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特許7175099発光装置、集積型発光装置および発光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】発光装置、集積型発光装置および発光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20221111BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221111BHJP
   H01L 33/46 20100101ALI20221111BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20221111BHJP
【FI】
H01L33/54
F21S2/00 481
F21S2/00 482
F21S2/00 484
H01L33/46
H01L33/60
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018079375
(22)【出願日】2018-04-17
(62)【分割の表示】P 2016197968の分割
【原出願日】2016-10-06
(65)【公開番号】P2018139303
(43)【公開日】2018-09-06
【審査請求日】2019-10-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2015200445
(32)【優先日】2015-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】山田 元量
(72)【発明者】
【氏名】山田 有一
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】吉野 三寛
【審判官】野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/092696(WO,A1)
【文献】特開2015-22989(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158555(WO,A1)
【文献】特開2006-261540(JP,A)
【文献】特表2014-524674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体配線を有する基体と、
前記基体に実装され、第1の光を発光する発光素子と、
誘電体多層膜により形成されてなり、前記発光素子の上面に設けられた光反射膜と、
前記発光素子及び光反射膜を被覆する封止部材と、を有し、
前記封止部材の幅(W)に対する高さ(H)の比(H/W)が、0.5より小さく0.22より大きく、
前記光反射膜の垂直入射される光に対する反射波長帯域は、前記発光素子の発光ピーク波長を含み、かつ前記発光ピーク波長より長波長側が短波長側より広くなっている発光装置を複数備え、前記発光装置間にそれぞれ光反射部材が配置され
前記封止部材の表面は凸状の曲面で形成されている集積型発光装置。
【請求項2】
前記光反射膜の前記第1の光に対する光透過率は、入射角依存性を有する請求項1記載の集積型発光装置。
【請求項3】
前記光反射膜の前記第1の光に対する光透過率は、入射角の絶対値が大きくなるにしたがって高くなる請求項1又は2に記載の集積型発光装置。
【請求項4】
前記発光装置が出射する光の全光量の30%以上が、前記基体の上面に対して仰角20゜未満の方向に出射される請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項5】
前記発光装置が出射する光の全光量の40%以上が、前記基体の上面に対して仰角20゜未満の方向に出射される請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項6】
前記封止部材の幅(W)に対する高さ(H)の比(H/W)が0.3以下である請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項7】
前記発光素子はフリップチップ実装されている、請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項8】
前記光反射部材の高さが、前記発光装置間の距離の0.3倍以下である請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項9】
