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▶ 旭化成エレクトロニクス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-09
(45)【発行日】2022-11-17
(54)【発明の名称】データ出力装置およびAD変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/12 20060101AFI20221110BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
H03M1/12 C
H03M1/08 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018144562
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020022071
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 栄蔵
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 佑介
(72)【発明者】
【氏名】三宅 澄
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-225185(JP,A)
【文献】特開2011-040955(JP,A)
【文献】特開2005-339001(JP,A)
【文献】特開2009-099821(JP,A)
【文献】特開2006-080646(JP,A)
【文献】特開2000-152030(JP,A)
【文献】特開2007-194877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/12
H03M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AD変換器から受け取ったデジタル信号を出力するデータ出力装置であって、
同期クロックを生成する検出ウィンドウ生成回路と、
前記デジタル信号に基づくプリ出力信号を、前記同期クロックに応じて出力するデータ出力同期回路と、
前記データ出力同期回路から受け取った前記プリ出力信号に基づいて、データ出力信号を出力する出力バッファと、
前記AD変換器のサンプリングクロックの位相と、前記出力バッファの動作タイミングとに基づいて、前記同期クロックの位相を制御し、且つ、前記データ出力信号のエッジタイミングが、セットアップ/ホールドタイムを満たすべく設定された期間内となるように、前記同期クロックの位相を制御する位相モニタ回路と
を備え、
前記位相モニタ回路は、
前記同期クロックを用いて、前記プリ出力信号のエッジタイミングと、前記データ出力信号のエッジタイミングを検出し、これらのエッジタイミングの位相差を遅延時間として算出し、
前記遅延時間に基づいて、前記出力バッファの駆動力を更に制御するデータ出力装置。
【請求項2】
前記位相モニタ回路は、前記サンプリングクロックおよび前記出力バッファの動作タイミングの位相差が、予め設定される基準値以上となるように、前記同期クロックの位相を制御する
請求項に記載のデータ出力装置。
【請求項3】
前記位相モニタ回路は、前記プリ出力信号のエッジタイミングから、前記データ出力信号のエッジタイミングまでの期間内に、前記サンプリングクロックのエッジタイミングが含まれなくなるように、前記同期クロックの位相を制御する
請求項1または2に記載のデータ出力装置。
【請求項4】
前記位相モニタ回路は、前記遅延時間が短いほど前記出力バッファの駆動力を弱くし、前記遅延時間が長いほど前記出力バッファの駆動力を強くする
請求項に記載のデータ出力装置。
【請求項5】
前記検出ウィンドウ生成回路は、入力される基準クロックを異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延クロックを含む多位相クロックを生成し、
前記位相モニタ回路は、前記多位相クロックに基づいて前記サンプリングクロックと前記データ出力信号の位相を検出し、検出結果に基づいて、いずれかの遅延クロックを選択する選択信号を生成し、
前記検出ウィンドウ生成回路は、前記選択信号に対応する前記遅延クロックを、前記同期クロックとして出力する
請求項1からのいずれか一項に記載のデータ出力装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のデータ出力装置と、
前記データ出力装置にデジタル信号を入力するAD変換器と
を備えるAD変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ出力装置およびAD変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログデジタル(AD)変換器等が生成したデジタル信号を所定のタイミングで出力するデータ出力装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
特許文献1 米国特許第6310570号明細書
特許文献2 特許第5940413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
AD変換器の動作タイミングと、ノイズ源となる他の回路の動作タイミングとが近い場合、他の回路の動作ノイズがAD変換器のサンプリングに干渉して、AD変換器の特性が劣化する場合がある。この対策としてAD変換器の動作タイミングの後にノイズ源となる他の回路を動作させるタイミング設計がなされてきたが、AD変換器のサンプリング周波数が高くなると、AD変換器と他の回路との間のタイミングが製造プロセスばらつき・電源電圧変動・温度変動(PVT変動)によって変化する影響度が大きくなり、高速・高性能化の課題となっている。
【0004】
これに対して、AD変換器の動作タイミングを変化させつつAD変換器の特性劣化を測定して、特性劣化が小さくなるような動作タイミングに設定するキャリブレーションが考えられる。しかし、AD変換器の実動作前にキャリブレーション動作が必要になる。また、キャリブレーション後における温度・電源電圧等の変動にも追従できない。
【0005】
また、実動作時にAD変換器の動作タイミングを調整することも考えられる。しかし、AD変換器のサンプリングクロックの位相を操作すると、操作回路自身のフリッカーノイズまたは温度ノイズ等によって、サンプリングクロックのジッタ(位相ノイズ)特性が劣化することで、AD変換器の特性劣化が生じてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、AD変換器から受け取ったデジタル信号を出力するデータ出力装置を提供する。データ出力装置は、同期クロックを生成する検出ウィンドウ生成回路を備えてよい。データ出力装置は、デジタル信号に基づくプリ出力信号を、同期クロックに応じて出力するデータ出力同期回路を備えてよい。データ出力装置は、データ出力同期回路から受け取ったプリ出力信号に基づいて、データ出力信号を出力する出力バッファを備えてよい。データ出力装置は、AD変換器のサンプリングクロックの位相と、出力バッファの動作タイミングとに基づいて、同期クロックの位相を制御する位相モニタ回路を備えてよい。
【0007】
位相モニタ回路は、サンプリングクロックおよび出力バッファの動作タイミングの位相差が、予め設定される基準値以上となるように、同期クロックの位相を制御してよい。
【0008】
位相モニタ回路は、プリ出力信号のエッジタイミングから、データ出力信号のエッジタイミングまでの期間内に、サンプリングクロックのエッジタイミングが含まれなくなるように、同期クロックの位相を制御してよい。
【0009】
位相モニタ回路は、プリ出力信号と、データ出力信号との間の遅延時間に基づいて、出力バッファの駆動力を制御してよい。
【0010】
位相モニタ回路は、遅延時間が短いほど出力バッファの駆動力を弱くし、遅延時間が長いほど出力バッファの駆動力を強くしてよい。
【0011】
位相モニタ回路は、データ出力信号のエッジタイミングが、セットアップ/ホールドタイムを満たすべく設定された期間内となるように、同期クロックの位相を制御してよい。
【0012】
検出ウィンドウ生成回路は、入力される基準クロックを異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延クロックを含む多位相クロックを生成してよい。位相モニタ回路は、多位相クロックに基づいてサンプリングクロックとデータ出力信号の位相を検出し、検出結果に基づいて、いずれかの遅延クロックを選択する選択信号を生成してよい。検出ウィンドウ生成回路は、選択信号に対応する遅延クロックを、同期クロックとして出力してよい。
【0013】
本発明の第2の態様においては、第1の態様に係るデータ出力装置と、データ出力装置にデジタル信号を入力するAD変換器とを備えるAD変換装置を提供する。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一つの実施形態に係るAD変換装置1000の構成例を示すブロック部である。
図2】AD変換装置1000の動作例を示すタイミングチャートである。
図3図2の例に、出力バッファ150の動作ノイズを追加したタイミングチャートである。
図4】検出ウィンドウ生成回路120の構成例を示すブロック図である。
図5図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。
図6図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。
図7図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。
図8図1に示したデータ出力同期回路140の一例を示すブロック図である。
図9図1に示した位相モニタ回路130の一例を示すブロック図である。
図10図9に示した位相検出回路1310の一例を示すブロック図である。
図11図10に示した位相検出回路1310の動作例を示すタイミングチャートである。
図12図10に示した位相検出回路1310の他の動作例を示すタイミングチャートである。
