(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】長尺位相差フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20221114BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20221114BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20221114BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221114BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/13363
H05B33/02
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
(21)【出願番号】P 2019127203
(22)【出願日】2019-07-08
(62)【分割の表示】P 2019001003の分割
【原出願日】2014-08-07
【審査請求日】2019-07-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2013165939
(32)【優先日】2013-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100224591
【氏名又は名称】畑 征志
(72)【発明者】
【氏名】佐▲瀬▼ 光敬
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠弘
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-71956(JP,A)
【文献】特許第4011652(JP,B1)
【文献】特開2013-3344(JP,A)
【文献】特開2002-14233(JP,A)
【文献】特表2010-507831(JP,A)
【文献】特開2011-207765(JP,A)
【文献】特開2012-21068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート、セルロースエステル又は環状オレフィン系樹脂からなる長尺基材、主鎖部分にメタ
クリロイルオキシ基を有するポリマーを含んでなる長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有する長尺位相差フィルムであって、該長尺光配向膜の配向規制力の方向が該長尺基材の長尺方向に対して30°~60°であり、
該長尺位相差膜の厚さが1~3μmであり、
該長尺位相差膜の光軸の方向が、該長尺基材の長尺方向に対して30°~60°であり、
該長尺位相差膜は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有する重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を硬化してなり、
該長尺位相差膜が、下記式(1)、(2)及び(3);
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
[式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す]
を満たす波長分散特性を有する、長尺位相差フィルム。
【請求項2】
下記式(1)、(2)及び(3);
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
[式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す]
を満たす波長分散特性を有する、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている、長尺円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺位相差フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置にはその光学補償を目的として位相差フィルム等の光学フィルムが使用されている。かかる光学フィルムには、フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する位相差フィルムが用いられることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する位相差フィルムの工業的な製造は、煩雑な加工技術を要するものであり、新たな製造方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の発明を含む。
[1] (1)~(6)の工程をこの順に有する長尺位相差フィルムの製造方法。
(1)長尺基材に光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基板上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、該長尺基材の長尺方向に対して斜め方向の偏光を、照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めである長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、長尺位相差膜を形成する工程
[2] 工程(6)の後にさらに工程(7)を有する[1]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
(7)長尺位相差膜、又は、長尺光配向膜及び長尺位相差膜を、粘接着剤を介して長尺被転写基材に転写し、長尺被転写基材、粘接着剤層及び長尺位相差膜からなる長尺位相差フィルム、又は、長尺被転写基材、粘接着剤層、長尺位相差膜及び長尺光配向膜からなる長尺位相差フィルムを得る、[1]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
[3] 重合性液晶化合物が、下記式(A)で表される化合物である[1]又は[2]に記載の長尺位相差フィルムの製造方法。
[X
1は、酸素原子、硫黄原子またはNR
1-を表わす。R
1は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
Y
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表わす。
Q
3およびQ
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR
2R
3または-SR
2を表わすか、または、Q
3とQ
4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
D
1およびD
2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR
4R
5-、-CR
4R
5-CR
6R
7-、-O-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CR
6R
7-、-CO-O-CR
4R
5-、-O-CO-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CO-CR
6R
7-、-CR
4R
5-CO-O-CR
6R
7-またはNR
4-CR
5R
6-またはCO-NR
4-を表わす。
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
G
1およびG
2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表わし、L
1およびL
2のうちの少なくとも一つは、重合性基を有する。]
[4] 長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有する長尺位相差フィルムであって、
該長尺光配向膜の配向規制力の方向が該長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、
該長尺位相差膜の厚さが3μm以下であり、
該長尺位相差膜の光軸の方向が、該長尺基材の長尺方向に対して斜めである長尺位相差フィルム。
[5] 下記式(1)、(2)及び(3)を満たす波長分散特性を有する[4]に記載の長尺位相差フィルム。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
[6] (1)~(6)及び(8)の工程をこの順に有する長尺円偏光板の製造方法。
(1)長尺基材に光配向膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺基板上に第1塗布膜を形成する工程
(2)該第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜を形成する工程
(3)該第1乾燥被膜に、該長尺基材の長尺方向に対して斜め方向の偏光を、照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めである長尺光配向膜を形成する工程
