(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】積層フィルム、および積層フィルムを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20221110BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221110BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221110BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20221110BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B7/023
B32B27/34
C08G73/14
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018130208
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2017-0086695
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宋 善 眞
(72)【発明者】
【氏名】徐 聖 鎭
(72)【発明者】
【氏名】朱 京 植
(72)【発明者】
【氏名】蔡 貞 廈
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-521405(JP,A)
【文献】特開2003-316276(JP,A)
【文献】特開2017-119867(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122485(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 73/00-73/26
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置の表示パネルの前面に配置されるための積層フィルムにおいて、
前記表示パネルの前面の上に配置される第1フィルムと、
前記第1フィルムの上に配置される第2フィルムとを含み、
前記第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、前記第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)と同一かまたはより大きく、
前記第1フィルムの透過率は、前記第2フィルムの透過率と同一かまたはより大きいが、ただし、
前記第1フィルムと前記第2フィルムは、引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異な
り、
前記第1フィルムおよび前記第2フィルムは、それぞれ独立して、下記化学式1で表される構造単位および下記化学式2で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)を含む、積層フィルム。
【化1】
前記化学式1中、
Dは、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の4価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、前記芳香族環基、または前記ヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2
-、-Si(CH
3
)
2
-、-(CH
2
)
p
-、-(CF
2
)
q
-、-C(C
n
H
2n+1
)
2
-、-C(C
n
F
2n+1
)
2
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
H
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
F
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF
3
)(C
6
H
5
)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
Eは置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2
-、-Si(CH
3
)
2
-、-(CH
2
)
p
-、-(CF
2
)
q
-、-C(C
n
H
2n+1
)
2
-、-C(C
n
F
2n+1
)
2
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
H
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
F
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF
3
)(C
6
H
5
)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は、隣接した原子に連結される部分であり、
【化2】
前記化学式2中、
AおよびBは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2
-、-Si(CH
3
)
2
-、-(CH
2
)
p
-、-(CF
2
)
q
-、-C(C
n
H
2n+1
)
2
-、-C(C
n
F
2n+1
)
2
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
H
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-、-(CH
2
)
p
-C(C
n
F
2n+1
)
2
-(CH
2
)
q
-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF
3
)(C
6
H
5
)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は隣接した原子に連結される部分である。
【請求項2】
前記第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、5GPa以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記第1フィルムの透過率は、89%以上である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第2フィルムの透過率は、88%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、4GPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記第2フィルムの屈折率が前記第1フィルムの屈折率より高い、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記第2フィルムの上に配置されるハードコーティング層をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記第1フィルムの下に配置される背面コーティング層をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記第1フィルムと第2フィルムの間に接着剤層または超弾性層をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記第2フィルムと前記接着剤層または超弾性層の間に第2背面コーティング層をさらに含む、請求項9に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記第1フィルムと前記接着剤層または超弾性層の間に前面コーティング層をさらに含む、請求項9または10に記載の積層フィルム。
【請求項12】
前記ハードコーティング層は、アクリレート系ポリマー、ポリカプロラクトン、ウレタン-アクリレートコポリマー、ポリロタキサン、エポキシ樹脂、オルガノシリコン材料、無機ハードコーティング材料、またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の積層フィルム。
【請求項13】
前記第1フィルムと第2フィルムの厚さは、それぞれ独立して10μm~100μmである、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項14】
前記接着剤層または超弾性層の厚さは、50μm以下である、請求項9に記載の積層フィルム。
【請求項15】
前記化学式1中のDは、それぞれ独立して、下記グループ1から選択される基である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【化3】
前記化学式において、
それぞれの残基は、置換もしくは非置換のものであってもよく、
Lは、それぞれ同一または異なってもよく、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-(CH
2)
p-、(CF
2)
q-、-C(C
nH
2n+1)
2-、-C(C
nF
2n+1)
2-、-(CH
2)
p-C(C
nH
2n+1)
2-(CH
2)
q-、-(CH
2)
p-C(C
nF
2n+1)
2-(CH
2)
q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF
3)(C
6H
5)-、または-C(=O)NH-であり、 *は隣接した原子に連結される部分であり、
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、-N=または-C(R
100)=であって、この際、R
100は水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、Z
1およびZ
2は、同時に-C(R
100)=ではなく、
Z
3は、-O-、-S-、または-N(R
101)-であり、この際、R
101は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。
【請求項16】
前記化学式1中のEおよび前記化学式2中のBは、それぞれ独立して、下記化学式5で表される基である、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基である、請求項1~
15のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【化4】
前記化学式5中、
R
6およびR
7は、それぞれ独立して、-CF
3、-CCl
3、-CBr
3、-CI
3、-F、-Cl、-Br、-I、-NO
2、-CN、-COCH
3および-CO
2C
2H
5からなる群から選択される電子吸引基であり、
R
8およびR
9は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR
204、ここで、R
204は、炭素数1~10の脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR
205R
206R
207、ここで、R
205、R
206およびR
207は、それぞれ独立して、水素原子、もしくは炭素数1~10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n3は、1~4の整数であり、n5は、0~3の整数であり、n3+n5は、4以下の整数であり、
n4は、1~4の整数であり、n6は、0~3の整数であり、n4+n6は、4以下の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【請求項17】
前記化学式2中のAは、下記グループ3から選択される基である、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基である、請求項1~
16のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【化5】
前記化学式において、
R
18~R
29は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n11およびn14~n20は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
n12およびn13は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか1項に記載の積層フィルムを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
積層フィルム、および積層フィルムを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPCなどの携帯用表示装置の高性能化および大衆化につれ、それに関する研究が盛んに行われている。例えば、軽量のフレキシブル(つまり、曲げたり(bendable)折りたためたりする(foldable))携帯用表示装置を商品化するための研究および開発が進んでいる。液晶ディスプレイなどの携帯用表示装置は、液晶層など表示モジュールを保護するための保護ウィンドウ(protective window)を有する。現在多くの携帯用表示装置は、硬いガラス基材を含むウィンドウを使用している。しかしながら、ガラスは、外部衝撃によって割れやすいため、携帯用表示装置などに適用すると、破損が起きやすいだけでなく、柔軟な性質がないためフレキシブル表示装置に適用できない。これに対し、特許文献1では、表示装置で保護ウィンドウをプラスチックフィルムに代替しようとする試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のプラスチックフィルムは、表示装置の保護ウィンドウでの使用のために求められる機械的物性、例えば、硬度、および光学的物性をより改善する必要があり、同時にフレキシブル表示装置に利用するための優れた屈曲特性も充足しなければならない。
