(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】めっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/12 20060101AFI20221111BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20221111BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20221111BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C25D21/12 C
C25D7/12
C25D17/06 C
C25D17/08 Z
(21)【出願番号】P 2018247443
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】藤方 淳平
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204057(JP,A)
【文献】特開2018-179840(JP,A)
【文献】特開2001-221707(JP,A)
【文献】特表2007-509241(JP,A)
【文献】特開2003-254855(JP,A)
【文献】特開2003-021570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/08
C25D 21/00
C25D 7/12
C25D 17/06
C25D 21/12
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板ホルダを用いて基板をめっきする方法であって、
前記基板のめっき条件に基づいて、簡易漏れ検査、複合漏れ検査、および精密漏れ検査のうちから選択された1つを前記基板ホルダに対して実施し、その後、
前記基板ホルダを用いて前記基板をめっきし、
前記簡易漏れ検査は、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間を真空排気しながら、該内部空間の圧力を測定し、該圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査であり、
前記複合漏れ検査は、前記第1検査と第2検査の組み合わせであって、前記第2検査は、前記真空排気された内部空間を封止し、該封止された内部空間の圧力を測定し、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する検査であり、
前記精密漏れ検査は、前記第1検査、前記第2検査、および第3検査の組み合わせであって、前記第3検査は、前記封止された内部空間の圧力と、マスター容器内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する検査であり、
めっきされる前記基板のシード層の膜厚が予め定められた基準膜厚より大きいときは、前記簡易漏れ検査または前記複合漏れ検査を実施し、めっきされる前記基板のシード層の膜厚が前記予め定められた基準膜厚以下のときは、前記精密漏れ検査を実施する、方法。
【請求項2】
基板ホルダを用いて基板をめっきする方法であって、
前記基板のめっき条件に基づいて、簡易漏れ検査、複合漏れ検査、および精密漏れ検査のうちから選択された1つを前記基板ホルダに対して実施し、その後、
前記基板ホルダを用いて前記基板をめっきし、
前記簡易漏れ検査は、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間を真空排気しながら、該内部空間の圧力を測定し、該圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査であり、
前記複合漏れ検査は、前記第1検査と第2検査の組み合わせであって、前記第2検査は、前記真空排気された内部空間を封止し、該封止された内部空間の圧力を測定し、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する検査であり、
前記精密漏れ検査は、前記第1検査、前記第2検査、および第3検査の組み合わせであって、前記第3検査は、前記封止された内部空間の圧力と、マスター容器内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する検査であり、
めっきされる前記基板のめっき時間が予め定められた基準めっき時間より短いときは、前記簡易漏れ検査または前記複合漏れ検査を実施し、めっきされる前記基板のめっき時間が前記予め定められた基準めっき時間以上のときは、前記精密漏れ検査を実施する、方法。
【請求項3】
前記第1検査は、前記内部空間の圧力が前記所定の第1検査時間内に前記第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成する工程を含む、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2検査は、前記所定の第2検査時間内における前記封止された内部空間の圧力が前記第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成する工程を含む、請求項
1または
2に記載の方法。
【請求項5】
前記第3検査は、前記所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が前記圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成する工程を含む、請求項
1または
