(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】酸性排気ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/68 20060101AFI20221114BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20221114BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20221114BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20221114BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B01D53/68 220
B01D53/78 ZAB
B01D53/62
B01D53/50 270
B01D53/56 200
(21)【出願番号】P 2018221225
(22)【出願日】2018-11-27
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】北中 克佳
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-200411(JP,A)
【文献】特開2014-189471(JP,A)
【文献】特開2013-193653(JP,A)
【文献】特開2006-281180(JP,A)
【文献】米国特許第03803813(US,A)
【文献】特開2011-240322(JP,A)
【文献】特開2006-103733(JP,A)
【文献】特開2017-222735(JP,A)
【文献】特開2006-289231(JP,A)
【文献】特表平01-503766(JP,A)
【文献】特開2017-042381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14- 53/18
B01D 53/34- 53/73
B01D 53/74- 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
A61L 9/00- 9/22
B65D 35/44- 35/54
B65D 39/00- 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性のガスを含む排気ガスを処理して該排気ガス中の該酸性のガスの濃度を低下させるガス処理部と、
排気ガスを該ガス処理部に導入する経路となる排気ガス収集路と、を備え、
該ガス処理部は、
水を貯留するタンクと、
該タンクに貯留された水に沈む散気管と、
該排気ガス収集路を通じて該ガス処理部に導入された排気ガスを該散気管に供給し、該散気管から該排気ガスを微細な気泡として該タンクに貯留された水中に放出する排気ガス供給部と、を備え
、
該排気ガス収集路の第2の端部には、酸性のガスが発生する容器の開口に覆い被せることができる蓋体が接続され、
該蓋体は、天板と、該天板から垂下し該排気ガス収集路の該第2の端部に接続された側壁と、を有し、
該側壁の下端には、該側壁に付着した酸性のガスが液化した液体を受ける返し部が設けられ、
該返し部は、該側壁に接続された該排気ガス収集路の該第2の端部に該液体を案内することを特徴とする酸性排気ガス処理装置。
【請求項2】
該ガス処理部が備える該排気ガス供給部は、
該タンクに接続された一端と、該散気管に接続された他端と、該一端及び該他端の間に設けられたポンプと、を有し、該ポンプを作動させることにより該一端から該タンクに貯留された水を吸い出し、吸い出した水を該他端に接続された該散気管に供給する送水路と、
該ポンプと、該他端と、の間の該送水路中に設けられたエジェクタと、を備え、
該エジェクタは、該送水路の該ポンプ側に接続された駆動流体導入口と、該送水路の該他端側に接続された吐出口と、該排気ガス収集路の第1の端部に接続された吸引口と、を有し、該送水路を流れる水の流れによって該吸引口に接続された該排気ガス収集路から排気ガスを吸引し、該送水路に該排気ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載の酸性排気ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性のガスを含む排気ガスを処理して排気ガス中の酸性のガスを除去する酸性排気ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の工場で実施される各種の工程において、例えば、酸性のガスや強酸の水溶液等を使用すると、酸性排気ガス(酸性のガスを含む排気ガス)が発生する場合がある。酸性排気ガスは、そのままでは工場の外部に排出することができない上、速やかに処理しなければ酸性排気ガスにより工場設備に腐食が生じてしまう。