前記光反射部材の高さが、前記発光装置間の距離の0.2倍以下である請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置と、前記発光装置の光取り出し面側に、前記発光素子の光を一部吸収して、前記発光素子の発光波長と異なる波長の光に変換する波長変換部材を備える発光モジュール。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の集積型発光装置と、前記集積型発光装置の光取り出し面側に、前記発光素子の光を一部吸収して、前記発光素子の発光波長と異なる波長の光に変換する波長変換部材を備える発光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置、集積型発光装置および発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な電子部品が提案され、また実用化されており、これらに求められる性能も高くなっている。特に、電子部品には、厳しい使用環境下でも長時間性能を維持することが求められている。このような要求は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)をはじめとする半導体発光素子を利用した発光装置についても例外ではない。すなわち、一般照明分野や車載照明分野において、発光装置に要求される性能は日増しに高まっており、更なる高出力(高輝度)化や高信頼性が要求されている。さらに、これらの高い性能を維持しつつ、低価格で供給することも発光装置には要求されている。
液晶テレビに使用されるバックライトや一般照明器具等では、デザイン製が重要視され、薄型化の要望が高い。
【0003】
例えば特許文献1には、サブマウントにフリップチップ実装された発光素子の上面にリフレクタを設けることで、バックライトの薄型化を実現する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-4948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発光装置によると、広配光化された発光装置を実現することができるものの、バックライトの薄型化に伴い、より広配光を実現可能な発光装置が求められている。
【0006】
本発明に係る実施形態は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、二次レンズを使用することなく、広配光を可能とする発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る発光装置は、導体配線を有する基体と、前記基体に実装され、第1の光を発光する発光素子と、前記発光素子の上面に設けられた光反射膜と、前記発光素子及び光反射膜を被覆する封止部材と、を有し、前記封止部材の幅(W)に対する高さ(H)の比(H/W)が0.5より小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る実施形態によれば、二次レンズを使用することなく、広配光を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の発光装置の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態の光反射膜の光透過率の角度依存特性を示す図である。
図3】本実施形態の発光装置の光反射膜の波長帯域と発光素子の発光波長の関係を示す図である。
図4】本実施形態の発光装置の配光特性図である。
図5】二次レンズを使用した比較例の発光装置の配光特性図である。
図6A】本実施形態にかかる発光装置No.1の配光特性を示す図である。
図6B】本実施形態にかかる発光装置No.2の配光特性を示す図である。
図6C】本実施形態にかかる発光装置No.3の配光特性を示す図である。
図6D】本実施形態にかかる発光装置No.4の配光特性を示す図である。
図6E】本実施形態にかかる発光装置No.5の配光特性を示す図である。
図6F】本実施形態にかかる発光装置No.6の配光特性を示す図である。
図6G】本実施形態にかかる発光装置No.7の配光特性を示す図である。
図6H】本実施形態にかかる発光装置No.8の配光特性を示す図である。
図6I】本実施形態にかかる発光装置No.9の配光特性を示す図である。
図7】本実施形態の発光モジュールの一例を示す断面図である。
図8】光反射板の一例を示す図である。
図9A】光反射部材を配置していない発光モジュールの輝度分布特性を示す図である。
図9B】光反射部材を配置した実施例2の発光モジュールの輝度分布特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する発光装置は、技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一つの実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の発光装置の一例を示す概略構造図である。
図1に示されるように、本実施形態は、導体配線102を有する基体101と、基体101に載置される発光素子105を有する。発光素子105は、基体101の表面に設けられた少なくとも一対の導体配線102に跨がるように、接続部材103を介してフリップチップ実装されている。発光素子105の光取り出し面側(発光素子105の上面)には光反射膜106が形成されている。導体配線の少なくとも一部には、絶縁部材104が設けられていてもよく、導体配線102の上面のうち、発光素子105と電気的に接続される領域は、絶縁部材104から露出されている。
【0012】
