(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-08
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
C25D17/10 C
(21)【出願番号】P 2022557181
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2022022275
【審査請求日】2022-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】中濱 重之
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-11624(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/333495(US,A1)
【文献】特開2002-4091(JP,A)
【文献】特開2000-290798(JP,A)
【文献】特開昭54-138625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留するめっき槽と、
前記めっき槽の内部に配置されたアノードと、
前記めっき槽の内部において前記アノードに対向するように基板を配置可能に構成された基板ホルダと、
前記めっき槽の内部における前記アノードと前記基板との間に配置され、前記基板の外周縁に沿うように延在する、少なくとも1つの補助アノードと、
電気が供給される給電部位と、少なくとも1つの前記補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位と、を有し、前記給電部位に供給された電気を、前記接続部位を介して前記補助アノードに流すように構成された、バスバーと、
前記めっき槽の内部における前記補助アノードと前記基板との間に配置され、前記補助アノードに沿うように延在する、少なくとも1つのイオン抵抗体と、を備え、
前記イオン抵抗体は、前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど、前記イオン抵抗体の抵抗率が高くなるように構成されている、めっき装置。
【請求項2】
前記イオン抵抗体は、複数の開口を有し、
前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど前記イオン抵抗体の開口率が低くなることで、前記イオン抵抗体の抵抗率は前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど高くなっている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど前記イオン抵抗体の厚みが厚くなることで、前記イオン抵抗体の抵抗率は前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど高くなっている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記バスバーは、前記給電部位と前記接続部位とを連結する連結部位を有し、
前記連結部位は、前記基板の外周縁に沿うように延在する複数の延在部位を有し、
複数の前記延在部位は、枠状に配置され、
少なくとも1つの前記補助アノードは、複数の前記補助アノードを含み、
各々の前記補助アノードは、複数の前記接続部位を介して各々の前記延在部位に接続されている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項5】
少なくとも1つの前記補助アノードを内部に収容する収容部を備え、
前記収容部には、前記基板の方を向くような開口が設けられ、
前記収容部の前記開口は、前記めっき液に含まれる金属イオンが通過することは許容する一方で前記補助アノードの表面から発生した酸素が通過することは抑制する隔膜によって閉塞されている、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項6】
めっき液を貯留するめっき槽と、
前記めっき槽の内部に配置されたアノードと、
前記めっき槽の内部において前記アノードに対向するように基板を配置可能に構成された基板ホルダと、
前記めっき槽の内部における前記アノードと前記基板との間に配置され、前記基板の外周縁に沿うように延在する、少なくとも1つの補助アノードと、
電気が供給される給電部位と、少なくとも1つの前記補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位と、を有し、前記給電部位に供給された電気を、前記接続部位を介して前記補助アノードに流すように構成された、バスバーと、を備え、
前記補助アノードは、前記補助アノードの延在方向で前記給電部位に近づくほど、前記補助アノードと前記基板との距離が大きくなるように構成されている、めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すめっき装置として、めっき液を貯留するめっき槽と、めっき槽の内部に配置されたアノードと、めっき槽の内部においてアノードに対向するように基板を配置可能に構成された基板ホルダと、めっき槽の内部におけるアノードと基板との間に配置され、基板の外周縁に沿うように延在する、少なくとも1つの補助アノード(補助電極)と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような従来のめっき装置において、補助アノードに電気を供給するために、バスバーを用いることがある。具体的には、このバスバーは、電気が供給される給電部位と、補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位と、を有し、給電部位に供給された電気を、接続部位を介して補助アノードに流すように構成されている。
【0005】
上述したようなめっき装置の場合、バスバーの接続部位の抵抗値は、給電部位に近づくほど小さくなる。これに起因して、めっき処理時にバスバーから補助アノードに流れる電気の量は、給電部位に近づくほど大きくなる傾向がある。このような状況下で、基板にめっき処理を施した場合、基板の外周縁の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、基板の外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するめっき槽と、前記めっき槽の内部に配置されたアノードと、前記めっき槽の内部において前記アノードに対向するように基板を配置可能に構成された基板ホルダと、前記めっき槽の内部における前記アノードと前記基板との間に配置され、前記基板の外周縁に沿うように延在する、少なくとも1つの補助アノードと、電気が供給される給電部位と、少なくとも1つの前記補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位と、を有し、前記給電部位に供給された電気を、前記接続部位を介して前記補助アノードに流すように構成された、バスバーと、前記めっき槽の内部における前記補助アノードと前記基板との間に配置され、前記補助アノードに沿うように延在する、少なくとも1つのイオン抵抗体と、を備え、前記イオン抵抗体は、前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど、前記イオン抵抗体の抵抗率が高くなるように構成されている。