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のめっきに使用される基板ホルダのシール状態を検査する漏れ検査方法および漏れ検査装置に関する。また、本発明は、そのような漏れ検査方法および漏れ検査装置を含むめっき方法およびめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置の一例である電解めっき装置は、基板ホルダで保持された基板(例えばウェーハ)をめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することで、基板の表面に導電膜を析出させる。基板のめっき中は、基板ホルダは、めっき液に浸漬されるため、基板の外周部に接触する電気接点にめっき液が接触しないよう、基板の外周部を確実にシールする必要がある。
【0003】
シール状態が不完全な場合、基板の外周部にめっき液が浸入し、電気接点を腐食させて通電を妨げることがある。そこで、基板の外周部をシール部材でシールした後、基板のめっき処理を行う前に、シール部材によって形成された空間内に流体の漏れが生じるか否かを検査する漏れ検査が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記空間内に流体の漏れが生じた場合は、基板ホルダに対して適切な処置を施す必要がある。例えば、シール部材の破損が原因で漏れが発生した場合には、シール部材を交換する必要があり、シール部材に付着した異物が原因で漏れが発生した場合には、シール部材を洗浄する必要がある。このように、漏れの程度に基づいて、基板ホルダに対して適切な処置を施すことが必要である。
【0006】
また、最近では、めっき処理のスループット向上に対する要請が高まりつつある。上述した漏れ検査は、基板めっきの前に実行されるので、めっき液と電気接点との接触に起因しためっき不良を未然に防ぐことが可能である。しかしながら、漏れ検査にはある程度の時間がかかり、スループットの低下につながる。
【0007】
そこで、本発明は、基板のめっき条件に応じた漏れ検査を実施することでスループットを向上させることができるめっき方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、基板のめっきに使用される基板ホルダの漏れ検査方法であって、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間を真空排気しながら、該内部空間の圧力を測定し、該圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査を実施し、前記真空排気された内部空間およびマスター容器の両方を封止し、前記内部空間および前記マスター容器が連通した状態で、該封止された内部空間の圧力を測定し、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する第2検査を実施し、前記封止された内部空間の圧力と、前記マスター容器内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する第3検査を実施する、方法が提供される。
【0009】
一態様では、前記第1検査は、前記内部空間の圧力が前記所定の第1検査時間内に前記第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
一態様では、前記第2検査は、前記所定の第2検査時間内における前記封止された内部空間の圧力が前記第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
一態様では、前記第3検査は、前記所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が前記圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
【0010】
一態様では、基板ホルダを用いて基板をめっきする方法であって、前記基板のめっき条件に基づいて、簡易漏れ検査、複合漏れ検査、および精密漏れ検査のうちから選択された1つを前記基板ホルダに対して実施し、その後、前記基板ホルダを用いて前記基板をめっきし、前記簡易漏れ検査は、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間を真空排気しながら、該内部空間の圧力を測定し、該圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査であり、前記複合漏れ検査は、前記第1検査と第2検査の組み合わせであって、前記第2検査は、前記真空排気された内部空間を封止し、該封止された内部空間の圧力を測定し、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する検査であり、前記精密漏れ検査は、前記第1検査、前記第2検査、および第3検査の組み合わせであって、前記第3検査は、前記封止された内部空間の圧力と、マスター容器内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する検査であり、めっきされる前記基板のシード層の膜厚が予め定められた基準膜厚より大きいときは、前記簡易漏れ検査または前記複合漏れ検査を実施し、めっきされる前記基板のシード層の膜厚が前記予め定められた基準膜厚以下のときは、前記精密漏れ検査を実施する、方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記第1検査は、前記内部空間の圧力が前記所定の第1検査時間内に前記第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
一態様では、前記第2検査は、前記所定の第2検査時間内における前記封止された内部空間の圧力が前記第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
一態様では、前記第3検査は、前記所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が前記圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成する工程を含む。
