(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】物体情報処理装置、物体情報処理方法及び物体情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 21/238 20110101AFI20221110BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221110BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H04N21/238
H04N5/232 290
H04N5/232 380
H04N7/18 G
(21)【出願番号】P 2019083755
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】小野 正人
(72)【発明者】
【氏名】星出 高秀
(72)【発明者】
【氏名】松原 靖
(72)【発明者】
【氏名】深津 真二
(72)【発明者】
【氏名】南 憲一
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/073920(WO,A1)
【文献】特開2015-201005(JP,A)
【文献】特開2017-021446(JP,A)
【文献】特開2016-218610(JP,A)
【文献】特開2016-046639(JP,A)
【文献】特開2013-206140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/033-3/039
G06T1/00-1/40
3/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
G07C1/00-15/00
G08G1/00-99/00
H04N5/222-5/257
7/10
7/14-7/56
21/00-21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影領域の一部を重ねて撮影された複数の映像データをつないで合成する合成映像上のオブジェクトをトラッキングする物体情報処理装置であって、
前記複数の映像データのそれぞれで検出およびトラッキングされたオブジェクトのうち、前記映像データが重ね合わされた重複領域内に存在するオブジェクトを候補オブジェクトとして抽出する候補抽出部と、
重なり度合いが所定の閾値以上の複数の候補オブジェクトをグループにまとめるグループ化部と、
前記グループおよびグループ化されていない前記オブジェクトに統合オブジェクトIDを付与する統合部と、を備え
、
前記グループ化部は、重複領域において映像データが重ねられた数に応じてグループにまとめる候補オブジェクトの数を変え、
前記グループ化部は、前記複数の候補オブジェクトのそれぞれが前記重複領域以外の非重複領域において前記統合オブジェクトIDが成立していた場合、重なり度合いが所定の閾値以上であっても当該複数の候補オブジェクトをグループにまとめない
ことを特徴とする物体情報処理装置。
【請求項2】
前記グループ化部は、同一の映像データ内の複数の前記重複領域のそれぞれに同じ前記候補オブジェクトを含むグループが存在する場合、当該複数のグループを一つのグループにまとめる
ことを特徴とする請求項1に記載の物体情報処理装置。
【請求項3】
前記統合部は、生存期間が最も長い前記オブジェクトを含む前記グループまたは生存期間が最も長い前記オブジェクトから順番に、前記統合オブジェクトIDを付与する
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の物体情報処理装置。
【請求項4】
撮影領域の一部を重ねて撮影された複数の映像データをつないで合成する合成映像上のオブジェクトをトラッキングする物体情報処理装置による物体情報処理方法であって、
前記複数の映像データのそれぞれで検出およびトラッキングされたオブジェクトのうち、前記映像データが重ね合わされた重複領域内に存在するオブジェクトを候補オブジェクトとして抽出するステップと、
重なり度合いが所定の閾値以上の複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップと、
前記グループおよびグループ化されていない前記オブジェクトに統合オブジェクトIDを付与するステップと、を有
し、
前記複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップでは、重複領域において映像データが重ねられた数に応じてグループにまとめる候補オブジェクトの数を変え、
