(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】膵臓がんを診断するためのラミニン2の使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20221110BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/574 A
(21)【出願番号】P 2021000357
(22)【出願日】2021-01-05
(62)【分割の表示】P 2018516096の分割
【原出願日】2016-09-28
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2015-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000109015
【氏名又は名称】アボットジャパン合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 栄作
(72)【発明者】
【氏名】越川 直彦
(72)【発明者】
【氏名】清木 元治
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0072349(US,A1)
【文献】特表2015-527562(JP,A)
【文献】A Chan et al,Validation of biomarkers that complement CA19.9 in detecting early pancreatic cancer,Clinical Cancer Research,2014年09月19日,vol.20, no.22,5787-5795
【文献】Hari Kosanam et al,Laminin, gamma 2(LAMC2): a promising new putative pancreatic cancer biomarker identified by proteomic analysis of pancreatic adenocarcinoma tissues,Molecular & Cellular Proteomics,2013年06月24日,vol.12, no.10,2820-2832
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓がんの診断を必要とする対象における膵臓がんの診断を助ける方法であって、
(a)対象からの生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)のレベルを決定すること、
並びに
(b)ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の前記レベルを、それぞれ、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の基準レベルと比較すること、
を含み、
ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の前記レベルが、それぞれ、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の前記基準レベルより大きい場合
は対象が膵臓がんを有する
ことを示す、
方法。
【請求項2】
前記生物学的試料が、全血試料、血漿試料、血清試料、または尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の前記レベルが、免疫測定法を使用して決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ラミニンガンマ2単量体、CEA、およびCA19-9の前記基準レベルが、それぞれ、対照試料中のラミニンガンマ2単量体、CEA、およびCA19-9のレベルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の前記基準レベルが、カットオフレベルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カットオフレベルが、複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが、キャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ラミニンガンマ2単量体の前記レベルが、ラミニンガンマ2単量体に特異的に結合する2H2抗体を使用して決定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
膵臓がんの検出を必要とする対象における膵臓がんを検出するためのキットであって、
(a)ラミニンガンマ2単量体にそれぞれ特異的に結合する1つ以上の抗体、
(b)CEAにそれぞれ特異的に結合する1つ以上の抗体、および
(c)CA19-9にそれぞれ特異的に結合する1つ以上の抗体
を含み、(a)、(b)および(c)のそれぞれが、別々の容器中で提供される、キット。
【請求項10】
ラミニンガンマ2単量体に特異的に結合する2H2抗体を含む、請求項9に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべての全内容を参照により本明細書に完全に組み込む、2015年9月28日に出願された米国仮特許出願第62/233,745号および2016年2月16日に出願された米国仮特許出願第62/295,607号の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、患者における1種以上のバイオマーカーを検出すること、ならびにその量を決定することによる、患者における肝細胞癌または膵臓がんの予後、診断またはリスク特定を決定するための方法および免疫測定法プラットフォームに関する。1種以上のバイオマーカーは、肝細胞癌もしくは膵臓がんを有する患者を特定するために、肝細胞癌療法もしくは膵臓がん療法の候補としての患者を特定するために、肝細胞癌もしくは膵臓がんを発症する患者のリスクを分類するために、または肝細胞癌もしくは膵臓がんの患者の病期もしくは進行のリスクを分類するために、ならびに診断、予後もしくは治療レジメンを決定するために用いることができる。
【背景技術】
【0003】
がんは、例えば、肝細胞癌および膵臓がんなどの、多くの形態で発生する疾患である。肝細胞癌は、最も一般的な形態の肝がんであり、ウイルス性肝炎および/または肝硬変にしばしば続発する。肝細胞癌の検出は、多くの症状が肝臓疾患に伴う症状と重なるため困難であり得る。場合によって、肝細胞癌は、腹部撮像および/または針生検によって検出することができる。
【0004】
膵臓がんは、早期に検出することが困難であり、急速に広がるため、がんに起因する死亡の主要な原因である。したがって、膵臓がんの検出は、一般的にがんの進行期における症状が出現するまで、行われない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、肝細胞癌および膵臓がんのより早期および/またはより正確な検出を可能にする方法を特定する必要性が本技術分野において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一実施形態において、本発明は、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較すること、および(d)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きい場合に対象をHCCを有すると特定することを含む、方法に関する。
【0007】
他の態様において、本発明は、対象が肝細胞癌(HCC)を有するまたは発症するリスクがあるかを判定する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較すること、および(d)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きい場合に対象がHCCを有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、方法に関する。
【0008】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)の進行をモニターする方法であって、(a)対象から第1および第2の生物学的試料を得ること、(b)第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよび第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルを測定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルを比較すること、ならびに(d)(i)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルより大きい場合に対象におけるHCCが進行したまたは(ii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象におけるHCCが進行しなかったと判定することを含む、方法に関する。
【0009】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるHCCを検出するためのキットであって、ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬を含む、キットに関する。
【0010】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)(i)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよびビタミンK依存性凝固因子前駆体II(protein induced vitamin K antagonist-II)(PIVKA-II)のレベル、(ii)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよびアルファ胎児型タンパク質(AFP)のレベルまたは(iii)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベル、PIVKA-IIのレベルおよびAFPのレベルを決定すること、(c)(i)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルとおよびPIVKA-IIのレベルをPIVKA-IIの基準レベルと、(ii)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルとおよびAFPのレベルをAFPの基準レベルとまたは(iii)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、PIVKA-IIのレベルをPIVKA-IIの基準レベルとおよびAFPのレベルをAFPの基準レベルと比較すること、ならびに(d)(i)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、およびPIVKA-IIのレベルがPIVKA-IIの基準レベルより大きい、(ii)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、およびAFPのレベルがAFPの基準レベル大きいまたは(iii)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、PIVKA-IIのレベルがPIVKA-IIの基準レベルより大きく、およびAFPのレベルがAFPの基準レベルより大きい場合に対象をHCCを有すると特定することを含む、方法に関する。
【0011】
他の態様において、本発明は、対象が肝細胞癌(HCC)を有するまたは発症するリスクがあるかどうかを判定する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)(i)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよびPIVKA-IIのレベル、(ii)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよびAFPのレベルまたは(iii)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベル、PIVKA-IIのレベルおよびAFPのレベルを測定すること、(c)(i)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルとおよびPIVKA-IIのレベルをPIVKA-IIの基準レベルと、(ii)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルとおよびAFPのレベルをAFPの基準レベルとまたは(iii)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、PIVKA-IIのレベルをPIVKA-IIの基準レベルとおよびAFPのレベルをAFPの基準レベルと比較すること、ならびに(d)(i)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、PIVKA-IIのレベルがPIVKA-IIの基準レベルより大きい、(ii)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、AFPのレベルがAFPの基準レベル大きいまたは(iii)ラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きく、PIVKA-IIのレベルがPIVKA-IIの基準レベルより大きく、AFPのレベルがAFPの基準レベルより大きい場合に対象が肝細胞癌(HCC)を有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、方法。
【0012】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)の進行をモニターする方法であって、(a)対象から第1および第2の生物学的試料を得ること、(b)(i)第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよびPIVKA-IIの第1のレベルならびに第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルおよびPIVKA-IIの第2のレベル、(ii)第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよびAFPの第1のレベルならびに第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルおよびAFPの第2のレベルまたは(iii)第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベル、PIVKA-IIの第1のレベルおよびAFPの第1のレベルならびに第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベル、PIVKA-IIの第2のレベルおよびAFPの第2のレベルを測定すること、(c)(i)ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルをならびにPIVKA-IIの第1および第2のレベルを、(ii)ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルをならびにAFPの第1および第2のレベルをまたは(iii)ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルを、PIVKA-IIの第1および第2のレベルをならびにAFPの第1および第2のレベルを比較すること、ならびに(d)(1)(i)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルより大きく、PIVKA-IIの第2のレベルがPIVKA-IIの第1のレベルより大きい、(ii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルより大きく、AFPの第2のレベルがAFPの第1のレベルより大きい、もしくは(iii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルより大きく、PIVKA-IIの第2のレベルがPIVKA-IIの第1のレベルより大きく、AFPの第2のレベルがAFPの第1のレベルより大きい場合に対象におけるHCCが進行したと、または(2)(i)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルと同等もしくはより低く、PIVKA-IIの第2のレベルがPIVKA-IIの第1のレベルと同等もしくはより小さい、(ii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルと同等もしくはより低く、AFPの第2のレベルがAFPの第1のレベルと同等もしくはより小さい、もしくは(iii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルと同等もしくはより低く、PIVKA-IIの第2のレベルがPIVKA-IIの第1のレベルと同等もしくはより低く、AFPの第2のレベルがAFPの第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象におけるHCCが進行しなかったと判定することを含む、方法に関する。
【0013】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象におけるHCCを検出するためのキットであって、(i)ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬およびPIVKA-IIを検出するための1つ以上の試薬、(ii)ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬およびAFPを検出するための1つ以上の試薬または(iii)ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬、PIVKA-IIを検出するための1つ以上の試薬およびAFPを検出するための1つ以上の試薬を含む、キットに関する。
【0014】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における膵臓がんを診断する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定すること、(c)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの連勝レベルと比較すること、ならびに(e)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合に対象が膵臓がんを有すると特定することを含む、方法に関する。
【0015】
他の態様において、本発明は、対象が膵臓がんを有するまたは発症するリスクがあるかどうかを判定する方法であって、(a)対象から生物学的試料を得ること、(b)生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定すること、(c)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較すること、ならびに(e)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合に対象が膵臓がんを有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、方法に関する。
【0016】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における膵臓がんの進行をモニターする方法であって、(a)対象から第1および第2の生物学的試料を得ること、(b)第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよび第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルを測定すること、(c)第1の生物学的試料中の、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルならびに第2の生物学的試料中の、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルを測定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルを比較すること、(e)少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1および第2のレベルを比較すること、ならびに(f)(i)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルより大きい場合に対象における膵臓がんが進行したと、または(ii)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象における膵臓がんが進行しなかったと判定することを含む、方法に関する。
【0017】
他の態様において、本発明は、それを必要とする対象における膵臓がんを検出するためのキットであって、(a)ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬および(b)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出するための1つ以上の試薬を含む、キットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ラミニンガンマ2単量体濃度(pg/mL)を相対光単位(RLU)に対してプロットしたグラフを示す。具体的には、各グラフに実施例2で述べる免疫測定法用の代表的な較正曲線を示す。左側のグラフについては、ラミニンガンマ2単量体濃度は、0pg/mL-20000pg/mLである。右側のグラフについては、ラミニンガンマ2単量体濃度は、0pg/mL-100pg/mLである。各較正曲線は、3つの反復実験により得られた。
【
図2A】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表す。x軸の全長に広がる実線は、81.3pg/mLであった、健常ドナー対象群の平均値+2標準偏差(平均値+2SD)を表す。
【
図2B】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表す。x軸の全長に広がる実線は、79.5pg/mLであった、健常ドナー対象群の平均値+2標準偏差(平均値+2SD)を表す。矢印は、指定されたAFPおよびCA19-9濃度に対する対象を特定したものであった。
【
図2C】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表す。x軸の全長に広がる実線は、75.9pg/mLであった、ROC分析により得られたカットオフ値を表す。
【
図2D】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表す。x軸の全長に広がる実線は、75.9pg/mLであった、ROC分析により得られたカットオフ値を表す。矢印は、指定されたAFPおよびCA19-9濃度に対する対象を特定したものであった。
【
図3A】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。「I」、「II」、「III」および「IV」という表示は、それぞれI期HCC、II期HCC、III期HCCおよびIV期HCCを有する対象群を表した。「LC」は、肝硬変を表し、「CH」は、肝炎を示した。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表す。x軸の全長に広がる実線は、79.5pg/mLであった、健常ドナー対象群の平均値+2標準偏差(平均値+2SD)を表した。矢印は、指定されたAFP濃度に対する対象を特定したものであった。
【
図3B】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。「I」、「II」、「III」および「IV」という表示は、それぞれI期HCC、II期HCC、III期HCCおよびIV期HCCを有する対象群を表した。「LC」は、肝硬変を表し、「CH」は、肝炎を示した。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表した。x軸の全長に広がる実線は、79.5pg/mLであった、ROC分析により得られたカットオフ値を表す。矢印は、指定されたAFP濃度に対する対象を特定したものであった。
【
図4A】HCCを有する対象を肝硬変(LC)、肝炎(CH)および健常ドナー対象と比較した、ラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、PIVKA-IIおよびAFPマーカーの受診者動作特性(ROC)グラフを示す。
【
