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特許7175995光学積層体、導光素子および画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】光学積層体、導光素子および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221114BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20221114BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20221114BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221114BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/18
G09F9/00 359
G09F9/00 313
B32B7/023
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020551184
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2019039755
(87)【国際公開番号】W WO2020075738
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2018193490
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 之人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 克己
【審査官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/094096(WO,A1)
【文献】特表2017-522601(JP,A)
【文献】特表2010-525394(JP,A)
【文献】特開2001-091944(JP,A)
【文献】特開2000-056115(JP,A)
【文献】特開2012-203123(JP,A)
【文献】特表2003-521742(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084076(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/133186(WO,A1)
【文献】国際公開第98/020391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/18
G09F 9/00
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶相を固定してなる、特定の波長域の光を選択的に反射するコレステリック液晶層であって、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、第1コレステリック液晶層および第2コレステリック液晶層を有し、
前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層とは、
前記コレステリック液晶相において、螺旋状に旋回して積み上げられる液晶化合物が360°旋回する厚さ方向の長さである螺旋のピッチが、互いに異なり、
反射する円偏光の旋回方向が同方向であり、かつ、
前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が同方向である、光学積層体。
【請求項2】
コレステリック液晶相を固定してなる、特定の波長域の光を選択的に反射するコレステリック液晶層であって、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、第1コレステリック液晶層および第2コレステリック液晶層を有し、
前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層とは、
前記コレステリック液晶相において、螺旋状に旋回して積み上げられる液晶化合物が360°旋回する厚さ方向の長さである螺旋ピッチが、互いに異なり、
反射する円偏光の旋回方向が逆方向であり、かつ、
前記液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する前記液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が逆方向である、光学積層体。
【請求項3】
前記第1コレステリック液晶層の液晶配向パターン、および、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の一方向のみに沿って連続的に回転しながら変化するものであり、
前記第1コレステリック液晶層の前記液晶配向パターン、および、前記第2コレステリック液晶層の前記液晶配向パターンにおいて、前記面内の一方向が同方向である、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記液晶配向パターンの、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する前記一方向における、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
前記第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンと、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンとで、前記1周期の長さが等しい、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記液晶配向パターンの、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する前記一方向における、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
前記第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンおよび第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、前記1周期が10μm以下の領域を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項6】
中心波長が同一の光を、法線方向から、法線に対して40°の角度を有する方向まで、角度を変更して入射した際に、
前記第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層とで、反射率が20%以上で重複する角度領域を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層との組み合わせを、複数、有し、
前記液晶配向パターンの、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する前記一方向における、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
前記複数の第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせは、選択的に反射する波長域の波長の長さの順列と、前記1周期の長さの順列とが等しい、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
赤色光領域に選択的に反射する波長域を有する前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層との組み合わせ、
緑色光領域に選択的に反射する波長域を有する前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層との組み合わせ、および、
青色光領域に選択的に反射する波長域を有する前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層との組み合わせの、2組以上を有する、請求項7に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記第1コレステリック液晶層と前記第2コレステリック液晶層とにおいて、螺旋ピッチが長い方のコレステリック液晶層の螺旋ピッチの長さが、螺旋ピッチが短い方のコレステリック液晶層の螺旋ピッチの長さの1.05~1.45倍である、請求項1~8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
導光板と、前記導光板に設けられる請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体と、を有する、導光素子。
【請求項11】
前記光学積層体が、複数、前記導光板に離間して設けられる、請求項10に記載の導光素子。
【請求項12】
請求項10または11に記載の導光素子と、前記導光素子の光学積層体に画像を照射する表示素子とを有する画像表示装置。
【請求項13】
前記表示素子が、円偏光を前記光学積層体に照射する、請求項12に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を反射する光学積層体、この光学素子を用いる導光素子、および、この導光素子を用いる画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非特許文献1に記載されるような、実際に見ている光景に、仮想の映像および各種の情報等を重ねて表示する、AR(Augmented Reality(拡張現実))グラスが実用化されている。ARグラスは、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ(HMD(Head Mounted Display))、および、ARメガネ等とも呼ばれている。
【0003】
非特許文献1に示されるように、ARグラスは、一例として、ディスプレイ(光学エンジン)が表示した映像を、導光板の一端に入射して伝播し、他端から出射することにより、使用者が実際に見ている光景に、仮想の映像を重ねて表示する。
ARグラスでは、回折素子を用いて、ディスプレイからの光(投影光)を回折(屈折)させて導光板の一方の端部に入射する。これにより、角度を付けて導光板に光を導入して、導光板内で光を全反射して伝播させる。導光板を伝播した光は、導光板の他方の端部において同じく回折素子によって回折されて、導光板から、使用者による観察位置に出射される。
【0004】
ARグラスに利用される、導光板に角度をつけて光を入射させる回折素子の一例として、特許文献1に記載される、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を用いる反射構造体が例示される。
この反射構造体は、各々が所定方向に沿って延びる複数の螺旋状構造体を備えている。また、この反射構造体は、所定方向に交差すると共に、光が入射する第1入射面と、この所定方向に交差すると共に、第1入射面から入射した光を反射する反射面とを有し、第1入射面は、複数の螺旋状構造体のそれぞれの両端部のうちの一方端部を含む。また、複数の螺旋状構造体の各々は、所定方向に沿って連なる複数の構造単位を含み、この複数の構造単位は、螺旋状に旋回して積み重ねられた複数の要素を含む。また、複数の構造単位の各々は、第1端部と第2端部とを有し、所定方向に沿って互いに隣接する構造単位のうち、一方の構造単位の第2端部は、他方の構造単位の第1端部を構成し、かつ、複数の螺旋状構造体に含まれる複数の第1端部に位置する要素の配向方向は揃っている。さらに、反射面は、複数の螺旋状構造体のそれぞれに含まれる少なくとも1つの第1端部を含むものであり、かつ、第1入射面に対して非平行となっている。