図13A】サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の左側期間にある場合を示す図である。
図13B】サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の中央期間にある場合を示す図である。
図13C】サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の右側期間にある場合を示す図である。
図14】検出ウィンドウ生成回路120および位相モニタ回路130の動作の概要を示すフローチャートである。
図15】本発明の他の実施形態に係るAD変換装置2000の構成例を示すブロック図である。
図16】AD変換装置2000の動作例を示すタイミングチャートである。
図17】位相モニタ回路230の構成例を示すブロック図である。
図18】出力バッファ150の駆動力を制御する場合の、位相モニタ回路230の動作例を示すフローチャートである。
図19】検出ウィンドウ生成回路120および位相モニタ回路230の動作の概要を示すフローチャートである。
図20A】AD変換器10のセンシティブタイミングが、基準クロックBICKの立ち下がりエッジの直後の期間6に配置されている例を示している。
図20B図20Aよりも基準クロックBICKの周期が長い例を示している。
図20C】サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジが、基準クロックBICKが論理値1を示す期間に配置されている例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の一つの実施形態に係るAD変換装置1000の構成例を示すブロック部である。AD変換装置1000は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換したデータ出力信号DOUTを出力する。
【0018】
本例のAD変換装置1000は、AD変換器10、デジタル処理回路16およびデータ出力装置100を備える。AD変換器10、デジタル処理回路16およびデータ出力装置100は、同一のシステム基板に実装されていてよく、同一の半導体チップに集積されていてよく、共通の電源により駆動されていてよく、共通のグランドに接続されていてもよい。データ出力装置100は、AD変換器10から受け取ったデジタル信号を、所定のタイミングで出力する。
【0019】
AD変換器10は、サンプリング回路12およびアナログ処理回路14を有する。サンプリング回路12は、入力されるアナログ信号を、入力されるサンプリングクロックACLKに応じてサンプリングする。サンプリング回路12は、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングに応じて、アナログ信号の信号レベルを検知できる回路であればよい。
【0020】
アナログ処理回路14は、サンプリング回路12がサンプリングしたアナログの信号レベルに対して所定の処理を行う。例えばアナログ処理回路14は、サンプリング回路12が検出したアナログ信号の信号レベルと、所定の参照値とを比較して、当該信号レベルに応じたデジタル値を決定する。アナログ処理回路14は、当該デジタル値に応じたデジタル信号を出力する。アナログ処理回路14は、積分回路、比較回路等を有してよい。
【0021】
デジタル処理回路16は、AD変換器10から入力されたデジタル信号に対して所定の処理を行ったデジタル信号DATAを出力する。デジタル処理回路16は、デジタル信号の所定の周波数帯域の成分を除去するフィルタリング等の処理を行ってよい。
【0022】
AD変換器10のサンプリング終了タイミング等のセンシティブタイミングにおいて、データ出力装置100の動作ノイズがAD変換器10に伝達されると、AD変換器10の信号対雑音比、THD+N(全高調波歪+ノイズ)等の特性が劣化する場合がある。サンプリング終了タイミングとは、例えばサンプリングクロックの論理値が1の場合にアナログ信号の信号レベルを取り込むAD変換器10において、サンプリングクロックの論理値が1から0に変化するタイミングである。本例のデータ出力装置100は、比較的に大きい動作ノイズを発生する出力バッファの動作タイミングと、AD変換器10の動作タイミングとを直接モニタして、AD変換器10の特性劣化が小さくなるように出力バッファの動作タイミングを制御する。これにより、実動作前のキャリブレーションをせずとも、AD変換器10の特性劣化を抑制できる。また、AD変換器10のサンプリングクロックを制御するのではなく、出力バッファの動作タイミングを制御するので、AD変換器10のサンプリングクロックのジッタ特性劣化に起因するAD変換器の特性劣化が生じるのを抑制できる。
【0023】
本例のデータ出力装置100は、検出ウィンドウ生成回路120、位相モニタ回路130、データ出力同期回路140および出力バッファ150を備える。検出ウィンドウ生成回路120は、同期クロックDCLKを生成する。本例の検出ウィンドウ生成回路120は、入力される基準クロックBICKを異なる遅延時間で遅延させた複数の遅延クロックを含む多位相クロックWCLKを生成する。検出ウィンドウ生成回路120は、複数の遅延クロックのうち、位相モニタ回路130により指定される遅延クロックを、同期クロックDCLKとして出力してよい。本明細書においては、N個の遅延クロックを含む多位相クロックをWCLK[N:1]と称する。Nは2以上の整数である。なお括弧内のN:1は、1番目からN番目までのビットを含んでいることを指す。つまり本例の多位相クロックWCLKは、1番目からN番目までのビットを有するデジタル信号として出力され、一つのビットが一つの遅延クロックに対応する。検出ウィンドウ生成回路120は、基準クロックBICKの周期TをN分割した多位相クロックWCLKを生成してよい。この場合、多位相クロックWCLKに含まれる複数の遅延クロックの位相はT/Nずつ異なっている。
【0024】
データ出力同期回路140は、デジタル信号DATAに基づくプリ出力信号PREDOUTを、同期クロックDCLKに応じて出力する。例えばデータ出力同期回路140は、入力されるデジタル信号DATAのデジタル値を、同期クロックDCLKの所定のエッジで取得して順次出力する。
【0025】
出力バッファ150は、データ出力同期回路140から受け取ったプリ出力信号PREDOUTに基づいて、データ出力信号DOUTを出力する。例えば出力バッファ150は、所定の高電圧および低電圧が印加され、プリ出力信号PREDOUTの論理値に応じて高電圧および低電圧のいずれかを出力する出力回路を有する。
【0026】
位相モニタ回路130は、AD変換器10のサンプリングクロックACLKの位相と、出力バッファ150の動作タイミングとに基づいて、同期クロックDCLKの位相を制御する。位相モニタ回路130は、出力バッファ150の動作タイミングとして、データ出力信号DOUTのエッジタイミング(すなわち位相)を用いてよい。他の例では、位相モニタ回路130は、出力バッファ150の動作タイミングとして、プリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングを用いてよく、更にはプリ出力PREDOUTとデータ出力DOUTの両方のエッジタイミングを用いてもよく、出力バッファ150の動作タイミングを示す他の情報を用いてもよい。
【0027】
位相モニタ回路130は、検出ウィンドウ生成回路120が生成した多位相クロックWCLK[N:1]を用いて、サンプリングクロックACLKおよびデータ出力信号DOUTの位相を検出してよい。位相モニタ回路130は、多位相クロックWCLKに含まれるそれぞれの遅延クロックのエッジタイミングで、サンプリングクロックACLKおよびデータ出力信号DOUTの論理値を検出してよい。位相モニタ回路130は、サンプリングクロックACLKおよびデータ出力信号DOUTのそれぞれについて、論理値が変化するタイミング、すなわちエッジタイミングを検出する。
【0028】
位相モニタ回路130は、サンプリングクロックACLKとデータ出力信号DOUTの位相検出結果に基づいて、いずれかの遅延クロックを選択する選択信号CSEL[M:1]を生成して、検出ウィンドウ生成回路120に通知してよい。Mは1以上の整数である。選択信号CSELは、N個の遅延クロックのうち1つを指定できるビット数を有している。位相モニタ回路130は、出力バッファ150の動作ノイズが、AD変換器10の特性に与える影響が小さくなるように、同期クロックDCLKの位相を制御する。例えば位相モニタ回路130は、サンプリングクロックACLKおよびデータ出力信号DOUTの位相差が、予め設定される基準値以上となるように、同期クロックDCLKの位相を制御する。位相モニタ回路130は、AD変換器10のサンプリング終了タイミングに対応するサンプリングクロックACLKのエッジと、データ出力信号DOUTの各エッジとの位相差が基準値以上となるように、同期クロックDCLKの位相を制御してよい。
【0029】
検出ウィンドウ生成回路120は、多位相クロックWCLKに含まれる複数の遅延クロックの位相が、所定の位相に調整できたか否かを示す完了信号WENDを位相モニタ回路130に通知してよい。位相モニタ回路130は、複数の遅延クロックの位相の調整が完了した後のサンプリングクロックACLKおよびデータ出力信号DOUTの位相を用いて、選択信号CSEL[M:1]を生成してよい。また、位相モニタ回路130は、完了信号WENDが位相調整が完了していないことを示している間は、選択信号CSEL[M:1]を変更するための内部信号をマスクして、選択信号CSEL[M:1]が変化しないようにしてもよい。
【0030】
また、位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTのエッジタイミングが、セットアップ/ホールドタイムを満たすべく設定された期間内となるように、同期クロックDCLKの位相を制御することが好ましい。セットアップ/ホールドタイムは、例えばデータ出力装置100からデータ出力信号DOUTを受け取る後段回路のセットアップ/ホールドタイムである。位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTが所定のセットアップ/ホールドタイムを満たす範囲内で、同期クロックDCLKの位相を調整して出力バッファ150の動作ノイズによるAD変換器10の特性劣化を抑制する。