一態様では、基板ホルダを用いて基板をめっきする方法であって、前記基板のめっき条件に基づいて、簡易漏れ検査、複合漏れ検査、および精密漏れ検査のうちから選択された1つを前記基板ホルダに対して実施し、その後、前記基板ホルダを用いて前記基板をめっきし、前記簡易漏れ検査は、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間を真空排気しながら、該内部空間の圧力を測定し、該圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査であり、前記複合漏れ検査は、前記第1検査と第2検査の組み合わせであって、前記第2検査は、前記真空排気された内部空間を封止し、該封止された内部空間の圧力を測定し、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する検査であり、前記精密漏れ検査は、前記第1検査、前記第2検査、および第3検査の組み合わせであって、前記第3検査は、前記封止された内部空間の圧力と、マスター容器内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する検査であり、めっきされる前記基板のめっき時間が予め定められた基準めっき時間より短いときは、前記簡易漏れ検査または前記複合漏れ検査を実施し、めっきされる前記基板のめっき時間が前記予め定められた基準めっき時間以上のときは、前記精密漏れ検査を実施する、方法が提供される。
【0012】
一態様では、基板のめっきに使用される基板ホルダの漏れ検査装置であって、前記基板ホルダのシールによって形成される内部空間に連通する真空ラインと、前記真空ラインに接続された第1開閉弁と、前記真空ラインに接続された第2開閉弁と、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁の動作を制御する動作制御部と、前記内部空間の圧力を測定する圧力測定器と、前記真空ラインに連通するマスター容器と、前記内部空間の圧力と前記マスター容器内の圧力との圧力差を測定する差圧計とを備え、前記圧力測定器は、前記真空ラインの基板ホルダ側端部と、前記第2開閉弁との間を延びる前記真空ラインに接続されており、前記マスター容器は、前記第1開閉弁と前記第2開閉弁との間を延びる前記真空ラインに連結されており、前記圧力測定器、前記第2開閉弁、および前記第1開閉弁は、前記圧力測定器、前記第2開閉弁、前記第1開閉弁の順に前記真空ラインに沿って直列に配列されており、前記動作制御部は、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を開くことによって前記内部空間に真空圧力を形成しながら、前記内部空間の圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出し、前記第1開閉弁を閉じることによって、真空圧力が形成された前記内部空間およびマスター容器の両方を封止し、前記内部空間および前記マスター容器が連通した状態で、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出するように構成されている、漏れ検査装置が提供される。
【0013】
一態様では、前記動作制御部は、前記内部空間の圧力が前記所定の第1検査時間内に前記第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記所定の第2検査時間内における前記封止された内部空間の圧力が前記第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記第2開閉弁を閉じることによって前記内部空間と前記マスター容器との連通を遮断し、所定の第3検査時間内における該封止された内部空間の圧力と、前記マスター容器内の真空圧力との圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が前記圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成するように構成されている。
【0014】
一態様では、めっき液を内部に保持するめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、基板を着脱自在に保持して、前記基板を前記めっき槽内のめっき液に浸漬させる基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダに保持された前記基板との間に電圧を印加するめっき電源と、上記漏れ検査装置を備えためっき装置が提供される。
【0015】
一参考例では、前記動作制御部は、前記第1開閉弁および前記第2開閉弁を開くことによって前記内部空間に真空圧力を形成しながら、前記内部空間の圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出するステップを前記動作制御部に実行させる第1検査プログラムを備えている。
一参考例では、前記第1検査プログラムは、前記内部空間の圧力が前記所定の第1検査時間内に前記第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成するステップを前記動作制御部に実行させるプログラムを含む。
一参考例では、前記動作制御部は、前記第1開閉弁を閉じることによって真空圧力が形成された前記内部空間を封止するステップと、所定の第2検査時間内における該封止された内部空間の圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出するステップを前記動作制御部に実行させる第2検査プログラムを備えている。
一参考例では、前記第2検査プログラムは、前記所定の第2検査時間内における前記封止された内部空間の圧力が前記第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成するステップを前記動作制御部に実行させるプログラムを含む。