【0005】
特許文献1に記載される反射構造体(コレステリック液晶層)は、要するに、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有するものである。特許文献1に記載されるコレステリック液晶層は、このような液晶配向パターンを有することにより、第1入射面に対して、非平行な反射面を有する。
一般的なコレステリック液晶層は、入射した光を鏡面反射する。
これに対して、特許文献1に記載される反射構造体は、鏡面反射ではなく、入射した光を、鏡面反射に対して所定の方向に角度を持たせて反射する。例えば、特許文献1に記載されるコレステリック液晶層によれば、法線方向から入射した光を、法線方向に反射するのではなく、法線方向に対して角度を有して反射する。
従って、この光学素子を用いることで、ディスプレイによる画像を回折させて、角度を付けて導光板に光を導入して、導光板内で光を導光できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/066219号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Bernard C. Kress et al., Towards the Ultimate Mixed Reality Experience: HoloLens Display Architecture Choices, SID 2017 DIGEST, pp.127-131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ARグラスには、画像を表示する領域である視野角(FOV(Field of View))が広いことが要求される。
しかしながら、特許文献1に記載される光学素子をARグラスに用いた場合には、ディスプレイが照射した光の利用効率が低く、十分な視野角が得られない場合もある。
【0009】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、入射した光を高い利用効率で屈折して導光板等に入射できる光学積層体、この光学積層体を用いる、例えばARグラスに用いることにより広い視野角での画像の表示を可能にする導光素子、および、この導光素子を用いる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層であって、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、第1コレステリック液晶層および第2コレステリック液晶層を有し、
第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層とは、
コレステリック液晶相において、螺旋状に旋回して積み上げられる液晶化合物が360°旋回する厚さ方向の長さである螺旋のピッチが、互いに異なり、
反射する円偏光の旋回方向が同方向であり、かつ、
液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が同方向である、光学積層体。
[2] コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層であって、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、第1コレステリック液晶層および第2コレステリック液晶層を有し、
第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層とは、
コレステリック液晶相において、螺旋状に旋回して積み上げられる液晶化合物が360°旋回する厚さ方向の長さである螺旋ピッチが、互いに異なり、
反射する円偏光の旋回方向が逆方向であり、かつ、
液晶配向パターンにおいて、少なくとも一方向に沿って連続的に回転する液晶化合物由来の光学軸の向きの回転方向が逆方向である、光学積層体。
[3] 第1コレステリック液晶層の液晶配向パターン、および、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の一方向のみに沿って連続的に回転しながら変化するものであり、
第1コレステリック液晶層の液晶配向パターン、および、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、面内の一方向が同方向である、[1]または[2]に記載の光学積層体。
[4] 液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンと、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンとで、1周期の長さが等しい、[1]~[3]のいずれかに記載の光学積層体。
[5] 液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンおよび第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、1周期が10μm以下の領域を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の光学積層体。
[6] 中心波長が同一の光を、法線方向から、法線に対して40°の角度を有する方向まで、角度を変更して入射した際に、
第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層とで、反射率が20%以上で重複する角度領域を有する、[1]~[5]のいずれかに記載の光学積層体。
[7] 第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせを、複数、有し、
液晶配向パターンの、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向における、液晶化合物由来の光学軸の向きが180°回転する長さを1周期とした際に、
複数の第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせは、選択的に反射する波長域の波長の長さの順列と、1周期の長さの順列とが等しい、[1]~[6]のいずれかに記載の光学積層体。
[8] 赤色光領域に選択的に反射する波長域を有する第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせ、
緑色光領域に選択的に反射する波長域を有する第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせ、および、
青色光領域に選択的に反射する波長域を有する第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層との組み合わせの、2組以上を有する、[7]に記載の光学積層体。
[9] 導光板と、導光板に設けられる[1]~[8]のいずれかに記載の光学積層体と、を有する、導光素子。
[10] 光学積層体が、複数、導光板に離間して設けられる、[9]に記載の導光素子。
[11] [9]または[10]に記載の導光素子と、導光素子の光学積層体に画像を照射する表示素子とを有する画像表示装置。
[12] 表示素子が、円偏光を光学積層体に照射する、[11]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学積層体は、入射した光を高い利用効率で屈折して導光板等に入射できる。また、この光学積層体を利用する本発明の導光素子、および、この導光素子を用いる本発明の画像表示装置は、例えば、ARグラス等に利用することにより、広い視野角での画像の表示が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の光学積層体および導光素子を用いる本発明の画像表示装置の一例を概念的に示す図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、本発明の光学積層体の一例を概念的に示す図である。
図4図4は、図3に示す光学積層体のコレステリック液晶層を説明するための概念図である。
図5図5は、図3に示す光学積層体のコレステリック液晶層の平面図である。
図6図6は、図3に示す光学積層体のコレステリック液晶層の作用を説明するための概念図である。
図7図7は、本発明の光学積層体を説明するための概念図である。
図8図8は、本発明の光学積層体の別の例を概念的に示す図である。
図9図9は、図3に示す光学積層体の配向膜を露光する露光装置の別の例の概念図である。
図10図10は、反射率の測定方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学積層体、導光素子および画像表示装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0014】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0015】
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。
またこれに限定されるものではないが、可視光のうち、420~490nmの波長域の光は青色光であり、495~570nmの波長域の光は緑色光であり、620~750nmの波長域の光は赤色光である。
【0016】
図1に、本発明の導光素子を用いる、本発明の画像表示装置の一例を概念的に示す。なお、本発明の導光素子は、本発明の光学積層体を用いるものである。
図1に示す画像表示装置10は、好適な一例として、ARグラスとして利用されるものである。なお、本発明の光学積層体および導光素子は、ARグラス以外にも、透明スクリーン、照明装置、センサー等の光学素子にも利用可能である。また、本発明の画像表示装置は、これらの光学素子を用いる画像表示装置にも利用可能である。照明装置には、液晶ディスプレイのバックライト等も含む。
図1に示す画像表示装置10は、表示素子12と、光学積層体14aおよび14bと、導光板16と、を有する。光学積層体14aおよび14bは、導光板16の同一面の長手方向の端部に離間して貼り合わされており、光学積層体14aが表示素子12側で、光学積層体14bが画像の表示側である。
【0017】
[表示素子]
表示素子12は、使用者Uが観察する画像(映像)を表示して、画像を導光板を介して光学積層体14aに照射するものである。
図2に、表示素子12の構成を概念的に示す。
本発明の画像表示装置10において、表示素子12には制限はなく、ARグラス等に用いられる公知の表示素子(表示装置、プロジェクター、イメージャー)が、各種、利用可能である。図示例においては、表示素子12は、一例として、ディスプレイ20および投映レンズ24を有する。
【0018】
本発明の画像表示装置10において、ディスプレイ20には、制限はなく、例えば、ARグラス等に用いられる公知のディスプレイが、各種、利用可能である。
ディスプレイ20としては、一例として、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、DLP(Digital Light Processing)等が例示される。液晶ディスプレイには、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等を含む。
なお、ディスプレイ20は、モノクロ画像を表示するものでも、二色画像を表示するものでも、カラー画像を表示するものでもよい。図示例の画像表示装置10は、一例として、赤色のモノクロ画像を表示するものであり、ディスプレイ20は、赤色のモノクロ画像を表示する。
【0019】
本発明の画像表示装置10に用いられる表示素子12おいて、投映レンズ24も、ARグラス等に用いられる公知の投映レンズ(集光レンズ)である。
