、また、ユーザからの入力は、音響入力、音声入力または触覚入力を含むあらゆる形態で受け取ることができる。
【0191】
バックエンド構成要素を備えた計算装置(たとえばデータサーバ)、またはミドルウェア構成要素を備えた計算装置(たとえばアプリケーションサーバ)、またはフロントエンド構成要素を備えた計算装置(たとえば、本願にて記載されているシステムおよび技術の実装とユーザがインタラクションするためのグラフィカルユーザインタフェースまたはウェブブラウザを備えたクライアントコンピュータ)、またはかかるバックエンド構成要素、ミドルウェア構成要素もしくはフロントエンド構成要素の任意の組み合わせを備えた計算装置に、本願にて記載されているシステムおよび技術を実装することができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信のいかなる形態または媒体(たとえば通信ネットワーク)によっても、相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)およびインターネットが含まれる。
【0192】
計算装置はクライアントとサーバとを含むことができる。クライアントおよびサーバは、一般的に互いに遠隔に位置し、典型的には通信ネットワークを介してインタラクションする。クライアントとサーバとの関係は、各コンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムであって、相互間にクライアント‐サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって成立するものである。
【0193】
数多くの実施形態を記載したが、本発明の思想および範囲から逸脱せずに、種々の改良を行うことが可能であることが理解できる。
【0194】
さらに、図中に示されている論理フローは、好ましい結果を達成するために図示の特定の順序または連続順序を要求するものではない。また、他のステップを設けることができ、または記載されているフローからステップを削除することができ、また、記載されているシステムに他の構成要素を追加し、または除外することができる。よって、以下の特許請求の範囲に属する実施形態は他にも存在する。
【0195】
本発明では、実施形態の一セット(実施形態E1~E21)において以下の制御システムおよびプロセス制御方法が見出されている:
【0196】
実施形態E1:製造装置(200)により実施されるプロセスを制御するための制御システム(100)であって、
製造装置(200)を動作させるためのプロセス制御データ(311)であって、複数の物理的なアイテム(I1,I2)とその各構成要素(C1~Cn)とを自動的に処理するように製造装置(200)を制御するための動作指令に関するプロセス制御データ(311)を、データ供給モジュール(310)から取得するように構成された第1のインタフェース(191)と、
各構成要素(C1~Cn)に関連付けられた部分リスク値に基づいてアイテムごとに総リスク値を求めるように構成されたリスク評価モジュール(110)と、
制御ユニット(120)と
を備えており、
制御ユニット(120)は、
(a)求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する(a)特定のアイテム(I1)または(b)既定の閾値より低い総リスク値を有する全てのアイテム(I1,I2)を処理するための動作指令の実行を、第2のインタフェース(192)を介して開始する
ように構成されている、制御システム(100)。
【0197】
実施形態E2:制御ユニット(120)は、(a)求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する(a)特定のアイテム(I1)を処理するための動作指令の実行を開始するように構成されている、実施形態E1の制御システム(100)。
【0198】
実施形態E3:制御ユニット(120)は、(b)既定の閾値より低い総リスク値を有する全てのアイテム(I1,I2)を処理するための動作指令の実行を開始するように構成されている、実施形態E1の制御システム(100)。
【0199】
実施形態E4:アイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E3の制御システム(100)。
【0200】
実施形態E5:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する非IPリスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態E1からE4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0201】
実施形態E6:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態E1からE4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0202】
実施形態E7:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態E1からE4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0203】
実施形態E8:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態E1からE4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0204】
実施形態E9:リスク評価モジュール(110)はさらに、物理的なアイテムおよび/またはその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む部分リスク値に基づいて、総リスク値を求めるように構成されている、実施形態E1からE4までのいずれか1つの制御システム(100)。