一参考例では、前記動作制御部は、前記第2開閉弁を閉じることによって前記内部空間と前記マスター容器との連通を遮断するステップと、所定の第3検査時間内における該封止された内部空間の圧力と、前記マスター容器内の真空圧力との圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出するステップを前記動作制御部に実行させる第3検査プログラムを備えている。
一参考例では、前記第3検査プログラムは、前記所定の第3検査時間内における前記圧力差の上昇幅が前記圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成するステップを前記動作制御部に実行させるプログラムを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、3段階で漏れ検査を実施することにより、より細かく漏れの程度を判別することができる。さらに本発明によれば、基板のめっき条件に基づいて選択された漏れ検査を実施することで、スループットを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】めっき装置の一例である電解めっき装置の一実施形態を示す縦断正面図である。
【
図4】基板ホルダが開いた状態を示す模式断面図である。
【
図5】基板ホルダのシールのシール状態を検査するための漏れ検査装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図6】基板ホルダの漏れ検査方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【
図7】基板ホルダの漏れ検査方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【
図8】ステップ2における漏れ検査装置の状態を示す模式図である。
【
図9】ステップ6における漏れ検査装置の状態を示す模式図である。
【
図10】ステップ10における漏れ検査装置の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、めっき装置の一例である電解めっき装置の一実施形態を示す縦断正面図である。
図1に示すように、電解めっき装置はめっき槽10を備えている。めっき槽10の内部には、めっき液が保持される。めっき槽10に隣接して、めっき槽10の縁から溢れ出ためっき液を受け止めるオーバーフロー槽12が設けられている。
【0019】
オーバーフロー槽12の底部には、ポンプ14が設けられためっき液循環ライン16の一端が接続され、めっき液循環ライン16の他端は、めっき槽10の底部に接続されている。オーバーフロー槽12内に溜まっためっき液は、ポンプ14の駆動に伴ってめっき液循環ライン16を通ってめっき槽10内に戻される。めっき液循環ライン16には、ポンプ14の下流側に位置して、めっき液の温度を調節する温調ユニット20と、めっき液内の異物を除去するフィルタ22が介装されている。
【0020】
電解めっき装置は、ウェーハなどの基板(被めっき体)Wを着脱自在に保持して、基板Wを鉛直状態でめっき槽10内のめっき液に浸漬させる基板ホルダ24を備えている。さらに、電解めっき装置は、めっき槽10内に配置されたアノード26と、このアノード26を保持するアノードホルダ28と、めっき電源30とを備えている。基板Wを保持した基板ホルダ24がめっき槽10に設置されると、基板Wとアノード26とはめっき槽10内で互いに向き合う。基板Wの表面(被めっき面)には、あらかじめ導電層(例えばシード層)が形成されている。アノード26はめっき電源30の正極に電気的に接続されており、基板Wの導電層は基板ホルダ24を介してめっき電源30の負極に接続されている。めっき電源30がアノード26と基板Wとの間に電圧を印加すると、基板Wはめっき液の存在下でめっきされ、基板Wの表面に金属(例えば銅)が析出する。
【0021】
基板ホルダ24とアノード26との間には、基板Wの表面と平行に往復運動してめっき液を攪拌するパドル32が配置されている。めっき液をパドル32で攪拌することで、十分な金属イオンを基板Wの表面に均一に供給することができる。更に、パドル32とアノード26との間には、基板Wの全面に亘る電位分布をより均一にするための誘電体からなる調整板(レギュレーションプレート)34が配置されている。
【0022】
図2は、基板ホルダ24を示す模式正面図であり、
図3は、基板ホルダ24を示す模式断面図である。基板ホルダ24は、ウェーハなどの基板Wを電解めっきするための電解めっき装置に使用される。基板ホルダ24は、基板Wを保持する第1保持部材38および第2保持部材40を有している。第2保持部材40は、連結機構41によって第1保持部材38に固定される。
【0023】
連結機構41は、第1保持部材38に固定された複数の第1連結部材42と、第2保持部材40に固定された複数の第2連結部材43とを備えている。複数の第2連結部材43は、第2保持部材40の外面に取り付けられている。第1連結部材42と第2連結部材43は互いに係合可能に構成される。第1連結部材42と第2連結部材43を互いに係合させると、第2保持部材40は第1保持部材38に固定される(基板ホルダ24が閉じる)。第1連結部材42と第2連結部材43との係合を解除すると、第2保持部材40は第1保持部材38から離れる(基板ホルダ24が開く)ことが可能となる。
図4は、基板ホルダ24が開いた状態を示す模式断面図である。
【0024】
第1保持部材38は、基板Wの裏側の面を支持する基板支持面38aを有している。基板Wは基板支持面38a上に載置される。第2保持部材40は、基板Wの表側の面よりも小さい開口部40aを有している。本実施形態では、開口部40aは円形であり、開口部40aの直径は、基板Wの直径よりも小さい。基板Wを基板ホルダ24で保持した時に、基板Wの表側の面はこの開口部40aから露出する。基板Wの表側の面は、めっきされる面である。
【0025】