図4B】HCCを有する対象を健常ドナー対象と比較した、ラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、PIVKA-IIおよびAFPマーカーの受診者動作特性(ROC)グラフを示す。
【
図4C】HCCを有する対象を肝炎(CH)と比較した、ラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、PIVKA-IIおよびAFPマーカーの受診者動作特性(ROC)グラフを示す。
【
図5A】HCCならびにカットオフ値(79.5pg/mL、健常ドナー群の平均値+2SD)と比較してラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、AFPおよび/またはPIVKA-IIのレベルの上昇を有する対象のベン図を示す。各百分率値は、各カットオフ値と比較して表示したマーカーのレベルの上昇を有していたHCC対象の百分率を表した。
【
図5B】HCCならびにカットオフ値(75.9pg/mL、ROC分析から得られた)と比較してラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、AFPおよび/またはPIVKA-IIのレベルの上昇を有する対象のベン図を示す。各百分率値は、各カットオフ値と比較して表示したマーカーのレベルの上昇を有していたHCC対象の百分率を表した。
【
図5C】HCCならびにカットオフ値(116.6pg/mL、HCCを非悪性慢性肝疾患と区別する最適なカットオフ値)と比較してラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、AFPおよび/またはPIVKA-IIのレベルの上昇を有する対象のベン図を示す。各百分率値は、各カットオフ値と比較して表示したマーカーのレベルの上昇を有していたHCC対象の百分率を表した。
【
図6A】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。「III」および「IV」という表示は、それぞれIII期膵臓がんおよびIV期膵臓がんを有する対象群を表した。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表した。x軸の全長に広がる実線は、79.5pg/mLであった、健常ドナー対象群の平均値+2標準偏差(平均値+2SD)を表した。
【
図6B】対象の群をラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)に対してプロットしたグラフを示す。「III」および「IV」という表示は、それぞれIII期膵臓がんおよびIV期膵臓がんを有する対象群を表した。各対象群について、括弧内の数は、当該群における対象の数を表し、実線は、当該群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度(pg/mL)を表した。x軸の全長に広がる実線は、75.9pg/mLであった、ROC分析により得られたカットオフ値を表した。
【
図7】膵臓がんを有する対象を膵臓炎を有する対象および健常ドナー対象と比較した、ラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、CEAおよびCA19-9マーカーの受診者動作特性(ROC)グラフを示す。
【
図8】膵臓がんならびにカットオフ値と比較してラミニンガンマ2単量体(Ln-γ2)、CEAおよびCA19-9のレベルの上昇を有する対象のベン図を示す。各百分率値は、各カットオフ値と比較して表示したマーカーのレベルの上昇を有していた膵臓がん対象の百分率を表した。
【
図9】正常対象(対照)(n=52)、慢性肝疾患(CLD)を有する患者(n=24)およびHCCを有する患者(n=57)からの血清試料中の測定された血清Ln-γ2濃度の散布図を示す。水平直線は、濃度の中央値を表す。略語:Ln-γ2、ラミニンγ2
【
図10】正常対象(対照)(n=52)、慢性肝疾患を有する患者(n=24)およびHCCを有する患者(n=57)からの血清試料中の測定された血清AFP濃度の散布図を示す。略語:CLD、慢性肝疾患;HCC、肝細胞癌;AFP、アルファ胎児型タンパク質;PIVKA-II、ビタミンK欠乏により誘導されたプロトロンビン-II;SE、標準誤差
【
図11】正常対象(対照)(n=52)、慢性肝疾患を有する患者(n=24)およびHCCを有する患者(n=57)からの血清試料中の測定された血清PIVKA-II濃度の散布図を示す。水平直線は、濃度の中央値を表す。略語:CLD、慢性肝疾患;HCC、肝細胞癌;AFP、アルファ胎児型タンパク質;PIVKA-II、ビタミンK欠乏により誘導されたプロトロンビン-II;SE、標準誤差
【
図12】TNM分類に基づく腫瘍の病期分類別のLn-γ2値を示すグラフである。水平直線は、濃度の中央値を表す。略語:CLD、慢性肝疾患
【
図13】TNM分類に基づく腫瘍の病期分類別のAFP値を示すグラフである。水平直線は、濃度の中央値を表す。略語:CLD、慢性肝疾患
【
図14】TNM分類に基づく腫瘍の病期分類別のPIVKA-II値を示すグラフである。水平直線は、濃度の中央値を表す。略語:CLD、慢性肝疾患
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示は、肝細胞癌および/または膵臓がんを検出するためのバイオマーカーに関する。本開示は、対象における肝細胞癌または膵臓がんを診断し、予知し、そのリスクを分類し、その進行をモニターするための、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEA、CA19-9またはそれらの組合せのレベルを解析することまたは定量することを対象とする。肝細胞癌を検出するためのバイオマーカーは、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFPまたはそれらの組合せであり得る。膵臓がんを検出するためのバイオマーカーは、ラミニンガンマ2単量体、CEA、CA19-9またはそれらの組合せであり得る。
【0020】
本開示は、ラミニンガンマ2単量体バイオマーカーを用いて、肝細胞癌および/または膵臓がんを有する患者を、特定するもしくは診断する助けとすることを含む、特定するもしくは診断することができ、患者が肝細胞癌および/または膵臓がんに罹患しているかどうかを特定するもしくは特定する助けとすることができ、肝細胞癌および/または膵臓がんを発症する患者のリスクを分類することができ、ならびに診断、予後もしくは治療レジメンを決定するもしくは決定する助けとすることができる、方法を開示する。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、肝細胞癌もしくは膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがある対象において肝細胞癌もしくは膵臓がんに罹患していないまたは罹患するリスクがない対象と比較してより高い。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、進行期の肝細胞癌もしくは膵臓がんにより増加し得る。本明細書で述べる方法は、肝細胞癌および/または膵臓がんに罹患している患者を、特定するもしくは診断する助けとすることを含む、特定し、診断するためにPIVKA-II、AFP、CEA、CA19-9またはそれらの組合せのような、他のバイオマーカーと共に用いることがきる。
【0021】
この項および本明細書における全開示において用いる項の見出しは、単に構成の目的のためのものであり、限定的なものではない。
【0022】
1. 定義
別途定義しない限り、本明細書で用いるすべての技術および科学用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を有する。不一致の場合、定義を含む、本文書が優先する。本明細書で述べるものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料を以下で述べる。本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、それらの全体として参照により組み込む。本明細書で開示する材料、方法および実施例は、例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。
【0023】
「含む(comprise(s))」、「含む(include(s))」、「を有する」、「有する」、「できる」、「含む(contain(s))」という用語およびそれらの変形形態は、本明細書で用いているように、追加の行為または構造の可能性を排除しない開放移行句、用語または語であるものとする。単数形「a」、「an」および「the」は、前後関係から明らかでない限り、複数の意味を含む。本開示は、明確に示されているか否かを問わず、本明細書で示す実施形態または要素を「含む」、「からなる」および「から本質的になる」他の実施形態も予期する。
【0024】
本明細書における数値範囲の列挙について、同じ精度を有する間に存在する各介在する数が明確に予期される。例えば、6-9の範囲については、7および8の数が6および9に加えて予期され、6.0-7.0の範囲については、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0が明確に予期される。
【0025】
「曲線下面積」または「AUC」は、ROC曲線の下の面積を意味する。ROC曲線下のAUCは、正確さの尺度である。1の面積は、完全な検査(perfect test)を表すのに対して、0.5の面積は、無意味な検査(insignificant test)を表す。好ましいAUCは、少なくとも約0.700、少なくとも約0.750、少なくとも約0.800、少なくとも約0.850、少なくとも約0.900、少なくとも約0.910、少なくとも約0.920、少なくとも約0.930、少なくとも約0.940、少なくとも約0.950、少なくとも約0.960、少なくとも約0.970、少なくとも約0.980、少なくとも約0.990または少なくとも約0.995であり得る。
【0026】
「がん」は、本明細書で用いているように体内の異常な細胞が制御されず、調節されない増殖を指す。がん性細胞は、悪性細胞とも呼ばれる。がんは、身体の隣接部位を侵し、リンパ系または血流を介して身体のより遠隔な部位にも広がり得る。がんは、副腎皮質癌、肛門がん、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、消化管原発不明癌、子宮頚がん、結腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、ユーイング腫瘍(PNET)、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼内黒色腫、眼のがん、胆嚢がん、胃がん(胃)、性腺外胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、頭頸部がん、下咽頭がん、島細胞癌、腎臓がん(腎細胞がん)、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇がんおよび口腔がん、肝臓がん(肝細胞癌を含む)、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、中枢神経系(原発)リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、悪性中皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、多発性骨髄腫および他の形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、鼻咽頭がん、骨髄芽細胞腫、口腔がん、口咽頭がん、骨肉腫、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、膵外分泌部のがん、島細胞癌、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、形質細胞腫瘍、前立腺がん、横紋筋肉腫、直腸がん、腎細胞がん(腎臓のがん)、腎盂および尿管移行上皮細胞、唾液腺がん、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、軟組織肉腫、精巣がん、悪性胸腺腫、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、まれな小児がん、膣がん、外陰がんならびにウィルムス腫瘍を含み得るが、これらに限定されない。
【0027】
「成分(component)」、「複数の成分(components)」または「少なくとも1つの成分」は、一般的に、本明細書で述べる方法および当技術分野で公知の方法に従って、患者の尿、血清または血漿試料のような試験試料のアッセイ用のキットに含めることができる捕捉抗体、検出またはコンジュゲート、キャリブレーター、対照、感度パネル、容器、緩衝液、希釈剤、塩、酵素、酵素の補因子、検出試薬、前処理試薬/溶液、基質(例えば、溶液としての)、停止溶液などを意味する。いくつかの成分は、アッセイ用に溶液中に存在または再構成のために凍結乾燥させ得る。
【0028】
「対照対象」は、本明細書で用いているように健常対象、すなわち、肝細胞癌、膵臓がんまたは肝細胞癌もしくは膵臓がん以外のがんの臨床徴候または症状を有さない対象を意味する。対照対象は、肝細胞癌、膵臓がんまたは肝細胞癌もしくは膵臓がん以外のがんのさもなければ検出されない臨床徴候または症状について臨床的に評価され、その評価は、定期健康診断および/または臨床検査を含み得る。
【0029】
「対照群」は、本明細書で用いているように対照対象または健常対象の群、すなわち、肝細胞癌、膵臓がんまたは肝細胞癌もしくは膵臓がん以外のがんの臨床徴候または症状を有さない対象の群を意味する。
【0030】
「標識」および「検出可能な標識」は、本明細書で用いているように抗体と分析物との反応を検出可能にするために抗体または分析物に結合させた部分を意味し、そのように標識された抗体または分析物は、「検出可能に標識された」と呼ばれる。標識は、視覚または計測による手段によって検出可能であるシグナルを発生させ得る。様々な標識は、色原体、蛍光化合物、化学発光化合物、放射性化合物などのような、シグナル発生物質を含む。標識の代表的な例は、光を発生する部分、例えば、アクリジニウム化合物および蛍光を発生する部分、例えば、フルオレセインを含む。他の標識は、本明細書に記載されている。この点に関して、該部分は、それ自体、検出可能であり得ないが、他の部分との反応により検出可能になり得る。「検出可能に標識された」という用語の使用は、そのような標識化を含むものとする。
【0031】
当技術分野で公知である適切な検出可能な標識を用いることができる。例えば、検出可能な標識は、放射性標識(3H、14C、32P、33P、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Hoおよび153Smのような)、酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリペルオキシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどのような)、化学発光標識(アクリジニウムエステル、チオエステルまたはスルホンアミド;ルミノール、イソルミノール、フェナントリジニウムエステルなどのような)、蛍光標識(フルオレセイン(例えば、5-フルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、3,6-カルボキシフルオレセイン、5(6)-カルボキシフルオレセイン、ヘキサクロロフルオレセイン、6-テトラクロロフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネートなど)のような)、ローダミン、フィコビリタンパク質、R-フィコエリスリン、量子ドット(例えば、硫化亜鉛キャップカドミウムセレニド)、温度測定標識または免疫ポリメラーゼ連鎖反応標識であり得る。標識、標識手順および標識の検出の概論は、PolakおよびVan Noorden、Introduction to Immunocytochemistry、第2版、Springer Verlag、N.Y.(1997)ならびにMolecular Probes、Inc.、Eugene、Oregonにより出版された総合ハンドブックおよびカタログである、Haugland、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(1996)に見いだされる。蛍光標識は、FPIAに用いることができる(例えば、それらの全体として参照により本明細書に組み込む、米国特許第5,593,896号、第5,573,904号、第5,496,925号、第5,359,093号および第5,352,803号参照)。アクリジニウム化合物は、均一系化学発光アッセイにおける検出可能標識として用いることができる(例えば、Adamczykら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 16巻、1324-1328頁(2006); Adamczykら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 4巻、2313-2317頁(2004); Adamczykら、 Biorg. Med. Chem. Lett. 14巻、3917-3921頁(2004);およびAdamczykら、Org. Lett. 5巻、3779-3782頁(2003)参照)。
【0032】
一態様において、アクリジニウム化合物は、アクリジニウム-9-カルボキサミドである。アクリジニウム-9-カルボキサミドを調製する方法は、Mattingly、J. Biolumin. Chemilumin. 6巻、107-114頁(1991); Adamczykら、 J. Org. Chem. 63巻、5636-5639頁(1998); Adamczykら、Tetrahedron 55巻、10899-10914頁(1999); Adamczykら、Org. Lett. 1巻、779-781頁(1999); Adamczykら、Bioconjugate Chem. 11巻、714-724頁(2000); Mattinglyら、 In Luminescence Biotechnology: Instruments and Applications; Dyke, K. V.編、CRC Press: Boca Raton、77-105頁(2002); Adamczykら、Org. Lett. 5巻、3779-3782頁(2003);ならびに米国特許第5,468,646号、第5,543,524号および第5,783,699号(それぞれがそれに関するその教示についてその全体として参照により本明細書に組み込む)に記載されている。
【0033】
アクリジニウム化合物の他の例は、アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルである。式IIのアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルの例は、10-メチル-9-(フェノキシカルボニル)アクリジニウムフルオロスルホネート(Cayman Chemical、Ann Arbor、MIから入手可能)である。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルを調製する方法は、McCapraら、 Photochem. Photobiol. 4巻、1111-21頁(1965); Razaviら、 Luminescence 15巻、245-249頁(2000); Razaviら、Luminescence 15巻、239-244頁(2000); および米国特許第5,241,070号(それぞれがそれに関するその教示についてその全体として参照により本明細書に組み込む)に記載されている。そのようなアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、シグナルの強度および/またはシグナルの速度に関して、少なくとも1つのオキシダーゼによる分析物の酸化で生成する過酸化水素の効率の良い化学発光指示薬である。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルの化学発光過程は、速やかに、すなわち、1秒未満に完了するが、アクリジニウム-9-カルボキサミドの化学発光は、2秒以上に及ぶ。しかし、アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、タンパク質の存在下でその化学発光特性を失う。したがって、それらを使用するには、シグナルの発生および検出時にタンパク質が存在しないことが要求される。試料中のタンパク質を分離または除去する方法は、当業者に周知であり、限外濾過、抽出、沈殿、透析、クロマトグラフィーおよび/または消化を含むが、これらに限定されない(例えば、Wells、High Throughput Bioanalytical Sample Preparation. Methods and Automation Strategies、Elsevier(2003)参照)。試験試料から除去されたまたは分離されたタンパク質の量は、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%であり得る。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルおよびその使用に関するさらなる詳細は、2007年4月9日に出願された米国特許出願公開第11/697,835号に示されている。アクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルは、脱気無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)または水性コール酸ナトリウムのような適切な溶媒に溶解することができる。
【0034】
「肝細胞癌の病期を分類するためのTNMシステム」または「HCCの病期を分類するためのTNMシステム」は、本明細書で互換的に用い、肝細胞癌(HCC)の病期を分類するためのシステムを意味する。「T」は、センチメートル(cm)で測定された、原発腫瘍の数およびサイズ、ならびにがんが隣接する血管または臓器中に成長したかどうかを表す。「N」は、隣接する(局所)リンパ節への広がりの程度を表す。「M」は、がんが身体の遠隔部位に転移した(広がった)かどうかを示す。数または文字が「T」、「N」および「M」の後に出現して、これらの因子のそれぞれに関するより詳細を示し得る。具体的には、数0-4は、増加しつつある重症度を示す。文字「X」は、情報が得られなかったため「評価することができない」を示す。
【0035】
「T」群は、「TX」、「T0」、「T1」、「T2」、「T3a」、「T3b」および「T4」であり得る。「TX」は、原発腫瘍を評価することができないことを示す。「T0」は、原発腫瘍の証拠なしを示す。「T1」は、血管中に成長しなかった単独の腫瘍(任意サイズ)を示す。「T2」は、血管中に成長した単独の腫瘍(任意サイズ)を示すまたは1つ以上の腫瘍であるが、どの腫瘍も直径で5cm(約2インチ)より大きくないことを示す。「T3a」は、直径で5cmより大きい少なくとも1つの腫瘍を含む、1つ以上の腫瘍を示す。「T3b」は、肝臓の大静脈(門脈または肝静脈)の主要な枝中に成長した少なくとも1つの腫瘍(任意サイズ)を示す。「T4」は、腫瘍(任意サイズ)が隣接臓器(胆嚢以外)中に成長したことまたは腫瘍が肝臓を覆う組織の薄い層(臓側腹膜と呼ばれる)中に成長していることを示す。
【0036】
「N」群は、「NX」、「N0」および「N1」であり得る。「NX」は、局所(隣接)リンパ節を評価することができないことを示す。「N0」は、がんが局所リンパ節に広がらなかったことを示す。「N1」は、がんが局所リンパ節に広がったことを示す。
【0037】
「M」群は、「M0」および「M1」であり得る。「M0」は、遠隔リンパ節または他の臓器に広がらなかったことを示す。「M1」は、がんが遠隔リンパ節または臓器に広がったことを示す。肝細胞癌を含む、肝がんは、腹部の内層(腹膜)、肺および骨に広がり得る。
【0038】
「I期肝細胞癌」および「I期HCC」は、本明細書で互換的に用いているように、T1、N0およびM0のTNM分類を示す。血管中に成長しなかった単独の腫瘍(任意サイズ)が存在する。がんは、隣接リンパ節または遠隔部位に広がらなかった。
【0039】
「II期肝細胞癌」および「II期HCC」は、本明細書で互換的に用いているように、T2、N0およびM0のTNM分類を示す。血管中に成長した単独の腫瘍(任意サイズ)が存在するまたはいくつかの腫瘍が存在し、すべてが直径で5cm(2インチ)またはそれ未満である。がんは、隣接リンパ節または遠隔部位に広がらなかった。
【0040】
「IIIA期肝細胞癌」および「IIIA期HCC」は、本明細書で互換的に用い、T3a、N0およびM0のTNM分類を示す。1つ以上の腫瘍が存在し、少なくとも1つの腫瘍が直径で5cm(2インチ)より大きい。がんは、隣接リンパ節または遠隔部位に広がらなかった。
【0041】