前記複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップでは、前記複数の候補オブジェクトのそれぞれが前記重複領域以外の非重複領域において前記統合オブジェクトIDが成立していた場合、重なり度合いが所定の閾値以上であっても当該複数の候補オブジェクトをグループにまとめない
ことを特徴とする物体情報処理方法。
【請求項5】
請求項
1ないし3のいずれかに記載の物体情報処理装置の各部としてコンピュータを動作させる物体情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像上でオブジェクトをトラッキングする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のカメラで撮影した映像を水平垂直方向にリアルタイムでつなぎ合わせて、広い競技空間を持つフィールド競技の様子全体を写したパノラマ映像を合成する技術が知られている。この技術を用い、映像をリアルタイムでつなぎ合わせることで、広大な監視エリアの遠隔地監視に適用することが考えられている。
【0003】
映像による遠隔地監視では、映像から監視対象オブジェクトをリアルタイムで検出およびトラッキングし、映像に監視対象オブジェクトの情報を重畳表示できることが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】石井陽子、徳永徹郎、外村喜秀、日高浩太、「Kirari! Tracker:LiDARと深層学習エンジンを用いたリアルタイム特定人物追跡システムの検討」、映像情報メディア学会、冬季大会、2017年、15B-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の映像をつなぎ合わせたパノラマ映像は高精細映像であることから、パノラマ映像上でオブジェクトの検出およびトラッキングを行うと処理に時間がかかり、リアルタイム性に影響があるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複数の映像をつなぎ合わせた合成映像においてリアルタイムにオブジェクトをトラッキングすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物体情報処理装置は、撮影領域の一部を重ねて撮影された複数の映像データをつないで合成する合成映像上のオブジェクトをトラッキングする物体情報処理装置であって、前記複数の映像データのそれぞれで検出およびトラッキングされたオブジェクトのうち、前記映像データが重ね合わされた重複領域内に存在するオブジェクトを候補オブジェクトとして抽出する候補抽出部と、重なり度合いが所定の閾値以上の複数の候補オブジェクトをグループにまとめるグループ化部と、前記グループおよびグループ化されていない前記オブジェクトに統合オブジェクトIDを付与する統合部と、を備え、前記グループ化部は、重複領域において映像データが重ねられた数に応じてグループにまとめる候補オブジェクトの数を変え、前記グループ化部は、前記複数の候補オブジェクトのそれぞれが前記重複領域以外の非重複領域において前記統合オブジェクトIDが成立していた場合、重なり度合いが所定の閾値以上であっても当該複数の候補オブジェクトをグループにまとめないことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る物体情報処理方法は、撮影領域の一部を重ねて撮影された複数の映像データをつないで合成する合成映像上のオブジェクトをトラッキングする物体情報処理装置による物体情報処理方法であって、前記複数の映像データのそれぞれで検出およびトラッキングされたオブジェクトのうち、前記映像データが重ね合わされた重複領域内に存在するオブジェクトを候補オブジェクトとして抽出するステップと、重なり度合いが所定の閾値以上の複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップと、前記グループおよびグループ化されていない前記オブジェクトに統合オブジェクトIDを付与するステップと、を有し、前記複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップでは、重複領域において映像データが重ねられた数に応じてグループにまとめる候補オブジェクトの数を変え、前記複数の候補オブジェクトをグループにまとめるステップでは、前記複数の候