基板ホルダ24は、シール45を備えている。具体的には、基板ホルダ24の第2保持部材40は、無端状の第1シール48および無端状の第2シール47を有しており、シール45は、第1シール48および第2シール47から構成されている。第1シール48および第2シール47はOリングなどのシール部材でもよい。一実施形態では、第1シール48および第2シール47を含む第2保持部材40自体がシール機能を有する材料から構成されてもよく、第1シール48と第2シール47は第2保持部材40と一体であってもよい。本実施形態では、第1シール48および第2シール47は環状であり、同心状に配置されている。第2シール47は第1シール48の半径方向外側に配置されている。第2シール47の大きさ(直径)は、第1シール48の大きさ(直径)よりも大きい。基板の被めっき面が下向きの状態で、基板ホルダをめっき槽に水平に配置するフェースダウンタイプのめっき装置では、第2シール47は省略してもよい。
【0026】
基板Wの裏側の面が基板支持面38aに支持された状態で、第2保持部材40を第1保持部材38に連結機構41で固定すると、第1シール48は基板Wの表側の面(めっきされる面)の外周部に押し付けられ、第2シール47は第1保持部材38に押し付けられる。第1シール48は、第2保持部材40と基板Wの表側の面との間の隙間を封止し、第2シール47は、第1保持部材38と第2保持部材40との間の隙間を封止する。その結果、基板ホルダ24内には内部空間Rが形成される。
【0027】
上記内部空間Rは、シール45により形成される。具体的には、内部空間Rは、第1保持部材38と、第2保持部材40と、第1シール48と、第2シール47と、基板Wとにより形成される。基板ホルダ24は、この内部空間R内に配置された複数の第1電気接点54と、複数の第2電気接点50とを有している。第1電気接点54は、第1保持部材38に固定されており、第2電気接点50は、第2保持部材40に固定されている。基板Wが基板ホルダ24に保持されたときに、第2電気接点50の一端は、基板Wの周縁部に接触するように配置されており、基板ホルダ24が閉じているとき、第2電気接点50の他端は、第1電気接点54の一端に接触するように配置されている。複数の第1電気接点54の他端は、第1保持部材38内を延びる複数の電線(図示せず)にそれぞれ接続されている。基板ホルダ24が
図1に示すめっき槽10に設置されたとき、第1電気接点54は、上記電線を介して
図1に示すめっき電源30に電気的に接続される。
【0028】
第1保持部材38の内部には、内部通路55が形成されており、第1保持部材38の外面には外側に開口する吸引ポート57が設けられている。内部通路55の一端は、吸引ポート57に繋がっており、他端は内部空間Rに繋がっている。内部空間Rは、内部通路55を通じて吸引ポート57に連通している。
【0029】
図5は、基板ホルダ24のシール45のシール状態を検査するための漏れ検査装置100の一実施形態を示す模式図である。シール45のシール状態の検査は、負圧の内部空間R内にシール45を通じて空気が漏れる(侵入する)か否かを検査することによって行われる。この漏れ検査は、基板ホルダ24が基板W、あるいはダミー基板(ダミーウェーハ)を保持している状態で行われる。シール45がそのシール機能を正しく発揮していないと、内部空間R内に空気が侵入し、その結果内部空間Rの圧力が変化する。上記漏れ検査は、内部空間Rの圧力変化を検出することによって行われる。本実施形態では、漏れ検査装置100は、上述しためっき装置の外に設けられている。一実施形態では、漏れ検査装置100は、上述しためっき装置に備えられていてもよい。
【0030】
図5に示すように、漏れ検査装置100は、真空ポンプ等の真空源112から延びる真空ライン114と、内部空間Rの圧力を制御する圧力調整弁115と、内部空間Rの圧力を測定する圧力測定器117と、真空ライン114に連通するマスター容器120と、内部空間Rの圧力とマスター容器120内の圧力との圧力差を測定する差圧計126とを備えている。マスター容器120は、漏れが生じないことが保証された容器である。圧力調整弁115および圧力測定器117は真空ライン114に接続されている。真空ライン114には第1開閉弁128および第2開閉弁129がさらに接続されている。真空源112の例として、工場の真空ラインや、真空ポンプ(エジェクターなど)が挙げられる。
【0031】
真空ライン114の一端(真空源側端部)は真空源112に接続されており、他端(基板ホルダ側端部)はシールリング104を備えた吸引継手106に接続されている。吸引継手106は、連結板110を介してエアシリンダ等のアクチュエータ108に連結されている。アクチュエータ108は、吸引継手106のシールリング104を、基板ホルダ24の吸引ポート57に押し付けて、吸引継手106を基板ホルダ24に接続することができる。吸引継手106を基板ホルダ24に接続すると、真空ライン114は、吸引継手106、吸引ポート57、および内部通路55を通じて内部空間Rに連通する。漏れ検査装置100は、動作制御部109をさらに備えており、アクチュエータ108は動作制御部109からの指示に従って動作する。
【0032】
圧力測定器117は、真空ライン114の基板ホルダ側端部と、第2開閉弁129との間を延びる真空ライン114に接続されている。圧力測定器117、第2開閉弁129、第1開閉弁128、および圧力調整弁115は、基板ホルダ側端部から圧力測定器117、第2開閉弁129、第1開閉弁128、圧力調整弁115の順に真空ライン114に沿って直列に配列されている。
【0033】
マスター容器120は、第1開閉弁128と、第2開閉弁129との間を延びる真空ライン114に連結されている。具体的には、マスター容器120は、第1開閉弁128と第2開閉弁129との間を延びる真空ライン114に接続されたマスター容器吸引ライン131の端部に接続されている。マスター容器120は、マスター容器吸引ライン131を通じて真空ライン114に連通している。
【0034】
差圧計126は、第1差圧検査ライン132を通じてマスター容器120に接続されており、かつ第2差圧検査ライン133を通じて、圧力測定器117と第2開閉弁129との間を延びる真空ライン114に接続されている。これにより、吸引継手106を基板ホルダ24に接続したときに、差圧計126は、内部空間Rの圧力とマスター容器120内の圧力との圧力差を測定可能となる。