【0003】
そこで、従来、処理室内に酸性排気ガスを移し、酸性排気ガスに対して苛性ソーダ水等の塩基性の水溶液を噴出させるスクラバーを使用して、酸性排気ガス中に含まれる酸性のガスを取り除き、酸性のガスの濃度を低下させていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スクラバーには処理能力の限界があり、スクラバーから排出されるガスを調べると除去されなかった酸性のガスが一定の割合で検出される。そこで、2台以上のスクラバーを直列に接続して、さらに酸性のガスの除去を実施することが考えられる。しかし、スクラバーは、噴出する水溶液を酸性排気ガスに十分に接触させるために大きな処理室が必要であるため、2台以上のスクラバーを工場内に設置しようとする場合に、必要となる設置スペースが工場に大きな負担となる。
【0006】
また、スクラバーの機能を維持するには苛性ソーダをスクラバーに定期的に補給しなければならず、苛性ソーダの調達費用がかかる。その上、酸性排気ガスの引き込みに使用する吸引用送風機や苛性ソーダ水の噴出に使用されるポンプ等を稼働させる電気代等が必要となる。このようにスクラバーの稼働コストも工場に大きな負担となる。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、酸性排気ガスの処理能力が高く、稼働コストの小さい酸性排気ガス処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、酸性のガスを含む排気ガスを処理して該排気ガス中の該酸性のガスの濃度を低下させるガス処理部と、排気ガスを該ガス処理部に導入する経路となる排気ガス収集路と、を備え、該ガス処理部は、水を貯留するタンクと、該タンクに貯留された水に沈む散気管と、該排気ガス収集路を通じて該ガス処理部に導入された排気ガスを該散気管に供給し、該散気管から該排気ガスを微細な気泡として該タンクに貯留された水中に放出する排気ガス供給部と、を備え、該排気ガス収集路の第2の端部には、酸性のガスが発生する容器の開口に覆い被せることができる蓋体が接続され、該蓋体は、天板と、該天板から垂下し該排気ガス収集路の該第2の端部に接続された側壁と、を有し、該側壁の下端には、該側壁に付着した酸性のガスが液化した液体を受ける返し部が設けられ、該返し部は、該側壁に接続された該排気ガス収集路の該第2の端部に該液体を案内することを特徴とする酸性排気ガス処理装置が提供される。
【0009】
好ましくは、該ガス処理部が備える該排気ガス供給部は、該タンクに接続された一端と、該散気管に接続された他端と、該一端及び該他端の間に設けられたポンプと、を有し、該ポンプを作動させることにより該一端から該タンクに貯留された水を吸い出し、吸い出した水を該他端に接続された該散気管に供給する送水路と、該ポンプと、該他端と、の間の該送水路中に設けられたエジェクタと、を備え、該エジェクタは、該送水路の該ポンプ側に接続された駆動流体導入口と、該送水路の該他端側に接続された吐出口と、該排気ガス収集路の第1の端部に接続された吸引口と、を有し、該送水路を流れる水の流れによって該吸引口に接続された該排気ガス収集路から排気ガスを吸引し、該送水路に該排気ガスを導入する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る酸性排気ガス処理装置で酸性のガスを含む排気ガスを処理する際には、排気ガス収集路を通じて該排気ガスをガス処理部に導入する。このとき、該排気ガスは、ガス処理部が備えるタンクに貯留された水に沈む散気管から該水の中に微細な気泡として供給される。該排気ガスと、水と、が接触すると該排気ガスに含まれる酸性のガスが該水に取り込まれる。
【0012】
ここで、該排気ガスは散気管により微細な気泡となるため、排気ガスと、水と、の接触面積は極めて大きく、排気ガスからの酸性のガスの除去は極めて効率的に進行する。そのため、排気ガスが水の外に出るときには排気ガス中の酸性のガスの残量は極めて少なくなる。このように、酸性のガスの除去が極めて効率的に行われるため苛性ソーダを使用する必要がなく、本発明の一態様に係る酸性排気ガス処理装置では苛性ソーダを調達する費用がかからない。
【0013】
また、水を貯留するタンクは、散気管を十分に収容できる底面積を有していればよく、排気ガスや苛性ソーダ水を十分に分散させるための大きな処理室を必要としない。また、2以上の装置を連結させる必要もない。そのため、該酸性排気ガス処理装置を工場内に設置するのに要する面積は小さくなる。さらに、本発明の一態様に係る酸性排気ガス処理装置では、ガス処理部の散気管に排気ガスを供給するための動力に主にコストがかかるため、稼働コストも少なくて済む。
