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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221114BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20221114BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20221114BHJP
   B24B 37/005 20120101ALI20221114BHJP
【FI】
H01L21/304 621B
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
B24B7/04 A
B24B37/10
B24B37/005 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018188268
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020057710
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白濱 智宏
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-238853(JP,A)
【文献】特開2016-012594(JP,A)
【文献】特開2009-259959(JP,A)
【文献】特開平05-177533(JP,A)
【文献】特開2015-053468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
B24B 37/10
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを薄化するウェーハの加工方法であって、
該ウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、
該ウェーハの保護部材側をチャックテーブルの保持面で保持し、砥粒をボンド材で固定した研削砥石で該ウェーハの裏面側を研削して薄化する研削ステップと、
該研削ステップの後、該ウェーハの裏面側にスラリーを供給しつつ回転する研磨パッドを押圧し、研削で形成された研削歪み層が僅かに残存する状態になるまで該ウェーハの裏面側を研磨してゲッタリング層を生成する研磨ステップと、を備え、
該ウェーハは、板状の支持基板に搭載されたデバイスチップがモールド樹脂で覆われたパッケージウェーハであって、
該研削ステップでは、該デバイスチップが露出するまでモールド樹脂側を研削し、
該研磨ステップでは、研削で露出した該デバイスチップの表面に該研削歪み層が僅かに残存する状態になるまでパッケージウェーハの該モールド樹脂側の面を研磨するウェーハの加工方法。
【請求項2】
該研磨ステップの研磨条件を決定するために、該研削ステップ実施後の該ウェーハを研磨して、研磨された後の該ウェーハの該裏面側の表面粗さを、該研磨パッドの押圧力又は研磨時間毎に測定し、該研磨ステップで仕上げる表面粗さに対応する研磨条件を選定する研磨条件選定ステップを、更に備える請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該研磨ステップでは、該研削歪み層の表面粗さが1nmを超え10nm以下になるよう該ウェーハの裏面側を研磨する請求項1または請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法、特に薄化加工に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、電子機器の軽薄短小化に伴い、薄く小さくする事が常に求められている。たとえば、メモリーデバイスは、薄くしたデバイスチップを多く積層して、サイズを大きくすることなく高性能化を実現する。多くのデバイスチップを積層するには、各デバイスチップの抗折強度を向上させる必要が生じるが、薄いデバイスチップの抗折強度を向上されるには、研削したウェーハの研削による歪み層を研磨によって除去する加工技術が進んだ。
【0003】
しかしながら、研削により歪み層を研磨によって除去する加工技術は、歪み層の除去にともない、デバイスチップのゲッタリング能力が無くなりデバイスの重金属汚染による特性不良という新たな問題が発生した。そこで、研磨して歪み層が除去された面にゲッタリング性能を有する程度に加工を施す加工技術が、各種考案された(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4871617号公報
【文献】特許第6192778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示された加工技術は、一旦、研磨して歪み層が除去された面に、ゲッタリング能力を有するための加工を行うという所要工数が増加という問題が発生していた。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所要工数の増加を抑制しながらもゲッタリング能力を付与することができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、ウェーハを薄化するウェーハの加工方法であって、該ウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、該ウェーハの保護部材側をチャックテーブルの保持面で保持し、砥粒をボンド材で固定した研削砥石で該ウェーハの裏面側を研削して薄化する研削ステップと、該研削ステップの後、該ウェーハの裏面側にスラリーを供給しつつ回転する研磨パッドを押圧し、研削で形成された研削歪み層が僅かに残存する状態になるまで該ウェーハの裏面側を研磨してゲッタリング層を生成する研磨ステップと、を備え、該ウェーハは、板状の支持基板に搭載されたデバイスチップがモールド樹脂で覆われたパッケージウェーハであって、該研削ステップでは、該デバイスチップが露出するまでモールド樹脂側を研削し、該研磨ステップでは、研削で露出した該デバイスチップの表面に該研削歪み層が僅かに残存する状態になるまでパッケージウェーハの該モールド樹脂側の面を研磨することを特徴とする。