(4)該長尺光配向膜の上に、重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜形成用組成物を連続的に塗布して、該長尺光配向膜上に第2塗布膜を形成する工程
(5)該第2塗布膜を乾燥することにより、第2乾燥被膜を形成する工程
(6)該第2乾燥被膜を硬化することにより、長尺位相差膜を形成する工程
(8)長尺位相差膜に長尺偏光フィルムを貼合する工程
[7] 工程(8)の後にさらに工程(9)を有する[6]に記載の長尺円偏光板の製造方法。
(9)長尺基材、又は長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する工程
[8] 工程(8)又は工程(9)の後にさらに工程(10)を有する[6]又は[7]に記載の長尺円偏光板の製造方法。
(10)長尺円偏光板を枚葉状に切断する工程
[9] [4]又は[5]に記載の長尺位相差フィルムと長尺偏光フィルムとが積層されている長尺円偏光板。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長尺位相差フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する長尺位相差フィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】長尺位相差フィルムの連続的製造方法(Roll to Roll形式)の要部を表す模式図である。
【
図2】光配向膜の配向規制力の方向D2と、長尺基材の長尺方向D1との関係を表す模式図である。
【
図3】長尺円偏光板の連続的製造方法の要部を示す模式図である。
【
図4】長尺円偏光板から、巻取前に、連続的に長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する製造方法の要部を示す模式図である。
【
図5】長尺円偏光板から、巻取後に、連続的に長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を剥離する製造方法の要部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<長尺基材>
本発明における長尺基材は偏光素子を含まないものである。また好ましくは、本発明における長尺基材は偏光性を有さない。長尺基材としては、プラスチック基材が挙げられる。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドなどのプラスチックが挙げられる。好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルである。
【0009】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、エステル化されたものであり、市場から容易に入手することができる。また、セルロースエステル基材も市場から容易に入手することができる。市販のセルロースエステル基材としては、例えば、“フジタック(登録商標)フィルム”(富士写真フイルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))などが挙げ
られる。
【0010】
環状オレフィン系樹脂とは例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーなどの環状オレフィンの重合体又は共重合体(環状オレフィン系樹脂)から構成されるものであり、当該環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよい。また、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。さらに、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
【0011】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下、好ましくは15~50モル%の範囲である。鎖状オレフィンとしては、エチレンおよびプロピレンが挙げられ、ビニル基を有する芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンおよびアルキル置換スチレンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル基を有する芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル基を有する芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体は、その製造において、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0012】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)[Ticona社(独)]、“アートン”(登録商標)[JSR(株)]、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)[日本ゼオン(株)]および“アペル”(登録商標)[三井化学(株)製]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。また、市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。
市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“SCA40”(登録商標)[積水化学工業(株)]、“ゼオノアフィルム”(登録商標)[オプテス(株)]および“アートンフィルム”(登録商標)[JSR(株)]が挙げられる。
【0013】
長尺基材の厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。長尺基材の厚みは、通常5~300μmであり、好ましくは20~200μmである。
【0014】
長尺基材の長尺方向の長さは、通常10~3000mであり、好ましくは100~2000mである。長尺基材の短尺方向の長さは、通常0.1~5mであり、好ましくは0.2~2mである。
【0015】
<光配向膜形成用組成物>
光配向膜形成用組成物は、光反応性基を有するポリマー又はモノマー、及び、溶剤を含有する。
【0016】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0017】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基などが挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基などが挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0018】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0019】
光配向膜形成用組成物の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものが好ましい。該溶剤としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ又はプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン又はメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレンなどの非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤;クロロホルム又はクロロベンゼンなどの塩素系溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0020】
光配向膜形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、当該光反応性基を有するポリマー又はモノマーの種類や製造しようとする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、少なくとも0.2質量%以上とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲が特に好ましい。また、光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、ポリビニルアルコ-ルやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤が含まれていてもよい。
【0021】
<第1塗布膜>
前記光配向膜形成用組成物を長尺基材に塗布することにより第1塗布膜が形成される。
【0022】
光配向膜形成用組成物を長尺基材に連続的に塗布する方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、アプリケータ法及びフレキソ法等が挙げられる。好ましくは、グラビアコーティング法、ダイコーティング法及びフレキソ法である。