補オブジェクトのそれぞれが前記重複領域以外の非重複領域において前記統合オブジェクトIDが成立していた場合、重なり度合いが所定の閾値以上であっても当該複数の候補オブジェクトをグループにまとめないことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る物体情報処理プログラムは、上記物体情報処理装置の各部としてコンピュータを動作させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の映像をつなぎ合わせた合成映像においてリアルタイムにオブジェクトをトラッキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の物体情報処理装置を用いて構成した広視野角遠隔監視システムの構成を示す図である。
【
図2A】広視野角遠隔監視システムが入力した映像のそれぞれにおいてオブジェクトを検出した様子を示す図である。
【
図2B】複数の映像をつなぎ合わせた様子を示す図である。
【
図2C】広視野角遠隔監視システムが出力するパノラマ映像の表示例を示す図である。
【
図3】本実施形態の物体情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本実施形態の物体情報処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】フレームデータをつなぎ合わせたパノラマ映像と検出されたオブジェクトの例を示す図である。
【
図6】グループ化の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】グループ化しない例を説明するための図である。
【
図8A】複数の重複領域において同一のオブジェクトが検出される例を示す図である。
【
図8B】複数の重複領域において検出された同一のオブジェクトを含むグループを再グループ化する例を示す図である。
【
図9】統合オブジェクトIDを引継ぐグループまたはオブジェクトを特定できない例を示す図である。
【
図10】統合オブジェクトIDを付与する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】統合オブジェクトIDを付与する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0013】
図1を参照し、本発明にかかる物体情報処理を用いた広視野角遠隔監視システムの構成を説明する。同図に示す広視野角遠隔監視システムは、複数の映像を合成してパノラマ映像を生成するとともに、映像から監視対象のオブジェクトの物体情報を取得し、MMTP(MPEG Media Transport Protocol)を利用してIPネットワーク経由でパノラマ映像、音および物体情報を同期伝送する処理を低遅延に実現するシステムである。広視野角遠隔監視システムは、例えば、航空管制、公共空間監視、および防災監視などの広視野角での監視に用いることができる。
【0014】
図1の広視野角遠隔監視システムは、合成処理サーバ100、物体情報統合サーバ200、デコードサーバ300、および統合物体情報受信サーバ400を備える。
【0015】
合成処理サーバ100は、合成処理部110、エンコード処理部120、および物体検出・トラッキング処理部130を備える。合成処理サーバ100は、複数の撮像系(例えば4Kカメラ)のそれぞれから映像と音を入力し、各映像から対象のオブジェクトの検出およびトラッキングを行うとともに(
図2A)、映像をつなげてパノラマ映像を合成する(
図2B)。
【0016】
合成処理部110は、入力した複数の映像をリアルタイムにつなぎ合わせてパノラマ映像を合成する。合成処理部110は、映像をつなぎ合わせるつなぎ目を動的に変更してもよいし、つなぎ目を設定ファイル等で事前に静的に設定してもよい。
【0017】
エンコード処理部120は、合成処理部110の合成したパノラマ映像および音データをエンコードし、MMTPストリームに変換してデコードサーバ300へ送出する。
【0018】
物体検出・トラッキング処理部130は、各映像から対象のオブジェクトの検出およびトラッキングを実施する。物体検出・トラッキング処理部130は、各映像でのオブジェクトのトラッキング結果を物体情報統合サーバ200へ送信するとともに、合成処理部110へ送信する。
【0019】
