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特許7174181リチウム含有塩化物及びその製造方法、並びに固体電解質及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】リチウム含有塩化物及びその製造方法、並びに固体電解質及び電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 25/00 20060101AFI20221109BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20221109BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221109BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20221109BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20221109BHJP
   C01G 35/00 20060101ALI20221109BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20221109BHJP
   C01G 19/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C01G25/00
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
C01G33/00 Z
C01G35/00 Z
C01G15/00 B
C01G19/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022060357
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2021120799
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】土居 篤典
(72)【発明者】
【氏名】陰山 洋
(72)【発明者】
【氏名】タッセル セドリック
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113097559(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113130980(CN,A)
【文献】ACS Appl. Mater. Interfaces,2020年,Vol.12,p.34806-34814
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G
H01B
H01M
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単斜晶の結晶構造を有し、
25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、
リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、
リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、
塩素のモル含有率が50~70モル%であり、
活性化エネルギーが0.380eV以下である、化合物。
【請求項2】
単斜晶の結晶構造を有し、
25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、
リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、
リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、
塩素のモル含有率が50~70モル%であり、
Li核の共鳴周波数が44.1MHzであり、無回転の条件下で室温において固体Li-NMRスペクトルを測定した際に、1mol/LのLiCl水溶液の化学シフトを1.19ppmとして、-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅が1~7ppmである、化合物。
【請求項3】
空間群C2/mに属する結晶構造を有する、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
前記金属元素Mが3価の金属元素である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
前記金属元素Mがインジウムである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
式:LiαβCl6-δεで表され、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1.1、0≦δ≦1、0<ε≦0.7である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
式:LiαInβCl6-δεで表され、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1.1、0≦δ≦1、0<ε≦0.7である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
式:Li α β Cl 6-δ X1 ε1 X2 ε2 で表され、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1.1、0≦δ≦1、0<ε1≦0.7、0<ε2≦0.7である、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む固体電解質。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含む電池。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、下記の工程(1)及び(2)を含む、製造方法。