【0023】
<第1乾燥被膜>
第1塗布膜を乾燥することにより、第1乾燥被膜が形成される。本願明細書においては、第1塗布膜が含有する溶剤の含有量が50質量%以下となったものを第1乾燥被膜という。
【0024】
第1塗布膜を乾燥する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥法及び減圧乾燥法等が挙げられる。好ましくは、通風乾燥法と加熱乾燥法とを組み合わせた方法である。乾燥温度としては、10~250℃好ましく、25~200℃がさらに好ましい。乾燥時間としては、10秒間~60分間が好ましく、30秒間~30分間がより好ましい。乾燥することで第1塗布膜に含まれる溶剤が除去される。
【0025】
第1乾燥被膜における、溶剤の含有量は好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
【0026】
<長尺光配向膜>
第1乾燥被膜に、長尺基材の長尺方向に対して斜め方向の偏光を照射することにより、配向規制力の方向が長尺基材の長尺方向に対して斜めである長尺光配向膜が得られる。
【0027】
偏光は、第1乾燥被膜に直接照射してもよいし、長尺基材を透過させて照射してもよい。長尺基材が偏光を吸収する材料から構成されている場合は、偏光は第1乾燥被膜に直接照射することが好ましい。
偏光は、第1乾燥被膜の長尺方向および短尺方向に対して垂直な方向から照射されることが好ましい。
【0028】
偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものが好ましい。具体的には、波長250~400nmの範囲の紫外線が好ましい。
偏光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。
【0029】
偏光は、例えば前記光源からの光を、偏光子を通過させることにより得られる。前記偏光子の偏光角を調整することにより、偏光の偏光軸の方向を任意に調整することができる。前記偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子が挙げられる。偏光は、実質的に平行光であると好ましい。
【0030】
配向規制力は偏光の偏光軸の方向に対して直交方向又は平行方向に働くので、偏光角を調整することにより、配向規制力の方向を任意に調整することができる。該偏光の偏光軸の方向と長尺基材の長尺方向とがなす角度は、好ましくは5°~85°であり、より好ましくは20°~70°であり、より好ましくは30°~60°であり、特に好ましくは45°である。好ましくは、偏光の偏光軸の方向と長尺基材の厚み方向とは直交する。また、偏光を照射する時に、マスキングを行えば、得られる配向規制力の方向に、複数の異なる領域(パターン)を形成することもできる。好ましくは、長尺光配向膜は一様の配向パターンを有する。
【0031】
かくして、長尺光配向膜の配向規制力の方向が該長尺基材の長尺方向に対して斜めである、長尺基材と長尺光配向膜とが積層された長尺配向フィルムが得られる。好ましくは、長尺光配向膜の配向規制力の方向と長尺基材の厚み方向とは直交する。
【0032】
配向規制力の方向と長尺基材の長尺方向とがなす角度は、好ましくは5°~85°であり、より好ましくは20°~70°であり、より好ましくは30°~60°であり、特に好ましくは45°である。
【0033】
長尺光配向膜は、液晶硬化膜形成用組成物の塗布時に、液晶硬化膜形成用組成物に溶解しない溶剤耐性を持つことが好ましく、乾燥や重合性液晶化合物の配向ための加熱処理における耐熱性を有することが好ましく、さらに、長尺配向フィルム搬送時の摩擦などによる剥がれ等が生じないと好ましい。
【0034】
前記長尺光配向膜の膜厚は、通常10nm~10000nmであり、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは500nm以下であり、また、より好ましくは10nm以上である。上記範囲とすれば、配向規制力が十分に発現する。
【0035】
配向規制力を有する長尺光配向膜が長尺基材上に形成された、長尺配向フィルムは、液晶材料の配向を誘起する配向フィルムとして用いることができる。よって、長尺基材と、長尺光配向膜とが積層された長尺配向フィルムであって、該光配向膜の配向規制力の方向が該長尺基材の長尺方向に対して斜めである長尺配向フィルムは、光軸の方向が基材の長尺方向に対して斜めである長尺位相差フィルムの製造に有用であり、該長尺位相差フィルムを連続的に製造するために利用することができる。
【0036】
<液晶硬化膜形成用組成物>
本発明における液晶硬化膜形成用組成物は、重合性液晶化合物及び溶剤を含有する。
【0037】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でも良く、また、サーモトロピック液晶における、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でも良い。
【0038】
重合性液晶化合物としては、製造の容易さという観点からサーモトロピック性のネマチック液晶が好ましい。
【0039】
液晶硬化膜形成用組成物が含む、好ましい重合性液晶化合物としては、下記式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)ということがある。)が挙げられる。
【0040】
[式(A)中、
X
1は、酸素原子、硫黄原子またはNR
1-を表わす。R
1は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
Y
1は、置換基を有していてもよい炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基または置換基を有していてもよい炭素数3~12の1価の芳香族複素環式基を表わす。
Q
3およびQ
4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR
2R
3または-SR
2を表わすか、または、Q
3とQ
4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子とともに芳香環または芳香族複素環を形成する。R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
D
1およびD
2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR
4R
5-、-CR
4R
5-CR
6R
7-、-O-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CR
6R
7-、-CO-O-CR
4R
5-、-O-CO-CR
4R
5-、-CR
4R
5-O-CO-CR
6R
7-、-CR
4R
5-CO-O-CR
6R
7-またはNR
4-CR
5R
6-またはCO-NR
4-を表わす。
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。
G
1およびG
2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表わし、L
1およびL
2のうちの少なくとも一つは、重合性基を有する。]
【0041】
化合物(A)におけるL1は式(A1)で表される基であると好ましく、また、L2は式(A2)で表される基であると好ましい。
P1-F1-(B1-A1)k-E1- (A1)
P2-F2-(B2-A2)l-E2- (A2)
[式(A1)および式(A2)中、
B1、B2、E1およびE2は、それぞれ独立に、-CR4R5-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-O-、-CS-O-、-O-CS-O-、-CO-NR1-、-O-CH2-、-S-CH2-または単結合を表わす。
A1およびA2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基または炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を表わし、該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子またはNH-に置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。
kおよびlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表わす。
F1およびF2は、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基を表わす。
P1は、重合性基を表わす。
P2は、水素原子または重合性基を表わす。
R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表わす。]
【0042】
好ましい化合物(A)としては、特表2011-207765号公報に記載の重合性液晶化合物が挙げられる。
【0043】
重合性液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0044】