【0031】
図2は、AD変換装置1000の動作例を示すタイミングチャートである。本例のAD変換器10では、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジのタイミングを、サンプリング終了タイミングとする。つまりAD変換器10は、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジのタイミングにおけるアナログ信号の信号レベルを、デジタル信号DATAに変換する。
【0032】
図2に示す例では、基準クロックBICKの周期を10分割して(つまりN=10)、多位相クロックWCLK[N:1]を生成している。また、図2においては、多位相クロックに含まれるそれぞれの遅延クロックを、WCLK[k]で示している。本例のkは1から10の整数である。本例のそれぞれの遅延クロックWCLK[k]は、基準クロックBICKが、T(k-1)/Nだけ遅延した信号である。なおTは基準クロックBICKの周期である。Nの値は10に限定されない。
【0033】
図2の例では、選択信号CSEL[M:1]の初期値は1である。この場合、検出ウィンドウ生成回路120は、遅延クロックWCLK[1]を同期クロックDCLKとして出力する。
【0034】
位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTが、所定のセットアップ/ホールドタイムの条件を満たしているか否かを判定する。図2においては、セットアップ/ホールドタイムの条件を満たすデータ出力信号DOUTのエッジタイミングの期間をPassとし、満たさない期間をFailとしている。本例の位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTのエッジタイミングが、Pass期間/Fail期間のいずれの位置にあるかを検出する。位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTが、セットアップタイムおよびホールドタイムのいずれの条件を満たしていないかを検出してよい。
【0035】
図2の例では、遅延クロックWCLK[1]を同期クロックDCLKとして出力した場合に、データ出力信号DOUTがホールドタイムの条件を満たしていない。本例の位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTの位相を遅らせてホールドタイムを増大させるべく、現状の遅延クロックWCLK[1]よりも位相の遅れた遅延クロックを選択する。本例では、位相モニタ回路130は、選択信号CSEL[M:1]=3として、遅延クロックWCLK[3]を選択している。図2の例ではデータ出力信号DOUTがホールドタイムの条件を満たしていない場合を説明したが、データ出力信号DOUTがセットアップタイムの条件を満たしていない場合も同様である。データ出力信号DOUTがセットアップタイムの条件を満たしていない場合、位相モニタ回路130は、現状の遅延クロックよりも位相の早い遅延クロックを選択してよい。
【0036】
図3は、図2の例に、出力バッファ150の動作ノイズを追加したタイミングチャートである。例えば出力バッファ150は、入力されるプリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングから、データ出力信号DOUTのエッジタイミングまでの動作期間において、比較的に大きな動作ノイズを発生させる。
【0037】
位相モニタ回路130は、AD変換器10のサンプリング終了タイミング(本例ではサンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジのタイミング)が、出力バッファ150の当該動作期間に含まれないように、同期クロックDCLKの位相を制御する。
【0038】
図3の例では、遅延クロックWCLK[1]を同期クロックDCLKとして出力した場合に、出力バッファ150の動作期間内に、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジのタイミングが含まれている。本例の位相モニタ回路130は、プリ出力信号PREDOUTの位相と、データ出力信号DOUTの位相とに基づいて、出力バッファ150の動作期間を検出してよい。本例の位相モニタ回路130は、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジのタイミングが、出力バッファ150の動作期間に含まれなくなるように、同期クロックDCLKの位相を制御する。本例の位相モニタ回路130は、データ出力信号DOUTがセットアップ/ホールドタイムの条件を満たし、且つ、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間に含まれなくなるように、遅延クロックWCLK[3]を選択している。位相モニタ回路130は、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間に対して所定値以上の位相差を有するように、同期クロックDCLKの位相を制御してよい。
【0039】
図4は、検出ウィンドウ生成回路120の構成例を示すブロック図である。本例の検出ウィンドウ生成回路120は、遅延制御回路1220、多相クロック生成回路1210および選択回路1230を有する。
【0040】
多相クロック生成回路1210は、DAコンバータ1212、直列に接続されたN+2個の遅延素子1240、および、複数の可変容量素子1250を有する。図4の例ではN=10である。それぞれの遅延素子1240は、同一の構成を有し、同一の遅延特性を有する回路であってよい。本例において遅延素子1240はバッファ回路であるが、遅延素子1240はこれに限定されない。初段の遅延素子1240には、基準クロックBICKが入力される。それぞれの遅延素子1240は、設定される遅延時間で基準クロックBICKを順次遅延させて出力する。それぞれの遅延素子1240が出力する信号が、多位相クロックWCLKに含まれる遅延クロックとなる。ただし本例においては、N+1段の遅延素子1240が出力する信号は、多位相クロックとしては用いられない。また、N+2段目の遅延素子1240は、N+1段目の遅延素子1240の負荷を、他の遅延素子1240の負荷と合わせるために設けられており、N+2段目の遅延素子1240は信号を出力しなくてもよい。本明細書では、N+1段目の遅延素子1240を、最終段の遅延素子1240と称する場合がある。
【0041】
検出ウィンドウ生成回路120は、1段目からN段目までの遅延素子1240が出力するN個の遅延クロックを、多位相クロックWCLK[10:1]として、位相モニタ回路130に出力する。また、選択回路1230は、1段目からN段目までの遅延素子1240が出力する遅延クロックのうち、選択信号CSEL[M:0]に対応する遅延クロックを選択して、同期クロックDCLKとして出力する。
【0042】
遅延制御回路1220は、それぞれの遅延素子1240における遅延時間を制御する。これにより、多位相クロックWCLKに含まれる各遅延クロックの位相を調整できる。DAコンバータ1212は、それぞれの遅延素子1240に流れる駆動電流を制御することで、遅延素子1240の遅延時間を制御する。遅延制御回路1220は、DAコンバータ1212に対して遅延制御信号CTRL[X:0]を入力してよい。遅延制御回路1220は、全ての遅延素子1240の遅延時間を一括して指定する遅延制御信号CTRL[X:0]を生成してよく、それぞれの遅延素子1240の遅延時間を個別に指定する遅延制御信号CTRL[X:0]を生成してもよい。
【0043】
また、それぞれの遅延素子1240の出力端子と、グランド等の基準電位との間には、可変容量素子1250が設けられている。本例の遅延制御回路1220は、それぞれの可変容量素子1250の容量を制御することで、それぞれの遅延素子1240の遅延時間を制御する。遅延制御回路1220は、全ての可変容量素子1250の容量を一括して指定する遅延制御信号CCTRL[Y:0]を生成してよく、それぞれの可変容量素子1250の容量を個別に指定する遅延制御信号CCTRL[Y:0]を生成してもよい。
【0044】
遅延制御回路1220は、それぞれの遅延クロックの位相が、所定の位相に調整できたか否かを確認してよい。遅延制御回路1220は、最終段の遅延素子1240が出力するクロックと基準クロックBICKとの位相差が所定値以下となった場合に、遅延クロックの位相調整が完了したと判定してよい。遅延制御回路1220は、遅延クロックの位相調整が完了したと判定した場合に、その旨を示す完了信号WENDを出力する。
【0045】
図5は、図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。本例においては、それぞれの遅延素子1240の初期遅延時間が、基準クロックBICKの1周期の1/10より小さい。この場合、基準クロックBICKに対する、最終段の遅延素子1240が出力する信号WCLK[11]の遅延時間は、基準クロックBICKの1周期より小さくなる。これに対して遅延制御回路1220は、それぞれの遅延素子1240の遅延時間を大きくする。図5の例では、遅延制御回路1220は、遅延制御信号CTRL[X:0]を用いてDAコンバータ1212を制御することで、遅延素子1240の遅延時間を大きくしている。遅延制御回路1220は、遅延クロックの位相調整が完了するまで、完了信号WENDとして論理値0を出力する。
【0046】
図6は、図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。本例においては、それぞれの遅延素子1240の初期遅延時間が、基準クロックBICKの1周期の1/10より大きい。この場合、基準クロックBICKに対する、最終段の遅延素子1240が出力する信号WCLK[11]の遅延時間は、基準クロックBICKの1周期より大きくなる。これに対して遅延制御回路1220は、それぞれの遅延素子1240の遅延時間を小さくする。図6の例では、遅延制御回路1220は、遅延制御信号CTRL[X:0]を用いてDAコンバータ1212を制御することで、遅延素子1240の遅延時間を小さくしている。