【0020】
ここで、本発明の画像表示装置10においては、表示素子12は、円偏光を照射するのが好ましい。
従って、ディスプレイ20が無偏光の画像を照射する場合には、表示素子12は、例えば直線偏光子とλ/4板とからなる円偏光板を有するのが好ましい。また、ディスプレイ20が直線偏光の画像を照射する場合には、表示素子12は、例えばλ/4板を有するのが好ましい。
図示例においては、表示素子12は、一例として、右円偏光の画像を照射する。
【0021】
また、本発明の光学積層体および画像表示装置については、視認の改善のため、射出瞳を拡大する回折光学方法を用いてもよい。具体的には複数個の回折要素(光学積層体)を使用する光学的方法、すなわち内結合、中間および外結合回折要素を備えた回折光学方法を用いる事が出来る。本方法は特表2008-546020に詳しく記載がある。
【0022】
[導光板]
画像表示装置10において、導光板16は、内部に入射した光を反射して導光(伝搬)する、公知の導光板である。この導光板16と、光学積層体14aおよび/または光学積層体14bとで、本発明の導光素子が構成される。
導光板16には、制限はなく、ARグラスおよび液晶ディスプレイのバックライトユイット等で用いられている公知の導光板が、各種、利用可能である。
【0023】
[光学積層体]
光学積層体14aおよび14bは、本発明の光学積層体である。
画像表示装置10(図示例の導光素子)においては、導光板16の同一面の長手方向の両端部に、光学積層体14が配置される。
図示は省略するが、光学積層体14は、貼合層によって導光板に貼り合わされている。
本発明において、貼合層は、貼り合わせの対象となる物同士を貼り合わせられる層であれば、公知の各種の材料からなる層が利用可能である。貼合層としては、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層でも、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層でも、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。従って、貼合層は、光学透明接着剤(OCA(Optical Clear Adhesive))、光学透明両面テープ、および、紫外線硬化型樹脂等の、光学装置および光学素子等でシート状物の貼り合わせに用いられる公知の層を用いればよい。
あるいは、貼合層で貼り合わせるのではなく、光学積層体14と導光板16とを積層して、枠体または治具等で保持して、本発明の導光素子を構成してもよい。
あるいは、導光板16上に直接、光学積層体14を形成してもよい。
【0024】
図3に、光学積層体14aを概念的に示す。図3に示す光学積層体14aは、支持体30と、配向膜32と、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36と、を有する。図1では、図面を簡略化するために、光学積層体14は、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36のみを示している。
以下の説明は、光学積層体14aを代表例として行うが、光学積層体14aと光学積層体14bとは、基本的に同じ構成を有するものであり、同じ作用効果を発現する。ただし、光学積層体14aと光学積層体14bとでは、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける、一方向(後述する矢印X方向)に沿う液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向が逆である。
【0025】
なお、図示例の光学積層体14aは、支持体30と、配向膜32と、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36とを有するが、本発明は、これに制限はされない。本発明の光学積層体は、例えば、光学積層体14aを導光板16に貼り合わせた後に、支持体30を剥離した、配向膜32、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36のみを有するものでもよい。または、本発明の光学積層体は、例えば、光学積層体14aを導光板16に貼り合わせた後に、支持体30および配向膜32を剥離した、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36のみを有するものでもよい。
【0026】
<支持体>
光学積層体14において、支持体30は、配向膜32、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36を支持するものである。
以下の説明では、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とを区別する必要がない場合には、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とをまとめて『コレステリック液晶層』とも言う。
【0027】
支持体30は、配向膜32およびコレステリック液晶層を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
なお、支持体30は、対応する光に対する透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
【0028】
支持体30の厚さには、制限はなく、光学積層体14aの用途および支持体30の形成材料等に応じて、配向膜32およびコレステリック液晶層を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
支持体30の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
【0029】
支持体30は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の支持体30としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体30が例示される。多層である場合の支持体30の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
【0030】
<配向膜>
光学積層体14において、支持体30の表面には配向膜32が形成される。
配向膜32は、光学積層体14の第1コレステリック液晶層34を形成する際に、液晶化合物40を所定の液晶配向パターンに配向するための配向膜32である。
後述するが、本発明の光学積層体14において、コレステリック液晶層は、液晶化合物40に由来する光学軸40A(図3参照)の向きが、面内の一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。従って、配向膜32は、コレステリック液晶層が、この液晶配向パターンを形成できるように、形成される。
以下の説明では、『光学軸40Aの向きが回転』を単に『光学軸40Aが回転』とも言う。
【0031】
配向膜32は、公知の各種のものが利用可能である。
例えば、ポリマーなどの有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、ならびに、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチルなどの有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett:ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜、等が例示される。
【0032】
ラビング処理による配向膜32は、ポリマー層の表面を紙または布で一定方向に数回こすることにより形成できる。
配向膜32に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005-97377号公報、特開2005-99228号公報、および、特開2005-128503号公報記載の配向膜32等の形成に用いられる材料が好ましい。
【0033】
本発明の光学積層体14においては、配向膜32は、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜32とした、いわゆる光配向膜が好適に利用される。すなわち、本発明の光学積層体14においては、配向膜32として、支持体30上に、光配向材料を塗布して形成した光配向膜が、好適に利用される。
偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0034】
本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
【0035】
配向膜32の厚さには制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜32の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0036】
配向膜32の形成方法には、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じた公知の方法が、各種、利用可能である。一例として、配向膜32を支持体30の表面に塗布して乾燥させた後、配向膜32をレーザ光によって露光して、配向パターンを形成する方法が例示される。
【0037】
図9に、配向膜32を露光して、配向パターンを形成する露光装置の一例を概念的に示す。
図9に示す露光装置60は、レーザ62を備えた光源64と、レーザ62が出射したレーザ光Mの偏光方向を変えるλ/2板65と、レーザ62が出射したレーザ光Mを光線MAおよびMBの2つに分離する偏光ビームスプリッター68と、分離された2つの光線MAおよびMBの光路上にそれぞれ配置されたミラー70Aおよび70Bと、λ/4板72Aおよび72Bと、を備える。
なお、光源64は直線偏光P0を出射する。λ/4板72Aおよび72Bは、互いに平行な光学軸を備えている。λ/4板72Aは、直線偏光P0(光線MA)を右円偏光PRに、λ/4板72Bは直線偏光P0(光線MB)を左円偏光PLに、それぞれ変換する。
【0038】
配向パターンを形成される前の配向膜32を有する支持体30が露光部に配置され、2つの光線MAと光線MBとを配向膜32上において交差させて干渉させ、その干渉光を配向膜32に照射して露光する。
この際の干渉により、配向膜32に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。これにより、配向膜32において、配向状態が周期的に変化する配向パターンが得られる。
露光装置60においては、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節できる。すなわち、露光装置60においては、交差角αを調節することにより、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に向かって連続的に回転する配向パターンにおいて、光学軸40Aが回転する1方向における、光学軸40Aが180°回転する1周期の長さを調節できる。
このような配向状態が周期的に変化した配向パターンを有する配向膜32上に、コレステリック液晶層を形成することにより、後述するように、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する、コレステリック液晶層を形成できる。
また、λ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転することにより、光学軸40Aの回転方向を逆にすることができる。
【0039】