【0005】
よって、本発明の目的は、機械的物性、光学的特性、および屈曲特性をすべて充足する積層フィルムを提供することにある。
【0006】
また、本発明の他の目的は、機械的物性、光学的特性、および屈曲特性がすべて改善された積層フィルムを含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、表示装置の表示パネルの前面に配置されるための第1フィルムと、前記第1フィルムの上に配置される第2フィルムとを含み、
前記第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus、以下、単に「モジュラス」とも略記する。)は、前記第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)と同一かまたはより大きく、
前記第1フィルムの透過率は、前記第2フィルムの透過率と同一かまたはより大きいが、ただし、
前記第1フィルムと前記第2フィルムは、引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異なるフィルムからなる積層フィルムである。
【0008】
前記第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、5GPa以上であってもよい。
【0009】
前記第1フィルムの透過率は、89%以上であってもよい。
【0010】
前記第2フィルムの透過率は、88%以上であってもよい。
【0011】
前記第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、4GPa以上であってもよい。
【0012】
前記第2フィルムの屈折率が前記第1フィルムの屈折率より高く形成されてもよい。
【0013】
前記積層フィルムは、前記第2フィルムの上に配置されるハードコーティング層をさらに含んでもよい。
【0014】
前記積層フィルムは、前記第1フィルムの下に配置される背面コーティング層をさらに含んでもよい。
【0015】
前記第1フィルムと第2フィルムの間には、接着剤層または超弾性層をさらに含んでもよい。
【0016】
前記積層フィルムは、前記第2フィルムと前記接着剤層または超弾性層の間に第2背面コーティング層をさらに含んでもよい。
【0017】
前記積層フィルムは、前記第1フィルムと前記接着剤層または超弾性層の間に前面コーティング層をさらに含んでもよい。
【0018】
前記ハードコーティング層は、アクリレート系ポリマー、ポリカプロラクトン、ウレタン-アクリレートコポリマー、ポリロタキサン、エポキシ樹脂、オルガノシリコン材料、無機ハードコーティング材料、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
前記第1フィルムと第2フィルムの厚さは、それぞれ独立して10μm~100μmであってもよい。
【0020】
前記接着剤層または超弾性層の厚さは、50μm以下であってもよい。
【0021】
前記第2フィルムは、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)、またはこれらの組み合わせを含むフィルムであってもよい。
【0022】
前記第1フィルムは、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、またはこれらの組み合わせを含むフィルムであってもよい。
【0023】
前記第1フィルムと前記第2フィルムは、それぞれ独立して、
(1)下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド;または
(2)下記化学式1で表される構造単位および下記化学式2で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)を含んでもよい。
【0024】
【0025】
前記化学式1中、
Dは、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の4価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、前記芳香族環基、または前記ヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環(2個以上の環が互いに縮合して形成されたものを指し、以下同様)、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
Eは、置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は、隣接した原子に連結される部分であり、
【0026】
【0027】
前記化学式2中、
AおよびBは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は隣接した原子に連結される部分である。
【0028】
前記化学式1中のDは、それぞれ独立して、下記グループ1から選択される基であり得る。
【0029】
【0030】
前記化学式において、
それぞれの残基は、置換もしくは非置換のものであってもよく、
Lは、それぞれ同一または異なってもよく、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-であり、
*は隣接した原子に連結される部分であり、
Z1およびZ2は、それぞれ独立して、-N=または-C(R100)=であって、この際、R100は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、Z1およびZ2は、同時に-C(R100)=ではなく、
Z3は、-O-、-S-、または-N(R101)-であり、この際、R101は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基である。
【0031】
前記化学式1中のEおよび前記化学式2中のBは、それぞれ独立して、下記化学式5で表される基であり得る、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基であり得る。
【0032】
【0033】
前記化学式5中、
R6およびR7は、それぞれ独立して、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CI3、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-COCH3および-CO2C2H5からなる群から選択される電子吸引基であり、
R8およびR9は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR204、ここで、R204は、炭素数1~10の脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR205R206R207、ここで、R205、R206およびR207は、それぞれ独立して、水素原子、もしくは炭素数1~10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n3は、1~4の整数であり、n5は、0~3の整数であり、n3+n5は、4以下の整数であり、
n4は、1~4の整数であり、n6は、0~3の整数であり、n4+n6は、4以下の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0034】
前記化学式2中のAは、下記グループ3から選択される基であり得る、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基であり得る。
【0035】
【0036】
前記化学式において、
R18~R29は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n11およびn14~n20は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
n12およびn13は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0037】
本発明の他の一実施形態は、前記した本発明の一実施形態による積層フィルムを含む表示装置である。
【発明の効果】
【0038】
本発明による積層フィルムは、高い機械的物性および光学的特性を充足し、特に優れた屈曲特性を示すことによって、フレキシブル表示装置のウィンドウなどとして有用に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態による積層フィルムの光特性および機械的物性をシミュレーションするために形成した積層フイルムであって、第1フィルム100、第2フィルム200、ハードコーティング層300、およびPSA接着剤層500を含む積層フィルムの概略的な断面を示す図面である。
【
図2】
図1に示す積層フィルムでハードコーティング層300と接着剤層500の屈折率は固定し、第1フィルム100と第2フィルム200の屈折率をそれぞれ変化させながら積層フィルムの透過率をシミュレーションした結果を示すグラフ図面である。
【
図3】
図1の積層フィルムで第1フィルム100と第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus;
図3では、単に「モジュラス」と略記する。)をそれぞれ変更しながらハードコーティングされた積層フィルム上部からボールドロップ(ball drop)テストを通じて積層フィルムに衝撃を加える場合、第2フィルム200の最大変形量をグラフで示した図面である。
【
図4】
図1の積層フィルムで第2フィルム100と第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus;
図4では、単に「モジュラス」と略記する。)をそれぞれ変更しながらハードコーティングされた積層フィルム上部からボールドロップ(ball drop)テストを通じて積層フィルムに衝撃を加える場合、第1フィルム100の最大変形量をグラフで示した図面である。
【
図5】
図1の積層フィルムで第1フィルム100と第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus;
図5では、単に「モジュラス」と略記する。)をそれぞれ変更しながらハードコーティングされた積層フィルム上部からボールドロップ(ball drop)テストを通じて積層フィルムに衝撃を加える場合、ハードコーティング層300の最大変形量をグラフで示した図面である。
【
図6】第1実施態様により第1フィルム100および第2フィルム200を積層して製造される積層フィルム10の概略的な断面を示す図面である。
【
図7】第2実施態様により第2フィルム200の上部にハードコーティング層300を追加積層して製造される積層フィルム20の概略的な断面を示す図面である。
【
図8】第3実施態様により第1フィルム100の下部に背面コーティング層400を追加積層した積層フィルム30の概略的な断面を示す図面である。
【
図9】第4実施態様により第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500を含む積層フィルム40の概略的な断面を示す図面である。
【
図10】第5実施態様により第1フィルム100と第2フィルム200を含み、第2フィルム200上部にハードコーティング層300を含み、第1フィルム100下部に背面コーティング層400を含み、第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500を含む積層フィルム50の概略的な断面を示す図面である。
【
図11】第6実施態様により第1フィルム100と第2フィルム200を含み、第2フィルム200上部にハードコーティング層300を含み、第1フィルム100下部に背面コーティング層400を含み、第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500を含み、第2フィルム200と接着剤層または超弾性層500の間に第2背面コーティング層600を含む積層フィルム60の概略的な断面を示す図面である。
【
図12】第7実施態様により第1フィルム100と第2フィルム200を含み、第2フィルム200上部にハードコーティング層300を含み、第1フィルム100下部に背面コーティング層400を含み、第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500を含み、第1フィルム100と接着剤層または超弾性層500の間に前面コーティング層700を含む積層フィルム70の概略的な断面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求項の範囲によってのみ定義されるものである。
【0041】
本明細書において特に言及しない限り、「置換」とは、与えられた官能基に含まれている一つ以上の水素原子がハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(-NH2、-NH(R100)、または-N(R101)(R102)であり、ここでR100、R101およびR102は同一であるかまたは互いに異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換の脂環族有機基(例えば、シクロアルキル基など)、置換もしくは非置換のアリール基(例えば、ベンジル基、ナフチル基、フルオレニル基など)、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換のヘテロアリール基、および置換もしくは非置換のヘテロ環基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基によって置換されたことを意味し、前記置換基は互いに連結されて環を形成することもできる。