光反射膜106の光透過率は、発光素子105から入射される光に対して、入射角依存性を有する。図2に、本実施形態の光反射膜106の光透過率の入射角依存特性を示す。光反射膜106は、発光素子105の上面に対して垂直方向には殆ど光を通さないが、垂直方向から角度が付くと光の透過量が増加する。具体的には、入射角が、-30°~30°の範囲内では透過率が10%程度であるのに対して、入射角が-30°より小さくなると徐々に透過率が大きくなって-50°より小さくなると急激に透過率が大きくなり、同様に、入射角が30°より大きくなると徐々に透過率が大きくなって50°より大きくなると急激に透過率が大きくなる。つまり、光反射膜の第1の光に対する光透過率は、入射角の絶対値が大きくなるにしたがって高くなる。この様な膜にすることで図4に示す様なバットウイング配光特性を実現することが出来る。
ここで、バットウイング配光特性とは、配光角が90°以下の第1領域に配光角が90°のときの強度より大きい強度の第1ピークを有し、配光角が90°以上の第2領域に配光角が90°のときの強度より大きい強度の第2ピークを有するような配光特性を言う。
【0013】
発光素子105は、透光性の封止部材108により被覆される。封止部材108は、発光素子105を外部環境から保護するとともに、発光素子から出力される光を光学的に制御するため、発光素子105を被覆するように基体上に配置される部材である。封止部材108は略ドーム状に形成されており、光反射膜106付きの発光素子105と、発光素子105の周囲の導体配線102の表面及び接続部材103を含む発光素子105と導体配線102の接合部を被覆する。つまり、反射膜106の上面および側面は封止部材108と接しており、反射膜106で覆われていない発光素子105の側面も封止部材108と接している。なお、この接合部は封止部材108とは別にアンダーフィルを用いて被覆されていてもよい。この場合は、アンダーフィルの上面および発光素子を被覆するように封止部材108が形成される。本実施形態においては、発光素子105は封止部材108で直接被覆されている。
【0014】
封止部材108は、上面視においてその外形が円形もしくは楕円形となるように形成されることが好ましく、光軸方向の封止部材の高さ(H)が、上面視における封止部材の径(幅:W)の0.5より小さい比率で形成されている。尚、楕円形の場合、幅の長さには長径と短径が存在するが、本明細書では短径を封止径(W)とする。封止部材108の表面は凸状の曲面で形成されている。
この様な構成とすることで、発光素子105から出た光は、封止部材108と空気の界面で屈折し、より広配光化させることが可能となる。
ここで、封止部材の高さ(H)とは、図1に示すように、発光素子105の実装面からの高さを指すものとする。また、封止部材の幅(W)とは、封止部材の底面の形状が円形の場合は上述のように径を指すものとし、その他の形状の場合は、もっとも長さの短いところのことを指すものとする。
【0015】
図4に封止部材108の有無による配光特性の変化の例を示す。実施形態1の発光装置100の配光特性を図4中に実線で示す。また、封止部材108を形成しない以外は実施形態1と同様に作成した発光装置の配光特性を点線で示す。図4に示す様に、第1実施形態の発光装置では、封止部材108を形成しない発光装置よりも、配光角が小さくなる方向に第1ピークが移動し、配光角が大きくなる方向に第2ピークが移動して、より広配光化されている。
【0016】
このように、光反射膜106と封止部材108の双方を用いることにより、二次レンズを用いることなく所望の配光特性を得ることができる。つまり、光反射膜106を形成することで発光素子105の直上輝度を低減する一方、封止部材108では発光素子105からの光を広配光化することに特化することができるので、レンズ機能を有する封止部材の大幅な小型化を実現することができる。言い換えれば、従来は、封止部材だけで、発光素子の直上輝度を低減しかつ広配光化する必要があったために、封止部材の高さを高くする必要があった。これに対して、本実施形態の発光装置では、発光素子105の直上輝度を低減する光反射膜106を備えることによりバットウイング配光特性を実現し、封止部材108の機能をより広配光化することに特化したことから、小型化が実現できたものである。これにより、後述するように、輝度むらを改善した薄型のバックライトモジュール(発光モジュール)が実現可能となる。図5に比較例として、二次レンズを用いた際の配光特性を示す。本実施形態の発光装置によれば、二次レンズを用いなくても、二次レンズを用いた場合と同等の配光特性を得ることができる。
【0017】
ここで、封止部材108の光軸方向の高さ(H)と、上面視における封止部材の径(幅:W)を変化させて9つの発光装置を作成し、配光特性を確認した結果を図6に示す。発光素子は、平面視が1辺600mμmの正方形で、厚みが150μmの青色LEDを用いる。また、光反射膜106は、SiO層(82nm)とZrO層(54nm)の繰り返しで11層構成とする。
9つの発光装置No.1~No.9における、封止部材の高さ(H)と封止部材の径(幅:W)の比率を表1に示す。発光装置No.1~No.9の配光特性を図6A図6Iに示す。
【表1】
これらの実験結果より、封止部材の径の違いによる配光特性の差は小さく、封止部材の高さ(H)と封止部材の径(幅:W)の比率が配向特性に影響を与えるものと考えられる。
そして、図6のグラフから、より広配光とするためには、封止部材の幅(W)に対する高さ(H)の比(H/W)を0.3以下とすることがより好ましいことがわかる。