【0014】
したがって、本発明の一態様によると、酸性排気ガスの処理能力が高く、稼働コストの小さい酸性排気ガス処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】酸性排気ガス処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、蓋体を模式的に示す斜視図であり、
図2(B)は、容器の上方に位置付けられた蓋体を模式的に示す断面図であり、
図2(C)は、容器に覆い被せられた蓋体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置が設置される工場について説明する。本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置は、例えば、半導体デバイスチップの製造工場や、化学薬品の製造工場、食品工場、自動車の整備工場等の酸性のガスが発生するあらゆる工場に設置可能である。ただし、酸性排気ガス処理装置は工場以外の場所に設置されてもよく、酸性のガスを含む排気ガスからの酸性のガスの除去をしたいあらゆる場所で使用可能である。
【0017】
ここで、酸性のガスとは、二酸化炭素や硫化水素、塩化水素、フッ化水素、二酸化窒素、二酸化硫黄等の水に溶解すると酸性となるガスや、硝酸、硫酸、塩酸等の酸を含む水溶液から発生するガスである。ただし、酸性排気ガス処理装置で排気ガスから除去できる酸性のガスはこれに限定されず、水に溶解するあらゆるガスを除去できる。
【0018】
該工場等では、酸性のガスを含む排気ガス(酸性排気ガス)が発生する場合がある。該排気ガスは、そのままでは工場等の外部に排出することができない上、速やかに処理しなければ該排気ガスにより設備に腐食が生じてしまう場合がある。本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置を使用すると、該排気ガスから酸性のガスを除去でき、該排気ガスを無害化できる。
【0019】
次に、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置について説明する。
図1は、該酸性排気ガス処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
図1には、該酸性排気ガス処理装置等の断面図が示されているが、
図1は各構成要素を模式的に示すものであるため、各構成要素の大小関係や位置関係等は本図に限定されるものではない。
【0020】
酸性排気ガス処理装置2は、酸性のガスを含む排気ガスを処理して該排気ガス中の該酸性のガスの濃度を低下させるガス処理部4と、排気ガスを該ガス処理部4に導入する経路となる排気ガス収集路6と、を備える。
【0021】
排気ガス収集路6は、例えば、耐酸性で耐圧のパイプ状の部材であり、第1の端部6aはガス処理部4に接続されており、第2の端部6bは酸性のガスを含む排気ガスの発生源の近傍に通じている。後述の通り、排気ガス収集路6の第1の端部6aに接続されたガス処理部4は、排気ガス収集路6に負圧を作用させることができる。そして、排気ガス7は、該負圧により排気ガス収集路6の第2の端部6b側から吸引される。
【0022】
ガス処理部4は、水を貯留するタンク8と、該タンク8に貯留された水9に沈む散気管10と、該排気ガス収集路6を通じてガス処理部4に導入された排気ガス7を該散気管10に供給する排気ガス供給部12と、を備える。排気ガス供給部12は、さらに、送水路16を備え、該送水路16の一端16aはタンク8の底部に接続されており、他端16bは、散気管10に接続されている。なお、送水路16は、例えば、耐酸性で耐圧のパイプ状の部材である。
【0023】
送水路16上の一端16aと、他端16bと、の間には、ポンプ14が配設されている。ポンプ14を作動させると、該ポンプ14が該一端16a側に接続されたタンク8が貯留する水9を吸い出し、吸い出した水9を他端16b側に接続された散気管10に供給する。そして、送水路16のポンプ14と、他端16bと、の間には、エジェクタ18が設けられている。
【0024】
エジェクタ18は、駆動流体導入口20と、吐出口22と、吸引口24と、を有し、駆動流体導入口20に水等の流体を供給すると、吐出口22から該流体が吐出されるとともに吸引口24に吸引力が生じる。吸引口24から吸引された気体等の流体は、吐出口22から吐出される該流体と混合されて、該吐出口22から吐出される。該エジェクタ18の内部は酸に触れるため、フッ素樹脂等の耐酸性の部材により内部がコーティングされている。または、該エジェクタ18は、フッ素樹脂等の耐酸の部材により構成されている。
【0025】