【0042】
本明細書において特に言及しない限り、「アルキル基」とは、炭素数1~30のアルキル基を意味し、好ましくは炭素数1~15のアルキル基を意味し、「シクロアルキル基」とは、炭素数3~30のシクロアルキル基を意味し、好ましくは炭素数3~18のシクロアルキル基を意味し、「アルコキシ基」とは、炭素数1~30のアルコキシ基を意味し、好ましくは炭素数1~18のアルコキシ基を意味し、「エステル基」とは、炭素数2~30のエステル基を意味し、好ましくは炭素数2~18のエステル基を意味し、「ケトン基」とは、炭素数2~30のケトン基を意味し、好ましくは炭素数2~18のケトン基を意味し、「アリール基」とは、炭素数6~30のアリール基を意味し、好ましくは炭素数6~18のアリール基を意味し、「アルケニル基」とは、炭素数2~30のアルケニル基を意味し、好ましくは炭素数2~18のアルケニル基を意味する。
【0043】
本明細書において特に言及しない限り「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。このとき、「共重合」とはランダム共重合、ブロック共重合またはグラフト共重合を意味する。
【0044】
本明細書において、用語「ポリイミド」は、単に「ポリイミド」だけを意味するのではなく、「ポリイミド」、「ポリアミド酸」、またはこれらの組み合わせを意味し得る。また、「ポリイミド」および「ポリアミド酸」は、同一の意味を有するものと混用され得る。
【0045】
また、本明細書において、「*」は、同一であるかまたは相異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0046】
図面において複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって類似する部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時には中間にまた他の部分がないことを意味する。
【0047】
本発明の一実施形態は、フレキシブル表示装置またはフォルダブル表示装置(Foldable display device)などのような表示装置を保護するカバーウィンドウなどとして用いることができる積層フィルムに関する。
【0048】
従来、表示装置の素子を保護するためにガラス基板が用いられているが、形態が自由に曲がるフレキシブルおよびフォルダブル特性を有するようにする場合、表示装置のウィンドウとしての強度および硬度を有すると共に、表示素子としての機能を発揮することができるように光透過率、色などがガラス基板と類似し、ひいては、屈曲特性が高いプラスチック素材の使用が必須である。特に、3mm以下の低い屈曲半径を有するフォルダブルディスプレイ用ウィンドウの場合、高い屈曲性と光特性および高硬度が要求される。高い屈曲性を有するためには、超弾性素材のように弾性領域が広い素材が適切であるが、このような素材は硬度の側面ではウィンドウ特性を満足させることが容易でない。他の代案として、高い屈曲性を充足するためには薄いフィルムが必須であるが、薄いフィルムは光特性が改善される長所がある反面、硬度が低下するという問題を有する。したがって、高い屈曲性と光特性、および硬度を同時に満足するフレキシブルまたはフォルダブルディスプレイウィンドウ用フィルムの開発が必要である。しかしながら、高い屈曲性と高硬度、および高い光特性は互いにトレードオフ(trade-off)の関係にあり、これらの物性を同時に達成することは難しい。
【0049】
本発明者らは、特定の条件を充足する2以上の互いに異なるフィルムを特定の方式で積層した積層構造のフィルムが前記トレードオフの関係にある高い屈曲性と高硬度、および高い光特性を同時に充足できることを発見して本発明を完成した。つまり、本発明の一実施形態は、表示装置の表示パネルの前面に配置されるための第1フィルムと、前記第1フィルムの上に配置される第2フィルムとを含み、前記第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、前記第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)と同一かまたはより大きく、前記第1フィルムの透過率は、前記第2フィルムの透過率と同一かまたはより大きいが、ただし、前記第1フィルムと第2フィルムとが、引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異なるフィルムからなる積層フィルムを提供する。
【0050】
本発明の一実施形態では、5mm以下、例えば、3mm以下、例えば、1mm以下の屈曲半径を有するフォルダブルディスプレイの高い屈曲性を有するようにするために、5mm以下、例えば、3mm以下、例えば、1mm以下の屈曲性テストを通過した2枚の薄いフィルムをPSA接着剤(Pressure Sensitive Adhesive)を利用してサンドイッチ構造で接着、積層するが、ただし、表示装置の表示パネル前面に配置される下段フィルムよりも、上記下段フィルムの上に積層される上段フィルムが上記下段フィルムよりも高いかまたは同一の硬度あるいは引張弾性率(tensile modulus)を有するように配置し、下段には前記上段よりも光特性がより優れるかまたは少なくとも同一の光特性を有するフィルムを配置した積層フィルムを製作し得るものである。
【0051】
前記積層フィルムの構造は、一般に表示装置の表示パネルを保護するウィンドウの機能上、ウィンドウ上段でより高い表面硬度が要求され得るという点、および一般にウィンドウの上段に配置されるハードコーティングは、光特性に優れてウィンドウの光特性を向上させることができるため、上段より下段フィルムの光特性がより優れるか、または少なくとも上段フィルムの光特性と同一の光特性を有する下段フィルムを採択することが有利であるという点に着眼したものである。このような予想は、表示装置の表示パネル前面に配置される第1フィルムと、第1フィルムの上に配置される第2フィルムの透過率および引張弾性率(tensile modulus)を変化させながら、第1フィルムと第2フィルム、および第2フィルム上部にハードコーティング層が積層された積層フィルムの透過率変化をシミュレーションした結果、および前記積層フィルムに衝撃を加えた時、積層フィルム内の第1フィルム、第2フィルム、およびハードコーティング層のそれぞれの最大変形量を測定したシミュレーション結果と一致する。次に、これを図面を参照して具体的に説明する。
【0052】
図1は、前記シミュレーションのために形成した積層フィルムの概略的な断面を示す図面である。
図1に示したように、前記積層フィルムは、下段第1フィルム100と上段第2フィルム200を含み、第2フィルム200上部にはハードコーティング層300が存在し、第1フィルムと第2フィルムの間には接着剤層500が存在する。前記ハードコーティング層300と接着剤層500の屈折率は、それぞれ1.5に固定し、第1フィルム100と第2フィルム200の屈折率をそれぞれ変更しながら積層フィルム全体の透過率をシミュレーションした結果を
図2のグラフで示す。
【0053】
図2から分かるように、積層フィルム全体の透過率は、上段第2フィルムの透過率より下段第1フィルムの透過率に大きい影響を受けることが明らかになった。つまり、下段第1フィルムの屈折率が低いほど、つまり、下段第1フィルムの透過率が高いほど、積層フィルム全体の透過率が高く示される。このような結果は、屈折率が1.7である1枚のポリイミドフィルム上段に屈折率が1.5であるハードコーティング層を形成した場合の透過率が89.2%である反面、前記と同一のハードコーティング層がコーティングされた同一のポリイミドフィルムの下に屈折率1.5である接着剤層を形成し、この接着剤層を通じて屈折率が1.65であるポリイミドフィルムを下段に追加積層した積層フィルムの透過率が89.9%に増加する結果とも一致する。つまり、同一の屈折率を有する1枚のフィルムからなる場合よりも、その下により低い屈折率を有するフィルムを積層することによって、フィルム全体の透過度(透過率)を向上させることができることが分かる。
【0054】
図3ないし
図5は、
図1の積層フィルムで第1フィルム100と第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus)をそれぞれ変更しながら、ハードコーティングされた積層フィルムに上段から一定の高さからボールドロップテスト(ball drop)で衝撃を加える場合、上段第2フィルム200の最大変形量(%)(
図3)、下段第1フィルム100の最大変形量(%)(
図4)、および上段第2フィルム上部のハードコーティング層300の最大変形量(%)(
図5)をそれぞれ示すグラフである。
【0055】
図3から分かるように、上段第2フィルム200の最大変形量は上段第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus)に主に影響を受ける。上段第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)が高いほど上段第2フィルムの最大変形量は小さい。
【0056】
図4は、下段第1フィルム100の最大変形量変化を示すもので、下段第1フィルムの最大変形量は下段第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)に主に影響を受ける。下段第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)が高いほど下段第1フィルムの最大変形量は小さい。
【0057】
図5は、上段ハードコーティング層300の最大変形量を示すグラフである。
図5から、最上段に位置するハードコーティング層300の変形量は主に上段第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)に影響を受けることが分かる。第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)が高くなるほどハードコーティング層の最大変形量が減少する。
【0058】
一方、
図3ないし
図5に示された各フィルムの衝撃に対する最大変形量を比較してみれば、同一の衝撃を加える時、上段第2フィルムの最大変形量が最も大きく、最上段ハードコーティング層の最大変形量が最も小さいことが分かる。しかしながら、一般にハードコーティング層は回復性がよくなく、また表示装置用ウィンドウの特性上、ウィンドウ最上段、例えばハードコーティング層または上段第2フィルムの変形を最小化することが重要である。したがって、ハードコーティング層の最大変形量および上段第2フィルムの最大変形量を減少させることができるように、前記積層フィルムは上段第2フィルムがより高い引張弾性率(tensile modulus)を有することが有利であることが分かる。
【0059】
以上のようなシミュレーション結果から、互いに異なる2種類の薄いフィルム、例えば、引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異なる2枚のフィルムを積層するが、ただし、表示装置の表示パネル前面に配置される下段のフィルムがその上に配置される上段のフィルムより高いかまたは同一の透過率を有し、上段のフィルムが下段のフィルムより高いかまたは同一の引張弾性率(tensile modulus)を有するように配置した本発明の一実施形態による積層フィルムは、前記二つのフィルムの厚さの合計と同一かまたは類似する厚さを有する1枚のフィルムより優れた屈曲性を有しながらも、光特性および機械的物性の面でも1枚のフィルムに比べて特性が大きく低下しないことを確認した。
【0060】
以下、
図6ないし
図9を参照して前記実施形態による積層フィルムの多様な実施態様をより詳しく説明する。
【0061】
図6は、第1実施態様による積層フィルム10の断面を概略的に示した図面である。
図6において、積層フィルム10は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100と、第1フィルム100の上段に配置される第2フィルム200とを含み、第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus)は、第1フィルム100の引張弾性率(tensile modulus)より高いかまたは同一である。また、表示パネルの前面に配置される第1フィルム100の透過率は、第2フィルム200の透過率より高いかまたは同一であり、第1フィルム100と第2フィルム200は引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異なるフィルムからなる。
【0062】
本発明の一実施形態において、第2フィルム200の引張弾性率(tensile modulus)は、5GPa以上であってもよく、第1フィルム100の透過率は89%以上であってもよい。
【0063】
第2フィルム200が前記範囲の引張弾性率(tensile modulus)を有し、第1フィルム100が前記範囲の透過率を有する場合、第2フィルム200と同一であるかまたはより低い引張弾性率(tensile modulus)を有する第1フィルム100と、第1フィルム100より低い光透過率を有するかまたは同一の光透過率を有する第2フィルム200を前記順に積層したウィンドウフィルム10は、第1フィルム100と第2フィルム200の光透過率と硬度を大きく低下させずに屈曲特性が顕著に改善され得る。
【0064】
以下の実施態様を通じて確認できるように、前記第1フィルム100または第2フィルム200のうちのいずれか一つのみからなるウィンドウフィルムを5mm以下、例えば1mm以下の屈曲半径に20万回折りたたんだり伸ばしたりする屈曲性テストに適用した場合、前記二つのフィルムのすべてが前記屈曲性テストを通過できないのに対し、第1フィルム100と第2フィルム200を
