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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-11
(45)【発行日】2022-11-21
(54)【発明の名称】研磨装置、及び、研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/06 20060101AFI20221114BHJP
   B24B 37/015 20120101ALI20221114BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20221114BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221114BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B37/015
B24B37/10
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021123228
(22)【出願日】2021-07-28
(62)【分割の表示】P 2017078060の分割
【原出願日】2017-04-11
(65)【公開番号】P2021181154
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】外崎 宏
(72)【発明者】
【氏名】曽根 忠一
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-088292(JP,A)
【文献】特開平08-294861(JP,A)
【文献】特開2013-099828(JP,A)
【文献】特開2008-068389(JP,A)
【文献】特開2015-155128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/06
B24B 37/015
B24B 37/10
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨パッドを使用して研磨対象物の研磨を行う研磨装置であって、
回転可能に構成された研磨テーブルであって、前記研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
研磨対象物を保持して研磨対象物を前記研磨パッドに押し当てるための基板保持部と、
前記研磨面に研磨液を供給するための研磨液供給部と、
前記研磨液を当該研磨パッドの前記研磨面から除去するための研磨液除去部と、
を備え、
前記研磨液除去部は、前記研磨液を吸引するための吸引部と、前記研磨面に当接して前記研磨液の前記回転方向における移動を妨げる堰き止め部と、を有し、前記堰き止め部は、前記研磨面に当接する箇所がR面取りまたは角面取りされていると共に前記回転方向において前記吸引部の後方に配置されて前記吸引部と一体に設けられている
研磨装置。
【請求項2】
研磨面を有する研磨パッドを使用して研磨対象物の研磨を行う研磨装置であって、
回転可能に構成された研磨テーブルであって、前記研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
研磨対象物を保持して研磨対象物を前記研磨パッドに押し当てるための基板保持部と、
前記研磨面に研磨液を供給するための研磨液供給部と、
前記研磨液を当該研磨パッドの前記研磨面から除去するための研磨液除去部と、
を備え、
前記研磨液除去部は、前記研磨液を吸引するためのスリットを有する吸引部と、前記研磨面上の前記研磨液に当接して当該研磨液の前記回転方向における移動を妨げる堰き止め部と、を有し、当該研磨液除去部の長手方向において、前記スリットは、前記堰き止め部よりも短く形成されている、
研磨装置。
【請求項3】
前記研磨面の温度を調整するための温度調節部を更に備え、前記温度調節部は、前記研磨面に気体を吹き付ける噴射器と、内部に流体が流れる熱交換器との少なくとも一方を有する、
請求項1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記堰き止め部は、前記回転方向において前記吸引部の後方に配置されて前記吸引部と一体に設けられている、
請求項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記研磨面の温度を測定する温度測定部を更に備え、
前記温度調節部は、前記温度測定部により測定された温度が目標温度となるように前記研磨面の温度を調節する、
請求項3に記載の研磨装置。
【請求項6】
研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルを回転させるとともに前記研磨パッドに研磨対象物を押し当てて前記研磨対象物を研磨する研磨方法において、
前記研磨パッドの研磨面に研磨液を供給する研磨液供給工程と、
前記研磨液の供給を伴って前記研磨パッドに前記研磨対象物を押し当てているときに前記研磨液を当該研磨パッドの前記研磨面から除去する研磨液除去工程と、
