(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-10
(45)【発行日】2022-11-18
(54)【発明の名称】温度センサ及びそれを備える配電部品、配電部品を備えるモータ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20221111BHJP
G01K 1/143 20210101ALI20221111BHJP
H02K 11/25 20160101ALI20221111BHJP
【FI】
G01K1/14 L
G01K1/143
H02K11/25
(21)【出願番号】P 2019194010
(22)【出願日】2019-10-25
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519382592
【氏名又は名称】日立Astemo電動機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福地 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐川 正憲
(72)【発明者】
【氏名】横井 雅
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-310808(JP,A)
【文献】特開2006-035942(JP,A)
【文献】特開2012-057980(JP,A)
【文献】特開平07-085896(JP,A)
【文献】実開昭57-205036(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/143, 1/16
G01K 1/14
G01K 7/22, 7/02
G01K 13/00
H02K 11/00,11/25
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の配電線の温度を検知する温度センサであって、
温度検知部と、
前記温度検知部を覆う保護部材と、を備え、
前記保護部材には、第1の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第1の配電線と接触する第1当接面と、第2の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第2の配電線と接触する第2当接面と、が設けられている、
温度センサ。
【請求項2】
前記第1当接面は、前記保護部材の第1の面に設けられ、
前記第2当接面は、前記第1の面と反対側の前記保護部材の第2の面に設けられている、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記保護部材の横断面内において前記第1当接面および前記第2当接面を幅方向に二分する仮想直線を基準線としたとき、
前記温度検知部は、前記保護部材の横断面内において、前記基準線の右側または左側に外れた位置に配置されている、
請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記温度検知部から信号を取り出すためのリード線であって、一部が前記保護部材に覆われ、他の一部が前記保護部材の外に引き出されているリード線を有し、
前記保護部材に対する前記リード線の引き出し方向と前記第1当接面および前記第2当接面の長手方向とが同方向である、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記温度検知部から信号を取り出すためのリード線であって、一部が前記保護部材に覆われ、他の一部が前記保護部材の外に引き出されているリード線を有し、
前記保護部材に対する前記リード線の引き出し方向と前記第1当接面および前記第2当接面の長手方向とが異方向である、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記保護部材は、前記温度検知部が埋設された第1保護部材と、当該第1保護部材を覆う第2保護部材と、から構成される、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項7】
2本以上の配電線と、それら配電線の温度を検知する温度センサと、を備える配電部品であって、
前記温度センサは、
温度検知部と、
前記温度検知部を覆う保護部材と、を有し、
前記保護部材には、第1の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第1の配電線と接触する第1当接面と、第2の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第2の配電線と接触する第2当接面と、が設けられている、
