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特許7176350画像形成装置、画像形成方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20221115BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/00
G03G21/00 502
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2018201729
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2019091025
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2017218226
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(72)【発明者】
【氏名】松野 泰英
(72)【発明者】
【氏名】吉見 貴博
(72)【発明者】
【氏名】南 真司
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138129(JP,A)
【文献】特開2014-149338(JP,A)
【文献】特開2015-148789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回する感光体の周面を帯電させる帯電部材に帯電バイアスを印加する電圧印加部と、
前記帯電部材から前記感光体に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流検知部と、を備えた画像形成装置であって、
前記帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値、及び前記感光体に流れる出力電流に係る電流値に基づいて、前記感光体の膜厚を算出する膜厚算出手段と、
前記帯電中の前記感光体の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記膜厚算出手段によって算出された算出膜厚に走行距離を関連付けして保存する算出膜厚保存手段と、
前記算出膜厚保存手段から取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、現時点における推定膜厚を算出する膜厚推定手段と、
前記膜厚推定手段により算出された推定膜厚に基づいて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を算出する膜厚範囲予測手段と、を備え
前記膜厚範囲予測手段は、前回の推定膜厚の値が小さいほど、予測膜厚範囲が狭くなるように算出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記膜厚推定手段は、前記算出膜厚保存手段から取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、最小二乗法に従って現時点の走行距離に対応した推定膜厚を算出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記膜厚推定手段は、次回の膜厚を算出する際に、前記膜厚範囲予測手段によって予測された予測膜厚範囲内に前記算出膜厚が入るか否かを判定することにより前記算出膜厚が有効か無効かを判定する異常判定手段を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記膜厚推定手段に用いる帯電バイアス-帯電電流の傾きと前記感光体の膜厚との関係を表す膜厚推定情報を保持する膜厚推定情報保持手段と、
前記膜厚推定情報と前記推定膜厚とに基づいて、前記膜厚推定情報と前記推定膜厚との間の推定膜厚誤差を算出する推定膜厚誤差算出手段と、を備え、
前記膜厚範囲予測手段は、前記推定膜厚と前記推定膜厚誤差とに基づいて、前記予測膜厚範囲を算出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
現在の温度湿度を検知する温度湿度検知手段と、
前記膜厚推定手段は、前記温度湿度検知手段により検知された温度湿度情報に基づいて、前記推定膜厚を補正することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
現在の温度湿度を検知する温度湿度検知手段と、
前記膜厚推定手段は、前記温度湿度検知手段により検知された温度湿度情報に基づいて、前記推定膜厚誤差を補正することを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記異常判定手段は、前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲に対して、算出膜厚が厚膜側で範囲外となった場合に、前記算出膜厚を無効とすることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記膜厚範囲予測手段は、前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲に対して、前記膜厚算出手段によって算出された前記算出膜厚が薄膜側で範囲外となった場合の範囲外回数を計数する範囲外回数計数手段を備え、
前記異常判定手段は、前記範囲外回数計数手段により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった算出膜厚を有効とすることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記異常判定手段は、前記算出膜厚が有効となった場合に、前記算出膜厚保存手段に保存している直近の1回以上前の算出膜厚を破棄することを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記膜厚範囲予測手段は、前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲に対して、前記膜厚算出手段により算出された算出膜厚が厚膜側であり前記予測された予測膜厚範囲外となった場合、又は前記膜厚算出手段により算出された前記算出膜厚が薄膜側であり前記予測された予測膜厚範囲外となった場合の範囲外回数を計数する範囲外回数計数手段を備え、