【0008】
前記ウェーハの加工方法において、該研磨ステップの研磨条件を決定するために、該研削ステップ実施後の該ウェーハを研磨して、研磨された後の該ウェーハの該裏面側の表面粗さを、該研磨パッドの押圧力又は研磨時間毎に測定し、該研磨ステップで仕上げる表面粗さに対応する研磨条件を選定する研磨条件選定ステップを、更に備えても良い。
【0009】
前記ウェーハの加工方法において、該研磨ステップでは、該研削歪み層の表面粗さRaが1nmを超え10nm以下になるよう該ウェーハの裏面側を研磨しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本願発明のウェーハの加工方法は、所要工数の増加を抑制しながらもゲッタリング能力を付与することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、図2に示されたウェーハの加工方法の保護部材貼着ステップを示す斜視図である。
図4図4は、図2に示されたウェーハの加工方法の保護部材貼着ステップ後のウェーハを示す斜視図である。
図5図5は、図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で示す側面図である。
図6図6は、図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップ後のウェーハの要部の断面図である。
図7図7は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨ステップを示す側面図である。
図8図8は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨ステップ後のウェーハの要部の側面図である。
図9図9は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨条件選定ステップ前のウェーハの要部の断面図である。
図10図10は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハを示す斜視図である。
図11図11は、図10中のXI-XI線に沿う断面図である。
図12図12は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工後のウェーハを示す斜視図である。
図13図13は、図12中のXIII-XIII線に沿う断面図である。
図14図14は、図13中のXIVを拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0015】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、図1に示すウェーハ1を薄化する加工方法である。実施形態1では、ウェーハ1は、シリコン、サファイア、又はガリウムヒ素などを基板2とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハである。ウェーハ1は、図1及び図2に示すように、基板2の表面3の格子状の分割予定ライン4によって区画された複数の領域にそれぞれデバイス5が形成されている。デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等である。
【0016】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1を所定の仕上げ厚さ100まで薄化する方法である。実施形態1に係るウェーハの加工方法は、図2に示すように、保持部材貼着ステップST2と、研削ステップST3と、研磨ステップST4と、研磨条件選定ステップST5とを備える。実施形態1に係るウェーハの加工方法では、オペレータ等が研磨ステップST4における研磨条件が決定済みであるか否かを判定し(ステップST1)、研磨条件が決定済みであると判定する(ステップST1:Yes)と、保護部材貼着ステップST2に進む。なお、実施形態1では、研磨ステップST4における研磨条件は、新たな種類のウェーハ1が製造された際等に決定される。
【0017】
(保護部材貼着ステップ)
図3は、図2に示されたウェーハの加工方法の保護部材貼着ステップを示す斜視図である。図4は、図2に示されたウェーハの加工方法の保護部材貼着ステップ後のウェーハを示す斜視図である。
【0018】
保護部材貼着ステップST2は、ウェーハ1の基板2の表面3側に保護部材である粘着テープ200を貼着するステップである。実施形態1において、保護部材貼着ステップST2では、図3に示すように、ウェーハ1と同径の粘着テープ200の粘着層をウェーハ1の基板2の表面3側に対向させた後、図4に示すように、粘着テープ200の粘着層をウェーハ1の基板2の表面3に貼着する。実施形態1では、保護部材としてウェーハ1と同径の粘着テープ200を用いるが、本発明では、保護部材は、粘着テープ200に限定されずに、例えば、ウェーハ1と同径でかつ硬質な円板状の基板を用いても良い。ウェーハの加工方法は、ウェーハ1の基板2の表面3側に粘着テープ200を貼着すると、研削ステップST3に進む。