【0205】
実施形態E10:第1のインタフェース(191)はさらに、IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数のIPデータベース(320)から検索するように、かつ/または非IPリスク値を計算するための情報を1つもしくは複数の非IPデータベース(330)から検索するように構成されている、実施形態E5からE9までのいずれか1つ、特に実施形態E8の制御システム(100)。
【0206】
実施形態E11:製造装置(200)は、化学プロセスを実施し、または試験製造を実施するように構成されている、実施形態E1からE10までのいずれか1つ、特に実施形態E8の制御システム(100)。
【0207】
実施形態E12:製造装置を制御するために制御システムにより実施されるプロセス制御方法(1000)であって、
製造装置を動作させるためのプロセス制御データであって、複数の物理的なアイテムとその各構成要素とを自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令に関するプロセス制御データを、データ供給モジュールから取得するステップ(1100)と、
各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいてアイテムごとに総リスク値を求めるステップ(1200)と、
(a)求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する特定のアイテムまたは(b)既定の閾値より低い総リスク値を有する全てのアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップ(1300)と
を有する、プロセス制御方法(1000)。
【0208】
実施形態E13:前記プロセス制御方法は、(a)求められた総リスク値のうち最も低い総リスク値を有する特定のアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップ(1300)を有する、実施形態E12のプロセス制御方法(1000)。
【0209】
実施形態E14:前記プロセス制御方法は、(b)既定の閾値より低い総リスク値を有する全てのアイテムを処理するための動作指令の実行を開始するステップ(1300)を有する、実施形態E12のプロセス制御方法(1000)。
【0210】
実施形態E15:アイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E12からE14までのいずれか1つのプロセス制御方法(1000)。
【0211】
実施形態E16:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する、存続中のIPL対象に関連しない非IPリスク値を含む、実施形態E11からE15までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0212】
実施形態E17:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E11からE16までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0213】
実施形態E18:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E11からE16までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0214】
実施形態E19:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E11からE16までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0215】
実施形態E20:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む、実施形態E11からE16までのいずれか1つのプロセス制御方法。
【0216】
実施形態E21:製造装置(200)によって実施されるプロセスを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、制御システムのメモリにロードされて当該制御システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、実施形態E12からE20までのいずれか1つのプロセス制御方法のステップを当該制御システムに実施させる指令を有する、コンピュータプログラム製品。
【0217】
本発明では、実施形態の他の一セット(実施形態E31~E40)において以下のプロセス制御方法が見出されている:
【0218】
実施形態E31:製造装置(200)を制御するために制御システム(100)により実施されるプロセス制御方法(1000)であって、
製造装置を動作させるためのプロセス制御データであって、複数の物理的なアイテムとその各構成要素とを自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令に関するプロセス制御データを、データ供給モジュールから取得するステップと、
第1の動作期間中に物理的なアイテムの第1のセット(S1)を処理するための動作指令の実行を開始するステップと、
各構成要素に関連付けられた部分リスク値に基づいて、第1のセット(S1)のアイテムごとに総リスク値を求めるステップと、
第2の動作期間中に、物理的なアイテムの第1のセットのうち、全ての物理的なアイテムが既定の閾値より低い総リスク値を有するサブセット(S2)を処理するための動作指令の実行を開始するステップと