【0008】
この態様によれば、バスバーの接続部位の抵抗値が給電部位に近づくほど小さくなることに起因して基板の外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる。
【0009】
(態様2)
上記の態様1において、前記イオン抵抗体は、複数の開口を有し、前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど前記イオン抵抗体の開口率が低くなることで、前記イオン抵抗体の抵抗率は前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど高くなっていてもよい。
【0010】
(態様3)
上記の態様1において、前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど前記イオン抵抗体の厚みが厚くなることで、前記イオン抵抗体の抵抗率は前記イオン抵抗体の延在方向で前記給電部位に近づくほど高くなっていてもよい。
【0011】
(態様4)
上記の態様1~3のいずれか1態様において、前記バスバーは、前記給電部位と前記接続部位とを連結する連結部位を有し、前記連結部位は、前記基板の外周縁に沿うように延在する複数の延在部位を有し、複数の前記延在部位は、枠状に配置され、少なくとも1つの前記補助アノードは、複数の前記補助アノードを含み、各々の前記補助アノードは、複数の前記接続部位を介して各々の前記延在部位に接続されていてもよい。
【0012】
(態様5)
上記の態様1~4のいずれか1態様は、少なくとも1つの前記補助アノードを内部に収容する収容部を備え、前記収容部には、前記基板の方を向くような開口が設けられ、前記収容部の前記開口は、前記めっき液に含まれる金属イオンが通過することは許容する一方で前記補助アノードの表面から発生した酸素が通過することは抑制する隔膜によって閉塞されていてもよい。
【0013】
(態様6)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を貯留するめっき槽と、前記めっき槽の内部に配置されたアノードと、前記めっき槽の内部において前記アノードに対向するように基板を配置可能に構成された基板ホルダと、前記めっき槽の内部における前記アノードと前記基板との間に配置され、前記基板の外周縁に沿うように延在する、少なくとも1つの補助アノードと、電気が供給される給電部位と、少なくとも1つの前記補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位と、を有し、前記給電部位に供給された電気を、前記接続部位を介して前記補助アノードに流すように構成された、バスバーと、を備え、前記補助アノードは、前記補助アノードの延在方向で前記給電部位に近づくほど、前記補助アノードと前記基板との距離が大きくなるように構成されている。
【0014】
この態様によれば、バスバーの接続部位の抵抗値が給電部位に近づくほど小さくなることに起因して基板の外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係るめっき装置の全体配置図である。
【
図2】実施形態1に係るめっき装置における1つのめっき槽の周辺構成を示す模式的な断面図である。
【
図3】実施形態1に係る基板の模式的な正面図である。
【
図4】実施形態1に係る中間マスクの周辺構成の模式的な斜視図である。
【
図5】実施形態1に係るバスバー及び補助アノードの模式的な正面図である。
【
図6】実施形態1に係るイオン抵抗体の模式的な正面図である。
【
図7】実施形態1に係る補助アノードの周辺構成の模式的な側面図である。
【
図8】実施形態1に係るイオン抵抗体の模式的な正面図である。
【
図9】
図9(A)及び
図9(B)は、実施形態1の変形例に係るめっき装置のイオン抵抗体を説明するための模式図である。
【
図10】実施形態2に係るめっき装置における1つのめっき槽の周辺構成を示す模式的な断面図である。
【
図11】実施形態2に係る補助アノードの周辺構成の模式的な側面図である。
【
図12】実施形態2に係る互いに隣接する一対の補助アノードを比較するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態では、同一又は対応する構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する場合がある。また、図面は、実施形態の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0017】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係るめっき装置1について説明する。
図1は、本実施形態に係るめっき装置1の全体配置図である。
図1に例示するように、本実施形態に係るめっき装置1は、2台のカセットテーブル102と、基板Wfのオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板Wfを乾燥させるリンスドライヤ106とを備える。カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板Wfを収納したカセット100を搭載する。リンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ20を載置して基板Wfの着脱を行うロード/アンロードステーション120が設けられている。搬送ロボット122は、カセット100、アライナ104、リンスドライヤ106、及び、ロード/アンロードステーション120の間で基板Wfを搬送するためのロボットである。
【0018】
ロード/アンロードステーション120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ20は、この載置プレート152に水平状態で並列に載置されている。一方の基板ホルダ20と搬送ロボット122との間で基板Wfの受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ20と搬送ロボット122との間で基板Wfの受渡しが行われる。
【0019】