前記異常判定手段は、前記範囲外回数計数手段により計数された範囲外回数が一定の回数未満で連続して計数されている場合に、再度、前記膜厚算出手段膜厚算出処理を実行させることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記膜厚範囲予測手段は、前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲に対して、前記膜厚算出手段により算出された前記算出膜厚が範囲外となった回数を計数する範囲外回数計数手段を備え、
前記異常判定手段は、前記範囲外回数計数手段により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、前記膜厚算出手段によって算出された算出膜厚を画像形成に係る制御に用いないことを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲の下限値に基づいて、前記感光体の使用率を計算する使用率計算手段を備えることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記感光体の走行距離を算出する走行距離算出手段と、
前記膜厚範囲予測手段によって予測された予測膜厚範囲の下限値と、前記感光体の走行距離に基づいて算出可能な前記感光体の膜が最大に摩耗したときの最大摩耗膜厚値とを比較する比較手段と、を備え、
前記使用率計算手段は、前記予測膜厚範囲の下限値、又は最大摩耗膜厚値の大きい方の値に基づいて、前記感光体の使用率を計算することを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記膜厚範囲予測手段は、前回の推定膜厚に基づく推定膜厚誤差を用いて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を算出することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記使用率計算手段は、前記走行距離算出手段により算出された前記感光体の走行距離が一定の閾値を超えた後に、前記膜厚範囲予測手段により予測された予測膜厚範囲の下限値に基づいて、前記感光体の使用率を計算することを特徴とする請求項12記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記予測膜厚範囲の下限値に基づいて、前記感光体、及び現像部の使用可能残日数を算出する使用可能残日数算出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記走行距離算出手段により算出された前記感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報を保存する推定膜厚保存手段を備え、
前記使用可能残日数算出手段は、
前記膜厚推定手段により算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、前記推定膜厚保存手段から取得した前記感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報に基づいて、前記感光体、及び前記現像部の使用可能残日数を算出することを特徴とする請求項16記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報を保存する推定膜厚保存手段を備え、
前記使用可能残日数算出手段は、
前記膜厚推定手段により算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、前記推定膜厚保存手段から取得した前記推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報に基づいて、前記感光体、及び現像部の使用可能残日数を算出することを特徴とする請求項16記載の画像形成装置。
【請求項19】
ある時点から現時点までの推定膜厚差分値が一定の閾値以上であるか否かを判定する差分値判定手段を備え、
前記使用可能残日数算出手段は、
前記差分値判定手段が、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値が一定閾値以上となったと判定した場合に、前記感光体、及び現像部の使用可能残日数を算出することを特徴とする請求項16乃至18の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項20】
ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上であるか否かを判定する経過日数判定手段を備え、
前記使用可能残日数算出手段は、
前記経過日数判定手段が、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上となったと判定した場合に、前記感光体、及び現像部の使用可能残日数を算出することを特徴とする請求項16乃至18の何れか一項記載の画像形成装置。
【請求項21】
周回する感光体の周面を帯電させる帯電部材に帯電バイアスを印加する電圧印加部と、
前記帯電部材から前記感光体に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流検知部と、を備えた画像形成装置による画像形成方法であって、
前記帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値、及び前記感光体に流れる出力電流に係る電流値に基づいて、前記感光体の膜厚を算出する膜厚算出ステップと、
前記帯電中の前記感光体の走行距離を算出する走行距離算出ステップと、
前記膜厚算出ステップによって算出された算出膜厚に走行距離を関連付けして保存する算出膜厚保存ステップと、
