(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】クエン酸第二鉄水和物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/43 20060101AFI20221111BHJP
C07C 59/265 20060101ALI20221111BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20221111BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20221111BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221111BHJP
C07F 15/02 20060101ALN20221111BHJP
【FI】
C07C51/43
C07C59/265
A61K33/26
A61P13/12
A61P7/00
C07F15/02
(21)【出願番号】P 2019080125
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康平
(72)【発明者】
【氏名】宮奥 隆行
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-162522(JP,A)
【文献】特表2018-500308(JP,A)
【文献】特表2018-526349(JP,A)
【文献】特表2006-518391(JP,A)
【文献】特開2013-177416(JP,A)
【文献】特表2009-504777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、及び水溶性有機溶媒を含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体より、クエン酸第二鉄水和物を得る製造方法であって、
クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~
56.2g(40~
56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を
、0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥することを特徴とするクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
【請求項2】
前記減圧乾燥の乾燥温度が5~50℃の範囲で行う請求項
1記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンから選択される少なくとも1種である請求項1
又は2に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
【請求項4】
前記クエン酸第二鉄水和物の湿体100g(100質量部)当たり、前記水溶性有機溶媒を0.3g(0.3質量部)を超え70.0g(70.0質量部)以下の範囲で含有する請求項1~
3のいずれか一項に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
【請求項5】
クエン酸第二鉄水和物を、水及び水溶性有機溶媒を含む溶媒と接触させて、クエン酸第二鉄無水物100g(100質量部)当たり、水を40~
56.2g(40~
56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を得、次いで該湿体を
、0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥させる1~
4のいずれか一項に記載のクエン酸第二鉄水和物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクエン酸第二鉄水和物の製造方法に関する。詳しくは、有機溶媒の含有量が低減されたクエン酸第二鉄を簡便に得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クエン酸第二鉄水和物は、三価の鉄である第二鉄とクエン酸由来の分子構造とを含む化合物であり、腎不全患者における高リン酸血症の治療薬として好適に利用できることが知られている(特許文献1又は2参照)。
【0003】
ここで、クエン酸第二鉄水和物は血中で溶解し、第二鉄イオンがリン酸塩と結合して生じるリン酸第二鉄化合物が消化管内で析出することによって、血中のリン酸塩が体内から除去されること、さらにクエン酸第二鉄由来のクエン酸は重炭酸塩へと変換されることによって腎不全患者の症状が改善することが知られている。
【0004】
