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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】充填塔及び充填物
(51)【国際特許分類】
   B01J 10/00 20060101AFI20221114BHJP
   B01J 19/32 20060101ALI20221114BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20221114BHJP
   B01D 3/16 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B01J10/00 102
B01J19/32
B01D53/18 130
B01D3/16 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019027785
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020131112
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木原 均
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 一俊
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-128735(JP,A)
【文献】特開平8-206492(JP,A)
【文献】特開昭63-151331(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第87107241(CN,A)
【文献】特開昭54-72884(JP,A)
【文献】特公昭48-26267(JP,B2)
【文献】実公昭35-7769(JP,Y1)
【文献】米国特許第4882130(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00
B01J 19/32
B01D 53/18
B01D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔体の内部に充填物が充填された充填塔であって、
前記充填物は、山折りと谷折りとを繰り返すことにより波状に折り曲げられた第1の波板材及び第2の波板材を有して、前記第1の波板材の両面に並列して設けられた複数の第1の溝部と、前記第2の波板材の両面に並列して設けられた複数の第2の溝部とが前記塔体の軸線方向に対して互いに逆向きに傾斜するように、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを前記塔体の軸線方向とは直交する方向に交互に積層した状態で、前記塔体の内部に配置されており、
前記第1の波板材は、前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第1の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第1の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置され、
前記第2の波板材は、前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第2の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第2の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置されていることを特徴とする充填塔。
【請求項2】
前記他方の側端部の前記塔体の内壁面から離間する最大幅が、1~10mmであることを特徴とする請求項1に記載の充填塔。
【請求項3】
前記充填物は、前記塔体の内部形状に合わせて、前記第1の波板材と前記第2の波板材との幅を順次変えながら、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを交互に積層した状態で、前記塔体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の充填塔。
【請求項4】
前記充填物は、前記第1の波板材及び前記第2の波板材の積層方向が交差するように、前記塔体の軸線方向に複数積層された状態で配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の充填塔。
【請求項5】
前記充填物は、前記第1の波板材と前記第2の波板材とが交互に積層された状態で、その周囲を囲むカラーにより固定されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の充填塔。
【請求項6】
塔体の内部に充填される充填塔の充填物であって、