図1に示すように積層してなるウィンドウフィルム10は前記屈曲性テストを通過した。
【0065】
本発明の一実施形態において、第2フィルム200は、4GPa以上の引張弾性率(tensile modulus)を有してもよい。
【0066】
本発明の一実施形態において、第1フィルム100は、88%以上の透過率を有してもよい。
【0067】
第1フィルム100と第2フィルム200が前記範囲の引張弾性率(tensile modulus)と光透過率を有する場合、これらを前記のように積層したウィンドウフィルム10は、ほぼ88%以上の透過率および最小4GPa以上の引張弾性率(tensile modulus)を有し、5mm以下の屈曲半径、例えば、3mm以下の屈曲半径、例えば、1mm以下の屈曲半径に10万回以上、例えば、15万回以上、例えば20万回以上の屈曲性テストを通過することができる。
【0068】
第1フィルムと第2フィルムの厚さは、それぞれ独立して、10μm~100μm、例えば、10μm~80μm、例えば、10μm~50μm、例えば、25μm~50μmであってもよく、これらに制限されない。
【0069】
一方、前記「図示していない表示装置の表示パネル」とは、任意の表示装置の表示パネルであってもよい。例えば、前記表示装置は、携帯用表示装置、例えば、携帯電話や携帯用パーソナルコンピュータの表示パネルであってもよく、例えば、前記表示パネルがフレキシブルまたはフォルダブルなものであってもよい。
【0070】
次に、
図7を参照して、第2実施態様による積層フィルム20を説明する。
【0071】
図7は、第2実施態様による積層フィルム20の断面を概略的に示した図面である。
図7に示したように、
図7の積層フィルム20は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100と、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200、および第2フィルム200上部に配置されたハードコーティング層300を含む。つまり、
図7の積層フィルム20は、
図6の積層フィルム10に比べて第2フィルム200上部にハードコーティング層300をさらに含むことにおいて構成上の差がある。
【0072】
本発明の一実施形態による積層フィルムをウィンドウフィルムなどとして用いる場合、ウィンドウフィルムを保護するために、ウィンドウフィルムの最上段にハードコーティング層を追加することは当該技術分野における通常の知識を有する技術者によく知られている。
図7にはハードコーティング層300が1層からなるものを示したが、ハードコーティング層は2層以上の多層構造であってもよい。ハードコーティング層は、ウィンドウフィルムの表面硬度を高めることができる。本発明の一実施形態において、ガラス板をテスト板として用いた場合、前記ハードコーティング層は、ASTM D3363により垂直荷重1kgで測定した時、4H以上の硬度を有するものを用いてもよい。ハードコーティング層300を形成するための物質、つまり、ハードコーティング物質としては、当該技術分野に公知となった任意のハードコーティング物質を用いてもよく、特に制限されない。例えば、前記ハードコーティング物質は、熱または光により硬化する材料が用いられてもよい。このような材料の例としては、アクリレート系ポリマー、ポリカプロラクトン、ウレタン-アクリレートコポリマー、ポリロタキサン(polyrotaxane)、エポキシ樹脂、シルセスキオキサンなどのオルガノシリコン材料、シリカなどの無機ハードコーティング材料、またはこれらを組み合わせたものなどが挙げられるが、これらに制限されない。前記アクリレート系ポリマーは、多官能性アクリレート単量体を含むモノマー混合物の重合体であってもよい。前記多官能性アクリレート単量体の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)が挙げられるが、これらに制限されない。ウレタンアクリレート材料(前記ウレタン-アクリレートコポリマー)および多官能性アクリレート材料(前記アクリレート系ポリマー)は、優れた接着性および高い生産性を示すことができる。
【0073】
ハードコーティング層300の厚さは、50μm以下、例えば、5μm~30μm、例えば、5μm~20μmであってもよく、これらに制限されない。
【0074】
ハードコーティング層300を除いた残りの構成、つまり、第1フィルム100および第2フィルム200は、
図6についての説明と同一であるため、これについての説明は省略する。
【0075】
次に、
図8を参照して第3実施態様による積層フィルム30を説明する。
【0076】
図8は、第3実施態様による積層フィルム30の断面を概略的に示した図面である。
図8に示したように、
図8の積層フィルム30は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100と、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200、および第1フィルム100下部に配置された背面コーティング層400を含む。つまり、
図8の積層フィルム30は、
図6の積層フィルム10に比べて第1フィルム100下部に背面コーティング層400をさらに含むことにおいて構成上の差がある。
【0077】
背面コーティング層400は、光学的に無色、透明であるか、または無色、透明な媒質に染料を添加して積層フィルムの色座標を制御することができる。背面コーティング層400は、接着剤層または超弾性層とよく接着することができ、屈曲特性を維持することができるものであれば如何なる材料を含んでもよい。例えば、背面コーティング層400は、ハードコーティング層300と同一の素材を含んでもよく、従来の表示装置用ウィンドウのハードコーティング層として用いられた素材を制限なしに用いてもよい。例えば、背面コーティング層400は、(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリカプロラクトン、ウレタン-アクリレートコポリマー、ポリロタキサン、エポキシ樹脂、シロキサン共重合体、パーフルオロポリエーテル、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0078】
背面コーティング層400の厚さは、30nm~300nm、例えば、40nm~200nm、例えば、50nm~180nm、例えば、60nm~150nm、例えば、70nm~130nm、例えば、80nm~120nm、例えば、90nm~120nmの範囲で形成されてもよく、ハードコーティング層300に比べて比較的に薄く形成されてもよい。
【0079】
背面コーティング層の屈折率は、1.7以下、例えば、1.6以下、例えば、1.5以下、例えば1.4以下、例えば、1.3以下であってもよい。
【0080】
背面コーティング層400を除いた残りの構成、つまり、第1フィルム100および第2フィルム200は、
図6で説明したものと同一であるため、これについての説明は省略する。
【0081】
次に、
図9を参照して第4実施態様による積層フィルム40を説明する。
【0082】
図9は、第4実施態様による積層フィルム40の断面を概略的に示した図面である。
図9に示したように、
図9の積層フィルム40は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100と、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200とを含み、第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500を含む。つまり、
図9の積層フィルム40は、
図6の積層フィルム10に比べて第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500をさらに含むことにおいて構成上の差がある。
【0083】
前記接着剤層は、PSA接着剤を含んでもよく、前記超弾性層は、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のような超弾性物質を含んでもよいが、これらに制限されない。
【0084】
接着剤層または超弾性層500を含むことによって第1フィルム100と第2フィルム200をより安定的に固定、接着させることができ、屈曲時に変形が起きてもフィルムを安定的に復原(復元)させる機能を有することができる。しかしながら、接着剤層または超弾性層500は、光特性と硬度低下を誘発することがあるため、接着剤層または超弾性層500の厚さは薄いほどよい。接着剤層または超弾性層500の厚さを薄くするのに代えて(代案的には)、超弾性層500として引張弾性率(tensile modulus)が高いポリウレタン層を用いることもできる。
【0085】
接着剤層または超弾性層500の厚さは、50μm以下、例えば、10μm~40μm、例えば、10μm~30μmであってもよく、これらに制限されない。
【0086】
接着剤層または超弾性層500を除いた残りの構成、つまり、第1フィルム100および第2フィルム200は、
図6で説明したものと同一であるため、これについての説明は省略する。
【0087】
次に、
図10を参照して第5実施態様による積層フィルム50を説明する。
【0088】
図10は、第5実施態様による積層フィルム50の断面を概略的に示したものである。
図10を参照すれば、積層フィルム50は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200、第2フィルム200上部に配置されたハードコーティング層300、第1フィルム100下部に配置された背面コーティング層400、および第1フィルム100と第2フィルム200の間に含まれている接着剤層または超弾性層500を含む。
【0089】
図10において、第1フィルム100と第2フィルム200は
図6を参照して説明したものと同一であり、ハードコーティング層300は
図7を参照して説明したものと同一であり、背面コーティング層400は
図8を参照して説明したものと同一であり、接着剤層または超弾性層500は
図9を参照して説明したものと同一であるため、これらそれぞれの構成についての詳細な説明は省略する。
【0090】
次に、
図11を参照して第6実施態様による積層フィルム60を説明する。
【0091】
図11は、第6実施態様による積層フィルム60の断面を概略的に示したものである。
図11に示されているように、第6実施態様による積層フィルム60は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200、第2フィルム200上部に配置されたハードコーティング層300、第1フィルム100下部に配置された背面コーティング層400、および第1フィルム100と第2フィルム200の間に含まれている接着剤層または超弾性層500を含み、そして第2フィルム200と前記接着剤層または超弾性層500の間に配置される第2背面コーティング層600をさらに含む。
【0092】
第2背面コーティング層600は、第2フィルム200と接着剤層または超弾性層500の間に配置されることを除き、
図8で第1フィルム100下部に配置される背面コーティング層400について説明したものと同一である。
図8で背面コーティング層400について説明したとおり、第2背面コーティング層600も光学的に無色、透明であるか、または無色、透明な媒質に染料を添加することによって積層フィルムの色座標を制御するために用いられる。第1フィルム100と第2フィルム200の間に接着剤層または超弾性層500が介在される場合、これら接着剤層または超弾性層500により積層フィルムの光特性が低下することがあるため、これを緩和するために第2フィルム200と接着剤層または超弾性層500の間に第2背面コーティング層600が配置されてもよい。
【0093】
また、第2背面コーティング層600は、下部の接着剤層または超弾性層500とよく接着することができ、屈曲特性を維持することができるものであれば如何なる材料を含んでもよい。このように、第2背面コーティング層600の素材、厚さ、屈折率などについては
図8の背面コーティング層400について説明したものと同一であるため、これについての詳細な説明は省略する。当該技術分野における通常の知識を有する技術者は、所望の用途や実現しようとする積層フィルムの光特性などを考慮して適切な材料を選択することができる。
【0094】
次に、
図12を参照して第7実施態様による積層フィルム70を説明する。
【0095】
図12は、第7実施態様による積層フィルム70の断面を概略的に示したものである。
図12に示されているように、第7実施態様による積層フィルム70は、図示していない表示装置の表示パネルの前面に配置される第1フィルム100、第1フィルム100上部に配置される第2フィルム200、第2フィルム200上部に配置されたハードコーティング層300、第1フィルム100下部に配置された背面コーティング層400、および第1フィルム100と第2フィルム200の間に含まれている接着剤層または超弾性層500を含み、そして第1フィルム100と前記接着剤層または超弾性層500の間に配置される前面コーティング層700をさらに含む。
【0096】
前面コーティング層700は、光学的に無色、透明であるか、または無色、透明な媒質に染料を添加して積層フィルムの色座標を制御することができる。前面コーティング層700は、上部の接着剤層または超弾性層500とよく接着することができ、屈曲特性を維持することができるものであれば如何なる材料を含んでもよい。例えば、前面コーティング層700は、ハードコーティング層300と同一の素材を含んでもよく、従来の表示装置用ウィンドウのハードコーティング層として用いられた素材を制限なしに用いてもよい。例えば、前面コーティング層700は、(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリカプロラクトン、ウレタン-アクリレートコポリマー、ポリロタキサン、エポキシ樹脂、シロキサン共重合体、パーフルオロポリエーテル、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0097】