(1)原料に対してボールミルを行って粗生成物を得る第一の工程。
(2)第一の工程によって得られた前記粗生成物に100℃以上の温度でアニーリングを行う第二の工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム含有塩化物及びその製造方法、並びに固体電解質及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の電気化学デバイスに使用される電解質として、固体電解質が注目されている(特許文献1及び非特許文献1)。固体電解質は、従来の電解液と比較して、高温耐久性、高電圧耐性等に優れるため、安全性、高容量化、急速充放電、パックエネルギー密度などの電池の性能の向上に有用であると考えられている。
【0003】
リチウムを含む固体電解質としては、LiLaZr12(LLZO)等の酸化物、LiInCl、LiYBr等のハロゲン化物、Li10GeP12等の硫化物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/220697号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Y. Tomita et al., "Substitution effect of ionic conductivity inlithium ion conductor, LI3INBR6-xCLx",Solid State Ionics, Volume 179, Issues 21-26, 15 September 2008, Pages 867-870.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ハロゲン化物は、酸化物と比較して柔軟性が高く、有害なHSを放出し得る硫化物と比較して安全性が高いという利点があるものの、硫化物よりもイオン伝導性(リチウムイオン伝導性)が低いという課題がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、イオン伝導性の高いリチウム含有塩化物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該リチウム含有塩化物を含む固体電解質及び電池、並びに当該リチウム含有塩化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の化合物は、単斜晶の結晶構造を有し、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、塩素のモル含有率が50~70モル%であり、活性化エネルギーが0.380eV以下である。
【0009】
また、本発明の化合物は、単斜晶の結晶構造を有し、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、塩素のモル含有率が50~70モル%であり、Li核の共鳴周波数が44.1MHzであり、無回転の条件下で室温において固体Li-NMRスペクトルを測定した際に、1mol/LのLiCl水溶液の化学シフトを1.19ppmとして、-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅が1~7ppmであってもよい。
【0010】
上記化合物は、空間群C2/mに属する結晶構造を有すると好ましい。
【0011】
上記金属元素Mは3価の金属元素であると好ましい。
【0012】
上記金属元素Mはインジウムであると好ましい。
【0013】
上記化合物は、式:LiαβCl6-δεで表されるものであると好ましい。
【0014】
上記化合物は、式:LiαInβCl6-δεで表されるものであると好ましい。
【0015】
上記式において、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1.1、0≦δ≦1、0<ε≦0.7であると好ましい。
【0016】
本発明の固体電解質は、上記化合物を含む。
【0017】
本発明の電池は、上記化合物を含む。
【0018】
本発明の化合物の製造方法は、下記の工程(1)及び(2)を含む。
(1)原料に対してボールミルを行って粗生成物を得る第一の工程。
(2)第一の工程によって得られた粗生成物に100℃以上の温度でアニーリングを行う第二の工程。
【発明の効果】
【0019】
本発明によればイオン伝導性の高いリチウム含有塩化物を提供することができる。また、本発明によれば、当該リチウム含有塩化物を含む固体電解質及び電池、並びに当該リチウム含有塩化物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例1及び2、並びに比較例の1~3のリチウム含有塩化物のX線回折チャートである。
図2図2は、実施例1及び2、並びに比較例2のリチウム含有塩化物の固体Li-NMRスペクトルである。
図3図3は、実施例1のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の25℃での充放電試験の結果を示す図である。
図4図4は、実施例1のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の60℃での充放電試験の結果を示す図である。
図5図5は、実施例3のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の25℃での充放電試験の結果を示す図である。