液晶硬化膜形成用組成物が、上記化合物(A)を含有する場合、さらに化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物を含有してもよい。
【0045】
化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物としては、式(6)で表される基を有する化合物(以下「化合物(6)」という場合がある)が挙げられる。
【0046】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (6)
(式(6)中、P11は、重合性基を表す。
A11は、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。該炭素数1~6のアルキル基及び該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
B12及びB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-又は単結合を表す。
E11は、炭素数1~12のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよい。該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルキレン基に含まれる-CH2-は、-O-又は-CO-で置き換わっていてもよい。)
【0047】
P
11としては、位相差板を硬化するために、例えば光重合を利用することもあるため、光重合させるのに適した、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、製造も容易であることから、下記の式(P-1)~(P-5)で表される基が好ましい。
【0048】
[式(P-1)~(P-5)中、R
17~R
21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基又は水素原子を表す。*は、B
11との結合手を表す。]
P
11は、式(P-4)~式(P-10)で表される基であることが好ましく、ビニル基、p-(2-フェニルエテニル)フェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、イソシアナート基及びイソチオシアナト基などが挙げられる。
【0049】
特に好ましくは、P11-B11-は、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基である。
【0050】
A11の芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3~18であり、5~12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11としては、1,4-シクロヘキシレン基又は1,4-フェニレン基が好ましい。
【0051】
E11としては、2つ以上に分岐していない炭素数1~12のアルキルレン基が好ましい。該アルキレン基に含まれる-CH2-は、-O-で置換されていてもよい。
【0052】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基、ウンデカレン基、ドデシレン基、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-及びCH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-などが挙げられる。
【0053】
化合物(6)としては、例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、A12~A14は、A11と同義であり、B14~B16は、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、ニトリル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ホルミル基、スルホ基、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコールでエステル化されたカルボキシ基又はハロゲン原子を表す。該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる-CH2-は、-O-で置き換わっていてもよい。)
【0055】
化合物(6)の具体例としては、例えば下記式で表される化合物などが挙げられる。
ただし、式中k1及びk2は、2~12の整数を表す。これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されているなど、入手が容易であることから好ましい。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
【0064】
重合性液晶化合物として、化合物(A)と化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物とを含有する場合、化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、90質量部以下であると好ましい。
【0065】
液晶硬化膜形成用組成物における重合性液晶化合物の含有割合は、液晶硬化膜形成用組成物の固形分100質量部に対して、通常70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは80~94質量部であり、さらに好ましくは80~90質量部である。重合性液晶化合物の含有割合が上記範囲内であれば、配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、液晶硬化膜形成用組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
【0066】
溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0067】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;及びN-メチル-2-ピロリドンなどのラクタム系溶媒などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0068】
溶剤の含有量は、液晶硬化膜形成用組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、液晶硬化膜形成用組成物における固形分は、2~50質量%が好ましい。
該固形分が50質量%以下であると、液晶硬化膜形成用組成物の粘度が低くなることから、液晶硬化膜の厚みが略均一になることで、当該液晶硬化膜にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して定めることができる。
【0069】
液晶硬化膜形成用組成物は、重合性液晶化合物及び溶剤以外の成分として、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レべリング剤及び重合性非液晶化合物を含んでもよい。
【0070】
(重合開始剤)
液晶硬化膜形成用組成物は、通常、重合開始剤を含有する。重合開始剤は、重合性液晶化合物などの重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0071】
重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩などが挙げられる。
【0072】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0073】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0074】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0075】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0076】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0077】
重合開始剤には市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、“イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907”、 “イルガキュア(登録商標)184”、 “イルガキュア(登録商標)651”、 “イルガキュア(登録商標)819”、 “イルガキュア(登録商標)250”、 “イルガキュア(登録商標)369”(チバ・ジャパン(株));“セイクオール(登録商標)BZ”、 “セイクオール(登録商標)Z”、 “セイクオール(登録商標)BEE”(精工化学(株));“カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100”(日本化薬(株));“カヤキュアー(登録商標)UVI-6992”(ダウ社製);“アデカオプトマーSP-152”、 “アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);“TAZ-A”、 “TAZ-PP”(日本シイベルヘグナー社);及び“TAZ-104”(三和ケミカル社)などが挙げられる。