を有する、プロセス制御方法(1000)。
【0219】
実施形態E32:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する、存続中のIPL対象に関連しない非IPリスク値を含む、実施形態E31のプロセス制御方法(1000)。
【0220】
実施形態E33:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E31のプロセス制御方法(1000)。
【0221】
実施形態E34:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E31のプロセス制御方法(1000)。
【0222】
実施形態E35:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E31のプロセス制御方法(1000)。
【0223】
実施形態E36:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む、実施形態E31のプロセス制御方法(1000)。
【0224】
実施形態E37:第1の動作期間中のアイテムの処理は、第2の動作期間中のアイテムの処理とは異なる、実施形態E31からE36までのいずれか1つ、特に実施形態E36のプロセス制御方法(1000)。
【0225】
実施形態E38:第1の動作期間中のアイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E31からE37までのいずれか1つ、特に実施形態E36のプロセス制御方法(1000)。
【0226】
実施形態E39:第1の動作期間中および第2の動作期間中のアイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E31からE37までのいずれか1つ、特に実施形態E36のプロセス制御方法(1000)。
【0227】
実施形態E40:製造装置(200)によって実施されるプロセスを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、制御システムのメモリにロードされて当該制御システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、実施形態E31からE39までのいずれか1つのプロセス制御方法のステップを当該制御システムに実施させる指令を有する、コンピュータプログラム製品。
【0228】
本発明では、実施形態の他の一セット(実施形態E51~E60)において以下のプロセス制御方法が見出されている:
【0229】
実施形態E51:製造装置(200)を制御するために制御システム(100)により実施されるプロセス制御方法(1000)であって、
製造装置を動作させるためのプロセス制御データであって、複数の物理的なアイテムとその各構成要素とを自動的に処理するように製造装置を制御するための動作指令に関するプロセス制御データを、データ供給モジュールから取得するステップと、
第1の動作期間中に物理的なアイテムの第1のセット(S1)を処理するための動作指令の実行を開始するステップと、
前記アイテムの処理中に取得された情報に基づいて、第1のセット(S1)の各アイテムごとに非IP総リスク値を求めるステップと、
(a)第1のセット(S1)の各アイテムごとに、または(b)第1のセット(S1)のうち、非IPリスク値の既定の閾値より低い非IP総リスク値を有するアイテムについて、IP総リスク値を求めるステップと、
IP総リスク値を求めた各アイテムの総リスク値を求めるステップと、
第2の動作期間中に、物理的なアイテムの第1のセットのうち、全ての物理的なアイテムがIP総リスク値の既定の閾値より低い総リスク値を有するサブセット(S2)を処理するための動作指令の実行を開始するステップと
を有する、プロセス制御方法(1000)。
【0230】
実施形態E52:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値、ならびに/もしくは物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する非IPリスク値を含む、実施形態E51のプロセス制御方法(1000)。
【0231】
実施形態E53:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPL対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E51のプロセス制御方法(1000)。
【0232】
実施形態E54:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中のIPR対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E51のプロセス制御方法(1000)。
【0233】
実施形態E55:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の法的対象に関連するIPリスク値を含む、実施形態E51のプロセス制御方法(1000)。
【0234】
実施形態E56:部分リスク値は、物理的なアイテムおよびその各構成要素に関する存続中の特許に関連するIPリスク値を含む、実施形態E51のプロセス制御方法(1000)。
【0235】
実施形態E57:第1の動作期間中のアイテムの処理は、第2の動作期間中のアイテムの処理とは異なる、実施形態E51からE56までのいずれか1つ、特に実施形態E56のプロセス制御方法(1000)。
【0236】
実施形態E58:第1の動作期間中のアイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E51からE57までのいずれか1つ、特に実施形態E56のプロセス制御方法(1000)。