前記算出膜厚保存ステップから取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、現時点における推定膜厚を算出する膜厚推定ステップと、
前記膜厚推定ステップにより算出された推定膜厚に基づいて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を算出する膜厚範囲予測ステップと、を実行し、
前記膜厚範囲予測ステップは、前回の推定膜厚の値が小さいほど、予測膜厚範囲が狭くなるように算出することを特徴とする画像形成方法。
【請求項22】
請求項21記載の画像形成方法における各ステップをプロセッサに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、感光体の表面電位を均一に帯電処理する工程がある。その工程中には、直流電圧を帯電ローラに印加して、帯電ローラを感光体表面と接触させて感光体表面へ放電させて、感光体を帯電させるという接触DC帯電方式が採用されている。
この接触DC帯電方式では、帯電ローラと感光体の表面との間で放電を発生させることで、感光体の表面電位を目標の電位に帯電させる。
接触DC帯電方式では、帯電ローラが感光体の表面に接触しているため、感光体が回転するにつれて表面の感光体膜が削れていく。
そして、膜厚が薄くなるにつれて、帯電ローラへの印加電圧と感光体の表面に帯電する電圧との関係が変化し、作像に必要な感光体の表面電位を保てなくなる。この結果、印刷された画像に不具合が生じるため、感光体の交換が必要になっていた。
また、感光体膜がすべて削れてしまうと、感光体の表面に電荷を保持できなくなり、帯電性能が著しく低下するため、感光体を交換する必要がある。
これらの問題に対して、従来、感光体の回転数を用いて感光体膜厚の削れ量を算出することで、帯電ローラに印加する電圧を制御したり、感光体の寿命を判断したりしている。
実際の感光体膜厚の削れ量に対して、帯電中の感光体の回転数を用いて感光体膜厚の削れ量を予測した場合、
(1)ユーザの使用環境
(2)感光体ユニット内における、ブレードが感光体に当接した際の圧力
(3)現像部でのニップ圧力
等に依存して、大きく異なってしまうという課題がある。
【0003】
この課題の解決策として、特許文献1には、感光体の回転数から感光体膜厚の削れ量を算出するよりも、精度良く膜厚の削れ量を検知することを目的として、帯電バイアス-帯電直流電流特性の傾きより感光体膜厚を求めるという技術が開示されている。
特許文献2には、感光体の膜厚推定結果の精度を高めることを目的として、機種及び稼働期間毎に導出・記憶している感光体の膜厚の推定演算式から、稼働情報に基づいて感光体の消耗量(膜厚減少量)を推定演算するという技術が開示されている。
特許文献3には、感光体の膜厚検知結果の精度を高めることを目的として、帯電部材に印加する電圧の絶対値を画像形成時よりも膜厚判断時に大きくすることや、温度湿度によって印加する電圧を可変するという技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、ノイズ等の要因によって異常な結果が出た場合に、膜厚を誤って予測してしまうという問題があった。
特許文献1乃至3にあっては、膜厚推定結果の精度を高めることを目的としているが、間接的に膜厚を推定する制御における計算精度を向上することに関する技術内容であった。
しかしながら、特許文献1乃至3にあっては、ノイズ等で異常な結果が出た場合に膜厚を誤って予測してしまうという問題は解消できていない。
本発明の一実施形態は、上記に鑑みてなされたもので、その目的としては、算出された推定膜厚に対して、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を精度高く算出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するたに、請求項1記載の発明は、周回する感光体の周面を帯電させる帯電部材に帯電バイアスを印加する電圧印加部と、前記帯電部材から前記感光体に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流検知部と、を備えた画像形成装置であって、前記帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値、及び前記感光体に流れる出力電流に係る電流値に基づいて、前記感光体の膜厚を算出する膜厚算出手段と、前記帯電中の前記感光体の走行距離を算出する走行距離算出手段と、前記膜厚算出手段によって算出された算出膜厚に走行距離を関連付けして保存する算出膜厚保存手段と、前記算出膜厚保存手段から取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、現時点における推定膜厚を算出する膜厚推定手段と、前記膜厚推定手段により算出された推定膜厚に基づいて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を算出する膜厚範囲予測手段と、を備え、前記膜厚範囲予測手段は、前回の推定膜厚の値が小さいほど、予測膜厚範囲が狭くなるように算出することを特徴とする。


【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、推定された推定膜厚に対して、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を精度高く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明が適用される画像形成装置の概略的な機構構成を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1に採用される電子写真プロセスの全体構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
図4】I-V特性を示すグラフ図である。
図5】ノイズ発生時のI-V特性を含むグラフ図である。