【0047】
図7は、図4に示した検出ウィンドウ生成回路120の動作例を示すタイミングチャートである。遅延制御回路1220は、図5および図6に示したように、基準クロックBICKと、最終段の遅延素子1240が出力する信号WCLK[11]との相対位相に基づいて、それぞれの遅延素子1240の遅延時間を調整する。遅延時間の調整を継続することで、図7に示すように、基準クロックBICKの1周期をN分割した多位相クロックWCLK[N:1]を生成できる。この場合、N-1番目の遅延クロック[10]の立ち上がりエッジのタイミングと、最終段の遅延クロック[11]の立ち上がりエッジのタイミングとの間に、基準クロックBICKの立ち上がりエッジが配置されて、ロック状態となる。遅延制御回路1220は、N-1番目の遅延クロック[10]の立ち上がりエッジのタイミングと、最終段の遅延クロック[11]の立ち上がりエッジのタイミングとの間に、基準クロックBICKの立ち上がりエッジが配置された場合に、完了信号WENDとして論理値1を出力してよい。
【0048】
なお、図5から図7の例においては、可変容量素子1250の容量を制御する制御信号CCTRL[Y:0]を固定としていたが、遅延制御回路1220は、制御信号CCTRL[Y:0]を用いて遅延素子1240の遅延時間を調整してもよい。例えば遅延制御回路1220は、生成したい遅延時間のうち、比較的に大きい遅延時間を可変容量素子1250の容量を制御することで調整し、比較的に小さい遅延時間を遅延素子1240の駆動電流を制御することで調整してよい。
【0049】
また、遅延素子1240は差動構成を有してもよい。つまり、遅延素子1240において可変容量素子1250を充放電する電流量が変化した場合であっても、定常状態においてはDAコンバータ1212から出力される電流が一定であってよい。DAコンバータ1212から出力される電流が変化しないので、多相クロック生成回路1210が発生するノイズを低減できる。
【0050】
なお、多相クロック生成回路1210の構成は、図4に示した例に限定されない。例えば、多相クロック生成回路1210は、直列に接続した論理素子を用いて多位相クロックを生成してよく、DLLまたはPLLを用いて多位相クロックを生成してよく、他の素子を用いて多位相クロックを生成してもよい。また、それぞれの遅延素子1240の遅延時間は、一定であってよく、一定でなくてもよい。
【0051】
図8は、図1に示したデータ出力同期回路140の一例を示すブロック図である。データ出力同期回路140は、出力バッファ150からデータ出力信号DOUTを出力するタイミングを決定する。データ出力同期回路140は、デジタル信号DATAを、検出ウィンドウ生成回路120から入力される同期クロックDCLKに同期して取り込み、プリ出力信号PREDOUTとして出力する。一例として、データ出力同期回路140はフリップフロップであるが、デジタル信号DATAを同期クロックDCLKに同期して取り込んで出力する機能を有する他の回路であってもよい。
【0052】
図9は、図1に示した位相モニタ回路130の一例を示すブロック図である。位相モニタ回路130は、検出ウィンドウ生成回路120で生成した基準クロックBICKの1周期をN分割した多位相クロックWCLK[N:1]と、完了信号WENDとを用いて、基準クロックBICKの1周期中におけるサンプリングクロックACLK、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTのエッジの位置を検出する。
【0053】
本例の位相モニタ回路130は、3つの位相検出回路1310、AND回路1330およびDCLK制御回路1320を有する。位相検出回路1310-1はサンプリングクロックACLKのエッジタイミングを検出し、位相検出回路1310-2はプリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングを検出し、位相検出回路1310-3はデータ出力信号DOUTのエッジタイミングを検出する。それぞれの位相検出回路1310には、多位相クロックWCLK[N:1]と、完了信号WENDとが入力される。
【0054】
それぞれの位相検出回路1310は、エッジタイミングの検出結果を示す位相情報(EDGE1[L:0]、EDGE2[L:0]、EDGE3[L:0])と、エッジタイミングの検出が完了したことを示す検出完了信号(EDGE_END1、EDGE_END2、EDGE_END3)とを出力する。検出完了信号は1ビットの信号であり、例えばエッジタイミングの検出が完了したときに論理値1となる。それぞれの位相検出回路1310は、完了信号WENDの論理値が1の場合(すなわち、多位相クロックWCLKの位相調整が完了している状態)に、各信号のエッジタイミングを検出してよい。
【0055】
AND回路1330は、3つの位相検出回路1310の全てにおいて、エッジタイミングの検出が完了したか否かを判定する。本例のAND回路1330は、3つの検出完了信号(EDGE_END1、EDGE_END2、EDGE_END3)の論理積である全完了信号EEND_ALLを出力する。
【0056】
DCLK制御回路1320は、それぞれの位相検出回路1310が検出したエッジタイミングに基づいて、同期クロックの位相を制御する選択信号CSEL[M:0]を生成する。DCLK制御回路1320は、多位相クロックWCLK[N:1]に含まれるいずれかの遅延クロック(本例ではWCLK[1])を用いて、選択信号CSEL[M:0]を生成する。DCLK制御回路1320は、3つの位相検出回路1310の全てにおいてエッジタイミングの検出が完了している(本例では、全完了信号EEND_ALL=1)ことを条件として、選択信号CSEL[M:0]を生成してよい。
【0057】
図10は、図9に示した位相検出回路1310の一例を示すブロック図である。位相検出回路1310は、N個のフリップフロップ1313と、位相情報生成回路1311とを有する。図9に示した3つの位相検出回路1310は、それぞれが図10に示す構成を有してよい。本例では、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングを検出する位相検出回路1310-1の動作を説明するが、位相検出回路1310-2、1310-3の動作も同様である。
【0058】
N個のフリップフロップ1313は、多位相クロックWCLK[N:1]に含まれるN個の遅延クロックと一対一に対応して設けられる。それぞれのフリップフロップ1313は、サンプリングクロックACLKがデータとして入力され、対応する遅延クロックWCLK[k]がクロックとして入力される。つまり、それぞれのフリップフロップ1313は、対応する遅延クロックWCLK[k]のエッジタイミングにおける、サンプリングクロックACLKの論理値を検出して出力する。これにより、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングを検出できる。本例では、N個のフリップフロップ1313は、それぞれのフリップフロップ1313の出力Q[k]を各ビットとして含む、Nビットの位置データQ[N:1]を生成する。位置データQ[N:1]において論理値が変化するビット位置が、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングに対応する。
【0059】
位相情報生成回路1311は、位置データQ[N:1]に基づいて、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングを示す位相情報EDGE1[L:0]を生成する。本例の位相情報EDGE1[L:0]は、位置データQ[N:1]において論理が変化するビット位置を示す情報である。
【0060】
本例の位相情報生成回路1311は、N個のフリップフロップ1314と、フリップフロップ1315と、位相情報制御回路1312とを有する。N個のフリップフロップ1314およびフリップフロップ1315には、検出ウィンドウ生成回路で生成される最も遅延が少ない基準となるクロックWCLK[1]がクロックとして入力されている。
【0061】
N個のフリップフロップ1314は、位置データQ[N:1]の各ビットを遅延クロックWCLK[1]に応じて取り込み、現周期位置データQ1[N:1]として出力する。フリップフロップ1315は、現周期位置データQ1[N:1]のうちの最終ビットQ1[N]を遅延クロックWCLK[1]に応じて取り込み、前周期最終ビットQ2[N]として出力する。前周期最終ビットQ2[N]は、現周期位置データQ1[N:1]の前サイクルにおける最終ビットを示す信号である。
【0062】
本例の位相情報制御回路1312は、現周期位置データQ1[N:1]と、前周期最終ビットQ2[N]とに基づいて、位相情報EDGE1[L:0]を生成する。現周期と前周期との間にサンプリングクロックACLKのエッジが存在すると、現周期位置データQ1[N:1]の全ビットが1となり、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングを特定することが難しくなる。この場合でも、前周期最終ビットQ2[N]を用いれば、現周期の先頭ビットと前周期の最終ビットとの間で論理値の変化を検出して、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングを特定できる。
【0063】
位相情報制御回路1312は、位相情報EDGE1[L:0]を生成した場合に、検出完了信号EDGE_END1を所定の論理値(例えば1)にして出力してよい。また、位相情報制御回路1312は、完了信号WENDが論理値1(すなわち、多位相クロックWCLK[N:1]の位相調整が完了している状態)であることを条件として、位相情報EDGE1[L:0]および検出完了信号EDGE_END1を生成し、出力してよい。
【0064】