なお、本発明の光学素子において、配向膜32は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要件ではない。
例えば、支持体30をラビング処理する方法、支持体30をレーザ光などで加工する方法等によって、支持体30に配向パターンを形成することにより、コレステリック液晶層が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する構成とすることも、可能である。すなわち、本発明においては、支持体30を配向膜として作用させてもよい。
【0040】
<コレステリック液晶層>
光学積層体14において、配向膜32の表面には、第1コレステリック液晶層34が形成される。さらに、光学積層体14において、第1コレステリック液晶層34の表面には、第2コレステリック液晶層36が形成される。
第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、共に、コレステリック液晶相を固定してなるものである。
なお、図3においては、図面を簡略化して光学積層体14の構成を明確に示すために、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、配向膜32の表面および第1コレステリック液晶層34の液晶化合物40(液晶化合物分子)のみを概念的に示している。しかしながら、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、図4に第1コレステリック液晶層34を例示して概念的に示すように、通常のコレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層と同様に、液晶化合物40が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物40が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチとして、螺旋状に旋回する液晶化合物40が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
【0041】
周知のように、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、波長選択反射性を有する。
後に詳述するが、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域は、上述した螺旋1ピッチの厚さ方向の長さに依存する。図示例の光学積層体14においては、一例として、第1コレステリック液晶層34のピッチPが、第2コレステリック液晶層36のピッチPよりも長い。従って、図示例の光学積層体14は、第1コレステリック液晶層34の方が、第2コレステリック液晶層36よりも長波長域の光を選択的に反射する。図4に、螺旋1ピッチの厚さ方向の長さ(ピッチP)を示す。
【0042】
前述のように、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、コレステリック液晶相を固定してなるものである。
すなわち、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、共に、コレステリック構造を有する液晶化合物40(液晶材料)からなる層である。
【0043】
<<コレステリック液晶相>>
コレステリック液晶相は、特定の波長において選択反射性を示すことが知られている。
一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長λ(選択反射中心波長λ)は、コレステリック液晶相における螺旋のピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋ピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節することができる。
コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、ピッチPが長いほど、長波長になる。
なお、螺旋のピッチPとは、上述したように、コレステリック液晶相の螺旋構造1ピッチ分(螺旋の周期)である。螺旋のピッチPは、言い換えれば、螺旋の巻き数1回分であり、すなわち、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクターが360°回転する螺旋軸方向の長さである。液晶化合物のダイレクターは、棒状液晶であれば長軸方向である。
【0044】
コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、コレステリック液晶層を形成する際に、液晶化合物と共に用いるキラル剤の種類、および、キラル剤の添加濃度に依存する。従って、これらを調節することによって、所望の螺旋ピッチを得ることができる。
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載される方法を用いることができる。
【0045】
コレステリック液晶相は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示す。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向(センス)による。コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶層の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類および/または添加されるキラル剤の種類によって調節できる。
【0046】
また、選択反射を示す選択反射波長域(円偏光反射波長域)の半値幅Δλ(nm)は、コレステリック液晶相のΔnと螺旋のピッチPとに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射波長域(選択的な反射波長域)の幅の制御は、Δnを調節して行うことができる。Δnは、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向固定時の温度により調節できる。
反射波長域の半値幅は、光学積層体の用途に応じて調節され、例えば10~500nmであればよく、好ましくは20~300nmであり、より好ましくは30~100nmである。
【0047】
<<コレステリック液晶層の形成方法>>
コレステリック液晶層(第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36)は、コレステリック液晶相を層状に固定して形成できる。
コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造が好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、コレステリック液晶層において、液晶化合物40は液晶性を示さなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、液晶性を失っていてもよい。
【0048】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましい。
また、コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤およびキラル剤を含んでいてもよい。
【0049】
--重合性液晶化合物--
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
コレステリック液晶相を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0050】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、および、特開2001-328973号公報等に記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0051】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9-133810号公報に開示されているような液晶性高分子、および、特開平11-293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0052】
--円盤状液晶化合物--
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
【0053】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75~99.9質量%であるのが好ましく、80~99質量%であるのがより好ましく、85~90質量%であるのがさらに好ましい。
【0054】
--界面活性剤--
コレステリック液晶層を形成する際に用いる液晶組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック液晶相とするために寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0055】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-99248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0056】
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~1質量%がさらに好ましい。
【0057】
--キラル剤(光学活性化合物)--
キラル剤(キラル剤)はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0058】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0059】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0060】
--重合開始剤--
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~12質量%であるのがさらに好ましい。
【0061】
--架橋剤--
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度向上の効果が得られやすく、コレステリック液晶相の安定性がより向上する。
【0062】
--その他の添加剤--
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0063】
液晶組成物は、コレステリック液晶層(第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36)を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0064】
コレステリック液晶層を形成する際には、コレステリック液晶層の形成面に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶層とするのが好ましい。
すなわち、配向膜32上にコレステリック液晶層を形成する場合には、配向膜32に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を形成するのが好ましい。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
【0065】
塗布された液晶組成物は、必要に応じて乾燥および/または加熱され、その後、硬化され、コレステリック液晶層を形成する。この乾燥および/または加熱の工程で、液晶組成物中の液晶化合物がコレステリック液晶相に配向すればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0066】