図6】温度湿度環境下での感光体のI-V特性の傾きと膜厚との関係を示すグラフ図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の膜厚推定部による膜厚推定処理の概要を示す図である。
図8】膜厚算出部により算出された感光体の算出膜厚に関するばらつきの影響の概要を示す図である。
図9】感光体膜厚を推定する際の予測膜厚範囲の概要を示す図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のメイン処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の異常判定部による異常判定処理を示すサブルーチンのフローチャートである。
図12】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置に採用される使用率計算処理の概要を示す図である。
図13】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置による使用率算出処理を示すフローチャートである。
図14】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
図15】感光体の走行距離と膜厚との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
本発明は、推定された推定膜厚に対して、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を精度高く算出するために、以下の構成を有する。
すなわち、本発明の画像形成装置は、周回する感光体の周面を帯電させる帯電部材に帯電バイアスを印加する電圧印加部と、帯電部材から感光体に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流検知部と、を備えた画像形成装置であって、帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値、及び感光体に流れる出力電流に係る電流値に基づいて、感光体の膜厚を算出する膜厚算出手段と、帯電中の感光体の走行距離を算出する走行距離算出手段と、膜厚算出手段によって算出された算出膜厚に走行距離を関連付けして保存する算出膜厚保存手段と、算出膜厚保存手段から取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、現時点における推定膜厚を算出する膜厚推定手段と、膜厚推定手段により算出された推定膜厚に基づいて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を算出する膜厚範囲予測手段と、を備えることを特徴とする。
以上の構成を備えることにより、推定された推定膜厚に対して、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲を精度高く算出することができる。
上記記載の本発明の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
上記の本発明の特徴に関して、以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1は、本発明が適用される画像形成装置の概略的な機構構成を示す断面図である。
図1を参照して、画像形成装置1での画像形成の流れを複写モードを例にあげて簡単に説明する。
画像形成装置1は、複写モードにおいて、原稿束が自動原稿送り装置(ADF)2により、順に画像読み取り装置3に給送され、画像読み取り装置3により、画像情報が読み取られる。そして、その読み取られた画像情報は、画像処理手段を介して書き込み手段としての書き込みユニット4により光情報に変換され、感光体6は、感光体ドラムであり、帯電器により一様に帯電された後に書き込みユニット4からの光情報により露光されて静電潜像が形成される。
この感光体6上の静電潜像は現像部7により現像されてトナー像となる。このトナー像は、搬送ベルト8により転写紙に転写される。転写紙は、定着部9によりトナー像が定着され、排出される。
【0010】
<第1実施形態に係る画像形成装置に採用される電子写真プロセス>
図2は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1に採用される電子写真プロセスの全体構成を示す図である。
図2には、一般的な直接DC帯電方式の電子写真プロセスの構成であり、感光体6、帯電ローラ(帯電部材)12、露光部13、現像部7、表示パネル14、転写ローラ15、ブレード16、除電器17、高圧電源(帯電)18、電流電圧検知部19、制御ユニット10を備えている。
感光体16が周回されており、高圧電源18により発生された直流の高電圧を帯電ローラ(帯電部材)12に印加し、感光体6の表面を一様に帯電する。その後、露光部13により画像信号に応じたイメージ光が出射され、イメージ光により感光体6の表面が露光され、感光体6の表面に静電潜像が形成される。
【0011】
そして、現像部7により感光体6の表面の静電潜像がトナー像に現像され、感光体6上のトナー像は転写ローラ15により記録媒体に転写される。その後、定着手段により定着されることで、記録媒体上に画像が形成される。
また、除電器17が照射したLED光により感光体6の表面の電荷を除去した後に帯電処理を行う。
制御ユニット10は、A/D変換部(ADC)10a、CPU(central processing unit)10b、ROM(read only memory)10c、RAM(random access memory)10dを備えている。
表示パネル14は、感光体6の使用率を0~100%の間の値で表示する。
【0012】
<制御部>
図3は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示す制御ユニット10は、モータ駆動部21、温度湿度検知部11、電流電圧検知部19、電圧印加部24、制御部30を備えている。
モータ駆動部21は、制御部30からの駆動指示に応じてモータを駆動して、モータの回転に応じて感光体6を回転させる。