配電部品。
【請求項8】
前記
2本以上の配電線は、モータの巻線と端子台とを接続し、前記巻線に電力を供給する、
請求項7に記載の配電部品。
【請求項9】
前記2本以上の配電線には、三相モータのU相巻線に接続される第1電線対を構成する2本の配電線と、前記三相モータのV相巻線に接続される第2電線対を構成する他の2本の配電線と、前記三相モータのW相巻線に接続される第3電線対を構成するさらに他の2本の配電線と、が含まれる、
請求項8に記載の配電部品。
【請求項10】
請求項7に記載の配電部品を備えるモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一つは、温度センサに関し、特に、配電部品の配電線の温度測定に適した温度センサに関する。本発明の他の一つは、配電部品を備えるモータに関する。
【背景技術】
【0002】
導体に直接貼り付けた温度センサによって当該導体の表面温度を測定する技術が知られている。特許文献1には、回転動機の出力線の絶縁被膜の表面に、樹脂等の封止材や熱収縮チューブを用いて固定される温度センサが記載されている。
【0003】
特許文献2には、コイル要素と、感熱体と、コイル要素および感熱体を収容するハウジングと、を含む温度センサが記載されている。特許文献2に記載の温度センサに含まれるコイル要素は、回転電機のステータコイルと電気的に接続されて当該ステータコイルの一部を構成している。また、特許文献2に記載の温度センサに含まれる感熱体は、ステータコイルの一部を構成しているコイル要素の温度を検知することにより、ステータコイルの温度を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/131408号
【文献】特許第6282791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の温度センサには、当該温度センサの測定対象物に対する取り付け位置や当該温度センサを測定対象物に固定するための封止材の塗布量の違い等により、感度や熱応答性にバラつきが生じる虞がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の温度センサには、コイル要素や感熱体をハウジングに組み付ける際の位置ずれ等により、感度や熱応答性にバラつきが生じる虞がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、感度や熱応答性のバラつきが小さい温度センサ及びそれを備えた配電部品を提供することである。本発明の目的の他の一つは、感度や熱応答性のバラつきが小さい温度センサを含む配電部品を備えたモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の温度センサは、少なくとも2本の配電線の温度を検知する温度センサであって、温度検知部と、前記温度検知部を覆う保護部材と、を備える。そして、前記保護部材には、第1の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第1の配電線と接触する第1当接面と、第2の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第2の配電線と接触する第2当接面と、が設けられる。
【0009】
本発明の一態様では、前記第1当接面は、前記保護部材の第1の面に設けられ、前記第2当接面は、前記第1の面と反対側の前記保護部材の第2の面に設けられる。
【0010】
本発明の他の一態様では、前記保護部材の横断面内において前記第1当接面および前記第2当接面を幅方向に二分する仮想直線を基準線としたとき、前記温度検知部は、前記保護部材の横断面内において、前記基準線の右側または左側に外れた位置に配置される。
【0011】
本発明の他の一態様では、温度センサは、前記温度検知部から信号を取り出すためのリード線であって、一部が前記保護部材に覆われ、他の一部が前記保護部材の外に引き出されているリード線を有する。そして、前記保護部材に対する前記リード線の引き出し方向と前記第1当接面および前記第2当接面の長手方向とが同方向である。
【0012】
本発明の他の一態様では、温度センサは、前記温度検知部から信号を取り出すためのリード線であって、一部が前記保護部材に覆われ、他の一部が前記保護部材の外に引き出されているリード線を有する。そして、前記保護部材に対する前記リード線の引き出し方向と前記第1当接面および前記第2当接面の長手方向とが異方向である。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記保護部材は、前記温度検知部が埋設された第1保護部材と、当該第1保護部材を覆う第2保護部材と、から構成される。