「IIIB期肝細胞癌」および「IIIB期HCC」は、本明細書で互換的に用いているように、T3b、N0およびM0のTNM分類を示す。少なくとも1つの腫瘍が肝臓の主要な静脈(門脈または肝静脈)の枝中に成長している。がんは、隣接リンパ節または遠隔部位に広がらなかった。
【0042】
「IIIC期肝細胞癌」および「IIIC期HCC」は、本明細書で互換的に用い、T4、N0およびM0のTNM分類を示す。腫瘍が隣接臓器(胆嚢以外)中に成長しているまたは腫瘍が肝臓を覆う外膜(outer)中に成長した。がんは、隣接リンパ節または遠隔部位に広がらなかった。
【0043】
「IVA期肝細胞癌」および「IVA期HCC」は、本明細書で互換的に用いているように、任意のT、N1およびM0のTNM分類を示す。肝臓における腫瘍は、あらゆるサイズまたは数であり得、腫瘍は、血管または隣接臓器中に成長し得た。がんは、隣接リンパ節に広がった。がんは、遠隔部位に広がらなかった。
【0044】
「IVB期肝細胞癌」および「IVB期HCC」は、本明細書で互換的に用い、任意のT、任意のNおよびM1のTNM分類を示す。がんは、身体の他の部位に広がった。腫瘍は、あらゆるサイズまたは数であり得、隣接リンパ節は、罹患していてもしていなくてもよい。
【0045】
「肝がん」は、本明細書で用いているように肝臓で発生するがんを意味する。肝がんは、肝細胞癌(HCC)および線維層板型癌を含み得る。ほとんどの場合、肝がんの原因は、通常、肝臓の瘢痕化(すなわち、肝硬変)である。
【0046】
「肝硬変」は、本明細書で用いているように線維症、瘢痕組織および再生結節(すなわち、損傷組織が再生する過程のために発生し、肝機能の喪失につながる塊)による肝臓組織の置換を特徴とする慢性肝疾患の帰結を意味する。肝臓の機能単位の構造組織が破壊された状態になり、その結果、肝臓の血流が途絶し、肝機能が破綻した状態になる。肝硬変は、アルコール依存症、B型およびC型肝炎ならびに脂肪肝疾患によって最も一般的に引き起こされるが、多くの他の可能な原因を有する。いくつかの例は、特発性である(すなわち、原因不明のもの)。一旦肝硬変が発生したならば、門脈圧亢進症、肝不全および肝がんを含む、肝疾患の重篤な合併症が起こり得る。一旦肝硬変が発生し、硬変が前がん状態であると見なすべきであるならば、肝がんのリスクは、著しく増大する。硬変は、アルコールの乱用、肝臓の自己免疫疾患、BまたはC型肝炎ウイルス感染、長期(慢性)である肝臓の炎症および体内の鉄の過負荷(ヘモクロマトーシス)によって引き起こされ得る。BまたはC型肝炎を有する患者は、患者が硬変を発症しなかったとしても、肝がんのリスクがある。
【0047】
「肝疾患」は、本明細書で用いているように肝臓の損傷または疾患を意味する。肝機能不全の症状は、身体的徴候ならびに消化不良、血糖の問題、免疫障害、脂肪の異常吸収および代謝の問題に関連する様々な症状を含む。肝疾患は、肝線維症、肝硬変および肝がんを含む。すべての慢性肝疾患は、肝線維症の原因となり得る。慢性肝疾患は、慢性ウイルス性B型肝炎およびアルコール性肝疾患によって引き起こされ得る。
【0048】
「肝線維症」は、本明細書で用いているようにほとんどの種類の慢性肝疾患で起こるコラーゲンを含む細胞外マトリックスタンパク質の過剰な蓄積を指す。肝線維症は、損傷または疾病に対する肝臓の反応を表す瘢痕化過程である。肝線維症は、B型およびC型肝炎、寄生虫に起因する感染、過剰なアルコール使用ならびに医薬品を含む有毒な化学物質への曝露および胆管閉塞によって引き起こされ得る。進行肝線維症は、硬変、肝不全および門脈圧亢進症をもたらし、しばしば肝移植を必要とする。
【0049】
「新形成」は、本明細書で用いているように組織の異常な増殖を意味する。新形成は、一般的に腫瘍と呼ばれる。異常な増殖は、通常腫瘤を形成するが、必ずしもそうとは限らない。
【0050】
「正常対照」または「健常対照」は、本明細書で用いているように肝細胞癌、膵臓がんもしくはなんらかのがんを有さない、またはがんを発症するリスクがない、対象から採取された試料もしくは標本、または実際の対象を意味する。
【0051】
「正常」、「健常」および「対照」は、本明細書で互換的に用い、肝細胞癌、膵臓がんもしくはなんらかのがんを有さない、またはがんを発症するリスクがない、対象から採取された試料または対象を意味する。
【0052】
「良性膵疾患」および「膵疾患」は、本明細書で互換的に用いているように、がんでないまたはがんにならなかった膵疾患を意味する。良性膵疾患は、膵炎、様々な種類の嚢胞および腫瘍、膵上皮内腫瘍(PanIN)および膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)病変ならびに粘液性嚢胞腫瘍(MCN)を含む。
【0053】
「早期膵臓がん」は、本明細書で用いているように膵臓、膵臓外または隣接リンパ節に限定されるが、隣接する主要な血管もしくは神経または遠隔部位に拡大しなかった膵臓がんを意味する。早期膵臓がんは、0期、I期およびII期膵臓がんを含む。Yachidaら(2010) Nature 467巻、1114-1119頁を参照されたい。National Comprehensive Cancer Network(NCCN) Guidelines Version 2.2012 Pancreatic Adenocarcinomaも参照されたい。
【0054】
「進行期膵臓がん」は、本明細書で用いているように隣接する主要な血管、神経または遠隔臓器に拡大した膵臓がんを意味する。進行期膵臓がんは、III期またはIV期膵臓がんを含む。
【0055】
「0期膵臓がん」は、本明細書で用いているように膵臓における細胞の単層に限られた膵臓がんを意味する。膵臓がんは、撮像検査でまたは裸眼で見えない。腫瘍は、膵管細胞の最上層に限定され、より深部の組織に浸潤していないまたは膵外に広がっていない。0期膵臓がんは、膵上皮内癌または膵上皮内腫瘍III(PanIn III)と時折呼ばれる。
【0056】
「I期膵臓がん」は、本明細書で用いているように膵臓に限定されまたは限られ、隣接するリンパ節に広がらなかったがんを意味する。「IA期」は、膵臓に限定され、サイズが2cm未満である腫瘍を指す。「IB期」は、膵臓に限定され、サイズが2cmより大きい腫瘍を指す。
【0057】
「II期膵臓がん」は、本明細書で用いているように膵臓外に成長したまたは隣接リンパ節に広がった局所に広がるがんを意味する。「IIA期」は、膵臓外に成長しているが、大血管、隣接リンパ節または遠隔部位に成長していない腫瘍を指す。「IIB期」は、膵臓に限定されるまたは膵臓外に成長しているが、隣接大血管もしくは主要な神経中に広がらなかった腫瘍を指す。IIB期は、隣接リンパ節に広がり得るが、遠隔部位に広がらなかった。
【0058】
「III期膵臓がん」は、本明細書で用いているように隣接する主要血管または神経に拡大したが、転移しなかったより広く広がるがんを意味する。腫瘍は、膵臓外の隣接大血管もしくは主要神経中に成長し、隣接リンパ節に広がり得るまたは広がり得ない。それは、遠隔部位に広がらなかった。
【0059】
「IV期膵臓がん」は、本明細書で用いているように遠隔臓器または部位に広がった確認された広がるがんを意味する。IVA期膵臓がんは、局所に限定されるが、隣接臓器または血管を巻き添えにし、それにより、外科的除去を妨げる。IVA期膵臓がんは、限局性または局所的に進行したとも呼ばれる。IVB期膵臓がんは、遠隔臓器、最も一般的には肝臓に広がった。IVB期膵臓がんは、転移性とも呼ばれる。
【0060】
「所定のカットオフ」および「所定のレベル」は、本明細書で用いているようにアッセイ結果を所定のカットオフ/レベルと比較することによって診断、予後または治療有効性結果を評価するために用いられるアッセイカットオフ値を意味し、所定のカットオフ/レベルは、様々な臨床パラメーター(例えば、疾患の存在、病期、疾患の重症度、疾患の進行、非進行または改善等)と既に関連付けられたまたは関連させたものである。本開示は、例示的な所定のレベルを示す。しかし、カットオフ値は、免疫測定法の本質(例えば、用いられる抗体、反応条件、試料の純度等)によって異なり得ることは、周知である。本開示により提供された説明に基づいて他の免疫測定法についての免疫測定法固有のカットオフ値を得るために他の免疫測定法に本明細書における開示を適応することは、さらに十分に当業者の範囲内にある。所定のカットオフ/レベルの正確な値は、アッセイ間で異なり得るが、本明細書で述べる相関は、一般的に適用できる。
【0061】
「前処理試薬」、例えば、溶解、沈殿および/または可溶化試薬は、本明細書で述べる診断アッセイに用いているように、細胞を溶解し、および/または試験試料中に存在する分析物を可溶化するものである。前処理は、本明細書でさらに述べるように、すべての試料について必要ではない。とりわけ、分析物(すなわち、ラミニンガンマ2単量体、PIKVA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9、ラミニンガンマ2単量体、PIKVA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9の断片、ラミニンガンマ2単量体、PIKVA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9の変異体、またはそれらのいずれかの組合せ)を可溶化することは、試料中に存在する内在性結合タンパク質からの分析物の放出を伴う。前処理試薬は、均一(分離ステップを必要としない)または不均一(分離ステップを必要とする)であり得る。不均一前処理試薬の使用により、アッセイの次のステップに進む前に試験試料から沈殿した分析物結合タンパク質が除去される。前処理試薬は、(a)1つ以上の溶媒および塩、(b)1つ以上の溶媒、塩および界面活性剤、(c)界面活性剤、(d)界面活性剤および塩または(e)細胞溶解および/もしくは分析物の可溶化に適する試薬もしくは試薬の組合せを任意選択的に含み得る。
【0062】
本明細書で述べる免疫測定法およびキットに関連する「品質管理試薬」は、キャリブレーター、対照および感度パネルを含むが、これらに限定されない。抗体または分析物のような、分析物の濃度の内挿のための較正(標準)曲線を作るために「キャリブレーター」または「標準」を一般的に用いる(例えば、複数のような、1つ以上)。または、所定の陽性/陰性カットオフに近い、単一のキャリブレーターを用いることができる。複数のキャリブレーター(すなわち、1つ以上のキャリブレーターまたは様々な量のキャリブレーター)は、「感度パネル」を含むように組み合わせて用いることができる。
【0063】
対象(例えば、患者)の「リスク評価」、「リスク分類」、「リスクの特定」または「リスク層別化」は、本明細書で用いているように、より多くの情報に基づいて対象に関する治療法の決定を下すことができるように、疾患の発症または疾患の進行を含む将来の事象の発生のリスクを予測するための、バイオマーカーを含む因子の評価を意味する。
【0064】
「試料」、「生物学的試料」、「試験試料」、「標本」、「対象からの試料」、「対象から得られた試料」および「患者試料」は、本明細書で用いているように互換的に用いることができ、血液、組織、尿、血清、血漿、羊水、脳脊髄液、胎盤細胞もしくは組織、内皮細胞、白血球または単球であり得る。試料は、患者から得られたままで直接用いることができるまたは本明細書で述べるようにもしくは別途当技術分野で公知のようになんらかの方法で試料の特性を修正するために、濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、妨害成分の不活性化、試薬の添加などによるように、前処理することができる。
【0065】
試料を得るためにあらゆる細胞型、組織または体液を利用することができる。そのような細胞型、組織および液は、生検および剖検試料のような組織の切片、組織学的目的のために採取された凍結切片、血液(全血のような)、血漿、血清、痰、糞便、涙液、粘液、唾液、気管支肺胞洗浄(BAL)液、毛、皮膚、赤血球、血小板、間質液、水晶体液、脳脊髄液、汗、鼻汁、滑液、月経、羊水、精液等を含み得る。細胞型および組織は、リンパ液、腹水、婦人科体液、尿、腹腔液、脳脊髄液、膣すすぎにより収集された液または膣洗浄により収集された液も含み得る。組織または細胞型は、動物から細胞の試料を除去することによって得ることができるが、以前に単離された細胞(例えば、他人により、他の時点におよび/または他の目的のために単離された)を用いることによっても実現することができる。処理またはアウトカム歴を有するもののような、保管組織も用いることができる。タンパク質またはヌクレオチドの単離および/または精製は、必要でないことがあり得る。
【0066】
尿、血液、血清および血漿ならびに他の体液を採取し、取り扱い、処理する、当技術分野で周知の方法が本開示の実施に際して用いられる。試験試料は、目的の分析物に加えて、抗体、抗原、ハプテン、ホルモン、薬物、酵素、受容体、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのようなさらなる部分を含み得る。例えば、試料は、対象から得られた全血試料であり得る。試験試料、とりわけ全血は、本明細書で述べるように免疫測定の前に例えば、前処理試薬により処理することが必要でありまたは望ましいことがあり得る。前処理が必要でない場合(例えば、大部分の尿試料、前処理済み保管試料等)でさえ、試料の前処理は、単に便宜のために実施することができる選択肢である(例えば、商業プラットフォームにおけるプロトコールの一部として)。試料は、対象から得られたままで直接または試料の特性を修正するための前処理の後に用いることができる。前処理は、抽出、濃縮、妨害成分の不活性化および/または試薬の添加を含み得る。
【0067】
「感度」という用語は、本明細書で用いているように真の陽性の数に偽陰性の数を加算したもので割った真の陽性の数を意味し、感度(「sens」)は、0<sens<1の範囲内にあり得る。対象が実際には肝細胞癌または膵臓がんを有する場合に対象が肝細胞癌または膵臓がんを有さないと誤って特定されないように、理想的には、本明細書における方法の実施形態は、ゼロに等しいまたはほぼゼロに等しい偽陰性の数を有する。逆に、陰性を正しく分類する予測アルゴリズムの能力の評価、すなわち、感度と相補的な測定がしばしば行われる。
【0068】
「特異度」という用語は、本明細書で用いているように真の陰性の数に偽陽性の数を加算したもので割った真の陰性の数を意味し、特異度(「spec」)は、0<spec<1の範囲内にあり得る。対象が実際には肝細胞癌または膵臓がんを有さない場合に対象が腺腫を有すると誤って特定されないように、理想的には、本明細書で述べる方法は、ゼロに等しいまたはほぼゼロに等しい偽陽性の数を有する。したがって、1または100%に等しい感度および特異度の両方を有する方法が好ましい。
【0069】
「較正組成物の系列」は、既知濃度のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9を含む複数の組成物を意味し、組成物のそれぞれは、系列における他の組成物とラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9が異なる。
【0070】
「対象」、「患者」または「方法における対象」という用語は、本明細書で互換的に用いているように、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルまたはアカゲザル、チンパンジー等のようなサル))およびヒトを含むが、これらに限定されない、脊椎動物を意味する。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトまたは非ヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、肝細胞癌および/もしくは膵臓がんまたは肝細胞癌もしくは膵臓がん以外のがんを発症するリスクがあるもしくはリスクがあると推測されるまたは既に有するヒト対象であり得る。
【0071】
「治療する」、「治療された」または「治療すること」は、本明細書で用いているように治療を意味し、その目的は、望ましくない生理学的状態、障害または疾患を遅くする(軽減する)こと、または有益なまたは所望の臨床結果を得ることである。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能もしくは非検出可能か、または状態、障害もしくは疾患の向上もしくは改善かを問わず、症状の軽減;状態、障害もしくは疾患の程度の低下;状態、障害もしくは疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと);状態、障害もしくは疾患の進行の発生の遅延もしくは緩徐化;状態、障害もしくは疾患状態の改善;ならびに寛解(部分的もしくは完全を問わず)を含むが、これらに限定されない。治療は、治療を受けない場合に予期される生存と比較して生存を延長させることも含む。
【0072】
「変異体」は、核酸に関して本明細書で用いているように(i)参照ヌクレオチド配列の一部もしくは断片;(ii)参照ヌクレオチド配列もしくはその一部の相補体;(iii)参照核酸と実質的に同一である核酸もしくはその相補体;または(iv)参照核酸と厳密条件下でハイブリダイズする核酸、その相補体もしくはそれと実質的に同一である配列を意味する。
【0073】
変異体は、挿入、欠失または同類置換によりアミノ酸配列が異なるが、少なくとも1つの生物学的活性を保持しているペプチドまたはポリペプチドとさらに定義することができる。「生物学的活性」の代表的な例は、特異抗体により結合されるまたは免疫反応を促進する能力を含む。変異体は、少なくとも1つの生物学的活性を保持しているアミノ酸配列を有する参照タンパク質と実質的に同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質を記述するためにも本明細書において用いる。アミノ酸の同類置換、すなわち、類似の特性(例えば、親水性、荷電領域の程度および分布)の異なるアミノ酸でアミノ酸を置換することは、一般的にわずかな変化を伴うと当技術分野で認識されている。これらのわずかな変化は、当技術分野で理解されているように、アミノ酸のハイドロパシーインデックス(hydropathic index)を考慮することによって、一部、識別することができる。Kyteら、J. Mol. Biol.、157巻、105-132頁(1982)。アミノ酸のハイドロパシーインデックスは、その疎水性および電荷の考慮に基づいている。類似のハイドロパシーインデックスのアミノ酸は、置換され、依然としてタンパク質機能を保持し得ることは、当技術分野で公知である。一態様において、±2のハイドロパシーインデックスを有するアミノ酸は、置換される。生物学的機能を保持しているタンパク質をもたらす置換を明らかにするためにアミノ酸の親水性を用いることもできる。ペプチドの環境におけるアミノ酸の親水性の考慮により、抗原性および免疫原性と良く相関することが報告された有用な尺度である、当ペプチドの最大局所平均親水性の計算が可能になる。参照により本明細書に米国特許第4,554,101号を完全に組み込む。類似の親水性値を有するアミノ酸の置換は、当技術分野で理解されているように、生物学的活性、例えば、免疫原性を保持しているペプチドを生じさせ得る。置換は、互いに±2以内の親水性値を有するアミノ酸を用いて行わせることができる。アミノ酸の疎水性指数および親水性値の両方が当アミノ酸の特定の側鎖の影響を受ける。当所見と一致して、生物学的機能と適合性があるアミノ酸置換は、疎水性、親水性、電荷、サイズおよび他の特性によって明らかなように、アミノ酸およびとりわけそれらのアミノ酸の側鎖の相対的類似性に依存すると理解される。「変異体」はまた、タンパク質分解、リン酸化または他の翻訳後修飾によるように、差別的に処理され、それにもかかわらず、その抗原反応性を保持しているポリペプチドまたはその断片を記述するために用いることができる。
【0074】
変異体は、全遺伝子配列またはその断片の全長にわたり実質的に同一である核酸配列であり得る。核酸配列は、遺伝子配列またはその断片の全長にわたり80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり得る。変異体は、アミノ酸配列またはその断片の全長にわたり実質的に同一であるアミノ酸配列であり得る。アミノ酸配列は、アミノ酸配列またはその断片の全長にわたり80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり得る。
【0075】
2. ラミニンガンマ2単量体を用いて疾患を診断する方法
本明細書で提供するのは、それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)または膵臓がんのような、疾患を診断する方法である。方法は、対象から試料を得ること、試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することおよび試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較することを含む。基準レベルと比べた、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。いくつかの実施形態において、ラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、基準レベルと比べた、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルの増加であり得る。ラミニンガンマ2単量体のレベルのそのような増加は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0076】
診断する方法は、対象からの試料中の、PIVKA-II、AFP、CEA、CA19-9またはそれらの組合せのような、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することならびに試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較することも含み得る。基準レベルと比べた、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの変化も、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。いくつかの実施形態において、ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの変化は、基準レベルと比べた、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの増加であり得る。ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルのそのような増加は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることをさらに示し得る。
【0077】
a. ラミニンガンマ2単量体
肝細胞癌(HCC)または膵臓がんのような、疾患を診断する方法は、対象からの試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定することを含む。ラミニンガンマ2単量体(「ラミニンガンマ2」または「Ln-γ2」とも呼ばれる)は、細胞外マトリックス糖タンパク質であり、基底膜の成分である、タンパク質のラミニンファミリーのメンバーである。各ヘテロ三量体ラミニンは、3つの同一でない鎖:ラミニンアルファ、ラミニンベータおよびラミニンガンマからなっている。異なるアルファ、ベータおよびガンマ鎖異性体は、結合して、異なるヘテロ三量体ラミニンアイソフォームを生じ得る。ラミニンガンマ2は、1つのガンマ鎖異性体であり、ラミニンアルファ3およびラミニンベータ3と一緒になってラミニン5を形成する。ラミニン5は、基底板および基底膜に主として局在する。ヒトにおいて、ラミニンガンマ2単量体は、ヒト1番染色体の長(q)腕上25位と31位の間(1q25-1q31)に位置する、LAMC2遺伝子によりコードされる。ヒトラミニンガンマ2単量体は、シグナルペプチド、またはシグナルペプチドが切断により除去された、分泌タンパク質を含む、前駆タンパク質であり得る。
【0078】
b. 追加のバイオマーカー
肝細胞癌(HCC)または膵臓がんのような、疾患を診断する方法は、対象かの試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよび少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定することを含み得る。少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、ビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)、アルファ胎児型タンパク質(AFP)、がん胎児抗原(CEA)、car抗原19-9(CA19-9)またはそれらのいずれかの組合せであり得る。
【0079】
(1)ビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)