山折りと谷折りとを繰り返すことにより波状に折り曲げられた第1の波板材及び第2の波板材を有して、前記第1の波板材の両面に並列して設けられた複数の第1の溝部と、前記第2の波板材の両面に並列して設けられた複数の第2の溝部とが前記塔体の軸線方向に対して互いに逆向きに傾斜するように、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを前記塔体の軸線方向とは直交する方向に交互に積層した構造を有し、
前記第1の波板材の前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第1の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第1の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置され、
前記第2の波板材の前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第2の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第2の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置されるように、
前記第1の波板材と前記第2の波板材とが交互に積層された状態で、その周囲を囲むカラーにより固定された構造を有することを特徴とする充填物。
【請求項7】
前記他方の側端部の前記塔体の内壁面から離間する最大幅が、1~10mmであることを特徴とする請求項6に記載の充填物。
【請求項8】
前記塔体の内部形状に合わせて、前記第1の波板材と前記第2の波板材との幅を順次変えながら、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを交互に積層した構造を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の充填物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填塔及び充填物に関する。
【背景技術】
【0002】
塔体の内部に充填物が充填された充填塔は、化学工業分野において、蒸留塔(精留塔)や吸収塔などに広く利用されている。また、充填物は、波状に折り曲げられた複数の波板材を積層すると共に、これら複数の波板材の両面に並列して設けられた複数の溝部が互いに隣接する波板材の間で交差した構造を有している。
【0003】
充填塔では、波板材の積層方向が塔体の軸線方向(高さ方向)とは直交した方向(径方向)となるように、塔体の内部に充填物が配置されると共に、波板材の積層方向が交差するように、塔体の高さ方向に複数の充填物が積層された状態で配置されている。
【0004】
このような充填塔では、充填物の表面で気液接触を行わせることで、蒸留する原料の沸点差を利用して、その低沸点留分(気相)を塔体の上部側から、その高沸点留分(液相)を塔体の下部側から、それぞれ分留(精留)させることが可能となっている。
【0005】
ところで、充填塔では、塔体の高さが大きくなるに従って、充填物の外周部分や塔体の内壁面に液が集まり、充填物の外周部分や塔体の内壁面に沿って液が流れ落ちる偏流が発生してしまい、充填物の表面で十分な気液接触を行わせることが困難となることが知られている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【0006】
そこで、下記特許文献1には、偏流防止策として、充填物を構成する薄層物の波形溝において、充填塔の塔軸に傾斜して設置してある該波形溝の下方部の直径方向の端部に、該波形溝の端部の上面を切り欠く切欠き部を設置したり、該波形溝を構成する上面部を下方に折り曲げた折曲げ部を設置したりすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平07-185316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている充填物の構造では、薄層物(波板材)の加工が複雑となり、充填物の製造コストが嵩んでしまうといった欠点がある。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、簡便な構造を有しながら、偏流の発生を防止し、十分な気液接触を行わせることを可能とした充填塔及び充填物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 塔体の内部に充填物が充填された充填塔であって、
前記充填物は、山折りと谷折りとを繰り返すことにより波状に折り曲げられた第1の波板材及び第2の波板材を有して、前記第1の波板材の両面に並列して設けられた複数の第1の溝部と、前記第2の波板材の両面に並列して設けられた複数の第2の溝部とが前記塔体の軸線方向に対して互いに逆向きに傾斜するように、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを前記塔体の軸線方向とは直交する方向に交互に積層した状態で、前記塔体の内部に配置されており、
前記第1の波板材は、前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第1の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第1の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置され、