【0014】
本発明の配電部品は、2本以上の配電線と、それら配電線の温度を検知する温度センサと、を備える。前記温度センサは、温度検知部と、前記温度検知部を覆う保護部材と、を有する。そして、前記保護部材には、第1の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第1の配電線と接触する第1当接面と、第2の配電線の外形に対応した凹形状を有し、当該第2の配電線と接触する第2当接面と、が設けられる。
【0015】
本発明の一態様では、前記配電線は、モータの巻線と端子台とを接続し、前記巻線に電力を供給する。
【0016】
本発明の他の一態様では、前記2本以上の配電線には、三相モータのU相巻線に接続される第1電線対を構成する2本の配電線と、前記三相モータのV相巻線に接続される第2電線対を構成する他の2本の配電線と、前記三相モータのW相巻線に接続される第3電線対を構成するさらに他の2本の配電線と、が含まれる。
【0017】
本発明のモータは、前記本発明の配電部品を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、感度や熱応答性のバラつきが小さい温度センサ及びそれを備えた配電部品が実現される。また、本発明によれば、感度や熱応答性のバラつきが小さい温度センサを含む配電部品を備えたモータが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用された温度センサの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されている温度検知部の構造を示す説明図である。
【
図3】
図1に示されている温度センサの使用状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示されている保護部材の横断面図である。
【
図5】本発明が適用された温度センサの他の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明が適用された配電部品の一例を示す斜視図である。
【
図7】各配電線の接続先を模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明が適用された温度センサの一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る温度センサは、配電部品を構成する配電線の温度を検知するための温度センサであって、少なくとも2本の配電線の温度を同時に検知することができる。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態に係る温度センサ1Aは、温度検知部10と、保護部材20と、リード線30a,30bと、を備えている。温度検知部10及びリード線30a,30bは、保護部材20に覆われている。言い換えれば、保護部材20は、温度検知部10及びリード線30a,30bを内包するモールド部材である。
【0022】
もっとも、温度検知部10は、その全体が保護部材20に覆われているが、リード線30a,30bは、その一部が保護部材20に覆われている。具体的には、リード線30a,30bの長手方向一部は保護部材20に覆われている一方、リード線30a,30bの残部は、保護部材20に覆われておらず、保護部材20の外に引き出されている。以下の説明では、保護部材20に覆われているリード線30a,30bの一部を「埋設部」と呼び、保護部材20に覆われていないリード線30a,30bの他の一部を「引き出し部」と呼んで区別する場合がある。
【0023】
図2に示されるように、温度検知部10は、サーミスタや白金抵抗体などの温度検知素子11を備えている。温度検知素子11の一面には素子電極12aが設けられており、当該素子電極12aには電極線13aが溶接されている。また、温度検知素子11の他面には素子電極12bが設けられており、当該素子電極12bには電極線13bが溶接されている。以下の説明では、素子電極12aを「上側素子電極12a」と呼び、電極線13aを「上側電極線13a」と呼び、上側素子電極12aが設けられている温度検知素子11の一面を「上面」と呼ぶ場合がある。また、素子電極12bを「下側素子電極12b」と呼び、電極線13bを「下側電極線13b」と呼び、下側素子電極12bが設けられている温度検知素子11の他の一面を「下面」と呼ぶ場合がある。
【0024】
つまり、温度検知素子11の上面には上側素子電極12aが設けられており、この上側素子電極12aは、上側電極線13aを介してリード線30aと接続されている。また、温度検知素子11の下面には下側素子電極12bが設けられており、この下側素子電極12bは、下側電極線13bを介してリード線30bと接続されている。