肝細胞癌(HCC)のような、疾患を診断する方法は、ラミニンガンマ2単量体のレベルおよびビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)のレベルを測定することを含み得る。PIVKA-II(デス-ガンマ-カルボキシプロトロンビン(DCP)としても公知)は、異常な形態の凝固タンパク質プロトロンビンである。PIVKA-IIは、HCCのリスクファクター(硬変のような)に対して最も感受性が低く、したがって、HCCを予測するのに有用である。それは、HCCを非悪性肝疾患と識別するが、肝内胆汁うっ滞に起因する重度の閉塞性黄疸を有する患者に、または長期にわたるビタミンK欠乏を有する個体においてビタミンKの作用が減じられている条件下、およびワルファリンもしくは広域スペクトルの抗生物質を服用した患者にPIVKA-II濃度の偽増加が見いだされる。
【0080】
(2)アルファ胎児型タンパク質(AFP)
肝細胞癌(HCC)のような、疾患を診断する方法は、ラミニンガンマ2単量体のレベルおよびアルファ胎児型タンパク質(AFP)のレベルを測定することを含み得る。AFP(α-フェトプロテイン、アルファ-1-フェトプロテイン、アルファ-フェトグロブリンおよびアルファ-フェトプロテインとしても公知)は、卵黄嚢および胎児発育中の肝臓により産生される主要な血漿タンパク質であり、血清アルブミンの胎児型であると考えられる。ヒトにおいて、AFPは、4番染色体の長(q)腕上に位置する、AFP遺伝子によりコードされる。AFPは、銅、ニッケル、脂肪酸およびビリルビンに結合し、単量体、二量体および三量体で見いだされる。AFPは、591アミノ酸の糖タンパク質であり、炭水化物部分である。AFPは、Abbott ARCHITECT(登録商標)AFPを用いて検出し、定量することができる。
【0081】
(3)がん胎児抗原(CEA)
膵臓がんのような、疾患を診断する方法は、ラミニンガンマ2単量体のレベルおよびがん胎児抗原(CEA)のレベルを測定することを含み得る。CEAは、細胞接着に関与しており、その特殊化シアロフコシル化糖型が機能性結腸癌L-セレクチンおよびE-セレクチンリガンドとしての役割を果たすグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)-細胞表面固定化糖タンパク質である。CEAは、サイズが約200kDaである糖タンパク質によって特徴付けられる腫瘍関連抗原である。CEAは、FDA承認済みであり、CEAの濃度の変化によるがん患者の予後診断および管理に補助として使用することが意図されている。
【0082】
さらに、CEAは、大腸直腸がん(CRC)に関連するマーカーであり、CRCを含む消化管(GI)がんのモニタリングに臨床的に承認された。ある種のCRCを検出するその能力が特徴付けられた。臨床的関連性は、大腸直腸、胃、肺、前立腺、膵臓および卵巣がんにおいて示された(Abbott ARCHITECT CEA添付文書34-4067/R4)。CEAは、Abbott ARCHITECT(登録商標)CEAを用いて検出し、定量することができる。
【0083】
(4)炭水化物抗原19-9(CA19-9)
膵臓がんのような、疾患を診断する方法は、ラミニンガンマ2単量体のレベルおよび炭水化物抗原19-9(CA19-9またはCA 19-9)のレベルを測定することを含み得る。CA19-9は、ヒト大腸直腸癌細胞株に由来するムチン糖タンパク質であり、ルイス式血液型タンパク質に関連する。具体的には、CA19-9は、シアリル化ルイス式血液型抗原に属し、ルイス抗原陰性である個体において検出できないことがあり得る。さらに、CA19-9は、胃、胆嚢、膵臓および前立腺の上皮組織に存在する。
【0084】
CA19-9は、膵臓がんの管理における補助としての使用がFDA承認され、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴画像(MRI)法のような他の診断情報と共に使用されることが意図されている。血清CA19-9は、膵炎および他の消化管障害のような非悪性疾患を有する患者においても上昇し得る(Abbott ARCHITECT CA19-9 XR添付文書015-550 11/05)。CA19-9のレベルの上昇は、ある種の大腸直腸(CRC)がんの情報を与えるものであり得る。CA19-9は、Abbott ARCHITECT(登録商標)CA19-9 XRを用いて検出し、定量することができる。
【0085】
c. ラミニンガンマ2単量体および追加のバイオマーカーの組合せ
上述のように、肝細胞癌(HCC)または膵臓がんのような、疾患を診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよび少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定することを含み得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルのレベルの増加は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAもしくはCA19-9またはそれらの組合せのレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAもしくはCA19-9またはそれらの組合せのレベルの増加は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0087】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルの増加は、対象が疾患(例えば、肝細胞癌(HCC))に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0088】
さらに他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルの増加は、対象が疾患(例えば、HCC)に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0089】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルの増加は、対象が疾患(例えば、HCC)に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルの増加は、対象が疾患(例えば、膵臓がん)に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0091】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルの増加は、対象が疾患(例えば、膵臓がん)に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0092】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルを検出し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルの増加は、対象が疾患(例えば、膵臓がん)に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示し得る。
【0093】
d. 疾患
本明細書で述べる方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することによって疾患を有する対象の診断を下すために用いることができる。基準と比べた、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの変化は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。疾患は、肝細胞癌(HCC)または膵臓がんであり得る。
【0094】
(1)肝細胞癌(HCC)
本明細書で述べる方法は、肝細胞癌(HCC)を有する対象の診断を下すために用いることができる。HCC(悪性肝癌としても公知)は、最も一般的な種類の肝臓がんであり、HCCの多くの症例は、ウイルス性肝炎感染(BもしくはC型肝炎)または肝硬変に続発する。疾患が肝細胞癌(HCC)である場合、診断の方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの変化は、対象がHCCに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。そのような変化は、基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの増加であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、AFP、PIVKA-IIまたはそれらの組合せであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、対象がHCCに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0096】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルを測定し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルの変化は、対象がHCCに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0097】
さらに他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルを測定し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルの変化は、対象がHCCに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0098】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのレベルを測定し得る。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのレベルの変化は、対象がHCCに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べた、ラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0099】
(a)HCCの病期
本明細書で述べる方法は、特定の病期の肝細胞癌(HCC)を有する対象の診断を下すために用いることができる。疾患は、I期HCC、II期HCC、III期HCC(IIIA期HCC、IIIB期HCCおよびIIIC期HCCを含む)またはIV期HCC(IVA期HCCおよびIVB期HCCを含む)であり得る。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、HCCの病期とともに増加し得る。したがって、ラミニンガンマ2単量体のレベルは、II期HCC、III期HCCまたはIV期HCCにおいてI期HCCにおけるラミニンガンマ2単量体のレベルより高い可能性がある。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、III期HCCまたはIV期HCCにおいてI期HCCまたはII期HCCにおけるラミニンガンマ2単量体のレベルより高い可能性がある。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、IV期HCCにおいてI期HCC、II期HCCまたはIII期HCCにおけるラミニンガンマ2単量体のレベルより高い可能性がある。したがって、ラミニンガンマ2単量体の次第に増加するレベルは、対象におけるHCCが1つの病期から他の病期に進行していることを示すものであり得る。
【0100】
(2)膵臓がん
本明細書で述べる方法は、膵臓がんを有する対象の診断を下すために用いることができる。膵臓がんは、膵臓に発生するがんである。膵臓がんは、膵腺癌、腺房細胞癌、腺癌、腺扁平上皮癌、巨細胞腫瘍、粘液性嚢胞腺癌、膵芽腫、漿液性嚢胞腺癌、ソリッド・プソイドパピラリー腫瘍(solid and pseudopapillary tumors)および乳頭状嚢胞状腫瘍のような外分泌膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍(NET)、島細胞腫瘍、島細胞癌、膵カルチノイド、膵内分泌腫瘍(PET)、ガストリノーマ(ゾリンジャー-エリソン症候群)、グルカゴン産生腫瘍、膵島細胞腺腫、非機能性島細胞腫瘍、ソマトスタチノーマおよび血管作動性腸ペプチド放出腫瘍(VIPomaまたはヴァーナー-モリソン症候群)のような内分泌膵臓がんならびに膵臓のリンパ腫を含み得るが、これらに限定されない。腺癌は、良性管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)から発生し得る。
【0101】
疾患が膵臓がんである場合、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの変化は、対象が膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。そのような変化は、基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルの増加であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加のバイオマーカーは、CEA、CA19-9またはそれらの組合せであり得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、対象が膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体のレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0103】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルを測定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルの変化は、対象が膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0104】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルを測定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルの変化は、対象が膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0105】
他の実施形態において、診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルを測定し得る。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルの変化は、対象が膵臓がんに罹患しているまたは罹患するリスクがあることを示す。基準レベルと比べたラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルの変化は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルが基準レベルと比べて増加しているようなことであり得る。
【0106】
(a)膵臓がんの病期
本明細書で述べる方法は、特定の病期の膵臓がんを有する対象の診断を下すために用いることができる。疾患は、0期膵臓がん、I期膵臓がん、II期膵臓がん、III期膵臓がんまたはIV期膵臓がんであり得る。ラミニンガンマ2単量体のレベルは、膵臓がんの病期とともに増加し得る。例えば、ラミニンガンマ2単量体のレベルは、IV期膵臓がんにおいてIII期膵臓がんにおけるラミニンガンマ2単量体のレベルより高い可能性がある。したがって、ラミニンガンマ2単量体の次第に増加するレベルは、対象における膵臓がんが1つの病期から他の病期に進行していることを示すものであり得る。
【0107】
e. ラミニンガンマ2単量体のおよび/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するための免疫測定法
診断する方法は、対象から得られた試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するための免疫測定法を用い得る。免疫測定法は、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを定量化し得る。
【0108】
ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーの存在または量は、各バイオマーカー(例えば、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9ならびにそのような追加の分析物が用いられる場合には追加の分析物)に特異的に結合する抗体を用いて決定することができる。用いることができる抗体の例は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、免疫グロブリン分子、ジスルフィド結合Fv、モノクローナル抗体、アフィニティ成熟、scFv、キメラ抗体、単一ドメイン抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、ヒト化抗体、多重特異的抗体、Fab、二重特異的(dual specific)抗体、DVD、Fab’、二重特異的(bispecific)抗体、F(ab’)2、Fvおよびそれらの組合せを含む。
【0109】
例えば、免疫学的方法は、(a)(i)試験試料を少なくとも1つの捕捉抗体と接触させ、捕捉抗体がラミニンガンマ2単量体もしくはラミニンガンマ2単量体の断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体複合体を形成する、ステップ;(ii)捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体複合体を検出可能標識を含む少なくとも1つの検出抗体と接触させ、検出抗体が捕捉抗体により結合されていないラミニンガンマ2単量体上のエピトープに結合し、捕捉抗体-ラミニンガンマ2-検出抗体複合体を形成する、ステップ;および(iii)(a)(ii)において形成された捕捉抗体-ラミニンガンマ2-検出抗体複合体における検出可能標識により発せられるシグナルに基づいて試験試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定するステップにより、ラミニンガンマ2単量体のレベルを測定すること、(b)(i)試験試料を少なくとも1つの捕捉抗体と接触させ、捕捉抗体が少なくとも1つの追加のバイオマーカーもしくは少なくとも1つの追加のバイオマーカーの断片上のエピトープに結合して、捕捉抗体-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体を形成するステップ;(ii)捕捉抗体-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体を検出可能標識を含む少なくとも1つの検出抗体と接触させ、検出抗体が捕捉抗体により結合されていない少なくとも1つの追加のバイオマーカー上のエピトープに結合し、捕捉抗体-少なくとも1つの追加のバイオマーカー-検出抗体複合体を形成するステップ;および(iii)(b)(ii)において形成された捕捉抗体-少なくとも1つの追加のバイオマーカー-検出抗体複合体における検出可能標識により発せられるシグナルに基づいて試験試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定するステップにより、少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定すること;またはそれらの組合せを含み得る。
【0110】
任意の免疫測定法を用いることができる。免疫測定法は、例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、フォーワードもしくはリバース競合阻害アッセイのような競合阻害アッセイ、蛍光偏光アッセイまたは競合結合アッセイであり得る。ELISAは、サンドイッチELISAであり得る。マーカーに対する抗体の特異的免疫学的結合は、抗体に結合させた蛍光もしくは化学発光タグ、金属および放射性核種のような、直接標識により、またはアルカリホスファターゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような、間接標識により検出することができる。
【0111】
固定化された抗体またはその断片の使用を免疫測定法に組み込むことができる。抗体は、磁気またはクロマトグラフマトリックス粒子、アッセイプレート(マイクロタイターウエルのような)の表面、固体基板材料などのような、様々な担体上に固定化することができる。固体担体上のアレイにおける抗体または複数の抗体を被覆することによってアッセイストリップを作製することができる。このストリップを次に試験生物学的試料中に浸し、次に洗浄および検出ステップにより速やかに処理して、着色スポットのような測定可能シグナルを発生させることができる。
【0112】
サンドイッチELISAは、抗体の2つの層(すなわち、捕捉抗体および検出抗体(検出可能な標識で標識することができる))の間の抗原の量を測定する。測定されるべきラミニンガンマ2単量体ならびに/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー、すなわち、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/もしくはCA19-9は、抗体に結合することができる少なくとも2つの抗原性部位を含み得る。モノクローナルまたはポリクローナル抗体をサンドイッチELISAにおける捕捉および検出抗体として用いることができる。
【0113】
一般的に、少なくとも2つの抗体を用いて、試験もしくは生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカー、すなわち、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/もしくはCA19-9(ならびに追加の分析物)を分離し、定量する。より具体的には、少なくとも2つの抗体は、ラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカーの特定のエピトープに結合して免疫複合体を形成するが、これが「サンドイッチ」と呼ばれる。1つ以上の抗体を用いて、試験試料中のラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを捕捉することができ(これらの抗体はしばしば「捕捉」抗体または「捕捉」抗体と呼ばれる)、1つ以上の抗体を用いて、検出可能な(すなわち、定量可能な)標識をサンドイッチに結合させる(これらの抗体はしばしば「検出」抗体または「検出」抗体と呼ばれる)。サンドイッチアッセイにおいて、それらのエピトープに結合する両抗体は、その各エピトープへのアッセイにおける他の抗体の結合によって減少し得ない。言い換えれば、ラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを含むと疑われた試験試料と接触した1つ以上の一次抗体が二次もしくは後の抗体により認識されるエピトープのすべてもしくは一部に結合せず、それにより、ラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカーに結合する1つ以上の二次検出抗体の能力を妨げるように抗体を選択することができる。
【0114】
好ましい実施形態において、ラミニンガンマ2単量体ならびに/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー、すなわち、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/もしくはCA19-9を含むと推測される試験もしくは生物学的試料を少なくとも1つの一次捕捉抗体(または複数の抗体)および少なくとも1つの二次検出抗体と同時にまたは連続して接触させることができる。サンドイッチアッセイ方式において、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを含むと推測される試験試料を最初に一次抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体の形成を可能にする条件下で特定のエピトープに特異的に結合する少なくとも1つの一次捕捉抗体と接触させる。1つを超える捕捉抗体を用いる場合、複数の一次捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体が形成される。サンドイッチアッセイにおいて、抗体、好ましくは、少なくとも1つの捕捉抗体は、試験試料中の予測されるラミニンガンマ2単量体または少なくとも1つの追加のバイオマーカーの最大量のモル過剰量で用いる。
【0115】
任意選択で、試験試料を少なくとも1つの一次捕捉抗体と接触させる前に、少なくとも1つの一次捕捉抗体は、試験試料から一次抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体の分離を促進する固体担体に結合させることができる。ウエル、管またはビーズの形態のポリマー材料製の固体担体を含むが、これらに限定されない、当技術分野で公知の固体担体を用いることができる。抗体は、吸着により、化学結合剤を用いる共有結合または当技術分野で公知の他の手段により固体担体に結合させることができる。ただし、そのような結合は、マーカーに結合する抗体の能力を妨げないものとする。さらに、必要な場合、固体単体は抗体上の様々な官能基との反応性を持たせるために誘導体化することができる。そのような誘導体化には、例えば、無水マレイン酸、N-ヒドロキシスクシンイミドおよび1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどであるが、これらに限定されない特定のカップリング剤が必要である。