前面コーティング層700の厚さは、30nm~300nm、例えば、40nm~200nm、例えば、50nm~180nm、例えば、60nm~150nm、例えば、70nm~130nm、例えば、80nm~120nm、例えば、90nm~120nmの範囲で形成されてもよく、ハードコーティング層300に比べて比較的に薄く形成されてもよい。
【0098】
前面コーティング層700の屈折率は、1.7以下、例えば、1.6以下、例えば、1.5以下、例えば1.4以下、例えば、1.3以下であってもよい。
【0099】
前面コーティング層700を除いた残りの層の構成は、
図6ないし
図11で説明したものと同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
図6ないし
図12を通じて説明したとおり、本発明の一実施形態による積層フィルムは、第1フィルム100と第2フィルム200以外に、所望の用途や実現しようとする特性などにより、ハードコーティング層300、背面コーティング層400、接着剤層または超弾性層500、第2背面コーティング層600、および前面コーティング層700のうちの一つ以上を多様な方式で選択、組み合わせてさらに含んでもよく、それによって積層フィルムの機械的物性、光学的特性、または屈曲性のうちの一つ以上の特性がより改善されたり補完され得る。したがって、当該技術分野における通常の知識を有する技術者は、本発明の一実施形態による積層フィルムを製造するに当たり、目的とする用途により前記層を含む公知の層を多様な形態に選択、組み合わせ、変形して含んでもよく、このような多様な形態の選択、組み合わせ、および変更も本発明の(技術的)範囲に属することは自明である。
【0101】
前記で説明したとおり、本発明の一実施形態による積層フィルムにおいて、表示装置の上段に位置する第2フィルムは、第2フィルムの下段で表示装置の表示パネルの前面に接するようになる第1フィルムより高いかまたは同一の引張弾性率(tensile modulus)を有さなければならず、硬度および強度など機械的物性が優れていると共に、表示装置用ウィンドウなどとしての使用に適した高い透過率など光特性も充足しなければならない。このように高い機械的特性および光学的特性を同時に有する材料として、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。したがって、本発明の一実施形態における前記第2フィルムは、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0102】
ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含むフィルムは、高い光透過度、熱的安定性、機械的強度、および柔軟性などによりディスプレイ基板素材などとして有用に用いられているが、最近、スマートフォンやタブレットPCのようなモバイル機器の最上段ガラスを代替する高硬度ウィンドウフィルムとして用いようとする試みもある。
【0103】
本発明の一実施形態において、前記第2フィルムに含まれるポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーは、光学フィルムとして用いられ得る任意のポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーであってもよく、特に制限されないが、本発明の一実施形態として、高い光学的特性および機械的物性を有する下記化学式1で表される構造単位を含むポリイミド;または下記化学式1で表される構造単位と下記化学式2で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含んでもよい。
【0104】
【0105】
前記化学式1中、
Dは、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の4価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の4価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、前記芳香族環基、または前記ヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環(2個以上の環が互いに縮合して形成されたものを指し、以下同様)、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
Eは、置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂肪族環基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基、または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は、隣接した原子に連結される部分であり、
【0106】
【0107】
前記化学式2中、
AおよびBは、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換または非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、置換または非置換の炭素数1~30のアルキニレン基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の脂環式基、置換もしくは非置換の2価の炭素数6~24の芳香族環基または置換もしくは非置換の2価の炭素数4~24のヘテロ芳香族環基であり、前記脂環式基、芳香族環基、またはヘテロ芳香族環基は、単環、縮合環、または2個以上の前記単環もしくは縮合環が単結合、フルオレニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-により連結されてなるものであり、
*は隣接した原子に連結される部分である。
【0108】
前記化学式1中のDは、それぞれ独立して、下記グループ1から選択される基であり得る。
【0109】
【0110】
前記化学式において、
それぞれの残基は、置換もしくは非置換のものであってもよく、
Lは、それぞれ同一または異なってもよく、それぞれ独立して、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)、-C(CF3)(C6H5)-、または-C(=O)NH-であり、
*は隣接した原子に連結される部分であり、
Z1およびZ2は、それぞれ独立して、-N=または-C(R100)=であって、この際、R100は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、Z1およびZ2は、同時に-C(R100)=ではなく、
Z3は、-O-、-S-、または-N(R101)-であり、この際、R101は、水素原子または炭素数1~のアルキル基である。
【0111】
本発明の一実施形態において、前記化学式1中のDは、下記グループ2から選択される基であり得る。
【0112】
【0113】
【0114】
前記化学式において、*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0115】
前記化学式1中のEおよび前記化学式2中のBは、それぞれ独立して、下記化学式5で表される基であり得るか、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基であり得る。
【0116】
【0117】
前記化学式5中、
R6およびR7は、それぞれ独立して、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CI3、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2、-CN、-COCH3および-CO2C2H5からなる群から選択される電子吸引基(electron withdrawing group)であり、
R8およびR9は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR204、ここでR204は、炭素数1~10の脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR205R206R207、ここでR205、R206およびR207は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n3は、1~4の整数であり、n5は、0~3の整数であり、n3+n5は、4以下の整数であり、
n4は、1~4の整数であり、n6は、0~3の整数であり、n4+n6は、4以下の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0118】
本発明の一実施形態において、前記化学式2中のAは、下記グループ3から選択される基であり得る、または置換または非置換の炭素数1~30のアルキレン基であり得る。
【0119】
【0120】
前記化学式において、
R18~R29は、それぞれ独立して、重水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n11およびn14~n20は、それぞれ独立して、0~4の整数であり、
n12およびn13は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0121】
本発明の一実施形態において、前記化学式2中のAは、下記グループ4から選択される基であり得るが、これらに制限されない。
【0122】
【0123】
前記化学式において、*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0124】
本発明の一実施形態において、前記化学式1で表される構造単位は、下記化学式9で表される構造単位および下記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方を含み得る。
【0125】
【0126】
前記化学式9および前記化学式10中、*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0127】
本発明の一実施形態において、前記化学式2で表される構造単位は、下記化学式6~8で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。
【0128】
【0129】
前記化学式6~8中、*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0130】
本発明の一実施形態において、前記第2フィルムは、下記化学式9で表される構造単位および下記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方を含むポリイミド、または下記化学式9で表される構造単位および下記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方と、下記化学式7で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含み得る。
【0131】
【0132】
前記化学式7、前記化学式9および前記化学式10中、*は、隣接した原子に連結される部分である。
【0133】
本発明の一実施形態において、前記第2フィルムは、前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方と前記化学式7で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含んでもよい。ここで、前記化学式7で表される構造単位の含有量は、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーを構成する構造単位の全モル数に対して、30モル%~80モル%の範囲であることが好ましく、例えば、35モル%~80モル%、例えば、40モル%~80モル%、例えば、45モル%~80モル%、例えば、50モル%~80モル%、例えば、55モル%~80モル%、例えば、60モル%~80モル%、例えば、65モル%~80モル%、例えば、65モル%~75モル%、例えば、65モル%~70モル%の範囲で含むことがより好ましい。前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方の含有量は、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーの構造単位の全モル数に対して、20モル%~70モル%の範囲であることが好ましく、20モル%~65モル%、例えば、20モル%~60モル%、例えば、20モル%~55モル%、例えば、20モル%~50モル%、例えば、20モル%~45モル%、例えば、20モル%~40モル%、例えば、20モル%~35モル%、例えば、25モル%~35モル%、例えば、25モル%~30モル%の範囲で含むことがより好ましい。
【0134】
前記含有量の範囲でイミド構造単位およびアミド構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む前記第2フィルムは、高い機械的強度、例えば、高い引張弾性率(tensile modulus)、例えば、5GPa以上の引張弾性率(tensile modulus)、および高い表面硬度、例えば、ASTM D3363により垂直荷重500gramで測定した時、H以上の鉛筆スクラッチ硬度を有し、優れた光学的特性、例えば、約88%以上の高い可視光線透過度、低い黄色指数(YI)、例えば、3以下のYI、低いヘイズ、および高い耐UV特性などを有してもよい。
