(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】ウエハの製造方法、及び、ウエハの押さえ治具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221115BHJP
B28D 7/04 20060101ALI20221115BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221115BHJP
B28D 5/04 20060101ALN20221115BHJP
【FI】
H01L21/304 611A
B28D7/04
H01L21/68 N
B28D5/04 C
(21)【出願番号】P 2018183201
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】大保 安宏
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-111652(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148559(WO,A1)
【文献】特開平10-329133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B28D 7/04
H01L 21/683
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座に固定された円柱状の単結晶を切断して形成された、間隔をおいて並ぶ複数のウエハのそれぞれの円周面の一部を押さえ、前記複数のウエハ間の相対位置を固定可能な押さえ部を備える押さえ治具であって、
前記押さえ部は、前記台座に固定された前記単結晶の中心軸を通る水平面に対して上下対称になるように配置され、かつ、前記台座に固定された前記単結晶の中心軸を通る垂直面に対して左右対称になるように配置され
るように、前記押さえ部の位置が可動し、前記ウエハの円周面の一部を押さえる、押さえ治具。
【請求項2】
前記押さえ部は、前記台座に固定された前記単結晶の中心軸と平行な軸周りに円弧状に可動し、
前記押さえ部の長さは、前記単結晶の中心軸方向において、前記台座の長さ以上である、請求項1の押さえ治具。
【請求項3】
前記押さえ部の前記台座に対する上下方向の相対位置を変更する第1調整部と、前記押さえ部の前記台座に対する左右方向の相対位置を変更する第2調整部と、を備える、請求項1から請求項
2のいずれか一項に記載の押さえ治具。
【請求項4】
前記押さえ部は、前記ウエハの円周面に接触する部分が弾性体である、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の押さえ治具。
【請求項5】
前記押さえ部は、前記ウエハの円周面に接触する部分が、前記台座に固定された前記単結晶の中心軸と平行な軸周りに回転可能な回転体である、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の押さえ治具。
【請求項6】
円柱状の単結晶を切断してウエハを製造する方法であって、
前記単結晶の円周面の一部を接着剤により台座に接着することと、
前記台座に接着された前記単結晶を切断装置により切断して、前記台座に接着され且つ間隔をおいて並ぶ複数の前記ウエハを形成することと、
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の押さえ治具により、前記複数のウエハ間の相対位置を固定することと、
前記台座に接着された前記複数のウエハを、前記台座から剥離することと、を含む、ウエハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの製造方法、及び、ウエハの押さえ治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単結晶をウエハに切断する方法としてワイヤソー装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のワイヤソー装置による切断方法においては、3本の主軸ローラを有し、主軸ローラ外周には目標とするウエハの厚みに合わせたピッチで溝が形成されていて、一本のワイヤを主軸ローラの溝に沿って巻き回しされたワイヤソー装置を用いられている。そして、主軸ローラを回転させてワイヤを走行させると共に、単結晶が固定された本体テーブルを動作させて単結晶をワイヤに押し付けることにより、単結晶を同時に多数のウエハに切断している。この加工方法では、一定ピッチで並行する複数の極細ワイヤ列に被加工物を押し当て、ワイヤを線方向に送りながら、被加工物とワイヤとの間に砥粒を含む加工液(スラリーともいう)を供給することによって研磨切断する方式と、ダイヤモンドを電着もしくは接着剤によって固定したワイヤを線方向に送りながら、被加工物を研磨切断する方式がある。
【0003】