また、めっき装置1は、ストッカ124と、プリウェットモジュール126と、プリソークモジュール128と、第1リンスモジュール130aと、ブローモジュール132と、第2リンスモジュール130bと、めっきモジュール110と、搬送装置140と、制御モジュール170と、を備えている。ストッカ124では、基板ホルダ20の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェットモジュール126では、基板Wfが純水に浸漬される。プリソークモジュール128では、基板Wfの表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1リンスモジュール130aでは、プリソーク後の基板Wfが基板ホルダ20と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール132では、洗浄後の基板Wfの液切りが行われる。第2リンスモジュール130bでは、めっき処理後の基板Wfが基板ホルダ20と共に洗浄液で洗浄される。
【0020】
めっきモジュール110は、例えば、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽10を収納するように構成されている。各々のめっき槽10は、内部に1つの基板Wfを収納し、内部に保持しためっき液中に基板Wfを浸漬させて基板Wfの表面に銅めっき等を施すように構成されている。
【0021】
搬送装置140は、めっき装置1を構成する各機器の間で基板ホルダ20を基板Wfとともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した搬送装置である。本実施形態に係る搬送装置140は、一例として、第1搬送装置142及び第2搬送装置144を有している。第1搬送装置142は、ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、及び、ブローモジュール132との間で基板Wfを搬送する。第2搬送装置144は、第1リンスモジュール130a、第2リンスモジュール130b、ブローモジュール132、及び、めっきモジュール110との間で基板Wfを搬送する。なお、めっき装置1は、第2搬送装置144を備えずに、第1搬送装置142のみを備えるようにしてもよい。
【0022】
オーバーフロー槽136の両側には、各々のめっき槽10の内部に位置してめっき槽10内のめっき液を攪拌するパドルを駆動する、パドル駆動部160及びパドル従動部162が配置されている。
【0023】
制御モジュール170は、めっき装置1の動作を制御するように構成されている。具体的には、本実施形態に係る制御モジュール170は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)171や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置172、等を備えている。制御モジュール170は、記憶装置172に記憶されたプログラムの指令に従ってCPU171が作動することで、めっき装置1の被制御部を制御する。
【0024】
めっき装置1による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、カセットテーブル102に搭載したカセット100から、搬送ロボット122で基板Wfを1つ取出し、アライナ104に基板Wfを搬送する。アライナ104は、オリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。この所定の方向に位置が合わせられた基板Wfを搬送ロボット122でロード/アンロードステーション120にまで搬送する。
【0025】
ロード/アンロードステーション120においては、ストッカ124内に収容されていた基板ホルダ20を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持して、ロード/アンロードステーション120にまで搬送する。そして、2基の基板ホルダ20を、ロード/アンロードステーション120の載置プレート152の上に同時に水平に載置する。この状態で、それぞれの基板ホルダ20に搬送ロボット122が基板Wfを搬送し、搬送した基板Wfを基板ホルダ20で保持する。
【0026】
次に、基板Wfを保持した基板ホルダ20を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持し、プリウェットモジュール126に収納する。次に、プリウェットモジュール126で処理された基板Wfを保持した基板ホルダ20を、第1搬送装置142でプリソークモジュール128に搬送し、プリソークモジュール128で基板Wf上の酸化膜をエッチングする。続いて、この基板Wfを保持した基板ホルダ20を、第1リンスモジュール130aに搬送し、第1リンスモジュール130aに収納された純水で基板Wfの表面を水洗する。
【0027】
水洗が終了した基板Wfを保持した基板ホルダ20は、第2搬送装置144により、第1リンスモジュール130aからめっきモジュール110に搬送され、めっき槽10に収納される。第2搬送装置144は、上記の手順を順次繰り返し行って、基板Wfを保持した基板ホルダ20を順次めっきモジュール110の各々のめっき槽10に収納する。
【0028】
各々のめっき槽10では、めっき槽10内のアノードと基板Wfとの間にめっき電圧が印加されて、基板Wfの表面にめっき処理が施される。このめっき処理時において、パドル駆動部160及びパドル従動部162によりパドルが駆動されることで、めっき槽10のめっき液は撹拌されてもよい。但し、めっき装置1の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、めっき装置1は、パドル、パドル駆動部160及びパドル従動部162を備えていない構成とすることもできる。
【0029】
めっき処理が施された後、めっき処理後の基板Wfを保持した基板ホルダ20を第2搬送装置144で2基同時に把持し、第2リンスモジュール130bまで搬送し、第2リンスモジュール130bに収容された純水に浸漬させて基板Wfの表面を純水で洗浄する。次に、基板ホルダ20を、第2搬送装置144によってブローモジュール132に搬送し、エアーの吹き付け等によって基板ホルダ20に付着した水滴を除去する。その後、基板ホルダ20を、第1搬送装置142によってロード/アンロードステーション120に搬送する。
【0030】
ロード/アンロードステーション120では、搬送ロボット122によって基板ホルダ20から処理後の基板Wfが取り出され、リンスドライヤ106に搬送される。リンスドライヤ106は、めっき処理後の基板Wfを乾燥させる。乾燥した基板Wfは、搬送ロボット122によりカセット100に戻される。
【0031】
なお、上述した
図1で説明しためっき装置1の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1の構成は、