【0078】
液晶硬化膜形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部である。好ましくは0.5~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部である。重合開始剤の含有量がこの範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことがないため好ましい。
【0079】
(増感剤)
液晶硬化膜形成用組成物はさらに増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。該増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントンなどのキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンなど);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセンなど)などのアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンなどが挙げられる。
【0080】
液晶硬化膜形成用組成物が増感剤を含有する場合、液晶硬化膜形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0081】
(重合禁止剤)
液晶硬化膜形成用組成物はさらに重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤に含有することにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールし重合反応を安定的に進行させることができる。
【0082】
前記重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコールなど)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカルなどのラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類などが挙げられる。
【0083】
液晶硬化膜形成用組成物に重合禁止剤を含有させる場合、その含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。重合禁止剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため好ましい。
【0084】
(レベリング剤)
液晶硬化膜形成用組成物には、レベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤とは、液晶硬化膜形成用組成物の流動性を調整し、液晶硬化膜形成用組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有するものであり、例えば、界面活性剤を挙げることができる。好ましいレベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤が挙げられる。
【0085】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、“BYK-350”、“BYK-352”、“BYK-353”、“BYK-354”、“BYK-355”、“BYK-358N”、“BYK-361N”、“BYK-380”、“BYK-381”及び“BYK-392”[BYK Chemie社]などが挙げられる。
【0086】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、“メガファック(登録商標)R-08”、同“R-30”、同“R-90”、同“F-410”、同“F-411”、同“F-443”、同“F-445”、同“F-470”、同“F-471”、同“F-477”、同“F-479”、同“F-482”及び同“F-483”[DIC(株)];“サーフロン(登録商標)S-381”、同“S-382”、同“S-383”、同“S-393”、同“SC-101”、同“SC-105”、“KH-40”及び“SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];“E1830”、“E5844”[(株)ダイキンファインケミカル研究所];“エフトップEF301”、同“EF303”、同“EF351”及び同“EF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]などが挙げられる。
【0087】
液晶硬化膜形成用組成物にレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がさらに好ましい。レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる本液晶硬化膜がより平滑となる傾向があるため好ましい。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲を超えると、得られる本液晶硬化膜にムラが生じやすい傾向があり好ましくない。なお、液晶硬化膜形成用組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0088】
(重合性非液晶化合物)
液晶硬化膜形成用組成物は、重合性非液晶化合物を含有しても良い。重合性非液晶化合物を含有することで、重合反応性部位の架橋密度を高め、光学異方性層の強度を向上させることができる。
【0089】
重合性非液晶化合物は、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアナート基からなる群のうち少なくとも1個以上の重合性基を有することが好ましい。より好ましくは2個以上10個以下の重合性基を有することが好ましく、更に好ましくは3個以上8個以下の重合性基を有することが好ましい。
【0090】
液晶硬化膜形成用組成物が重合性非液晶化合物を含有する場合、その含有量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~10質量部である。
【0091】
液晶硬化膜形成用組成物の粘度は、10mPa・s以下が好ましく、0.1~7mPa・sがより好ましい。
前記粘度が上記範囲内であると第2塗布膜の膜厚にムラが生じにくくなる。
【0092】
<第2塗布膜>
液晶硬化膜形成用組成物を長尺光配向膜の上に塗布することにより第2塗布膜が形成される。
【0093】
液晶硬化膜形成用組成物を長尺光配向膜に連続的に塗布する方法としては、光配向膜形成用組成物の塗布方法と同様の方法が挙げられる。
【0094】
<第2乾燥被膜>
第2塗布膜を乾燥することにより、第2乾燥被膜が形成される。本願明細書においては、第2塗布膜における溶剤の含有量が50質量%以下となったものを第2乾燥被膜という。該溶剤の含有量は好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。
【0095】
第2塗布膜を乾燥する方法、乾燥温度及び乾燥時間としては、第1塗布膜と同様のものが挙げられる。
【0096】
乾燥後の第2乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を形成していない場合、該重合性液晶化合物が液晶相を示す温度にまで第2乾燥被膜を加熱することで液晶相を形成することができる。第2乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を溶液状態に転移する温度以上に加熱し、次いで該重合性液晶化合物が液晶相を示す温度まで冷却することにより、液晶相を形成してもよい。
【0097】
なお、上記乾燥と、上記液晶相を形成するための加熱は、同一の加熱工程によって行ってもよい。
【0098】
<長尺位相差膜>
第2乾燥被膜を硬化することにより、長尺位相差膜が形成される。
位相差膜とは、吸収、反射、回折、散乱、屈折、複屈折など光学的な機能を有するものであり、特に直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
【0099】
硬化するとは、すなわち、第2乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を重合することであり、重合する方法としては、加熱する方法及び光照射する方法が挙げられ、好ましくは光照射する方法である。
光は、第2乾燥被膜に直接照射してもよいし、長尺基材を透過させて照射してもよい。
長尺基材が光を吸収する材料から構成されている場合は、光は第2乾燥被膜に直接照射することが好ましい。
【0100】
硬化は、重合性液晶化合物に液晶相を形成させた状態で行うのが好ましく、液晶相を示す温度で、光照射することで硬化してもよい。
【0101】