【0025】
ここで、温度検知素子11と電気的に接続されているリード線30a,30bは、心線31と、心線31の周囲に設けられた被覆32と、を有する被覆付きリード線である。そして、リード線30aの露出している心線31の先端が上側電極線13aの端部に半田付けされており、リード線30bの露出している心線31の先端が下側電極線13bの端部に半田付けされている。さらに、温度検知素子11、温度検知素子11との接点(溶接点)を含む電極線13a,13b及び電極線13a,13bとの接点(半田付け点)を含むリード線30a,30bの心線31の露出部分は、エポキシ樹脂等の樹脂やガラス等によって一括して被覆されている。
【0026】
尚、リード線30a,30bの心線31は、それぞれがすずやニッケル等にてめっきされた複数本の軟銅線からなる撚り線である。また、リード線30a,30bの被覆32は、耐熱性に優れるフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA),四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP))を用いて形成することが好ましい。
【0027】
再び
図1を参照する。上記のような構造を有する温度検知部10及びリード線30a,30bの一部(埋設部)は、保護部材20に設けられている空隙21内に配置されている。さらに、保護部材20の空隙21内には封止材22(
図4)が充填されており、この封止材22によって温度検知部10及びリード線30a,30bの埋設部が空隙21内において固定されている。尚、本実施形態における封止材22(
図4)はエポキシ樹脂であるが、封止材22の材料はエポキシ樹脂に限られない。
【0028】
図1に示される保護部材20は、金型内に溶融樹脂を注入して成形した樹脂成形体である。保護部材20の材料となる樹脂は、耐熱性や耐油性に優れていることが好ましく、例えば、ポリフェニレンスルファイド(PPS),ポリイミド(PI),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリアミドイミド(PAI)等のエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックが好ましい。これら樹脂材料のうち、耐熱性および剛性に優れ、製造時における流動性も高いPPSは、保護部材20の材料として特に好ましい。
【0029】
図3,
図4に示されるように、保護部材20の第1の面(上面20a)には第1当接面23が設けられ、第1の面と反対側の保護部材20の第2の面(下面20b)には第2当接面24が設けられている。第1当接面23及び第2当接面24は、配電線40の外形に対応した凹形状を有しており、保護部材20の長手方向に沿って延在している。
【0030】
図4に示されるように、第1当接面23は、2本の配電線40の一方(第1の配電線41)に接触し、第2当接面24は、2本の配電線40の他方(第2の配電線42)に接触する。より具体的には、配電線40は、外形が円形の電線であり、第1当接面23及び第2当接面24は、配電線40の外形に倣う凹面である。そして、第1当接面23は第1の配電線41の外周面の一部と面接触し、第2当接面24は第2の配電線42の外周面の一部と面接触する。つまり、第1当接面23及び第2当接面24は、配電線40の外周面の曲率と同一または略同一の曲率を有する曲面である。
【0031】
言い換えれば、保護部材20の上面20a及び下面20bには、配電線40が嵌る窪みが設けられている。そして、窪みに配電線40が嵌められると、当該窪みの表面の全域が配電線40の表面に接触する。
【0032】
尚、
図3に示されるように、保護部材20に対するリード線30a,30bの引き出し方向と第1当接面23及び第2当接面24の長手方向とは同方向である。
【0033】
図4に示されるように、温度検知部10が埋設されている空隙21は、保護部材20の厚さ方向(
図4の紙面上下方向)において、第1当接面23と第2当接面24との間に設けられている。よって、第1の配電線41が第1当接面23に接触し、第2の配電線42が第2当接面24に接触すると、温度検知部10は、保護部材20の厚さ方向において、第1の配電線41と第2の配電線42との間に位置することになる。つまり、温度検知部10は、第1の配電線41と第2の配電線42とに挟まれる。
【0034】