ガス処理部4においては、エジェクタ18の駆動流体導入口20は送水路16のポンプ14側に接続されており、吐出口22は送水路16の他端16b側に接続されており、吸引口24は排気ガス収集路6の第1の端部6aに接続されている。ポンプ14を駆動させて水9をエジェクタ18の駆動流体導入口20に供給すると、排気ガス収集路6から酸性のガスを含む排気ガス7が吸引口24から吸引されて該水9に混合され、吐出口22から吐出される。そして、排気ガス7は水9とともに散気管10に供給される。
【0026】
なお、
図1においては、エジェクタ18の内部を上方に向けて水9が流れるようにエジェクタ18が描かれているが、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2はこれに限定されない。すなわち、送水路16のポンプ14側に接続された駆動流体導入口20を上側に向け、送水路16の他端16b側に接続された吐出口22を下側に向けてもよい。この場合、吐出口22や吸引口24からの水9の逆流を防止することができる。
【0027】
散気管10は、例えば、多孔質部材が周囲に設けられた管状の部材であり、管の内側に流体を供給すると、該流体は該多孔質部材に形成されている多数の孔のそれぞれから該流体が噴出する。タンク8に貯留された水9に沈められた散気管10の管の内側に送水路16から水9に混合された排気ガス7を供給すると、排気ガス7が微細な気泡11としてタンク8に貯留された水9中に放出される。
【0028】
酸性のガスを含む排気ガス7は、排気ガス収集路6を通じてガス処理部4の排気ガス供給部12に導入され、エジェクタ18により水9に混合された時点から水9への接触が開始される。さらに、排気ガス7は、散気管10からタンク8に貯留された水9に放出されてタンク8を上昇する間にさらに水9と接触する。このとき、排気ガス7は散気管10により微小な気泡11にされているため、水9を上昇する速度は比較的小さくなり、また、水9への接触面積が極めて大きくなる。
【0029】
酸性のガスを含む排気ガス7が水9に接触すると、排気ガス7に含まれる酸性のガスが水9に溶解等するため、排気ガス7からは酸性のガスが除去される。そして、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2においては、排気ガス7は長時間にわたり水9に接触し続ける上、水9との接触面積が極めて大きいため、酸性のガスが極めて効率的に水9に取り込まれる。
【0030】
特に、タンク8の高さを大きくして貯留される水9の高さを大きくすると、気泡11が水9中を上昇する時間が増すため、より長時間にわたり排気ガス7が水9に接触することになる。また、散気管10の多孔質部材の孔の径を小さくする等して、より微細な気泡11がタンク8に貯留される水9に放出させるようにすると、気泡11の上昇速度が遅くなるため、やはりより長時間にわたり排気ガス7が水9に接触することになる。排気ガス7と、水9と、の接触時間が長くなると、酸性のガスがより効率的に除去される。
【0031】
従来のスクラバーにおいては、処理室内に噴出される水と酸性のガスとの接触の機会が限られているため、酸性のガスを積極的に除去するために多量の苛性ソーダを水に投入しておかなければならなかった。これに対して、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2では、酸性のガスの除去が極めて効率的に実施されるため、苛性ソーダを使用する必要がなく、苛性ソーダの調達コストがかからない。
【0032】
さらに、従来のスクラバーにおいては、苛性ソーダ水を汲み上げて処理室内に噴射させるのに使用されるポンプと、処理室内に酸性のガスを含む排気ガスを導入するための吸引用送風機と、が動力として必要であった。これに対して本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2では、水9を循環させるポンプ14のみが動力として使用される。
【0033】
したがって、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2は、従来のスクラバーと比較して苛性ソーダの調達コストが不要であり、動力にかかるコストも少なくて済むため、稼働コストを低く抑えられる。その上、酸性のガスを含む排気ガスを7から効率的に酸性のガスが除去されるため、タンク8に貯留された水9から放出される排気ガス13に残留する酸性のガスの濃度は極めて小さい。
【0034】
なお、酸性のガスの発生源から効率的に該酸性のガスを含む排気ガス7を収集するために、排気ガス収集路6の第2の端部6bには、酸性のガスが発生する容器1の開口に被せることができる蓋体15が接続されてもよい。
図2(A)は、該蓋体15を模式的に示す斜視図であり、
図2(B)は、該蓋体15と、該蓋体15が被せられる容器1と、を模式的に示す断面図である。
【0035】