を備え、
前記研磨液除去工程は、前記研磨液を吸引するためのスリットを有する吸引部と、前記研磨面上の前記研磨液に当接して当該研磨液の前記回転方向における移動を妨げる堰き止め部と、を有する研磨液除去部により行われ、前記研磨液除去部の長手方向において、前記スリットは、前記堰き止め部よりも短く形成されている、
研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置、及び、研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。平坦化技術としては、化学的機械研磨(CMP(Chemical Mechanical
Polishing))が知られている。この化学的機械的研磨は、研磨装置を用いて、シリカ
(SiO)やセリア(CeO)等の砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を研磨パッドに供給しつつ半導体ウエハなどの基板を研磨パッドに摺接させて研磨を行うものである。
【0003】
CMPプロセスを行う研磨装置は、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、基板を保持するためのトップリング又は研磨ヘッド等と称される基板保持機構と、を備えている。この研磨装置は、研磨液供給ノズルから研磨液を研磨パッドに供給し、基板を研磨パッドの表面(研磨面)に対して所定の圧力で押圧する。このとき、研磨テーブルと基板保持機構とを回転させることにより基板が研磨面に摺接し、基板の表面が平坦かつ鏡面に研磨される。
【0004】
基板の研磨レートは、基板の研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、基板に対する研磨液の化学的作用が温度に依存するからである。また、製造する基板によっては、品質の低下を防止するために低温でCMPプロセスを実行することが望まれる。したがって、研磨装置においては、基板研磨中の研磨パッドの表面温度を最適な値に保つことが重要とされる。このため、近年、研磨パッドの表面温度を調節する温度調節機構を備える研磨装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-99828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板の研磨中に研磨パッドの表面温度を調節する方法の一例として、研磨パッドの表面に向けて気体を噴射すること、及び、研磨パッドの表面近傍に熱交換器を設けることなどが考えられる。しかし、こうした温度調節機構を用いた場合、研磨パッド上の研磨液が断熱層の役割を果たすことにより、研磨パッド表面の温度調節の効率が低下してしまう場合があった。また、特に研磨パッドの表面に向けて気体を噴射する場合には、研磨液のミストが周囲に飛散するという問題もあった。研磨装置内の部品表面に研磨液が付着して乾燥すると、粉となって研磨パッドの表面に落下するおそれがあり、基板表面のスクラッチの発生原因となる。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、研磨パッド表面の温度調節を好適に行うことのできる研磨装置および研磨方法を提供することを目的の1つとする。また、本発明は、研磨パッド上の研磨液が飛散することを抑制できる研磨装置および研磨方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[形態1]形態1によれば、研磨面を有する研磨パッドを使用して研磨対象物の研磨を行う研磨装置が提案され、かかる研磨装置は、回転可能に構成された研磨テーブルであって
、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、研磨対象物を保持して研磨対象物を研磨パッドに押し当てるための基板保持部と、研磨面に研磨液を供給するための研磨液供給部と、研磨液を研磨面から除去するための研磨液除去部と、研磨面の温度を調節するための温度調節部と、を備える。そして、研磨テーブルの回転方向において、研磨液供給部、基板保持部により研磨対象物が研磨面に押し当てられる研磨領域、研磨液除去部、および、温度調節部が、この順に配置されている。かかる形態1によれば、研磨テーブルの回転方向において、温度調節部の前方に研磨液除去部が設けられているので、温度調節部は、研磨液が除去された状態で研磨面の温度を調節することができる。これにより、温度調節部による研磨面の温度調節の効率を向上できる。
【0009】
[形態2]形態2によれば、形態1の研磨装置において、温度調節部は、研磨面に気体を吹き付ける噴射器と、内部に流体が流れる熱交換器との少なくとも一方を有する。かかる形態2によれば、噴射器および/または熱交換器によって研磨面の温度を調節できる。また、研磨面に気体を吹き付ける場合にも、研磨液が除去された状態で研磨面に気体を吹き付けることができるので、研磨パッド上の研磨液が飛散することを抑制できる。
【0010】