従来の単結晶をウエハに切断する手順は、ワイヤソー装置のスライス台に台座を介して単結晶を接着材で固定する。その後、スライス台を反転させワイヤソー装置に設置する。次に、ワイヤソー装置で加工を開始し、スライス台が加工部へ移動しワイヤにて単結晶を切断加工する。切断は台座を5mm程度まで切断する。切断されたウエハの厚みは0.2~2mm程度になり、ウエハ端面部分の接着剤のみで保持されている。この状態のままワイヤソー装置からウエハが保持されているスライス台を取り出し、スライス台を反転させた後に接着剤を剥がす剥離作業を行うことによりウエハを個々に取り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法の場合、ワイヤソー装置による単結晶の切断加工により形成されたウエハは、ウエハの円周面が部分的に接着剤のみで保持されている状態で、スライス台がワイヤソー装置から取り外されて、上記の剥離作業を行う場所へ運搬される。この運搬は、リフター等の運搬車で行われる。このようなスライス台からの取り外しから剥離作業を行う場所への運搬では、振動や衝撃等によりウエハ同士の接触や転倒が生じ、その結果、チッピングや破損することがある。また、上記のようにスライス台をワイヤソー装置から取り出す際には、ウエハが落下して破損することがあった。
【0006】
また、上記の剥離作業では、接着剤の接着力を低下させてウエハの台座から取り外して回収するので、さらに台座によるウエハの保持力が低下して、ウエハが倒れて破損し易くなる。前述のような原因により、収率が低下してしまう問題があった。
【0007】
近年では、スマートホン等の普及により移動体通信機器用のデバイス市場は拡大を続けており、これに伴ってデバイスの材料となるSi、LT、LN等の基板の需要も伸びている。そして、基板製造プロセスのコストダウンを図るため、Si、LT、LN等の単結晶基板のサイズも、従来のφ3インチ、φ4インチから、φ6インチ、φ8インチなどもあり、大面積化や長尺化が進み、結晶が大型化している。ウエハの薄型化と大口径化により上記ウエハの接触、倒れ、落下による破損は顕著となっている。特にウエハの厚みが0.6mm以下でウエハ径が6インチ以上の製品はスライス台の固定する接着面積が小さく、小さな振動や衝撃でも倒れてしまい生産性を悪化させる原因となっていた。
そこで、本発明はこのような従来の問題を解決しようとするもので、単結晶の切断後のウエハの接触、倒れ、落下等を防止することが可能なウエハの押さえ治具及びウエハの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した従来の問題を解決するため、鋭意研究を重ねたところ、上記の単結晶の切断加工により形成された複数のウエハを、所定の押さえ治具により、複数のウエハ間の相対位置を固定することで、ウエハの接触、倒れ、落下を防止できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、台座に固定された円柱状の単結晶を切断して形成された、間隔をおいて並ぶ複数のウエハのそれぞれの円周面の一部を押さえ、複数のウエハ間の相対位置を固定可能な押さえ部を備える押さえ治具であって、押さえ部は、台座に固定された単結晶の中心軸を通る水平面に対して上下対称になるように配置され、かつ、台座に固定された単結晶の中心軸を通る垂直面に対して左右対称になるように配置され、ウエハの円周面の一部を押さえる、押さえ治具が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、押さえ部は、台座に固定された単結晶の中心軸と平行な軸周りに円弧状に可動し、押さえ部の長さは、単結晶の中心軸方向において、台座の長さ以上である、押さえ治具が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の態様によれば、第1又は第2の態様において、押さえ部は、台座に固定された単結晶の中心軸を通る水平面に対し上下対称になるように配置され、かつ、台座に固定された単結晶の中心軸を通る垂直面に左右対称になるように配置されるように、押さえ部の位置が可動する、押さえ治具が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれかの態様において、可動機構は、押さえ部の台座に対する上下方向の相対位置を変更する第1調整部と、押さえ部の台座に対する左右方向の相対位置を変更する第2調整部と、を備える、押さえ治具が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれかの態様において、押さえ部は、ウエハの円周面に接触する部分が弾性体である、押さえ治具が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれかの態様において、押さえ部は、ウエハの円周面に接触する部分が、台座に固定された単結晶の中心軸と平行な軸周りに回転可能な回転体である、押さえ治具が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の態様によれば、円柱状の単結晶を切断してウエハを製造する方法であって、単結晶の円周面の一部を接着剤により台座に接着することと、台座に接着された単結晶を切断装置により切断して、台座に接着され且つ間隔をおいて並ぶ複数のウエハを形成することと、第1から第6のいずれかの態様の押さえ治具により、複数のウエハ間の相対位置を固定することと、台座に接着された複数のウエハを、台座から剥離することと、を含む、ウエハの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のウエハの押さえ治具及びウエハの製造方法は、単結晶の切断終了後から剥離作業までウエハを保持するため、ウエハの接触、倒れ、落下を抑制することができる。