【0019】
(研削ステップ)
図5は、図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で示す側面図である。図6は、図2に示されたウェーハの加工方法の研削ステップ後のウェーハの要部の断面図である。研削ステップST3は、ウェーハ1の粘着テープ200側を研削装置20のチャックテーブル21の保持面22で保持し、砥粒をボンドで固定した研削砥石23でウェーハ1の表面3の裏側の裏面6側を研削して薄化するステップである。
【0020】
研削ステップST3では、研削装置20が、チャックテーブル21の保持面22に粘着テープ200を介してウェーハ1の表面3側を吸引保持する。研削ステップST3では、研削装置20が、図5に示すように、スピンドル24により研削ホイール25を回転しかつチャックテーブル21を軸心回りに回転しながらウェーハ1の裏面6上に研削水26を供給するとともに、研削ホイール25の研削砥石23をチャックテーブル21に所定の送り速度で近づけることによって、研削砥石23でウェーハ1の基板2の裏面6を研削する。
【0021】
ウェーハの加工方法は、図6に示すように、仕上げ厚さ100より若干厚い所定の厚さ101までウェーハ1を薄化すると、研磨ステップST4に進む。研削ステップST3後のウェーハ1は、図6に示すように、裏面6全体に研削ステップST3の研削加工で研削歪み層7が形成されている。研削歪み層7は、ウェーハ1の基板2の裏面6の表層に結晶欠陥、歪みが形成された層であり、ウェーハ1に付着した銅(Cu)などの金属を主とする不純物を捕捉して、デバイス5の不純物による金属汚染を抑制する所謂ゲッタリング能力を発揮する層である。なお、所定の厚さ101は、研磨ステップST4において決定された研磨条件でウェーハ1を研磨した際に研削歪み層7を除去する厚さ方向の寸法(以下、除去量と記す)102を仕上げ厚さ100に加えた厚さであるのが望ましい。
【0022】
(研磨ステップ)
図7は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨ステップを示す側面図である。図8は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨ステップ後のウェーハの要部の側面図である。研磨ステップST4は、研削ステップST3の後、ウェーハ1の裏面6側にスラリーを供給しつつ回転する研磨装置30の研磨パッド33を押圧し、研削で形成された研削歪み層7が僅かに残存する状態になるまでウェーハ1の裏面6側を研磨して、ゲッタリング層7-1を生成するステップと、を備えるウェーハの加工方法。
【0023】
研磨ステップST4では、研磨装置30が、チャックテーブル31の保持面32に粘着テープ200を介してウェーハ1の表面3側を吸引保持する。研磨ステップST4では、図6に示すように、スピンドル34により研磨ホイール35を回転しかつチャックテーブル31を軸心回りに回転しながらスラリー供給源36から開閉弁37及び研磨ホイール35内等に設けられた供給路38を通して研磨液であるスラリーを研磨ホイール35の研磨パッド33とウェーハ1の裏面6との間に供給するとともに、研磨パッド33をチャックテーブル31に所定の送り速度で近づけることによって、研磨パッド33でウェーハ1の裏面6を研磨する。
【0024】
実施形態1において、研磨ステップST4では、研磨装置30が、研磨液として砥粒を含むスラリーを供給しながらウェーハ1の裏面6を研磨するが、本発明では、研磨液として純水を供給しながら固定砥粒を有する研磨パッド33を用いてウェーハ1の裏面6を研磨しても良く、研磨液としてアルカリ性の研磨液を供給しながら研磨パッド33を用いて化学的機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)を実施しても良い。
【0025】
また、研磨ステップST4では、予め決定された研磨条件通りにウェーハ1の裏面6を研磨する。実施形態1では、研磨条件は、研磨パッド33をウェーハ1の裏面6に押圧する押圧力、研磨時間であり、研磨ステップST4において、研削歪み層7の表層を研磨によって除去するとともに、研削歪み層7を僅かに残存させて平坦化し、研削歪み層7の表面即ちウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが、1nmを超えかつ10nm以下となるように研磨する条件である。即ち、本発明でいう、研削歪み層7が僅かに残存する状態になるまでウェーハ1の裏面6を研磨するとは、研磨後に残存する研削歪み層7の表面粗さRa即ちウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下となるようにウェーハ1の裏面6を研磨することをいう。なお、表面粗さRaは、所謂算術平均粗さである。このように、研磨ステップST4では、研磨装置30は、研削歪み層7を薄化するとともに、図8に示すように、研削歪み層7の表面即ちウェーハ1の基板2の裏面6を研磨して、研削歪み層7をゲッタリング能力を有するゲッタリング層7-1に形成するとともに、ウェーハ1を仕上げ厚さ100まで薄化する。
【0026】