【0135】
前記第2フィルムの下段に配置される第1フィルムは、前記第2フィルムより機械的物性、例えば、引張弾性率(tensile modulus)は、より低いかまたは同一であってもよい反面、第1フィルムは、第2フィルムより光特性がより優れているかまたは同一であってもよい。例えば、前記第1フィルムは、約89%以上の可視光線透過率を有するものであってもよく、このように高い透過率を有する素材として従来知られた多様な高分子物質を含んでもよい。
【0136】
例えば、前記第1フィルムは、ポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、これらに制限されない。
【0137】
前記のように、第1フィルムは、第2フィルムより優れているか、または第2フィルムと同一の光特性を有してもよく、例えば、前記第1フィルムは、前記第2フィルムより光特性に優れている反面、引張弾性率(tensile modulus)および/または表面硬度のような機械的物性は、前記第2フィルムと同一であるか、または第2フィルムより低く形成されてもよい。本発明の一実施形態において、第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)は、4GPa以上であってもよい。
【0138】
第1フィルムの光特性が第2フィルムより優れているか、または少なくとも第2フィルムと同一でなければならないが、機械的物性も特定の範囲以上であることがよく、本発明の一実施形態において、第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)が4GPa以上である場合、第1フィルムと第2フィルムを含むウィンドウフィルムの光特性および機械的物性がよりよい。このような観点で、第1フィルムは、前記光特性に優れた多様な従来の高分子を含んでもよいが、本発明の一実施形態において、第1フィルムもポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0139】
本発明の一実施形態において、第1フィルムと第2フィルムが共にポリイミド、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、またはこれらの組み合わせを含んでもよく、この時、前記第1フィルムと第2フィルムは、同一のイミド構造単位を含むポリイミド、または同一のイミド構造単位およびアミド構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含んでもよい。この場合、第1フィルムと第2フィルムが互いに異なるフィルムからなるようにするために、第1フィルムと第2フィルムが含むポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーは、それぞれ異なる含有量で前記イミド構造単位および/または前記アミド構造単位を含んでもよい。または前記第1フィルムと第2フィルムの厚さを調節することによって光特性または機械的物性の少なくとも一方が変わるように調節して組み合わせることもできる。
【0140】
本発明の一実施形態において、前記第1フィルムと第2フィルムは、すべて前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表される構造単位の少なくとも一方と前記化学式7で表される構造単位を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーを含んでもよい。この時、前記第1フィルムと第2フィルムが含むポリ(アミド-イミド)コポリマーは、それぞれ独立して、前記化学式7で表される構造単位の含有量が、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを構成する構造単位の全モル数に対して、30モル%~80モル%であることが好ましく、例えば、35モル%~80モル%、例えば、40モル%~80モル%、例えば、45モル%~80モル%、例えば、50モル%~80モル%、例えば、55モル%~80モル%、例えば、60モル%~80モル%、例えば、65モル%~80モル%、例えば、65モル%~75モル%、例えば、65モル%~70モル%の範囲で含むことがより好ましい。前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表示される構造単位の少なくとも一方の含有量は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを構成する構造単位の全モル数に対して、20モル%~70モル%であることが好ましく、20モル%~65モル%、例えば、20モル%~60モル%、例えば、20モル%~55モル%、例えば、20モル%~50モル%、例えば、20モル%~45モル%、例えば、20モル%~40モル%、例えば、20モル%~35モル%、例えば、25モル%~35モル%、例えば、25モル%~30モル%の範囲で含むことがより好ましい。ただし、前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表示される構造単位の少なくとも一方の含有量と前記化学式7で表される構造単位の含有量は、前記第2フィルムが第1フィルムより高いかまたは同一の引張弾性率(tensile modulus)を有し、また第1フィルムが第2フィルムより高いかまたは同一の透過率を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーをそれぞれ形成するように調節されてもよい。
【0141】
一般に、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを形成する構造単位のうちのアミド構造単位の含有量が高いほど前記コポリマーを含むフィルムなどの機械的物性が高いことが知られている。また、フィルムの機械的物性および光特性などは、アミド構造単位とイミド構造単位の含有量だけでなく、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを形成するジアミンと二無水物(ジアンハイドライド)、およびジカルボン酸誘導体の種類によっても変わり得ることは当該技術分野における通常の知識を有する技術者にはよく知られている事実である。したがって、当該技術分野における通常の知識を有する技術者は、当該技術分野によく知られた技術を利用して前記第1フィルムおよび第2フィルムの多様な組み合わせを選択することによって、本発明の一実施形態による多様なウィンドウフィルムを製造することができ、このようなウィンドウフィルムは、すべて本発明の(技術的)範囲に属することを容易に理解できるだろう。
【0142】
上記の構造単位を含むポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマー(PAI)は、当該技術分野で公知のポリイミドおよびポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法を用いて容易に製造することができ、また商業的に購入することもできる。
【0143】
例えば、ポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを構成するイミド構造単位は、有機溶媒内でジアミンと二無水物(ジアンハイドライド)とを反応させて製造することができる。
【0144】
前記ジアミンの例としては、ヘキサメチレンジアミン、m-フェニレンジアミン;p-フェニレンジアミン;1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン;4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン;1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン;1,1-ビス(4-アミノフェニル)エタン;2,2’-ジアミノ-ジエチルスルフィド;ビス(4-アミノフェニル)スルフィド;2,4’-ジアミノ-ジフェニルスルフィド;ビス(3-アミノフェニル)スルホン;ビス(4-アミノフェニル)スルホン;4,4’-ジアミノ-ジベンジルスルホキシド;ビス(4-アミノフェニル)エーテル;ビス(3-アミノフェニル)エーテル;ビス(4-アミノフェニル)ジエチルシラン;ビス(4-アミノフェニル)ジフェニルシラン;ビス(4-アミノフェニル)エチルホスフィンオキシド;ビス(4-アミノフェニル)フェニルホスフィンオキシド;ビス(4-アミノフェニル)-N-フェニルアミン;ビス(4-アミノフェニル)-N-メチルアミン;1,2-ジアミノ-ナフタレン;1,4-ジアミノ-ナフタレン;1,5-ジアミノ-ナフタレン;1,6-ジアミノ-ナフタレン;1,7-ジアミノ-ナフタレン;1,8-ジアミノ-ナフタレン;2,3-ジアミノ-ナフタレン;2,6-ジアミノ-ナフタレン;1,4-ジアミノ-2-メチル-ナフタレン;1,5-ジアミノ-2-メチル-ナフタレン;1,3-ジアミノ-2-フェニル-ナフタレン;4,4’-ジアミノ-ビフェニル;3,3’-ジアミノ-ビフェニル;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-ビフェニル;3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ビフェニル;3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ビフェニル;3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノ-ビフェニル;4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル;2,4-ジアミノ-トルエン;2,5-ジアミノ-トルエン;2,6-ジアミノ-トルエン;3,5-ジアミノ-トルエン;1,3-ジアミノ-2,5-ジクロロ-ベンゼン;1,4-ジアミノ-2,5-ジクロロ-ベンゼン;1-メトキシ-2,4-ジアミノ-ベンゼン;1,4-ジアミノ-2-メトキシ-5-メチル-ベンゼン;1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラメチル-ベンゼン;1,4-ビス(2-メチル-4-アミノ-ペンチル)-ベンゼン;1,4-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)-ベンゼン;1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)-ベンゼン;o-キシリレンジアミン;m-キシリレンジアミン;p-キシリレンジアミン;3,3’-ジアミノ-ベンゾフェノン;4,4’-ジアミノ-ベンゾフェノン;2,6-ジアミノ-ピリジン;3、5-ジアミノ-ピリジン;1、3-ジアミノ-アダマンタン;ビス[2-(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル;3,3’-ジアミノ-1,1,1’-ジアダマンタン;N-(3-アミノフェニル)-4-アミノベンズアミド;4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート;2、2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン;2,2-ビス[4-(2-クロロ-4-アミノフェノキシ)フェニルヘキサフルオロプロパン;1,1-ビス(4-アミノフェニル)-1-フェニル-2,2,2-トリフルオロエタン;1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-フェニル-2,2,2-トリフルオロエタン;1,4-ビス(3-アミノフェニル)ブタ-1-エン-3-イン;1,3-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン;1,5-ビス(3-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、および4,4’-ビス[2-(4-アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル、ジアミノシクロヘキサン、ビシクロヘキシルジアミン、4,4’-ジアミノシクロヘキシルメタン、2、2’-ビストリフルオロメチル-4、4’-ビフェニルジアミン(TFDB)、およびジアミノフルオレンからなる群より選択される1種以上であり得る。このようなジアミンは、市販されているか、または公知の方法によって合成可能である。
【0145】
例えば、前記ジアミンは、下記グループ5から選択される化合物であり得る。
【0146】
【0147】
本発明の一実施形態において、前記ジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine:TFDB)であり得る。
【0148】