図11は、図10に示した位相検出回路1310の動作例を示すタイミングチャートである。図11の例では、データ出力信号DOUTの位相を検出する位相検出回路1310-3の動作例を示しているが、位相検出回路1310-1、1310-2の動作も同様である。位相検出回路1310-3は、基準クロックBICKの1周期毎に、データ出力信号DOUTのエッジタイミングを判定する。
【0065】
本例のデータ出力信号DOUTは、図11に示す基準クロックBICKの1周期目では論理値0であり、2周期目に論理値が1に変化し、2周期目以降は論理値1を維持している。つまり、本例のデータ出力信号DOUTは、基準クロックBICKの2周期目に立ち上がりエッジを1つ有しており、他の周期ではエッジを有していない。また、図11に示す基準クロックBICKの1周期目の直前においても、データ出力信号DOUTの論理値は0とする。
【0066】
この場合、基準クロックBICKの1周期目における判定1の期間では、全てのフリップフロップ1313は論理値0を出力する。このため、位置データQ[10:1]および現周期位置データQ1[10:1]の全ビットが0となる。図11においては、位置データQおよび現周期位置データQ1を10進数の値で示している。例えば、位置データQおよび現周期位置データQ1において全ビットが0の場合を値0で示し、全ビットが1の場合を値1023で示している。値1020は、10ビットのうちの下位2ビットが0であり、上位8ビットが1の場合を示している。
【0067】
判定1の直前の期間においても、データ出力DOUTの論理値は0である。このため、判定1の期間において位相情報制御回路1312に入力される前周期最終ビットQ2[10]の論理値は0となる。この結果、位相情報制御回路1312は、位相情報EDGE3[3:0]として、データ出力信号DOUTのエッジを検出しなかったことを示す値0を出力する。なお図11では、位相情報EDGE3の値を10進数で示している。
【0068】
図11の例では、判定2の期間において、遅延クロックWCLK[2]の立ち上がりエッジと、遅延クロックWCLK[3]の立ち上がりエッジとの間に、データ出力信号DOUTの立ち上がりエッジが存在する。この場合、1段目のフリップフロップ1313の出力Q1[1]と、2段目のフリップフロップ1313の出力Q2[1]とが論理値0となり、3段目以降のフリップフロップ1313の出力Q2が論理値1となる。このため、位置データQ[10:1]および現周期位置データQ1[10:1]の値は1020となる。また、判定2の期間において位相情報制御回路1312に入力される前周期最終ビットQ2[10]の論理値は0である。この結果、位相情報制御回路1312は、位相情報EDGE3[3:0]として、遅延クロックWCLK[2]と、遅延クロックWCLK[3]との間に、データ出力信号DOUTの立ち上がりエッジが存在したことを示す値2を出力するとともに、検出完了信号EDGE_END3の論理値を1に変化させる。
【0069】
図12は、図10に示した位相検出回路1310の他の動作例を示すタイミングチャートである。本例では、判定2の期間における遅延クロックWCLK[1]のエッジの直前に、データ出力信号DOUTの論理値が0から1に変化している。
【0070】
この場合、判定2の期間における位置データQ[10:1]および現周期位置データQ1[10:1]の全ビットの論理値が1となる(すなわち、10進数での値は1023となる)。この場合であっても、前周期最終ビットQ2[10]の論理値を用いることで、前周期における遅延クロックWCLK[10]のエッジと、現周期における遅延クロックWCLK[1]のエッジとの間に、データ出力信号DOUTのエッジが存在することを特定できる。図11および図12に示したような動作により、位相検出回路1310は、データ出力信号DOUT、プリ出力信号PREDOUTおよびサンプリングクロックACLKのエッジタイミングを検出できる。
【0071】
図13A図13Bおよび図13Cは、図9に示したDCLK制御回路1320の動作例を示す図である。図13Aから図13Cにおいては、基準クロックBICKを10分割した各分割期間を、1から10の数字で示している。例えば分割期間1は、遅延クロックWCLK[1]の立ち上がりエッジから、遅延クロックWCLK[2]の立ち上がりエッジまでの期間であり、分割期間10は、遅延クロックWCLK[10]の立ち上がりエッジから、次の周期の遅延クロックWCLK[1]の立ち上がりエッジまでの期間である。本例では、1つの分割期間の長さをTdとして説明する場合がある。
【0072】
各図において、サンプリングクロックACLK、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTのエッジの位置を丸印で示している。また、基準クロックBICKを10分割した各分割期間のうち、最初の2つの分割期間をホールドタイムを満たさない期間とし、最後の2つの分割期間をセットアップタイムを満たさない期間としている。各図に示す例において、DCLK制御回路1320は、データ出力信号DOUTのエッジタイミングがセットアップ/ホールドタイムの条件を満たす範囲で、出力バッファ150の動作タイミングが、AD変換器10のセンシティブタイミングに干渉しないように、選択信号CSEL[M:0]を生成する。各図において、左側は選択信号CSELによる位相調整前の状態を示し、右側は位相調整後の状態を示す。
【0073】
図13Aは、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の左側期間にある場合を示している。本例では、基準クロックBICKの1周期を3等分した最初の期間を左側期間、中央の期間を中央期間、最後の期間を右側期間と称する。左側期間、中央期間、右側期間の長さは同一であってよい。ただし、Nが3で割り切れない場合には、左側期間、中央期間、右側期間の長さは、互いにTdの差分を有していてもよい。本例では、分割期間1~3を左側期間、分割期間4~7を中央期間、分割期間8~10を右側期間としている。
【0074】
図13Aの例では、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間(プリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングから、データ出力信号DOUTのエッジタイミングまでの期間)に含まれている。この場合、DCLK制御回路1320は、同期クロックDCLKの位相を遅らせることで、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTの位相を遅らせる。サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期の左側期間にある場合、プリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングが、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングよりも遅くなるように、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTの位相を遅らせてよい。本例のDCLK制御回路1320は、クロックDCLKの位相を調整することで、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTの位相を2個の分割期間分(2Td)遅らせ、データ出力信号のセットアップ/ホールドタイムを満たしつつ、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間に含まれていないように制御している。
【0075】
図13Bは、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の中央期間にある場合を示している。図13Bの例では、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間には含まれていない。しかし、データ出力信号DOUTのエッジタイミングが、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングの近傍に配置されている。このような場合、特にAD変換器10が高速に動作すると、出力バッファ150の動作ノイズが、AD変換器10に影響を与える可能性がある。
【0076】
本例のDCLK制御回路1320は、同期クロックDCLKの位相を調整することで、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTの位相を5個の分割期間分(5Td)遅らせ、データ出力信号のセットアップ/ホールドタイムを満たしつつ、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間に含まれていないように制御している。
【0077】
図13Cは、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、基準クロックBICKの1周期中の右側期間にある場合を示している。図13Cの例では、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングが、出力バッファ150の動作期間には含まれていない。また、データ出力信号DOUTのエッジタイミングと、サンプリングクロックACLKのエッジタイミングとが所定値以上離れている。また、データ出力信号DOUTのエッジタイミングが、所定のセットアップ/ホールドタイムの条件を満たしている。この場合、DCLK制御回路1320は、同期クロックDCLKの位相を維持して、出力バッファ150の動作タイミングを変更しない。
【0078】
DCLK制御回路1320は、組み合わせ回路で構成されてよい。組み合わせ回路とは、論理素子等で構成された回路であって、現在の入力が決まれば、出力が決まる回路である。DCLK制御回路1320が組み合わせ回路で構成されている場合、DCLK制御回路1320の入力(すなわち、位相検出回路1310の出力)が変化してから、DCLK制御回路1320が最終的な結果を出力するまでの遷移動作中に、グリッジ等の期待されていない信号が出力される可能性がある。図11に示すように、DCLK制御回路1320は、遅延クロックWCLK[1]に同期化した選択信号CSELを出力してよい。これにより、グリッジ等の出力を抑制できる。
【0079】