さらに、剥離工程においてウエハを台座より分離し個々に取り外す際、押さえ治具の一部によりウエハを押さえた状態でウエハの取り出しを行うことで、個々のウエハは押さえ治具により個別に押さえられているため、個々にウエハを取り出しすることが可能となり、ウエハの接触、倒れ、落下による損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るウエハの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】(A)及び(B)は切断工程の説明図である。
【
図4】本実施形態に係る押さえ治具を正面から見た時の概略図である。
【
図5】
図4の押さえ治具の片側を取り外した状態を示す図である。
【
図6】
図4の押さえ治具を側面から見た時の概略図である。
【
図7】(A)及び(B)は第2調整部の説明図である。
【
図8】ウエハの大きさを変更した場合の押さえ治具の動作を示す図である。
【
図9】(A)及び(B)は剥離工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。また、以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、鉛直方向をZ方向とし、水平方向をX方向、Y方向とする。また、X方向、Y方向、及びZ方向のそれぞれについて、適宜、矢印の先の側を+側(例、+X側)と称し、その反対側を-側(例、-X側)と称す。
【0019】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るウエハWの製造方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態のウエハWの製造方法は、
図1に示すように、単結晶を台座に接着する接着工程(ステップS1)と、台座に接着した単結晶を切断する切断工程(ステップS2)と、単結晶を切断して形成した複数のウエハ間の相対位置を固定する固定工程(ステップS3)と、台座に接着されたウエハを台座から剥離する剥離工程(ステップS4)を含む。なお、本実施形態において、「ウエハ」とは、円柱状の単結晶を切断して形成された円盤状の板を意味する。
【0020】
まず、ウエハの製造方法で用いる単結晶の切断装置について説明する。
図2は、ウエハの製造方法で用いるワイヤソー装置の概略図である。ウエハの製造方法で用いる切断装置は、例えば、公知のワイヤソー装置である。本実施形態では、ウエハの製造方法に用いる単結晶の切断装置を
図2に示すワイヤソー装置として説明するが、一例であり、切断装置は、単結晶Cを切断してウエハWを製造可能な他の切断装置を用いてもよい。例えば、切断装置は、ブレード、ワイヤ放電加工装置等の切断装置などでもよい。また、
図2に示すワイヤソー装置Mは一例であって、他の態様のワイヤソー装置でもよい。
【0021】
図2に示すワイヤソー装置Mは、いわゆるマルチワイヤソー装置である。ワイヤソー装置Mは、3組の回転ローラR1~R3間に互いに所定の間隔を介して張設された複数のワイヤ3からなるワイヤ列4を円柱状の単結晶Cに対し相対的に移動させて、単結晶Cを切断方向(図ではZ方向)へ押し付けながら、各ワイヤ3(ワイヤ列4)を一方向あるいは往復方向へ走行させて切断加工を行う。このようなマルチワイヤソー装置を用いて単結晶Cを切断する場合、1回の切断作業で、単結晶Cのより多くの部位を切断加工できるので、単結晶Cを効率よく切断することができる。
【0022】
ワイヤソー装置Mによる切断方法では、ワイヤ3と単結晶Cが接触する部分に砥粒を含む加工液を供給する方式(遊離砥粒方式)と、予めワイヤ3に砥粒を固着させたものを用いる方式(固定砥粒方式)とがあるが、本実施形態のウエハの製造方法においては、上記の切断方式のいずれも用いることができる。
【0023】
ワイヤソー装置Mは、単結晶Cが固定されたスライス台7を装着し、装着したスライス台7をワイヤ列4に対して、上下方向に相対的に移動させることにより、ワイヤ列4で単結晶Cを切断する。単結晶Cは、スライス台ホルダ6とスライス台7を固定したものに台座8を介して固定する。スライス台ホルダ6は、ワイヤソー装置Mと脱着式になっており、ワイヤソー装置Mからスライス台ホルダ6を外し、個別に単結晶Cの固定や切断されたウエハWの取り外しを行うことができる。
【0024】
各工程について、詳細に説明する。なお、以下の各工程の説明は一例であって、本実施形態のウエハの製造方法を限定するものではない。接着工程(