温度湿度検知部11は、感光体6の周辺の雰囲気温度湿度を検知する。
電圧印加部24は、感光体6へ印加すべき電圧値を示す電圧指令値を制御部30から取得すると、電圧指令値に対応した印加電圧になるように調整して、帯電ローラ12を介して感光体6に電圧を印加する。
電流電圧検知部19は、帯電ローラ12から感光体6に流れる出力電流・出力電圧を表すフィードバック信号を生成してA/D変換部10aに出力する。
【0013】
図2に示す制御ユニット10は、上述したように例えばCPU10b、ROM10c、RAM10dを有するマイコンにより構成されている。
CPU10bは、ROM10cからオペレーティングシステムOSを読み出してRAM10d上に展開してOSを起動し、OS管理下において、ROM10cからアプリケーションソフトウエアのプログラム(処理モジュール)を読み出し、各種処理を実行することで、図2に示す制御部30を実現する。
【0014】
制御部30は、膜厚算出部30a、算出膜厚保存部30b、膜厚推定部30c、異常判定部30c1、膜厚範囲予測部30d、範囲外回数計数部30d1、膜厚推定情報保持部30e、推定膜厚誤差算出部30f、使用率計算部30g、比較部30k、走行距離算出部30h、推定膜厚保存部30i、膜厚決定計算部30j、を備えている。
膜厚算出部30aは、感光体6に流れる出力電流に係る電流値、及び帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値に基づいて、感光体のI-V特性の傾きを算出し、さらに、I-V特性の傾きに基づいて膜厚を算出する。
【0015】
算出膜厚保存部30bは、膜厚算出部30aによって算出された算出膜厚に、走行距離算出部30hによって算出された走行距離を関連付けしてRAM10dに保存する。
膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30bから取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、現時点における推定膜厚を算出する。膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30bから取得した複数の時点での算出膜厚と走行距離に基づいて、最小二乗法に従って現時点の走行距離に対応した推定膜厚を算出する。
膜厚推定部30cは、温度湿度検知部11により検知された温度湿度情報に基づいて、推定膜厚誤差ΔDeを算出する。
【0016】
膜厚範囲予測部30dは、膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚に基づいて、現時点における膜厚のとりうる予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出する。
膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚と推定膜厚誤差ΔDeとに基づいて、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出する。
膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚の値が小さいほど、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなるように算出する。
膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚に基づく推定膜厚誤差ΔDeを用いて、現時点の走行距離に対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出する。
【0017】
異常判定部30c1は、次回の推定膜厚を推定する際に、膜厚範囲予測部30dによって予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax内に推定膜厚が入るか否かを判定することにより推定膜厚が有効か無効を判定する。
異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、推定膜厚が厚膜側で範囲外となった場合に、推定膜厚を無効とする。
異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった推定膜厚を有効とする。
異常判定部30c1は、推定膜厚が有効となった場合に、推定膜厚保存部30iに保存している直近の1回以上前の推定膜厚を破棄する。
異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数未満で連続して計数されている場合に、再度、膜厚推定部30cに膜厚推定処理を実行させる。
【0018】
範囲外回数計数部30d1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚が厚膜側であり予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax外となった場合、又は膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚が薄膜側であり予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax外となった場合の範囲外回数を計数する。
範囲外回数計数部30d1は、膜厚範囲予測部30d内に設けられ、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚が薄膜側で範囲外となった場合の範囲外回数を計数する。
膜厚推定情報保持部30eは、膜厚推定部30cに用いるI-V特性の傾き(帯電電流-帯電バイアスの傾き)と感光体6の膜厚との関係を表す膜厚推定情報(図6)を保持する。
推定膜厚誤差算出部30fは、膜厚推定情報と推定膜厚とに基づいて、膜厚推定情報と推定膜厚との間の推定膜厚誤差ΔDeを算出する。
【0019】
比較部30kは、膜厚範囲予測部30dによって予測された予測膜厚範囲下限値Dminと、感光体6の走行距離に基づいて算出可能な感光体の膜が最大に削れたときの最大摩耗膜厚値とを比較する。
