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特許7175249アルキニル基含有オルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化反応制御剤
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  • 特許-アルキニル基含有オルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化反応制御剤 図1
  • 特許-アルキニル基含有オルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化反応制御剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】アルキニル基含有オルガノポリシロキサン及びヒドロシリル化反応制御剤
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/5419 20060101AFI20221111BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20221111BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20221111BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20221111BHJP
【FI】
C08K5/5419
C08L83/07
C08L83/05
C07F7/18 X
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019162888
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021042132
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】正田 沙和子
(72)【発明者】
【氏名】水梨 友之
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-058104(JP,A)
【文献】特開昭64-051466(JP,A)
【文献】特開平10-158587(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105418669(CN,A)
【文献】特開平02-014244(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01141868(GB,A)
【文献】特開昭52-039751(JP,A)
【文献】特開昭59-133252(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003995(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109880377(CN,A)
【文献】CHERKEZISHVILI, K. I. ET AL,Synthesis of some bis(alkynyloxy)dialkyl(aryl)silanes and their hydrogenation,Tbilisis Universitetis Shromebi, Tr. Tbilis. Un-ta,1975年,A9(157),93-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサンであるヒドロシリル化反応制御剤
【化1】
(式中、R及びRは、互いに独立に、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、Rは互いに独立に、水素原子または炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基であり、xは0~4の整数であり、nは夫々1~3の整数であり、aは互いに独立に0~6の整数であり、及びbは互いに独立に0または1であり、上記式(1)は少なくとも1の芳香族炭化水素基を有し、xが0のとき上記nの少なくとも一つは1又は2である)。
【請求項2】
前記式(1)において、xは1~4の整数であり、bはいずれも0である、請求項1記載のヒドロシリル化反応制御剤
【請求項3】
前記式(1)において、xが0であり、nは夫々2または3であり、但しnの少なくとも一つは2である、請求項1記載のヒドロシリル化反応制御剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応制御剤として有用な新規アルキニル基含有オルガノポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族不飽和結合とヒドロシリル基の白金触媒による付加反応は多くの分野で応用されており、特にシリコーン工業の分野では付加反応型レジンやゴムの架橋の手段として広く応用されている。
【0003】
このようなヒドロシリル化反応を応用した付加反応型シリコーン樹脂組成物は室温でも反応が進行するため、一般に硬化速度の調整や保存安定性の向上を目的に反応制御剤が添加される。反応制御剤としては、例えば、3-メチル-1-ブチン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール(特許文献1)、3-メチル-トリデカ-1-イン-3-オール(特許文献2)といったアセチレンアルコール類などが用いられている。
【0004】
しかし、上記アセチレンアルコール類は炭化水素骨格のみで構成されているため、ヒドロシリル化制御剤として樹脂組成物に添加した場合、得られる樹脂は硬化後の信頼性試験において着色するという問題がある。
【0005】
この対策として、例えば特許文献3には、アセチレン性不飽和基を有するアルコキシ基で変性されたオルガノシロキサンを反応制御剤として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭44-31476号公報