図6図6は、実施例3のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の60℃での充放電試験の結果を示す図である。
図7図7は、比較例2のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の25℃での充放電試験の結果を示す図である。
図8図8は、比較例2のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の60℃での充放電試験の結果を示す図である。
図9図9は、実施例5及び実施例6のリチウム含有塩化物のX線回折チャートである。
図10図10は、実施例9及び実施例10のリチウム含有塩化物のX線回折チャートである。
図11図11は、実施例5のリチウム含有塩化物について、縦軸をイオン伝導度、横軸を1000/T[1/K]としてプロットした図である。
図12図12は、実施例5のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の25℃での充放電試験の結果を示す図である。
図13図13は、実施例9のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いたリチウムイオン電池の25℃での充放電試験の結果を示す図である。
図14図14は、実施例5及び実施例9の二次電池について実施した充放電のサイクル試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る化合物は、単斜晶の結晶構造を有し、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、塩素のモル含有率が50~70モル%であり、以下の(A)及び(B)の少なくとも一方を満たすものである。
(A)活性化エネルギーが0.380eV以下である。
(B)Li核の共鳴周波数が44.1MHzであり、無回転の条件下で室温において固体Li-NMRスペクトルを測定した際に、1mol/LのLiCl水溶液の化学シフトを1.19ppmとして、-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅が1~7ppmである。
なお、以下では、本実施形態の化合物をリチウム含有塩化物とも言う。また、本明細書において、半値幅との用語は、半値全幅を意味するものとする。本実施形態のリチウム含有塩化物は、上記(A)及び(B)の一方のみを満たしてもよいが、両方を満たしていてもよい。なお、特に断らない限り、本明細書において固体Li-NMRスペクトルは、Li核の共鳴周波数が44.1MHzであり、無回転の条件下で室温において測定されたものであり、化学シフトは、1mol/LのLiCl水溶液の化学シフトを1.19ppmとした化学シフトを意味する。
【0022】
本実施形態のリチウム含有塩化物は、高いイオン伝導性(リチウムイオン伝導性)を有する。本発明者らは、単斜晶の結晶構造を有するリチウム含有塩化物のイオン伝導度とX線回折チャートの特定の反射ピーク(2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピーク)の半値幅との間に相関関係があることに気付いた。すなわち、本実施形態のリチウム含有塩化物は、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、従来のリチウム含有塩化物(例えば、比較例1)に比べて当該反射ピークの幅が非常に狭い。そして、実施例においても示されているように、このようなリチウム含有塩化物は、従来のリチウム含有塩化物と比較してイオン伝導度が高い。
【0023】
本実施形態のリチウム含有塩化物は、空間群C2/mに属する結晶構造を有していると好ましい。
【0024】
また、本実施形態のリチウム含有塩化物は、従来のリチウム含有塩化物(例えば、比較例2及び3)と比較して活性化エネルギーが小さく、固体内でのリチウムイオンの移動性が高い。また、本発明者らは、固体Li-NMRスペクトルにおいて-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅とイオン伝導度との間に相関があることも見出した。実際に実施例において示されるように、本実施形態のリチウム含有塩化物は、従来のリチウム含有塩化物(例えば、比較例2及び3)と比較して固体Li-NMRスペクトルにおける上記ピークが狭く、イオン伝導度が高い。
【0025】
X線回折チャートにおける上記特定の反射ピークの半値幅は、0.10~0.35°であると好ましく、0.15~0.35°であるとより好ましく、0.15~0.30°であると更に好ましい。
【0026】
活性化エネルギーは、0.370eV以下であると好ましく、0.360eV以下であるとより好ましく、0.350eV以下であると更に好ましい。活性化エネルギーは、温度Tを変化させながら、リチウム含有塩化物の伝導率を測定して得られたグラフについて、以下の計算式を基にしてカーブフィッティングを行って(すなわち、アレーニウスプロットから)求めることができる。
式:σT=Aexp(-E/kT)
ここで、σはイオン伝導度(S/cm)、Tは絶対温度(K)、Aは頻度因子、Eaは活性化エネルギー、kはボルツマン定数を表す。
【0027】
固体Li-NMRスペクトルにおいて-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅は、2~7ppmであると好ましく、3~6.8ppmであるとより好ましく、3.5~6.8ppmであると更に好ましい。
【0028】