蓋体15はフッ素樹脂等の耐酸性の部材であり、天板21と、該天板21から垂下した側壁17と、を備える。蓋体15は、容器1の開口を覆うことができる形状かつ大きさに形成された部材であり、例えば、容器1が円筒状である場合には天板21は円板状の形状となる。天板21の外周部に接続された垂下する側壁17は、側方から見ると、一端から該一端に対向する他端にかけて下端が傾斜している。そして、側壁17の最も低い部分には、排気ガス収集路6の該第2の端部6bが接続されている。
【0036】
そして、側壁17の下端には、蓋体15の内側上方に向けて全周にわたり折り返された形状の返し部19が形成されている。返し部19の上端の内周の形状及び大きさは、容器1の側面の形状に対応している。例えば、容器1に酸性の溶液3が貯留されており、酸性の溶液3から生じる酸性のガス5を含む排気ガス7を処理したい場合、蓋体15を容器1に被せる。
【0037】
蓋体15を容器1に被せる際には、
図2(C)に示すように、返し部19の内周に容器1を通す。なお、
図2(C)は、容器1に覆い被せられた蓋体15を模式的に示す断面図である。排気ガス供給部12の送水路16に設けられたポンプ14を稼働させると、排気ガス収集路6を通じて蓋体15の内部が吸引される。そして、蓋体15を容器1に被せると、酸性のガス5を含む排気ガス7が蓋体15の側壁17に接続された排気ガス収集路6から吸引される。
【0038】
なお、酸性のガス5の一部は、側壁17の内側に付着して液化する場合がある。側壁17の内側に付着した液体は側壁17を伝って下方に垂れるが、蓋体15の側壁17の下端には返し部19が設けられているため、該液体が返し部19に受けられる。したがって、返し部19により酸性のガス5が液化した液体の蓋体15の外部への漏出が防止される。
【0039】
そして、返し部19の底部は排気ガス収集路6の第2の端部6bに向けて下方に傾斜しているため、樋として機能する。すなわち、該液体は、返し部19を流れて排気ガス収集路6に向かって案内されて排気ガス収集路6に吸引される。
【0040】
本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2は、排気ガス収集路6の第2の端部6bに蓋体15を備えることにより、酸性のガス5の発生源から効率的に酸性のガス5を含む排気ガス7を吸引できる。この場合、例えば、酸性のガス5が発生する部屋の全体を吸引する場合と比較して、酸性のガス5が含まれる排気ガス7の体積が小さくなるため、エジェクタ18の吸引能力を過度に高める必要がない。
【0041】
換言すると、本実施形態に係る酸性排気ガス処理装置2では、蓋体15を備えることによりエジェクタ18の吸引能力で十分に酸性のガス5を含む排気ガス7を吸引でき、ガス処理部4において排気ガス7から酸性のガス5を効率的に除去できる。
【0042】
なお、酸性排気ガス処理装置2をしばらく稼働させると、水9に酸性のガス5が溶解して徐々に水9の酸の濃度が上昇する。そこで、例えば、タンク8の内部にpH測定器を設け、水9のpHが所定の値よりも下がったときに水9を交換するとよい。水9の調達コストは苛性ソーダ水の調達コストよりも低いため、酸性排気ガス処理装置2の稼働コストは小さくなる。
【0043】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、タンク8には中性の水9を貯留する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。例えば、タンク8に貯留される水9に苛性ソーダを溶解させ、水9を塩基性としてもよい。この場合、水9が循環する送水路16、ポンプ14、エジェクタ18、散気管10、及びタンク8には、耐酸性であるとともに耐塩基性の部材が使用される。
【0044】
水9を塩基性とする場合、より効率的に酸性のガス5が水9に取り込まれる。また、酸性排気ガス処理装置2を稼働させる際、水9のpHが該水9の交換が必要と判断される所定の値を下回るまでにより時間がかかるため、酸性排気ガス処理装置2を長時間連続的に稼働できる。なお、この場合においても、従来のスクラバーにおいて処理室内に噴出される水程には水9のpHを上げなくてもよく、また、水を多く使用する必要もないため、使用する苛性ソーダは少なくてよい。
【0045】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0046】
2 酸性排気ガス処理装置
4 ガス処理部
6 排気ガス収集路
6a,6b 端部
8 タンク
10 散気管
12 排気ガス供給部
14 ポンプ
16 送水路
16a,16b 端
18 エジェクタ
20 駆動流体導入口
22 吐出口
24 吸引口
1 容器
3 酸性の溶液
5 酸性のガス
7 排気ガス
9 水
11 気泡
13 排気ガス
15 蓋体
17 側壁
19 返し部
21 天板