【0035】
圧力測定器117、第1開閉弁128、第2開閉弁129、差圧計126、および圧力調整弁115は、動作制御部109に電気的に接続されている。動作制御部109は、第1開閉弁128および第2開閉弁129を開閉するように構成されており、第1開閉弁128および第2開閉弁129の動作は、動作制御部109によって制御される。
【0036】
動作制御部109は、所定の設定圧力値を圧力調整弁115に送信し、圧力調整弁115は、上記設定圧力値に従って、内部空間Rの圧力を制御するように構成されている。このような圧力調整弁115の例として、電空レギュレータが挙げられる。圧力測定器117は、内部空間Rの圧力の測定値を動作制御部109に送信するように構成されており、差圧計126は、内部空間Rの圧力とマスター容器120内の圧力との圧力差の測定値を動作制御部109に送信するように構成されている。
【0037】
一実施形態では、圧力調整弁115は、手動式減圧弁であってもよく、第1開閉弁128および第2開閉弁129は、手動で開閉される手動弁であってもよい。
【0038】
動作制御部109は、専用のコンピュータまたは汎用のコンピュータから構成されている。動作制御部109は、その内部に記憶装置109aと、演算装置109bを備えている。演算装置109bは、記憶装置109aに格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置109aは、演算装置109bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0039】
動作制御部109は、第1開閉弁128および第2開閉弁129を開くことによって内部空間Rに真空圧力を形成しながら、内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出するステップを動作制御部109に実行させる第1検査プログラムを有する。動作制御部109は、第1開閉弁128を閉じることによって真空圧力が形成された内部空間Rを封止するステップと、所定の第2検査時間内における封止された内部空間Rの圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出するステップを動作制御部109に実行させる第2検査プログラムをさらに有する。動作制御部109は、第2開閉弁129を閉じることによって内部空間Rとマスター容器120との連通を遮断するステップと、所定の第3検査時間内における封止された内部空間Rの圧力と、マスター容器120内の真空圧力との圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出するステップを動作制御部109に実行させる第3検査プログラムをさらに有する。
【0040】
第1検査プログラムは、内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達しなかった場合に、アラーム信号を生成するステップを動作制御部109に実行させるプログラムを含む。第2検査プログラムは、所定の第2検査時間内における封止された内部空間Rの圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇した場合に、アラーム信号を生成するステップを動作制御部109に実行させるプログラムを含む。第3検査プログラムは、所定の第3検査時間内における上記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値を超えた場合に、アラーム信号を生成するステップを動作制御部109に実行させるプログラムを含んでいる。
【0041】
基板ホルダ24の漏れ検査方法の一実施形態について、
図6および
図7に示すフローチャートに沿って説明する。
ステップ1では、漏れ検査装置100を基板ホルダ24に接続する。具体的には、動作制御部109は、アクチュエータ108を作動させ、吸引継手106のシールリング104を、基板ホルダ24の吸引ポート57に押し付けて、吸引継手106を基板ホルダ24に接続する。これにより、真空ライン114は、内部空間Rに連通する。
【0042】
ステップ2~5では、基板ホルダ24の内部空間Rを真空排気しながら、内部空間Rの圧力を測定し、上記内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する第1検査を実施する。具体的には、動作制御部109は、第1検査プログラムに従って動作し、第1開閉弁128および第2開閉弁129を開くことによって内部空間Rに真空圧力を形成しながら、上記内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出する。
【0043】
ステップ2~5における漏れ検査装置100の具体的な動作は以下の通りである。ステップ2では、圧力調整弁115の圧力を設定し、第1開閉弁128および第2開閉弁129を開く。具体的には、動作制御部109は、設定圧力値を圧力調整弁115に送信し、第1開閉弁128および第2開閉弁129を開く。
図8は、ステップ2における漏れ検査装置100の状態を示す模式図である。
図8において、白で描かれている弁は開いている状態を示している。圧力調整弁115は、上記設定圧力値に従って、内部空間Rおよびマスター容器120内の圧力を制御する。これにより、内部空間Rおよびマスター容器120内が真空排気される。
【0044】
一実施形態では、第2開閉弁129を閉じた状態で予めマスター容器120内だけを真空排気した後、第2開閉弁129を開くことによって、内部空間Rを真空排気してもよい。このようにすることにより、内部空間Rの圧力が所定の設定圧力値に到達する時間を短縮することができる。
【0045】
圧力調整弁115が手動式減圧弁で、かつ第1開閉弁128および第2開閉弁129が手動弁である場合は、圧力調整弁115の制御圧力の設定および開閉弁128,129の開閉は、ユーザーが手動で行ってもよい。圧力調整弁115として手動式減圧弁を用いる場合、所望の設定圧力値より低い圧力を上記手動式減圧弁に設定してもよい。これにより、内部空間Rの圧力が所定の設定圧力値に到達する時間を短縮することができる。