物体情報統合サーバ200は、物体検出・トラッキング処理部130が各映像において検出およびトラッキングしたオブジェクトについて、オブジェクトの各映像上の座標をパノラマ映像上の座標へ変換する。合成する前の映像でオブジェクトを検出する場合、映像が重ね合わされた重複領域では、重複された映像のそれぞれで同一のオブジェクトが検出されることがある。物体情報統合サーバ200は、本発明にかかる物体情報処理により、重複領域で検出されたオブジェクトで同一と推定されるオブジェクトのトラッキング結果を統合する。本発明にかかる物体情報処理の詳細については後述する。
【0020】
デコードサーバ300は、合成処理サーバ100から受信したMMTPストリームをデコードし、パノラマ映像および音を出力する。
【0021】
統合物体情報受信サーバ400は、物体情報統合サーバ200から物体情報のMMTPパケットを受信し、物体情報を出力する。
【0022】
表示系(例えばパノラマスクリーン)は、デコードサーバ300から出力されたパノラマ映像に、統合物体情報受信サーバ400から出力された物体情報を重畳させて表示する(
図2C)。このとき、表示系は、パノラマ映像のフレームデータに付いているタイムスタンプと同じタイムスタンプを持つ物体情報を重畳させる。
【0023】
(物体情報処理装置の構成)
図3を参照し、本実施形態の物体情報処理装置1の構成について説明する。物体情報処理装置1は、映像処理装置3の合成したパノラマ映像におけるオブジェクトのトラッキング結果を出力する装置である。より具体的には、物体情報処理装置1は、映像処理装置3から各映像でのオブジェクトのトラッキング結果を受信し、オブジェクトの各映像上の座標(以下、「ローカル座標」と称する)をパノラマ映像上の座標(以下、「グローバル座標」と称する)へ変換し、重複領域で同一と思われるオブジェクトのトラッキング結果を統合する。物体情報処理装置1は、
図1の広視野角遠隔監視システムの物体情報統合サーバ200に相当し、映像処理装置3は合成処理サーバ100に相当する。
【0024】
図3に示す物体情報処理装置1は、トラッキング結果受信部11、グループ化候補判定部12、グループ化部13、および統合部14を備える。物体情報処理装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは物体情報処理装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0025】
トラッキング結果受信部11は、オブジェクトの各映像でのトラッキング結果を受信し、オブジェクトのローカル座標をグローバル座標へ変換する。トラッキング結果は、オブジェクトのローカル座標およびローカルオブジェクトIDを含む。トラッキング結果は、検出したオブジェクトの名称、信頼度(オブジェクトの名称の正しさ)、色、およびオブジェクトの加速度と移動方向を含んでもよい。ローカルオブジェクトIDは、各映像でトラッキングされているオブジェクトに付与される識別子である。前の世代(過去のフレーム)で検出されたオブジェクトと同じであると判定されたオブジェクトには同じローカルオブジェクトIDが付与される。なお、ローカルオブジェクトIDは映像ごとにオブジェクトに付与されるので、同じオブジェクトであっても写っている映像が異なる場合は、映像のそれぞれで異なるローカルオブジェクトIDが当該オブジェクトに付与される。
【0026】
グループ化候補判定部12は、重複領域内で検出されたオブジェクトを統合の対象として抽出する。重複領域の座標は事前に算出済みである。物体情報処理装置1は、重複領域の座標を映像処理装置3から受信してもよい。
【0027】
グループ化部13は、重複領域において、重複された映像のそれぞれで検出されたオブジェクトの重なり度合いが大きいオブジェクトを同じオブジェクトであると推定してグループ化する。また、グループ化部13は、隣り合う重複領域(1つの映像内の異なる重複領域)に同じローカルオブジェクトIDの付与されたオブジェクトを含むグループをまとめて再グループ化する。
【0028】
統合部14は、グループおよびグループ化されていないオブジェクトのそれぞれに、パノラマ映像上でのトラッキング結果となる統合オブジェクトIDを付与する。この統合オブジェクトIDを用いることで、同一のオブジェクトをパノラマ映像上で継続してトラッキングすることができる。
【0029】
(物体情報処理)
次に、
図4および
図5を参照して、本実施形態の物体情報処理について説明する。
【0030】
ステップS1において、映像処理装置3は、複数のカメラのそれぞれから映像を入力し、入力した映像のそれぞれから同時刻のフレームデータを取得する。
【0031】