前記第2の波板材は、前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第2の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第2の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置されていることを特徴とする充填塔。
〔2〕 前記他方の側端部の前記塔体の内壁面から離間する最大幅が、1~10mmであることを特徴とする前記〔1〕に記載の充填塔。
〔3〕 前記充填物は、前記塔体の内部形状に合わせて、前記第1の波板材と前記第2の波板材との幅を順次変えながら、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを交互に積層した状態で、前記塔体の内部に配置されていることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の充填塔。
〔4〕 前記充填物は、前記第1の波板材及び前記第2の波板材の積層方向が交差するように、前記塔体の軸線方向に複数積層された状態で配置されていることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の充填塔。
〔5〕 前記充填物は、前記第1の波板材と前記第2の波板材とが交互に積層された状態で、その周囲を囲むカラーにより固定されていることを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の充填塔。
〔6〕 塔体の内部に充填される充填塔の充填物であって、
山折りと谷折りとを繰り返すことにより波状に折り曲げられた第1の波板材及び第2の波板材を有して、前記第1の波板材の両面に並列して設けられた複数の第1の溝部と、前記第2の波板材の両面に並列して設けられた複数の第2の溝部とが前記塔体の軸線方向に対して互いに逆向きに傾斜するように、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを前記塔体の軸線方向とは直交する方向に交互に積層した構造を有し、
前記第1の波板材の前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第1の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第1の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置され、
前記第2の波板材の前記塔体の内壁面に対向する一対の側端部のうち、前記第2の溝部の上端が位置する一方の側端部が前記塔体の内壁面に沿って配置されると共に、前記第2の溝部の下端が位置する他方の側端部が前記塔体の内壁面から離間する方向に傾斜して配置されるように、
前記第1の波板材と前記第2の波板材とが交互に積層された状態で、その周囲を囲むカラーにより固定された構造を有することを特徴とする充填物。
〔7〕 前記他方の側端部の前記塔体の内壁面から離間する最大幅が、1~10mmであることを特徴とする前記〔6〕に記載の充填物。
〔8〕 前記塔体の内部形状に合わせて、前記第1の波板材と前記第2の波板材との幅を順次変えながら、前記第1の波板材と前記第2の波板材とを交互に積層した構造を有することを特徴とする前記〔6〕又は〔7〕に記載の充填物。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、簡便な構造を有しながら、偏流の発生を防止し、十分な気液接触を行わせることを可能とした充填塔及び充填物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る充填塔の構成を示す縦断面図である。
図2図1に示す充填塔の構成を示す横断面図である。
図3図1に示す充填塔が備える充填物の構成を示す斜視図である。
図4図3に示す充填物の一部を拡大して示す斜視図である。
図5図3に示す充填物を構成する第1の波板材の塔体内に配置された状態を示す平面図である。
図6図3に示す充填物を構成する第2の波板材の塔体内に配置された状態を示す平面図である。
図7図3に示す充填物を構成する第1の波板材と第2の波板材との積層構造を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0014】
(充填塔)
先ず、本発明の一実施形態として図1及び図2に示す充填塔1について説明する。
なお、図1は、充填塔1の構成を示す縦断面図である。図2は、充填塔1の構成を示す横断面図である。
【0015】
本実施形態の充填塔1は、図1及び図2に示すように、略円筒状を為す塔体2と、塔体2の内部に充填された充填物3とを備えている。また、塔体2の内部には、複数の充填物3が塔体2の軸線方向(以下、「塔体2の高さ方向」という。)に積層された状態で配置されている。なお、図1では、便宜上2つの充填物3のみを図示している。
【0016】