前記二無水物は、テトラカルボン酸二無水物であり得、このような化合物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’、4、4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(bicycle[2.2.2]oct-7-ene-2,3,5,6-tetracarboxylic dianhydride、BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4、4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride、ODPA)、ピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)、4-((2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(4-(2,5-dioxotetrahydrofuran-3-yl)-1,2,34-tetrahydronaphthalene-1,2-dicarboxylic anhydride、DTDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物;1,4-ビス(2、3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物;2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物;2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物;2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物;3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物;4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル二無水物;ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物;4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物;4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物;4,4’-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;2,3,3’4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物;4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物;1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物;2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物;2,2-ビス[4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;4-(2,3-ジカルボキシフェノキシ)-4’-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル-2,2-プロパン二無水物;2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ-3,5-ジメチル)フェニル]プロパン二無水物;2,3,4,5-チオフェンテトラカルボン酸二無水物;2,3,5,6-ピラジンテトラカルボン酸二無水物;1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物;3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物;2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1-フェニル-2,2,2-トリフルオロエタン二無水物;2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物;1,1-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]-1-フェニル-2,2,2-トリフルオロエタン二無水物、および4,4’-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピル]ジフェニルエーテル二無水物からなる群より選択される1種以上であり得る。このような二無水物は、市販されているか、または公知の方法によって合成可能である。
【0149】
本発明の一実施形態において、前記テトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、またはこれらの混合物を含み得る。
【0150】
一方、公知のポリアミドの製造方法としては、低温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法などが知られており、このうち、低温溶液重合法を例に挙げて説明すると、非プロトン性極性溶媒内でジカルボン酸ジハライドおよびジアミンを反応させることによって、前記化学式2で表されるアミド構造単位を形成することができる。
【0151】
前記ジカルボン酸ジハライドは、テレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride、TPCL)、イソフタロイルクロライド(isophthaloyl chloride、IPCL)、ビフェニルジカルボニルクロライド(biphenyl dicarbonyl chloride、BPCL)、ナフタレンジカルボニルクロライド、ターフェニルジカルボニルクロライド、2-フルオロ-テレフタロイルクロライドおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される一つ以上であり得る。
【0152】
本発明の一実施形態において、前記ジカルボン酸ジハライドは、テレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride、TPCL)であり得る。
【0153】
アミド構造単位を形成するためのジアミンは、イミド構造単位を形成するために使用され得るジアミンと同一のジアミンを使用することができる。すなわち、上記で例示したジアミンのうち、同一であるかまたは異なる1種以上のジアミンを使用してアミド構造単位を形成し得る。
【0154】
本発明の一実施形態において、前記ジカルボン酸ジハライドと共にアミド構造を形成するためのジアミンは、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2、2’-bis(trifluoromethyl)benzidine:TFDB)であり得る。
【0155】
前記非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N、N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N、N-ジメチルアセトアミド、N、N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o-、m-またはp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトンなどが挙げられ、これらを単独または混合して使用することができる。しかしながら、これらに限らず、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素溶媒も使用することができる。
【0156】
アミド構造単位およびイミド構造単位は、同一の反応器内で、まず、アミド構造単位を形成するジアミンとジカルボン酸ジハライドとを添加して反応させた後、ここにイミド構造単位を形成するジアミンおよび二無水物を添加して共に反応させることによって、ポリ(アミド-アミック酸)コポリマーを製造することができる。
【0157】
または、アミド構造単位を形成するジアミンとジカルボン酸ジハライドとを反応させて、両末端がアミノ基で終わるアミドオリゴマーを製造した後、これをジアミンモノマーとし、ここに二無水物を添加してポリ(アミド-アミック酸)コポリマーを製造することができる。後者の方法の場合、アミド形成工程で発生するHClの除去のための沈澱工程を省略できるため、工程時間を短縮することができ、最終生成物であるポリ(アミド-イミド)コポリマーの収率も高めることができる。
【0158】
上記のように製造されたポリアミック酸またはポリ(アミド-アミック酸)コポリマーは、アミック酸の脱水閉環反応を経ることによって、ポリイミドおよびポリ(アミド-イミド)コポリマーが形成される。このようなポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む溶液を、公知の方法で支持体上にキャスティングし、乾燥および加熱などの方法で硬化させることによって、フィルムなどの成形品に製造する溶液キャスティング法もよく知られている。
【0159】
以上のように製造されたポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーをそれぞれ含む第1フィルムと第2フィルムを本発明の一実施形態による(方式で)要件を満足(充足)するように積層することによって、本発明の一実施形態による積層フィルムを製造することができる。このように製造された積層フィルムは、前記第1フィルムを形成するためのポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを単独で含むフィルム、または前記第2フィルムを形成するためのポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを単独で含むフィルムに比べて高い屈曲特性を有することができる。例えば、前記第1フィルムと第2フィルムをそれぞれ約50μm厚さに製造して積層した本発明の一実施形態による積層フィルムは、5mm以下の屈曲半径、例えば、3mm以下の屈曲半径、例えば、1mm以下の屈曲半径で約10万回、例えば、約15万回、例えば、約20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復した屈曲性テストを通過することができる。反面、前記第1フィルムを形成するのに用いた同一のポリ(アミド-イミド)コポリマーを80μm厚さに製造した単一層フィルムの場合、前記屈曲性テストを通過することができない。また、前記第2フィルムを形成するために用いたものと同一のポリ(アミド-イミド)コポリマーを80μm厚さに製造した単一層フィルムも前記屈曲性テストを通過することができない。
【0160】
つまり、本発明の一実施形態により第1フィルムと第2フィルムをそれぞれ製造して積層してなる積層フィルムが、第1フィルムと第2フィルムを製造するために用いたそれぞれのフィルムを厚さのみを前記実施形態によるフィルムと類似する範囲に増加させて製造した単一層からなるフィルムに比べて、屈曲特性が顕著に増加することが分かる。また、本発明の一実施形態による積層フィルムは、第1フィルムと第2フィルムが有する機械的特性および光学的特性がほとんど低下しないことが分かる。したがって、本発明の一実施形態による積層フィルムは、単一層フィルムでは達成し難かった光特性、機械的特性、および屈曲特性を同時に改善することができる。このような積層フィルムは、表示装置、特にフレキシブル表示装置のウィンドウとして有用に用いられ得る。
【実施例】
【0161】
以下、実施例および比較例により、上記実施形態についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例および比較例は、単に本発明を例示によって説明するためのものであり、本発明の範囲はこれによって制限されない。
【0162】
合成例1:アミド基含有オリゴマーの用意
丸底フラスコに、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)700gを投入した。この丸底フラスコに2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)1モル当量(0.122モル、39.2g)とピリジン2.8モル当量(0.343モル、27.11g)を入れて溶解した後、残っているTFDBを50mlのジメチルアセトアミド(dimethylaceamide、DMAc)で洗浄し、投入、溶解して、TFDB溶液を調製した。テレフタロイルクロライド(terephthaloyl chloride、TPCL)0.7モル当量(0.086モル、17.4g)を、4回に分けて、25℃の上記TFDB溶液に混合し、15分間激しく攪拌した(これによりアミドオリゴマー溶液を得た)。
【0163】
次いで、上記で得られた溶液を窒素雰囲気で2時間攪拌した後、350gのNaClを含む7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。次いで、固形物を濾過し、5Lの脱イオン水に2回にわたって再懸濁および再濾過した。次いで、最終濾過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃および真空雰囲気で48時間乾燥して下記化学式Aで表されるアミド基含有オリゴマーを得た。得られたアミド基含有オリゴマーの数平均分子量は、約997であった。
【0164】
【0165】
前記化学式Aで、n0は0以上の整数である。
【0166】
製造例1:ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液の製造
30℃に予備加熱された機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの4ネック二重壁反応器に合成例1で得られたアミド基含有オリゴマー21.7g(0.0152モル)およびジメチルアセトアミド(DMAc)143mlを添加して溶液を用意した。次いで、前記アミド基含有オリゴマーが完全に溶けるときまで前記溶液を30℃および窒素雰囲気下で攪拌した後、ここに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)3.73g(0.0084モル)と3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)2.00g(0.0068モル)を徐々に添加した。次いで、ここに10mlのジメチルアセトアミド(DMAc)をさらに添加した後、この溶液を48時間攪拌して固形分濃度が16wt%であるポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液を得た。次いで、温度を25℃に下げた後、前記ポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液に、無水醋酸4.6gを投入して30分攪拌した後、ピリジン3.6gを投入して48時間さらに攪拌して、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液を得た。