【文献】特開平8-269339号公報
【文献】特開昭64-51466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献3に記載のオルガノシロキサンでは、フェニル基変性シリコーンを含有する組成物とは相溶性が悪く、十分な反応制御能が得られないことがある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、付加硬化型オルガノポリシロキサン樹脂組成物においてヒドロシリル化反応抑制剤として機能することができ、室温での保存安定性に優れ、硬化後の耐変色性に優れた組成物を与えるアルキニル基含有オルガノポリシロキサンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を達成すべく、検討したところ、下記式(1)で表される、両末端にアルキニル基を有し、ケイ素原子に結合する芳香族炭化水素基を少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサンを合成し、該オルガノポリシロキサンが上記課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は下記式(1)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサンを提供する。
【化1】
(式中、R及びRは、互いに独立に、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、Rは互いに独立に、水素原子または炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基であり、xは0~4の整数であり、nは夫々1~3の整数であり、aは互いに独立に0~6の整数であり、及びbは互いに独立に0または1であり、上記式(1)は少なくとも1の芳香族炭化水素基を有し、xが0のとき上記nの少なくとも一つは1又は2である)。
更には、上記アルキニル基含有オルガノポリシロキサンからなるヒドロシリル化反応制御剤を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルキニル基含有オルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応制御剤として含む付加反応硬化型シリコーン組成物は室温での保存安定性に優れ、且つ耐変色性に優れた硬化物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1で合成した化合物のH-NMRスペクトルチャートである。
図2図2は、実施例2で合成した化合物のH-NMRスペクトルチャートである。
図3図3は、実施例3で合成した化合物のH-NMRスペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は下記式(1)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサンである。
【化2】
(式中、R及びRは、互いに独立に、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、Rは互いに独立に、水素原子または炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基であり、xは0~4の整数であり、nは夫々1~3の整数であり、aは互いに独立に0~6の整数であり、及びbは互いに独立に0または1であり、上記式(1)は少なくとも1の芳香族炭化水素基を有し、xが0のとき上記nの少なくとも一つは1又は2である)。
【0014】
及びRは、互いに独立に、炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基、または炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、ただし、少なくとも1のnが1又は2の場合、R及びRのうち少なくとも1個は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。好ましくは炭素数1~3の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数6~8の芳香族炭化水素基から選ばれる基である。また特には、nが1~3の何れの場合においても、少なくとも1の芳香族炭化水素基を有するのが好ましい。飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、などが挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。芳香族炭化水素基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、及びビフェニル基等のアリール基や、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。これらの中でも、フェニル基が好ましい。
【0015】
は、互いに独立に、水素原子または炭素数1~6の飽和脂肪族炭化水素基であり、好ましくは水素原子または炭素数1~3の飽和脂肪族炭化水素基である。飽和脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等のシクロアルキル基、などが挙げられる。これらの中でもメチル基が好ましく、全てのRがメチル基であるのが最も好ましい。Rがメチル基であることにより、反応抑制効果を向上することができる。
【0016】
xは0~4の整数であり、nは夫々1~3の整数であり、bは0または1である。ここで、xが0の場合、nは夫々2または3が好ましく、xが1~4の場合、bはいずれも0であるのが好ましい。aは0~6の整数であり、好ましくは0~3の整数である。さらに好ましくは、nは夫々2又は3であるのがよく、近接するアセチレン基を有することにより、アセチレン基のキレート作用による付加反応抑制効果をより向上することができる。