このようなクエン酸第二鉄水和物の製造方法として、特許文献1及び2では、塩化第二鉄・六水和物を水酸化ナトリウム等のアルカリによって、水酸化第二鉄を生成し、次いで水溶液中でクエン酸と反応させることによってクエン酸第二鉄水和物を含む水溶液を得た後、該水溶液をアセトン等の水溶性有機溶媒に滴下し、クエン酸第二鉄水和物を固体として析出させて製造する方法が知られている。
【0005】
一方、高リン酸血症の治療としてクエン酸第二鉄水和物を使用する際には、血中にクエン酸第二鉄水和物を大量に溶解させる必要がある。そこで、特許文献1及び特許文献2では上記方法にて血中での溶解速度及び溶解度が高い非晶質のクエン酸第二鉄水和物を得る方法が開示されている。さらに特許文献2では、BET比表面積で20~45m2/gのクエン酸第二鉄水和物が得られることが記載されている。
【0006】
上記方法にて得られたクエン酸第二鉄水和物を、遠心分離等の方法により固液分離し、クエン酸第二鉄水和物の湿体を得た後、周囲温度による真空乾燥、流動層乾燥等の乾燥方法による乾燥と、すり鉢等を用いた粉砕や篩掛けを複数回繰り返すことにより乾燥体を得ている。また、特許文献2においても、クエン酸第二鉄水和物の湿体の乾燥方法として、単に乾燥する、或いは、真空乾燥することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4964585号
【文献】特許第5944077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献記載の製造方法により、比表面積が大きなクエン酸第二鉄水和物を製造することができるが、特許文献1記載の方法による乾燥操作は、非常に煩雑である点でなお改善の余地があった。一方、本発明者らによって、真空乾燥等による簡便な乾燥方法を検討したところ、真空乾燥のみではクエン酸第二鉄水和物に含まれる水溶性有機溶媒が、低減し難いことが判明した。具体的には、乾燥温度や真空圧力に関わらず、真空乾燥後においても、0.3~2.8質量%程度の水溶性有機溶媒がクエン酸第二鉄水和物に残存することが判明した。医薬品原薬の有機溶媒の含有量の限度値に関して、ICHガイドラインQ3Cにおいて、指針が示されており、例えば、アセトンはクラス3に分類され、その限度値は0.5質量%以下である。当然のことながら、当該範囲の中でも、より少ないことが望まれる。しかしながら、上記の通り、真空乾燥のみで上記ガイドラインの限度値を満たすことが困難な場合があることが判明した。また、クエン酸第二鉄水和物の比表面積が大きい場合、より水溶性有機溶媒が低減し難く、具体的には、比表面積が約20m2/gのクエン酸第二鉄の場合、真空乾燥後の水溶性有機溶媒の含有量が0.3~1.3質量%であり、約40m2/gの場合、0.5~1.9質量%、約60m2/gを超える場合、0.7~2.8質量%であった。以上より、比表面積が大きなクエン酸第二鉄水和物を製造する場合に、水溶性有機溶媒の低減が課題であることが明らかとなった。
【0009】
一方、流動層乾燥は一般的に熱風や蒸気等の熱媒と乾燥対象物とを接触させることにより加熱乾燥を行うが、それによればクエン酸第二鉄水和物に含まれる水溶性有機溶媒をガイドラインの限度値以下とすることができる。しかしながら、本発明者らの検討により、クエン酸第二鉄水和物は熱に対して不安定であること、当該乾燥方法によってクエン酸第二鉄水和物の純度が大幅に低下するのみならず、さらに、比表面積も同様に大幅に低下してしまうことが判明した。
【0010】
すなわち、本願発明の目的は、医薬品として好適に利用できる、高純度で、高比表面積を有する有機溶媒の含有量が低減されたクエン酸第二鉄水和物を簡便な乾燥操作により得る製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に対し本発明者らは、クエン酸第二鉄水和物の乾燥方法について鋭意検討を行った。その結果、水溶性有機溶媒を多く含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を、該湿体中に水が多く存在した状態で、乾燥させることにより、クエン酸第二鉄水和物の比表面積の大小に寄らず、湿体中に含有する水溶性有機溶媒を大幅に低減させることができるという知見を得た。また、上記乾燥方法によって得られたクエン酸第二鉄水和物の純度及び比表面積は、乾燥前の水準を維持できることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、水、及び水溶性有機溶媒を含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体より、クエン酸第二鉄水和物を得る製造方法であって、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~56.2g(40~56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を、0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥することを特徴とするクエン酸第二鉄水和物の製造方法である。本発明の製造方法は以下の態様を好適に採り得る。