【0018】
以下、本実施の形態に係る発光装置100の好ましい形態について説明する。
(基体101)
基体101は、発光素子105を載置するための部材である。基体101はその表面に、発光素子105に電力を供給するための導体配線102を有している。
基体101の材料としては、例えば、セラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が挙げられる。なかでも、低コストと、成型容易性の点から、樹脂を材料として選択することが好ましい。基板の厚みは適宜選択することができ、ロール・ツー・ロール方式で製造可能なフレキシブル基板、あるいはリジット基板のいずれであってもよい。リジット基板は湾曲可能な薄型リジット基板であってもよい。
【0019】
耐熱性及び耐光性に優れた発光装置とするためには、セラミックスを基体101の材料として選択することが好ましい。セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、フォルステライト、ガラスセラミックス、窒化物系(例えば、AlN)、炭化物系(例えば、SiC)等が挙げられる。なかでも、アルミナからなる又はアルミナを主成分とするセラミックスが好ましい。
【0020】
また、基体101を構成する材料に樹脂を用いる場合は、ガラス繊維や、SiO、TiO、Al等の無機フィラーを樹脂に混合し、機械的強度の向上、熱膨張率の低減、光反射率の向上等を図ることもできる。また、基体101としては、一対の導体配線102を絶縁分離できるものであればよく、金属部材に絶縁層を形成している、いわゆる金属基板を用いてもよい。
【0021】
(導体配線102)
導体配線102は、発光素子105の電極と電気的に接続され、外部からの電流(電力)を供給するための部材である。すなわち、外部から通電させるための電極またはその一部としての役割を担うものである。通常、正と負の少なくとも2つに離間して形成される。
【0022】
導体配線102は、発光素子105の載置面となる基体の、少なくとも上面に形成される。導体配線102の材料は、基体101として用いられる材料や製造方法等によって適宜選択することができる。例えば、基体101の材料としてセラミックスを用いる場合は、導体配線102の材料は、セラミックスシートの焼成温度にも耐え得る高融点を有する材料が好ましく、例えば、タングステン、モリブデンのような高融点の金属を用いるのが好ましい。さらに、その上に鍍金やスパッタリング、蒸着などにより、ニッケル、金、銀など他の金属材料にて被覆してもよい。
【0023】
また、基体101の材料としてガラスエポキシ樹脂を用いる場合は、導体配線102の材料は、加工し易い材料が好ましい。また、射出成型されたエポキシ樹脂を用いる場合には、導体配線102の材料は、打ち抜き加工、エッチング加工、屈曲加工などの加工がし易く、かつ、比較的大きい機械的強度を有する部材が好ましい。具体例としては、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属、または、鉄-ニッケル合金、りん青銅、鉄入り銅、モリブデン等の金属層やリードフレーム等が挙げられる。また、リードフレームの表面を、リードフレーム本体とは異なる他の金属材料で被覆してもよい。この材料は特に限定されないが、例えば、銀のみ、あるいは、銀と、銅、金、アルミニウム、ロジウム等との合金、または、これら、銀や各合金を用いた多層膜とすることができる。また、金属材料の被覆方法は、鍍金法の他にスパッタ法や蒸着法などを用いることができる。
【0024】
(接続部材103)
接続部材103は、発光素子105を基体101または導体配線102に固定するための部材である。本実施形態のようにフリップチップ実装の場合は導電性の部材が用いられる。具体的にはAu含有合金、Ag含有合金、Pd含有合金、In含有合金、Pb-Pd含有合金、Au-Ga含有合金、Au-Sn含有合金、Sn含有合金、Sn-Cu含有合金、Sn-Cu-Ag含有合金、Au-Ge含有合金、Au-Si含有合金、Al含有合金、Cu-In含有合金、金属とフラックスの混合物等を挙げることができる。
【0025】
接続部材103としては、液状、ペースト状、固体状(シート状、ブロック状、粉末状、ワイヤー状)のものを用いることができ、組成や基体の形状等に応じて、適宜選択することができる。また、これらの接続部材103は、単一部材で形成してもよく、あるいは、数種のものを組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(絶縁部材104)
導体配線102は、発光素子105や他材料と電気的に接続する部分以外は絶縁部材104で被覆されている事が好ましい。すなわち、各図に示されるように、基体上には、導体配線102を絶縁被覆するためのレジストが配置されていても良く、絶縁部材104はレジストとして機能させることができる。
【0027】
絶縁部材104を配置させる場合には、導体配線102の絶縁を行う目的だけでなく、白色系のフィラーを含有させることにより、光の漏れや吸収を防いで、発光装置100の光取り出し効率を上げることもできる。