図1の構成に限定されるものではない。
【0032】
続いて、めっき装置1におけるめっき槽10の周辺構成の詳細について説明する。なお、本実施形態に係る複数のめっき槽10の構成は同様であるので、1つのめっき槽10の周辺構成について説明する。
【0033】
図2は、本実施形態に係るめっき装置1における1つのめっき槽10の周辺構成を示す模式的な断面図である。
図2に例示されているめっき装置1は、一例として、基板Wfの面方向(面に沿った方向)を上下方向にして基板Wfをめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(すなわち、ディップ式のめっき装置)である。
【0034】
但し、めっき装置1の具体例は、これに限定されるものではない。他の一例を挙げると、めっき装置1は、基板Wfの面方向を水平方向にして基板Wfをめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(すなわち、カップ式のめっき装置)であってもよい。
【0035】
図2に例示するように、めっき槽10は、上部が開口した有底の容器によって構成されていてもよい。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。
【0036】
めっき装置1は、めっき槽10の内部に、アノード30を備えている。アノード30は、電源に電気的に接続されている。アノード30の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード30の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0037】
めっき装置1は、
図2に例示するように、めっき槽10の内部に、アノードボックス40と、隔膜50と、アノードマスク45とを備えていてもよい。アノードボックス40は、アノード30を内部に収容するための部材(収容部材)である。アノードボックス40における基板Wfに対向した部分には、開口40aが設けられている。隔膜50は、この開口40aを閉塞するように設けられている。アノードボックス40の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0038】
隔膜50は、めっき液Psに含まれる金属イオン(例えば硫酸銅中の銅イオン)が通過することは許容する一方でアノード30の表面から発生した酸素が通過することは抑制する膜によって構成されている。このような隔膜50としては、例えば中性隔膜を用いることができる。
【0039】
本実施形態によれば、上記のようにアノード30がアノードボックス40の内部に収容され、このアノードボックス40の開口40aが隔膜50によって閉塞されているので、めっき処理時において仮にアノード30の表面から酸素が発生した場合であっても、この発生した酸素がアノードボックス40の外側のめっき液Psに侵入することを抑制することができる。これにより、このアノードボックス40の外側のめっき液Psに侵入した酸素に起因して、基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0040】
アノードマスク45は、アノード30と基板Wfとの間に配置されている。具体的には、本実施形態に係るアノードマスク45は、アノードボックス40の内部に配置されている。アノードマスク45は、アノード30と基板Wfとの間を移動するイオン等が通過可能な孔45aを、アノードマスク45の中央に有している。
【0041】
基板ホルダ20は、カソードとしての基板Wfを保持するための部材である。基板ホルダ20は、めっき槽10の内部において、アノード30に対向するように基板Wfを配置可能に構成されている。具体的には、基板ホルダ20は、基板Wfへのめっき処理時において、基板Wfの表面がアノード30に対向するように、基板Wfを保持する。より具体的には、本実施形態に係る基板ホルダ20は、基板Wfの面方向が上下方向になるように基板Wfを保持している。めっき処理によって、基板Wfの被めっき面(アノード30に対向する面)に、めっき皮膜が形成される。
【0042】
図3は、基板Wfの模式的な正面図である。具体的には、
図3は、基板Wfの被めっき面の法線方向から基板Wfを視認した様子を図示している。基板Wfの具体的な形状は特に限定されるものではないが、
図3に例示するように、複数の辺を有する角形の基板であってもよい。基板Wfの辺の個数は特に限定されるものではなく、3つでもよく、4つでもよく、5つ以上でもよい。
【0043】
本実施形態に係る基板Wfの辺の個数は、一例として4つである。すなわち、本実施形態に係る基板Wfは、辺90a、辺90b、辺90c、及び、辺90dを有する、四角形の角形基板である。辺90a及び辺90bは互いに対向し、辺90c及び辺90dは互いに対向している。辺90aと辺90cとの間にコーナー部91aが設けられ、辺90aと辺90dとの間にコーナー部91bが設けられ、辺90bと辺90dとの間にコーナー部91cが設けられ、辺90bと辺90cとの間にコーナー部91dが設けられている。
【0044】
また、一例として、本実施形態に係る基板Wfの各々の辺の長さは、互いに等しい。すなわち、本実施形態に係る基板Wfは、正面視で正方形の形状を有している。但し、基板Wfの構成はこれに限定されるものではなく、例えば、基板Wfの各々の辺の長さは互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、本実施形態において、基板Wfの各々の辺から基板Wfに対して電気が供給される。具体的には、本実施形態に係る基板Wfは、基板Wfの各々の辺から、コンタクト部材(図示せず)を介して、電気が供給される。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば、基板Wfに供給される電気は、基板Wfの互いに向かい合う2辺から供給することも可能である。
【0046】
図2を再び参照して、本実施形態に係るめっき装置1は、めっき槽10の内部に、少なくとも1つの補助アノードを備えている。すなわち、めっき装置1は、補助アノードを1つのみ備えていてもよく、補助アノードを複数備えていてもよい。本実施形態に係るめっき装置1は、一例として、複数の補助アノード(補助アノード60a,60b,60c,60d)を備えている。
【0047】
補助アノード60a~60dは、めっき槽10の内部におけるアノード30と基板Wfとの間の部分に配置されている。具体的には、
図2に例示する補助アノード60a~60dは、基板Wfと後述する中間マスク70との間の部分に配置されている。また、本実施形態に係る補助アノード60a~60dは、後述する収容部71の内部に収容されている。
【0048】