1)前記減圧乾燥の乾燥温度が5~50℃の範囲で行うこと。
2)前記水溶性有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンから選択される少なくとも1種であること。
3)前記クエン酸第二鉄水和物の湿体100g(100質量部)当たり、前記水溶性有機溶媒を0.3g(0.3質量部)を超え70.0g(70.0質量部)以下の範囲で含有すること。
4)クエン酸第二鉄水和物を、水及び水溶性有機溶媒を含む溶媒と接触させて、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~56.2g(40~56.2質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を得、次いで該湿体を0.1~20kPaの範囲で減圧乾燥させること。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、水溶性有機溶媒の含有量、純度、及び、比表面積が、医薬品原薬として使用する上で好適な水準であるクエン酸第二鉄水和物を、簡便な乾燥操作によって製造することができる。また、製造間のばらつきが少なく、安定的に同等品質のクエン酸第二鉄水和物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水、及び水溶性有機溶媒を含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体より、クエン酸第二鉄水和物を得る製造方法であって、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~150g(40~150質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体(以下、「クエン酸第二鉄水和物の湿体」、又は単に「湿体」と称することがある)を減圧乾燥することが特徴である。ここで、湿体中のクエン酸第二鉄無水物換算量は、湿体の全重量、水分量、水溶性有機溶媒量を測定し、全重量から水分量と水溶性有機溶媒量を差し引くことにより算出できる。また、湿体中の水分量は、カールフィッシャー法により測定できる。また、湿体中の水溶性有機溶媒量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0015】
従って、クエン酸第二鉄水和物の湿体における、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量は、以下の式にて算出することができる。
水の含有量=湿体中の水分量/{(湿体の質量)-(湿体中の水分量)-(水溶性有機溶媒量)}×100
【0016】
本発明において「乾燥」とは、クエン酸第二鉄水和物の湿体中の水溶性有機溶媒の含有量を低減せしめることを言う。このような本発明の製造方法によって、クエン酸第二鉄水和物に含有する水溶性有機溶媒の含有量を大きく低減させることができる。本発明の製造方法によって、湿体中の水溶性有機溶媒の含有量を大きく低減させることができる理由について詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。すなわち、上記特許文献記載の製造方法にて得られるクエン酸第二鉄水和物は非晶質(アモルファス)形状をしている。このため、クエン酸第二鉄水和物の析出溶媒として用いられた水溶性有機溶媒がクエン酸第二鉄水和物中に取り込まれた場合、水溶性有機溶媒とクエン酸第二鉄水和物とが、物理的な作用が働いているか、或いは、化学的結合(例えば、第二鉄との配位結合やクエン酸との水素結合等)が形成されているものと推測される。さらに、クエン酸第二鉄水和物の比表面積が大きい場合には、クエン酸第二鉄水和物はより複雑な構造を有するため、水溶性有機溶媒がクエン酸第二鉄水和物中に取り込まれ易いと推測される。加えて、クエン酸第二鉄水和物は一次粒子が凝集しやすく凝集体の中に多数の粒子間空隙が存在すると見られるため、当該空隙にも水溶性有機溶媒が存在すると推測される。このため、単なる真空乾燥では水溶性有機溶媒が低減し難いものと推測され、かかる場合には粉砕と乾燥を繰り返す必要があるものと推測される。一方流動層乾燥においては、熱風や蒸気等の熱媒とクエン酸第二鉄水和物との接触によるクエン酸第二鉄水和物の解砕効果が発現されているため、効率的にクエン酸第二鉄水和物中の水溶性有機溶媒を低減させることができると推測される。しかしながら、熱媒によって純度及び比表面積の低下が生じるものと推測される。一方、本発明の方法では、クエン酸第二鉄水和物の湿体中に水を多く含んでいるため、クエン酸第二鉄水和物中に水が浸透しており、水溶性有機溶媒とクエン酸第二鉄との物理的な作用が消え或いは化学結合が解かれた状態となっていることから、減圧乾燥によって水溶性有機溶媒を低減させることができるものと推測される。尚、本明細書においては特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。以下、本発明について詳細に説明する。以下、本発明の製造方法について詳述する。