また、DCLK制御回路1320は、検出ウィンドウ生成回路120における多位相クロックの位相調整が完了するまで選択信号CSEL[M:0]が変化させないことが好ましい。DCLK制御回路1320は、選択信号CSEL[M:0]を変化させるための内部信号を、EDGE検出完了を示すEEND_ALL信号を用いてマスクしてもよい。
【0080】
図14は、検出ウィンドウ生成回路120および位相モニタ回路130の動作の概要を示すフローチャートである。まず検出ウィンドウ生成回路120が、検出ウィンドウ(すなわち、多位相クロックWCLK[N:1])を生成する(S1400)。
【0081】
次に位相モニタ回路130の位相検出回路1310が、多位相クロックWCLK[N:1]を用いて、サンプリングクロックの位相(S1402)、データ出力信号DOUTの位相(S1406)、および、プリ出力信号PREDOUTの位相(S1410)を検出する。次に、位相モニタ回路130のDCLK制御回路1320が、サンプリングクロックの位相(S1404)、データ出力信号DOUTの位相(S1408)、および、プリ出力信号PREDOUTの位相(S1412)の情報を格納する。
【0082】
次にDCLK制御回路1320が、サンプリングクロックACLK、データ出力信号DOUTおよびプリ出力信号PREDOUTの各信号の位相検出が完了したか否かを判定する(S1414)。位相検出が完了していない場合、DCLK制御回路1320は、位相検出が完了するまで待機する。位相検出が完了している場合、DCLK制御回路1320は、これらの位相情報に基づいて、同期クロックDCLKの位相を選択する(S1416)。
【0083】
本実施例によれば、AD変換器10のセンシティブタイミングに、出力バッファ150の動作ノイズが干渉することを回避して、AD変換器10の特性を安定化できる。また、AD変換器10のサンプリングクロックACLKの位相を操作しないので、サンプリングクロックACLKのジッタ・スプリアス(位相ノイズ)特性が悪化することによるAD変換器10の特性劣化を回避できる。また、特許文献2に開示されるようなレプリカ回路(符号32/33)を用いない簡易な回路で、セットアップ/ホールドタイムを満たすデータ出力信号を生成できる。このため、簡易な回路で、高速なデータ出力インターフェースを実現できる。
【0084】
図15は、本発明の他の実施形態に係るAD変換装置2000の構成例を示すブロック図である。AD変換装置2000は、AD変換装置1000に対してデータ出力装置200の機能および構成が異なる。データ出力装置200は、データ出力装置100に対して、位相モニタ回路230の機能および構成が異なる。位相モニタ回路230以外については、データ出力装置200は、データ出力装置100と同一の機能および構成を有してよい。
【0085】
位相モニタ回路230は、位相モニタ回路130の機能に加えて、プリ出力信号PREDOUTと、データ出力信号DOUTとの間の遅延時間に基づいて、出力バッファ150の駆動力を制御する機能を更に有する。本例の位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を制御する駆動制御信号DFC[K:0]を出力バッファ150に入力する。出力バッファ150の駆動力とは、出力バッファ150が出力する電流量であってよい。例えば出力バッファ150は、並列に設けられた複数のバッファ回路を有している。駆動制御信号DFC[K:0]により、動作するバッファ回路の個数を制御することで、出力バッファ150の駆動力を制御できる。ただし、出力バッファ150の駆動力の制御方法は、これに限定されない。
【0086】
位相モニタ回路230は、多位相クロックWCLK[N:1]を用いて、プリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングと、データ出力信号DOUTのエッジタイミングを検出してよい。位相モニタ回路230は、これらのエッジタイミングの位相差を遅延時間として算出してよい。
【0087】
位相モニタ回路230は、当該遅延時間が短いほど出力バッファ150の駆動力を弱くし、遅延時間が長いほど出力バッファ150の駆動力を強くしてよい。位相モニタ回路230は、出力バッファ150において動作するバッファ回路の個数を小さくすることで出力バッファ150の駆動力を弱くしてよく、出力バッファ150において動作するバッファ回路の個数を大きくすることで出力バッファ150の駆動力を強くしてよい。位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を段階的に変化させてよく、連続的に変化させてもよい。位相モニタ回路230は、当該遅延時間が所定の目標値と一致するように、出力バッファ150の駆動力を調整してよい。出力バッファ150の駆動力を強くすると、出力バッファ150における遅延時間が短くなり、出力バッファ150の駆動力を弱くすると、出力バッファ150における遅延時間が長くなる。
【0088】
図16は、AD変換装置2000の動作例を示すタイミングチャートである。図16において、アナログ信号の波形から、WCLK[10]の波形までは、図2に示した例と同様である。本例では、CSEL[M:1]は一定としている。図16の例では、出力バッファ150における初期遅延時間が短く、出力バッファ150における初期駆動力が過剰な例を示している。
【0089】
本例では、プリ出力信号PREDOUTのエッジと、データ出力信号DOUTのエッジとの初期位相差(すなわち出力バッファ150の初期遅延時間)が、基準クロックBICKの周期の1/10以下である。出力バッファ150の駆動力が大きいと、出力バッファ150の動作ノイズも大きくなるので、AD変換器10の特性への影響も大きくなる。
【0090】
本例の位相モニタ回路230は、出力バッファ150の遅延時間が所定の目標値に近づくように、出力バッファ150の駆動力を制御する。本例では、出力バッファ150の遅延時間が目標値よりも小さいので、位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を弱くするように、駆動制御信号DFC[K:0]の値を調整する。これにより、出力バッファ150が過剰な駆動力で動作している場合に、出力バッファ150の駆動力を弱くして、出力バッファ150の動作ノイズを低減できる。
【0091】
なお、位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を調整してから、位相モニタ回路130と同様の動作を行ってよい。すなわち、位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を調整してから、サンプリングクロックACLK、プリ出力信号PREDOUTおよびデータ出力信号DOUTの各位相を検出し、同期クロックDCLKの位相を調整してよい。
【0092】
データ出力装置200によれば、PVT変動、出力負荷変動等に応じて、出力バッファ150の駆動力を最適に調整できる。このため、出力バッファ150の動作ノイズを最小限に抑制でき、AD変換器10の特性劣化を抑制できる。また、出力バッファ150の動作開始(プリ出力信号PREDOUTのエッジタイミング)から、動作完了(データ出力信号DOUTのエッジタイミング)までの時間ばらつきを抑制でき、出力バッファ150の動作ノイズの発生タイミングのばらつきを抑制できる。このため、AD変換器10のセンシティブタイミングに対する干渉を抑制するための、出力バッファ150の動作時間の調整レンジを広くでき、AD変換器10に対する干渉の影響を更に軽減できる。
【0093】
図17は、位相モニタ回路230の構成例を示すブロック図である。位相モニタ回路230は、位相モニタ回路130の構成に加えて、差分検出回路2330および出力バッファ制御回路2340を有する。
【0094】
差分検出回路2330は、位相検出回路1310-2が検出したプリ出力信号PREDOUTのエッジタイミングと、位相検出回路1310-3が検出したデータ出力信号DOUTのエッジタイミングとの差分を検出することで、出力バッファ150の遅延時間を検出する。本例の差分検出回路2330は、位相情報EDGE2、EDGE3の差分に基づいて、出力バッファ150の遅延時間を検出する。差分検出回路2330は、検出した遅延時間を示す遅延情報DIFF[L:0]を出力する。
【0095】
出力バッファ制御回路2340は、遅延情報DIFF[L:0]に基づいて、出力バッファ150の駆動力を決定する駆動制御信号DFC[K:0]を生成する。出力バッファ制御回路2340は、組み合わせ回路で構成されてよい。この場合、出力バッファ制御回路2340は、いずれかの遅延クロック(本例では遅延クロックWCLK[1])に同期して、駆動制御信号DFC[K:0]を出力することが好ましい。これにより、出力バッファ制御回路2340の出力にグリッジが生じることを抑制できる。
【0096】
出力バッファ制御回路2340は、3つの位相検出回路1310における位相検出が完了した後に、遅延情報DIFF[L:0]に基づいて駆動制御信号DFC[K:0]を生成してよい。本例の出力バッファ制御回路2340は、全完了信号EEND_ALLに基づいて動作する。これにより、3つの位相検出回路1310でエッジを検出し終えるまで、出力バッファ150の駆動力を維持できる。出力バッファ制御回路2340は、全完了信号EEND_ALLを用いて、出力をマスクしてよい。本例の全完了信号EEND_ALLは、位相検出が完了した場合に論理値1となり、完了していない場合に論理値0となる。
【0097】
出力バッファ制御回路2340は、出力バッファ150の駆動力制御が完了したか否かを示す制御完了信号DFCENDを、DCLK制御回路1320に入力してよい。本例の制御完了信号DFCENDは、駆動力制御が完了した場合に論理値1となり、完了していない場合に論理値0となる。本例の出力バッファ制御回路2340は、駆動制御信号DFC[K:0]の値を変更した場合に、制御完了信号DFCENDの論理値を1にする。DCLK制御回路1320は、出力バッファ150の駆動力制御が完了した後に、同期クロックDCLKの位相を調整する。
【0098】