配向させた液晶化合物は、必要に応じて、さらに重合される。重合は、熱重合、および、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いるのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、50~1500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射する紫外線の波長は250~430nmが好ましい。
【0067】
コレステリック液晶層の厚さには、制限はなく、光学積層体14の用途、コレステリック液晶層に要求される光の反射率、および、コレステリック液晶層の形成材料等に応じて、必要な光の反射率が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
【0068】
<<コレステリック液晶層の液晶配向パターン>>
前述のように、本発明の光学積層体14において、コレステリック液晶層(第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36)は、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが、コレステリック液晶層の面内において、一方向に連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。
なお、液晶化合物40に由来する光学軸40Aとは、液晶化合物40において屈折率が最も高くなる軸、いわゆる遅相軸である。例えば、液晶化合物40が棒状液晶化合物である場合には、光学軸40Aは、棒形状の長軸方向に沿っている。以下の説明では、液晶化合物40に由来する光学軸40Aを、『液晶化合物40の光学軸40A』または『光学軸40A』ともいう。
【0069】
図5に、第1コレステリック液晶層34の平面図を概念的に示す。
なお、平面図とは、図3において、光学積層体14を上方から見た図であり、すなわち、光学積層体14を厚さ方向から見た図である。厚さ方向とは、言い換えれば、各層(膜)の積層方向である。
また、図3では、本発明の光学積層体14の構成を明確に示すために、図3と同様、液晶化合物40は配向膜32の表面の液晶化合物40のみを示している。
【0070】
なお、図5では、第1コレステリック液晶層34を代表例として説明するが、第2コレステリック液晶層36も、後述するように螺旋のピッチPが異なる以外は、基本的に、第1コレステリック液晶層34と同様の構成を有し、同様の作用効果を発現する。
【0071】
図5に示すように、配向膜32の表面において、第1コレステリック液晶層34を構成する液晶化合物40は、下層の配向膜32に形成された配向パターンに応じて、矢印Xで示す所定の一方向、および、この一方向(矢印X方向)と直交する方向に、二次元的に配列された状態になっている。
以下の説明では、矢印X方向と直交する方向を、便宜的にY方向とする。すなわち、図1図2および後述する図4では、Y方向は、紙面に直交する方向となる。
また、第1コレステリック液晶層34を形成する液晶化合物40は、第1コレステリック液晶層34の面内において、矢印X方向に沿って、光学軸40Aの向きが、連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有する。図示例においては、液晶化合物40の光学軸40Aが、矢印X方向に沿って、時計方向に連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有する。
なお、コレステリック液晶層の上に、上述したような塗布法によってコレステリック液晶層を形成すると、上層のコレステリック液晶層の液晶配向パターンは、形成面となる下層のコレステリック液晶層の表面における液晶配向パターンに追従する。従って、第1コレステリック液晶層34の上に形成される第2コレステリック液晶層36は、第1コレステリック液晶層34と同じ液晶配向パターンを有する。
【0072】
液晶化合物40の光学軸40Aの向きが矢印X方向(所定の一方向)に連続的に回転しながら変化しているとは、具体的には、矢印X方向に沿って配列されている液晶化合物40の光学軸40Aと、矢印X方向とが成す角度が、矢印X方向の位置によって異なっており、矢印X方向に沿って、光学軸40Aと矢印X方向とが成す角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで、順次、変化していることを意味する。
なお、矢印X方向に互いに隣接する液晶化合物40の光学軸40Aの角度の差は、45°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましく、より小さい角度であるのがさらに好ましい。
【0073】
一方、第1コレステリック液晶層34を形成する液晶化合物40は、矢印X方向と直交するY方向、すなわち、光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい。
言い換えれば、第1コレステリック液晶層34を形成する液晶化合物40は、Y方向では、液晶化合物40の光学軸40Aと矢印X方向とが成す角度が等しい。
【0074】
本発明の光学積層体14においては、このような液晶化合物40の液晶配向パターンにおいて、面内で光学軸40Aが連続的に回転して変化する矢印X方向に、液晶化合物40の光学軸40Aが180°回転する長さ(距離)を、液晶配向パターンにおける1周期の長さΛとする。
すなわち、矢印X方向に対する角度が等しい2つの液晶化合物40の、矢印X方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。具体的には、図5図6)に示すように、矢印X方向と光学軸40Aの方向とが一致する2つの液晶化合物40の、矢印X方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。以下の説明では、この1周期の長さΛを『1周期Λ』とも言う。
本発明の光学積層体14において、コレステリック液晶層の液晶配向パターンは、この1周期Λを、矢印X方向すなわち光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する一方向に繰り返す。
【0075】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、通常、入射した光(円偏光)を鏡面反射する。
これに対して、第1コレステリック液晶層34は、入射した光を、入射光に対して矢印X方向に角度を有した方向に反射する。第1コレステリック液晶層34は、面内において、矢印X方向(所定の一方向)に沿って光学軸40Aが連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有するものである。以下、図6を参照して説明する。
【0076】
一例として、第1コレステリック液晶層34は、赤色光の右円偏光RRを選択的に反射するコレステリック液晶層であるとする。従って、第1コレステリック液晶層34に光が入射すると、第1コレステリック液晶層34は、赤色光の右円偏光RRのみを反射し、それ以外の光を透過する。
【0077】
第1コレステリック液晶層34に入射した赤色光の右円偏光RRは、コレステリック液晶層によって反射される際に、各液晶化合物40の光学軸40Aの向きに応じて絶対位相が変化する。
ここで、第1コレステリック液晶層34では、液晶化合物40の光学軸40Aが矢印X方向(一方向)に沿って回転しながら変化している。そのため、光学軸40Aの向きによって、入射した赤色光の右円偏光RRの絶対位相の変化量が異なる。
さらに、第1コレステリック液晶層34に形成された液晶配向パターンは、矢印X方向に周期的なパターンである。そのため、第1コレステリック液晶層34に入射した赤色光の右円偏光RRには、図4に概念的に示すように、それぞれの光学軸40Aの向きに対応した矢印X方向に周期的な絶対位相Qが与えられる。
また、液晶化合物40の光学軸40Aの矢印X方向に対する向きは、矢印X方向と直交するY方向の液晶化合物40の配列では、均一である。
これにより第1コレステリック液晶層34では、赤色光の右円偏光RRに対して、XY面に対して矢印X方向に傾いた等位相面Eが形成される。
そのため、赤色光の右円偏光RRは、等位相面Eの法線方向に反射され、反射された赤色光の右円偏光RRは、XY面に対して矢印X方向に傾いた方向に反射される。XY面は、すなわち、コレステリック液晶層の主面である。
【0078】
また、矢印X方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆にすることで、赤色光の右円偏光RRの反射方向を逆にできる。すなわち、図3図6においては、矢印X方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りで、赤色光の右円偏光RRは矢印X方向に傾けて反射されるが、これを反時計回りとすることで、赤色光の右円偏光RRは矢印X方向と逆方向に傾けて反射される。
光学積層体14aおよび14bは、共に、矢印X方向を、図中左方向に向けて導光板16の長手方向に一致して配置される。
上述したように、光学積層体14aと光学積層体14bとでは、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける、矢印X方向に沿う液晶化合物の光学軸の回転方向が逆である。従って、光学積層体14aと光学積層体14bとでは、入射した赤色光の右円偏光RRの反射方向が逆になり、光学積層体14aは光学積層体14bに向かう方向に、光学積層体14bは光学積層体14aに向かう方向に、赤色光の右円偏光RRを反射する。
【0079】
本発明の光学積層体14aおよび14bにおいて、第1コレステリック液晶層34の上には、第2コレステリック液晶層36が設けられる。
上述したように、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、面方向には同じ液晶配向パターンを有する。従って、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、共に、図6に示すように、右円偏光の赤色光を液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向すなわち矢印X方向に傾けて反射する。
図示例の画像表示装置10では、一例として、表示素子12は、赤色の右円偏光RRの画像を照射する。
このような光学積層体14aおよび14bを導光板16の両端部に備えた画像表示装置10では、表示素子12が照射した赤色の右円偏光RRは、導光板16を透過して光学積層体14aに入射し、光学積層体14aによって矢印X方向に傾斜して反射されて、導光板16の主面の法線方向に対して角度を有して導光板16に再入射する。導光板16の主面の法線方向に対して角度を有して導光板16に入射した赤色の右円偏光RRは、導光板16内で反射を繰り返して光学積層体14b側に導光され、光学積層体14b入射して、矢印X方向と逆に反射されることで、導光板16から出射されて、使用者Uによる観察位置に出射され、画像が表示される。
なお、背景の外光の一部は、図1に一点鎖線で示すように、光学積層体14bおよび導光板16を直進通過して、使用者Uに観察される。
【0080】
ここで、本発明の光学積層体14においては、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、コレステリック液晶相の螺旋構造において液晶化合物40が360°回転する螺旋1ピッチにおける厚さ方向の長さピッチPが異なる。
図示例においては、一例として、光入射側となる第2コレステリック液晶層36よりも、第1コレステリック液晶層34のピッチPが長い。なお、本発明は、これに制限はされず、光入射側となる第2コレステリック液晶層36が、第1コレステリック液晶層34よりもピッチPが長くてもよい。