【0017】
(クエン酸第二鉄水和物の湿体)
本発明の製造方法におけるクエン酸第二鉄水和物としては特に制限されることなく、試薬や食品添加物用途として市販されているもの、或いは、公知の方法により製造したものを使用することができる。公知の製造方法の一例としては、特許文献1及び2に記載された方法が挙げられる。具体的には、まず、塩化第二鉄・六水和物を水に溶解させ、次いで、水酸化ナトリウムにより加水分解することによりフェリハイドライト等の水酸化第二鉄を得る。得られた水酸化第二鉄とクエン酸とを水中で反応させ、クエン酸第二鉄水和物を生成する。当該クエン酸第二鉄を含む溶液を、有機溶媒を用いてクエン酸第二鉄水和物を析出させた後、固液分離及び必要に応じて水溶性有機溶媒による分離後の固体の洗浄することによりクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造することができる。
【0018】
その他の製造方法として、例えば、上記製造方法等により製造されたクエン酸第二鉄水和物の湿体、それを乾燥させたクエン酸第二鉄水和物、或いは市販のクエン酸第二鉄等を、水或いはクエン酸水溶液に溶解させて、クエン酸第二鉄水和物を含む水溶液を調製し、当該水溶液を、水溶性有機溶媒に滴下することにより、クエン酸第二鉄水和物を含む懸濁液を調製しても良い。または、単にクエン酸第二鉄水和物と水溶性有機溶媒とを混合することにより、クエン酸第二鉄水和物を含む懸濁液を調製しても良い。各方法により調製された懸濁液を固液分離、及び、水溶性有機溶媒による分離後の固体の洗浄を行えば、クエン酸第二鉄水和物の湿体を製造できる。
【0019】
上記のようにして製造されるクエン酸第二鉄水和物の湿体は、実施例に記載の条件による液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した時の純度が、製造条件等により異なるが、通常、90.0~99.9%である。また、実施例に記載の条件による窒素吸着法で分析した時のBET比表面積は、通常、20m2/gを超える。そのため、本発明の製造方法において、好適に使用することができる。
【0020】
(湿体中の水の含有量)
本発明の製造方法では、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たり、水を40~150g(40~150質量部)含有するクエン酸第二鉄水和物の湿体を減圧乾燥する。ここで、クエン酸第二鉄水和物の湿体中に含有する水は、湿体に含有する水分(所謂、自由水)の他に、クエン酸第二鉄に水和する水分(所謂、結合水)が含まれるが、上記水の含有量は、自由水と結合水を合わせた含有量を示す。前記のとおり、湿体中の水の含有量は、カールフィッシャー法により測定できる。また、湿体中のクエン酸第二鉄無水物換算量は、湿体の全重量、水分量、水溶性有機溶媒量を測定し、全重量から水分量と水溶性有機溶媒量を差し引くことにより算出した値を示す。
【0021】
従って、クエン酸第二鉄水和物の湿体における、クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量は、以下の式にて算出することができる。
水の含有量=湿体中の水分量/{(湿体の質量)-(湿体中の水分量)-(水溶性有機溶媒量)}×100
【0022】
クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量が40g(40質量部)未満である場合には、減圧乾燥による湿体に含有する水溶性有機溶媒の低減効果が不十分である。一方、クエン酸第二鉄無水物100g(100質量部)当たりの水の含有量が150g(150質量部)を超える場合、上記乾燥時にクエン酸第二鉄水和物の比表面積が大幅に低下する傾向があるため好ましくない。その理由は明らかではないが、クエン酸第二鉄水和物を乾燥させる時に吸湿し、一部のクエン酸第二鉄が一旦溶解した後に固化することで、比表面積が低下すると推定される。乾燥に要する時間がより短く、また、比表面積の低下をより抑制できる点、さらに、本発明の水溶性有機溶媒の低減効果がより顕著に得られる点で、クエン酸第二鉄無水物100g(100質量部)当たりの水の含有量は45~125g(45~125質量部)の範囲であることがより好ましく、50~100g(50~100質量部)の範囲であることがさらに好ましい。前記のとおり、クエン酸第二鉄水和物の湿体中の水の含有量は該湿体のガスクロマトグラフィーによる分析、水の含有量は該湿体のカールフィッシャー法による測定にて確認することができる。