【0046】
ステップ3では、内部空間Rを真空排気しながら圧力測定器117によって内部空間Rの圧力を測定する。圧力測定器117は、上記圧力の測定値を動作制御部109に送信する。
【0047】
ステップ4では、動作制御部109は、内部空間Rの圧力を所定の第1の圧力しきい値と比較し、上記圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したか否かを判定する。内部空間R内への空気の漏れがない場合、内部空間Rの圧力は、第1の圧力しきい値に到達する。一方、内部空間R内への空気の漏れがある場合、上記圧力は第1の圧力しきい値には到達できない。第1の圧力しきい値は、大気圧よりも小さく、かつ圧力調整弁115の上記設定圧力値と同じか、それよりも大きい値である。
【0048】
動作制御部109は、内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達したことを検出した場合は、漏れなしと判断し、後述する第2検査を実施する。動作制御部109は、内部空間Rの圧力が所定の第1検査時間内に第1の圧力しきい値に達しなかったことを検出した場合は、アラーム信号を生成し(ステップ5)、ユーザーに基板ホルダ24のメンテナンス等の措置を促す。
【0049】
第1検査は、基板Wが基板ホルダ24に正しく保持されていないなどの明らかなオペレーションミスや、部品の欠損等に起因した、比較的大きな漏れを検出することができる。
【0050】
ステップ6~9では、真空排気された内部空間Rを封止し、封止された内部空間Rの圧力を測定し、所定の第2検査時間内における封止された内部空間Rの圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する第2検査を実施する。具体的には、動作制御部109は、第2検査プログラムに従って動作し、第1開閉弁128を閉じることによって真空圧力が形成された内部空間Rを封止し、所定の第2検査時間内における封止された内部空間Rの圧力が第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出する。
【0051】
ステップ6~9における漏れ検査装置100の具体的な動作は以下の通りである。ステップ6では、動作制御部109は、第1開閉弁128を閉じる。
図9は、ステップ6における漏れ検査装置100の状態を示す模式図である。
図9において、黒で描かれている弁は閉じられている状態を示し、白で描かれている弁は開いている状態を示している。第1開閉弁128を閉じると、内部空間Rおよびマスター容器120の両方が封止される。第1開閉弁128および第2開閉弁129が手動弁である場合は、ユーザーが手動で第1開閉弁128を閉じてもよい。
【0052】
ステップ7では、圧力測定器117によって上記封止された内部空間Rの圧力を測定する。圧力測定器117は、上記圧力の測定値を動作制御部109に送信する。
【0053】
ステップ8では、動作制御部109は、内部空間Rの圧力を所定の第2の圧力しきい値と比較し、上記圧力が所定の第2検査時間内に第2の圧力しきい値を超えて上昇したか否かを判定する。内部空間R内への空気の漏れがない場合、内部空間Rおよびマスター容器120内の圧力は上昇しない(すなわち変化しない)。一方、内部空間R内への空気の漏れがある場合、上記圧力は徐々に上昇する。
【0054】
動作制御部109は、内部空間Rの圧力が所定の第2検査時間内に第2の圧力しきい値を超えて上昇しないことを検出した場合は、漏れなしと判断し、後述する第3検査を実施する。動作制御部109は、内部空間Rの圧力が所定の第2検査時間内に第2の圧力しきい値を超えて上昇したことを検出した場合は、アラーム信号を生成し(ステップ9)、ユーザーに基板ホルダ24のメンテナンス等の措置を促す。本実施形態では、第2検査時間は第1検査時間よりも長い。本実施形態では、第2の圧力しきい値は、内部空間Rの圧力の最下点に所定の上昇幅を加えた相対値である。一実施形態では、第2の圧力しきい値は圧力の絶対値としてもよい。第2の圧力しきい値は、第1の圧力しきい値と同じでもよく、第1の圧力しきい値よりも大きくても小さくてもよい。一例として、設定圧力値が-5kPaのとき、第2の圧力しきい値を-4kPaとしてもよい。
【0055】
第2検査では、漏れ検査装置100は、第1シール48の変形等に起因した、比較的小さな漏れを検出することができる。
【0056】
ステップ10~13では、封止された内部空間Rの圧力と、マスター容器120内の真空圧力との圧力差を測定し、所定の第3検査時間内における上記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する第3検査を実施する。具体的には、動作制御部109は、第3検査プログラムに従って動作し、第2開閉弁129を閉じることによって内部空間Rとマスター容器120との連通を遮断し、所定の第3検査時間内における封止された内部空間Rの圧力と、マスター容器120内の真空圧力との圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出する。
【0057】
ステップ10~13の漏れ検査装置100の具体的な動作は以下の通りである。ステップ10では、動作制御部109は、第2開閉弁129を閉じる。
図10は、ステップ10における漏れ検査装置100の状態を示す模式図である。
図10において、黒で描かれている弁は閉じられている状態を示している。第1開閉弁128および第2開閉弁129の両方が閉じられた状態にあるとき、真空圧力が形成された内部空間Rと、同じく真空圧力が形成されたマスター容器120内とは分離して封止される。第1開閉弁128および第2開閉弁129が手動弁である場合は、ユーザーが手動で第2開閉弁129を閉じてもよい。
【0058】
ステップ11では、差圧計126は、上記封止された内部空間Rの圧力と、上記封止されたマスター容器120内の圧力との圧力差を測定する。差圧計126は、上記圧力差の測定値を動作制御部109に送信する。