本発明は、このような構成を有することにより、表示素子12が照射した画像を、ディスプレイ20の面方向の位置によらず、好適に光を反射して、表示素子12が照射した画像を高効率で利用した広い視野角での画像の表示を可能にしている。
【0081】
上述したように、図示例の画像表示装置10(ディスプレイ20)は、赤色のモノクロ画像を表示するものである。従って、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、赤色光を反射できるように螺旋のピッチPを設定される。
ここで、ディスプレイ20が表示した画像は、全てが第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36に法線方向から入射するわけではない。なお、法線とは、主面(最大面)と直交する方向の線である。
すなわち、図2に概念的に示すように、例えばディスプレイ20の中央に表示された画像(実線)は第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36に法線方向から入射する。これに対して、ディスプレイ20の端部に表示された画像(破線)は、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36の法線に対して斜めに入射する。
【0082】
周知のように、コレステリック液晶層は、光が斜めに入射した場合には、選択的に反射する波長域の波長が短くなる、いわゆるブルーシフト(短波シフト)を生じる。
すなわち、例えば、ディスプレイ20が赤色光で画像を表示し、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域を、この波長に応じて設定した場合には、法線方向から入射した赤色光は適正に反射するが、法線に対して傾いて入射したディスプレイ端部の赤色光は、ブルーシフトによって反射率(反射効率)が大幅に低下する。
その結果、従来のコレステリック液晶層を用いて画像を導光板に傾けて入射するARグラス等では、ディスプレイの周辺部の画像を適正に表示することができず、これに起因して視野角(FOV)が狭くなってしまう。
【0083】
これに対して、本発明の光学積層体14aおよび14bは、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36の2層のコレステリック液晶層を有し、2層のコレステリック液晶層において、螺旋のピッチPが互いに異なる。図示例においては、第1コレステリック液晶層34のピッチPが、第2コレステリック液晶層36のピッチPよりも長い。
そのため、例えば第2コレステリック液晶層36を通常の赤色光を選択的に反射するピッチPのコレステリック液晶層にした場合には、法線方向から入射する赤色光は、第2コレステリック液晶層36によって反射される。
これに対して、法線に対して斜めに光が入射したディスプレイ20の端部の赤色光は、ブルーシフトによって第2コレステリック液晶層36を透過するものの、ピッチPの長い赤色光よりも長波長の波長域に対応する第1コレステリック液晶層34では、法線に対して斜めに光が入射したディスプレイ20の端部の赤色光を、ブルーシフトによって好適に反射できる。
従って、本発明の光学積層体によれば、ディスプレイ20における位置によらず、ディスプレイ20の全面の画像を高い反射率で反射できるので、例えばARグラス等に利用することで、広い視野角を得ることができる。
【0084】
本発明の光学積層体14aおよび14bにおいて、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、中心波長が同一の光を、法線方向から、法線に対して40°の角度を有する方向まで、角度を変更して入射した際に、反射率が20%以上で重複する角度領域を有するのが好ましい。
具体的には、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36に、法線方向(角度0°)から法線に対して40°の角度を有する方向まで、コレステリック液晶層への入射角度を変更させて中心波長が同一の光を入射した際における、角度と反射率との関係を、各コレステリック液晶層毎にプロットした際に、図7に概念的に示すように、反射率が20%以上で重複する角度領域rを有するのが好ましい。
【0085】
このような構成を有することにより、光学積層体14aおよび14bへの光の入射角度によらず、様々な方向から入射した光を適正に反射することが可能になり、本発明を例えばARグラス等に利用した際に、ディスプレイ20の全面の表示を好適に反射して、より好適に広視野角化を図ることができる。
【0086】
本発明の光学積層体14aおよび14bは、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36の2層のコレステリック液晶層を有し、2層のコレステリック液晶層において、螺旋のピッチPが互いに異なる。
両コレステリック液晶層のピッチPの差には、制限はないが、長い方のピッチPの長さが、短い方のピッチPの長さの1.05~1.45倍であるのが好ましく、1.1~1.35倍であるのがより好ましく、1.15~1.3倍であるのがさらに好ましい。
両コレステリック液晶層のピッチPの差を、この範囲とすることにより、好適に上述した図7に示す角度領域rを有する第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36を得ることができる。
【0087】
上述したように、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、面方向には、同じ液晶配向パターンを有する。
従って、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する一方向、すなわち矢印X方向を一致している。また、液晶化合物40の光学軸40Aが回転する方向は、矢印X方向の1方向のみである。
【0088】
本発明の光学積層体14において、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、液晶化合物40の光学軸40Aが矢印X方向に向かって回転する液晶配向パターンを有する。
本発明において、液晶配向パターンにおいて光学軸40Aが180°回転する長さ1周期Λの長さには、制限はない。ここで、1周期Λが短いほど、上述した入射光に対する反射光の角度が大きくなる。すなわち、1周期Λが短いほど、反射光を大きく傾けて反射して、導光板16に浅い角度で光を入射できる。
第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、1周期Λが10μm以下の領域を有するのが好ましく、1周期Λが5μm以下の領域を有するのがより好ましく、1周期Λが1μm以下の領域を有するのがさらに好ましい。
なお、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36における液晶配向パターンの1周期Λの長さは、矢印X方向の全域で均一でもよく、または、矢印X方向で異なる領域を有してもよい。
【0089】
第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、面方向には、同じ液晶配向パターンを有する。従って、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、液晶配向パターンにおける1周期Λが等しい。
但し、本発明は、これに制限はされず、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とで液晶配向パターンにおける1周期Λが異なってもよい。しかしながら、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とで1周期Λが異なると、入射した円偏光の反射角度が異なるため、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とで、導光板16内における反射角度が異なってしまい、表示画像に乱れが生じる可能性が有る。
従って、図示例のように、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、液晶配向パターンにおける1周期Λが等しいのが好ましい。
【0090】
なお、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とで、液晶配向パターンにおける1周期Λを変える場合には、第1コレステリック液晶層34の表面に、第2コレステリック液晶層36の液晶配向パターンの1周期Λに対応する配向膜を形成すればよい。
【0091】
上述した光学積層体14aおよび14bは、コレステリック液晶層として、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36のみを有するものであるが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の光学積層体は、同様のコレステリック液晶層であって、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36とは螺旋のピッチPが異なる第3コレステリック液晶層を有してもよく、さらに、同様のコレステリック液晶層であって、他のコレステリック液晶層とは螺旋のピッチPが異なる、1以上のコレステリック液晶層を有してもよい。
すなわち、本発明の光学積層体は、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36を有するものであれば、コレステリック液晶層の層数に制限はない。
【0092】
なお、図3図6に示すコレステリック液晶層は、好ましい態様として、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける液晶化合物40の光学軸40Aは、矢印X方向のみに沿って、連続して回転している。
しかしながら、本発明は、これに制限はされず、光学異方性層において、液晶化合物40の光学軸40Aが一方向に沿って連続して回転するものであれば、液晶化合物40の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向を、複数、有してもよい。
【0093】
上述したように、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36は、面方向には、同じ液晶配向パターンを有する。従って、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36とは、旋回方向が同じ円偏光を反射し、かつ、矢印X方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向も同方向である。
これに対して、本発明の光学積層体の第2の態様は、第1コレステリック液晶層と第2コレステリック液晶層とで、旋回方向が逆の円偏光を反射し、かつ、矢印X方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向も逆方向とする。この構成であっても、上述した第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36と、同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
光学積層体14aおよび14bは、モノクロ画像(図示例では赤画像)の表示に対応するもので、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36との組み合わせを、1組のみ有するものであるが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明の光学積層体は、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36との組み合わせを、2以上、有してもよい。