【0023】
クエン酸第二鉄水和物の湿体中に含有される水が上記範囲にある場合にはそのまま、本発明の製造方法に用いることが可能である。前記のクエン酸第二鉄水和物の製造方法にて製造する場合、水を含有する水溶性有機溶媒にてクエン酸第二鉄水和物を析出させているため、かかる方法にてクエン酸第二鉄水和物の湿体を得た場合には、必然的に湿体中に水を含有している。製造条件や製造スケール等により異なるが、通常、クエン酸第二鉄無水物100g(100質量部)当たり、15~35g(15~35質量部)であるため、本発明の製造方法の水の含有量となるように水の含有量を調整する必要がある。
【0024】
クエン酸第二鉄水和物の湿体中の水の含有量の調整方法として、例えばクエン酸第二鉄水和物の湿体中の水の含有量が少なすぎる場合には、該湿体に水を添加し混合する方法、或いは、クエン酸第二鉄の湿体を、水及び水溶性有機溶媒を含有する溶媒に分散せしめた後、公知の固液分離手段によりクエン酸第二鉄の湿体を得る方法等が挙げられる。一方、クエン酸第二鉄水和物の湿体中の水の含有量が多すぎる場合には、常圧下での乾燥により水分を除去する方法、水及び水溶性有機溶媒を含有する溶媒に分散せしめた後、公知の固液分離手段によりクエン酸第二鉄の湿体を得る方法等が挙げられる。
【0025】
(水溶性有機溶媒)
本発明において、湿体中に含まれる水溶性有機溶媒としては、水と任意に混和する有機溶媒であり、具体的には25℃において水100質量部に対する溶解度が20質量部以上の有機溶媒である。上記湿体の製造において、クエン酸第二鉄水和物を含む懸濁液を得る際に使用する水溶性有機溶媒、或いは、固液分離後の洗浄溶媒として水溶性有機溶媒を使用すれば、結果的に湿体中にそれらの溶媒が含有される。水溶性有機溶媒を具体的に例示すると、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、テトラヒドロフリルアルコール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル等のエステル類;ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物;N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロピドン、アセトアミド等の含窒素化合物等が挙げられる。何れの溶媒も、試薬や工業用等、特に制限されること無く使用できる。また、これらの溶媒は、単一であっても良く、複数であっても良い。中でも、高純度、高比表面積のクエン酸第二鉄水和物が得られる点、乾燥時の水溶性有機溶媒の低減効率の点から、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、t-ブタノール、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサンがより好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランがさらに好ましく、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランが最も好ましい。なお、例えばトルエン等の炭化水素類やクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等の非水溶性有機溶媒は、クエン酸第二鉄水和物に含まれても構わないが、乾燥をより簡便とするためには含まれないことが好ましい。
【0026】
上記(クエン酸第二鉄の湿体)の項に記載された湿体の製造方法にて湿体を製造する場合、水を含有する水溶性有機溶媒にてクエン酸第二鉄を析出させているため、かかる方法にて湿体を得た場合には、必然的に湿体中に水溶性有機溶媒を含有している。製造条件や製造スケール等により異なるが、通常、湿体100g(100質量部)中に0.3~70g(0.3~70質量部)の水溶性有機溶媒を含むが、本発明の製造方法において、好適に使用することができる。乾燥に要する時間がより短く、また、比表面積の低下をより抑制できる点、さらに、本発明の水溶性有機溶媒の低減効果がより顕著に得られる点で、湿体100g(100質量部)当たりの水溶性有機溶媒の含有量は0.5~65g(0.5~65質量部)の範囲であることがより好ましく、1.0~60g(1.0~60質量部)の範囲であることがさらに好ましい。
【0027】
(減圧乾燥)