実施形態1に係るウェーハの加工方法では、研磨ステップST4の加工条件の研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間15secとして、ゲッタリング層7-1の表面即ちウェーハ1の基板2の裏面6の表面粗さRaを7nm以上でかつ8nm以下に形成するが、本発明は、研磨ステップST4の加工条件の研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間30secとして、ゲッタリング層7-1の表面即ちウェーハ1の基板2の裏面6の表面粗さRaを4nm以上でかつ6nm以下に形成しても良く、研磨ステップST4の加工条件の研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間60secとして、ゲッタリング層7-1の表面即ちウェーハ1の基板2の裏面6の表面粗さRaを2nm以上でかつ3nm以下に形成しても良い。
【0027】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法では、研磨ステップST4において用いる研磨パッド33の直径は、例えば、450mmであり、研磨パッド33の厚さは、例えば、4mmである。また、実施形態1に係るウェーハの加工方法では、研磨ステップST4において、スピンドル34の回転数は、例えば、500rpmであり、チャックテーブル31の回転数は、505rpmであり、スラリーの供給量は、0.2L/minである。ウェーハの加工方法は、研磨ステップST4において、加工条件通りにウェーハ1の裏面6を研磨すると終了する。
【0028】
また、ウェーハの加工方法では、研磨条件が決定済みではないと判定する(ステップST1:No)と、研削条件選定ステップST5に進む。
【0029】
(研磨条件選定ステップ)
図9は、図2に示されたウェーハの加工方法の研磨条件選定ステップ前のウェーハの要部の断面図である。研磨条件選定ステップST5は、研磨ステップST4の研磨条件を決定するために、研削ステップST3実施後のウェーハ1を研磨して、研磨された後のウェーハ1の裏面6側の表面粗さRaを、研磨パッド33の押圧力又は研磨時間毎に測定し、研磨ステップST4で仕上げる表面粗さRaに対応する研磨条件を選定するステップである。
【0030】
研磨条件選定ステップST5では、まず、研削ステップST3が実施されたウェーハ1を複数準備し、各ウェーハ1毎に研磨条件を異ならせて、研磨ステップST4と同様に、研磨装置30を用いて、ウェーハ1の裏面6を研磨して、研削歪み層7を薄化するとともに研削歪み層7の表面即ちウェーハ1の裏面6を平坦化してゲッタリング層7-1を形成する。研磨条件選定ステップST5では、図9に示す研削ステップST3後のウェーハにおいて、加工条件毎即ち研磨パッド33の押圧力又は研磨時間毎に、研削歪み層7の除去量102と残し量(研削歪み層7の厚さ103から除去量102を除いた量)104が異なり、研磨後のゲッタリング層7-1の表面即ちウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが異なる。なお、残し量104は、研磨ステップST4後のゲッタリング層7-1の厚さでもある。
【0031】
実施形態1において、研磨条件選定ステップST5の除去量102が大きいほど、ゲッタリング層7-1の表面即ちウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが小さくなる。なお、実施形態1では、ウェーハ1の分割後のデバイス5は、ゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaが大きくなるとゲッタリング能力(不純物を捕捉する能力)が向上するが、抗折強度が低下する。
【0032】
研磨条件選定ステップST5では、研磨パッド33の押圧力又は研磨時間毎に、研磨後のウェーハ1の裏面6の表面粗さRaを測定し、複数の研磨条件のうち裏面6の表面粗さRaが、研磨ステップST4で仕上げる表面粗さである1nmを超えかつ10nm以下の範囲内の加工条件を、研磨ステップST4の加工条件として選定する。なお、研磨条件選定ステップST5では、研磨後のウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下の範囲内の加工条件が複数存在した場合には、ウェーハ1の分割後のデバイス5に要求されるゲッタリング能力と抗折強度とを考慮して、加工条件を選定するのが望ましい。ウェーハの加工方法は、研磨ステップST4の加工条件を選定すると、保護部材貼着ステップST2に進む。
【0033】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1の裏面6を研削する研削ステップST3後の研磨ステップST4において、研削歪み層7を完全に除去することなく、僅かに研削歪み層7を残存させるよう研磨による除去量102を設定してから研磨ステップST4においてウェーハ1の裏面6を研磨する。このために、ウェーハの加工方法は、抗折強度を向上させつつゲッタリング能力を有するゲッタリング層7-1を形成した状態でウェーハ1の加工を終了するため、効率的なウェーハの薄化と研磨を実施出来る。その結果、ウェーハの加工方法は、研磨ステップST4後に更にゲッタリング能力を付与するための工程が不要となり、所要工数の増加を抑制しながらもウェーハ1及びウェーハ1から個々に個片化されたデバイス5にゲッタリング能力を付与することができるという効果を奏する。