ここで、配電線40は、モータ等の電力機器に電力を供給する配電部品の構成要素であり、電力機器に電力を供給する給電線として機能する。配電線40を介して電力機器に電力が供給されると、導体抵抗によって配電線40が発熱する。そして、配電線40の発熱による温度上昇が保護部材20に埋設されている温度検知部10によって検知(測定)され、検知結果(測定結果)を示す信号がリード線30a,30bを介して取り出される。例えば、温度検知部10が備える温度検知素子11(
図2)がサーミスタである場合、感熱温度に応じた抵抗値が検知結果を示す信号として取り出される。尚、温度検知部10から取り出された信号は、リード線30a,30bを介して不図示の検知部に入力される。この際、検知部に至る信号伝送路上に、コネクタその他の接続部材によって中間接続部が設けられることもある。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る温度センサ1Aは、温度検知部10が埋設された保護部材20を有しており、その保護部材20には、2本の配電線40がそれぞれ接触する第1当接面23及び第2当接面24が設けられている。さらに、保護部材20に設けられている第1当接面23及び第2当接面24は、それぞれの配電線40の外形に対応した凹形状を有している。よって、本実施形態に係る温度センサ1Aは、2本の配電線40の間に保護部材20を挟み込むだけで、それら2本の配電線40に組み付けることができる。また、2本の配電線40の間に挟み込まれた保護部材20を配電線40に沿って移動(スライド)させることによって、温度センサ1Aの位置を調整することもできる。総じて、本実施形態に係る温度センサ1Aは、測定対象である配電線40に対する位置決めや組付けが容易である。
【0036】
また、保護部材20に設けられている第1当接面23及び第2当接面24は、それぞれの配電線40の外形に対応した凹形状を有しているので、保護部材20と配電線40とが密着(面接触)し、配電線40から保護部材20へ効率良く熱が伝わる。加えて、保護部材20に埋設されている温度検知部10は、第1当接面23と第2当接面24との間に配置されているので、保護部材20から温度検知部10へも効率良く、かつ、均等に熱が伝わる。これらの結果、本実施形態に係る温度センサ1Aによれば、2本の配電線40の温度が同時に、かつ、高精度で測定される。
【0037】
一方、2本の配電線40(第1の配電線41,第2の配電線42)の間に挟まれている温度検知部10は、第1の配電線41や第2の配電線42の変位による応力や振動の影響を受ける虞がある。特に、温度検知素子11と電極線13a,13bとの溶接点や電極線13a,13bとリード線30a,30bの心線31との半田付け点は、応力や振動に対して脆い。また、温度検知素子11や電極線13a,13b等を覆っている被覆がガラスによって形成されている場合、応力や振動によって当該被覆が破損する虞がある。
【0038】
そこで、
図4に示されるように、第1当接面23に第1の配電線41を接触させ、かつ、第2当接面24に第2の配電線42を接触させたとき、第1の配電線41の真下や第2の配電線42の真上から外れた位置に温度検知部10が配置されるように、第1当接面23及び第2当接面24と温度検知部10との位置関係が設定されている。
【0039】
具体的には、保護部材20の横断面内において第1当接面23及び第2当接面24を幅方向(
図4の紙面左右方向)に二分する仮想直線を基準線Xとしたとき、温度検知部10は、保護部材20の横断面内において、基準線Xの一側(右側または左側)に外れた位置に配置されている。言い換えれば、温度検知部10は、保護部材20の横断面内において、基準線Xから保護部材20の幅方向に所定距離だけオフセットした位置に配置されている。
【0040】
本実施形態に係る温度センサ1Aでは、第1当接面23及び第2当接面24と温度検知部10との位置関係が上記のように設定されているので、第1の配電線41や第2の配電線42の変位による応力や振動によって温度検知部10が受ける影響が緩和され、温度センサとしての信頼性が向上する。
【0041】
(第2実施形態)
以下、本発明が適用された温度センサの他の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る温度センサは、第1実施形態に係る温度センサ1A(
図1)と同一の基本構造を有し、同一の用途に用いられる温度センサである。そこで、既に説明した構成と同一または実質的に同一の構成についての説明は適宜省略する。また、既に説明した構成と同一または実質的に同一の構成については同一の符号を用いる。
【0042】
図5に示されるように、本実施形態に係る温度センサ1Bが備える保護部材20は、第1保護部材51と、第2保護部材52と、から構成されている。本実施形態における保護部材20の構成要素の1つである第1保護部材51は、第1実施形態における保護部材20と実質的に同一の形状および構造を備えており、当該第1保護部材51には、