図8に、その一例を示す。
【0095】
図8に示す概念的に光学積層体50は、R反射積層体14R、G反射積層体14G、および、B反射積層体14Bの3つの光学積層体を有する。
R反射積層体14Rは、赤色光の右円偏光RRの反射に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Rと、第1コレステリック液晶層34Rおよび第2コレステリック液晶層36Rとを有する。
G反射積層体14Gは、緑色光の右円偏光GRの反射に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Gと、第1コレステリック液晶層34Gおよび第2コレステリック液晶層36Gとを有する。
B反射積層体14Bは、青色光の右円偏光BRの反射に対応するものであり、支持体30と、配向膜32Bと、第1コレステリック液晶層34Bおよび第2コレステリック液晶層36Bとを有する。
R反射積層体14R、G反射積層体14GおよびB反射積層体14Bにおいて、支持体、配向膜、第1コレステリック液晶層および第2コレステリック液晶層は、いずれも、上述した光学積層体14aおよび14bにおける支持体30、配向膜32、第1コレステリック液晶層34および第2コレステリック液晶層36と同様のものである。ただし、各コレステリック液晶層は、選択的に反射する光の波長域に応じた螺旋のピッチPを有する。
【0096】
ここで、R反射積層体14R、G反射積層体14GおよびB反射積層体14Bは、コレステリック液晶層が選択的に反射する波長域の波長の長さの順列と、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける1周期Λの長さの順列とが等しい。
すなわち、光学積層体50においては、赤色光の反射に対応するR反射積層体14Rのコレステリック液晶層が最も長波長域の光を反射し、緑色光の反射に対応するG反射積層体14Gのコレステリック液晶層が次いで長波長域の光を反射し、青色光の反射に対応するB反射積層体14Bのコレステリック液晶層が最も短い波長域の光を反射する。
これに応じて、R反射積層体14R、G反射積層体14G、および、B反射積層体14Bは、R反射積層体14Rのコレステリック液晶層の1周期ΛRが最も長く、G反射積層体14Gのコレステリック液晶層の1周期ΛGが次いで長く、B反射積層体14Bのコレステリック液晶層の1周期ΛBが最も短い。
【0097】
一方向(矢印X方向)に向かって液晶化合物40の光学軸40Aが連続的に回転するコレステリック液晶層による光の反射角度は、反射する光の波長によって、角度が異なる。具体的には、長波長の光ほど、入射光に対する反射光の角度が大きくなる。従って、R反射積層体14Rが反射する赤色光が最も入射光に対する反射光の角度が大きく、G反射積層体14Gが反射する緑色光が次いで入射光に対する反射光の角度が大きく、B反射積層体14Bが反射する青色光が最も入射光に対する反射光の角度が小さい。
一方で、前述のように、一方向に向かって液晶化合物40の光学軸40Aが回転する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層は、液晶配向パターンにおいて光学軸40Aが180°回転する1周期Λが短いほど、入射光に対する反射光の角度が大きくなる。
【0098】
従って、図8に示すように、R反射積層体14R、G反射積層体14G、および、B反射積層体14Bにおいて、コレステリック液晶層が選択的に反射する波長域の波長の長さの順列と、コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおける1周期Λの長さの順列とを等しくすることにより、光学積層体50が反射する光の反射角度の波長依存性を大幅に少なくして、波長の異なる光を、ほぼ同じ方向に反射できる。
その結果、赤色光、緑色光および青色光によってフルカラー画像を表示する場合であっても、色ズレを生じることなく導光板内を導光して、色ズレの無い適正なフルカラー画像を表示できる。
【0099】
なお、このように選択的に反射する波長域が異なる光学積層体を積層する際には、積層順には、制限はない。
選択的に反射する波長域が異なる光学積層体を積層する際には、好ましくは、選択的に反射する波長域の波長が、順次、長くなるように、光学積層体を積層する。これにより、選択反射中心波長が短い側を光入射側にして、ブルーシフトによる影響を低減できる。
【0100】
本発明の光学積層体において、第1コレステリック液晶層34と第2コレステリック液晶層36との組み合わせを、複数、有する場合には、図8に示すR反射積層体14R、G反射積層体14G、および、B反射積層体14Bを有する構成に制限はされない。
例えば、R反射積層体14R、G反射積層体14GおよびB反射積層体14Bから、適宜、選択した2層を有するものでもよい。さらに、R反射積層体14R、G反射積層体14GおよびB反射積層体14Bの1以上に変えて、あるいは、R反射積層体14R、G反射積層体14GおよびB反射積層体14Bに加えて、紫外線を選択的に反射する反射積層体、および/または、赤外線を選択的に反射する反射積層体を有してもよい。
【0101】
以上、本発明の光学積層体、導光素子および画像表示装置について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例
【0102】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0103】
[実施例1]
【0104】
[支持体の作製]
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
コア層セルロースアシレートドープ
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
ポリエステルA 12質量部
紫外線吸収剤V 2.3質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶媒) 64質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0105】
紫外線吸収剤V
【化1】
【0106】
なお、ポロエステルAは、特開2015-227956号公報の[表1]に記載のポリエステルAを使用した。
【0107】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部と下記のマット溶剤液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
マット剤溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R971、日本エアロジル社製 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶媒) 11質量部
コア層セルロースアシレートドープ 1質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0108】
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープとを、平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に設けた外層セルロースアシレートドープとを、バンド流延機を用いて3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した。
次いで、溶媒含有率が約20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1%で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み20μmのセルロース支持体を作製した。作製したセルロース支持体におけるコア層の厚みは15μmであり、コア層の両側に配置された外層の厚みはそれぞれ2.5μmであった。
(支持体の鹸化処理)
上記で作製した支持体を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させて、支持体の表面温度を40℃に昇温した。
その後、支持体の片面に、バーコーターを用いて下記に示すアルカリ溶液を塗布量14mL(リットル)/m2で塗布し、支持体を110℃に加熱し、さらに、スチーム式遠赤外ヒーター(ノリタケカンパニーリミテド社製)の下を、10秒間搬送した。
続いて、同じくバーコーターを用いて、支持体のアルカリ溶液塗布面に、純水を3mL/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗およびエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンを10秒間搬送して乾燥させ、支持体の表面をアルカリ鹸化処理した。
【0109】
アルカリ溶液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
水酸化カリウム 4.70質量部
水 15.80質量部
イソプロパノール 63.70質量部
界面活性剤
SF-1:C1429O(CH2CH2O)2OH 1.0 質量部
プロピレングリコール 14.8 質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0110】
(下塗り層の形成)
支持体のアルカリ鹸化処理面に、下記の下塗り層形成用塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。塗膜が形成された支持体を60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、下塗り層を形成した。
【0111】
下塗り層形成用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記変性ポリビニルアルコール 2.40質量部
イソプロピルアルコール 1.60質量部
メタノール 36.00質量部
水 60.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0112】
【化2】
【0113】
(配向膜の形成)
下塗り層を形成した支持体上に、下記の配向膜形成用塗布液を#2のワイヤーバーで連続的に塗布した。この配向膜形成用塗布液の塗膜が形成された支持体を60℃のホットプレート上で60秒間乾燥し、配向膜を形成した。
【0114】
配向膜形成用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
下記光配向用素材 1.00質量部
水 16.00質量部
ブトキシエタノール 42.00質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0115】
-光配向用素材-
【化3】
【0116】
(配向膜の露光)
図9に示す露光装置を用いて配向膜32を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
露光装置において、レーザとして波長(325nm)のレーザ光を出射するものを用いた。干渉光による露光量を300mJ/cm2とした。なお、2つのレーザ光およびの干渉により形成される配向パターンの1周期(光学軸が180°回転する長さ)は、2つの光の交差角(交差角α)を変化させることによって制御した。
【0117】
(第1コレステリック液晶層の形成)
第1コレステリック液晶層を形成する液晶組成物として、下記の組成物A-1を調製した。この組成物A-1は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが433nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