【0059】
ステップ12では、動作制御部109は、上記圧力差を所定の圧力差しきい値と比較し、上記圧力差の上昇幅が所定の第3検査時間内において圧力差しきい値以下に維持されているか否かを判定する。内部空間R内への空気の漏れがない場合、上記圧力差の上昇幅は圧力差しきい値以下に維持される。一方、内部空間R内への空気の漏れがある場合、上記圧力差は圧力差しきい値を超えて上昇する。
【0060】
動作制御部109は、所定の第3検査時間内における上記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値以下に維持されていることを検出した場合は、漏れなしと判断し、漏れ検査を終了する。漏れ検査終了後、
図1に示すめっき装置は、上記検査を終了した基板ホルダ24を用いて基板Wをめっきする。動作制御部109は、所定の第3検査時間内における上記圧力差の上昇幅が圧力差しきい値を超えたことを検出した場合は、アラーム信号を生成し(ステップ13)、ユーザーに基板ホルダ24のメンテナンス等の措置を促す。
【0061】
第3検査では、漏れ検査装置100は、基板Wと第1シール48の間に小さな異物が挟まったこと等に起因した、微小な漏れを検出することができる。上述のように、封止された内部空間Rの真空圧力と、封止されたマスター容器120内の真空圧力の圧力差を測定することで、圧力測定器117を使用して内部空間Rの圧力変化を直接測定する方法に比較して、内部空間Rの微小な圧力変化をより正確に検出することができる。
【0062】
一実施形態では、基板Wのめっき条件に基づいて、上記第1検査のみを実施する簡易漏れ検査と、上記第1検査と上記第2検査を実施する複合漏れ検査と、上記第1検査、上記第2検査、および上記第3検査を実施する精密漏れ検査のうちのいずれかを選択して実施してもよい。漏れ検査終了後、
図1に示すめっき装置は上記検査を終了した基板ホルダ24を用いて基板Wをめっきする。
【0063】
上記基板Wのめっき条件として、めっきされる基板のシード層の膜厚や、めっきされる基板のめっき時間等が挙げられる。例えば、上記シード層の膜厚が大きい場合は、微小な漏れを許容してもよい。上記めっき時間が短い場合も同様に、微小な漏れを許容してもよい。したがって、シード層の膜厚が大きい場合、またはめっき時間が短い場合は、簡易漏れ検査または複合漏れ検査が選択される。一方、シード層の膜厚が小さい場合、またはめっき時間が長い場合は、微小な漏れも許容されないので、精密漏れ検査が選択される。
【0064】
めっき液などの液体が内部空間R内に侵入すると、電気接点50,54やシード層の腐食が起こる可能性がある。上記腐食が生じると、めっきされる基板に供給される電流が不均一になり、めっき膜の厚さの均一性に影響を与える。シード層の膜厚が小さい場合は、シード層の膜厚が大きい場合と比べて、上記腐食がめっき膜の厚さの均一性に与える影響が大きくなる。よって、シード層の膜厚が大きい場合は微小な漏れを許容してもよい。一方、シード層の膜厚が小さい場合は、めっき膜の厚さの均一性が悪化する可能性が高いため、微小な漏れも許容されない。
【0065】
本実施形態では、めっきされる基板のシード層の膜厚が予め定められた基準膜厚より大きい場合、またはめっきされる基板のめっき時間が予め定められた基準めっき時間より短い場合は、精密漏れ検査を実施せず、簡易漏れ検査、または複合漏れ検査のうちのいずれかを実施する。簡易漏れ検査、または複合漏れ検査のうちのいずれかを実施することにより、検査時間を短縮し、スループットを向上させることができる。
【0066】
めっきされる基板のシード層の膜厚が小さい場合は、めっき液によって上記基板のシード層が浸食されると短時間で通電が妨げられる状態に至るため、微小な漏れも許容できない。上記基板のめっき時間が長い場合も同様に、基板ホルダ24が長時間めっき液に浸漬されるため微小な漏れも許容できない。したがって、めっきされる基板のシード層の膜厚が予め定められた基準膜厚以下のとき、またはめっきされる基板のめっき時間が予め定められた基準めっき時間以上のときは、精密漏れ検査を実施する。
【0067】
上述した実施形態によれば、3段階で漏れ検査を実施することにより、より細かく漏れの程度を判別することができる。また、基板のめっき条件に基づいて選択された漏れ検査を実施することで、スループットを向上させることができる。
【0068】
今まで説明した各実施形態における基板Wは、ウェーハなどの円形の基板であるが、本発明は四角形の基板にも適用することができる。四角形の基板を保持するための基板ホルダ24の各構成部材は、その基板の形状に適合する形状を有する。例えば、上述した開口部40aは、四角形の基板全体のサイズよりも小さい四角形の開口部とされる。第2シール47、第1シール48などの各種シール要素も、四角形の基板の形状に適合する形状とされる。その他の各構成部材の形状も、上述した技術思想から逸脱しない範囲内で適宜変更される。
【0069】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 めっき槽
12 オーバーフロー槽
14 ポンプ
16 めっき液循環ライン
20 温調ユニット
22 フィルタ
24 基板ホルダ
26 アノード
28 アノードホルダ
30 めっき電源
32 パドル
34 調整板(レギュレーションプレート)
38 第1保持部材
38a 基板支持面
40 第2保持部材
40a 開口部
41 連結機構
42 第1連結部材
43 第2連結部材
45 シール
47 第2シール
48 第1シール
50 第2電気接点
54 第1電気接点
55 内部通路
57 吸引ポート
100 漏れ検査装置
104 シールリング
106 吸引継手
108 アクチュエータ
109 動作制御部
109a 記憶装置
109b 演算装置
110 連結板
112 真空源
114 真空ライン
115 圧力調整弁
117 圧力測定器
120 マスター容器
126 差圧計
128 第1開閉弁
129 第2開閉弁
131 マスター容器吸引ライン
132 第1差圧検査ライン
133 第2差圧検査ライン