【0116】
ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを含むと推測される試験試料を少なくとも1つの一次捕捉抗体と接触させた後、一次捕捉抗体(または複数の抗体)-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体の形成を可能にするために試験試料をインキュベートする。インキュベーションは、約4.5から約10.0までのpH、約2℃から約45℃までの温度で、約1分から18時間まで、約2分から6分または約3分から4分まで行うことができる。
【0117】
一次/複数の捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体の形成の後、複合体を少なくとも1つの二次検出抗体と接触させる(一次/複数の捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体の形成を可能にする条件下で)。一次抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体を2つ以上の検出抗体と接触させる場合、一次/複数の捕捉抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複数抗体検出複合体が形成される。一次抗体の場合と同様に、少なくとも二次(および後の)抗体を一次抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー複合体と接触させる場合、一次/複数の抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー/複数抗体複合体の形成のために上述と同様の条件下でのインキュベーションの期間が必要である。好ましくは、少なくとも1つの二次抗体は、検出可能な標識を含む。検出可能な標識は、一次/複数の抗体-ラミニンガンマ2単量体または-少なくとも1つの追加のバイオマーカー/複数抗体複合体の形成の前、同時にまたは後に少なくとも1つの二次抗体に結合させることができる。当技術分野で公知の任意の検出可能な標識を用いることができる。
【0118】
f. 基準レベル
本明細書で述べる診断する方法は、対象が疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあるか否かを識別し、判定するためにラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルを使用し得る。対象から得られた試料中で測定され、それぞれの基準レベルより大きいラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルは、疾患に罹患しているまたは罹患するリスクがあると対象を識別し得る。それぞれの基準レベルより低いまたは等しいラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルは、疾患に罹患していないまたは罹患するリスクがないと対象を識別し得る。
【0119】
(1)ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9の基準レベル
一般的に、所定または基準レベルは、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEA、CA19-9またはそれらに組合せについて試験試料をアッセイすることにより得られる結果を評価するためのベンチマークとして用いることができる。一般的に、そのような比較を行うに際して、分析物の存在、量または濃度と特定の兆候を有する疾患の特定の病期またはエンドポイントとのつながりまたは関連性の評価を行うことができるような十分な回数および適切な条件下で特定のアッセイを行うことによって所定のレベルが得られる。一般的に、所定のレベルは、参照対象(または対象の集団)のアッセイにより得られる。参照対象は、対照対象であり得る。参照集団または参照群は、対照群であり得る。測定されたラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9は、そのラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/もしくはCA19-9断片、それらの分解生成物ならびに/またはそれらの酵素切断生成物を含み得る。
【0120】
特に、疾患の進行および/または治療をモニターするために用いられる所定のレベルに対して、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9断片の量または濃度は、「不変」、「好ましい」(または「好ましく変化した」)または「好ましくない」(または「好ましくなく変化した」)であり得る。「上昇した」または「増加した」は、対照群もしくは対照試料に見いだされる一般的もしくは正常レベルのような、一般的もしくは正常レベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)より高いもしくは大きい、または他の基準レベルもしくは範囲(例えば、初期もしくはベースライン試料)より高いもしくは大きい試験試料中の量もしくは濃度を意味する。「低下した」または「減少した」という用語は、対照群もしくは対照試料に見いだされる一般的もしくは正常レベルのような、一般的もしくは正常レベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)より低いもしくは少ない、または他の基準レベルもしくは範囲(例えば、初期もしくはベースライン試料)より低いもしくは少ない試験試料中の量もしくは濃度を意味する。「変化した」という用語は、対照群もしくは対照試料に見いだされる一般的もしくは正常レベルのような、一般的もしくは正常レベルもしくは範囲(例えば、所定のレベル)と比べて、または他の基準レベルもしくは範囲(例えば、初期もしくはベースライン試料)と比べて変化(増加もしくは減少)している試験試料中の量もしくは濃度を意味する。
【0121】
ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9の一般的もしくは正常レベルもしくは範囲は、標準慣例に従って規定される。いわゆるレベルの変化または変化は、実験誤差もしくは試料の変動によって説明することができない一般的もしくは正常レベルもしくは範囲、または基準レベルもしくは範囲と比較して正味の変化が存在する場合に起こったと見なすことができる。いくつかの実施形態において、特定の試料中の測定されたレベルは、いわゆる正常対象、すなわち、対照対象からの類似の試料中の決定されたレベルまたはレベルの範囲と比較される。これに関連して、「正常」(時として「対照」または「健常」)対象は、検出可能なHCCまたは膵臓がんを有さない個体であり、「正常」患者または集団は、例えば、検出可能なHCCまたは膵臓がんを示さない患者または集団である。「一見したところ正常な対象」は、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9が評価されなかったまたは評価されていない対象である。分析物が通常検出できない(例えば、正常レベルがゼロであるまたは正常集団の約25から約75百分位数の範囲内である)が、試験試料中で検出される場合、ならびに分析物が正常レベルより高いレベルで試験試料中に存在する場合、分析物のレベルは、「上昇した」と言われる。
【0122】
一実施形態において、血清中のラミニンガンマ2単量体の基準レベルは、約81.3pg/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のラミニンガンマ2単量体の基準レベルは、約81.3pg/mLであり得る。一実施形態において、血清中のラミニンガンマ2単量体の基準レベルは、約79.5pg/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のラミニンガンマ2単量体の基準レベルは、約79.5pg/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のラミニンガンマ2単量体の基準レベルは、約70.0pg/mL、71.0pg/mL、72.0pg/mL、73.0pg/mL、74.0pg/mL、75.0pg/mL、76.0pg/mL、76.3pg/mL、76.4pg/mL、76.5pg/mL、76.6pg/mL、76.7pg/mL、76.8pg/mL、76.9pg/mL、77.0pg/mL、78.0pg/mL、79.0pg/mL、79.1pg/mL、79.2pg/mL、79.3pg/mL、79.4pg/mL、79.5pg/mL、79.6pg/mL、79.7pg/mL、79.8pg/mL、79.9pg/mL、80.0pg/mL、80.1pg/mL、80.2pg/mL、80.3pg/mL、80.4pg/mL、80.5pg/mL、80.6pg/mL、80.7pg/mL、80.8pg/mL、80.9pg/mL、81.0pg/mL、81.1pg/mL、81.2pg/mL、81.3pg/mL、81.4pg/mL、81.5pg/mL、81.6pg/mL、81.7pg/mL、81.8pg/mL、81.9pg/mL、82.0pg/mL、82.1pg/mL、82.3pg/mL、82.4pg/mL、82.5pg/mL、82.6pg/mL、82.7pg/mL、82.8pg/mL、82.9pg/mL、83.0pg/mL、84.0pg/mL、85.0pg/mL、86.0pg/mL、87.0pg/mL、88.0pg/mL、89.0pg/mL、90.0pg/mL、91.0pg/mL、92.0pg/mL、93.0pg/mL、94.0pg/mL、95.0pg/mL、96.0pg/mL、97.0pg/mL、98.0pg/mL、99.0pg/mL、100.0pg/mL、101.0pg/mL、102.0pg/mL、103.0pg/mL、104.0pg/mL、105.0pg/mL、106.0pg/mL、107.0pg/mL、108.0pg/mL、109.0pg/mL、110.0pg/mL、111.0pg/mL、112.0pg/mL、113.0pg/mL、114.0pg/mL、115.0pg/mL、115.05pg/mL、116.0pg/mL、116.4pg/mL、116.5pg/mL、116.6pg/mL、116.7pg/mL、116.8pg/mL、116.9pg/mL、117.0pg/mL、118.0pg/mL、119.0pg/mL、120.0pg/mLであり得る。
【0123】
一実施形態において、血清中のPIVKA-IIの基準レベルは、約40mAU/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のPIVKA-IIの基準レベルは、約40mAU/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のPIVKA-IIの基準レベルは、約30mAU/mL、31mAU/mL、32mAU/mL、33mAU/mL、34mAU/mL、35mAU/mL、36mAU/mL、37mAU/mL、38mAU/mL、39mAU/mL、40mAU/mL、41mAU/mL、42mAU/mL、43mAU/mL、44mAU/mL、45mAU/mL、46mAU/mL、47mAU/mL、48mAU/mL、49mAU/mLまたは50mAU/mLであり得る。
【0124】
一実施形態において、血清中のAFPの基準レベルは、約20ng/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のAFPの基準レベルは、約20ng/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のAFPの基準レベルは、約10ng/mL、11ng/mL、12ng/mL、13ng/mL、14ng/mL、15ng/mL、16ng/mL、17ng/mL、18ng/mL、19ng/mL、20ng/mL、21ng/mL、22ng/mL、23ng/mL、24ng/mL、25ng/mL、26ng/mL、27ng/mL、28ng/mL、29ng/mLまたは30ng/mLであり得る。
【0125】
一実施形態において、血清中のCEAの基準レベル、約5.0ng/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のCEAの基準レベルは、約5.0ng/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のCEAの基準レベルは、約1.0ng/mL、1.5ng/mL、2.0ng/mL、2.5ng/mL、3.0ng/mL、3.5ng/mL、4.0ng/mL、4.5ng/mL、5.0ng/mL、5.5ng/mL、6.0ng/mL、6.5ng/mL、7.0ng/mL、7.5ng/mL、8.0ng/mL、8.5ng/mL、9.0ng/mL、9.5ng/mLまたは10.0ng/mLであり得る。
【0126】
一実施形態において、血清中のCA19-9の基準レベルは、約37.0U/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のCA19-9の基準レベルは、約37.0U/mLであり得る。他の実施形態において、血清中のCA19-9の基準レベルは、約27.0U/mL、27.5U/mL、28.0U/mL、28.5U/mL、29.0U/mL、29.5U/mL、30.0U/mL、30.5U/mL、31.0U/mL、31.5U/mL、32.0U/mL、32.5U/mL、33.0U/mL、33.5U/mL、34.0U/mL、34.5U/mL、35.0U/mL、35.5U/mL、36.0U/mL、36.5U/mL、37.0U/mL、37.5U/mL、38.0U/mL、38.5U/mL、39.0U/mL、39.5U/mL、40.0U/mL、40.5U/mL、41.0U/mL、41.5U/mL、42.0U/mL、42.5U/mL、43.0U/mL、43.5U/mL、44.0U/mL、44.5U/mL、45.0U/mL、45.5U/mL、46.0U/mL、46.5U/mLまたは47.0U/mLであり得る。
【0127】
カットオフ値(または所定のカットオフ値)は、適応指標モデル(Adaptive Index Model)(AIM)法により決定することができる。カットオフ値(または所定のカットオフ値)は、患者群の生物学的試料からの受診者動作曲線(ROC)分析により決定することができる。ROC分析は、生物学分野で一般的に公知のように、例えば、CRCを有する患者を特定する際の各マーカーの能力を判断するための1つの状態と他の状態とを識別する検査の能力を判定するものである。本開示により適用されるROC分析の説明は、その開示をその全体として参照により組み込む、P.J. Heagertyら、Time-dependent ROC curves for censored survival data and a diagnostic marker、Biometrics、56巻、337-44頁(2000)に示されている。
【0128】
または、カットオフ値は、患者群の生物学的試料の四分位解析により決定することができる。例えば、カットオフ値は、25-75百分位数範囲におけるいずれかの値に対応する値、好ましくは25百分位数、50百分位数または75百分位数に対応する値、より好ましくは75百分位数に対応する値を選択することにより決定することができる。
【0129】
そのような統計解析は、当技術分野で公知の方法を用いて実施することができ、多くの市販のソフトウエアパッケージ(例えば、Analyse-it Software Ltd.、Leeds、UK;StataCorp LP、College Station、TX;SAS Institute Inc.、Cary、NC.製)により遂行することができる。
【0130】
3. 疾患を発症するリスクを判断する方法
また本明細書で提供するのは、対象が疾患を発症するリスクがあるかどうかを判断する方法である。リスクを判断する方法は、対象が疾患を発症するリスクがあるかどうかを判断するために上述の診断の方法を適用し得る。
【0131】
リスクを判断する方法は、対象から生物学的試料を得ることおよび生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定することを含み得る。リスクを判断する方法は、生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較することおよび生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きい場合に対象が疾患を発症するリスクがあることを判断することも含み得る。
【0132】
リスクを判断する方法は、生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定すること、および生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較することをさらに含み得る。生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルがそれぞれラミニンガンマ2単量体の基準レベルおよび少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合、対象は、疾患を発症するリスクがあると特定することもできる。
【0133】
4. 疾患の進行をモニターする方法
また本明細書で提供するのは、それを必要とする対象における疾患の進行をモニターする方法である。モニターする方法は、疾患が対象において進行したまたはしなかったかどうかを判断するために上述の診断する方法を適用し得る。
【0134】
モニターする方法は、対象から第1の生物学的試料および対象から第2の生物学的試料を得ることを含み得る。第1の生物学的試料は、対象から第2の生物学的試料を得る少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日、31日、32日、33日、34日、35日、36日、37日、38日、39日、40日、41日、42日、43日、44日、45日、46日、47日、48日、49日、50日、51日、52日、53日、54日、55日、56日、57日、58日、59日、60日、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、30週間、31週間、32週間、33週間、34週間、35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、41週間、42週間、43週間、44週間、45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、50週間、51週間、52週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月、7ヵ月、8ヵ月、9ヵ月、10ヵ月、11ヵ月、12ヵ月、13ヵ月、14ヵ月、15ヵ月、16ヵ月、17ヵ月、18ヵ月、19ヵ月、20ヵ月、21ヵ月、22ヵ月、23ヵ月、24ヵ月、1年、2年、3年、4年または5年前に対象から得ることができる。
【0135】
モニターする方法は、第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよび第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルを測定することも含み得る。モニターする方法は、ラミニンガンマ2単量体の第1および第2のレベルを比較することならびに(i)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルより大きい場合に疾患が対象において進行したこと、または(ii)ラミニンガンマ2単量体の第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に疾患が対象において進行しなかったことを判断することをさらに含み得る。
【0136】
モニターする方法は、第1の生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルおよび第2の生物学的試料中の第2のレベルを測定することならびに少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1および第2のレベルを比較することをさらに含み得る。モニターする方法は、ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルがそれぞれラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルより大きい場合に疾患が対象において進行したこと、またはラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルがそれぞれラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に疾患が対象において進行しなかったことも判断し得る。
【0137】
5. キット
また本明細書で提供するのは、上述の方法を実施する際に用いるキットである。キットは、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出することに関する取扱説明書を含み得る。キットに含められる取扱説明書は、包装材料に添付することができるまたは添付文書として含めることができる。取扱説明書は、書かれたまたは印刷物であり得るが、そのようなものに限定されない。そのような取扱説明書を保存し、それらをエンドユーザーに伝達することができる媒体は、本開示により予期されている。そのような媒体は、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光媒体(例えば、CD ROM)などを含むが、これらに限定されない。本明細書で用いているように、「取扱説明書」という用語は、取扱説明書を提供するインターネットサイトのアドレスも含み得る。
【0138】
キットは、(1)対象から単離された生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを定量化するためのラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカー(すなわち、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)のそれぞれに特異的に結合することができる試薬ならびに(2)ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(すなわち、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)のそれぞれの基準レベルを示す参照標準を備え得るものであり、少なくとも1つの試薬は、適切なバイオマーカーに特異的に結合することができる少なくとも1つの抗体を含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、キットは、生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9のそれぞれの濃度を定量化するためのラミニンガンマ2単量体に特異的に結合することができる試薬、PIVKA-IIに特異的に結合することができる試薬、AFPに特異的に結合することができる試薬、CEAに特異的に結合することができる試薬および/またはCA19-9に特異的に結合することができる試薬ならびにラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9のそれぞれの基準レベルを示す参照標準を含み得る。
【0140】
キットは、バイアルまたはビンのような、各容器が別個の試薬を含む、1つ以上の容器も含み得る。
【0141】