図1,
図2に示されている温度検知部10と同一の温度検知部が埋設されている。
【0043】
また、本実施形態における保護部材20の構成要素の他の1つである第2保護部材52は、第1保護部材51を覆っている。この結果、本実施形態では、第2保護部材52の表面の一部が第1の配電線41と接触する第1当接面23となり、第2保護部材52の表面の他の一部が第2の配電線42と接触する第2当接面24となる。
【0044】
もっとも、本実施形態に係る温度センサ1Bは、配電線40の外形に対応した凹形状を有し、配電線40の表面に接触する第1当接面23及び第2当接面24が設けられた保護部材20を備えている点において、第1実施形態に係る温度センサ1Aと共通している。つまり、第1実施形態に係る温度センサ1Aと本実施形態に係る温度センサ1Bとは、温度検知部10を内包する保護部材20と配電線40とが面接触し得る構成を備えている点で共通している。
【0045】
一方、本実施形態に係る温度センサ1Bは、保護部材20に対するリード線30a,30bの引き出し方向に関して、第1実施形態に係る温度センサ1Aと相違している。具体的には、第1実施形態に係る温度センサ1Aでは、保護部材20に対するリード線30a,30bの引き出し方向と第1当接面23及び第2当接面24の長手方向とは同方向であった。これに対し、本実施形態に係る温度センサ1Bでは、保護部材20に対するリード線30a,30bの引き出し方向と第1当接面23及び第2当接面24の長手方向とは異方向である。具体的には、
図5に示されるように、リード線30a,30bは、保護部材20に対して、第1当接面23及び第2当接面24の長手方向(矢印A方向)と直交する方向(矢印B方向)に引き出されている。
【0046】
但し、リード線30a,30bは、第1保護部材51に対しては、第1当接面23及び第2当接面24の長手方向(矢印A方向)と同方向に引き出されている。つまり、第1保護部材51から矢印A方向に引き出されたリード線30a,30bは、第2保護部材52の内部において略90度折り曲げられて当該第2保護部材52から矢印B方向に引き出されている。言い換えれば、第2保護部材52の一部は、リード線30a,30bの屈曲状態を保持し、保護部材20に対するリード線30a,30bの引き出し方向を規定するリード線案内部としての役割も果たしている。
【0047】
尚、第1実施形態に係る温度センサ1Aと本実施形態に係る温度センサ1Bとにおけるリード線30a,30bの引き出し方向の相違は、予定されているリード線30a,30bの配策ルートの相違に起因するものである。
【0048】
(第3実施形態)
以下、本発明が適用された配電部品の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る配電部品は、モータの巻線と端子台とを接続し、巻線に電力を供給する2本以上の配電線と、2本の配電線の間に配置され、それら配電線の温度を検知する温度センサと、を有する。さらに、本実施形態に係る配電部品が有する温度センサは、本発明の第2実施形態として説明した温度センサ1B(
図5)である。
【0049】
図6に示されるように、本実施形態に係る配電部品2は、一対の配電線61,62と、他の一対の配電線71,72と、さらに他の一対の配電線81,82と、を備えている。つまり、本実施形態に係る配電部品2は、合計で三対(6本)の配電線を備えている。以下の説明では、一対の配電線61,62を「第1電線対60」、他の一対の配電線71,72を「第2電線対70」、さらに他の一対の配電線81,82を「第3電線対80」と呼ぶ場合がある。尚、それぞれの配電線61,62,71,72,81,82は、導線の周囲にエナメル被膜が設けられた絶縁電線であって、円形の外形を有する。
【0050】
配電部品2は、第1電線対60,第2電線対70及び第3電線対80を一体的に固定する第1固定部材91と、第1電線対60と第2電線対70とを一体的に固定する第2固定部材92と、を有する。加えて、配電部品2は、第3電線対80を構成する配電線81と配電線82とを一体的に固定する第3固定部材93を有する。
【0051】
配電部品2が備える各配電線61,62,71,72,81,82の一端は、三相モータの所定の巻線に接続される。具体的には、
図7に示されるように、配電線61,62の一端は、三相モータ100のU相巻線101に接続され、配電線71,72の一端は、三相モータ100のV相巻線102に接続され、配電線81,82の一端は、三相モータ100のW相巻線103に接続される。尚、
図7は実際の結線状態を示す図ではなく、各配電線61,62,71,72,81,82の接続先を模式的に示す概念図である。
【0052】
再び