ステップS2において、映像処理装置3は、各映像からオブジェクトを検出し、各映像においてオブジェクトをトラッキングする。映像処理装置3は、オブジェクト検出処理の高速化のために、各映像から取得されたフレームデータのサイズを縮小したデータを用いてオブジェクトを検出してもよい。オブジェクトの検出およびトラッキングは、各映像で並行して行ってよい。トラッキングとは、現在のフレームデータで検出されたオブジェクトと過去のフレームデータで検出されたオブジェクトとの同一性を判定し、オブジェクトの移動を追跡することである。
【0032】
映像処理装置3は、同時刻の隣接するフレームデータF1,F2の特徴点が一致するようにフレームデータF1,F2を重ね合わせてパノラマ映像を合成する。
図5に左右に隣接するフレームデータF1,F2を重ね合わせた様子を示す。フレームデータF1,F2が重ね合わせられた領域が重複領域である。重ね合わせられていない領域を非重複領域と称する。なお、上下に隣接するフレームデータを重ね合わせてパノラマ映像を合成してもよいし、上下左右に並べたフレームデータを重ね合わせてパノラマ映像を合成してもよい。
【0033】
また、映像処理装置3は、パノラマ映像を合成する前の各映像からオブジェクトを検出し、オブジェクトをトラッキングする。
図5の例では、映像処理装置3は、フレームデータF1からは6つのオブジェクトO11~O16を検出し、フレームデータF2からは6つのオブジェクトO21~O26を検出した。各映像でのオブジェクトのトラッキング結果は物体情報処理装置1へ送信される。
【0034】
ステップS3において、物体情報処理装置1は、各映像のオブジェクトのトラッキング結果を受信し、各オブジェクトのローカル座標をグローバル座標に変換する。
【0035】
ステップS4において、物体情報処理装置1は、各オブジェクトについて、重複領域内に存在するか否か判定する。重複領域内に存在するオブジェクトがグループ化される候補である。
図5の例では、フレームデータF1で検出されたオブジェクトO14,O15,O16が重複領域内に存在し、フレームデータF2で検出されたオブジェクトO21,O22,O23が重複領域内に存在する。
【0036】
ステップS5において、物体情報処理装置1は、複数映像に同時に映る同一オブジェクトと推定されるローカルオブジェクトをグループ化する。物体情報処理装置1は、隣接するフレームデータのそれぞれの重複領域で検出されたオブジェクトのうち、重なり度合いが所定の閾値以上のオブジェクトを同一のオブジェクトであると推定し、グループ化する。
図5の例では、フレームデータF1で検出されたオブジェクトO14とフレームデータF2で検出されたオブジェクトO21をグループG1とし、フレームデータF1で検出されたオブジェクトO16とフレームデータF2で検出されたオブジェクトO23をグループG2としてグループ化した。グループ化処理の詳細については後述する。
【0037】
ステップS6において、物体情報処理装置1は、オブジェクトをグループ化した各グループおよびグループ化していない各オブジェクトに統合オブジェクトIDを付与する。
図5の例では、グループおよびオブジェクトの下に記載した数字が付与された統合オブジェクトIDである。具体的には、グループG1,G2の統合オブジェクトIDはそれぞれ「0004」,「0007」である。グループ化されていないオブジェクトO11,O12,O13,O15の統合オブジェクトIDはそれぞれ「0001」,「0002」,「0003」,「0005」である。グループ化されていないオブジェクトO22,O24,O25,O26の統合オブジェクトIDはそれぞれ「0006」,「0008」,「0009」,「0010」である。統合オブジェクトIDを付与する処理の詳細については後述する。
【0038】
(グループ化)
次に、
図6を参照して、グループ化処理について説明する。グループ化処理は、重複領域内で検出されたオブジェクトに対して実施される。
【0039】
ステップS51において、グループ化部13は、隣接するフレームデータのそれぞれで検出されたオブジェクトの重なり度合いが閾値以上のオブジェクトの組を抽出する。あるオブジェクトについて、隣接するフレームデータにおいて重なり度合いが閾値以上のオブジェクトがない場合、そのオブジェクトはグループ化の対象外である。なお、重複領域においてフレームデータが重ねられた数に応じて抽出するオブジェクトの数を変えてもよい。例えば、フレームデータを上下左右に並べて重ねる場合、フレームデータの角部分では4枚のフレームデータが重ねられる。この場合、グループ化部13は、グループ化の対象として4つのオブジェクトを抽出してもよい。