[形態3]形態3によれば、形態1または2の研磨装置において、研磨液除去部は、研磨液を吸引する吸引部と、研磨面上の研磨液に当接して当該研磨液の回転方向における移動を妨げる堰き止め部と、の少なくとも一方を有する。かかる形態3によれば、吸引部および/または堰き止め部によって研磨液を研磨面から除去することができる。
【0011】
[形態4]形態4によれば、形態3の研磨装置において、研磨液除去部は、吸引部および堰き止め部を有し、堰き止め部は、回転方向において吸引部の後方に配置されて吸引部と一体に設けられている。かかる形態4によれば、堰き止め部によって回転方向への移動が妨げられた研磨液を吸引部によって吸引することができ、研磨液を研磨面から好適に除去できる。
【0012】
[形態5]形態5によれば、形態1から4の何れか1つの研磨装置において、研磨面の温度を測定する温度測定部を更に備え、温度調節部は、温度測定部により測定された温度が目標温度となるように研磨面の温度を調節する。かかる形態5によれば、温度測定部により測定された温度に基づいて温度調節部により研磨面の温度を調節できる。
【0013】
[形態6]形態6によれば、研磨パッドが取り付けられた研磨テーブルを回転させるとともに研磨パッドに研磨対象物を押し当てて研磨対象物を研磨する研磨方法が提案され、かかる研磨方法は、研磨パッドの研磨面に研磨液を供給する研磨液供給工程と、研磨液を研磨面から除去する研磨液除去工程と、研磨面の温度を調節する温度調節工程と、を備える。そして、研磨テーブルの回転方向において、研磨液供給工程、研磨パッドへの研磨対象物の押し当て、研磨液除去工程、および、温度調節工程が、この順に行われる。かかる形態6によれば、上記した研磨装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る研磨装置の構成概略を示す図である。
図2】研磨装置の各構成要素の配置関係を示す平面図である。
図3】研磨液除去部の一例を模式的に示す図である。
図4】制御部による温度調節部の制御を説明するための図である。
図5】温度調節部の気体噴射ノズルと研磨パッドとを模式的に示す平面図である。
図6】温度調節部の気体噴射ノズルと研磨パッドとを模式的に示す側面図である。
図7】変形例の研磨液除去部の一例を模式的に示す図である。
図8】制御部による変形例の温度調節部の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の構成概略を示す図である。本実施形態の研磨装置10は、研磨面102を有する研磨パッド100を使用して、研磨対象物としての半導体ウエハ等の基板Wkの研磨を行うことができるように構成されている。図示するように、研磨装置10は、研磨パッド100を支持する研磨テーブル20と、基板Wkを保持して研磨パッド100に押し当てるトップリング(基板保持部)30と、を備えている。さらに、研磨装置10は、研磨パッド100に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル(研磨液供給部)40を備えている。
【0017】
研磨テーブル20は、円盤状に形成されており、その中心軸を回転軸線として回転可能に構成される。研磨テーブル20には、貼付け等によって研磨パッド100が取り付けられる。研磨パッド100の表面は、研磨面102を形成する。研磨パッド100は、図示しないモータによって研磨テーブル20が回転することにより、研磨テーブル20と一体に回転する。
【0018】
トップリング30は、その下面において、研磨対象物としての基板Wkを真空吸着などによって保持する。トップリング30は、図示しないモータからの動力により基板Wkと共に回転可能に構成されている。トップリング30の上部は、シャフト31を介して支持アーム34に接続されている。トップリング30は、図示しないエアシリンダによって上下方向に移動可能であり、研磨テーブル20との距離を調節可能である。これにより、トップリング30は、保持した基板Wkを研磨パッド100の表面(研磨面)102に押し当てることができる。さらに、支持アーム34は、図示しないモータにより揺動可能に構成されており、トップリング30を研磨面102と平行な方向に移動させる。本実施形態では、トップリング30は、図示しない基板Wkの受取位置と、研磨パッド100の上方位置とで移動可能に構成されているとともに、研磨パッド100に対する基板Wkの押し当て位置を変更可能なように構成されている。以下、トップリング30による基板Wkの押し当て位置(保持位置)を「研磨領域」ともいう。
【0019】
研磨液供給ノズル40は、研磨テーブル20の上方に設けられており、研磨テーブル20に支持される研磨パッド100に研磨液(スラリー)を供給する。研磨液供給ノズル40はシャフト42によって支持されている。シャフト42は、図示しないモータにより揺動可能に構成されており、研磨液供給ノズル40は、研磨中に研磨液の滴下位置を変更できる。
【0020】
なお、研磨装置10は、研磨装置10の動作全般を制御する制御部70(図4参照)も備えている。制御部70は、CPU、メモリ等を備え、ソフトウェアを用いて所望の機能を実現するマイクロコンピュータとして構成されてもよいし、専用の演算処理を行うハードウェア回路として構成されてもよい。