図1のステップS1)では、単結晶Cの円周面Scの一部を接着剤9により台座8に接着する。単結晶Cは、台座8を介してスライス台7に固定する。まず、ワイヤソー装置Mよりスライス台7が取り付けられたスライス台ホルダ6を外し、このスライス台7に切断する単結晶Cを固定する。単結晶Cの形状は、一般に円柱状である。単結晶Cは、識別のために、円周面Scの一部を平面状に研削したオリエンテーションフラット(オリフラとも呼ぶ)、円周面Scの一部を切り欠いたノッチ等が加工される場合もある。本明細書において、円柱状の単結晶Cにオリフラあるいはノッチが加工された形状は、円柱状に含まれるものとする。
【0025】
単結晶Cをスライス台7に設置する場合、台座8を介する。次工程の切断工程(
図1のステップS2)において単結晶Cを切断してウエハWを形成する際に単結晶Cを確実に切断するために、単結晶Cと同時に台座8の一部が切断される(
図3(B)参照)。このため、台座8の材質は、樹脂若しくはガラス等であるのが好ましい。台座8の厚みは、台座8の切断が5mm程度であるため、10mm以上の厚みであるのが好ましく、より好ましくは20mm前後である。なお、台座8には、単結晶Cの端面を支持する支持部が設けられてもよい。
【0026】
スライス台7と台座8、及び、台座8と単結晶Cは、それぞれ、接着剤9により接着して固定する。接着剤9は、特に限定はないが、単結晶Cの切断後に形成されるウエハWが容易に剥離できるようにエポキシ系の接着剤を使用するのが好ましい。また、台座8と単結晶Cの接続では、単結晶Cにオリフラがある場合は、オリフラの面を台座8に合わせ接着してもよい。オリフラの面を台座8に合わせて接着することで、接着する面積が増加し、より接着が強固となる。
【0027】
切断工程(
図1のステップS2)は、単結晶Cを固定したスライス台ホルダ6をワイヤソー装置Mに設置し、切断加工をする。
図3(A)及び(B)は、切断工程の説明図である。上述の説明のように、スライス台7がワイヤ3(ワイヤ列4)の加工部に移動し、単結晶Cをワイヤ3(ワイヤ列4)に押し付けることにより、単結晶Cを複数のウエハWに同時に切断する。これにより、台座8に接着された単結晶CがZ方向に切断され、台座8に接着され且つ間隔をおいてX方向に並ぶ複数のウエハWが形成される。上記したように、この際、
図3(B)に示すように、単結晶C及び台座8の一部(下面)を5mm程度切断する。形成するウエハWの厚みは、特に限定されないが、例えば0.2mmから1.0mmである。ウエハWの厚みは、ワイヤ3の径やピッチ等を調整することで所定の厚みに調整することができる。
【0028】
固定工程(
図1のステップS3)は、切断工程により形成された複数のウエハW間の相対位置を固定する。前工程で切断されウエハWは、深さ5mm程度までスライスされた台座8に、ウエハWの厚み程度の接着剤9により接着されている。このため、小さな振動や衝撃でもウエハWが倒れやすくなっている。特にウエハWの薄型化と大口径化により、例えばウエハWの厚みが0.6mm以下でウエハW径が6インチ以上の製品は、上記の倒れが顕著となっている。そこで、本発明では、押さえ治具Zを用いて、ウエハW間の隙間を維持したまま、複数のウエハWを単結晶Cの円周面Scを単結晶Cの中心軸AX1方向に押さえることにより、切断工程により形成された複数のウエハW間の相対位置を固定する。
【0029】
以下、本実施形態に係る押さえ治具Zについて、
図4から
図9を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る押さえ治具Zを+X方向から見た時の正面を示した概略図である。
図5は、
図4の押さえ治具Zの片側(+Y側)を取り外した状態を示す図である。
図6は、
図4の押さえ治具Zを+Y方向から見た時の側面を示した概略図である。
【0030】
図4、
図5に示すように、本実施形態の押さえ治具Zは、台座8に固定された単結晶Cの中心軸AX1を通る垂直面PL2に対して、対称の構造である。以下の説明では、適宜、押さえ治具Zの+Y側の構造を代表として説明し、-Y側の構造は+Y側の構造と同様とする。
【0031】
押さえ治具Zは、各部を支持する支持部と、ウエハWの円周面Scを押さえる押さえ部12と、を備える。
【0032】
支持部は、取り付け部材14(アタッチメント)と、支柱15、とを備える。取り付け部材14は、ボルト及びナット等の固定部材T1により、スライス台7に着脱可能に接続される。
図5に示すように、取り付け部材14をスライス台7から取り外すことにより、押さえ治具ZをウエハWから取り外すことができる。取り付け部材14は、スライス台7の+Y側及び-Y側に2つ配置される。取り付け部材14は、単結晶C(ウエハW)の中心軸AX1方向において、単結晶C(ウエハW)よりも長い形状である。取り付け部材14は、支柱15を支持する。取り付け部材14については、後にさらに説明する。なお、取り付け部材14は、スライス台ホルダ6に接続されるように構成されてもよい。
【0033】