【0040】
ステップS52において、グループ化部13は、重なり度合いが閾値以上のオブジェクトの組のうち、いずれのオブジェクトも非重複領域において統合オブジェクトIDが成立していた組はグループ化の対象外とする。例えば、
図7に示すように、過去世代において、オブジェクトO11には非重複領域において「0001」の統合オブジェクトIDが付与されており、オブジェクトO21には非重複領域において「0002」の統合オブジェクトIDが付与されていたとする。つまり、過去世代においてオブジェクトO11,O21は別オブジェクトとして認識されていた。現世代において、オブジェクトO11,O21の重なり度合いが閾値以上であっても、オブジェクトO11,O21のそれぞれは非重複領域において統合オブジェクトIDが成立しているので別オブジェクトである。したがって、グループ化部13は、オブジェクトO11,O21の組はグループ化の対象外とする。
【0041】
例えば、統合部14は、非重複領域でオブジェクトに統合オブジェクトIDを付与したときに、当該オブジェクトのフラグをオンにする。グループ化部13は、どちらのフラグもオンのオブジェクトの組はグループ化の対象外とする。いずれか一方のオブジェクトのフラグがオンで他方のオブジェクトのフラグがオフのオブジェクトの組はグループ化の対象である。
【0042】
なお、グループ化の対象外とする方法として、検出されたオブジェクトを示す名称が推定されている場合、グループ化部13は、名称が異なるオブジェクトの組をグループ化の対象外としてもよい。例えば、人間と推定されたオブジェクトと信号と推定されたオブジェクトの組はグループ化の対象外とする。
【0043】
また、オブジェクトの色が明らかに互いに異なる場合、グループ化部13は、そのオブジェクトの組をグループ化の対象外としてもよい。
【0044】
さらに、グループ化部13は、オブジェクトの移動方向を把握し、オブジェクトが互いに異なる移動をしている場合、そのオブジェクトの組をグループ化の対象外としてもよい。
【0045】
ステップS53において、グループ化部13は、オブジェクトの重なり度合いが閾値以上のオブジェクトの組のうち、ステップS52で除外されなかった組をグループ化する。
【0046】
グループ化部13は、以下のステップS54,S55において、同じオブジェクトを含むグループをまとめて再グループ化してもよい。
【0047】
ステップS54において、グループ化部13は、隣り合う重複領域に同じオブジェクトを含むグループが存在するか否か判定する。隣り合う重複領域とは、1つのフレームデータ内の複数の重複領域である。例えば、
図8Aの例では、フレームデータF2の左側と右側の重複領域が隣り合う重複領域である。同じオブジェクトであるか否かは、ローカルオブジェクトIDが同一であるか否かで判定できる。
【0048】
図8Aの例では、フレームデータF1で検出されたオブジェクトO11とフレームデータF2で検出されたオブジェクトO21がグループG1としてグループ化されている。また、フレームデータF3で検出されたオブジェクトO31とフレームデータF2で検出されたオブジェクトO21がグループG2としてグループ化されている。グループG1とグループG2は同一のオブジェクトO21を含んでいる。
【0049】
ステップS55において、グループ化部13は、同じオブジェクトを含むグループをまとめて再グループ化する。
図8Bの例では、同じオブジェクトO21を含むグループG1,G2がグループG3として再グループ化される。
【0050】
(統合オブジェクトIDの付与)
次に、統合オブジェクトIDを付与する処理について説明する。
【0051】
例えば、
図9に示すように、グループ化されたオブジェクトが変化した場合、前世代でグループに付与された統合オブジェクトIDを引継ぐグループを特定できない。
図9の例では、前世代においてオブジェクトO11の統合オブジェクトIDは「0001」であり、オブジェクトO12,O21を含むグループG1の統合オブジェクトIDは「0002」であり、オブジェクトO13,O22を含むグループG2の統合オブジェクトIDは「0003」である。現世代において、オブジェクトO11,O21の組がグループ化されてグループG3となり、オブジェクトO12,O22の組がグループ化されてグループG4となり、オブジェクトO13がグループ化されなかったとする。
【0052】