【0021】
研磨装置10では、以下のようにして基板Wkの研磨が行われる。まず、基板Wkを下面に保持するトップリング30を回転させると共に、研磨パッド100を回転させる。この状態で、研磨液供給ノズル40から研磨パッド100の研磨面102に研磨液が供給され、トップリング30に保持された基板Wkが研磨面102に対して押し当てられる。これにより、基板Wkの表面がスラリーの存在下で研磨パッド100と接触した状態で、基板Wkと研磨パッド100とが相対移動する。こうして、基板Wkは研磨される。
【0022】
研磨装置10は、図1に示すように、研磨液除去部50と、温度調節部60と、を更に
備えている。図2は、研磨装置10の各構成要素の配置関係を示す平面図である。図2に示すように、本実施形態の研磨装置10では、基板Wkの研磨が行われるときに研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて、研磨液供給ノズル40、基板Wkの研磨領域(トップリング30による基板Wkの押し当て位置)、研磨液除去部50、および、温度調節部60が、この順に配置されている。なお、本実施形態では、研磨液除去部50と温度調節部60とが互いに隣接して設けられている。ただし、こうした例に限定されず、研磨液除去部50と温度調節部60とが離間して設けられてもよい。
【0023】
研磨液除去部50は、基板Wkの研磨領域よりも研磨テーブル20の回転方向Rdの後方(下流側)において、研磨液を研磨面102から除去するために設けられている。つまり、研磨液除去部50は、基板Wkの研磨に一度使用された研磨液を研磨面102から除去する。図2に示すように、研磨液除去部50は、研磨テーブル20の径方向に沿って延びるように配置されている。
【0024】
図3は、研磨液除去部50の一例を模式的に示す図である。なお、図3では、研磨液除去部50の長手方向(研磨テーブル20の径方向)に垂直な断面が示されている。図3に示すように、本実施形態の研磨液除去部50は、研磨面102上の研磨液SLを堰き止める堰き止め部52と、研磨液SLを吸引する吸引部56と、を有している。本実施形態では、堰き止め部52と吸引部56とは一体に構成されている。
【0025】
堰き止め部52は、研磨面102に当接して研磨液SLが研磨テーブル20の回転方向Rdに移動するのを妨げる。堰き止め部52は、研磨面102を傷つけないと共に、研磨面102との当接による堰き止め部52自体の削り屑が研磨面102に残らないように、その材質が選ばれることが好ましい。一例として、堰き止め部52は、基板Wkの外周縁を保持する図示しないリテーナリングと同じ材質であってもよく、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の合成樹脂、または、ステンレス等の金属で形成されてもよい。また、堰き止め部52の表面には、PEEK(ポリエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、または塩化ポリビニールなどの樹脂コーティングが施されてもよい。さらに、図3に示すように、堰き止め部52は、研磨面102との当接抵抗が小さくなるように、研磨面102に当接する箇所がR面取り(または角面取り)されてもよい。
【0026】
吸引部56は、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて堰き止め部52の前方(上流側)に隣接して配置されている。吸引部56は、研磨面102に向けて開口するスリット57を有しており、このスリット57は流路58を介して図示しない真空源が接続されている。本実施形態では、スリット57から図示しない真空源に向かう流路58は、研磨面102に対して90度の角度をなしている。スリット57は、研磨液除去部50の長方向において、堰き止め部52の長さより短く、且つ、基板Wkの直径よりも長く形成されることが好ましい。また、スリット57の幅Swは、研磨液SLの種類、及び、図示しない真空源の性能などに基づいて定められればよい。一例として、基板Wkの直径が300mmである場合、スリット57の長手方向の長さが300mm以上であり、幅Swが1~2mm程度であることが好ましい。
【0027】
このように、本実施形態の研磨液除去部50では、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて研磨液SLを吸引する吸引部56の後方に連続して、研磨液SLを堰き止める堰き止め部52が配置されている。このため、堰き止め部52によって堰き止めた研磨液SLを吸引部56によって吸引することができ、研磨液SLを研磨面102から好適に除去することができる。
【0028】
なお、研磨液除去部50は、図示しないアトマイザ又はドレッサによって研磨面102をコンディショニングするときには、研磨面102から離されることが好ましい。つまり