補助アノード60a~60dの具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、補助アノード60a~60dの一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウムやチタン等の種々の金属を用いることができる。本実施形態に係る補助アノード60a~60dは、一例として、板状のチタンによって構成されており、このチタンの表面に酸化イリジウムがコーティングされている。
【0049】
図2を再び参照して、めっき装置1は、中間マスク70と、隔膜51とを備えていてもよい。
図4は、中間マスク70の周辺構成の模式的な斜視図である。
図2及び
図4を参照して、中間マスク70は、アノード30と基板Wfとの間に配置されている。具体的には、本実施形態に係る中間マスク70は、アノードボックス40と基板Wfとの間に配置されている。中間マスク70は、イオンが移動可能な孔70aを、中間マスク70の中央に有している。
【0050】
本実施形態において、中間マスク70の孔70aは、一例として角形の孔になっており、基板Wfの複数の辺にそれぞれ対応する複数の辺(辺72a,72b,72c,72d)を有している。具体的には、辺72aは、基板Wfの辺90aに対応し、辺72bは基板Wfの辺90bに対応し、辺72cは基板Wfの辺90cに対応し、辺72dは基板Wfの辺90dに対応している。また、辺72aは辺90aの延在方向に延在し、辺72bは辺90bの延在方向に延在し、辺72cは辺90cの延在方向に延在し、辺72dは辺90dの延在方向に延在している。
【0051】
本実施形態に係る中間マスク70の基板Wfに対向する面には、補助アノード60a~60dを収容するための収容部71が設けられている。収容部71は、基板Wfの方を向くように開口した開口71aを有している。
【0052】
隔膜51は、収容部71の開口71aを閉塞している。収容部71の内部には、めっき液Psが貯留されている。隔膜51としては、前述した隔膜50と同様のものを用いることができる。すなわち、本実施形態に係る隔膜51は、めっき液Psに含まれる金属イオン(例えば硫酸銅中の銅イオン)が通過することは許容する一方で補助アノードの表面から発生した酸素が通過することは抑制する膜によって構成されている。このような隔膜51としては、例えば中性隔膜を用いることができる。
【0053】
本実施形態によれば、上記のように補助アノード60a~60dが収容部71に収容され、この収容部71の開口71aが隔膜51によって閉塞されているので、めっき処理時において仮に補助アノード60a~60dの表面から酸素が発生した場合であっても、この発生した酸素が収容部71の外側のめっき液Psに侵入することを抑制することができる。これにより、この収容部71の外側のめっき液Psに侵入した酸素に起因して、基板Wfのめっき品質が悪化することを抑制することができる。
【0054】
図2を参照して、本実施形態に係るめっき装置1は、めっき槽10の内部に、バスバー61と、少なくとも1つのイオン抵抗体と、を備えている。本実施形態に係るめっき装置1は、一例として、複数のイオン抵抗体(イオン抵抗体80a,80b,80c,80d)を備えている。
【0055】
図5は、バスバー61及び補助アノード60a~60dの模式的な正面図である。なお、
図5には、参考用として、基板Wfも二点鎖線で図示されている。また、
図5には、電気の流れる方向(すなわち、電流の方向)が、「I」で例示されている。
図6は、イオン抵抗体80a~80dの模式的な正面図である。なお、
図6には、参考用として、バスバー61及び補助アノード60a~60dも二点鎖線で図示されている。
図7は、補助アノード60aの周辺構成の模式的な側面図である。
【0056】
図5に例示するように、本実施形態に係る補助アノード60a~60dの個数は、基板Wfの辺の個数と一致している。また、補助アノード60a~60dは、所定の空間領域A1の周りを囲むように配置されている。具体的には、本実施形態に係る補助アノード60a~60dは、基板Wfの被めっき面の法線方向から視認した場合に、基板Wfの外周縁を囲むように配置されている。なお、本実施形態において、この空間領域A1は、基板Wfよりもアノード30の側の領域であって、且つ、アノード30よりも基板Wfの側の領域である。
【0057】
補助アノード60a~60dは、基板Wfの外周縁に沿うように延在している。具体的には、本実施形態に係る各々の補助アノード60a~60dは、基板Wfの各々の辺に対応するように配置されて、基板Wfの各々の辺の延在方向に延在している。
【0058】
より具体的には、
図5に例示するように、補助アノード60aは基板Wfの辺90aに対応し、辺90aの延在方向(Y方向)に延在している。補助アノード60bは辺90bに対応し、辺90bの延在方向(Y方向)に延在している。補助アノード60cは辺90cに対応し、辺90cの延在方向(Z方向)に延在している。補助アノード60dは辺90dに対応し、辺90dの延在方向(Z方向)に延在している。
【0059】
図5を参照して、バスバー61は、補助アノード60a~60dに電気を供給するための部材である。バスバー61の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るバスバー61は、例えばチタンのような電気導電率の良好な材質によって構成されている。また、本実施形態に係るバスバー61は、一例として、平板状の部材によって構成されている。なお、バスバー61は、めっき液Psによる腐食を効果的に抑制するために、被覆材によって被覆されていてもよい。
【0060】
本実施形態に係るバスバー61は、給電部位62と、複数の接続部位63と、連結部位64と、を備えている。給電部位62は、電源200と電気的に接続されており、この電源200から電気が供給されるように構成された部位である。
【0061】
図5及び
図7を参照して、接続部位63は、補助アノード60a~60dに接続された部位(すなわち、接続ボス)である。具体的には、本実施形態に係る接続部位63は、突起状になっており、補助アノード60a~60dと連結部位64の後述する延在部位66a~66dとを連結している。
図5には、複数の接続部位63について#1~#12の番号が付与されている。
図5に例示するように、複数の接続部位63は、隣接する接続部位63との間に間隔をあけて、補助アノード60a~60dの延在方向に配列している。
【0062】
連結部位64は、給電部位62と接続部位63とを連結するように構成された部位である。
図5に例示するように、本実施形態に係る連結部位64は、導入部位65と、延在部位66a~66dと、を備えている。導入部位65は、延在部位66a~66dと給電部位62とを連結して、給電部位62の電気を延在部位66a~66dに導入するように構成された部位である。
【0063】