【0167】
製造例2:ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液の製造
30℃に予備加熱された機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの4ネック二重壁反応器に合成例1で得られたアミド基含有オリゴマー8.341gおよびジメチルアセトアミド(DMAc)143mlを添加して溶液を用意した。次いで、前記アミド基含有オリゴマーが完全に溶けるときまで前記溶液を30℃および窒素雰囲気下で攪拌した後、ここに、6FDA 12.05g、BPDA 1.332gおよびTFDB 8.273gを徐々に添加した。次いで、ここに10mlのジメチルアセトアミド(DMAc)をさらに添加した後、この溶液を48時間攪拌して固形分濃度が18.5wt%であるポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液を得た。次いで、温度を25℃に下げた後、前記ポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液に無水醋酸9.7gを投入して30分攪拌した後、ピリジン2.5gを投入して48時間さらに攪拌して、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液を得た。
【0168】
製造例3:ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液の製造
30℃に予備加熱された機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの4ネック二重壁反応器に合成例1で得られたアミド基含有オリゴマー19.07gおよびジメチルアセトアミド(DMAc)110mlを添加して溶液を用意した。次いで、前記アミド基含有オリゴマーが完全に溶けるときまで前記溶液を30℃および窒素雰囲気下で攪拌した後、ここに、6FDA 6.936 g、BPDA 1.531g、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエテール(2,2’-Bis(trifluoromethyl)-4,4’-diaminodiphenyl ether、6FODA)1.75gおよびTFDB 0.713gを徐々に添加した。次いで、ここに10mlのジメチルアセトアミド(DMAc)をさらに添加した後、この溶液を48時間攪拌して固形分濃度が19wt%であるポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液を得た。次いで、温度を25℃に下げた後、前記ポリ(アミド-アミック酸)コポリマー(共重合体)溶液に、無水醋酸6.38gを投入して30分攪拌した後、ピリジン2.5gを投入して48時間さらに攪拌して、ポリ(アミド-イミド)コポリマー(共重合体)を含む溶液を得た。
【0169】
実施例1~2、および比較例1~9:ウィンドウフィルムの製造
製造例1~3で製造したポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む溶液からフィルムを製造し、これらをそれぞれ単独で含むか、または前記製造されたフィルムを2以上組み合わせて、実施例1~2、および比較例1~9による積層フィルムを製作した。
【0170】
具体的に、基本的なフィルムの製造方法は、各製造例で製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む溶液をポリイミドフィルム支持体またはガラス基板支持体上にキャスティングし、乾燥させて熱処理することによって製造するものである。この時、比較例1~5によるウィンドウフィルムは、製造例1~3で製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む溶液をそれぞれ単独で用い、下記表1に示したような厚さの単一フィルムで製造した。この際に、比較例1および比較例3のように、厚さ80μmのフィルムはポリイミドフィルム支持体を用いて製造し、比較例2、4、および5のように、厚さ36μmのフィルムはガラス基板支持体を用いてフィルムを製造した。支持体の種類によって製造される積層フィルムの物性の差はないものとみられる。
【0171】
反面、実施例1~2、および比較例6~9によるウィンドウフィルムは、製造例1~3で製造したポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む溶液をそれぞれ用いてフィルムを製造したが、ただし、前記のように製造されたフィルムを2枚ずつ組み合わせて第1フィルムおよび第2フィルムとして積層することによって作製した積層フィルムである。このとき、第1フィルムと第2フィルムの間に接着剤層として厚さ50μmのPSA接着剤層(PSA接着剤フィルム;3M社のOCA)を介在して製造した。前記第1フィルムと第2フィルムの厚さはそれぞれ36μmにした。これらの36μmの厚さを有するフィルムはガラス基板支持体を用いてフィルムを製造した。実施例1~2、および比較例6~9により製造された積層フィルムの第1層(第1フィルム)および第2層(第2フィルム)を形成するポリ(アミド-イミド)コポリマーの種類を下記表2に記載する。ここで、第1フィルムは、本明細書中に定義したとおり、表示装置の表示パネル前面に配置されるフィルムであり、第2フィルムは、前記第1フィルムの上に配置されるフィルムを意味する。
【0172】
また、前記製作された積層フィルムの厚さ、光特性、機械的物性、および屈曲性を下記表1と表2に共に記載する。ここで、光特性としては透過率および黄色指数(YI)を測定し、機械的物性として鉛筆硬度、引張弾性率(tensile modulus)、および圧入硬度を測定し、屈曲性は屈曲半径を1mmにして20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復して、以下に示す判定基準に従って、その良否(通過有無)を確認した。前記各物性の具体的な測定方法および屈曲性の判定基準は以下のとおりである。
【0173】
[1]厚さ測定
Micrometer(Mitutoyo社)を利用して測定した。
【0174】
[2]透過率および黄色指数(YI)
黄色指数(YI)と透過率は、それぞれコニカミノルタ株式会社製の分光側色計CM-3600dを用いて、360nm~740nmの波長範囲で測定し、黄色指数はE313-73の値で、透過率はY(D65)の値を取った。
【0175】
[3]屈折率
屈折率は、Ellipsometer(M-2000、J.A.Woolam Co.)をGen-Oscモデルとしてセッティングし、可視光線領域の550nm波長で測定した。これは、
図2のシミュレーション結果を求めるために用いた第1フィルムと第2フィルムの屈折率の測定に用いた方法である。
【0176】
[4]鉛筆硬度
鉛筆硬度測定器と三菱鉛筆株式会社製の鉛筆を利用してASTM D3363規格で鉛筆スクラッチ硬度を測定した。具体的に、厚さ2mmのガラス板の上にフィルムを固定した後、垂直荷重500gに鉛筆速度を60mm/minにして10mmずつ5回測定後、フィルム表面にキズがない最も高い硬度を確認した。
【0177】
[5]モジュラス(引張弾性率;tensile modulus)
Instron3365の装備で常温で幅10mm、長さ50mmのフィルム試片(サンプル)を0.5mm/mm/minの速度で引張してサンプル当たり5回ASTM D882方法で測定後、平均値を記載した。
【0178】
[6]圧入硬度および弾性変形
Fischerscope社製のマイクロインデンター(モデル名:HM2000)を用いてダイヤモンドチップでウィンドウフィルム表面に垂直に10mNの力を1mN/sの速度で加え、再び1mN/sの速度で力を0に減らした後、圧入硬度HV(ビッカーズピラミッドナンバー)とηIT(弾性変形)を測定した。圧入硬度は、チップに加わった力をインデンテーション後のチップの表面積で割った値であり、ηITは力を加える時の全体インデンテーションエネルギーで力を減らす時に弾性復元されたインデンテーションエネルギーのパーセント比率である。
【0179】
[7]屈曲性
屈曲性は、屈曲性測定装置(CFT-200、Covetech社製)を用いて、屈曲半径を1mmにして、サンプルフィルムを20万回折りたたんだり伸ばしたりすることを反復し、折りたたまれた部分に白濁ができたりクラックができた場合は「FAIL」と、何ら変化もなく、柔軟に折りたたまれたり伸ばされたりする場合は「PASS」と示した。
【0180】
【0181】
【0182】
表1と表2から分かるように、高い鉛筆硬度を有する80μmの厚いフィルム(比較例1と比較例3)は、屈曲半径1mmでの屈曲性テストを通過することができないが、36μmの薄いフィルム1枚(比較例2、比較例4、および比較例5)または36μmの薄いフィルム2枚を貼り合せて(合紙して)製造したフィルム(実施例1~2および比較例6~9)は、屈曲半径1mmでの屈曲性テストを通過した。つまり、フィルム全体の厚さが同一であるか類似しても、厚いフィルム1枚で製造するよりは、同一の厚さを有するように2枚の薄いフィルムを積層して製造したフィルムの屈曲性が顕著に改善されることが分かる。
【0183】
鉛筆硬度と圧入硬度の場合、引張弾性率(tensile modulus)が高い厚い1枚のフィルム(比較例1)がより高い機械的物性、特に、より高い鉛筆硬度を示すことが分かるが、前記屈曲性を考慮して薄い2枚のフィルムを積層して積層フィルムを製造する場合、引張弾性率(tensile modulus)が高いフィルムを第2フィルム、つまり、表示装置の最上段側に配置すること(実施例1)が、その反対の場合、つまり、引張弾性率(tensile modulus)が高いフィルムを表示装置の表示パネルなどと接する下段に配置する場合(比較例8)に比べて顕著に機械的強度、特に、より高い鉛筆硬度を示すことが分かる。製造例1で製造されたアミド構造単位が70モル%であるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムは、製造例2で製造されたアミド構造単位が30モル%であるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムに比べて機械的特性、つまり、引張弾性率(tensile modulus)および鉛筆硬度がより高い。
【0184】
一方、光特性の場合、同一の組成からなるフィルムであれば、より薄いフィルムの光特性(透過率および黄色度)が厚いフィルムの光特性よりよく、同一の組成のフイルムで類似する厚さを実現すれば、薄いフィルム2枚を貼り合せた(合紙した)場合が1枚のフィルムに比べて光特性、特に透過率がより改善され得る。ただし、前記実施例1~2と比較例6~9では、第1フィルムと第2フィルムの間にPSA接着剤層を介在して積層フィルムを製造するところ、このように第1フィルムと第2フィルムの間に接着剤層または超弾性層などを介在して積層フィルムを製造する場合、前記二つのフイルムのみからなる場合に示され得る透過率に比べて透過率が多少落ちることがある。このような現象は、接着剤層または超弾性層を介在しないか、接着剤層または超弾性層の厚さをより薄くするか、またはよりよい透過率を示すことができる他の種類の接着剤層または超弾性層を用いることによって改善することができる。
【0185】
一方、薄い2枚のフィルムを積層してウィンドウフィルムを製造する場合、実施例1と比較例8および実施例2と比較例9から分かるように、第1フィルムおよび第2フイルムとして配置されるフィルムが反対に配置されても、フィルム全体の光特性は同一である。しかしながら、光特性の場合、上段に高い光特性を有するハードコーティング層を追加してウィンドウの光特性を全体的に改善することができるため、前記ハードコーティング層が配置される上段フィルム、つまり、第2フィルムより、表示装置の表示パネル前面に配置される下段フィルム、つまり、第1フィルムの光特性がより高いことが、フィルム全体の光特性においてより有利である(実施例1と実施例とを対比参照のこと)。
【0186】
以上で説明したとおり、表示装置の表示パネル前面に配置される第1フィルムと、第1フィルムの上に配置される第2フィルムとを含む積層フイルムであって、第2フィルムの引張弾性率(tensile modulus)が第1フィルムの引張弾性率(tensile modulus)より高いかまたは同一であり、第1フィルムの透過率が第2フィルムの透過率より高いかまたは同一であり、第1フィルムと第2フィルムが引張弾性率(tensile modulus)および透過率のうちの一つ以上が異なるフィルムからなる積層フィルムが、同一または類似する厚さを有し、類似する光特性および機械的物性を有する1枚のフィルムに比べて光特性、機械的特性、および屈曲性がすべて改善され得ることが分かる。
【0187】
以上を通じて本発明の具体的な実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の(技術的)範囲に属するのは当然である。
【符号の説明】
【0188】
10、20、30、40、50、60、70:積層フィルム、
100:第1フィルム、
200:第2フィルム、
300:ハードコーティング層、
400:背面コーティング層、
500:接着剤層または超弾性層、
600:第2背面コーティング層、
700:前面コーティング層。