例えば、キットは、免疫測定法、例えば、化学発光微粒子免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーについて試験試料をアッセイすることに関する取扱説明書を含み得る。取扱説明書は、紙の形態またはディスク、CD、DVDもしくは同種のもののような、コンピュータ可読の形態であり得る。抗体は、ラミニンガンマ2単量体および/もしくは少なくとも1つの追加のバイオマーカー捕捉抗体ならびに/またはラミニンガンマ2単量体および/もしくは少なくとも1つの追加のバイオマーカー検出抗体(検出可能な標識で標識された抗体を意味する)であり得る。例えば、キットは、ラミニンガンマ2単量体に特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体、PIVKA-IIに特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体、AFPに特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体、CEAに特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体および/またはCA19-9に特異的に結合する少なくとも1つの捕捉抗体を含み得る。キットは、各捕捉抗体のコンジュゲート抗体(検出可能な標識により標識された抗体のような)(すなわち、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9にそれぞれ特異的に結合する捕捉抗体のそれぞれのコンジュゲート抗体)も含み得る。代替的にまたは追加的に、キットは、アッセイを行うためのキャリブレーターもしくは対照、例えば、精製された、任意選択的に凍結乾燥された、(例えば、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)、および/または少なくとも1つの容器(ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9モノクローナル抗体で既に被覆され得る、例えば、管、マイクロタイタープレートもしくはストリップ)、および/またはそのいずれか1つが濃縮溶液、検出可能な標識(例えば、酵素標識)用の基質溶液もしくは停止溶液として供給され得る、アッセイ緩衝液もしくは洗浄緩衝液を含み得る。好ましくは、キットは、アッセイを実施するために必要である、すべての構成要素、すなわち、試薬、標準、緩衝液、希釈剤等を含む。取扱説明書は、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)を定量化する目的のための標準曲線または参照標準を作製することに関する取扱説明書も含み得る。
【0142】
上で暗示したように、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)に特異的な組換え抗体のような、キットに備えられている、抗体は、発蛍光団、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジン標識、発色団、化学発光標識もしくは同種のもののような、検出可能な標識を組み込み得る、またはキットは、抗体を標識するための試薬または抗体(例えば、検出抗体)を検出するためのおよび/もしくは分析物を標識するための試薬または分析物を検出するための試薬を含み得る。抗体、キャリブレーターおよび/または対照は、別個の容器に入れてまたは適切なアッセイ形式、例えば、マイクロタイタープレートに事前に分注されて供給され得る。
【0143】
任意選択的に、キットは、品質管理構成要素(例えば、感度パネル、キャリブレーターおよび陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は、当技術分野で周知であり、様々な免疫診断製品のインサートシートに記載されている。感度パネルメンバーは、アッセイの性能特性を立証するために任意選択的に用いられ、免疫測定法キット試薬の完全性およびアッセイの標準化のさらに任意選択的に有用な指標である。
【0144】
キットは、緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、基体、検出試薬などのような、診断アッセイを実施するためまたは品質管理評価を促進するために必要な他の試薬も任意選択的に含み得る。単離および/または試験試料の処理用の緩衝液および溶液(例えば、前処理試薬)のような、他の構成要素もキットに含まれ得る。キットは、1つ以上の他の対照をさらに含み得る。キットの1つ以上の構成要素を凍結乾燥することができ、その場合、キットは、凍結乾燥構成要素の再構成に適する試薬をさらに含み得る。
【0145】
キットの様々な構成要素は、任意選択的に必要に応じて適切な容器、例えば、マイクロタイタープレートに入れて供給される。キットは、試料を保持するまたは保存するための容器(例えば、血液試料用の容器またはカートリッジ)をさらに含み得る。適切な場合、キットは、任意選択的に反応容器、混合容器および試薬または試験試料の調製を促進する他の構成要素も含み得る。キットは、注射器、ピペット、ピンセット、計量スプーンまたは同種のもののような、試験試料を得ることを補助する1つ以上の器具も含み得る。
【0146】
検出可能標識が少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットは、少なくとも1つのアクリジニウム-9-カルボキサミド、少なくとも1つのアクリジニウム-9-カルボキシレートアリールエステルまたはそれらのいずれかの組合せを含み得る。検出可能標識が少なくとも1つのアクリジニウム化合物である場合、キットは、緩衝液、溶液および/または少なくとも1つの塩基性溶液のような、過酸化水素の源も含み得る。
【0147】
所望の場合、キットは、磁気粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、石英結晶、ディスクまたはチップのような、固相を含み得る。キットは、検出抗体として機能する抗体のような、抗体にコンジュゲートさせることができるまたはコンジュゲートされている検出可能な標識も含み得る。検出可能な標識は、例えば、酵素、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子、化学発光団、発蛍光団、蛍光消光剤、化学発光消光剤またはビオチンであり得る、直接標識であり得る。キットは、標識を検出するために必要な追加の試薬を任意選択的に含み得る。
【0148】
所望の場合、キットは、がんのバイオマーカーのような、バイオマーカーであり得る、他の分析物について試験試料をアッセイするための、単独でのまたは取扱説明書とさらに組み合わされた、1つ以上の構成要素をさらに含み得る。分析物の例は、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9ならびにラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9の断片、そのうえ本明細書で述べた、または当技術分野で別途公知の他の分析物およびバイオマーカーを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)について試験試料をアッセイするための1つ以上の構成要素は、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)の存在、量または濃度の決定を可能にする。血清試料のような、試料は、TOF-MSおよび内部標準を用いてラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)についてもアッセイすることができる。
【0149】
本明細書で述べたように免疫測定法により試験試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)の濃度を検出する、キット(またはその構成要素)ならびに上述の方法は、例えば、米国特許第5,089,424号および第5,006,309号に記載され、例えば、ARCHITECT(登録商標)としてAbbott Laboratories(Abbott Park、IL)により市販されているような、様々な自動および半自動システム(固相が微粒子を含むものを含む)用に適応させることができる。
【0150】
非自動システム(例えば、ELISA)と比較した自動または半自動システムとのいくつかの差は、第1の特異的結合パートナー(例えば、分析物抗体または捕捉抗体)が結合している基体(サンドイッチの形成および分析物の反応性に影響を及ぼし得る)ならびに捕捉、検出および/または任意選択の洗浄ステップの時間の長さおよび時期を含む。ELISAのような非自動方式は、試料および捕捉試薬との比較的により長いインキュベーション時間(例えば、約2時間)を必要とし得るが、自動または半自動方式(例えば、ARCHITECT(登録商標)およびサクセッサープラットフォーム、Abbott Laboratories)は、比較的により短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)について約18分)を有し得る。同様に、ELISAのような非自動方式は、比較的により長いインキュベーション時間(例えば、約2時間)にわたりコンジュゲート試薬のような検出抗体をインキュベートし得るが、自動または半自動方式(例えば、ARCHITECT(登録商標)およびサクセッサープラットフォーム)は、比較的により短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)およびサクセッサープラットフォームについて約4分)を有し得る。
【0151】
Abbott Laboratoriesから入手可能な他のプラットフォームは、AxSYM(登録商標)、IMx(登録商標)(例えば、その全体として参照により組み込む、米国特許第5,294,404号参照)、PRISM(登録商標)、EIA(ビーズ)およびQuantum(商標)IIならびに他のプラットフォームを含むが、これらに限定されない。さらに、アッセイ、キットおよびキット構成要素は、他の方式で、例えば、電気化学または他の携帯式もしくは臨床現場即時システムにおいて用いることができる。本開示は、例えば、サンドイッチ免疫測定法を実施する市販のAbbott Point of Care (i-STAT(登録商標)、Abbott Laboratories)電気化学免疫測定システムに適用できる。免疫センサーならびにそれらの製造および使い捨て試験装置における操作の方法は、例えば、それらに関するそれらの教示について参照によりそれらの全体として組み込む、米国特許第5,063,081号、米国特許出願公開第2003/0170881号、米国特許出願公開第2004/0018577号、米国特許出願公開第2005/0054078号および米国特許出願公開第2006/0160164号に記載されている。
【0152】
特に、I-STAT(登録商標)システムへのアッセイの適応に関して、以下の構成が好ましい。金アンペロメトリー作用電極および銀-塩化銀参照電極の対を有する、微細加工シリコンチップを製造する。作用電極の1つにおいて、固定化捕捉抗体を有するポリスチレンビーズ(直径0.2mm)を電極上のパターン化ポリビニルアルコールのポリマーコーティングに付着させる。このチップを免疫測定法に適する流体工学方式のI-STAT(登録商標)カートリッジにアセンブルする。カートリッジの試料保持チャンバーの壁の一部にアルカリホスファターゼ(または他の標識)で標識された検出抗体を含む層が存在する。カートリッジの液体パウチ内にp-アミノフェノールホスフェートを含む水性試薬が存在する。
【0153】
操作に際して、ラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカーを含むと推測される試料を試験カートリッジの保持チャンバーに加え、カートリッジをI-STAT(登録商標)リーダーに挿入する。二次抗体(検出抗体)が試料中に溶解した後、カートリッジ内のポンプエレメントが試料をチップを含む管路中に強制的に通す。ここでそれが振動させられて、一次捕捉抗体と標識二次検出抗体との間のサンドイッチの形成を促進する。アッセイの最後から2番目のステップにおいて、流体がパウチから強制的に管路に排出されて、試料をチップから洗い流し、廃棄チャンバーに入る。アッセイの最終ステップにおいて、アルカリホスファターゼレベルがp-アミノフェノールホスフェートと反応して、リン酸基を切断し、放出されたp-アミノフェノールが作用電極において電気化学的に酸化される。測定電流に基づいて、リーダーは、内蔵アルゴリズムおよび製造所決定較正曲線により試料中のラミニンガンマ2単量体および/または少なくとも1つの追加のバイオマーカー(例えば、PIVKA-II、AFP、CEAおよび/またはCA19-9)の量を計算することができる。
【0154】
本発明は、以下の非限定的実施例によって例示される、複数の態様を有する。
【実施例】
【0155】
[実施例1]
方法および方法
抗体および抗原 組換え単量体Ln-γ2タンパク質は、Madin-Darbyイヌ腎細胞形質転換体から精製した。組換えヘテロ三量体Ln-332は、Oriental Yeast Co.,Ltd.(Tokyo、Japan)から購入した。CLIAおよびウエスタンブロッティングのために、モノクローナル抗Ln-γ2抗体(2H2)およびポリクローナル抗Ln-γ2ドメインIII抗体を実施例2で述べるように調製した。マウスモノクローナル抗Ln-α3抗体は、Oriental Yeast Co., Ltd.から購入した。
【0156】
HCCの腫瘍マーカーの分析 血清AFPレベルは、ARCHITECTシステムを用いることにより測定し、PIVKA-IIレベルは、SRL Tokyo Laboratories,Inc.(Tokyo、Japan)におけるLUMIPULSE(Fujirebio Inc.、Tokyo、Japan)を用いることにより測定した。
【0157】
統計解析 血清Ln-γ2レベルは、平均値±標準偏差(SD)および中央値:範囲として報告した。血清AFPおよびPIVKA-IIレベルは、中央値:範囲として報告した。AFPおよびPIVKA-II値についてHCCを有する患者における両マーカーの大きい範囲を説明するために対数変換を用いた。連続データについてMann-Whitney検定を用いた。0.05未満のp値を有意と見なした。Graph Pad Prism 6 Software(San Diego、CA、USA)およびAnalyse-it Software(
図2-6および9-14)を用いて、散布図、受診者動作特性(ROC)曲線を作成し、ROC(AUC)曲線下面積の計算を行った。最適カットオフポイントは、(0、1)に最も近いROC曲線上のポイントを含んでいた。
【0158】
[実施例2]
ラミニンガンマ2単量体免疫測定法
ラミニンガンマ2単量体を特異的に検出した免疫測定法が確立された。
【0159】
完全自動化化学発光免疫測定法(CLIA) ヒトLn-γ2タンパク質濃度は、2H2抗体(Nakagawa Mら、原稿作成中)およびアクリジニウムで標識されたウサギポリクローナルにより被覆された常磁性微粒子を用いて2ステップサンドイッチアッセイにより測定した。アッセイ方法は、完全自動検出装置(Abbott Laboratories、Chicago、IL、USAのARCHITECT)への適用のために調整した。
【0160】
ラミニンガンマ2単量体に対するポリクローナル抗体の生成 ラミニンガンマ2単量体に対するポリクローナル抗体は、ヒトラミニンガンマ2単量体の精製ドメインIII(アミノ酸383-608)によりウサギに免疫付与することによって生成させた。この組換えドメインIIIは、E.コリ(E.coli)において発現させ、それから精製した。具体的には、ドメインIIIは、Gateway技術(Invitrogen)を用いてGST融合タンパク質として発現させた。ウサギ血清は、プロテインAカラムを用いて精製した。ポリクローナル抗体のさらなる精製は、ジメチルピメルイミデート二塩酸塩(DMP)によりドメインIIIとコンジュゲートした抗Hisタグモノクローナル抗体磁気アガロース(MBL)を用いて実施した。精製ポリクローナル抗体も濃縮した。
【0161】
2H2モノクローナル抗体 2H2 mAbは、N. Koshikawaら、Cancer Research(2008)、68巻(2号)、530-536頁に記載されているマウスモノクローナル抗体である。2H2 mAbは、プロテインGカラムにより培養ハイブリドーマの上清から精製した。
【0162】
組換えラミニンガンマ2単量体の生成 全長ラミニンガンマ2単量体をコードする遺伝子をMDCK細胞に導入して、ラミニンガンマ2単量体を発現するトランスフェクトMDCK細胞を作製した。限界希釈により、高レベルのラミニンガンマ2単量体を発現するMDCK細胞を選択し、血清不含有DMEM(Invitrogen)中で培養した。ラミニンガンマ2単量体は、2H2モノクローナル抗体(2H2 mAb)カラムを用いて精製し、硫酸アルミニウム沈殿により濃縮した。
【0163】
免疫測定法 2H2 mAbを常磁性微粒子上に固定化した。具体的には、微粒子をMES緩衝液(pH5.5)で洗浄し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミドヒドロクロリド(Sigma-Aldrich)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(Sigma-Aldrich)を洗浄済み微粒子に加えた。室温で30分のインキュベーションの後、微粒子を洗浄し、2H2 mAbをMES緩衝液で希釈し、洗浄済み微粒子に加えた。室温で2時間のインキュベーションの後、微粒子をTBS、1%Tween(登録商標)で洗浄し、次いで保存した。
【0164】
微粒子希釈緩衝液は、20mM EDTA、1%BSA、0.2%スキムミルク、0.1%Tween-20(登録商標)、0.2mg/mL HBR、0.2mg/mLマウスIgG、0.1% ProClin300および100ppm Foamawayを含むTBS緩衝液、pH7.4であった。微粒子を微粒子希釈緩衝液で0.05%の最終固体濃度に希釈した。
【0165】
ヒトラミニンガンマ2単量体のドメインIIIに対する上述のウサギポリクローナル抗体を検出抗体として用いた。具体的には、このポリクローナル抗体を0.5% CHAPSを含むPBS緩衝液中でアクリジニウムにコンジュゲートさせた。過剰のアクリジニウムをZeba Micro Desalt Spin Column (Thermo)により除去した。得られたアクリジニウム標識抗体を、0.15M NaCl、1.09% TritonX405、2.0mg/mLウシガンマグロブリン、5%BSA、2% Tween-20(登録商標)、0.1% ProClin300および100ppm Foamawayを含むMES緩衝液、pH6.3に溶解した。
【0166】
免疫測定法希釈溶液は、1% BSA、16.1%スクロース、0.075%アジ化ナトリウム、0.1% ProClin950および100ppm Foamawayを含むTBS緩衝液、pH8.0であった。試料希釈剤は、1% BSAおよび0.1% Tween-20(登録商標)を含むPBS緩衝液であった。免疫測定法用のキャリブレーターは、試料希釈剤で希釈した組換えラミニンガンマ2単量体であった。具体的には、ラミニンガンマ2単量体のキャリブレーターは、0ng/mLから20ng/mLまでの範囲にあった。具体的な量は、0.00、0.01、0.02、0.05、0.10、1.00、10.00および20.00ng/mLであった。
【0167】
免疫測定法は、免疫測定器具、すなわち、i2000 ARCHITECT分析装置で実施した。ラミニンガンマ2単量体の較正曲線は、キャリブレーターを用いて作成した。例示的較正曲線を
図1に示す。
【0168】
[実施例3]
標本中のラミニンガンマ2単量体の検出
上記の実施例2で述べた免疫測定法を用いて、様々な標本中のラミニンガンマ2単量体の血清濃度を検出した。血清試料は、標本から採取し、上述の試料希釈剤で希釈した。
【0169】
標本 標本は、肝細胞癌(HCC)標本、膵臓がん標本、大腸直腸がん(CRC)標本、胃がん標本、肝硬変(LC)標本、肝炎標本、膵炎/胆管炎標本、多発がん/転移標本、肝不全標本、良性標本、健常ドナー標本および他のがん標本であった。標本は、St. Marianna University School of Medicineにおいて採取された。正常対照のために、肝疾患の病歴を有さず、アルコール摂取が40g/週未満であり、ウイルス性肝炎のリスクファクターを有さない健常志願者から健常ドナー標本を採取した。Ln-γ2のカットオフ値を確立するために、52例の健常日本人志願者からの対照血清を分析した。健常志願者および慢性肝疾患またはHCCを有する患者の人口統計学的および臨床特性を表1に示す。健常志願者の血清Ln-γ2レベルの平均値および中央値は、それぞれ44.3±17.6pg/mL(平均値±SD)および41.1pg/mL(範囲:10.9-79.0pg/mL)であった。
【0170】
【0171】
結果
図2Aおよび2Bに表示した標本についてのラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)のドットプロットを示す。各標本を黒丸によって示した。標本の各群の平均血清濃度を実線によって示した。健常ドナー(HD)の平均値プラス2標準偏差(平均値+2SD)もx軸の全長に広がる実線で示し、79.5pg/mLであった。
図2Cおよび2Dに表示した標本についてのラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)のドットプロットを示す。各標本を黒丸によって示した(
図2Cおよび2D)。標本の各群の平均血清濃度を実線によって示した。健常ドナー(HD)と比較したHCCのROC分析から得られたカットオフ値もx軸の全長に広がる実線で示し、75.9pg/mLであった。ラミニンガンマ2単量体の血清濃度は、HCCおよび膵臓がん標本において健常ドナー標本および他の消化器癌(すなわち、大腸直腸がんおよび胃がん)を有する標本と比較してより高かった。
【0172】
さらに、ラミニンガンマ2単量体の血清濃度は、HCCおよび膵臓がん標本において肝硬変標本、CH標本および膵炎/胆管炎標本と比較してより高かった。しかし、ラミニンガンマ2単量体のより高い血清濃度を有する1つの肝硬変標本は、39.9ng/mLのアルファ胎児型タンパク質(AFP)のレベルを有していた(
図2Bおよび2D)。ラミニンガンマ2単量体のより高い血清濃度を有する1つのCH標本は、39.0ng/mLのアルファ胎児型タンパク質(AFP)のレベルを有していた(
図2Bおよび2D)。ラミニンガンマ2単量体のより高い血清濃度を有する1つの膵炎/胆管炎標本は、79.0U/mLの炭水化物抗原19-9(CA19-9)のレベルを有していた。したがって、ラミニンガンマ2単量体のより高い血清濃度を有していたHCCおよび膵臓がん以外の標本は、異常なレベルのAFPおよびCA19-9のような他のがんマーカーを有していた。
【0173】
[実施例4]
I-IV期のHCCにおけるラミニンガンマ2単量体の血清濃度
実施例3で述べたように、ラミニンガンマ2単量体の血清濃度は、HCC標本において高かった。HCCの異なる病期におけるラミニンガンマ2単量体の血清濃度に関してHCC標本をさらに検討した。具体的には、上記の実施例2で述べた免疫測定法を用いて、I期HCC、II期HCC、III期HCCおよびIV期HCC標本ならびに肝硬変(LC)、肝炎(CH)および健常ドナー標本のラミニンガンマ2単量体の血清濃度を検出した。血清試料は、標本から採取し、上述の試料希釈剤で希釈した。
【0174】
結果 これらの試験の結果を
図3A-3Bに示す。図には表示した標本の各群のラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)を示す。各標本を黒丸で示した。各標本群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度を実線で示した。x軸の全長に広がる実線は、健常ドナー標本の平均値プラス2標準偏差(平均値+2SD)を示し、これは
図3Aにおいて79.5pg/mLであった。x軸の全長に広がる実線は、健常ドナー(HD)と比較したHCCのROC分析から得られたカットオフ値を示したものであり、これもx軸の全長に広がる実線で示し、
図3Bにおいて75.9pg/mLであった。
【0175】
図3A-3Bに示すように、ラミニンガンマ2単量体の血清濃度の上昇が、LC、CHおよび健常ドナー標本と比較したときI期HCC、II期HCC、III期HCCおよびIV期HCC標本において認められた。ラミニンガンマ2単量体のより高い血清濃度を有するLCおよびCH標本は、がんマーカーアルファ胎児型タンパク質(AFP)の異常なレベル、すなわち39.9ng/mLおよび 39.0ng/mLを有していた。したがって、これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体が早期HCC標本からの血清中に検出されたことおよび血清中のラミニンガンマ2単量体のレベルがHCCの病期とともに増加した(すなわち、HCCの病期依存的に増加した)ことを示すものであった。
【0176】
TNM分類によれば、10例の患者がI期と、18例がII期と、21例がIII期と、8例がIV期と診断された。Ln-γ2レベルは、I期からIV期へと増加し、それぞれ114.3pg/mL(範囲:65.3-323.6pg/mL)、184.3pg/mL(範囲:39.5-549.1pg/mL)、174.6pg/mL(範囲:32.4-985.8pg/mL)および248.1pg/mL(範囲:59.8-529.4pg/mL)のレベルの中央値(範囲)を有していた(
図12)。対応するAFP値は、I、II、IIIおよびIV期HCCについてそれぞれ5.3ng/mL(範囲:2.2-44.6ng/mL)、16.2ng/mL(範囲:1.5-899ng/mL)、72.5ng/mL(範囲:3.2-2364ng/mL)および1116ng/mL(範囲:5.3-417198ng/mL)ng/mLであった(
図13)。対応するPIVKA-II値は、I、II、IIIおよびIV期HCCについてそれぞれ55.0mAU/mL(範囲:14.0-302mAU/mL)、47.5mAU/mL(範囲:13.0-5380)mAU/mL、162mAU/mL(範囲:11.0-20779)および683mAU/mL(範囲:32.0-75000mAU/mL)であった(