組成物A-1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶化合物L-1 100.00質量部
重合開始剤(BASF製、Irgacure(登録商標)907)
3.00質量部
光増感剤(日本化薬製、KAYACURE DETX-S)
1.00質量部
キラル剤Ch-1 4.57質量部
レベリング剤T-1 0.08質量部
メチルエチルケトン 2840.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0118】
棒状液晶化合物L-1
【化4】
【0119】
キラル剤Ch-1
【化5】
【0120】
レベリング剤T-1
【化6】
【0121】
第1コレステリック液晶層は、組成物A-1を配向膜P-1上に多層塗布することにより形成した。多層塗布とは、先ず配向膜の上に1層目の組成物A-1を塗布、加熱、冷却後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した後、2層目以降はその液晶固定化層に重ね塗りして塗布を行い、同様に加熱、冷却後に紫外線硬化を行うことを繰り返すことを指す。多層塗布により形成することにより、液晶層の総厚が厚くなった時でも配向膜32の配向方向が液晶層の下面から上面にわたって反映される。
【0122】
先ず1層目は、配向膜P-1上に下記の組成物A-1を塗布して、塗膜をホットプレート上で95℃に加熱し、その後、25℃に冷却した後、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を300mJ/cm2の照射量で塗膜に照射することにより、液晶化合物の配向を固定化した。この時の1層目の液晶層の膜厚は0.2μmであった。
【0123】
2層目以降は、この液晶層に重ね塗りして、上と同じ条件で加熱、冷却後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した。このようにして、総厚が所望の膜厚になるまで重ね塗りを繰り返し、第1コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEM(Scanning Electron Microscope)で確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
【0124】
第1コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.44μmであった。
【0125】
(第2コレステリック液晶層の形成)
第1コレステリック液晶層を形成する組成物A-1において、キラル剤の量を3.67質量部に変更した以外は、同様に組成物A-2を調製した。この組成物A-2は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが534nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-2を用いた以外は、第1コレステリック液晶層と同様にして、第1コレステリック液晶層の表面に第2コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
第2コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.44μmであった。
これにより、支持体、配向膜、第1コレステリック液晶層、および、第2コレステリック液晶層を有する光学積層体を作製した。
【0126】
[比較例1]
第2コレステリック液晶層を形成しない以外は、実施例1と同様に、光学積層体を作製した。
【0127】
[実施例2]
(配向膜の形成)
図9に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、実施例1と同様にして、配向膜P-1を形成した。
【0128】
(第1コレステリック液晶層の形成)
実施例1の第1コレステリック液晶層を形成する組成物A-1において、キラル剤の量を5.74質量部に変更した以外は、同様に組成物A-3を調製した。この組成物A-3は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが350nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-3を用いた以外は、実施例1と同様にして、配向膜P-1の表面に第1コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
第1コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.36μmであった。
【0129】
(第2コレステリック液晶層の形成)
第1コレステリック液晶層を形成する組成物A-3において、キラル剤の量を4.76質量部に変更した以外は、同様に組成物A-4を調製した。この組成物A-4は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが417nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-4を用いた以外は、第1コレステリック液晶層と同様にして、第1コレステリック液晶層の表面に第2コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
第2コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.36μmであった。
これにより、支持体、配向膜、第1コレステリック液晶層、および、第2コレステリック液晶層を有する光学積層体を作製した。
【0130】
[比較例2]
第2コレステリック液晶層を形成しない以外は、実施例2と同様に、光学積層体を作製した。
【0131】
[実施例3]
(配向膜の形成)
図9に示す露光装置によって配向膜を露光する際の2つの光の交差角を変更した以外は、実施例1と同様にして、配向膜P-1を形成した。
【0132】
(第1コレステリック液晶層の形成)
実施例1の第1コレステリック液晶層を形成する組成物A-1において、キラル剤の量を3.80質量部に変更した以外は、同様に組成物A-5を調製した。この組成物A-5は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが517nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-5を用いた以外は、実施例1と同様にして、配向膜P-1の表面に第1コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
第1コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、塗布層の断面をSEMで確認したところ、第1コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.51μmであった。
【0133】
(第2コレステリック液晶層の形成)
第1コレステリック液晶層を形成する組成物A-5において、キラル剤の量を3.07質量部に変更した以外は、同様に組成物A-6を調製した。この組成物A-6は、コレステリック液晶相における螺旋1ピッチ(ピッチP)の長さが633nmで、右円偏光を反射するコレステリック液晶層(コレステリック液晶相)を形成する、液晶組成物である。
この組成物A-6を用いた以外は、第1コレステリック液晶層と同様にして、第1コレステリック液晶層の表面に第2コレステリック液晶層を形成した。塗布層の断面をSEMで確認したところ、コレステリック液晶相は8ピッチであった。
第2コレステリック液晶層は、図5に示すような周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、第2コレステリック液晶層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、0.51μmであった。
これにより、支持体、配向膜、第1コレステリック液晶層、および、第2コレステリック液晶層を有する光学積層体を作製した。
【0134】
[比較例3]
第2コレステリック液晶層を形成しない以外は、実施例3と同様に、光学積層体を作製した。
【0135】
[評価]
実施例1~3および比較例1~3で作製した光学積層体について、下記の方法で反射率が高い角度範囲を測定した。
【0136】
-反射率の測定-
反射率の測定方法を、図10を参照して説明する。
レーザ80から出射した光を直線偏光子82、およびλ/4板84を透過させて右円偏光Pの光Lとした。導光板を通して、この光Lを光学積層体14の表面に入射させた。この場合、光学積層体14による回折作用および選択反射作用により、反射回折された回折光Lrの光強度を光検出器90で測定した。そして、回折光Lrの光強度と光Lの光強度との比をとり、回折光Lrの入射光に対する相対光強度値を求めた。なお、図10のように端部が傾斜している導光板に光学積層体を貼合して評価を行った。このとき、導光板の光を入射する面と光学積層体の主面は平行になるように貼合した。
導光板への入射角度を―40°から+40°まで変えて、相対光強度値を評価した。なお、必要に応じて、導光板端部の傾斜角度を変えて評価を行った。
フレネルの式を用い、入射時における導光板表面での反射率Ri、導光板からの出射時における導光板表面での反射率Roの影響を除き、光学積層体の反射率RDとした。
反射率 RD=Lr/L/(1-Ri)/(1-Ro)
ここで、導光板として、屈折率1.52のガラスを用いた。なお、フレネルの式での反射率はs波とp波の反射率の平均値を用いた。
反射率の最大値RDmaxと各入射角θiでの反射率RD(θi)の相対反射率RR(θi)が0.7(70%)以上となる入射角度範囲を評価した。
相対反射率 RR(θi) =RD(θi)/RDmax
なお、実施例1と比較例1では波長550nmのレーザを、実施例2と比較例2では波長450nmのレーザを、実施例3と比較例3では波長650nmのレーザを用いて評価を行った。
・比較例に対し、入射角度範囲が6°以上拡大した場合をA、
・拡大した入射角度範囲が4°以上、6°未満の場合をB、
・拡大した入射角度範囲が2°以上、4°未満の場合をC、
・拡大した入射角度範囲が2°未満の場合をD、と評価した。
結果および光学積層体の緒元を、下記の表に示す。
【0137】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0138】
ARグラスの導光板に光を入射および出射させる回折素子など、光学装置において光を反射する各種の用途に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0139】
10 画像表示装置
12 表示素子
14a,14b 光学積層体
14R R反射積層体
14G G反射積層体
14B B反射積層体
16 導光板
20 ディスプレイ
24 投映レンズ
30 支持体
32,32R,32G,32B 配向膜
34,34R,34G,34B 第1コレステリック液晶層
36,36R,36G,36B 第2コレステリック液晶層
40 液晶化合物
40A 光学軸
60 露光装置
62 レーザ
64 光源
68 偏光ビームスプリッター
70A,70B ミラー
72A,72Bλ/4板
R 青色光の右円偏光
R 緑色光の右円偏光
R 赤色光の右円偏光
M レーザ光
MA,MB 光線
MP P偏光
MS S偏光
O 直線偏光
R 右円偏光
L 左円偏光
Q 絶対位相
E 等位相面
U 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10