延在部位66a~66dは、補助アノード60a~60dに沿うように延在している。具体的には、延在部位66aは、補助アノード60aの延在方向に延在し、延在部位66bは、補助アノード60bの延在方向に延在している。延在部位66cは、補助アノード60cの延在方向に延在し、延在部位66dは、補助アノード60dの延在方向に延在している。
【0064】
延在部位66aと延在部位66dとは電気的に直列に接続されている。延在部位66cと延在部位66bとは電気的に直列に接続されている。そして、延在部位66a,66dと延在部位66c,66bとは、電気的に並列に接続されている。この結果、補助アノード60aと補助アノード60cとは電気的に並列になるように配置され、補助アノード60dと補助アノード60bとは電気的に並列になるように配置されている。
【0065】
また、延在部位66a~66dは、所定の空間領域A1の周りを囲むように配置されている。具体的には、本実施形態に係る延在部位66a~66dは、基板Wfの被めっき面の法線方向から視認した場合に、基板Wfの外周縁を囲むように配置されている。また、本実施形態に係る延在部位66a~66dは、互いに連結して、枠状に配置されている。具体的には、本実施形態に係る延在部位66a~66dは、一例として、角形(本実施形態では一例として四角形)の枠状になっている。
【0066】
各々の補助アノード60a~60dは、複数の接続部位63を介して各々の延在部位66a~66dに接続されている。具体的には、補助アノード60aは、#1~#3の接続部位63を介して延在部位66aに接続されている。補助アノード60bは、#10~#12の接続部位63を介して延在部位66bに接続されている。補助アノード60cは、#7~#9の接続部位63を介して延在部位66cに接続されている。補助アノード60dは、#4~#6の接続部位63を介して延在部位66dに接続されている。
【0067】
電源200から給電部位62を介してバスバー61に供給された電気は、連結部位64を流れた後に、接続部位63を流れて、補助アノード60a~60dに供給される。具体的には、給電部位62に供給された電気は、連結部位64の導入部位65を流れた後に、連結部位64の延在部位66a及び延在部位66cにそれぞれ流入する。延在部位66aを流れた電気は延在部位66dを流れ、延在部位66cを流れた電気は延在部位66bを流れる。延在部位66aの電気は、接続部位63を介して補助アノード60aに流れ、延在部位66bの電気は、接続部位63を介して補助アノード60bに流れる。延在部位66cの電気は、接続部位63を介して補助アノード60cに流れ、延在部位66dの電気は、接続部位63を介して補助アノード60dに流れる。
【0068】
ここで、バスバー61の接続部位63の抵抗値は、給電部位62に近い箇所ほど小さくなる(逆にいうと、給電部位62から遠くなるほど大きくなる)。なお、「給電部位62に近い」とは、具体的には、「給電部位62からの電気的な距離が短い」ことを意味している。
【0069】
例えば100(mA)の電流をバスバー61に流した場合の各接続部位63の抵抗値の一例を列挙すると、#1は8(mΩ)、#2は10(mΩ)、#3は12(mΩ)、#4は12(mΩ)、#5は13(mΩ)、#6は15(mΩ)、#7は8(mΩ)、#8は10(mΩ)、#9は12(mΩ)、#10は13(mΩ)、#11は14(mΩ)、#12は15(mΩ)である。
【0070】
このように、バスバー61の接続部位63の抵抗値が給電部位62に近づくほど小さくなる結果、めっき処理時にバスバー61から補助アノード60a~60dに流れる電気の量(すなわち電流値)は、給電部位62に近づくほど大きくなる傾向がある。このため、仮に、後述するイオン抵抗体80a~80dが設けられていない場合、基板Wfの外周縁の膜厚は、給電部位62に近い箇所ほど厚くなるおそれがある。具体的には、
図3を参照して、基板Wfのコーナー部91aの周辺の膜厚が最も厚くなるおそれがある。この問題に対処するために、本実施形態では、以下に説明するイオン抵抗体80a~80dを備えている。
【0071】
図2、
図6、及び、
図7を参照して、イオン抵抗体(イオン抵抗体80a~80d)は、めっき液Psにおけるイオンの移動に対する抵抗として機能する部材であり、具体的には、めっき液Psの電気抵抗よりも高い電気抵抗を有する部材によって構成されている。このような機能を有するものであれば、イオン抵抗体80a~80dの具体的な材質は特に限定されるものではないが、例えば、セラミックス等のような、めっき液Psに対する耐腐食性能の高い材質を用いることが好ましい。
【0072】
また、イオン抵抗体80a~80dは、めっき槽10の内部における補助アノード60a~60dと基板Wfとの間に配置されている。具体的には、本実施形態に係るイオン抵抗体80a~80dは、
図2に例示するように、収容部71の内部に配置されており、具体的には、補助アノード60a~60dと隔膜51との間の領域に配置されている。イオン抵抗体80a~80dは、所定の取付部材(図示せず)によって、めっき槽10の内部に取り付けられている。
【0073】
イオン抵抗体80a~80dの「厚みt1(具体的には、アノード30から基板Wfに向かう方向の長さ(mm))」は、特に限定されるものではないが、隔膜51及び補助アノード60a~60dにイオン抵抗体80a~80dが接触しないような値になっている。すなわち、本実施形態に係るイオン抵抗体80a~80dは、隔膜51との間に空間を有し、且つ、補助アノード60a~60dとの間にも空間を有するように配置されている。また、
図7に例示するように、本実施形態に係るイオン抵抗体80a~80dの厚みt1は、一例として、イオン抵抗体80a~80dの延在方向に亘って同じ値(すなわち一様)になっている。
【0074】
図6に例示するように、イオン抵抗体80a~80dは、補助アノード60a~60dに沿うように延在している。具体的には、イオン抵抗体80aは、補助アノード60aの延在方向に延在し、イオン抵抗体80bは、補助アノード60bの延在方向に延在している。また、イオン抵抗体80cは、補助アノード60cの延在方向に延在し、イオン抵抗体80dは、補助アノード60dの延在方向に延在している。
【0075】
また、イオン抵抗体80aは補助アノード60aに対向するように配置され、イオン抵抗体80bは補助アノード60bに対向するように配置されている。イオン抵抗体80cは補助アノード60cに対向するように配置され、イオン抵抗体80dは補助アノード60dに対向するように配置されている。また、これらのイオン抵抗体80a~80dは、空間領域A1の周りを囲むように配置されている。具体的には、本実施形態に係るイオン抵抗体80a~80dは、基板Wfの被めっき面の法線方向から視認した場合に、基板Wfの外周縁を囲むように配置されている。
【0076】