図14)。早期HCC(T1またはT2)を有する患者では、Ln-γ2、AFPおよびPIVKA-IIの陽性率は、それぞれ17/28(61%)、11/28(39%)および16/28(57%)であった。
【0177】
[実施例5]
HCCのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体の特異度および感度
HCCのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)の特異度および感度を検討した。具体的には、57個のHCC標本および76個の健常ドナー、肝硬変(LC)または肝炎(CH)標本の合計133個の標本における各マーカーのレベルを検討した。
【0178】
HCC標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された真の陽性率を健常ドナー、LCおよびCH標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された偽陽性率に対してプロットすることによって受診者動作特性(ROC)グラフを作成した。したがって、ROCグラフは、特異度(偽陽性頻度(FPF))に対する感度(真の陽性頻度(TPF))のプロットであった。1.000の値は、100%の感度および100%の特異度を表していた。このROCグラフを
図4Aに示し、ラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのそれぞれの曲線下面積(AUC)を表2に示す。
【0179】
【0180】
HCCのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)の特異度および感度を検討した。具体的には、57個のHCC標本および52個の健常ドナーの合計109個の標本における各マーカーのレベルを検討した。血清Ln-γ2レベルは、慢性肝疾患を有する24例の患者およびHCCを有する57例の患者において測定した(
図9)。HCVの感染が肝疾患を有する対象の2つの群間の最も一般的な病因であった。Ln-γ2濃度の中央値は、76.7pg/mLで、範囲が38.7pg/mLから215.9pg/mLまで(慢性肝疾患を有する患者)および173.2pg/mLで、範囲が32.4pg/mLから986pg/mLまで(HCCを有する患者)であった。慢性肝疾患を有する患者および健常志願者と比較した場合、Ln-γ2レベルの有意な増加がHCCを有する患者に認められた(p<0.01)。
【0181】
HCC標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された真の陽性率を健常ドナー標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された偽陽性率に対してプロットすることによって受診者動作特性(ROC)グラフを作成した。したがって、ROCグラフは、特異度(偽陽性頻度(FPF))に対する感度(真の陽性頻度(TPF))のプロットであった。1.000の値は、100%の感度および100%の特異度を表していた。このROCグラフを
図4Bに示し、ラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのそれぞれの曲線下面積(AUC)を表3に示す。
【0182】
【0183】
カットオフ値を75.9pg/mLに設定した場合、感度および特異度は、それぞれ86%(95%信頼区間[CI]、74-94%)および98%(95%CI、90-99%)であった。健常志願者とHCCを有する患者とを比較した場合、Ln-γ2の識別能力(ROC曲線AUC=0.952;95%CI、91-99%)は、PIVKA-IIのそれ(ROC曲線AUC=0.825;95%CI、73-92%、p<0.05)を有意に上回り、それは、AFP(ROC曲線AUC=0.929;95%CI、88-98%)と同様に有効であった。健常志願者を、非悪性慢性肝疾患を有する患者と比較した場合、このカットオフ値は、Ln-γ2の識別能力(ROC曲線AUC=0.819;95%CI、72-92%)とそれぞれ50%(95%CI、29-71%)および96%(95%CI、87-99%)の感度および特異度をもたらした。このカットオフ値により、Ln-γ2陽性は、健常志願者、慢性肝疾患を有する患者およびHCCを有する患者におけるそれぞれ1例(2%)、12例(50%)および50例(86%)の対象において見いだされた。これらの結果は、このカットオフ値(>75.9pg/mL)が、HCCを伴うまたは伴わない、慢性肝疾患を有する患者と健常対象とを区別するのに有用であることを示すものである。
【0184】
HCCのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)の特異度および感度を検討した。具体的には、57個のHCC標本および24個の肝炎(CH)標本の合計81個の標本における各マーカーのレベルを検討した。
【0185】
HCC標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された真の陽性率をCH標本におけるラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIの観測された偽陽性率に対してプロットすることによって受診者動作特性(ROC)グラフを作成した。したがって、ROCグラフは、特異度(偽陽性頻度(FPF))に対する感度(真の陽性頻度(TPF))のプロットであった。1.000の値は、100%の感度および100%の特異度を表していた。このROCグラフを
図4Cに示し、ラミニンガンマ2単量体、AFPおよびPIVKA-IIのそれぞれの曲線下面積(AUC)を表4に示す。
【0186】
【0187】
HCCと非悪性慢性肝疾患とを区別するための最適カットオフ値は、116.6pg/mLであり(
図4C)、それぞれ63%(95%CI、49-76%)および83%(95%CI、63-95%)の感度および特異度であった。慢性肝疾患を有する患者とHCCを有する患者とを区別する場合、PIVKA-II(ROC曲線AUC=0.845;95%CI、76-93%)が、Ln-γ2(ROC曲線AUC=0.793;95%CI、69-89%;差は統計的に有意でなかった)およびAFP(ROC曲線AUC=0.788;95%CI、69-89%)より性能が優れていた。Ln-γ2陽性(>116.6pg/mL)は、健常志願者、慢性肝疾患を有する患者およびHCCを有する患者におけるそれぞれ0例/52例(0%)、4例/24例(17%)および36例/57例(63%)の対象において認められた。AFP陽性(>20ng/mL;日本人対象における報告された正常上限)(6)は、健常志願者、慢性肝疾患を有する患者およびHCCを有する患者におけるそれぞれ0例/52例(0%)、4例/24例(17%)および30例/57例(53%)の対象において認められた。AFPの濃度の中央値(範囲)は、2.3ng/mL(健常対照、範囲:0.9-8.2ng/mL)、3.8ng/mL(慢性肝疾患患者、範囲:1.2-109.7ng/mL)および24.4ng/mL(HCC患者、範囲:1.5-417199ng/mL)であった(
図10)。PIVKA-II陽性(>40mAU/mL、日本人対象における報告された正常上限)(6)は、健常志願者、慢性肝疾患を有する患者およびHCCを有する患者におけるそれぞれ1例/52例(1.9%)、1例/24例(4.2%)および39例/57例(68%)の対象において認められた。PIVKA-IIの濃度の中央値(範囲)は、24.5mAU/mL(健常対照、範囲:15.0-45.0mAU/mL)、21.0mAU/mL(慢性肝疾患を有する患者、範囲:12.0-58.0mAU/mL)および103mAU/mL(HCCを有する患者、範囲:11.0-75000mAU/mL)であった(
図11)。Ln-γ2、AFPおよびPIVKA-IIレベルは、HCCを有する患者の血清において健常志願者および慢性肝疾患を有する患者の両方の血清と比較して有意に上昇した(p<0.001)ことが見いだされた。Ln-γ2およびAFPレベルは、慢性肝疾患を有する患者の血清において健常志願者の血清と比較して有意に上昇した(p<0.01)ことが見いだされた。
【0188】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体がAFPおよびPIVKA-IIよりもHCCのマーカーとしての高い感度および特異度を示し、したがって、AFPおよびPIVKA-IIよりもHCCの正確なマーカーであったことを示すものであった。
【0189】
さらに、
図5Aおよび表5にラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFPおよびそれらの組合せのHCCを検出する陽性率を示す。ラミニンガンマ2単量体のカットオフは、79.5pg/mLであった、健常ドナー標本の平均値プラス2標準偏差(平均値+2SD)であった。3つのHCC標本は、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの3つすべてについて陰性であった。
【0190】
【0191】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体がPIVKA-IIまたはAFPよりもHCCを検出する高い陽性率を有していたことを示すものであった。HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体とAFPおよびPIVKA-IIの組合せで同じ、すなわち、80%であった。
【0192】
HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体をPIVKA-IIまたはAFPと組み合わせた場合にラミニンガンマ2単量体単独と比較して増加した、すなわち、93.0%または86.0%対77.2%であった。しかし、3つのマーカーのすべての組合せは、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せによってもたらされたHCCを検出する陽性率(93.0%)と同等であったHCCを検出する陽性率(94.7%)をもたらした。したがって、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せへのAFPの追加は、HCCを検出する陽性率をさらに増加させなかった。
【0193】
図5Bおよび表6にラミニンガンマ2単量体、PIVKA-II、AFPおよびそれらの組合せのHCCを検出する陽性率を示す。ラミニンガンマ2単量体カットオフは、健常ドナー(HD)と比較したHCCのROC分析から計算し、これは75.9pg/mLであった。3つのHCC標本は、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの3つすべてについて陰性であった。
【0194】
【0195】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体がPIVKA-IIまたはAFPよりもHCCを検出する高い陽性率を有していたことを示すものであった。HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体とAFPおよびPIVKA-IIの組合せで同じ、すなわち、80%であった。
【0196】
HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体をPIVKA-IIまたはAFPと組み合わせた場合にラミニンガンマ2単量体単独と比較して増加した、すなわち、84.2%または94.7%対87.7%であった。しかし、3つのマーカーのすべての組合せは、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せによってもたらされたHCCを検出する陽性率(94.7%)と同等であったHCCを検出する陽性率(94.7%)をもたらした。したがって、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せへのAFPの追加は、HCCを検出する陽性率をさらに増加させなかった。
【0197】
図5Cおよび表7にラミニンガンマ2単量体(>116.6pg/mL)、PIVKA-II(>40mAU/mL)、AFP(>20ng/mL)およびそれらの組合せのHCCを検出する陽性率を示す。ラミニンガンマ2単量体カットオフ値は、肝炎(CH)標本と比較したHCCのROC分析から計算し、これは116.6pg/mLであった。Ln-γ2およびPIVKA-IIの組合せは、51例/57例の患者(89.5%)において検出されたが、Ln-γ2およびAFPの組合せは、46例/57例(80.7%)においてならびにPIVKA-IIおよびAFPの組合せは、47例/57例(82.5%)において検出された。3つのマーカーのすべての組合せは、54例/57例の患者(94.7%)において検出された。興味深いことに、PIVKA-IIについて陰性であった患者の67%(12例/18例)がLn-γ2について陽性を示した。3つのHCC標本は、ラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの3つすべてについて陰性であった。
【0198】
【0199】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体がPIVKA-IIまたはAFPよりもHCCを検出する高い陽性率を有していたことを示すものであった。HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体とAFPおよびPIVKA-IIの組合せで同じ、すなわち、80%であった。
【0200】
HCCを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体をPIVKA-IIまたはAFPと組み合わせた場合にラミニンガンマ2単量体単独と比較して増加した、すなわち、63.2%または89.5%対80.7%であった。しかし、3つのマーカーのすべての組合せは、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せによってもたらされたHCCを検出する陽性率(89.5%)と同等であったHCCを検出する陽性率(94.7%)をもたらした。したがって、ラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの組合せへのAFPの追加は、HCCを検出する陽性率をさらに増加させなかった。
【0201】
[実施例6]
IIIおよびIV期の膵臓がんにおけるラミニンガンマ2単量体の血清濃度
実施例3で述べたように、ラミニンガンマ2単量体の血清濃度は、膵臓がん標本においてより高かった。膵臓がんの異なる病期におけるラミニンガンマ2単量体の血清濃度に関して膵臓がん標本をさらに検討した。具体的には、実施例2で述べた免疫測定法を用いて、III期膵臓がんおよびIV期膵臓がん標本ならびに膵炎および健常ドナー標本のラミニンガンマ2単量体の血清濃度を検出した。血清試料を標本から採取し、上述の試料希釈剤で希釈した。
【0202】
結果 これらの試験の結果を
図6Aおよび6Bに示す。図には表示した標本の各群のラミニンガンマ2単量体の血清濃度(pg/mL)を示す。各標本を黒丸で示した。各標本群のラミニンガンマ2単量体の平均血清濃度を実線で示した。x軸の全長に広がる実線は、健常ドナー標本の平均値プラス2標準偏差(平均値+2SD)を示し、これは
図6Aにおいて79.5pg/mLであった。x軸の全長に広がる実線は、ROC分析から得られたカットオフ値を示したものであり、これは、
図6Bにおいて75.9pg/mLであった。
【0203】
図6Aおよび6Bに示すように、ラミニンガンマ2単量体の血清濃度の上昇が、膵炎および健常ドナー標本と比較したときIII期膵臓がんおよびIV期膵臓がんにおいて認められた。したがって、これらの結果は、血清中のラミニンガンマ2単量体のレベルが膵臓がんの病期とともに増加した(すなわち、病期依存的に増加した)ことを示すものであった。
【0204】
[実施例7]
膵臓がんのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体の特異度および感度
膵臓がんのマーカーとしてのラミニンガンマ2単量体、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)の特異度および感度を検討した。具体的には、20個の膵臓がん標本および60個の膵炎または健常ドナー標本の合計80個の標本における各マーカーのレベルを検討した。膵臓がん標本におけるラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の観測された真の陽性率を健常ドナーまたは膵炎標本におけるラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の観測された偽陽性率に対してプロットすることによって受診者動作特性(ROC)グラフを作成した。したがって、ROCグラフは、特異度(偽陽性頻度(FPF))に対する感度(真の陽性頻度(TPF))のプロットであった。1.000の値は、100%の感度および100%の特異度を表していた。このROCグラフを
図7に示し、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のそれぞれの曲線下面積(AUC)を表8に示す。
【0205】
【0206】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体がCA19-9よりも膵臓がんのマーカーとしての高い感度および特異度を示し、したがって、CA19-9よりも膵臓がんの正確なマーカーであったことを示すものであった。
【0207】
さらに、
図8および表9にラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9ならびにそれらの組合せの膵臓がんを検出する陽性率を示す。1つの膵臓がんは、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の3つすべてについて陰性であった。
【0208】
【0209】
これらの結果は、ラミニンガンマ2単量体が膵臓がんの診断のためのマーカーであったことを示すものであった。さらに、膵臓がんを検出する陽性率は、ラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のそれぞれの膵臓がんを検出する陽性率と比較してラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の組合せでより高かった。
【0210】
7. 条項
完全性の理由で、本発明の様々な態様を以下の番号付き条項に示す。
【0211】
条項1. それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)を診断する方法であって、(a)前記対象から生物学的試料を得ること、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較すること、および(d)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きい場合に対象をHCCを有すると特定することを含む、方法。
【0212】
条項2. 前記生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定することをさらに含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーがビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、条項1に記載の方法。
【0213】
条項3. 前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルを前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較すること、および前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルが前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合に対象をHCCを有すると特定することを含む、条項2に記載の方法。
【0214】
条項4. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルを決定する、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルを決定する、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルを決定する、条項1から3のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0215】
条項5. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルがラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの前記基準レベルより大きい場合、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルがラミニンガンマ2単量体およびAFPの前記基準レベルより大きい場合、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルがラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの前記基準レベルより大きい場合、対象がHCCを有すると特定される、条項4に記載の方法。
【0216】
条項6. 前記生物学的試料が全血試料、血漿試料および血清試料からなる群から選択される、条項1から5のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0217】
条項7. 前記生物学的試料が血清試料である、条項6に記載の方法。
【0218】
条項8. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項1から7のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0219】
条項9. 前記生物学的試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルを決定することが免疫測定法によりPIVKA-IIおよびAFPを検出することを含む、条項2から8のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0220】
条項10. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項8または9に記載の方法。
【0221】
条項11. PIVKA-IIおよびAFPの前記基準レベルが対照試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルである、条項2から10のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0222】
条項12. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項1から11のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0223】
条項13. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項1から12のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0224】
条項14. 前記カットオフレベルが複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項13に記載の方法。
【0225】
条項15. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項1から14のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0226】
条項16. 対象が肝細胞癌(HCC)を有するまたは発症するリスクがあるかを判定する方法であって、(a)前記対象から生物学的試料を得ること、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと比較すること、および(d)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルがラミニンガンマ2単量体の基準レベルより大きい場合に対象がHCCを有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、方法。
【0227】
条項17. 前記生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定することをさらに含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーがビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、条項16に記載の方法。
【0228】