本発明の製造方法では、上記クエン酸第二鉄水和物の湿体を減圧乾燥する。減圧乾燥における減圧度は、乾燥装置の能力等を勘案して適宜決定すればよいが、乾燥に要する時間また、クエン酸第二鉄水和物の乾燥時の比表面積の低下をより抑制できる点から、減圧度を0.1~20kPaの範囲とすることが好ましく、1~10kPaの範囲で行うことがより好ましく、1~5kPaの範囲で行うことがさらに好ましい。
また、減圧乾燥させる際の乾燥温度としては、5~50℃が好ましく、中でも水溶性有機溶媒の低減効率やクエン酸第二鉄の安定性を考慮すると、10~40℃がより好ましく、15~30℃が最も好ましい。この範囲であれば、乾燥の途中で乾燥状態によって乾燥温度を適宜変更しても良い。
【0028】
また、乾燥に使用する装置は、工業的に利用可能な装置であれば良く、棚式乾燥機やコニカルドライヤー等が挙げられる。水溶性有機溶媒の低減効率や均一性がより優れる理由から、コニカルドライヤーを用いて、回転下で減圧乾燥を行うことがより好ましい。乾燥に要する時間は、乾燥条件や製造スケール等により異なるため、一概に規定することは難しいが、実施例に記載の条件によるガスクロマトグラフィー(GC)等の手法により、水溶性有機溶媒の含有量が所望の量となったことを確認して適宜決定すれば良い。乾燥の条件、製造スケール、水溶性有機溶媒の種類等により異なるが、通常、1~100時間で、乾燥後のクエン酸第二鉄水和物(以下「クエン酸第二鉄水和物の乾燥体」或いは単に「乾燥体」とも言う)100g(100質量部)当たり、水溶性有機溶媒の含有量を0.5g(0.5質量部)以下とできる。ただし、乾燥時間があまり長いと、クエン酸第二鉄水和物の品質や経済性が低下するため、乾燥体100g(100質量部)当たり、少なくとも0.5g(0.5質量部)以下の中で望む値となった時点で、乾燥を終了することが好ましい。
【0029】
なお、乾燥前或いは途中のクエン酸第二鉄水和物に塊等が含まれる場合には、乾燥前或いは途中において、クエン酸第二鉄水和物をすり鉢、パワーミル、ピンミル等の公知の粉砕機により粉砕する、或いは、篩掛けを行う等しても良い。
【0030】
(クエン酸第二鉄水和物)
以上のようにして、水溶性有機溶媒が高度に低減されたクエン酸第二鉄水和物の乾燥体を得ることができる。当該クエン酸第二鉄水和物の乾燥体100g(100質量部)当たりに含まれる水溶性有機溶媒の量を0.5g(0.5質量部)以下に低減することができる。本発明は水溶性有機溶媒の低減効果が非常に高いため、水溶性有機溶媒の含有量がより好ましくは0.25g(0.25質量部)以下、さらに好ましくは0.1g(0.1質量部)以下、最も好ましくは0.05g(0.05質量部)以下のクエン酸第二鉄水和物を製造することができる。当該含有量の下限値は0g(0質量部)が望まれるが、実施例に記載の含有量の測定方法における検出限界は0.005g(0.005質量部)(50ppm)程度である。また、本発明のクエン酸第二鉄水和物は、従来の方法で得られる0.5g(0.5質量部)以下の水溶性有機溶媒を含むクエン酸第二鉄水和物と比較して、その純度及び比表面積が高く、好適に医薬品用途して利用できる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されることはない。
【0032】
なお、実施例、比較例のクエン酸第二鉄水和物の水溶性有機溶媒の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。なお、GCへの試料導入は、ヘッドスペース(HS)を用いて行った。また、水分の含有量は、カールフィッシャー法により測定し、純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、比表面積は、窒素吸着法により測定した。各測定に使用した装置、測定の条件は、下記のとおりである。
【0033】
(水溶性有機溶媒の含有量)
クエン酸第二鉄水和物の水溶性有機溶媒の含有量は以下の条件にて測定した。
装置:ガスクロマトグラフ装置(Agilent Technologies, I
nc.製)
検出器:水素炎イオン化検出器(Agilent Technologies, I
nc.製)
カラム:内径0.53mm、長さ30mのフューズドシリカ管の内面にガスクロマト
グラフィー用ポリエチレングリコールを厚さ1μmで被覆されたもの。
カラム温度:注入後50℃6分、その後毎分40℃で220℃まで昇温し、220℃
で5分間維持する。
カラム圧力:3psi
注入温度:250℃
検出器温度:250℃
キャリヤーガス:ヘリウム
スプリット:1/10
ヘッドスペース加熱温度:90℃
ヘッドスペース加熱時間:30分間
クエン酸第二鉄水和物の水溶性有機溶媒の含有量は、上記条件で測定される水溶性有機溶媒のピーク面積値から、検量線法によりクエン酸第二鉄の質量に対する水溶性有機溶媒の質量の割合である。
【0034】
(水分量)
クエン酸第二鉄水和物の水分量は、下記条件で測定した。
装置:水分測定装置(三菱化学製)
測定方法:カールフィッシャー滴定容量法
滴定剤:SS-Z(三菱化学製)