、研磨液除去部50は、研磨液SLを除去する研磨液除去位置と、研磨面102から離れた待機位置とで移動可能に構成され、研磨面102のコンディショニングが行われるときには待機位置に位置するものとしてもよい。本実施形態の研磨装置10は、研磨液除去部50によって研磨液が研磨面102から除去された状態で、研磨面102のコンディショニングを行うことができる。このため、アトマイザ又はドレッサによって使用される液体と研磨液とが混じることを抑制することができる。したがって、基板Wkの研磨およびコンディショニングによって生じる使用済みの液体をそれぞれに回収することができ、環境保全に資することもできる。
【0029】
説明を図1及び図2に戻す。温度調節部60は、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて研磨液除去部50の後方に配置されている。温度調節部60は、制御部によって制御されて研磨面102の温度を調節する。図4は、制御部による温度調節部60の制御を説明するための図である。なお、図4では、研磨液除去部50の図示を省略している。図示するように、本実施形態の温度調節部60は、研磨面102に気体を吹き付けるための気体噴射ノズル(噴射器)62を有している。気体噴射ノズル62は、圧縮空気供給ライン63を介して圧縮空気源に接続されている。圧縮空気供給ライン63には、圧力制御弁64が設けられており、圧縮空気源から供給された圧縮空気が圧力制御弁64を通過することで圧力および流量が制御されるようになっている。圧力制御弁64は制御部70に接続されている。なお、圧縮空気は常温であってもよいし、所定温度に冷却または加温してもよい。
【0030】
図4に示すように、研磨パッド100の上方には、研磨パッド100の表面温度を検出する温度センサ68が設置されている。ここで、温度センサ68は、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて研磨液除去部50の後方に設けられ、研磨液が除去された状態の研磨面102の温度を検出することが好ましい。温度センサ68は制御部70に接続されている。制御部70は、所定温度または入力された設定温度である目標温度と、温度センサ68により検出された研磨面102の実際の温度との差に応じてPID制御により圧力制御弁64の弁開度を調整し、気体噴射ノズル62から噴射される圧縮空気の流量を制御する。これにより、気体噴射ノズル62から研磨パッド100の研磨面102に最適な流量の圧縮空気が吹き付けられ、研磨面102の温度が目標温度に維持される。
【0031】
図5および図6は、温度調節部60の気体噴射ノズル62と研磨パッド100とを模式的に示す平面図および側面図である。図5に示すように、温度調節部60は、研磨テーブル20の径方向に沿って所定間隔ごとに配置された複数の気体噴射ノズル62を備えている(図示例では8個のノズルが取り付けられている)。図5においては、研磨中に、研磨パッド100は回転中心CTの回りに時計方向Rdに回転する。ここで、パッド内側から1,2,3・・・8の昇順でノズルに番号付けを行い、例えば、3番目と6番目の2つの気体噴射ノズル62を例に挙げて説明する。すなわち、3番目と6番目の2つの気体噴射ノズル62の直下の点P1,P2を通り、CTを中心とする同心円C1,C2を描き、同心円C1,C2上の点P1,P2における接線方向を研磨パッド100の回転接線方向と定義すると、気体噴射ノズル62の気体噴射方向は、研磨パッドの回転接線方向に対してパッド中心側に所定角度(θ1)だけ傾いている。気体噴射方向とは、気体噴射ノズル口から気体が扇状に広がる角度(気体噴射角)の中心線の方向をいう。3番目と6番目のノズル以外の他のノズルも同様に研磨パッドの回転接線方向に対してパッド中心側に所定角度(θ1)だけ傾いている。そして、研磨パッドの回転接線方向に対する気体噴射ノズル62の気体噴射方向の角度(θ1)は、温度調節能力との関係で15°~35°に設定されている。なお、ここではノズルが8個ある場合を説明したが、ノズルの個数はノズル孔をプラグ等で閉止することにより調整することが可能であり、任意の数とすることができる。ノズルの個数は研磨パッド100の大きさなど応じて適宜選定される。
【0032】
また、図6に示すように、気体噴射ノズル62の気体噴射方向は、研磨パッド100の表面(研磨面)102に対して垂直ではなく、研磨テーブル20の回転方向Rd側に所定角度だけ傾いている。研磨面102に対する気体噴射ノズル62の気体噴射方向の角度、すなわち、研磨面102と気体噴射ノズル62の気体噴射方向とのなす角を気体進入角度(θ2)と定義すると、気体進入角度(θ2)は、温度調節能力との関係で30°~50°に設定されている。ここで、気体噴射方向とは、気体噴射ノズル口から気体が扇状に広がる角度(気体噴射角)の中心線の方向をいう。また、図6に示すように、気体噴射ノズル62は上下動可能に構成され、気体噴射ノズル62の研磨面102からの高さHnを調節することが可能になっている。
【0033】