+Y側の取り付け部材14には、2つの支柱15が、台座8に固定された単結晶Cの中心軸AX1(以下「中心軸AX1」と略す)方向(X方向)に沿って取り付けられている。この2つの支柱15は、同様の構成である。各支柱15は、上下方向(Z方向)に延びる形状である。各支柱15は、ボルト及びナット等の固定部材T4により、後述する支柱ベース26を介して、取り付け部材14に着脱可能に接続される。+Y側の2つの支柱15、及び、-Y側の2つの支柱15は、台座8(単結晶C、ウエハW)を四方から囲むように配置される。なお、+Y側の支柱15は、3つ以上設けられてもよく、この場合、切断する単結晶Cの長さが長い場合において、押さえ部12等を安定して支持することができる。
【0034】
図4に示すように、押さえ治具Zは、ウエハWの円周面Scを押さえる押さえ部12を備えている。押さえ部12は、中心軸AX1を通る水平面PL1(以下「水平面PL1」と略す、XY平面)に対し上下対称になるように、且つ、中心軸AX1を通る垂直面PL2(以下「垂直面PL2」と略す、XZ平面)に対し左右対称(Y方向、水平方向且つ中心軸AX1に直交する方向)になるように、4つ配置されている。4つの押さえ部12は、それぞれ、中心軸AX1と平行な方向(X方向と平行な方向)に延びる形状である。
【0035】
なお、以下の説明では、水平面PL1の上方に配置される押さえ部12を「上側押さえ部12a」と称し、水平面PL1の下方に配置される押さえ部12を「下側押さえ部12b」と称し、「上側押さえ部12a」と「下側押さえ部12b」を区別しない場合にこれらを総称して「押さえ部12」と称す。
【0036】
+Y側の2つの支柱15には、それぞれ、上側押さえ部12aを支持する上側アーム17aと、下側押さえ部12bを支持する下側アーム17bと、が接続されている。上側押さえ部12aの両端(+X側及び-X側の端部)は、+X側及び-X側の2つの上側アーム17aに接続されている。また、下側押さえ部12bの両端(+X側及び-X側の端部)は、+X側及び-X側の2つの下側アーム17bに接続されている。すなわち、各押さえ部12は、中心軸AX1方向において、台座8より長く形成されている。切断する単結晶Cの最大長は、台座8の長さとなるため、各押さえ部12が台座8より長く形成される構成では、切断する単結晶Cの長さが長くなった場合においても、押さえ部12により、すべてのウエハWを確実に固定することができ、すなわち、本実施形態の押さえ治具Zは、単結晶Cの長さに限定されず、種々の長さの単結晶Cに対応が可能となっている。
【0037】
各上側アーム17a(+X側、-X側)及び各下側アーム17b(+X側、-X側)は、支柱15に対して回転可能に接続されている。なお、以下の説明では、「上側アーム17a」と「下側アーム17b」を区別しない場合に総称して「アーム17」と称す。
【0038】
各上側アーム17aは、支柱15に対して、中心軸AX1と平行な方向の回転軸AX2周りに回転可能に接続されている。これにより、上側押さえ部12aは、中心軸AX1と平行な方向の回転軸AX2周りに、円弧状に回転可能である。
【0039】
各下側アーム17bは、支柱15に対して、中心軸AX1と平行な方向の回転軸AX3周りに回転可能に接続されている。これにより、下側押さえ部12bは、中心軸AX1と平行な方向の回転軸AX3周りに、円弧状に回転可能である。
【0040】
上記のように、押さえ部12が中心軸AX1と平行な方向の回転軸AX2、AX3周りに円弧状に可動する構成の場合、押さえ部12は、ウエハWの円周の接線方向からウエハWを垂直に押さえることができ、ウエハWを効果的に固定することができる。
【0041】
なお、各上側アーム17a及び各下側アーム17bにより、押さえ部12を回転させる際の回転半径r(
図4参照)は、特に限定されず、固定の対象とするウエハWの直径によって適宜設定されるが、60~90mm程度であるのが好ましい。
【0042】
アーム17は、長孔状のガイドG1により、可動域が制限されている。ガイドG1は、アーム17を円弧状に移動させるため、円弧状に形成されている。アーム17の可動域は、特に限定されないが、本実施形態では35度から40度程度である。アーム17の可動域が上記の範囲である場合、アーム17が不要な位置に移動することを抑制するので、アーム17のハンドリング性が向上する。なお、各上側アーム17a及び各下側アーム17bの可動域は、互いに異なっていてもよい。
【0043】
なお、アーム17(押さえ部12)は、円弧状に可動しなくてもよい。例えば、アーム17は、水平方向(Y方向)あるいは上下方向(Z方向)、これらの2つの方向(Y方向、Z方向)、これらを合成した方向(YZ方向)等の方向に、押さえ部12を移動させる構成でもよい。
【0044】
また、アーム17は、ボルト及びナット等の固定部材T2により支柱15に固定することができる。台座8に対するアーム17の相対位置を固定する機構を備える場合、押さえ部12によりウエハWを押さえる際の強さを安定させることができる。押さえ部12によりウエハWを押さえる際の強さは、ウエハWが台座8から落下せず、切断されたウエハW間の隙間(空間)を維持する程度の強さであればよい。なお、各上側アーム17a及び各下側アーム17bは、ばねなどの弾性部材を用いた機構により、押さえ部12をウエハWの円周面Sc方向(中心軸AX1方向)に押す(付勢する)構成でもよい。
【0045】