光照射における光としては、可視光、紫外光及びレーザー光が挙げられる。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。光は、第2乾燥被膜に直接照射してもよいし、長尺基材を透過させて照射してもよい。
【0102】
前記光照射の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。
【0103】
長尺位相差膜の厚みは、通常3μm以下であり、0.5μm以上3μm以下の範囲が好ましく、1μm以上3μm以下がさらに好ましい。長尺位相差膜の厚みは、干渉膜厚計やレーザー顕微鏡あるいは触針式膜厚計で測定することができる。
【0104】
かくして、長尺基材、長尺光配向膜及び長尺位相差膜をこの順に有する長尺位相差フィルムであって、該長尺光配向膜の配向規制力の方向が該長尺基材の長尺方向に対して斜めであり、該長尺位相差膜の光軸の方向が該長尺基材の長尺方向に対して斜めであり且つ該光配向規制力の方向に平行である長尺位相差フィルムが得られる。
【0105】
長尺位相差膜の光軸の方向は、長尺基材の長尺方向に対して、好ましくは5°~85°であり、より好ましくは20°~70°であり、より好ましくは30°~60°であり、特に好ましくは45°である。
【0106】
前記長尺位相差フィルムは、好ましくは下記式(1)、(2)及び式(3)を満たす波長分散特性を有する。上記化合物(A)を含む液晶硬化膜形成用組成物から液晶硬化膜を形成することにより、前記波長分散特性を有する長尺位相差フィルムを得ることができる。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (3)
(式中、Re(λ)は波長λnmの光に対する面内位相差値を表す。)
【0107】
長尺位相差フィルムの波長分散特性は、液晶硬化膜形成用組成物が含有する化合物(A)の含有量によって決定することができる。
【0108】
具体的には、化合物(A)の含有量が異なる組成物を2~5種類程度調製し、それぞれの組成物について、同じ膜厚の位相差膜を製造し、得られた位相差膜の位相差値を求め、その結果から、化合物(A)の含有量と位相差膜の位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)の含有量を決定すればよい。
【0109】
得られた長尺位相差フィルムに含まれる長尺位相差膜を、粘接着剤を介して長尺被転写基材に転写し、長尺被転写基材、粘接着剤層及び長尺位相差膜からなる長尺位相差フィルムを得ることができる。
得られた長尺位相差フィルムに含まれる長尺光配向膜及び長尺位相差膜を、粘接着剤を介して長尺被転写基材に転写し、長尺被転写基材、粘接着剤層、長尺位相差膜及び長尺光配向膜からなる長尺位相差フィルムを得ることができる。
粘接着剤としては、公知のものを用いることができ、転写は公知の方法で行なうことができる。長尺被転写基材としては、長尺基材と同じものが挙げられる。
【0110】
本発明の長尺位相差フィルムに、一般的な長尺偏光フィルムを一体ラミネート(貼合)することにより、長尺円偏光板を製造することができる。
長尺位相差膜の光軸の方向を、長尺基材の長尺方向に対して45°とすることで、本発明の長尺位相差フィルムと、長尺偏光フィルムとを一体ラミネートして得られる長尺円偏光板の生産性が向上する。
長尺基材、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板から、長尺基材を剥離することにより、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板が得られる。
長尺基材、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板から、長尺基材及び長尺光配向膜を剥離することにより、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板が得られる。
得られた長尺円偏光板のいずれかの面には粘着剤層を設けてもよい。
【0111】
得られた、長尺位相差フィルムを枚葉状に切断することで位相差フィルムが得られる。
また、長尺円偏光板を枚葉状に切断することで円偏光板が得られる。
【0112】
枚葉状とは、フィルムの長辺と短辺のバランスが著しく異なるものを除くものであり、本願明細書においては、長辺の長さが短辺の長さの5倍以下であれば枚葉状という。
【0113】
切断は任意の方法で行うことができる。
【0114】
<長尺位相差フィルムの連続的製造方法>
本発明の長尺位相差フィルムは、Roll to Roll形式により連続的に製造するのが好ましい。
図1を参照して、長尺位相差フィルムを、Roll to Roll形式により連続的に製造する方法の要部を説明する。
【0115】
長尺基材が第1の巻芯210Aに巻き取られている第1ロール210は例えば、市場から容易に入手できる。このようなロールの形態で市場から入手できる長尺基材としては、すでに例示した長尺基材の中でも、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はポリメタクリル酸エステルからなるフィルムなどが挙げられる。
【0116】
続いて、前記第1ロール210から長尺基材を巻き出す。長尺基材を巻き出す方法は該第1ロール210の巻芯210Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第1ロール210を回転させることにより行われる。また、第1ロール210から長尺基材を搬送する方向に、適当な補助ロール300を設置し、当該補助ロール300の回転手段で長尺基材を巻き出す形式でもよい。さらに、第1の巻芯210A及び補助ロール300ともに回転手段を設置することで、長尺基材に適度な張力を付与しながら、長尺基材を巻き出す形式でもよい。
【0117】
前記第1ロール210から巻き出された長尺基材は、塗布装置211Aを通過する際に、その表面上に塗布装置211Aにより光配向膜形成用組成物が塗布される。このように連続的に光配向膜形成用組成物を塗布するための、塗布装置211Aとしては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、フレキソ法が好ましい。
【0118】
塗布装置211Aを通過して第1塗布膜が形成された長尺基材は、乾燥炉212Aへ搬送され、乾燥炉212Aによって第1塗布膜が乾燥されて第1乾燥被膜が形成される。乾燥炉212Aには、例えば、通風乾燥法と加熱乾燥法とを組み合わせた熱風式乾燥炉が用いられる。乾燥炉212Aの設定温度は、前記光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類などに応じて定められる。また乾燥炉212Aは、互いに異なる設定温度の複数のゾーンからなるであってもよいし、互いに異なる設定温度の複数の乾燥炉を直列に設置したものであってもよい。
【0119】
得られた前記第1乾燥被膜に、偏光照射装置213Aによって偏光を照射することにより、長尺光配向膜が得られる。その際、長尺基材の長尺方向D1に対して、光配向膜の配向規制力の方向D2が斜めとなるように偏光を照射する。
図2は、偏光照射後に形成された光配向膜の配向規制力の方向D2と、長尺基材の長尺方向D1との関係が45°である場合を模式的に表した図である。すなわち、
図2は偏光照射装置213A通過後の長尺光配向膜の表面を、長尺基材の長尺方向D1と、長尺光配向膜の配向規制力の方向D2とを見たとき、それらのなす角度が45°を示すことを表す。
【0120】
続いて、長尺光配向膜が形成された長尺基材は、塗布装置211Bを通過する。塗布装置211Bによって、前記長尺光配向膜上に液晶硬化膜形成用組成物が塗布され、第2塗布膜が形成される。その後、乾燥炉212Bを通過することにより、第2乾燥被膜が形成される。乾燥炉212Bは、乾燥炉212Aと同様に、互いに異なる設定温度の複数のゾーンからなるものであってもよいし、互いに異なる設定温度の複数の乾燥炉を直列に設置したものであってもよい。
【0121】
前記乾燥炉212Bを通過することにより、液晶硬化膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を形成する。第2乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物が液晶相を形成した状態で、偏光照射装置213Bによって光を照射することにより、該重合性液晶化合物は液晶相を保持したまま重合して、位相差膜が形成さる。
【0122】
かくして得られた長尺位相差フィルムは、第2の巻芯220Aに巻き取られ、第2ロール220の形態が得られる。なお、巻き取る際には、適当なスペーサを用いた供巻きを行ってもよい。
【0123】
このように、長尺基材が、第1ロール210から、塗布装置211A、乾燥炉212A、偏光UV照射装置213A、塗布装置211B、乾燥炉212B及び光照射装置213Bの順で通過することにより、Roll to Roll形式により連続的に長尺位相差フィルムを製造することができる。
【0124】
また、
図1に示す製造方法では、長尺基材から長尺位相差フィルムまでを連続的に製造する方法を示したが、例えば、長尺基材を、第1ロール210から、塗布装置211A、乾燥炉212A、及び偏光照射装置213Aの順で通過させ、これを巻芯に巻き取ることで、ロール状の、長尺配向フィルムを連続的製造し、得られたロール状の、長尺配向フィルムを巻き出し、塗布装置211B、乾燥炉212B及び光照射装置213Bの順で通過させ、長尺位相差フィルムを製造してもよい。