【0017】
x=1~4の場合は、下記の構造が挙げられる。
【化3】
(xは1~4の整数であり、好ましくは1又は2であり、aは0~6の整数であり、好ましくはaは0である。R、R、及びRは上記の通りであり、好ましくは少なくとも1のRが芳香族炭化水素基であるのがよく、より好ましくはフェニル基であり、Rは好ましくは飽和脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基であり、Rは好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である)
【0018】
x=0の場合は、下記の構造が挙げられる。
【化4】
(aは0~6の整数であり、好ましくはaは0であり、bは0または1であり、R及びRは上記の通りであり、Rの少なくとも1は芳香族炭化水素基であり、より好ましくはフェニル基であり、Rは好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である)
【0019】
上記アルキニル基含有オルガノポリシロキサンとしてより詳細には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0020】
[アルキニル基含有オルガノポリシロキサンの製造方法]
本発明のアルキニル基含有オルガノポリシロキサンは、例えば、トリスペンタフルオロボラン等の触媒存在下に、アセチレンアルコールとヒドロシリル基含有オルガノシロキサンとを脱水素反応させることにより製造することができる。ボラン触媒を用いた上記脱水素反応による製造方法では、オルガノポリシロキサン鎖の望まない分子量の増大を防ぐことができ、目的とするアルキニル基含有オルガノポリシロキサンを高収率で得られるため望ましい。脱水素反応の条件は、適宜調整されればよい。例えば、ヒドロシリル基とアセチレンアルコールとの反応比はmol比で1:1.1である。
【0021】
上記、アルキニル基含有オルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応の反応制御剤として優れた効果を発揮することができる。該アルキニル基含有オルガノポリシロキサンを反応制御剤として使用する際には、付加反応硬化型シリコーン組成物に含まれるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.001~5質量部であることが好ましく、0.01~3質量部であることがより好ましい。付加反応硬化型シリコーン組成物の組成は特に制限されるものでない。本発明のアルキニル基含有オルガノポリシロキサンは好ましくは芳香族炭化水素基を有し、該シロキサンはフェニル変性シリコーンを有する組成物との相溶性も良好であり、保存安定性により優れた樹脂組成物を与えることができる。
【実施例
【0022】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
下記実施例において、H-NMR測定は、BRUKER社製の装置(装置名:AVANCEIII 400M)を用い、溶媒:重クロロホルム、内部標準:クロロホルムを用いて行った。
【0023】
[実施例1]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた4つ口フラスコに、トリスペンタフルオロフェニルボラン0.3g(5.9×10-4mol)、を加えトルエン100gで溶解した。これに2-メチル-3-ブチン-2-オールを33.3g(0.40mol)加え、70℃に昇温した。これに、下記式(A)で表される化合物60.0g(0.18mol)を滴下ロートを用いて30分間かけて滴下した。
【化12】
滴下終了後、更に70℃で7時間加熱撹拌した。加熱終了後、室温(25℃)まで冷却し、前記トリスペンタフルオロフェニルボランを吸着除去するためにマグネシウム・アルミニウム系固溶体3g(商品名:KW-2200、協和化学工業株式会社製)を添加して1時間室温で撹拌した。加圧濾過によりKW-2200を除去し、減圧化で残存溶剤を留去し下記式(B)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサン(化合物1)を得た。H-NMRチャートを図1に示す。
【化13】
H-NMRのケミカルシフト(TMS基準、ppm)と積分比は以下のとおりである。
δ0.20(OSi(C )12H
δ1.49(C-C )12H
δ2.31(C≡C)2H
δ7.32-7.69(SiC )10H
【0024】
[実施例2]
撹拌装置、冷却管、滴下ロート及び温度計を備えた4つ口フラスコに、トリスペンタフルオロフェニルボラン0.3g(5.9×10-4mol)を加え、トルエン100gで溶解した。これに2-メチル-3-ブチン-2-オールを27.8g(0.33mol)加え、70℃に昇温した。これに、下記式(C)で表される化合物80.0g(0.15mol)を滴下ロートを用いて30分間かけて滴下した。
【化14】
【0025】
滴下終了後、更に70℃で7時間加熱撹拌した。加熱終了後、室温(25℃)まで冷却し、前記トリスペンタフルオロフェニルボランを吸着除去するためにマグネシウム・アルミニウム系固溶体3g(商品名:KW-2200、協和化学工業株式会社製)を添加して1時間室温で撹拌した。加圧濾過によりKW-2200を除去し、減圧化で残存溶剤を留去し下記式(D)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサン(化合物2)を得た。H-NMRチャートを図2に示す。
【化15】
H-NMRのケミカルシフト(TMS基準、ppm)と積分比は以下のとおりである。
δ0.07(OSi(C )12H
δ1.40(C-C )12H
δ2.21(C≡C)2H
δ7.25-7.62(SiC )20H
【0026】
[実施例3]
