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  • 特許-チャックテーブル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】チャックテーブル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221114BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221114BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20221114BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20221114BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 P
B24B27/06 M
B24B41/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018085403
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019192827
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】水島 亮
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169638(JP,A)
【文献】特開2015-012264(JP,A)
【文献】特開平04-284648(JP,A)
【文献】特開平10-313042(JP,A)
【文献】特開2017-022269(JP,A)
【文献】特開2011-211159(JP,A)
【文献】特開2006-012941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279467(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
B24B 27/06
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップが分割予定ラインによって区画され一体に形成された板状物を切削ブレードで分割予定ラインを切断して個々のチップに分割する際に用いられるチャックテーブルであって、
板状物を保持する表面を有するラバーと、該ラバーの裏面を支持する基台とから構成され、
該ラバーの表面には、分割予定ラインに対応して切削ブレードの切り込みを受け入れる複数の逃げ溝と、該逃げ溝によって区画された領域に個々のチップを吸引保持する吸引孔とが形成され、
該基台には、該吸引孔に連通する連通孔が形成され、
該ラバーの表面には、該逃げ溝によって区画された領域の周縁に突起が形成され
該突起は、該逃げ溝によって区画された領域の4隅に形成されるチャックテーブル。
【請求項2】
該突起の大きさは、40~50μm角で高さ3~7μmである請求項1記載のチャックテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチップが分割予定ラインによって区画され一体に形成された板状物を切削ブレードで分割予定ラインを切断して個々のチップに分割する際に用いられるチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスの表面が分割予定ラインによって区画された配線基板に位置づけられ裏面がモールド樹脂で封止されたパッケージ基板は、ダイシング装置によって封止されたデバイスごとのチップに分割され、分割された各チップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される(たとえば特許文献1参照。)。
【0003】
ダイシング装置は、パッケージ基板等の板状物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された板状物を個々のチップに分割する切削手段と、チャックテーブルから個々のチップを搬出する搬出手段とから概ね構成されていて、板状物を効率良く個々のチップに分割することができる。
【0004】
また、チャックテーブルは、板状物を保持する表面を有するラバーと、ラバーの裏面を支持する基台とから構成されている。ラバーの表面には、分割予定ラインに対応して切削ブレードの切り込みを受け入れる複数の逃げ溝と、逃げ溝によって区画された領域に個々のチップを吸引保持する吸引孔とが形成されていて、板状物が個々のチップに分割された後も個々のチップを吸引保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5947010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、チャックテーブルから全てのチップを一括で搬出する際、チャックテーブルの吸引力を解除してもラバーの密着力によってチャックテーブルにいくつかのチップが残存し、残存したチップを改めて搬出しなければならず、生産性が悪いという問題がある。特に、チップの大きさが1.0mm角以下と小さい場合に上記問題が起こりやすい。