絶縁部材104の材料は、発光素子からの光の吸収が少ない材料であり、絶縁性であれば特に限定されない。例えば、エポキシ、シリコーン、変性シリコーン、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、アクリル、ポリカーボネイト、ポリイミド等を用いることができる。
【0028】
(発光素子105)
基体に搭載される発光素子105は、公知のものを利用できる。本実施形態においては、発光素子105として発光ダイオードを用いるのが好ましい。
発光素子105は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSeや窒化物系半導体(InAlGa1-x-yN、0≦X
、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。成長基板として透光性のサファイア基板等を用いることができる。また、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。さらに、これ以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子の組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。発光素子はフリップチップ実装が可能なように、同一面側に正負の電極を有するものであってもよいし、異なる面に正負の電極を有するものであってもよい。
【0030】
本実施形態の発光素子105は、透光性の基板と、その基板の上に積層された半導体層を有する。この半導体層には、順にn型半導体層、活性層、p型半導体層が形成されており、n型半導体層にn型電極が形成されており、p型半導体層にp型電極が形成されている。
【0031】
発光素子105は、図1に示すように、接続部材103を介して基体101の表面の導体配線102にフリップチップ実装されており、電極の形成された面と対向する面、すなわち透光性基板の主面が光取り出し面となる。しかしながら、本実施形態においてはこの光取り出し面に光反射膜106を形成するため、発光素子105の側面が実質的な光取り出し面となる。つまり、発光素子105から出射して、発光素子105の主面側に向かった光の一部は光反射膜106で発光素子105内に戻されて、発光素子105内部で反射を繰り返して、発光素子105の側面側から出射される。従って、発光装置100としての配光特性(図4の点線参照)は光反射膜106を透過した光と、発光素子105の側面から出射した光の合成となる。
【0032】
発光素子105は、正と負に絶縁分離された2つの導体配線102に跨るように配置されており、導電性の接続部材103によって電気的に接続され、機械的に固定されている。この発光素子105の実装方法は、半田ペーストを用いた実装方法の他、例えばバンプを用いた実装方法とすることができる。また、発光素子105としては発光素子が樹脂等で封止された小型のパッケージ品を用いることも可能であり、特に形状や構造を限定する物では無い。
【0033】
後述するように、波長変換部材を備えた発光装置とする場合には、その波長変換部材109を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InAlGa1-x-yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。
【0034】
なお、フリップチップ実装の例で説明したが、発光素子の絶縁性基板側を実装面とし、発光素子の上面に形成された電極とワイヤとを接続する実装形態としてもよい。この場合は発光素子の上面は電極形成面側となり、反射膜は電極形成面側に設けられる。
【0035】
(光反射膜106)
光反射膜106は発光素子105の主面である光取り出し面側に成膜される。
材料としては、金属や白色フィラー含有樹脂でも良く、少なくとも発光素子105が発光する光(第1の光)を反射する材料であれば特に材料は規定されない。
また、誘電体多層膜を用いることで、吸収の少ない反射膜を得ることが出来る。加えて、膜の設計で反射率を任意に調整出来、また、角度により反射率を制御することも可能となる。特に光取り出し面に垂直方向(光軸方向ともいう)の反射率を上げ、光軸に対して角度が大きくなるところで反射率を下げる、すなわち透過率を上げることでバットウイング配光の形状を制御することも可能となる。
【0036】
特に誘電体多層膜の光軸での、すなわち発光素子の上面に対して垂直方向での反射波長帯域については、図3に示すように、発光素子105の発光ピーク波長に対して、長波長側の反射波長帯域を広くすることが有用である。
これは、光軸から角度を振っていくと、言い換えると、入射光の光軸からの角度が大きくなるにしたがって、誘電体多層膜の反射波長帯域が短波長側にシフトするためであり、発光波長に対して長波長側の反射波長帯域を広くすることでより広角側まで、すなわち、光軸に対して大きな角度で入射する光に対しても反射率を維持することが可能になる。
誘電体多層膜の材料としては金属酸化膜材料や金属窒化膜または酸窒化膜等を用いることが出来る。また、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等の有機材を使用する事もでき、特に材料を規定する物では無い。
【0037】
(封止部材108)