【0125】
第2ロール220の形態で、長尺位相差フィルムを製造した場合には、該第2ロール220から長尺位相差フィルムを巻き出し、所定の寸法に裁断してから、裁断された位相差フィルムに偏光フィルムを貼合することにより円偏光板を製造してもよいが、長尺偏光フィルムが巻芯に巻き取られている第3ロールを準備することで、長尺円偏光板を連続的に製造することもできる。
【0126】
長尺円偏光板を連続的に製造する方法について、
図3を参照して説明する。かかる製造方法は、
第2ロール220から連続的に本発明の長尺位相差フィルムを巻き出すとともに、長尺偏光フィルムが巻き取られている第3ロール230から連続的に長尺偏光フィルムを巻き出す工程と、
前記長尺位相差フィルムと、前記長尺偏光フィルムとを連続的に貼合して長尺円偏光板を得る工程と、
得られた長尺円偏光板を第4の巻芯240Aに巻き取り、第4ロール240を得る工程とからなる。この方法はいわゆるRoll to Roll貼合である。
長尺位相差フィルムと、長尺偏光フィルムとは、適当な接着剤を用いて貼合することができる。
【0127】
得られた長尺円偏光板を第4の巻芯に巻き取る前又は後に、長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を剥離してもよい。
長尺基材を剥離することにより、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板が得られる。
長尺基材及び長尺光配向膜を剥離することにより、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板が得られる。
【0128】
図4は、得られた長尺円偏光板を第4の巻芯240Aに巻き取る前に、長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を、連続的に剥離する方法を説明する図である。
かかる製造方法は、
第2ロール220から連続的に本発明の長尺位相差フィルムを巻き出すとともに、長尺偏光フィルムが巻き取られている第3ロール230から連続的に長尺偏光フィルムを巻き出す工程と、
前記長尺位相差フィルムと、前記長尺偏光フィルムとを連続的に貼合して長尺円偏光板を得る工程と、
得られた長尺円偏光板の長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を、ガイドロール270において剥離し、長尺基材と、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板とに分離する、又は、長尺基材及び長尺光配向膜と、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板とに分離する工程と、
長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板、又は長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板を第5の巻芯250Aに巻き取り、第5ロール250を得、
他方で剥離した長尺基材、又は長尺基材及び長尺光配向膜を第6の巻芯260Aに巻き取り、第6ロール260を得る工程とからなる。
【0129】
図5は、得られた長尺円偏光板を第4の巻芯240Aに巻き取った後に、長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を、連続的に剥離する方法を説明する図である。
かかる製造方法は、
第4ロール240から連続的に本発明の長尺円偏光板を巻き出す工程と、
長尺円偏光板の長尺基材又は長尺基材及び長尺光配向膜を、ガイドロール270において剥離し、長尺基材と、長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板とに分離する、又は、長尺基材及び長尺光配向膜と、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板とに分離する工程と、
長尺光配向膜、長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板、又は長尺位相差膜及び長尺偏光フィルムからなる長尺円偏光板を第5の巻芯250Aに巻き取り、第5ロール250を得、
他方で剥離した長尺基材、又は長尺基材及び長尺光配向膜を第6の巻芯260Aに巻き取り、第6ロール260を得る工程とからなる。
【0130】
本発明の長尺位相差フィルムは、必要に応じて裁断し、さまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)及び圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置などのいずれをも含む。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
また、長尺円偏光板は、必要に応じて裁断し、特に有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の表示装置に有効に用いることができる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0132】
実施例1
[光配向膜形成用組成物の製造]
下記成分を混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。
光配向性材料(5部):
溶剤(95部):シクロペンタノン
【0133】
〔液晶硬化膜形成用組成物の製造〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、液晶硬化膜形成用組成物を得た。
重合性液晶化合物;化合物(A11-1) 100部
重合性液晶化合物;化合物(x-1) 33部
重合開始剤;2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア(登録商標)369;BASFジャパン社製) 8 部
レベリング剤;ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製) 0.1部
その他の添加剤;LALOMER LR9000(BASFジャパン社製)6.7部
溶剤;シクロペンタノン 546部
溶剤;N-メチルピロリドン 364部
【0134】
〔長尺位相差フィルムの製造〕
シクロオレフィンポリマーフィルムロール(ZF-14、日本ゼオン株式会社製)の表面を、プラズマ処理装置(積水化学工業社製)を用いて強度1.5J/cm^2、添加酸素濃度0.25%の条件で1回処理した。
続いて光配向膜形成用組成物をダイコーティング法により上記フィルム表面に塗布し第1塗布膜を得た。得られた第1塗布膜を100℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却し、第1乾燥被膜を得た。その後、偏光紫外線を配向規制力の方向が上記フィルムの搬送方向に対して45°の角度をなすように100mJ(313nm基準)照射し、上記フィルム上に長尺光配向膜を形成した。偏光紫外線は、第1乾燥被膜の長尺方向および短尺方向に対して垂直な方向から、第1乾燥被膜に照射した。
前記長尺光配向膜の上に、液晶硬化膜形成用組成物を、第2塗布膜の膜厚が17μmとなるようにダイコーティング法で塗布し第2塗布膜を得た。第2塗布膜を120℃にて2分間加熱乾燥し、室温まで冷却することで、第2乾燥被膜を得た。紫外線照射装置を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を第2乾燥被膜に照射することにより、位相差膜が形成された長尺位相差フィルム(1)を得た。
【0135】
〔膜厚測定〕
長尺位相差フィルム(1)から、任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、レーザー顕微鏡(LEXT3000、オリンパス社製)を用いて膜厚を測定した。その結果、長尺配向膜の膜厚は50nm、長尺位相差膜の膜厚は2.1μmであった。
【0136】
〔ヘイズの測定〕
長尺位相差フィルム(1)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、ヘイズメーター(HZ-2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズ値を測定した。その結果、ヘイズ値は0.2%であった。
【0137】
〔位相差値の測定〕
長尺位相差フィルム(1)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切出し、波長587.7nmにおける正面位相差値を、複屈折測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、148nmであった。なお、長尺基材に使用したシクロオレフィンポリマーフィルムには、複屈折性が無いため、該基材を含む形態で、測定した結果は、該基材上に形成された位相差膜の正面位相差値を表す。