【0237】
実施形態E59:第1の動作期間中および第2の動作期間中のアイテムの処理は、アイテムの試験もしくはスクリーニング、またはアイテムについての情報の取得である、実施形態E51からE57までのいずれか1つ、特に実施形態E56のプロセス制御方法(1000)。
【0238】
実施形態E60:製造装置(200)によって実施されるプロセスを制御するためのコンピュータプログラム製品であって、制御システムのメモリにロードされて当該制御システムの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、実施形態E51からE59までのいずれか1つのプロセス制御方法のステップを当該制御システムに実施させる指令を有する、コンピュータプログラム製品。
【0239】
第1段階の配合物試験と、リスク評価(IPリスク評価を含む)と、第2段階の配合物試験と、を含む制御方法の実施例EX1:
【0240】
実施例EX1の第1部(EX1P1):新規の床洗浄剤を開発するため、連続番号#1~#100が付された100個の異なる化学配合物の第1のセット(すなわち、異なる化学的組成を有する配合物)のpH値を、第1の動作期間中に第1の高スループット試験装置によって自動的に試験する。この高スループット試験によれば、配合物#1~#40は0~2の範囲のpH値を有し、これらの配合物には100%の非IP総リスク値(=RNIP)が制御システムによって自動的に割り当てられ(高リスク、たとえばエンドユーザにとって非常に危険)、配合物#41~#80は2~4の範囲のpH値を有し、これらの配合物には、50%のRNIPが自動的に割り当てられ(中程度のリスク、たとえばエンドユーザにとっての危険性は僅か)、配合物#81~#100は4~6の範囲のpH値を有し、これらの配合物には、0%のRNIPが自動的に割り当てられる(低リスク、たとえばユーザにとって安全)。このリスク値の割り当ては、制御システム内のリスク評価モジュールによって行われる。本実施例では、RNIPの既定の閾値は60%である(すなわち、60%を超えない)から、配合物#1~#40は自動的に除外され、さらに処理を受けることはない。
【0241】
実施例EX1の第2部(EX1P2):次のステップにおいて、RNIPの既定の閾値に合格した化学配合物#41~#100のIPリスクを制御システム内のリスク評価モジュールによって、特に当該化学配合物に関連する第三者の特許に関してIPデータベースを使用して自動的に特定し、この特定によれば、配合物#41~#50は0%のIP総リスク値(=RIP)を有し(低リスク、たとえば、どの特許のどのクレームの範囲にも属しない)、配合物#51~#70は50%のRIPを有し(中程度のリスク、たとえば、未だ特許査定を受けていない特許出願の係属中のクレームの範囲に属する)、配合物#71~#100は90%のRIPを有する(高リスク、たとえば、有効であると考えられる付与された特許のクレームの範囲内に属する)。本実施例では、総リスク値(=Rt)はRt=0.5×RNIP+0.5×RIPとして計算されるので、配合物#41~#50は25%のRtを有し、配合物#51~#70は50%のRtを有し、配合物#71~#80は70%のRtを有し、配合物#81~#100は45%のRtを有する。本実施例では、Rtの既定の閾値は49%である(すなわち、49%を超えない)から、配合物#51~#80は自動的に除外され、さらに処理を受けることはない。
【0242】
実施例EX1の第3部(EX1P3):次のステップにおいて、配合物の第1のセットの1サブセットを構成する配合物#41~#50および#81~#100のみが,第2の動作期間中に第2の高スループット試験装置によって、油分(台所の床に存在することが多い)を除去する能力について自動的に試験される。
【0243】
第1段階の配合物試験と、リスク評価(法的リスク評価を含む)と、第2段階の配合物試験と、を含む制御方法の実施例EX2:
【0244】
実施例EX2の第1部(EX2P1):実施例EX1の第1部(EX1P1)と同一。
【0245】
実施例EX2の第2部(EX2P2):次のステップにおいて、RNIPの既定の閾値に合格した化学配合物#41~#100のIPリスクを制御システム内のリスク評価モジュールによって、特に当該配合物(またはこれに含まれる物質)の新規の化学物質登録を申請するための、存続中の化学物質登録法(たとえばREACH)に規定する法的要件に関して、化学物質登録データベースを使用して自動的に特定し、この特定によれば、配合物#41~#50は0%のIP総リスク値(=RIP)を有し(低リスク、たとえば、必要な新規の化学物質登録はない)、配合物#51~#70は50%のRIPを有し(中程度のリスク、たとえば、新規の化学物質登録が必要であり、毒性プロファイルに問題はないので、登録を受ける確率は高い)、配合物#71~#100は90%のRIPを有する(高リスク、たとえば、新規の化学物質登録が必要であり、毒性プロファイルに問題があるので、登録を受ける確率は低い)。本実施例では、総リスク値(=Rt)はRt=0.5×RNIP+0.5×RIPとして計算されるので、配合物#41~#50は25%のRtを有し、配合物#51~#70は50%のRtを有し、配合物#71~#80は70%のRtを有し、配合物#81~#100は45%のRtを有する。本実施例では、Rtの既定の閾値は49%である(すなわち、49%を超えない)から、配合物#51~#80は自動的に除外され、さらに処理を受けることはない。
【0246】
実施例EX2の第3部(EX2P3):実施例EX1の第3部(EX1P3)と同一。
【0247】
上記2つの実施例にて示された利点は、比較的高コストまたは複雑なプロセス(たとえば、油分を除去する能力についての試験)を、アイテムの事前選択されたサブセットについてのみ行えばよいので、かかるプロセスの速度を迅速化することができ、貴重な資源を節約できることである。