条項18. 前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルを前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較すること、および前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルが前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合に対象がHCCを有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、条項17に記載の方法。
【0229】
条項19. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルを決定する、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルを決定する、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルを決定する、条項16から18のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0230】
条項20. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの前記レベルがラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの基準レベルより大きい場合、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPの前記レベルがラミニンガンマ2単量体およびAFPの基準レベルより大きい場合、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの前記レベルがラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの基準レベルより大きい場合、対象がHCCを有すると特定される、条項19に記載の方法。
【0231】
条項21. 前記生物学的試料が全血試料、血漿試料および血清試料からなる群から選択される、条項16から20のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0232】
条項22. 前記生物学的試料が血清試料である、条項21に記載の方法。
【0233】
条項23. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項16から22のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0234】
条項24. 前記生物学的試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルを決定することが免疫測定法によりPIVKA-IIおよびAFPを検出することを含む、条項17から23のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0235】
条項25. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項23または24に記載の方法。
【0236】
条項26. PIVKA-IIおよびAFPの前記基準レベルが対照試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルである、条項17から25のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0237】
条項27. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項16から26のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0238】
条項28. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項16から27のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0239】
条項29. 前記カットオフレベルが複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項28に記載の方法。
【0240】
条項30. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項16から29のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0241】
条項31. それを必要とする対象における肝細胞癌(HCC)の進行をモニターする方法であって、(a)前記対象から第1および第2の生物学的試料を得ること、(b)前記第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよび前記第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルを測定すること、(c)ラミニンガンマ2単量体の前記第1および第2のレベルを比較すること、ならびに(d)(i)ラミニンガンマ2単量体の前記第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の前記第1のレベルより大きい場合に対象におけるHCCが進行した、または(ii)ラミニンガンマ2単量体の前記第2のレベルがラミニンガンマ2単量体の前記第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象におけるHCCが進行しなかったと判定することを含む、方法。
【0242】
条項32. 前記第1の生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルおよび前記第2の生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルを測定することをさらに含み、前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーがビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)、アルファ胎児型タンパク質(AFP)およびそれらの組合せからなる群から選択される、条項31に記載の方法。
【0243】
条項33. 前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1および第2のレベルを比較すること、ならびに前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第2のレベルが前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1のレベルより大きい場合に対象におけるHCCが進行した、または前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第2のレベルが前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象におけるHCCが進行しなかったと判定することをさらに含む、条項32に記載の方法。
【0244】
条項34. (a)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの前記第1および第2のレベルを測定する、(b)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPの第1および第2のレベルを測定する、または(c)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの前記第1および第2のレベルを測定する、条項31から33のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0245】
条項35. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIのレベルがラミニンガンマ2単量体およびPIVKA-IIの前記基準レベルより大きい、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびAFPのレベルがラミニンガンマ2単量体およびAFPの前記基準レベルより大きい、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPのレベルがラミニンガンマ2単量体、PIVKA-IIおよびAFPの前記基準レベルより大きい場合に対象がHCCを有すると特定される、条項34に記載の方法。
【0246】
条項36. 前記第1および第2の生物学的試料が全血試料、血漿試料または血清試料である、条項31から35のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0247】
条項37. 前記第1および第2の生物学的試料が血清試料である、条項36に記載の方法。
【0248】
条項38. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項31から37のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0249】
条項39. 前記生物学的試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルを決定することが免疫測定法によりPIVKA-IIおよびAFPを検出することを含む、条項32から38のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0250】
条項40. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項38または39に記載の方法。
【0251】
条項41. PIVKA-IIおよびAFPの前記基準レベルが対照試料中のPIVKA-IIおよびAFPのレベルである、条項32から40のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0252】
条項42. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項31から41のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0253】
条項43. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項31から42のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0254】
条項44. 前記カットオフレベルが複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項43に記載の方法。
【0255】
条項45. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項31から44のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0256】
条項46. それを必要とする対象におけるHCCを検出するためのキットであって、ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬を含む、キット。
【0257】
条項47. (a)ビタミンK依存性凝固因子前駆体II(PIVKA-II)を検出するための1つ以上の試薬、および(b)アルファ胎児型タンパク質(AFP)を検出するための1つ以上の試薬をさらに含む、条項46に記載のキット。
【0258】
条項48. それを必要とする対象における膵臓がんを診断する方法であって、(a)前記対象から生物学的試料を得ること、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定すること、(c)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを決定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、および少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較すること、ならびに(e)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルより大きい場合に対象が膵臓がんを有すると特定することを含む、方法。
【0259】
条項49. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルを決定する、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルを決定する、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルを決定する、条項48に記載の方法。
【0260】
条項50. 前記生物学的試料が全血試料、血漿試料および血清試料からなる群から選択される、条項48または49に記載の方法。
【0261】
条項51. 前記生物学的試料が血清試料である、条項50に記載の方法。
【0262】
条項52. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項48から51のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0263】
条項53. 前記生物学的試料中のCEAおよびCA19-9の前記レベルを決定することが免疫測定法によりCEAおよびCA19-9を検出することを含む、条項49から52のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0264】
条項54. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項52または53に記載の方法。
【0265】
条項55. CEAおよびCA19-9の前記基準レベルが対照試料中のCEAおよびCA19-9のレベルである、条項49から54のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0266】
条項56. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項48から55のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0267】
条項57. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項48から56のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0268】
条項58. 前記カットオフ値が複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項57に記載の方法。
【0269】
条項59. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項48から58のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0270】
条項60. 対象が膵臓がんを有するまたは発症するリスクがあるかどうかを判定する方法であって、(a)前記対象から生物学的試料を得ること、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを測定すること、(c)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、前記生物学的試料中の少なくとも1つの追加のバイオマーカーのレベルを測定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体の前記レベルをラミニンガンマ2単量体の基準レベルと、および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルを少なくとも1つの追加のバイオマーカーの基準レベルと比較すること、ならびに(e)ラミニンガンマ2単量体および前記少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記レベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記基準レベルより大きい場合に対象が膵臓がんを有するまたは発症するリスクがあると判定することを含む、方法。
【0271】
条項61. (a)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAのレベルを測定する、(b)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9のレベルを測定する、または(c)前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9のレベルを測定する、条項60に記載の方法。
【0272】
条項62. 前記生物学的試料が全血試料、血漿試料および血清試料からなる群から選択される、条項60または61に記載の方法。
【0273】
条項63. 前記生物学的試料が血清試料である、条項62に記載の方法。
【0274】
条項64. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項60から63のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0275】
条項65. 前記生物学的試料中のCEAおよびCA19-9のレベルを決定することが免疫測定法によりCEAおよびCA19-9を検出することを含む、条項61から64のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0276】
条項66. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項64または65に記載の方法。
【0277】
条項67. CEAおよびCA19-9の前記基準レベルが対照試料中のCEAおよびCA19-9のレベルである、条項61から66のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0278】
条項68. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項60から67のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0279】
条項69. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項60から68のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0280】
条項70. 前記カットオフ値が複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項69に記載の方法。
【0281】
条項71. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項60から70のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0282】
条項72. それらを必要とする対象における膵臓がんの進行をモニターする方法であって、(a)対象から第1および第2の生物学的試料を得ること、(b)前記第1の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第1のレベルおよび前記第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体の第2のレベルを測定すること、(c)前記第1の生物学的試料中の、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第1のレベルならびに前記第2の生物学的試料中の、がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーの第2のレベルを測定すること、(d)ラミニンガンマ2単量体の前記第1および第2のレベルを比較すること、(e)少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1および第2のレベルを比較すること、ならびに(f)(i)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第2のレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1のレベルより大きい場合に対象における膵臓がんが進行したと、または(ii)ラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第2のレベルがラミニンガンマ2単量体および少なくとも1つの追加のバイオマーカーの前記第1のレベルと同等もしくはより小さい場合に対象における膵臓がんが進行しなかったと判定することを含む、方法。
【0283】
条項73. (i)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCEAの第1および第2のレベルを測定する、(ii)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体およびCA19-9の第1および第2のレベルを測定する、または(iii)前記第1および第2の生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体、CEAおよびCA19-9の第1および第2のレベルを測定する、条項72に記載の方法。
【0284】
条項74. 前記第1および第2の生物学的試料が全血試料、血漿試料および血清試料である、条項72または73に記載の方法。
【0285】
条項75. 前記第1および第2の生物学的試料が血清試料である、条項74に記載の方法。
【0286】
条項76. 前記生物学的試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルを決定することが免疫測定法によりラミニンガンマ2単量体を検出することを含む、条項72から75のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0287】
条項77. 前記生物学的試料中のCEAおよびCA19-9のレベルを決定することが免疫測定法によりCEAおよびCA19-9を検出することを含む、条項73から76のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0288】
条項78. 前記免疫測定法がサンドイッチ免疫測定法である、条項76または77に記載の方法。
【0289】
条項79. CEAおよびCA19-9の前記基準レベルが対照試料中のCEAおよびCA19-9のレベルである、条項73から78のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0290】
条項80. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルが対照試料中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項72から79のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0291】
条項81. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがカットオフレベルである、条項72から80のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0292】
条項82. 前記カットオフ値が複数の対照試料の平均値プラス2標準偏差解析により決定される、条項81に記載の方法。
【0293】
条項83. ラミニンガンマ2単量体の前記基準レベルがキャリブレーター中のラミニンガンマ2単量体のレベルである、条項72から82のいずれか1つの条項に記載の方法。
【0294】
条項84. それらを必要とする対象における膵臓がんを検出するためのキットであって、(a)ラミニンガンマ2単量体を検出するための1つ以上の試薬および(b)がん胎児抗原(CEA)および炭水化物抗原19-9(CA19-9)からなる群から選択される、少なくとも1つの追加のバイオマーカーを検出するための1つ以上の試薬を含む、キット。
【0295】
前述の詳細な説明および添付の実施例は、単に例示的なものであり、添付の特許請求の範囲およびそれらと同等のものによってのみ規定される、本発明の範囲に対する制限と解釈すべきでないことは、理解される。
【0296】
開示した実施形態の様々な変更および修正は、当業者に明らかである。化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤または本発明の使用方法に関するものを制限なく含む、そのような変更および修正は、その精神および範囲から逸脱することなしに行うことができる。