リチウム含有塩化物において、リチウムのモル含有率が25~35モル%であると好ましい。また、リチウム含有塩化物において、塩素のモル含有率が55~65モル%であると好ましい。また、リチウム含有塩化物において、金属元素Mのモル含有率は10モル%以下であってよい。なお、本明細書において、特に断らない限り、モル含有率は、リチウム含有塩化物に含まれる全原子数(モル)に対するモル含有率である。なお、リチウム含有塩化物の化学組成は、例えば、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析により測定することもでき、ハロゲン元素については、イオンクロマトグラフにより測定することもできる。
【0029】
リチウム含有塩化物に含まれる金属元素Mとしては、遷移金属、希土類元素、p-ブロックの金属元素等が挙げられ、具体的には、Al、Ga、In、Sc及びLaからなる群から選択される少なくとも一つの元素であってよく、Inが好ましい。リチウム含有塩化物に含まれる金属元素Mは、価数が3価となる元素であると好ましい。
【0030】
ドーパント元素Xとしては、Li、金属元素M及びCl以外の元素の中から選択されてよく、X1:金属元素M以外の金属元素、X2:臭素、ヨウ素及びリンからなる群から選択される少なくとも1種の元素等が挙げられる。リチウム含有塩化物におけるドーパント元素Xのモル含有率は、10モル%以下であってよく、5モル%以下であってよく、0.1~3モル%であってよい。リチウム含有塩化物は1種のドーパント元素Xのみを含んでいてもよいが、複数種のドーパント元素Xを含んでいてもよい。リチウム含有塩化物は、ドーパント元素X1及びドーパント元素X2のいずれか一方又は両方を含んでいてよい。
【0031】
ドーパント元素X1は、金属元素Mとは異なる価数を有する元素であってよく、金属元素Mよりも価数の大きい元素であると好ましい。このような組み合わせとしては、金属元素MがInであり、ドーパント元素X1がZr、Sn、Nb及びTaからなる群から選択される少なくとも一種である場合が挙げられる。ドーパント元素X1の酸化数が金属元素Mの酸化数よりも大きいと、結晶構造内にリチウム席の空隙を作りやすく、よりイオン伝導性が高まる傾向にある。ドーパント元素X1は、Zr、Sn、Ti、Nb、Ta、Bi及びYからなる群から選択される少なくとも1種の元素であってよく、Zr,Sn、Nb、Taが好ましい。Nb、Taについては、少量の添加量でイオン伝導度の向上効果を得ることができる観点で、好ましい。
【0032】
ドーパント元素X2は、臭素が好ましい。ドーパント元素X2は、塩素と同様に結晶構造内においてアニオン席を占めるが、塩素よりも原子半径が大きいため、結晶格子が広がることによりリチウムイオンの移動経路が拡がるため、よりイオン伝導性が高まる傾向にある。また、ドーパント元素X1、X2を組み合わせた場合は、リチウム席の空隙を作る効果と、リチウムイオンの移動経路を拡げる効果の相乗効果を得ることが可能となるので、好ましい。ドーパント元素X1、X2の元素の選択については、上記で挙げた任意の組み合わせを取ることが可能である。
【0033】
上記リチウム含有塩化物は、LiαβCl6-δεで表される化合物であると好ましく、式:LiαInβCl6-δεで表される化合物であるとより好ましい。ここで、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1.1、0≦δ≦1、0<ε≦0.7であると好ましく、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1、0≦δ≦1、0<ε≦0.7であるとより好ましく、2.5≦α≦3、0.7≦β≦0.95、0≦δ≦0.5、0<ε≦0.5であることが更に好ましい。0.01≦ε≦0.7であってもよい。
中でも、Xがドーパント元素X2の時は、0<ε≦0.3であってよく、0<ε≦0.2が好ましく、0.01≦ε≦0.2がより好ましい。
ドーパント元素X1とX2とを組みあわせる場合には、式:LiαInβCl6-δX1ε1X2ε2で表される化合物であると好ましい。ここで、2≦α≦3.5、0.5≦β≦1、0≦δ≦1、0<ε1≦0.7、0<ε2≦0.7であるとより好ましく、2.5≦α≦3、0.7≦β≦0.95、0≦δ≦0.5、0<ε1≦0.3、0<ε2≦0.5であることが更に好ましい。0.01≦ε1≦0.7であってもよい。また、0.01≦ε2≦0.7であってもよく、0.01≦ε2≦0.3であってもよい。
【0034】
リチウム含有塩化物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、原料に対してボールミルを行って粗生成物を得る工程、及び当該粗生成物にアニーリングを行う工程を備える製造方法が挙げられる。
【0035】
原料としては、特に限定されず、例えば、塩化リチウム、金属元素Mの塩化物及びドーパント元素Xを含む化合物であってよい。ドーパント元素がX1の場合、ドーパント元素を含む化合物は、X1の塩化物であってよい。ドーパント元素がX2の場合、ドーパント元素を含む化合物は、臭化リチウム又はヨウ化リチウムであってよい。原料はボールミルを行う前に混合することが好ましく、不活性雰囲気(例えばAr雰囲気)下で混合することがより好ましい。
【0036】
ボールミルの条件としては特に限定されないが、回転数200~700rpmで10~100時間とすることができる。粉砕時間は、好ましくは24時間~72時間、より好ましくは、36~60時間である。
ボールミルに用いるボールとしては、特に限定はされないが、ジルコニアボールを用い得ることができる。用いるボールの大きさとしては特に限定はされないが、2mm~10mmのボールを用いることができる。
ボールミルを上記の時間で行うことで充分に各原料が混合され、メカノケミカル反応が促進されることによって、得られる化合物のイオン伝導度を向上させることが可能である。
【0037】