図6を参照して、イオン抵抗体80a~80dの延在方向の長さ(L1)は、特に限定されるものではなく、補助アノード60a~60dの延在方向の長さよりも長くてもよく、短くてもよく、同じであってもよい。本実施形態では、一例として、イオン抵抗体80a~80dの長さ(L1)は、補助アノード60a~60dの長さの80%以上、130%以下の範囲内、具体的には、補助アノード60a~60dの長さの90%以上、120%以下の範囲内になっている。なお、イオン抵抗体80a~80dの長さ(L1)は、補助アノード60a~60dの長さと同じか、補助アノード60a~60dの長さよりも長いことが好ましい。
【0077】
また、イオン抵抗体80a~80dの幅(L2)は、特に限定されるものではなく、補助アノード60a~60dの幅よりも長くてもよく、短くてもよく、同じであってもよい。本実施形態では、一例として、イオン抵抗体80a~80dの幅(L2)は、補助アノード60a~60dの幅の80%以上、120%以下の範囲内になっている。
【0078】
図8は、複数のイオン抵抗体80a~80dのうちの1つのイオン抵抗体(具体的にはイオン抵抗体80a)の模式的な正面図である。
図6及び
図8を参照して、イオン抵抗体80a~80dは、イオン抵抗体80a~80dの延在方向で給電部位62に近づくほど、イオン抵抗体80a~80dの抵抗率(Ω・cm)が高くなるように構成されている。具体的には、イオン抵抗体80aの抵抗率は、
図6でY方向に向かうほど高くなっている。イオン抵抗体80bの抵抗率は、
図6でY方向に向かうほど高くなっている。イオン抵抗体80cの抵抗率は、
図6でZ方向に向かうほど高くなっている。イオン抵抗体80dの抵抗率は、
図6でZ方向に向かうほど高くなっている。
【0079】
より具体的には、
図8に例示するように、本実施形態に係るイオン抵抗体80a~80dは、それぞれ、複数の開口81を有している。そして、イオン抵抗体80a~80dの開口率(すなわち、イオン抵抗体の単位面積当たりに占める開口81部分の面積の比率)は、イオン抵抗体80a~80dの延在方向で給電部位62に近づくほど低くなるように構成されている。これにより、本実施形態によれば、簡易な構成で、イオン抵抗体80a~80dの抵抗率を給電部位62に近づくほど高くすることができる。
【0080】
なお、イオン抵抗体80a~80dの各々の開口81は、めっき処理中に補助アノード60a~60dから発生する気泡(具体的には酸素からなる気泡)が、この開口81を通過できるような大きさになっていることが好ましい。この構成によれば、補助アノード60a~60dから発生した気泡がイオン抵抗体80a~80dの補助アノード60a~60dに対向した面に滞留することを効果的に抑制することができる。なお、この構成は、イオン抵抗体80a~80dが水平方向に延在するように配置されている場合に、特に高い効果を発揮することができる。
【0081】
また、各々のイオン抵抗体80a~80dの全体の抵抗率は、互いに同じであってもよい。具体的には、イオン抵抗体80aの全体の抵抗率(イオン抵抗体80aの一端から他端までの全抵抗率)と、イオン抵抗体80bの全体の抵抗率と、イオン抵抗体80cの全体の抵抗率と、イオン抵抗体80dの全体の抵抗率とは、互いに同じ値であってもよい。
【0082】
あるいは、各々のイオン抵抗体80a~80dの全体の抵抗率は、互いに異なっていてもよい。この場合、給電部位62の近くに配置されているイオン抵抗体の方が、給電部位62から遠くに配置されているイオン抵抗体よりも、全体の抵抗率が高くなるように構成されていることが好ましい。
【0083】
具体的には、イオン抵抗体80aの方がイオン抵抗体80dよりも、全体の抵抗率が高い方が好ましい。換言すると、イオン抵抗体80aの給電部位62から遠い側の端部(「遠位端(
図6では-Y方向側の端部)」)の抵抗値は、イオン抵抗体80dの給電部位62に近い側の端部(「近位端(
図6ではZ方向側の端部)」)の抵抗値よりも高い方が好ましい。また、イオン抵抗体80cの方がイオン抵抗体80bよりも、全体の抵抗率が高い方が好ましい。換言すると、イオン抵抗体80cの遠位端(
図6では-Z方向側の端部)の抵抗値は、イオン抵抗体80bの近位端(
図6ではY方向側の端部)の抵抗値よりも高い方が好ましい。
【0084】
以上説明したような本実施形態によれば、イオン抵抗体80a~80dの抵抗率が給電部位62に近づくほど高くなるように構成されているので、バスバー61の接続部位63の抵抗値が給電部位62に近づくほど小さくなることに起因して基板Wfの外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる。すなわち、本実施形態によれば、基板Wfの外周縁の膜厚の均一化を図ることができる。この結果、基板Wfの面内の膜厚の均一化を図ることもできる。
【0085】
(実施形態1の変形例)
イオン抵抗体80a~80dの構成は
図8で説明した構成に限定されるものではない。イオン抵抗体80a~80dの他の一例として、以下のものを用いることもできる。
図9(A)及び
図9(B)は、実施形態1の変形例に係るめっき装置1Aのイオン抵抗体80a~80dを説明するための模式図である。具体的には、
図9(A)は、本変形例に係る1つのイオン抵抗体(イオン抵抗体80a)の模式的な正面図であり、
図9(B)は、本変形例に係る1つのイオン抵抗体(イオン抵抗体80a)の模式的な側面図である。
【0086】
本変形例に係るイオン抵抗体80a~80dは、イオン抵抗体80a~80dの厚みt1が、イオン抵抗体80a~80dの延在方向で給電部位62に近づくほど、厚くなるように構成されている(
図9(B)参照)。
【0087】
具体的には、
図9(B)及び前述した
図6を参照して、本変形例に係るイオン抵抗体80aの厚みt1は、イオン抵抗体80aの延在方向でY方向に向かうほど厚くなっている。本変形例に係るイオン抵抗体80bの厚みt1も、イオン抵抗体80bの延在方向で、Y方向に向かうほど厚くなっている。本変形例に係るイオン抵抗体80dの厚みt1は、イオン抵抗体80dの延在方向で、Z方向に向かうほど厚くなっている。本変形例に係るイオン抵抗体80cの厚みt1も、イオン抵抗体80cの延在方向で、Z方向に向かうほど厚くなっている。
【0088】
また、
図9(A)に例示するように、本変形例に係るイオン抵抗体80a~80dは、複数の開口81を有していてもよい。この場合、
図9(A)に例示するように、本変形例に係るイオン抵抗体80a~80dの開口率は、給電部位62からの電気的な距離にかかわらず、一様であってもよい。
【0089】
本変形例によれば、イオン抵抗体80a~80dの厚みt1がイオン抵抗体80a~80dの延在方向で給電部位62に近づくほど厚くなるという簡易な構成で、給電部位62に近づくほどイオン抵抗体80a~80dの抵抗率を高くすることができる。
【0090】
(実施形態2)
続いて、実施形態2に係るめっき装置1Bについて説明する。
図10は、本実施形態に係るめっき装置1Bにおける1つのめっき槽10の周辺構成を示す模式的な断面図である。本実施形態に係るめっき装置1Bは、イオン抵抗体80a~80dを備えていない点において、
図2で例示しためっき装置1と異なっている。