出力バッファ制御回路2340は、出力バッファ150の駆動力を制御中であるか否かを示す状態信号CHANGEを、位相検出回路1310-3に入力してよい。本例の状態信号CHANGEは、出力バッファ150の駆動力を制御中である場合に論理値1となり、制御中でない場合に論理値0となる。
【0099】
出力バッファ150の駆動力を制御すると、データ出力信号DOUTの位相が変化する。位相検出回路1310-3は、状態信号CHANGEが論理値1となった場合に、検出完了信号の論理値を0にして、データ出力信号DOUTの位相検出を再度行う。出力バッファ150の駆動力の調整が完了し、且つ、データ出力信号DOUTの位相の再検出が完了した後、DCLK制御回路1320は同期クロックDCLKの位相を調整する。
【0100】
図18は、出力バッファ150の駆動力を制御する場合の、位相モニタ回路230の動作例を示すフローチャートである。図18の例では、説明の簡略化のために、出力バッファ150の駆動力の制御を1回だけ行う例を説明する。
【0101】
位相モニタ回路230は、予め指定された遅延クロック(本例では遅延クロックWCLK[1])の立ち上がりエッジを検出する(S1802)。遅延クロックWCLK[1]の立ち上がりエッジを検出した場合に、位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力制御の処理を開始する。
【0102】
位相モニタ回路230は、遅延クロックWCLK[1]の立ち上がりエッジを検出した場合に、制御完了信号DFCEND、状態信号CHANGE、および、全完了信号EEND_ALLが、所定の論理値であるか否かを判定する(S1804、S1806、S1808)。これらの信号の論理値の判定は、図18に示す順番で行わなくてもよい。
【0103】
位相モニタ回路230は、制御完了信号DEFENDの論理値が0であり、状態信号CHANGEの論理値が0であり、且つ、全完了信号EEND_ALLの論理値が1の場合に、出力バッファ150の駆動力を変更するか否かを判定する(S1810)。例えば位相モニタ回路230は、出力バッファ150における遅延時間と、予め設定された目標遅延時間との差が所定値以上の場合に、出力バッファ150の駆動力を変更する。
【0104】
出力バッファ150の駆動力を変更しない場合、位相モニタ回路230は、制御完了信号DEFENDの論理値を1にして(S1812)、出力バッファ150の駆動力の制御処理を終了する。出力バッファ150の駆動力を変更する場合、位相モニタ回路230は、駆動制御信号DFC[K:0]の値を変更し、且つ、状態信号CHANGEの論理値を1にする(S1814)。遅延クロックWCLK[1]の1周期後に、位相モニタ回路230は、状態信号CHANGEの論理値を0に変化させ、制御完了信号DEFENDの論理値を1に変化させる。これにより、出力バッファ150の駆動力の制御処理が完了する。
【0105】
状態信号CHANGEの論理値が1になると、位相検出回路1310-3が出力する検出完了信号EDGE_END3の論理値が0となる。位相検出回路1310-3は、データ出力信号DOUTの位相を再度検出する。DCLK制御回路1320は、制御完了信号DEFENDの論理値が1に変化した後に、位相検出回路1310-3の検出完了信号EDGE_END3の論理値が1になると、同期クロックDCLKの位相の調整処理を開始する。
【0106】
本例では、S1804において、制御完了信号DEFENDの論理値が0であるか否かを判定する。制御完了信号DEFENDの論理値が1の場合(NO)、出力バッファ150の駆動力の制御処理が完了した状態なので、位相モニタ回路230は、当該周期においては駆動力の制御処理を行わない。
【0107】
制御完了信号DEFENDの論理値が0の場合、位相モニタ回路230は、状態信号CHANGEの論理値が0であるか否かを判定する(S1806)。状態信号CHNAGEの論理値が1の場合(NO)、出力バッファ150の駆動力の制御処理を実行中なので、位相モニタ回路230は、当該制御処理が終了した場合に、S1812の処理を行う。
【0108】
状態信号CHANGEの論理値が0の場合、位相モニタ回路230は、全完了信号EEND_ALLの論理値が1であるか否かを判定する(S1808)。全完了信号EEND_ALLの論理値が0の場合(NO)、位相検出回路1310における位相検出が完了していない状態なので、位相モニタ回路230は、当該周期においては駆動力の制御処理を行わない。
【0109】
図19は、検出ウィンドウ生成回路120および位相モニタ回路230の動作の概要を示すフローチャートである。S1400、S1402、S1406、S1410、S1414、S1416の処理は、図14に示した例と同様である。
【0110】
S1406およびS1410の後に、位相モニタ回路230は、データ出力信号DOUTと、プリ出力信号PREDOUTの位相差を検出する(S1802)。位相モニタ回路230は、当該位相差に基づいて、出力バッファ150の駆動力を変更するか否かを判定する(S1804)。
【0111】
出力バッファ150の駆動力を変更しないと判定した場合、位相モニタ回路230は、S1414からの処理を行う。出力バッファ150の駆動力を変更すると判定した場合、位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を変更する(S1806)。
【0112】
位相モニタ回路230は、出力バッファ150の駆動力を変更した後に、データ出力信号DOUTの位相を再度検出する(S1808)。位相モニタ回路230は、プリ出力信号PREDOUTの位相も、再度検出してよい(S1810)。データ出力信号DOUTおよびプリ出力信号PREDOUTの位相を再検出した後、位相モニタ回路230は、S1414からの処理を行う。
【0113】
本実施例によれば、出力バッファ150の駆動力を最適に調整して、出力バッファ150の動作ノイズを最小限にできる。また、出力バッファ150の遅延時間をモニタするので、PVT変動または出力負荷変動等による遅延時間の変動も抑制できる。また、PVT変動等を考慮して出力バッファ150の駆動力を過剰な状態に固定しなくてよいので、出力バッファ150の動作ノイズを最小限にできる。
【0114】
また、各実施例においては、データ出力信号DOUTと、サンプリングクロックACLKの位相関係を直接モニタして、同期クロックDCLKを制御するので、PVT変動等による相対位相の変動を抑制できる。また、位相関係のモニタ結果に基づいて帰還制御を行うので、データ出力経路における遅延系故障に対する耐性が向上する。
【0115】
更に、比較的に大きいノイズを発生する出力バッファ150の動作タイミングと、AD変換器10のサンプリングタイミングとを直接モニタし、干渉しない位相関係になるようにデータ出力信号DOUTの位相を調整するので、オーディオ用途等のAD変換装置のように、AD変換器10のサンプリングクロックと、データ出力用のクロックとが異なるルートクロックとなり、ルートクロック間で任意の位相関係を許可する場合においても、出力バッファの動作ノイズの干渉を回避できる。
【0116】
また、AD変換器10のサンプリングクロックACLKを操作しないためサンプリングクロックACLKのジッタ・スプリアス(位相ノイズ)特性の劣化に伴うAD変換器10の特性劣化も生じない。また、AD変換器10の実動作前にキャリブレーションを行わなくてもよい。
【0117】
図1から図19に示した例では、基準クロックBICKの1周期をN分割して多位相クロックを生成していた。一方で、データ出力装置100、200のデータ出力レートが遅く、基準クロックBICKの周期が長い場合等においては、出力バッファ150の遅延時間へのPVT変動の影響が小さくなり、また、セットアップ/ホールドタイムを満たすデータ出力タイミング範囲が広くなることでAD変換器10のセンシティブタイミングと出力バッファ150の動作タイミングとの干渉を回避できる時間範囲が増大する。
【0118】
このような場合、検出ウィンドウ生成回路120は、基準クロックBICKの1周期より小さい期間をN分割して多位相クロックを生成してもよい。例えば検出ウィンドウ生成回路120は、基準クロックBICKの半周期をN分割して多位相クロックを生成してよい。検出ウィンドウ生成回路120は、基準クロックBICKの周期に基づいて、基準クロックの1周期をN分割するか、1周期よりも短い期間をN分割するかを切り替えてよい。
【0119】
図20Aは、基準クロックBICKの1周期をN分割(本例ではN=10)して多位相クロックを生成する場合のデータ出力装置100または200の動作例を示すタイミングチャートである。図20Bおよび図20Cは、基準クロックBICKの半周期をN分割(本例ではN=10)して多位相クロックを生成する場合のデータ出力装置100または200の動作例を示すタイミングチャートである。
【0120】
図20A図20B図20Cにおいては、サンプリングクロックACLK、基準クロックBICK、多位相クロックWCLK[10:1]に含まれる各遅延クロック、プリ出力信号PREDOUT、データ出力信号DOUT、出力バッファ150の動作ノイズ、セットアップ/ホールドタイムの波形等を示しており、他の信号の波形を省略している。また、図20A図20Cの最下段において、基準クロックBICKの1周期を10分割した各期間について、セットアップ/ホールドタイムおよびAD変換器10へのノイズ干渉を考慮して、プリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するのに適した期間であるか否かを示している。最下段における二重丸印は、プリ出力信号PREDOUTのエッジが配置されるのに最適な期間であることを示し、丸印はプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置可能な期間であることを示し、バツ印はプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置できない期間であることを示している。
【0121】