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、吸引力を作用させた際には板状物および分割されたチップを確実に吸引保持することができると共に、吸引力を解除した際には分割されたチップを確実に搬出することができるチャックテーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下のチャックテーブルである。すなわち、複数のチップが分割予定ラインによって区画され一体に形成された板状物を切削ブレードで分割予定ラインを切断して個々のチップに分割する際に用いられるチャックテーブルであって、板状物を保持する表面を有するラバーと、該ラバーの裏面を支持する基台とから構成され、該ラバーの表面には、分割予定ラインに対応して切削ブレードの切り込みを受け入れる複数の逃げ溝と、該逃げ溝によって区画された領域に個々のチップを吸引保持する吸引孔とが形成され、該基台には、該吸引孔に連通する連通孔が形成され、該ラバーの表面には、該逃げ溝によって区画された領域の周縁に突起が形成され、該突起は、該逃げ溝によって区画された領域の4隅に形成されるチャックテーブルである。
【0009】
突起の大きさは、40~50μm角で高さ3~7μmであるのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供するチャックテーブルは、板状物を保持する表面を有するラバーと、該ラバーの裏面を支持する基台とから構成され、該ラバーの表面には、分割予定ラインに対応して切削ブレードの切り込みを受け入れる複数の逃げ溝と、該逃げ溝によって区画された領域に個々のチップを吸引保持する吸引孔とが形成され、該基台には、該吸引孔に連通する連通孔が形成され、該ラバーの表面には、該逃げ溝によって区画された領域の周縁に突起が形成され、該突起は、該逃げ溝によって区画された領域の4隅に形成されるので、吸引力を作用させた際には、ラバーの突起がつぶれて板状物および分割されたチップがラバーの表面に密着し、板状物および分割されたチップを確実に吸引保持し、吸引力を解除した際には、ラバーの突起が元の形状に戻り、分割されたチップとラバーの表面との接触面積が減少して密着力が低減し、分割されたチップをチャックテーブルから確実に搬出することができ、チャックテーブルにいくつかのチップが残存するという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】パッケージ基板の斜視図。
図2】加工前チャックテーブルの斜視図。
図3】(a)逃げ溝によって区画された領域に突起が形成されている状態を示す斜視図、(b)逃げ溝によって区画された領域に突起が形成されている状態を示す断面図。
図4】逃げ溝によって区画された領域の4隅に突起が形成されたチャックテーブルの部分拡大斜視図。
図5】逃げ溝によって区画された領域のX軸方向中間部およびY軸方向中間部の計4箇所に突起が形成されたチャックテーブルの部分拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたチャックテーブルの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成されたチャックテーブルを備えるダイシング装置によって個々のチップに分割される板状物の一例としての矩形状のパッケージ基板2が示されている。パッケージ基板2は、複数のチップ4が格子状の分割予定ライン6によって区画され一体に形成されている。各チップ4にはIC、LSI等のデバイスが配設されており、各デバイスはモールド樹脂で封止されている。1mm角以下に形成され得る各チップ4は、図示の実施形態では約0.5mm角に形成されている。そして、このパッケージ基板2は、ダイシング装置の切削ブレード(図示していない。)で分割予定ライン6が切断され、デバイスごとの個々のチップ4に分割される。
【0014】
図2ないし図4を参照して、本発明に従って構成されたチャックテーブルの構造や製造過程について説明する。本発明のチャックテーブルを製造する際は、まず、図2に示す加工前チャックテーブル8を準備する。この加工前チャックテーブル8は、板状物を保持する表面10aを有するラバー10と、ラバー10の裏面を支持する基台12とから構成されている。図示の実施形態におけるラバー10は、パッケージ基板2の寸法に対応する寸法(パッケージ基板2の寸法よりも若干大きい寸法)を有する矩形状に形成されている。
【0015】
図2に示すとおり、ラバー10の表面10aには、パッケージ基板2の格子状の分割予定ライン6に対応してダイシング装置の切削ブレードの切り込みを受け入れる格子状の複数の逃げ溝14と、逃げ溝14によって区画された領域に個々のチップ4を吸引保持する吸引孔16とが形成されている。逃げ溝14で区画された矩形状の各領域のサイズは、パッケージ基板2の各チップ4のサイズに対応しており、図示の実施形態では約0.5mm角に形成されている。また、基台12には、ラバー10の各吸引孔16に連通する複数の連通孔(図示していない。)が形成されている。なお、図面はあくまで模式図であり、各部の寸法は誇張して表現している。
【0016】
加工前チャックテーブル8を準備した後、ラバー10の表面10aにおける逃げ溝14によって区画された領域に突起を形成する。突起の形成は、たとえば図3に一部を示す研削装置を用いて実施することができる。研削装置は、加工前チャックテーブル8を保持する保持テーブル(図示していない。)と、保持テーブルに保持された加工前チャックテーブル8を研削する研削ホイール18とを備える。