図6を参照する。それぞれの配電線61,62,71,72,81,82の端部には、接続対象に接続される接続端部が設けられている。具体的には、配電線61,62の一端には、三相モータ100のU相巻線101(
図7)に接続される接続端部61a,62aが設けられており、配電線61,62の他端には、端子台の所定端子に接続される接続端部(不図示)が設けられている。配電線71,72の一端には、三相モータ100のV相巻線102(
図7)に接続される接続端部71a,72aが設けられており、配電線71,72の他端には、端子台の所定端子に接続される接続端部(不図示)が設けられている。また、配電線81,82の一端には、三相モータ100のW相巻線103(
図7)に接続される接続端部81a,82aが設けられており、配電線81,82の他端には、端子台の所定端子に接続される接続端部(不図示)が設けられている。
【0053】
本実施形態では、第1電線対60上に温度センサ1Bが設けられている。具体的には、温度センサ1Bの保護部材20が、第1電線対60を構成している2本の配電線61,62の間に配置されている。つまり、
図6に示されている配電線61,62は、
図5に示されている配電線41,42に相当する。
【0054】
もっとも、温度センサ1Bを第1電線対60上に設ける場合、その位置や数は図示されている位置や数に限られない。例えば、温度センサ1Bを第1固定部材91と第2固定部材92との間の領域に配置してもよい。また、第1電線対60上の異なる2箇所以上の位置に温度センサ1Bをそれぞれ配置してもよい。もちろん、温度センサ1Bを第2電線対70上や第3電線対80上に設けてもよい。また、温度センサ1Bを2つの電線対の間に設けてもよい。例えば、温度センサ1Bを第1電線対60に含まれる配電線61又は配電線62と、第3電線対80に含まれる配電線81又は配電線82との間に配置してもよい。
【0055】
図6に示されている温度センサ1Bは、
図1に示されている温度センサ1Aに置換することもできる。さらに、温度センサ1A(
図1)及び温度センサ1B(
図5)を併用することもできる。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施形態における第1当接面23及び第2当接面24は凹面(曲面)であった。しかし、第1当接面23及び第2当接面24は、配電線40の外形に応じて他の凹形状に変更することができる。例えば、配電線40の外形が平角形状である場合、第1当接面23及び第2当接面24は、当該配電線40の外形(平角形状)に対応した凹形状に変更することができる。
【0057】
保護部材20に設けられる空隙21は、温度検知部10やその他の必要な部材を収容するのに必要十分な形状や大きさを備えていればよい。つまり、空隙21の形状や大きさは図示されている形状や大きさに限られない。例えば、
図4に示されている空隙21は、同図に示されている基準線Xの左右に亘っているが、基準線Xよりも右側の部分を省略してもよい。
【0058】
もっとも、温度検知部10やその他の必要な部材が配置された金型内に樹脂材料を注入し、温度検知部10等がインサートされた保護部材20を成形してもよい。この場合、
図4に示されている空隙21及び封止材22は不要になる。
【0059】
リード線30a,30bの心線31は、軟銅線以外の導線を素線とする撚り線に変更することができる。また、配電線61,62,71,72,81,82の絶縁被膜をエナメル以外の絶縁材料によって形成してもよい。
【0060】
本明細書では、本発明の配電部品の一例として、モータの巻線と端子台とを接続する配電部品を挙げた。本発明が適用された配電部品が組み込まれるモータの一例としては、自動車等の車両の駆動源として用いられるモータが挙げられる。もっとも、本発明の配電部品は、モータの巻線と端子台とを接続する配電部品に限られない。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B 温度センサ
2 配電部品
10 温度検知部
11 温度検知素子
12a 素子電極(上側素子電極)
12b 素子電極(下側素子電極)
13a 電極線(上側電極線)
13b 電極線(下側電極線)
20 保護部材
20a 上面
20b 下面
21 空隙
22 封止材
23 第1当接面
24 第2当接面
30a,30b リード線
31 心線
32 被覆
40,61,62,71,72,81,82 配電線
41 第1の配電線
42 第2の配電線
51 第1保護部材
52 第2保護部材
60 第1電線対
70 第2電線対
80 第3電線対
61a,62a,71a,72a,81a,82a 接続端部
91 第1固定部材
92 第2固定部材
93 第3固定部材
100 三相モータ
101 U相巻線
102 V相巻線
103 W相巻線
X 基準線