溶剤:無水メタノール
試料量:約15mg
水分量は、上記条件にて3回測定した平均値を採用した。
【0035】
(純度)
クエン酸第二鉄水和物の純度は以下の条件にて測定した。
装置:液体クロマトグラフ装置(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度計(Waters Corporation製)
測定波長:210nm
カラム:内径4.6mm、長さ250mmのステンレス管に、5μmの液体クロマ
トグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相:りん酸二水素ナトリウム12.0gを水2000mLに添加し溶解させた
後、りん酸を加えて、pH2.2に調整した混合液。
流量:毎分1.0mL
カラム温度:30℃付近の一定温度
測定時間:30分
クエン酸第二鉄水和物の純度は、上記条件で測定される全ピーク(鉄及び溶媒由来のピークを除く)の面積値の合計に対するクエン酸のピーク面積値の割合である。
【0036】
(比表面積)
クエン酸第二鉄水和物の比表面積は以下の条件にて測定した。
装置:比表面積測定装置(MicrotracBEL製)
測定方法:定容量式窒素吸着法
試料量:約100mg
前処理温度:40℃
前処理時間:1時間
クエン酸第二水和物の比表面積は、上記条件で窒素の分圧が0.1~0.3の範囲で各分圧での窒素吸着量を測定し、分圧と窒素吸着量からBET法により解析し算出した。
【0037】
製造例1(クエン酸第二鉄水和物の湿体の製造例)
攪拌翼、温度計を取り付けた5Lの四つ口フラスコに、塩化鉄六水和物400.0gと水1600mLを加え攪拌した。次いで、水酸化ナトリウム177.6gと水1600mLから調製した水溶液を0~10℃で3時間かけて滴下した。次いで、0~10℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。次いで、得られた析出物に水2000mLを加え、0~10℃で1時間攪拌した。遠心分離により析出を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。さらに、得られた析出物に水2000mLを加え、0~10℃で1時間攪拌した。遠心分離により析出物を分離し、水100mLで分離後の析出物を2回洗浄した。
【0038】
攪拌翼、温度計を取り付けた5Lの四つ口フラスコに、クエン酸無水物284.3gと水480mLを加え攪拌した。次いで、上記で得られた析出物を加え、20~30℃で30分間撹拌した。さらに、80℃付近まで加温し、75~85℃で2時間撹拌した。25℃付近まで冷却した後、ポアサイズ0.5μmのPTFEフィルターにより濾過して不溶物を除去し、濾液を得た。アセトン8000mLに、20~30℃で30分間かけて得られた濾液を滴下した。20~30℃で1時間撹拌した後、遠心分離により析出物を分離し、アセトン400mLで分離後の析出物を2回洗浄した。得られた析出物にアセトン4000mLを加え、20~30℃で1時間撹拌した。遠心分離により析出物を分離し、アセトン400mLで分離後の析出物を2回洗浄した。以上のようにして、アセトンを含むクエン酸第二鉄800.2gを得た。得られたクエン酸第二鉄水和物の湿体中のアセトンの含有量は湿体100g(100質量部)当たり、44.8g(44.8質量部)、水分量は16.2g(16.2質量部)であった。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は下記式にて算出し、41.5g(41.5質量部)であった。
換算水分量=水分量/(100-アセトンの含有量-水分量)×100
【0039】
実施例1
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて5時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり0.5g(0.5質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は20.8%(20.8質量部)であり、純度は98.47%であり、比表面積は52.2m2/gであった。
【0040】
以下の実施例、及び比較例では、製造例1で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、水の含有量及びアセトンの含有量を表1に示す含有量に調整したクエン酸第二鉄水和物の湿体を用いた。
【0041】
実施例2~17、比較例1~3
表1に示すクエン酸第二鉄水和物の湿体を使用し、表1に示す条件で減圧乾燥を行った以外は、実施例1と同様に実施した。得られたクエン酸第二鉄水和物の乾燥体の分析結果を表2に示した。
【0042】
【0043】
【0044】
製造例2(クエン酸第二鉄水和物の湿体の製造例)