また、各押さえ部12は、ウエハWの円周面Scに接触する部分(以下「接触部19」と称す)が、中心軸AX1と平行な軸(X方向と平行な軸)周りに回転可能な回転体であるのが好ましい。本実施形態の各押さえ部12は、円柱状の棒状の形状であり、中心軸AX1と平行である回転軸AX4周りに回転する。各押さえ部12がウエハWの円周面Scに接触する部分が中心軸AX1と平行な軸周りに回転可能な回転体である場合、接触部19をウエハWの円周面Scに効果的に接触させることができるとともに、ウエハWと接触部19が接触した時の摩擦を及び衝撃を軽減させることができる。
【0046】
また、各押さえ部12の接触部19は、弾性体である。弾性体は、押さえ部12の外周表面に設けられている。弾性体は、シリコン、軟質ゴム等である。押さえ部12の接触部19が弾性体である場合、切断されたウエハW間に弾性体が入り込み、切断されたウエハWの間隔(隙間)を安定して保つことが可能となり、また、ウエハWと接触部19が接触した時の衝撃を軽減させることができる。
【0047】
また、本実施形態の押さえ治具Zは、ウエハWの端面を支持する端面押さえ部27を備える。端面押さえ部27は、+Y側の2つの支柱15に支持されるX方向に延びるガイド部材20を介して設けられている(
図6参照)。端面押さえ部27は、-Y側及び+Y側のそれぞれにおいて、+X側及び-X側の2つずつ設けられ、合計4つ設けられている。端面押さえ部27は、ウエハWの両端に位置するウエハWの面を押さえるため、ガイド部材20を介して、中心軸AX1方向に可動する。端面押さえ部27は、ガイド部材20の任意の位置に、固定部材T6により、固定することができる。端面押さえ部27は、ウエハWとの接触部分に、弾性体を備えている。弾性体は、シリコン、軟質ゴム等である。端面押さえ部27とウエハWとの接触部分が弾性体である場合、ウエハWと接触部19が接触した時の衝撃を軽減させることができる。
【0048】
なお、ガイド部材20は、アーム17に接続される構成でもよい。また、押さえ部12は、ガイド部材20に取り付けられ、ガイド部材20を中心軸として回転可能に設けられる構成でもよい。また、端面押さえ部27は、任意の構成であり、なくてもよい。
【0049】
また、本実施形態の押さえ治具Zは、押さえ部12が水平面PL1に対し上下対称になるように配置され、かつ、垂直面PL2に左右対称になるように配置されるように、押さえ部12の位置が可動する可動機構22を有する。本実施形態の可動機構22は、第1調整部23と、第2調整部24と、を備える。
【0050】
第1調整部23は、アーム17(押さえ部12)を上下方向に調整する。押さえ部12の台座8に対する上下方向の相対位置を変更する。第1調整部23は、押さえ部12の台座8に対する上下方向の相対位置を変更する。第1調整部23により、切断する単結晶Cの直径に合わせて、押さえ部12が水平面PL1に対し上下対称になるように調整できる。本実施形態の第1調整部23は、支柱15の上側部材15Uを、下側部材15Lに対して上下方向に可動させることにより、アーム17(押さえ部12)の上下方向の位置を調整する。本実施形態では、長孔状に形成されるガイドG2及びボルト等の固定部材T3により、支柱15の上側部材15Uを下側部材15Lに対して可動させ、且つ、上側部材15Uを下側部材15Lに固定する。ガイドG2には、固定部材T3が挿入され、固定部材T3で固定することにより、上側部材15Uを下側部材15Lに固定する。この構成の場合、押さえ部12の台座8(単結晶C)に対する上下方向の相対位置を連続的に変更することができるので、任意の直径の単結晶Cに適用させることができる。
【0051】
なお、第1調整部23は、上記の例の構成に特に限定されず、例えば、切断する単結晶Cの大きさがある程度固定されているようであれば、それに合わせ、複数の貫通孔及び固定部材を用いる構成でもよい。この場合、貫通孔に固定部材を挿入し、固定部材により上下方向の位置の固定をする構成となる。
【0052】
第2調整部24について説明する。
図7(A)及び(B)は第2調整部の説明図である。
図7(A)は第2調整部を組み立てた状態を示す図である。
図7(B)は第2調整部を分解した状態を示す図である。
図7(A)及び(B)は、第2調整部を下方(-Z方向)から見た時の図である。
【0053】
第2調整部24は、アーム17(押さえ部12)を水平方向でかつ単結晶Cの中心軸AX1と直交する方向(Y方向)に調整する。第2調整部24は、押さえ部12の台座8に対する左右方向(Y方向)の相対位置を変更する。第2調整部24の構成は特に限定されないが、本実施形態では、
図7(A)及び(B)に示すように、取り付け部材14(アタッチメント)のガイドG3、固定部材T5、及び支柱ベース26を含む。ガイドG3は、Y方向に平行な長孔として、取り付け部材14に設けられている。支柱15は、支柱ベース26の+X側及び-X側の端部に、ボルト等の固定部材T4を介して固定されている。支柱15が取り付けられた支柱ベース26は、ボルト等の固定部材T5を介して、取り付け部材14に取り付けられ、固定部材T5はガイドG3の長孔に嵌めこまれ、ガイドG3に沿って移動可能である。この構成により、支柱15が取り付けられた支柱ベース26は、取り付け部材14に対して、Y方向に移動する。また、支柱15が取り付けられた支柱ベース26は、固定部材T5により、ガイドG3の任意の位置に固定することができる。上記の構成の場合、押さえ部12の台座8に対する左右方向の相対位置を連続的に変更することができ、任意の直径の単結晶Cに適用させることができる。