アニーリングは不活性雰囲気下又は真空で行うことが好ましい。アニーリングの温度としては、例えば、150~300℃であることが好ましく、200~250℃であることがより好ましい。アニーリングの時間としては、例えば、1~10時間であってよく、3~6時間であることが好ましい。アニーリングを行うことにより、結晶子のサイズが大きくなる傾向にある。アニーリングの温度を上記の温度域で行うことにより、結晶子サイズを適切な大きさに制御することが可能である。また、それに伴い、化合物中のLiの周辺の局所構造においても変化が起こり、Li-NMRスペクトルの-50~+50ppmの化学シフトの範囲内に存在するピークの半値幅を、1~7ppm、あるいは前記のより好適な、2~7ppmといった半値幅の値の範囲に制御する上で有効である。
また、上記のボールミル条件とアニーリング条件は、それぞれの条件の好適な範囲を組み合わせることによって、相乗的な効果を得ることが可能である。
【0038】
本実施形態のリチウム含有塩化物は、リチウムイオン伝導性に優れるため、リチウムイオン電池等の電解質(リチウム含有塩化物を含む固体電解質等)に使用できる。
【0039】
(本実施形態のリチウム含有塩化物を固体電解質に用いたリチウムイオン電池)
本実施形態のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いてリチウムイオン電池を作製することができる。
【0040】
リチウムイオン電池の正極としては、特に限定されず、正極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。また、正極は、本実施形態のリチウム含有塩化物を含むものであっても良い。
正極は、これらの材料を含む層が集電体上に形成されたものであってよい。正極活物質としては、例えば、リチウム(Li)と、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム含有複合金属酸化物が挙げられる。このようなリチウム複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO、LiNiMnCo1-x-y[0<x+y<1])、LiNiCoAl1-x-y[0<x+y<1])、LiCr0.5Mn0.5、LiFePO、LiFeP、LiMnPO、LiFeBO、Li(PO、LiCuO、LiFeSiO、LiMnSiOなどが挙げられる。
【0041】
リチウムイオン電池の負極としては特に限定されず、負極活物質を含み、且つ必要に応じて導電助剤、結合剤等を含むものであってよい。例えば、Li、Si、Sn、Si-Mn、Si-Co、Si-Ni、In、Auなどの金属及びこれらの金属を含む合金、グラファイト等の炭素材料、当該炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質などを挙げることができる。
【0042】
集電体の材質は特に限定されず、Cu、Mg、Ti、Fe、Co、Ni、Zn、Al、Ge、In、Au、Pt、Ag、Pd等の金属の単体又は合金であってよい。
【0043】
固体電解質層としては、複数の層を有していて良い。例えば、本実施形態の固体電解質層に加え、硫化物固体電解質層を有する構成であっても良い。本実施形態の固体電解質と負極の間に硫化物固体電解質層を有する構成であっても良い。硫化物固体電解質としては特に限定はされないが、例えば、Li6PSCl、Li2S-PS、Li10GeP12、Li9.612、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、LiPSなどが挙げられる。
本実施形態のリチウム含有塩化物を固体電解質として用いて作製された二次電池は、室温においても比較的高い電流値で充放電させることが可能である。これは、本実施形態のリチウム含有塩化物が、高いイオン伝導度を有していることに加え、活物質とも良好な界面を形成できることに由来していると考えられる。
【実施例
【0044】
[実施例1]
<リチウム含有塩化物の調製>
・ボールミル
-70℃以下の露点を有するアルゴン雰囲気中(以下、乾燥アルゴン雰囲気と記載する)で、LiClを0.4257g、InClを0.7044g、ZrClを0.0784g秤量し、原料を用意した。
下記の遊星ボールミル用のジルコニアポットに上記原料を入れ、直径4mmのジルコニアボールを65g投入した。48時間、380rpmの条件でメカノケミカル的に反応するように処理することにより、実施例1の粗組成物を得た。
遊星ボールミル装置: ヴァーダー・サイエンティフィック株式会社製 PM 400
・アニーリング
上記で得られた実施例1の粗組成物について、アルゴン雰囲気中で230℃で5時間加熱することにより、仕込み組成がLi2.89In0.91Zr0.096Clである実施例1の化合物(リチウム含有塩化物)を得た。
【0045】
<結晶構造の評価>
得られた実施例1の化合物について、25℃での粉末X線回折測定により、結晶構造の評価を行った。粉末X線回折測定の測定条件について、下記の条件にて実施した。
測定装置: Ultima IV (株式会社 リガク 製)
X線発生器: CuKα線源 電圧40kV、電流40mA
X線検出器: シンチレーションカウンター
測定範囲: 回折角2θ=10°~80°
スキャンスピード:4°/分
試料準備: 乳鉢粉砕による粉末化
測定によって得られたX線回折パターンを図1に示す。
解析の結果、結晶構造は、単斜晶の空間群C2/mに帰属された。2θが10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.25°であった。
【0046】
<NMR評価>
得られた実施例1の化合物について、下記条件により固体Li-NMR測定を行ってLiの局所構造環境の評価を行った。
装置:AVANCE300(Bruker社製)
観測核:Li(Li核の共鳴周波数として44.1MHz)
マジック角回転(MAS)周波数:0kHz(無回転)
測定方法:シングルパルス法(Bruker社標準パルスシークエンスzg使用)