封止部材108の材料としては、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂あるいはそれらを混合させた樹脂や、ガラスなどの透光性材料を用いることができる。これらのうち、耐光性および成形のしやすさを考慮して、シリコーン樹脂を選択することが好ましい。
【0038】
なお封止部材108には、光拡散材に加え、発光素子105からの光を一部吸収して発光素子からの発光波長とは異なる波長の光を発する蛍光体や量子ドット等の波長変換部材や、発光素子の発光色に対応させて、着色剤を含有させることもできる。
封止部材108にこれらの部材を含有させる場合、配光特性になるべく影響の与えないものを用いることが好ましい。たとえば、含有させる部材の粒径が0.2μm以下のものであれば、配光特性に与える影響が少ないため好ましい。なお、本明細書中において粒径とは平均粒径のことをいうものとし、平均粒径の値は、空気透過法を利用したF.S.S.S.No(Fisher-SubSieve-Sizers-No.)によるものとする。
【0039】
封止部材108は、発光素子105を被覆するように圧縮成型や射出成型によって形成することができる。その他、封止部材108の材料の粘度を最適化して、発光素子105の上に滴下もしくは描画して、材料自体の表面張力によって、形状を制御することも可能である。
【0040】
後者の形成方法による場合には、金型を必要とすることなく、より簡便な方法で封止部材を形成することができる。また、このような形成方法による封止部材の材料の粘度を調整する手段として、その材料本来の粘度の他、上述したような光拡散材、波長変換部材、着色剤を利用して所望の粘度に調整することもできる。
【0041】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の発光装置200を含む発光モジュール300の断面図である。
本実施形態では、発光素子105が複数個、所定の間隔を開けて基体101に実装されており、その発光素子105間に、発光素子の上面(基体101の上面)に対して小さい角度で出射される光を反射させる光反射部材110を配置している。すなわち、発光装置200は、実施形態1の発光装置100を複数備え、各発光装置100の間に光反射部材110が配置された集積型発光装置である。また、発光装置100及び光反射部材110の上方には、発光素子の上面と略平行になるように発光素子105からの光を拡散するための光拡散板111が配置されており、さらにその上に光拡散板111と略平行に発光素子105から発せられる光の一部を別の波長の光に変換する波長変換層112が配置されている。
【0042】
一般に、基体101と光拡散板111の距離(以後、光学距離:ODともいう)/発光素子間隔(以後Pitchともいう)が小さくなるに従い、光拡散板111の面上で発光素子105間の光量が少なくなり暗部が発生する。
しかし、この様に光反射部材110を配置する構成とすることで、発光素子間の光量が光反射部材110による反射光で補われて、より小さなOD/Pitch領域でも光拡散板111の面上での輝度ムラが小さくなる。
具体的には、第2実施形態の発光装置200において、光反射部材110の光反射面の基体101に対する傾斜角度θは、各発光装置100の配光特性を考慮して光拡散板111の面上での輝度ムラが小さくなるように設定する。また、複数配置される発光装置100の配光特性について言えば、光拡散板111の面上における輝度むらを抑えかつ薄型の発光装置200を実現するためには、発光装置100は、配光角が大きい領域、すなわち、配光角が±90°に近いところでの光量が大きくなるような配光特性を有していることが好ましい。
【0043】
例えば、OD/Pitchが0.2以下と小さくなると、発光素子105の発光面を基準にしたときの、光反射部材110へ入射する光は仰角で22゜未満となる。従って低OD/Pitchが0.2以下の場合、光反射部材110による光の反射効率を上げるためには、発光装置100の配光特性は、たとえば、基体の上面に対して仰角20゜未満の光量が多くなっていることが好ましい。具体的には、発光強度の第1及び第2ピークが仰角20゜未満の範囲に位置することが好ましい。ここで、仰角20°とは、図4の配光角の20°及び160°に該当する。すなわち、図4に示すように、発光強度の第1ピークが配光角20゜未満の範囲かつ第2ピークが配光角160°より大きい範囲に位置することが好ましい。また、仰角20゜未満の光量が全体の光量の30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上である。
【0044】
(光反射部材110)
光反射部材110は複数の発光素子105の間に設置される。
材料としては、少なくとも発光素子105の発光波長を反射する材料であれば特に材料は限定されない。たとえば金属板や白色フィラー含有樹脂を好適に用いることができる。
また、光反射部材の反射面として誘電体多層膜を用いることで、吸収の少ない反射面を得ることも出来る。加えて、膜の設計で反射率を任意に調整出来、また、角度により反射率を制御することも可能となる。
【0045】