【0054】
なお、第2調整部24は、上記の例の構成に特に限定されず、例えば、切断する単結晶Cの大きさがある程度固定されているようであれば、それに合わせ、複数の貫通孔及び固定部材を用いる構成でもよい。
【0055】
本実施形態の押さえ治具Zは、上記の第1調整部23及び第2調整部24を含む可動機構22により押さえ部12の位置を上下方向及び水平方向に調整することにより、押さえ部12が水平面PL1に対し上下対称になるように配置され、かつ、垂直面PL2に左右対称になるように配置されるように、押さえ部12の位置を可動することができる。上記構成の場合、押さえ部12の台座8に対する上下方向及び左右方向の相対位置を連続的に変更することができる。
【0056】
図8は、ウエハの大きさを変更した場合の押さえ治具Zの動作を示す図である。
図8の2点鎖線は、
図4に示した直径のウエハWを押さえ治具Zで保持した状態を示す。
図8の実線は、
図4に示した直径よりも小さいウエハWを押さえ治具Zで保持した時の状態を示す。
【0057】
本実施形態の押さえ治具Zは、
図4に示すウエハWよりも直径が小さいウエハWを固定する場合、
図8に実線で示すように、第1調整部23により押さえ部12の位置を下方に移動させ、且つ、第2調整部24により押さえ部12の位置をウエハWに近接する方向に移動させる。このように、本実施形態の押さえ治具Zは、上記の構成により、単結晶C大きさが違う、小口径から大口径の結晶や長尺結晶に対応することができる。これにより、本実施形態の押さえ治具Z、1台で、大きさが異なる単結晶Cの対応が可能となる。
【0058】
また、本実施形態の押さえ治具Zは、4つの押さえ部12を、水平面PL1に対して上下対称、且つ、垂直面PL2に対して左右対称に配置することで、ウエハWを4ヶ所でほぼ均等にバランスよく固定することが可能となる。押さえ部12を4ヶ所する場合、ウエハWをバランスよく確実に固定することができる。また、押さえ部12は、その両端がアーム17で固定されているため、押さえ部12が片側のみで支持部に支持される機構に比べ、複数のウエハWを中心軸AX1方向の長さ方向全体にわたり、有効に押さえることが可能となる。また、本実施形態の押さえ治具Zは、上記の構成により、簡単に組み立てることができる。
【0059】
なお、押さえ治具Zの取り付けは、ワイヤソー装置M内で単結晶Cを切断し、ワイヤソー装置Mからスライス台7を取り外す前に行うのが好ましい。この場合、単結晶Cを切断して形成した複数のウエハWを移動させる前にウエハWを固定するので、単結晶Cの切断終了後のウエハWの接触、倒れ、落下を効果的に抑制することができる。
【0060】
次に、剥離工程について説明する。剥離工程(
図1のステップS4)は、ウエハWを台座8から剥離する工程である。
図9(A)及び(B)は、剥離工程の例を示す図である。剥離工程は、ワイヤソー装置M内で押さえ治具Zを付けたスライス台ホルダ6ごと取り外し、スライス台7のウエハWと台座8との間の接着剤9、及び、台座8とスライス台7と間の接着剤9を剥離させて、ウエハWを取り出す。
【0061】
上記したように、スライス台7は、ワイヤソー装置Mから取り外し、剥離槽Tまで運搬し、剥離槽Tに浸漬する必要がある。この運搬や移動時に、振動や衝撃によりウエハWの倒れが発生しやすい。スライス台7をワイヤソー装置Mから取り外す際、
図2に示すようにスライス台7を上方向からワイヤ3に押し付ける方式の場合、切断により形成されたウエハWは、スライス台7が上側でウエハWが下側の状態である。この場合、スライス台7を運搬する時は、スライス台7を180°回転する必要があり、この回転時にウエハWが特に倒れやすい。よって、押さえ治具Zは、単結晶Cの切断終了後に、ワイヤソー装置M内でスライス台7を、ワイヤソー装置Mから取り外す前に取り付けることが好ましく、押さえ治具Zを取り付けることで、上記のような倒れを防止できる。
【0062】
接着剤9の剥離は、接着剤9の種類にもよるが、例えば、エポキシ系の接着剤9の場合は、60℃~100℃の温度を掛けることで剥離できる。この場合は、
図9(A)及び(B)に示すように、高温の剥離液LQを満たした剥離槽Tの中に、押さえ治具Zにより固定したウエハW、台座8、及びスライス台7を浸漬することで行われる。この剥離作業においては、押さえ治具Zにより固定したウエハW、台座8、及びスライス台7を、所定時間、剥離槽Tの中に浸漬する。所定時間浸漬させることで接着剤9の接着力を低下させてウエハWを回収する。なお、接着力が低下するためウエハWの保持力がさらに低下し、ウエハWがより倒れ易くなる。このため、押さえ治具Zを設置したままで剥離処理を行ってもよい。
【0063】
ウエハWの取り出しは、
図9(A)及び(B)に示すように剥離槽Tの中で行っても、剥離槽Tから上げて行ってもよい。ウエハW取り出しは、例えば、