図20Aは、AD変換器10のセンシティブタイミングが、基準クロックBICKの立ち下がりエッジの直後の期間6に配置されている例を示している。本例では、期間1、8-10にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合、データ出力信号DOUTがセットアップ/ホールドタイムを満たさなくなる。また、期間5、6にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合、出力バッファ150の動作ノイズが、AD変換器10のセンシティブタイミングに干渉する可能性がある。なお図20Aにおいては、期間4にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合の動作ノイズと、期間7にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合の動作ノイズを、斜線のハッチングを付した波形で示している。
【0122】
図20Aに示すように、期間4または期間7にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合、出力バッファ150の動作ノイズ波形と、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジ(AD変換器10のセンシティブタイミング)とは干渉していない。また、期間4より前の期間と、期間7より後の期間にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置しても、出力バッファ150の動作ノイズ波形と、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジとは干渉しない。一方で、期間5、6にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置すると、出力バッファ150の動作ノイズ波形と、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジ(AD変換器10のセンシティブタイミング)とが干渉してしまう。本例では、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジの期間6の直後の期間7が、プリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するのに最適な期間となる。
【0123】
図20Bは、図20Aよりも基準クロックBICKの周期が長い例を示している。この場合、基準クロックBICKの1周期に対する、セットアップ/ホールドタイムを満たさない期間の割合は、図20Aの例に比べて小さくなる。また本例の検出ウィンドウ生成回路120は、基準クロックBICKの半周期(論理値0の期間)を10分割した多位相クロックを生成している。本例においても、図20Aの例と同様に、AD変換器10のセンシティブタイミングが、基準クロックBICKの立ち下がりエッジの直後の期間(本例では期間1)に配置されている例を示している。
【0124】
本例では、期間8-10にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合、データ出力信号DOUTがセットアップ/ホールドタイムを満たさなくなる。基準クロックBICKの論理値0の期間においては、データ出力信号DOUTがホールドタイムを満たすので、セットアップタイムを考慮すればよい。本例では、セットアップタイムを満たす期間7よりも前の期間1-7はセットアップ/ホールドタイムを満たしている。なお、期間1よりも前においてもセットアップ/ホールドタイムを満たす期間は存在している。
【0125】
ただし、期間1にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合、出力バッファ150の動作ノイズが、AD変換器10のセンシティブタイミングに干渉する可能性がある。なお図20Bにおいては、期間2にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合の動作ノイズと、期間7にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置した場合の動作ノイズを、斜線のハッチングを付した波形で示している。本例では、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジの期間1の直後の期間2が、プリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するのに最適な期間となる。
【0126】
このように、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジが、基準クロックBICKが論理値0を示す期間にある場合、基準クロックBICKの論理値0を示す期間をN分割した多位相クロックWCLKを生成することで、プリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するのに最適な期間を検出できる。
【0127】
図20Cは、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジが、基準クロックBICKが論理値1を示す期間に配置されている例を示している。図20Cの例において基準クロックBICKの周期は、図20Bの例と同一である。
【0128】
図20Bの例と同様に、本例においてもセットアップ/ホールドタイムを満たすのは、期間1-7である。本例では、プリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するのに最適なのは、サンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジの直後の期間1である。なお、基準クロックBICKが論理値1を示す期間にサンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジが配置されている場合、基準クロックBICKが論理値0を示す期間においてプリ出力信号PREDOUTを配置するのに最適な期間は、常に期間1となる。
【0129】
本例では、基準クロックBICKの立ち上がりエッジの前後期間にセットアップ/ホールドタイムを満たさない期間が存在している。この場合、基準クロックBICKが論理値0を示す期間では、セットアップタイムを考慮すればよい。このため、基準クロックBICKが論理値0を示す期間をN分割して多位相クロックWCLKを生成した場合において、当該期間にAD変換器10のセンシティブタイミング(本例ではサンプリングクロックACLKの立ち下がりエッジタイミング)を検出しなかった場合には、位相モニタ回路130は、当該期間を分割した分割期間のうち、最も早い分割期間にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置してよい。一方で、基準クロックBICKの立ち下がりエッジの前後期間にセットアップ/ホールドタイムを満たさない期間が存在する場合、基準クロックBICKが論理値0を示す期間では、ホールドタイムを考慮すればよい。このため、基準クロックBICKが論理値0を示す期間をN分割して多位相クロックWCLKを生成した場合において、当該期間にAD変換器10のセンシティブタイミングを検出しなかった場合には、位相モニタ回路130は、当該期間を分割した分割期間のうち、ホールドタイムを満たす最も早い分割期間にプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置してよい。
【0130】
つまり、位相モニタ回路130は、基準クロックBICKが一方の論理値を示す期間をN分割して多位相クロックWCLKを生成した場合において、当該期間内にAD変換器10のセンシティブタイミングを検出しなかった場合には、ホールドタイムを満たす、分割期間のうち最初の期間(本例では期間1)をプリ出力信号PREDOUTのエッジを配置するための最適期間として選択してよい。
【0131】
以上の例においては、多位相クロックWCLK[N:1]の各遅延クロックWCLK[k]の立ち上がりエッジを用いて回路が動作したが、立ち下がりエッジを用いてよく、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの両方を用いてもよい。なお、データ出力装置100、200のデータ出力レートが高い(基準クロックBICKの周期が短い)状況で、PVT変動、出力負荷変動等によって出力バッファ150の遅延時間が大きく変動すると、データ出力信号DOUTを期待されるタイミングで出力できず、例えば、基準クロックBICKの1周期後にデータ出力信号DOUTが出力される場合がある。このような場合、データ出力同期回路140が、基準クロックBICKの1周期分だけ前のデータ列を出力することで、出力バッファ150がデータ出力信号DOUTを期待されるタイミングで出力できる。
【0132】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0133】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0134】
10・・・AD変換器、12・・・サンプリング回路、14・・・アナログ処理回路、16・・・デジタル処理回路、100・・・データ出力装置、120・・・検出ウィンドウ生成回路、130・・・位相モニタ回路、140・・・データ出力同期回路、150・・・出力バッファ、200・・・データ出力装置、230・・・位相モニタ回路、1000・・・AD変換装置、1210・・・多相クロック生成回路、1212・・・DAコンバータ、1220・・・遅延制御回路、1230・・・選択回路、1240・・・遅延素子、1250・・・可変容量素子、1310・・・位相検出回路、1311・・・位相情報生成回路、1312・・・位相情報制御回路、1313、1314、1315・・・フリップフロップ、1320・・・DCLK制御回路、1330・・・AND回路、2000・・・AD変換装置、2330・・・差分検出回路、2340・・・出力バッファ制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
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図18
図19
図20A
図20B
図20C