充填塔1では、充填物3の表面で気液接触を行わせることで、蒸留する原料の沸点差を利用して、その低沸点留分(気相)を塔体2の上部側から、その高沸点留分(液相)を塔体2の下部側から、それぞれ分留(精留)させることが可能である。
【0017】
なお、塔体2については、後述する充填物3が充填可能な構成であればよく、その形状や材質等について特に限定されるものではない。
【0018】
(充填物)
次に、上記充填物3の具体的な構成について、図1図7を参照しながら説明する。
なお、図3は、充填物3の構成を示す斜視図である。図4は、充填物3の一部を拡大して示す斜視図である。図5(a),(b)は、充填物3を構成する第1の波板材4の塔体2内に配置された状態を示す平面図である。図6(a),(b)は、充填物3を構成する第2の波板材5の塔体2内に配置された状態を示す平面図である。図7(a)~(d)は、充填物3を構成する第1の波板材4と第2の波板材5との積層構造を説明するための模式図である。
【0019】
本実施形態の充填物3は、図3及び図4に示すような規則充填物であり、山折りと谷折りとを繰り返すことにより波状に折り曲げられた略矩形状の第1の波板材4及び第2の波板材5を有している。第1の波板材4の両面には、複数の第1の溝部4aが一定の間隔及び深さで並列して設けられている。同様に、第2の波板材5の両面には、複数の第2の溝部5aが一定の間隔及び深さで並列して設けられている。
【0020】
第1の波板材4及び第2の波板材5は、例えば、アルミニウムや銅、ステンレスなどの薄板からなり、その板厚は0.1~0.3mm程度である。また、第1の波板材4及び第2の波板材5の形状については、湾曲した状態で繰り返し折り曲げられた波型形状であっても、屈曲した状態で繰り返し折り曲げられた波型形状であってもよい。
【0021】
充填物3は、図2図3及び図4に示すように、第1の溝部4aと第2の溝部5aとが塔体2の高さ方向に対して互いに逆向きに傾斜するように、第1の波板材4と第2の波板材5とを塔体2の軸線方向とは直交する方向(以下、「塔体2の径方向」という。)に交互に積層した構造を有している。また、第1の溝部4a及び第2の溝部5aは、塔体2の高さ方向に対して互いに逆向きに30~60°となる角度範囲で傾斜している。
【0022】
さらに、充填物3は、塔体2の内部形状に合わせて、第1の波板材4と第2の波板材5との幅を順次変えながら、第1の波板材4と第2の波板材5とを交互に積層した(重ね合わせた)状態で、その周囲を囲むリング状のカラー6により固定(結束)された構造を有している。これにより、充填物3は、全体として略円柱状に形成されており、塔体2の内部において、塔体2の径方向にほぼ隙間無く充填することが可能となっている。
【0023】
本実施形態では、充填物3の軸線方向(以下、「充填物3の高さ方向」という。)の中央部を1つのカラー6により固定した構造となっている。また、複数のカラー6を充填物3の高さ方向に並べて配置して、充填物3を固定することも可能である。なお、カラー6については、特に限定されるものではなく、従来より一般に使用されている任意の構造のものを用いることが可能である。
【0024】
複数の充填物3は、図1に示すように、塔体2の内部において、第1の波板材4及び第2の波板材5の積層方向が互いに隣り合う充填物3の間で交差(本実施形態では直交)するように、塔体2の高さ方向に積層した(積み重ねた)状態で配置されている。
【0025】
充填物3を構成する第1の波板材4は、図5(a),(b)に示すように、塔体2の内壁面2aに対向する一対の側端部4b,4cのうち、第1の溝部4aの上端が位置する一方の側端部4bが塔体2の内壁面2aに沿って配置されると共に、第1の溝部4aの下端が位置する他方の側端部4cが塔体2の内壁面2aから離間する方向に傾斜して配置されている。
【0026】
このうち、図5(a)に示す第1の波板材41は、第1の波板材4の下端が上端よりも幅狭となることによって、他方の側端部4cの下端が上端よりも塔体2の内壁面2aから離間して配置されている。一方、図5(b)に示す第1の波板材42は、第1の波板材4の上端が下端よりも幅狭となることによって、他方の側端部4cの上端が下端よりも塔体2の内壁面2aから離間して配置されている。なお、図5(a),(b)に示す第1の波板材41,42について、特に区別しない場合には、これらを第1の波板材4としてまとめて扱うものとする。
【0027】
同様に、充填物3を構成する第2の波板材5は、図6(a),(b)に示すように、塔体2の内壁面2aに対向する一対の側端部5b,5cのうち、第2の溝部5aの上端が位置する一方の側端部5bが塔体2の内壁面2aに沿って配置されると共に、第2の溝部5aの下端が位置する他方の側端部5cが塔体2の内壁面2aから離間する方向に傾斜して配置されている。
【0028】
このうち、図6(a)に示す第2の波板材51は、第2の波板材5の下端が上端よりも幅狭となることによって、他方の側端部5cの下端が上端よりも塔体2の内壁面2aから離間して配置されている。一方、図6(b)に示す第2の波板材52は、第2の波板材4の上端が下端よりも幅狭となることによって、他方の側端部5cの上端が下端よりも塔体2の内壁面2aから離間して配置されている。なお、図6(a),(b)に示す第2の波板材51,52について、特に区別しない場合には、これらを第2の波板材5としてまとめて扱うものとする。