反応容器に、トリスペンタフルオロフェニルボラン0.08g(1.7×10-4mol)、を加えトルエン12gで溶解した。これに2-メチル-3-ブチン-2-オールを7.4g(0.09mol)加え、70℃に昇温した。これに、下記式(E)で表される化合物5.0g(0.01mol)を30分間かけて滴下した。
【化16】
滴下終了後、更に70℃で3時間加熱撹拌した。加熱終了後、室温(25℃)まで冷却し、前記トリスペンタフルオロフェニルボランを吸着除去するためにマグネシウム・アルミニウム系固溶体1g(商品名:KW-2200、協和化学工業株式会社製)を添加して1時間室温で撹拌した。加圧濾過によりKW-2200を除去し、減圧化で残存溶剤を留去し下記式(F)で表されるアルキニル基含有オルガノポリシロキサン(化合物3)を得た。H-NMRチャートを図3に示す。
【化17】
H-NMRのケミカルシフト(TMS基準、ppm)と積分比は以下のとおりである。
δ0.14,0.17(OSi(C )24H
δ1.46(C-C )24H
δ2.30(C≡C)4H
δ7.26-7.70(SiC )10H
【0027】
[付加硬化型シリコーン樹脂組成物の調製]
[実施例4]
分子鎖両末端がビニル基で封鎖された直鎖状ジメチルポリシロキサン(粘度:5,000Pa・s、ビニル基当量0.006mol/100g)157質量部と、CH=CH(CHSiO1/2単位6.9mol%、(CHSiO1/2単位37.3mol%、SiO4/2単位55.8mol%で構成されるレジン状オルガノポリシロキサン(重量平均分子量:5200、ビニル基当量0.095mol/100g)50質量部と、平均構造式が下記式(G)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン8.1質量部を均一になるまで混合した。この混合物に、ヒドロシリル化反応制御剤として、実施例1で得た化合物1を0.1質量部(2.6×10-4mol、アセチレン量:5.2×10-4mol)加えて混合後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン白金(0)錯体(白金含有量1.0質量%)0.2質量部を加えて混合し、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【化18】
【0028】
[実施例5]
実施例4において化合物1の代わりに、実施例2で得た化合物2を0.2質量部(2.6×10-4mol、アセチレン量:5.2×10-4mol)用いた以外は実施例4を繰り返して、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0029】
[実施例6]
実施例4において化合物1の代わりに、実施例3で得た化合物3を0.1質量部(1.2×10-4mol、アセチレン量:5.2×10-4mol)用いた以外は実施例4を繰り返して、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0030】
[比較例1]
実施例4において化合物1の代わりに、2-メチル-3-ブチン-2-オールを0.044質量部(5.2×10-4mol、アセチレン量:5.2×10-4mol)用いた以外は実施例4を繰り返して、シリコーン樹脂組成物を調製した。
【0031】
[保存安定性]
上記実施例4~6および比較例1で調製したシリコーン樹脂組成物の23℃における粘度を、調製直後、4時間後、及び7時間後に測定し、保存安定性を評価した。粘度はブルックフィールド回転粘度計を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0032】
[耐変色性]
実施例4~6および比較例1で調製したシリコーン樹脂組成物を、150℃で4時間加熱成型して硬化物(10mm×15mm×5mm)を得た。これら硬化物の耐熱・耐湿性試験を135℃、85%RH条件下で30時間行った。耐熱・耐湿性試験後の硬化物の外観と全透過率の値について、初期(試験前)の外観及び全透過率と比較し、耐変色性を評価した。
耐熱・耐湿性試験には、株式会社平山製作所製の不飽和型高加速寿命試験装置(装置名:HASTEST PC-242HSR2)を用いた。また、全透過率は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(装置名:U-4100)を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
上記表1に示す通り、ヒドロシリル化反応制御剤がアセチレンアルコールである比較例1の付加反応硬化型組成物は調製後4時間でゲル化してしまった。さらに、表2に示す通り、該組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱・耐湿性試験後に黄変してしまい、組成物及び硬化物共に、保存安定性に劣った。
これに対し、本願のアルキニル基含有オルガノポリシロキサンを反応制御剤として含む付加反応硬化型組成物は、調製後4時間でゲル化することなく、また得られる硬化物は耐熱・耐湿試験後でも無色透明であり、保存安定性及び透明性が向上された。特には、両末端にアルキニル基を二つずつ有する化合物3を反応制御剤として含む組成物は、調製後4時間及び7時間後においても粘度の上昇が抑制され保存安定性が極めて向上された。さらには得られる硬化物は耐熱・耐湿性試験前後において透明性が高い。該化合物は、光学用途に用いる付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物の反応制御剤として特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のアルキニル基含有オルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル化反応の反応制御剤として優れた効果を発揮するものである。特に分子中に芳香族炭化水素基を有するため、LED用封止剤などの光学用途に用いる付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物の反応制御剤として特に有用である。
図1
図2
図3