【0138】
〔波長分散特性の測定〕
長尺位相差フィルム(1)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、波長450.9nm、498.6nm、549.4nm、587.7nm、627.8nmおよび751.3nmにおける正面位相差値、複屈折測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、それぞれ130nm、142nm、147nm、148nm、149nmおよび151nmであった。セルマイヤーフィッティングにより、波長450nm、550nm、650nmにおける正面位相差値を算出すると、129nm、141nm、144nmであった。これよりRe(450)/Re(550)=0.91 ≦ 1 Re(650)/Re(550)=1.02 ≧ 1 が成立することを確認した。
【0139】
〔長尺偏光フィルムとの一体ラミネート〕
長尺位相差フィルム(1)の液晶硬化膜側と、ヨウ素-PVA偏光板ロール(SRW842A; 住友化学株式会社製、吸収軸はロールの搬送方向と一致)とを粘着剤を介して一体ラミネートし、長尺円偏光板(1)を作製した。
【0140】
〔反射率の測定〕
長尺円偏光板(1)の有用性を確認するため、長尺円偏光板(1)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、円偏光板を得た。該円偏光板の反射率を、以下のようにして測定した。作製した円偏光板の長尺位相差フィルム(1)に由来する側と反射板(鏡面アルミニウム板)とを粘着剤を用いて貼合して測定サンプルを作製した。
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)を用いて、波長400から700nmの範囲の光を2nmステップで測定サンプルに対し法線方向12°から入射し、反射した光の反射率を測定した。円偏光板を貼合せずに反射板のみを配置して測定した際の反射率を100%として比較したところ、400から700nmの範囲の光はいずれの波長でも1~10%程度であり、可視光全域に渡って十分な反射防止特性が得られた。
【0141】
実施例2
〔長尺位相差フィルムの製造〕
ポリエチレンテレフタレートフィルムロール(ダイアホイルT140E25、三菱樹脂株式会社製)の表面に、光配向膜形成用組成物をダイコーティング法により塗布し第1塗布膜を得た。得られた第1塗布膜を100℃で2分間乾燥させた後、室温まで冷却し、第1乾燥被膜を得た。その後、偏光紫外線を配向規制力の方向が上記フィルムの搬送方向に対して45°の角度をなすように100mJ(313nm基準)照射し、上記フィルム上に長尺光配向膜を形成した。偏光紫外線は、第1乾燥被膜の長尺方向および短尺方向に対して垂直な方向から、第1乾燥被膜に照射した。
前記長尺光配向膜の上に、液晶硬化膜形成用組成物を、第2塗布膜の膜厚が17μmとなるようにダイコーティング法で塗布し第2塗布膜を得た。第2塗布膜を120℃にて2分間加熱乾燥し、室温まで冷却することで、第2乾燥被膜を得た。紫外線照射装置を用いて、露光量1000mJ/cm2(365nm基準)の紫外線を第2乾燥被膜に照射することにより、位相差膜が形成された長尺位相差フィルム(2)を得た。
【0142】
〔基材フィルムの剥離〕
長尺位相差フィルム(2)の位相差膜表面に、コロナ処理を施し、粘着剤層を介してシクロオレフィンポリマーフィルムロールを積層した。次に、
図4で示した要部を有するラインを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム及び第1乾燥被膜を剥離し、位相差膜、粘着剤層及びシクロオレフィンポリマーフィルムからなる長尺位相差フィルム(3)を得た。
【0143】
〔膜厚測定〕
長尺位相差フィルム(3)から、任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、レーザー顕微鏡(LEXT3000、オリンパス社製)を用いて膜厚を測定した。その結果、長尺位相差膜の膜厚は2.2μmであった。
【0144】
〔ヘイズの測定〕
長尺位相差フィルム(3)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、ヘイズメーター(HZ-2;スガ試験機(株)製)を用いてヘイズ値を測定した。その結果、ヘイズ値は0.4%であった。
【0145】
〔位相差値の測定〕
長尺位相差フィルム(3)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切出し、波長587.7nmにおける正面位相差値を、複屈折測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、143nmであった。なお、長尺基材に使用したシクロオレフィンポリマーフィルムには、複屈折性が無いため、該基材を含む形態で、測定した結果は、該基材上に形成された位相差膜の正面位相差値を表す。
【0146】
〔波長分散特性の測定〕
長尺位相差フィルム(3)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、波長450.9nm、498.6nm、549.4nm、587.7nm、627.8nmおよび751.3nmにおける正面位相差値、複屈折測定装置(KOBRA-WR、王子計測機器社製)を用いて測定したところ、それぞれ125nm、137nm、142nm、143nm、144nmおよび146nmであった。セルマイヤーフィッティングにより、波長450nm、550nm、650nmにおける正面位相差値を算出すると、124nm、136nm、139nmであった。これよりRe(450)/Re(550)=0.91 ≦ 1 Re(650)/Re(550)=1.02 ≧ 1 が成立することを確認した。
【0147】
〔長尺偏光フィルムとの一体ラミネート〕
長尺位相差フィルム(3)の位相差膜側と、ヨウ素-PVA偏光板ロール(SRW842A; 住友化学株式会社製、吸収軸はロールの搬送方向と一致)とを粘着剤を介して一体ラミネートし、長尺円偏光板(3)を作製した。
【0148】
〔反射率の測定〕
長尺円偏光板(3)の有用性を確認するため、長尺円偏光板(3)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、円偏光板を得た。該円偏光板の反射率を、以下のようにして測定した。作製した円偏光板の長尺位相差フィルム(3)に由来する側と反射板(鏡面アルミニウム板)とを粘着剤を用いて貼合して測定サンプルを作製した。
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)を用いて、波長400から700nmの範囲の光を2nmステップで測定サンプルに対し法線方向12°から入射し、反射した光の反射率を測定した。円偏光板を貼合せずに反射板のみを配置して測定した際の反射率を100%として比較したところ、400から700nmの範囲の光はいずれの波長でも1~10%程度であり、可視光全域に渡って十分な反射防止特性が得られた。
【0149】
実施例3
〔長尺円偏光板(4)の作製〕
実施例2で得られた長尺位相差フィルム(2)の位相差膜表面に、コロナ処理を施し、ヨウ素-PVA偏光板ロール(SRW842A; 住友化学株式会社製、吸収軸はロールの搬送方向と一致)とを粘着剤を介して一体ラミネートした。次に、
図5で示した要部を有するラインを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム及び第1乾燥被膜を剥離し、位相差膜、粘着剤層及び偏光板からなる長尺円偏光板(4)を得た。
【0150】
〔反射率の測定〕
長尺円偏光板(4)の有用性を確認するため、長尺円偏光板(4)から任意の箇所のフィルム片(4cm×4cm)を切り出し、円偏光板を得た。該円偏光板の反射率を、以下のようにして測定した。作製した円偏光板の長尺位相差フィルム(2)に由来する側と反射板(鏡面アルミニウム板)とを粘着剤を用いて貼合して測定サンプルを作製した。
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)を用いて、波長400から700nmの範囲の光を2nmステップで測定サンプルに対し法線方向12°から入射し、反射した光の反射率を測定した。円偏光板を貼合せずに反射板のみを配置して測定した際の反射率を100%として比較したところ、400から700nmの範囲の光はいずれの波長でも1~10%程度であり、可視光全域に渡って十分な反射防止特性が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、長尺位相差フィルムの長尺方向に対して斜め方向に光軸を有する長尺位相差フィルムを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0152】
210 第1ロール
210A 巻芯
220 第2ロール
220A 巻芯
211A,211B 塗布装置
212A,212B 乾燥炉
213A 偏光UV照射装置
213B 偏光照射装置
300 補助ロール
230 第3ロール
230A 巻芯
240 第4ロール
240A 巻芯
250 第5ロール
250A 巻芯
260 第6ロール
260A 巻芯
270 ガイドロール