図9の例では、現世代において、オブジェクトO13,O22を含むグループG2の統合オブジェクトID「0003」は、オブジェクトO22を含むグループG4が引継げばよいのか、オブジェクトO13が引継げばよいのか不明である。さらに、グループG3は、前世代のオブジェクトO11の統合オブジェクトID「0001」を引き継げばよいのか、オブジェクトO21を含むグループG1の統合オブジェクトID「0002」を引継げばよいのか不明である。
【0053】
そこで、本実施形態では、オブジェクトが各映像においてトラッキングされている時間(生存期間)を管理し、生存期間の長いオブジェクトから順番に統合オブジェクトIDを付与する。例えば、
図9の例では、オブジェクトO13の生存期間がオブジェクトO22の生存期間よりも長いとすると、オブジェクトO13から処理が実施されて、オブジェクトO13がグループG2の統合オブジェクトID「0003」を引継ぐ。このとき、引継ぐ統合オブジェクトIDがなくなったオブジェクトO22は処理順序が後回しにされる。例えば、オブジェクトO22の処理順序は新規に検出されたオブジェクトと同程度に引き下げられる。オブジェクトO22は、前世代で統合オブジェクトIDが付与されていないオブジェクトとして扱われる。
【0054】
また、
図9の例では、グループG3は統合オブジェクトID「0001」または「0002」のいずれを引継げばよいのか不明である。本実施形態では、複数の統合オブジェクトIDを引継ぐことができる場合、より長い生存期間の統合オブジェクトIDを引継ぐ。生存期間が最も長い統合オブジェクトIDとは、より過去に払い出された統合オブジェクトIDである。具体的には、統合オブジェクトID「0001」の生存期間が統合オブジェクトID「0002」の生存期間よりも長いとすると、グループG3は統合オブジェクトID「0001」を引継ぐ。
【0055】
図10を参照し、統合オブジェクトIDを付与する処理について説明する。
図10の処理は、全てのグループおよびグループ化されていない全てのオブジェクトに対して実施される。
【0056】
ステップS61において、統合部14は、生存期間の最も長いオブジェクトまたは生存期間の最も長いオブジェクトを含むグループを選択する。
【0057】
ステップS62において、統合部14は、前世代において処理対象のオブジェクトまたはグループに統合オブジェクトIDが付与されているか否かを判定する。処理対象がグループの場合、グループに含まれるオブジェクトの少なくともいずれかに統合オブジェクトIDが付与されているか否かを判定する。
【0058】
前世代において統合オブジェクトIDが付与されていない場合は、ステップS63において、統合部14は、処理対象のオブジェクトまたはグループに対して新たに統合オブジェクトIDを付与する。
【0059】
ステップS64において、統合部14は、処理対象のグループは、異なる統合オブジェクトIDが付与された複数のオブジェクトを含むか否かを判定する。
【0060】
処理対象がオブジェクトの場合または処理対象のグループが異なる統合オブジェクトIDが付与された複数のオブジェクトを含まない場合、つまり、引継ぐ統合オブジェクトIDが一つに定まる場合、ステップS65において、統合部14は、処理対象のオブジェクトまたはグループに前世代の統合オブジェクトIDを引継がせる。
【0061】
処理対象のグループが異なる統合オブジェクトIDが付与された複数のオブジェクトを含む場合、ステップS66において、統合部14は、処理対象のグループに生存期間が最も長い統合オブジェクトIDを引継がせる。
【0062】
統合部14は、以上の処理を全てのグループおよびオブジェクトに対して実施する。
【0063】
図11を参照し、統合オブジェクトIDを付与する例を説明する。
【0064】
図11の例では、前世代(1フレーム前)において、一方のフレームデータからは5つのオブジェクトO11,O12,O13,O14,O15が検出され、他方のフレームデータからは5つのオブジェクトO21,O22,O23,O24,O25が検出された。オブジェクトO14とオブジェクトO21がグループG1としてグループ化され、オブジェクトO15とオブジェクトO22がグループG2としてグループ化された。オブジェクトO11,O12,O13のそれぞれには統合オブジェクトID「0001」,「0002」,「0003」が付与された。グループG1,G2のそれぞれには統合オブジェクトID「0004」,「0005」が付与された。オブジェクトO23,O24,O25のそれぞれには統合オブジェクトID「0006」,「0007」,「0008」が付与された。
【0065】
現世代(最新フレーム)において、一方のフレームデータからは新たにオブジェクトO16が検出された。他方のフレームデータからは新たに2つのオブジェクトO26,O27が検出された。前世代で検出されたオブジェクトO25は現世代では検出されなかった。