【0029】
本実施形態の充填塔1では、図5及び図6に示すように、他方の側端部4c,5cの塔体2の内壁面2aから離間する最大幅Dが、1~10mmであることが好ましい。又は、この最大幅Dが、第1及び第2の波板材4,5の高さ(図2中に示すH1,H2)の2倍以下であることが好ましい。すなわち、この最大幅Dは、第1の波板材4及び第2の波板材5において、それぞれの上端と下端とにおける幅の差に相当する。
【0030】
充填塔1における離間幅Dが、これらの上限値よりも大きくなると、充填塔1内を上昇するガスが充填物3をバイパスし、充填物3の表面で十分に気液接触を行わせることが困難となる。一方、充填塔1における離間幅Dが、これらの下限値よりも小さくなると、充填物3の外周部分や塔体2の内壁面2aにおける液Lの偏流防止の効果が低下する。
【0031】
本実施形態の充填物3では、図7(a)~(d)に示すように、第1の波板材41,42と第2の波板材51,52との何れかを組み合わせた構成とすることが可能である。すなわち、図7(a)に示すように、第1の波板材41と第2の波板材51とを塔体2の径方向に交互に積層した構成としてもよい。また、図7(b)に示すように、第1の波板材42と第2の波板材52とを塔体2の径方向に交互に積層した構成としてもよい。また、図7(c)に示すように、第1の波板材41と第2の波板材52とを塔体2の径方向に交互に積層した構成としてもよい。また、図7(d)に示すように、第1の波板材42と第2の波板材51とを塔体2の径方向に交互に積層した構成としてもよい。それ以外にも、第1の波板材41,42と第2の波板材51,52の中から3つを選択して組み合わせた構成や、第1の波板材41,42と第2の波板材51,52の全てを組み合わせた構成とすることが可能である。
【0032】
以上のような構成を有する充填物3を備えた充填塔1では、上述した気液接触により第1及び第2の波板材4,5に付着した液Lが第1及び第2の溝部4a,5aに沿って下方へと流れ落ちる。このとき、液Lは、第1及び第2の溝部4a,5aの上端が位置する第1の側端部4b,5bから、第1及び第2の溝部4a,5aの下端が位置する第2の側端部4c,5cに向かって斜めに流れ落ちる。これにより、第1及び第2の溝部4a,5aの下端に到達した液Lは、第2の側端部4c,5cに沿って塔体2の内壁面2aから離間する方向へと流れ落ちる。
【0033】
一方、第1の波板材4の第2の側端部4cは、第1の側端部5bが塔体2の内壁面2aに沿って配置された第2の波板材5と隣接している。同様に、第2の波板材5の第2の側端部5cは、第1の側端部4bが塔体2の内壁面2aに沿って配置された第1の波板材4と隣接している。
【0034】
この場合、第1及び第2の波板材4,5の第2の側端部4c,5cに沿って流れ落ちる液Lは、隣接する第2及び第1の波板材5,4の第1の溝部5a,4aへと伝わり、これら隣接する第2及び第1の溝部5a,4aに沿って下方へと流れ落ちる。
【0035】
すなわち、この液Lは、再び第1及び第2の溝部4a,5aの上端が位置する第1の側端部4b,5bから、第1及び第2の溝部4a,5aの下端が位置する第2の側端部4c,5cに向かって斜めに流れ落ちる。
【0036】
したがって、上述した気液接触により第1及び第2の波板材4,5に付着した液Lは、塔体2の内壁面2aに沿って配置された第1及び第2の波板材4,5の第1の側端部4b,5b側から、塔体2の内壁面2aから離間する方向に傾斜して配置された第1及び第2の波板材4,5の第2の側端部4c,5c側に向かって流れ落ちることになる。
【0037】
これにより、本実施形態の充填塔1では、第1及び第2の溝部4a,5aに沿って流れ落ちる液Lを、塔体2の内壁面2aから離間する方向へと案内することが可能である。すなわち、充填物3の外周部分や塔体2の内壁面2aに液Lが集まり、充填物3の外周部分や内壁面2aに沿って液Lが流れ落ちるといった偏流の発生を防ぐことが可能である。
【0038】
以上のようにして、本実施形態の充填塔1では、上述した簡便な構造を有する充填物3を用いて、塔体2の内部における偏流の発生を防止しながら、充填物3の表面において十分な気液接触を行わせることが可能である。その結果、本実施形態の充填塔1では、低コストで高効率の分留(精留)を行うことが可能である。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記第1及び第2の波板材4,5は、第2の側端部4c,5cが直線状に傾斜した構成となっているが、それ以外にも、第2の側端部4c,5cが曲線状に傾斜した構成や、第2の側端部4c,5cが階段状に傾斜した構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…充填塔 2…塔体 3…充填物 4,41,42…第1の波板材 4a…第1の溝部 4b…一方の側端部 4c…他方の側端部 5,51,52…第2の波板材 5a…第2の溝部 5b…一方の側端部 5c…他方の側端部 6…カラー L…液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7