【0034】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、研磨条件選定ステップST5において、研削ステップST3実施後のウェーハ1を研磨ステップST4と同様に加工条件を異ならせて複数研磨して、適切な研磨条件を選定する。その結果、ウェーハの加工方法は、研磨ステップST4後に更にゲッタリング能力を付与するための工程を不要としながらもウェーハ1から個々に個片化されたデバイス5へのゲッタリング能力の付与と抗折強度の向上を図ることができる。
【0035】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、研磨ステップST4では、研削歪み層7の表面即ちウェーハ1の裏面6の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下になるように、ウェーハ1の裏面6を研磨するので、研磨ステップST4後に更にゲッタリング能力を付与するための工程を不要としながらもウェーハ1から個々に個片化されたデバイス5へのゲッタリング能力の付与と抗折強度の向上を図ることができる。
【0036】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図10は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハを示す斜視図である。図11は、図10中のXI-XI線に沿う断面図である。図12は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工後のウェーハを示す斜視図である。図13は、図12中のXIII-XIII線に沿う断面図である。図14は、図13中のXIVを拡大して示す図である。なお、図10図11図12図13及び図14において、実施形態1と同一部分に同意何時符号を付して説明を省略する。
【0037】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、加工対象のウェーハ1-2が異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハ1-2は、図10及び図11に示すように、複数のデバイスチップ10と、円板状の支持基板11と、モールド樹脂12とを備える。
【0038】
デバイスチップ10は、例えば、実施形態1に示されたウェーハ1が分割予定ライン4に沿って分割されるなどして製造されるものである。デバイスチップ10は、支持基板11上にデバイス5が形成された表面3が重ねられて、支持基板11上に等間隔に搭載されている。実施形態2において、支持基板11は、デバイスチップ10の電極と接続される図示しない配線層を備えるものであるが、本発明では、これに限定されない。モールド樹脂12は、合成樹脂からなり支持基板11上の複数のデバイスチップ10を被覆している。このように、実施形態2に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハ1-2は、支持基板11上に搭載されたデバイスチップ10がモールド樹脂12で覆われた所謂パッケージウェーハである。
【0039】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、保護部材貼着ステップST2と、研削ステップST3と、研磨ステップST4と、研磨条件選定ステップST5とを備える。実施形態2に係るウェーハの加工方法は、保護部材貼着ステップST2では、図12に示すように、ウェーハ1-2の支持基板11の表面11-1側に保護部材である粘着テープ200を貼着する。実施形態2に係るウェーハの加工方法は、研削ステップST3では、ウェーハ1-2の粘着テープ200側を研削装置20のチャックテーブル21で保持し、研削砥石23でウェーハ1-2の裏面であるモールド樹脂12の表面12-1を研削して、図12及び図13に示すように、ウェーハ1-2をモールド樹脂12の表面12-1側にデバイスチップ10が露出するまでモールド樹脂12を研削し、デバイスチップ10の表面3の裏側の裏面6に研削歪み層7を形成する。
【0040】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、研磨ステップST4では、ウェーハ1-2のモールド樹脂12の表面12-1及び研削で露出したデバイスチップ10の裏面6にスラリーを供給しながら実施形態1と同様に研削歪み層7が僅かに残存する状態になるまで、ウェーハ1-2のモールド樹脂12側の裏面6及び表面12-1を研磨して、図14に示すように、デバイスチップ10の裏面6に実施形態1と同じ表面粗さRaのゲッタリング層7-1を形成する。
【0041】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、ウェーハ1-2の各デバイスチップ10の裏面6を研削する研削ステップST3後の研磨ステップST4において、研削歪み層7を完全に除去することなく、僅かに研削歪み層7を残存させるよう研磨による除去量102を設定してから研磨ステップST4においてウェーハ1-2の裏面6を研磨する。その結果、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、実施形態1と同様に、研磨ステップST4後に更にゲッタリング能力を付与するための工程が不要となり、所要工数の増加を抑制しながらもウェーハ1-2及びウェーハ1-2から個々に個片化されたデバイス5を含むデバイスチップ10にゲッタリング能力を付与することができるという効果を奏する。
【0042】