光反射部材110の高さおよび基体101の表面に対する光反射面の傾斜角度θについては、任意の値を取ることが可能であり、またその反射面は平面であっても曲面であってもよく、所望の配光特性が得られるように最適な傾斜角度θ及び反射面の形状とすることが可能である。光反射部材110の高さは、発光素子間の距離の0.3倍以下、より好ましくは0.2倍以下である事が好ましく、これにより薄型でかつ輝度むらが低減された発光モジュール300を提供することができる。
【0046】
使用温度が大きく変わるような環境で使用される発光装置200では、光反射部材110と基体101との線膨張係数を近づける必要がある。この光反射部材110と基体101間の線膨張係数が大きく違うと、温度変化により発光装置200に反りが発生したり、構成部材間、特に発光装置100と光反射部材110間の位置関係がずれたりして所望の光学特性が得られなくなるためである。しかし線膨張係数は物性値ゆえ選択肢が多くないのが実情である。そこで線膨張係数が大きく異なっていても発光装置200が反らない様に、弾性変形が可能なフィルム成形品で光反射部材110を形成するのが好ましい。弾性変形の小さい材料(無垢材)で光反射部材110を構成すると形状を保持したまま膨張するが、フィルムであれば適度なところで変形して膨張分を吸収することが可能であるからである。
【0047】
また、光反射部材110は、複数の光反射部材110が複数連結されて板状とされており、発光装置200が配置される貫通孔113を有することが好ましい。このような板状の光反射板110’を図8に示す。図8(a)は上面図であり、図8(b)は図8(a)のA-A断面図である。このような光反射板110’は金型成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等で形成することができる。この光反射板110’を基体101の上に配置する。また、光反射部材110は、基体101上に直接光反射性樹脂を描画する等の方法で形成してもよい。光反射部材110の高さは、発光素子間の距離の0.3倍以下であることが好ましく、たとえば、発光素子間の距離の0.2倍以下であることがより好ましい。
【0048】
[実施例1]
本実施例は、図1に示すように、基体101としてガラスエポキシ基材を用い、導体配線として35μmのCu材を用いる。
発光素子105として、平面視が1辺600μmの正方形で、厚みが150μmの窒化物系青色LEDを用い、絶縁部材104にはエポキシ系の白色ソルダーレジストを用いる。
また発光素子105の主面に形成した光反射膜106はSiO2層(82nm)とZrO層(54nm)の繰り返しで11層構成とされている。
この時の光反射膜106の透過率は図2に示す様になり、発光素子の主面側垂直方向(光軸方向)は透過率が低く、光軸から角度がずれると透過率が上昇する。
発光素子105は封止部材108で被覆されている。封止部材108にはシリコーン樹脂を用い、高さ(H)1.0mm,胴径(W)3.0mmとなっている。
この様な構成とすることで、発光素子105から出射した光は、封止部材108と空気界面で屈折し、より配光角が広がる。この時の発光装置100の配光特性は図4の実線で示される。なお、封止部材108を形成しない場合の配光特性を、図4の点線で示す。このように、封止部材108を光反射膜106と共に用いることで、より低OD/Pitchの実現が可能となる。
【0049】
[実施例2]
実施例2は実施例1の発光素子105を複数個、基体101に実装し、その間に光反射部材110を配置している。Pitchは12.5mmとする。
光反射部材110は板状の光反射板とされており、TiOフィラーを含有したポリプロピレン製シート(厚み(t)は0.2mm)で、反射角θ(仰角)が55゜、高さが2.4mmとなるように真空成形法を用いて成形する。光反射部材110は、図8に示すような板状の光反射板であり、絶縁部材104の上に配置されている。
その上に乳白色の光拡散板111と波長変換層112を配置して液晶バックライト(発光モジュール)とする。この様な構成に於いて、光反射部材110の有無を光拡散板111の面上における輝度ムラで比較した結果を図9に示す。図9Aは光反射部材を配置しないものであり、図9Bは光反射部材を配置したものである。図9に示すように、光反射部材を配置しないものは相対輝度が高くなる領域(250pixel~720pixel)において相対輝度が0.6~0.7程度に下がる点があるのに対し、光反射部材を配置した場合は、相対輝度が高くなる領域(250pixel~720pixel)において相対輝度が0.8を下回らないことがわかる。つまり、光反射部材を配置することにより、輝度ムラ改善の効果が確認出来る。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の発光装置および発光モジュールは、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具などに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
100、200 発光装置
300 発光モジュール
101 基体
102 導体配線
103 接続部材
104 絶縁部材
105 発光素子
106 光反射膜
108 封止部材
110 光反射部材
110’光反射板
111 光拡散板
112 波長変換層
113 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図7
図8
図9A
図9B