励起パルス幅:π/4パルス
待ち時間及び積算回数:40秒、128回又は512回
測定温度:室温(24℃)
基準物質:1mol/LのLiCl水溶液について観測されるピークを1.19ppmに設定
得られたスペクトルを図2に示す。
-50~50ppmの範囲に一つのピークが観測されたので、ローレンチアンフィッティングを行い、半値幅を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
<ICP発光分光分析>
装置:ICP-AES(Agilent Technologies社製 5110)を用いて実施例1の固体電解質にICP発光分光分析を行い、Li、In、Zrの含有割合を求めた。
また、Cl、Brの含有割合を、イオンクロマトグラフ法により求めた。
両者とも、前処理として、水溶解を行った。
結果を表2に示す。
【0048】
<イオン伝導度の評価>
枠型、パンチ下部及びパンチ上部を備える加圧成形ダイスを用意した。なお、枠型は、絶縁性ポリカーボネートから形成されていた。また、パンチ上部及びパンチ下部は、いずれも、電子伝導性のステンレスから形成されており、インピーダンスアナライザー(Solatron Analytical社製 Sl1260)の端子にそれぞれ電気的に接続されていた。
【0049】
上記加圧成形ダイスを用いて、下記の方法により、実施例1のリチウム含有塩化物のイオン伝導度が測定された。まず、乾燥アルゴン雰囲気中で、実施例1のリチウム含有塩化物の粉末を、枠型の中空部に鉛直下方から挿入されたパンチ下部上に充填した。そして、パンチ上部を枠型の中空部に上から押し込むことにより、加圧成形ダイスの内部で、実施例1のリチウム含有塩化物の粉末に200MPaの圧力が印加された。圧力が印加されたまま、上記インピーダンスアナライザーを用いて、電気化学的インピーダンス測定法により、実施例1のリチウム含有塩化物のインピーダンスが測定された。
【0050】
インピーダンス測定結果から、Cole-Cole線図のグラフを作成した。Cole-Cole線図において、複素インピーダンスの位相の絶対値が最も小さい測定点でのインピーダンスの実数値を、ハロゲン化物固体電解質材料のイオン伝導に対する抵抗値と見なした。当該抵抗値を用いて、以下の数式(III)に基づいてイオン伝導度が算出された。
σ=(RSE×S/t)-1・・・(III)
ここで、
σはイオン伝導度であり、
Sは、リチウム含有塩化物のパンチ上部との接触面積(枠型の中空部の断面積に等しい)であり、
SEは、インピーダンス測定における固体電解質材料の抵抗値であり、
tは、圧力が印加された際のリチウム含有塩化物の厚みである。
【0051】
25℃でのイオン伝導度の値を表2に示す。恒温槽中で25℃となった後、90分以上保持してから、測定を実施した。
また、-35℃から100℃の温度範囲内で、25℃を含む6点の温度で測定を行い、アレニウスの式を基にカーブフィッティングを行い、計算された活性化エネルギーを表1に示す。各温度点では、恒温槽中で設定温度となった後、90分以上保持してから測定を実施した。算出された活性化エネルギーを表2に示す。
【0052】
乾燥アルゴン雰囲気中で、実施例1の化合物および、LiNi1/3Mn1/3Co1/3、およびアセチレンブラックをそれぞれ29質量部、67質量部、4質量部秤量し、乳鉢で混合することで、混合物を得た。
内径10mmの絶縁性の筒の中で、実施例1のリチウム含有塩化物を100mg、上記の混合物を15mgを順に積層して、積層体を得た。積層体に200MPaの圧力を印加し、第1電極(上記混合物の層)及び第1の固体電解質層(上記リチウム含有塩化物の層)が形成された。
次に、第1の固体電解質層に、硫化物固体電解質LiPSClを接触させるようにして60mg入れ、積層体を得た。積層体に200MPaの圧力を印加し、第2の固体電解質層が形成された。第1の固体電解質層は、第1の電極と第2の固体電解質層に挟まれていた。
次に、第二の固体電解質層にIn箔60mg、を接触させるようにして入れ、さらにLi箔2mgをIn箔と接触させるように入れ、積層体を得た。積層体に200MPaの圧力を印加し、第2電極が形成された。
ステンレス鋼で形成された集電体が第1電極及び第2電極に取り付けられ、次いで、当該集電体にリード線が取り付けられた。全ての部材はデシケータ中に配置され、密閉されており、このようにして実施例1の二次電池が得られた。
【0053】
<充放電試験>
充放電試験機としては、下記の製品を用いて実施した。
充放電試験機:東洋システム株式会社 TOSCAT-3100
25℃において、0.1C、1C及び3Cの3通りのCレートで充放電試験を実施した。
それぞれのCレートにおける電流値は、表1の通りである。
定電流定電圧(CCCV充電)で、それぞれのCレートに対応した電流密度で3.7Vまで充電を行った。それぞれのCレートに対応した電流密度を表1に示す。
放電は、それぞれのCレートに対応した電流密度で、1.9Vまで放電した。
充放電試験の結果を図3に示す。
また、25℃における0.1C、1C、及び3Cでの放電容量を表3に示す。
また、参考データとして、60℃での充放電試験の結果を図4に示す。
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
<実施例2>
原料としてLiCl、InCl、及びLiBrを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
また、実施例2のリチウム含有塩化物のX線回折パターンを図1に、固体Li-NMRスペクトルを図2にそれぞれ示す。
【0057】
<実施例3>
表2に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。図5には、25℃において、0.1C、1C及び3CのCレートで測定した充放電試験の結果を示す。