図9(A)に示すように、押さえ治具Zの上側押さえ部12aを2か所開放し、取り外して行う。これにより、ウエハWを取り出す側が解放されるとともに、ウエハWの円周面Scの下側2点は、下側押さえ部12bにより保持され、さらに、ウエハWの側方(Y方向)は、押さえ治具Zとの隙間が空いているため、ウエハWを取り出す際にウエハWの側方(Y方向)が押さえ治具Zに干渉することなく、ウエハWをストレスなく取り出すことが容易になる。
【0064】
なお、ウエハWの厚みが薄い、あるいはウエハW径が大口径のためウエハWが接触、倒れやすい場合は、
図9(B)に示すように、押さえ部12の4ヶ所のうち、上側押さえ部12aの1つを外し、ウエハWを残り3ヶ所の押さえ部12で固定することで、ウエハWの倒れを防止することができる。この場合、ウエハWは斜め上方向に持ち上げて取り出すことができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のウエハWの押さえ治具Z及びウエハの製造方法は、単結晶の切断終了後から剥離作業までウエハWを保持するため、ウエハWの接触、倒れ、落下を抑制することができる。さらに、剥離工程(
図1のステップS4)においてウエハWを台座8より分離し、個々に取り外す際、押さえ治具Zの一部によりウエハWを押さえた状態でウエハWの取り出しを行うことで、個々のウエハWは押さえ治具Zにより個別に押さえられているため、個々にウエハWを取り出しすることが可能となり、ウエハWの接触、倒れ、落下による損傷を防止できる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
タンタル酸リチウム(以下LT)の大きさφ150mm長さ100mmの単結晶Cを用意した。厚さ20mmの台座8にスライス台を、エポキシ系の接着剤9により固定した。その台座8の上に単結晶Cのオリフラ部を、台座8の面に合わせてエポキシ系の接着剤9で固定した。
【0068】
次に、単結晶を固定したスライス台をワイヤソー装置に取り付け、ウエハWに切断した。切断の条件は、ウエハ厚みを0.6mm、ウエハ間のピッチを0.85mmとした。
【0069】
切断終了後、押さえ治具Zをスライス台7に取り付けた。押さえ治具Zの全長はワイヤソー装置Mの切断最大長によって変わるため、本試験では、結晶長300mmに対応できるものを使用した。押さえ治具Zは、
図4、
図5に示すように設置し、第1調整部23及び第2調整部24により、押さえ部12の高さと押さえ部12の幅(Y方向の位置)を調整後、4か所の押さえ部12と、4か所の端面押さえ部27を設置した。また、各押さえ部12とウエハWの接触部分、及び端面押さえ部27とウエハWの接触する面には、シリコンゴムを設置した。
【0070】
次に、押さえ治具Zを設置したスライス台7をワイヤソー装置Mから取り外し、リフターで運搬し、剥離槽Tにスライス台7を浸漬した。剥離槽Tには高温にした剥離液LQを充填し、この剥離液LQを用いて接着剤9を剥離した。その後、
図9(A)に示すように、剥離槽T中で押さえ治具Zの単結晶Cと台座8を接着した面の反対側の上側押さえ部12aを取り外して、ウエハWを1枚ずつ取り外し、ウエハW用キャリアケースに保管した。この間、ウエハWの倒れ等不具合は発生しなかった。
【0071】
[実施例2]
LTの大きさφ100mm長さ250mmの単結晶Cと、ウエハW厚みを0.28mm、ウエハW間のピッチを0.42mmとした以外、実施例1と同様の試験を実施した。
【0072】
その結果、切断により形成されたウエハWを押さえ治具Zにより固定することができ、剥離作業では、ウエハWを1枚ずつ取り外し、不具合が発生することなくウエハWを回収することができた。
【0073】
[実施例3]
単結晶Cをガラス円柱とし、その大きさφ250mm、長さ50mmとした以外、実施例2と同様に試験を実施した。
【0074】
その結果、切断により形成されたウエハWを押さえ治具Zにより固定することができ、剥離作業では、ウエハWを1枚ずつ取り外し、不具合が発生することなくウエハWを回収することができた。
【0075】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0076】
C…単結晶
W…ウエハ
Z…押さえ治具
M…ワイヤソー装置
Sc…円周面(単結晶C、ウエハW)
AX1…中心軸(単結晶、ウエハ)
AX2…回転軸(上側アーム)
AX3…回転軸(下側アーム)
AX4…回転軸(押さえ部)
PL1…水平面
PL2…垂直面
3…ワイヤ
4…ワイヤ列
6…スライス台ホルダ
7…スライス台
8…台座
9…接着剤
R1~R3…回転ローラ
12…押さえ部
12a…上側押さえ部
12b…下側押さえ部
14…取り付け部材(アタッチメント)
15…支柱
15L…下側部材
15U…上部部材
17…アーム
17a…上側アーム
17b…下側アーム
19…接触部
20…ガイド部材
22…可動機構
23…第1調整部
24…第2調整部
26…支柱ベース
27…端面押さえ部
G1…ガイド(アーム)
G2…ガイド(第1調整部)
G3…ガイド(第2調整部)
T1…固定部材(取り付け部材)
T2…固定部材(アーム)
T3…固定部材(第1調整部)
T4…固定部材(支柱)
T5…固定部材(第2調整部)
T…剥離槽
LQ…剥離液