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、研磨ステップST4において、研削歪み層7を完全に除去することなく、僅かに研削歪み層7を残存させるように研磨して、残存した研削歪み層7をゲッタリング層7-1とするので、特に、支持基板11上に配置されたデバイスチップ10をモールド樹脂12で被覆したパッケージウェーハであるウェーハ1-2の加工に係る所要工数を抑制しながらもデバイスチップ10にゲッタリング層7-1を形成することができる。
【0043】
次に、本発明の発明者は、本発明のウェーハの加工方法の効果を確認した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1では、本発明の発明者は、研削ステップST3後の複数のウェーハ1を研磨条件を異ならせて研磨ステップST4と同様に研磨して、比較例1、比較例2、本発明品1、本発明品2及び本発明品3を生成した。本発明の発明者は、比較例1、比較例2、本発明品1、本発明品2及び本発明品3それぞれにおいて残存した研削歪み層7即ちゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRa、ゲッタリング能力、分割後の抗折強度を確認した。なお、表1の比較例1、比較例2、本発明品1、本発明品2及び本発明品3それぞれにおいて、研削ステップST3後のウェーハ1の研削歪み層7の表面の表面粗さRaは、約10nmであった。
【0046】
比較例1の研磨条件は、研磨パッド33の押圧力を25kPaとし、研磨時間を2minとした。比較例2の研磨条件は、研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間を5secとした。本発明品1の研磨条件は、研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間を60secとした。本発明品2の研磨条件は、研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間を30secとした。本発明品3の研磨条件は、研磨パッド33の押圧力を15kPaとし、研磨時間を15secとした。
【0047】
比較例1のゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaは、1nm以下であり、比較例2のゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaは、10nmを超えた。また、本発明品1のゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaは、2nm以上でかつ3nm以下であり、本発明品2のゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaは、4nm以上でかつ6nm以下であり、本発明品3のゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaは、7nm以上でかつ8nm以下であった。
【0048】
また、表1は、個々に個片後に要求されるゲッタリング能力を有するものを丸で示し、要求されるゲッタリング能力を有しないものをバツで示す。また、表1は、個々に個片後に要求される抗折強度を有するものを丸で示し、要求される抗折強度を有しないものをバツで示す。
【0049】
表1によれば、比較例1は、ゲッタリング能力がバツであるのに対し、本発明品1、本発明品2及び本発明品3は、ゲッタリング能力が丸であった。よって、表1によれば、研削ステップST3後のウェーハ1,1-2を残存した研削歪み層7ゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下となるように研磨ステップST4において研磨することにより、要求されるゲッタリング能力を付与できることが明らかとなった。
【0050】
また、表1によれば、比較例2は、抗折強度がバツであるのに対し、本発明品1、本発明品2及び本発明品3は、抗折強度が丸であった。よって、表1によれば、研削ステップST3後のウェーハ1,1-2を残存した研削歪み層7ゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下となるように研磨ステップST4において研磨することにより、要求される抗折強度を付与できることが明らかとなった。よって、表1によれば、研削ステップST3後のウェーハ1,1-2をゲッタリング層7-1の表面の表面粗さRaが1nmを超えかつ10nm以下となるように研磨ステップST4において研磨することにより、要求されるゲッタリング能力と抗折強度との双方を付与することができ、研磨ステップST4後に更にゲッタリング能力を付与するための工程を不要としながらもゲッタリング能力の付与と抗折強度の向上を図ることができることが明らかとなった。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ウェーハ
1-2 ウェーハ(パッケージウェーハ)
3,11-1 表面
6 裏面
7 研削歪み層
7-1 ゲッタリング層
11 支持基板
12 モールド樹脂
12-1 モールド樹脂の表面(ウェーハの裏面)
21 チャックテーブル
22 保持面
23 研削砥石
33 研磨パッド
200 粘着テープ(保護部材)
ST2 保護部材貼着ステップ
ST3 研削ステップ
ST4 研磨ステップ
ST5 研磨条件選定ステップ
図1
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