また、参考データとして、60℃において、0.1C、1.2C、及び3.6Cでの充放電試験の結果を図6に示す。
【0058】
<実施例4>
表2に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0059】
<実施例5>
原料としてLiCl、InCl、及びNbClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
実施例5のリチウム含有塩化物のX線回折パターンを図9に示す。また、実施例5のリチウム含有塩化物について、縦軸をイオン伝導度、横軸を1000/T[1/K]としてプロットした図を図11として示す。
【0060】
実施例5のリチウム含有塩化物ついても、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。作製された二次電池について0.1C、1C、及び3Cで25℃において充放電試験を実施例1と同じ条件で実施した。実施例5の二次電池の充放電試験の結果を図12に示す。また、実施例5の二次電池について、1CのCレートで充放電のサイクル試験を実施し、放電容量のサイクル依存性を調べた。結果を図14に示す。
【0061】
<実施例6>
原料としてLiCl、InCl、及びNbClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。
また、実施例5のリチウム含有塩化物のX線回折パターンを図9に示す。
【0062】
<実施例7>
原料としてLiCl、InCl、及びNbClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0063】
<実施例8>
原料としてLiCl、InCl、NbCl、及びLiIを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0064】
<実施例9>
原料としてLiCl、InCl、及びTaClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
また、実施例9のリチウム含有塩化物のX線回折パターンを図10に示す。
【0065】
実施例9のリチウム含有塩化物ついても、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。作製された二次電池について0.1C、1C、及び3Cで25℃において充放電試験を実施例1と同じ条件で実施した。実施例9の二次電池の充放電試験の結果を図13に示す。また、実施例9の二次電池について、1CのCレートで充放電のサイクル試験を実施し、放電容量のサイクル依存性を調べた。結果を図14に示す。
【0066】
<実施例10>
原料としてLiCl、InCl、及びTaClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。
また、実施例10のリチウム含有塩化物のX線回折パターンを図10に示す。
【0067】
<実施例11>
原料としてLiCl、InCl、及びSnClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2に示す。
【0068】
<比較例1>
原料としてLiCl、及びInClを用いて表2に示す組成としたことと、アニーリングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のリチウム含有塩化物を得た。
得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。また、X線回折パターンを図1に示す。
【0069】
<比較例2>
原料としてLiCl、及びInClを用いて表2に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のリチウム含有塩化物を得た。得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。また、X線回折パターンを図1に、固体Li-NMRスペクトルを図2にそれぞれ示す。図7には、25℃において、0.1C、1C及び3CのCレートで測定した充放電試験の結果を示す。
また、参考データとして、60℃において、0.1C、1C、及び3Cでの充放電試験の結果を図8に示す。
【0070】
<比較例3>
原料としてLiCl、及びYClを用いて表2に示す組成としたこと、アニーリングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3のリチウム含有塩化物を得た。
得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。また、X線回折パターンを図1に示す。
<比較例4>
原料としてLiCl、InCl及びZrClを用いて表2に示す組成としたこと、アルゴン雰囲気中で260℃で5時間の条件でアニーリングを行ったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4のリチウム含有塩化物を得た。
得られたリチウム含有塩化物に対して実施例1と同様に各種測定を行った。結果を表2及び表3に示す。
【要約】
【課題】
イオン伝導性の高いリチウム含有塩化物を提供すること。
【解決手段】
単斜晶の結晶構造を有し、25℃においてCuKα線を用いて測定したX線回折チャートにおいて、2θ角が10~18°の範囲における最も大きいピーク高さを有する反射ピークの半値幅が0.05~0.35°であり、リチウム、リチウム以外の金属元素M、塩素及びドーパント元素Xを含み、リチウムのモル含有率が20~40モル%であり、塩素のモル含有率が50~70モル%であり、活性化エネルギーが0.380eV以下である、化合物。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14