【0066】
オブジェクトO13と新たに検出されたオブジェクトO26がグループG3としてグループ化された。オブジェクトO15とオブジェクトO21がグループG4としてグループ化された。オブジェクトO14とオブジェクトO22はグループ化されなかった。
【0067】
前世代でグループ化されておらず、現世代でもグループ化されていないオブジェクトO11,O12,O23,O24は、前世代の統合オブジェクトIDを引継ぐ。
【0068】
グループ化されていない新たに検出されたオブジェクトO16,O27のそれぞれには、新たな統合オブジェクトID「0009」,「0011」が払い出される。
【0069】
現世代が検出されなかったオブジェクトO25に付与されていた統合オブジェクトID「0008」は削除される。
【0070】
前世代でグループ化されていたオブジェクトO14,O15,O21,O22および現世代でグループ化されたオブジェクトO13,O26に対する処理について考える。ここで、オブジェクトの生存期間は、オブジェクトO13,O14,O15,O21,O22,O26の順に長いものとする。
【0071】
まず、オブジェクトO13を含むグループG3が処理対象となる。オブジェクトO13は、前世代で統合オブジェクトID「0003」が付与されている。グループG3に含まれるオブジェクトO26は新たに検出されたオブジェクトであり、統合オブジェクトIDは付与されていない。したがって、グループG3は、オブジェクトO13の統合オブジェクトID「0003」を引継ぐ。
【0072】
続いて、オブジェクトO14が処理対象となる。オブジェクトO14は、前世代でグループG1に含まれている。グループG1には統合オブジェクトID「0004」が付与されている。したがって、オブジェクトO14は、グループG1の統合オブジェクトID「0004」を引継ぐ。
【0073】
なお、前世代でグループG1に含まれていたオブジェクトO21は、前世代で統合オブジェクトIDが付与されていないオブジェクトとして扱われて、処理の順番が下げられる。
【0074】
続いて、オブジェクトO15を含むグループG4が処理対象となる。オブジェクトO15は、前世代でグループG2に含まれている。グループG2には統合オブジェクトID「0005」が付与されている。オブジェクトO21は、前世代でグループG1に含まれていたが、オブジェクトO14の処理の際に統合オブジェクトIDが付与されていないオブジェクトとされている。したがって、グループG4は、グループG2の統合オブジェクトID「0005」を引継ぐ。
【0075】
なお、前世代でグループG2に含まれていたオブジェクトO22は、前世代で統合オブジェクトIDが付与されていないオブジェクトとして扱われて、処理の順番が下げられる。
【0076】
最後に、オブジェクトO22が処理対象となる。オブジェクトO22は、前世代でグループG2に含まれていたが、オブジェクトO15の処理の際に統合オブジェクトIDが付与されていないオブジェクトとされている。したがって、オブジェクトO22には、新たな統合オブジェクトID「0010」が払い出される。
【0077】
以上の処理により、統合部14は、統合オブジェクトIDを適切に引継がせることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、グループ化候補判定部12が、同時に撮影された複数のフレームデータのそれぞれで検出およびトラッキングされたオブジェクトのうち、フレームデータが重ね合わされた重複領域内に存在するオブジェクトを候補オブジェクトとして抽出し、グループ化部13が、重なり度合いが所定の閾値以上の複数の候補オブジェクトをグループにまとめて、統合部14が、グループおよびグループ化されていないオブジェクトに統合オブジェクトIDを付与することにより、映像を合成するときに物体のトラッキング処理を各映像において並行して行うことができるので、トラッキング処理時間を短縮できるとともに、映像の合成処理と並行して本実施形態の物体情報処理を実施できる。その結果、合成映像においてリアルタイムでオブジェクトをトラッキングできる。
【符号の説明】
【0079】
1…物体情報処理装置
11…トラッキング結果受信部
12…グループ化候補判定部
13…グループ化部
14…統合部
3…映像処理装置
100…合成処理サーバ
110…合成処理部
120…エンコード処理部
130…物体検出・トラッキング処理部
200…物体情報統合サーバ
300…デコードサーバ
400…統合物体情報受信サーバ