クエン酸無水物を184.8gを用いた以外は製造例1と同様の条件でクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造した。得られたクエン酸第二鉄水和物の湿体中のアセトンの含有量は湿体100g(100質量部)当たり44.3g(44.3質量部)、水分量は15.9g(15.9質量部)であった。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、39.9g(39.9質量部)であった。
【0045】
実施例18
製造例2で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を48.9g(48.9質量部)、水分量を18.4g(18.4質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、56.3g(56.3質量部)であった。
【0046】
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて3時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり0.02g(0.02質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は20.4%(20.4質量部)であり、純度は98.69%であり、比表面積は89.2m2/gであった。
【0047】
比較例4
製造例2で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を46.3g(46.3質量部)、水分量を12.5g(12.5質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、30.3g(30.3質量部)であった。
【0048】
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて3時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり2.7g(2.7質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は18.4%(18.4質量部)であり、純度は98.36%であり、比表面積は120.5m2/gであった。
【0049】
製造例3(クエン酸第二鉄水和物の湿体の製造例)
クエン酸無水物を369.6gを用いた以外は製造例1と同様の条件でクエン酸第二鉄水和物の湿体を製造した。得られたクエン酸第二鉄水和物の湿体中のアセトンの含有量は湿体100g(100質量部)当たり47.9g(47.9質量部)、水分量は16.0g(16.0質量部)であった。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、44.3g(44.3質量部)であった。
【0050】
実施例19
製造例3で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を47.5g(47.5質量部)、水分量を18.8g(18.8質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、55.8g(55.8質量部)であった。
【0051】
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて3時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり0.01g(0.01質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は20.1%(20.1質量部)であり、純度は98.45%であり、比表面積は13.8m2/gであった。
【0052】
比較例5
製造例3で製造したクエン酸第二鉄水和物の湿体を、水及びアセトンを含有する溶媒に分散させた後、固液分離し、湿体100g当たりのアセトンの含有量を40.2g(40.2質量部)、水分量を13.0g(13.0質量部)に調整した。クエン酸第二鉄無水物換算量100g(100質量部)当たりの水の含有量(換算水分量)は、27.8g(27.8質量部)であった。
【0053】
ガラスシャーレ皿に、上記クエン酸第二鉄水和物を入れ、棚式乾燥機で温度:30℃、減圧度:約2kPaにて3時間減圧乾燥した。減圧乾燥後、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)中のアセトンの含有量はクエン酸第二鉄水和物(乾燥体)100g(100質量部)当たり1.0g(1.0質量部)であった。また、クエン酸第二鉄水和物(乾燥体)の水分は17.6%(17.6質量部)であり、純度は98.29%であり、比表面積は15.7m2/gであった。