【0017】
保持テーブルは、図3に矢印Xで示すX軸方向にX軸送り手段(図示していない。)によって進退されると共に、上下方向を軸心として保持テーブル用モータ(図示していない。)によって回転される。また、研削ホイール18の外周には、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドで固めることにより形成され得る環状の研削砥石20が配設されている。この研削ホイール18は、X軸方向と直交するY軸方向(図3に矢印Yで示す方向)を軸心として研削ホイール用モータ(図示していない。)によって回転されると共に、Y軸方向にY軸送り手段によって進退され、かつ上下方向に昇降手段(図示していない。)によって昇降される。研削砥石20の軸方向の厚みは、逃げ溝14によって区画された領域よりも小さく、図示の実施形態では、400~420μm程度に形成されている。なお、X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0018】
図3を参照して説明を続けると、逃げ溝14によって区画された領域に上記研削装置を用いて突起を形成する際は、まず、ラバー10の表面10aを上に向けて、研削装置の保持テーブルで加工前チャックテーブル8を保持する。次いで、ラバー10の長手方向をX軸方向に整合させると共に、逃げ溝14によって区画された領域の上方に研削ホイール18を位置づける。次いで、図3(a)に矢印Aで示す方向に回転させた研削ホイール18を下降させ、図3(b)に示すとおりにラバー10の表面10aに研削砥石20を若干押圧させると共に、研削ホイール18に対して保持テーブルを相対的にX軸方向に加工送りすることによって、逃げ溝14によって区画された領域の両側端部を残してX軸方向に沿ってラバー10の表面10aを研削する研削加工を施す。
【0019】
次いで、逃げ溝14によって区画された領域のY軸方向の間隔の分だけ、保持テーブルに対して研削ホイール18を相対的にY軸方向に割り出し送りする。そして、研削加工と割り出し送りとを交互に繰り返し、逃げ溝14によって区画された領域のすべてに研削加工を施すと共に、保持テーブルを90度回転させた上で研削加工と割り出し送りとを交互に繰り返す。このようにして逃げ溝14によって区画された領域のすべてに格子状に研削加工を施して、図4に示すとおり、逃げ溝14によって区画されたすべての領域の4隅に突起22を形成する。図示の実施形態における突起22の大きさは、数十μm角(たとえば40~50μm角程度)で高さ数μm(たとえば3~7μm程度)である。
【0020】
研削砥石20でラバー10の表面10aを研削して突起22を形成する際は、研削水を研削領域に供給することなく乾式で実施するのが好ましい。研削水を研削領域に供給すると、ラバー10の表面10aと研削砥石20との間に研削水が入り込んでしまいラバー10の表面10aを所要深さに研削できない場合があるからである。
【0021】
上述のとおりにして逃げ溝14によって区画された領域の4隅に突起22が形成されたチャックテーブル24は、ダイシング装置(図示していない。)に搭載され、基台12の各連通孔がダイシング装置の吸引手段に接続される。そして、このダイシング装置の切削ブレードでパッケージ基板2の分割予定ライン6を切断して、パッケージ基板2をデバイスごとの個々のチップ4に分割する際は、まず、パッケージ基板2の分割予定ライン6とラバー10の逃げ溝14とを整合させた上で、チャックテーブル24のラバー10の表面10aにパッケージ基板2を載置する。次いで、各連通孔に接続された吸引手段を作動させて、ラバー10の表面10aに吸引力を作用させる。そうすると、ラバー10の突起22がつぶれてパッケージ基板2がラバー10の表面10aに密着するので、チャックテーブル24はパッケージ基板2を確実に吸引保持することができる。また、チャックテーブル24は、切削ブレードで分割予定ライン6を切断してパッケージ基板2を個々のチップ4に分割した後においても、ラバー10の表面10aに吸引力を作用させている間は、分割されたチップ4を確実に吸引保持することができる。そして、吸引力を解除すると、ラバー10の突起22が元の形状に戻り、分割されたチップ4とラバー10の表面10aとの接触面積が減少して密着力が低減するので、分割されたチップ4をチャックテーブル24から確実に搬出することができ、チャックテーブル24にいくつかのチップ4が残存するという問題を解決することができる。
【0022】
なお、図示の実施形態では、研削砥石20でラバー10の表面10aを研削して突起22を形成する例を説明したが、プレス加工によってラバー10の表面10aに突起22を形成してもよい。また、図示の実施形態では、逃げ溝14によって区画された領域の4隅に突起22が形成されている例を説明したが、図5に示すとおり、逃げ溝14によって区画された領域のX軸方向中間部およびY軸方向中間部の計4箇所に突起22が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0023】
2:パッケージ基板(板状物)
4:チップ
6:分割予定ライン
8:加工前チャックテーブル
10:ラバー
10a:ラバーの表面
12:基台
14:逃げ溝
16:吸引孔
22:突起
24:チャックテーブル
図1
図2
図3
図4
図5