【0091】
図11は、本実施形態に係る1つの補助アノード(補助アノード60a)の周辺構成の模式的な側面図である。
図12は、互いに隣接する一対の補助アノードを比較するための模式図である。
図11、
図12、及び前述した
図5を参照して、本実施形態に係る補助アノード60a~60dは、補助アノード60a~60dの延在方向で給電部位62に近づくほど、補助アノード60a~60dと基板Wfとの距離D1が大きくなるように構成されている点において、前述した実施形態に係る補助アノード(
図7参照)と異なっている。本実施形態に係る補助アノード60a~60dの他の構成は、前述した実施形態に係る補助アノードと同様である。
【0092】
具体的には、本実施形態に係る補助アノード60aは、Y方向に向かうほど補助アノード60aと基板Wf(具体的には辺90a)との距離D1が大きくなるように構成されている。本実施形態に係る補助アノード60bも、Y方向に向かうほど補助アノード60bと基板Wf(具体的には辺90b)との距離D1が大きくなるように構成されている。本実施形態に係る補助アノード60cは、Z方向に向かうほど補助アノード60cと基板Wf(具体的には辺90c)との距離D1が大きくなるように構成されている。本実施形態に係る補助アノード60dも、Z方向に向かうほど補助アノード60dと基板Wf(具体的には辺90d)との距離D1が大きくなるように構成されている。
【0093】
また、
図12に例示するように、電気の流れる方向で見て互いに隣接する一対の補助アノードを比較した場合、給電部位62に近い位置に配置された補助アノードの方が、給電部位62から遠い位置に配置された補助アノードに比較して、補助アノードと基板Wfとの距離の平均値D1aが大きいことが好ましい。
【0094】
具体的には、
図12に例示するように、互いに隣接する補助アノード60aと補助アノード60dとを比較した場合、補助アノード60aと基板Wfとの距離の平均値D1aは、補助アノード60dと基板Wfとの距離の平均値D1aよりも大きいことが好ましい。同様に、互いに隣接する補助アノード60cと補助アノード60bとを比較した場合、補助アノード60cと基板Wfとの距離の平均値D1aは、補助アノード60bと基板Wfとの距離の平均値D1aよりも大きいことが好ましい。
【0095】
また、この場合、補助アノード60aと基板Wfとの距離の平均値D1aは、補助アノード60cと基板Wfとの距離の平均値D1aと同じであってもよい。同様に、補助アノード60dと基板Wfとの距離の平均値D1aは、補助アノード60bと基板Wfとの距離の平均値D1aと同じであってもよい。
【0096】
本実施形態によれば、補助アノード60a~60dの延在方向で給電部位62に近づくほど補助アノード60a~60dと基板Wfとの距離D1が大きくなるように構成されているので、バスバー61の接続部位63の抵抗値が給電部位62に近づくほど小さくなることに起因して基板Wfの外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる。
【0097】
(実施例)
上述した実施形態の作用効果について、実験によって確認した。これについて説明する。まず、実施例に係るめっき装置として、前述した実施形態1に係るめっき装置1を準備した。また、比較例に係るめっき装置として、イオン抵抗体を備えていない点以外は実施例に係るめっき装置1と同じ構成を有するめっき装置を準備した。
【0098】
そして、実施例に係るめっき装置1及び比較例に係るめっき装置をそれぞれ用いて、同じめっき処理条件で、基板Wfにめっき処理を施し、このめっき処理後の基板Wfの膜厚を測定した。具体的には、
図3を参照して、めっき処理後の基板Wfのめっき皮膜の外周縁の膜厚を測定した。より具体的には、給電部位62に最も近いコーナー部91aの周辺の膜厚を「始点」として、
図3において矢印で示す方向(時計回りの方向)に膜厚を測定した。この膜厚の測定結果を
図13に示す。
【0099】
図13の横軸は「始点」からの距離(mm)を示している。
図13の縦軸は、基板Wfの膜厚(すなわち、基板Wfに形成されためっき皮膜の膜厚(μm))を示している。
図13から分かるように、比較例に係るめっき装置を用いて基板Wfにめっき処理を施した場合、基板Wfの外周縁のうち、給電部位62に近いコーナー部91aの周辺の膜厚が最も高く、給電部位62から遠いコーナー部91cの周辺の膜厚が最も低くなっている。そして、比較例の場合、基板Wfのめっき皮膜の外周縁の膜厚分布は、「Range/2Ave(すなわち、(膜厚の最大値-最小値)/(膜厚の平均値×2))」で測定した場合で、6.8%である。
【0100】
これに対して、実施例に係るめっき装置1を用いて基板Wfにめっき処理を施した場合、全体的に見ると、基板Wfにおける給電部位62に近いコーナー部91aの周辺の膜厚が最も高く、給電部位62から遠いコーナー部91cの周辺の膜厚が最も低くなっているが、コーナー部91aの周辺の膜厚の厚みは、比較例に比較して小さくなっている。この結果、実施例の場合、比較例に比較して、基板Wfの外周縁の膜厚は全体的に均一化されている。具体的な数値を挙げると、実施例の場合、基板Wfの外周縁の膜厚分布は、5.5%(Range/2Ave)であり、比較例に比較して数値が小さくなっている。すなわち、実施例は、比較例に比較して、基板Wfの外周縁の膜厚分布の均一化が図られている。
【0101】
なお、前述した実施形態1の変形例に係るめっき装置1A、及び、実施形態2に係るめっき装置1Bについても、実施形態1の場合と同様の条件で基板Wfにめっき処理を施して膜厚を測定した。この結果、めっき装置1A及びめっき装置1Bにおいても、実施例に係るめっき装置1の場合と同様に、基板Wfの外周縁の膜厚分布として5.5%(Range/2Ave)の値が得られた。以上のように、前述した実施形態の効果は実験によって確認された。
【0102】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 めっき装置
10 めっき槽
20 基板ホルダ
30 アノード
51 隔膜
60a,60b,60c,60d 補助アノード
61 バスバー
62 給電部位
63 接続部位
64 連結部位
71 収容部
80a,80b,80c,80d イオン抵抗体
Ps めっき液
Wf 基板
D1 距離
t1 厚み
【要約】
基板の外周縁の膜厚が不均一になることを抑制することができる技術を提供する。
めっき装置1は、めっき槽と、アノードと、基板ホルダと、少なくとも1つの補助アノード60a~60dと、電気が供給される給電部位62と少なくとも1つの補助アノードに接続されるとともに当該補助アノードの延在方向に配列した複数の接続部位63とを有するバスバー61と、少なくとも1つのイオン抵抗体80a~80dと、を備え、イオン抵抗体は、イオン抵抗体の延在方向で給電部位に近づくほど、イオン抵抗体の抵抗率が高くなるように構成されている。