こうした温度調節部60によって、基板Wkの研磨中に研磨パッド100(研磨面102)に向けて少なくとも1つの気体噴射ノズル62から気体を噴射して研磨面102の温度を調節することができる。しかも、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて、温度調節部60の前方には研磨液を研磨面102から除去する研磨液除去部50が設けられている。このため、断熱層となり得る研磨液が除去された状態で温度調節部60が研磨面102の温度を調節することができ、研磨面102の温度調節の効率を向上できる。また、温度調節部60の気体噴射ノズル62から勢いよく研磨面102に気体を噴射するときにも研磨液が飛び散ることが抑制され、基板Wkのスクラッチ発生を抑制できる。さらに、本実施形態の研磨装置10では、基板Wkの研磨に一度使用された研磨液が研磨液除去部50によって除去されて研磨液供給ノズル40から新たな研磨液が研磨面102にその都度供給されるので、基板Wkの研磨に使用される研磨液の質を一定に保つことができる。
【0034】
(変形例1)
図7は、変形例の研磨液除去部の一例を模式的に示す図である。上記した実施形態では、吸引部56のスリット57及び流路58は、研磨面102に対して90度となるように設けられていた。しかし、こうした例に限定されず、図7に示すように、吸引部56のスリット57及び流路58は、研磨テーブル20の回転方向Rdとなす角度が10度以上90度未満となるように傾斜していてもよい。こうすれば、研磨テーブル20の回転に伴って研磨液SLを流路58に案内することができ、研磨液SLを好適に吸引することができる。
【0035】
また、上記した実施形態では、吸引部56の堰き止め部52が研磨面102に当接するものとした。しかし、こうした例に限定されず、堰き止め部62は、研磨液と当接すればよく、研磨面102との間に隙間を有するように設けられてもよい。この場合には、堰き止め部52と研磨面102とが当接しないので、堰き止め部52の削り屑が生じたり当接抵抗が生じたりするのを防止できる。なお、研磨装置10は、研磨面102の位置、または、研磨液除去部50と研磨面102との距離を検出するセンサを更に備えてもよい。そして、研磨装置10は、検出された位置または距離に基づいて、研磨液除去部50を研磨面102に当接させてもよいし、研磨液除去部50と研磨面102との距離を一定に保持してもよい。
【0036】
さらに、上記した実施形態では、研磨液除去部50は、堰き止め部52と吸引部56とを一体に有するものとした。しかし、こうした例に限定されず、研磨液除去部50は、堰き止め部52と吸引部56とを別々に有してもよいし、堰き止め部52と吸引部56との一方だけを有してもよい。また、研磨液除去部50は、研磨パッド100をコンディショニングするためのドレッサまたはアトマイザ等と少なくとも一部が一体に設けられてもよい。
【0037】
(変形例2)
図8は、制御部による変形例の温度調節部160の制御を説明するための図である。上
記した実施形態の温度調節部60は、研磨面102に向けて気体を噴射する気体噴射ノズル(噴射器)62を有するものとした。しかし、温度調節部60は、これに代えて、または加えて、内部に流体が流れる熱交換器を有してもよい。図8に示すように、変形例の温度調節部60Aは、気体噴射ノズル62に代えて、熱交換器62Aを有している。なお、図8に示す変形例は、温度調節部60Aを除いて実施形態の研磨装置10と同一である。また、図8では、研磨液除去部50の図示を省略している。図8に示すように、熱交換器62Aは、内部に図示しない流路が形成されており、配管63Aを介して流体供給源66Aに接続されている。配管63Aには、圧力制御弁64Aが設けられており、流体供給源66Aから供給された流体が圧力制御弁64Aを通過することで圧力および流量が制御されるようになっている。圧力制御弁64Aは制御部70に接続されている。熱交換器62Aに使用される流体としては、水などの液体を用いてもよいし、空気などの気体を用いてもよい。また、熱交換器62Aには、内部に反応ガスが流されてもよく、熱交換器62A内部に反応ガスの発熱反応を促進させる触媒が設けられてもよい。さらに、熱交換器62Aは、研磨面102に当接するように配置されてもよいし、研磨面102との間に隙間を有するように配置されてもよい。
【0038】
制御部70は、上記した実施形態と同様に、温度センサ68により検出された温度に基づいて圧力制御弁64Aの弁開度を調整し、熱交換器62Aの内部に流れる流体の流量を制御する。こうした変形例の温度調節部60Aによっても、上記した実施形態と同様に、研磨面102の温度を調節することができる。しかも、研磨テーブル20の回転方向Rdにおいて温度調節部60Aの前方に研磨液除去部50が設けられている。このため、変形例の研磨装置では、断熱層となり得る研磨液が除去された状態で温度調節部60Aによる研磨面102の温度調節を行うことができ、研磨面102の温度調節の効率を向上できる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…研磨装置
20…研磨テーブル
30…トップリング
40…研磨液供給ノズル
50…研磨液除去部
52…堰き止め部
56…吸引部
57…スリット
58…流路
60、60A…温度調節部
62…気体噴射ノズル
62A…熱交換器
70…制御部
100…研磨パッド
102…研磨面
SL…研磨液
Wk…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8