使用率計算部30gは、比較部30kの比較結果として、予測膜厚範囲の下限値、又は最大削れ膜厚値の大きい方の値に基づいて、感光体6の使用率を計算する。
使用率計算部30gは、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲の下限値に基づいて、感光体6の使用率を計算する。
走行距離算出部30hは、感光体6を回転させるモータが回転中であり、且つ電圧印加部24が帯電ローラ12を介して感光体6に電圧を印加中の時間をタイマ10eにより計測して、印加時間に1秒当たりの単位回転数を乗算することで、帯電中の感光体6の走行距離を算出する。
【0020】
使用率表示制御部30mは、使用率計算部30gにより計算された感光体6の使用率を0~100%の間の値に変換して、表示パネル14に表示する。
推定膜厚保存部30iは、膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚に、異常判定部30c1により判定された推定膜厚に係る有効/無効を付加して保存する。
膜厚決定計算部30jは、推定膜厚保存部30iに保存されている推定膜厚のうち有効なものを膜圧として決定して出力する。
制御部30は、A/D変換部10aを介して電流電圧検知部19により生成されたフィードバック信号に基づいて、感光体6へ印加すべき電圧値を算出し、この電圧値を電圧指令値として電圧印加部24に与えることで印加電圧を調整するように制御する。
【0021】
<I-V特性検出>
制御部30の制御により、複数の異なる電圧を感光体に印加して帯電させ、印加時の電流を検知し、I-V特性を算出して、その特性の傾きから膜厚を検出する(特許文献1参照)。
制御ユニット10は、帯電時のI-V特性を導くために、複数の異なる電圧を印加してその時の帯電電流をA/D変換部10aを介して検知する。
【0022】
仮に、複数の異なる電圧として、複数の制御ステップにおいて、4点の電圧を印加することとして説明する。この際に、制御ステップは下記[S1]~[S5]となる。
[S1] 電圧V1の帯電電圧を印加し、その時の電流I1を検知する。
[S2] 電圧V2の帯電電圧を印加し、その時の電流I2を検知する。
[S3] 電圧V3の帯電電圧を印加し、その時の電流I3を検知する。
[S4] 電圧V4の帯電電圧を印加し、その時の電流I4を検知する。
[S5] [S1]~[S4]を実行した際に、膜厚算出部30aは、印加電圧と検知電流からI-V特性の傾きmを導き(図4参照)、I-V特性の傾きmに対応した感光体6の膜厚D(図6参照)を算出する。
算出膜厚保存部30bは、膜厚算出部30aによって算出された算出膜厚Dに、走行距離算出部30hによって算出された現在の走行距離Lを関連付けてRAM10dに保存する。
なお、電圧V1~V4は、それぞれ異なる電圧値とする。なお、算出膜厚保存部30bには、複数の異なる電流-電圧のペア(I1,V1)~(I4,V4)は、少なくとも2点以上であればよい。
【0023】
<I-V特性グラフ>
図4は、I-V特性を示すグラフ図である。
膜厚算出部30aは、図4に示すI-V特性グラフの傾きmに基づいて、感光体の膜厚を求める(特許文献2参照)。
詳しくは、帯電ローラ(帯電部材)2を介して感光体6を帯電する際に、帯電ローラ2と感光体6との間に流れる電流Idcと、感光体6の感光層の膜厚Dとの間には、Idc=k/D(Kは定数)が成り立つ。
膜厚算出部30aは、上述したように、感光体6に流れる出力電流に係る電流値、及び帯電部材に印加された帯電バイアスに係る電圧値に基づいて、感光体のI-V特性の傾きを算出し、さらに、I-V特性の傾きに基づいて膜厚を算出する。
【0024】
<ノイズ発生時のI-V特性>
図5は、ノイズ発生時のI-V特性を含むグラフ図である。
図5に示す○印はノイズがないときのI-V特性であり、△印はノイズがあるときのI-V特性である。
上述した制御ステップ[S1]~[S5]では、I-V特性の傾きmを算出することにより、傾きmから膜厚Dを算出することができる。
しかし、図5に示すように、ノイズ等によって異常なI-V特性が生じた場合に、誤った傾きmから誤った膜厚Deを算出するという問題があった。
【0025】
<温度湿度環境下での傾きと膜厚との関係>
図6は、温度湿度環境下での感光体のI-V特性の傾きと膜厚との関係を示すグラフ図である。
I-V特性の傾きと膜厚の関係は一定になることを理想としている。しかしながら、図6に示すように、低温低湿LL環境(例えば、10℃、15%)では、常温常湿MM環境(例えば、23℃、50%)、高温高湿HH環境(例えば、27℃、80%)と比べて誤差が大きくなることを表している。
なお、感光体の膜厚は、新品時において34um程度であり、交換が必要であると判断する膜厚は例えば13umである。
膜厚検出制御では、帯電バイアスを数点変化させた時のI-V特性の傾きから膜厚を求める(特許文献2参照)。
I-V特性の傾きmと膜厚の関係は図6に示すように、膜厚が薄いと傾きは顕著に変化する。図5に示すように、ばらつきで傾きが大きく検知されてしまった場合、算出される感光体膜厚は実際よりも薄い結果となる。
そして、感光体表面を確実に帯電させる最小膜厚閾値Drefを下回った場合、例えば、膜厚検出の結果を用いて寿命判定を行う画像形成装置では、温度湿度環境下や、ノイズ等の影響下で算出した異常なI-V特性によって、想定外の寿命の終了を迎えてしまう。
【0026】
<膜厚推定処理の概要>
図7は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の膜厚推定部30cによる膜厚推定処理の概要を示す図である。
図7は、感光体6の推定膜厚に対して行う異常判定処理の概要を示しており、縦軸が感光体6の算出膜厚Dc、横軸が感光体6の走行距離Lを示している。
算出膜厚の正常/異常を判別するために、過去に膜厚算出部30aが算出した算出膜厚値Dcと、走行距離算出部30hが算出した感光体走行距離Lとを関連付けて算出膜厚保存部30bに記憶しておき、膜厚推定部30cが感光体走行距離Lに対する算出膜厚Dc値の傾きmおよび切片を算出する(図7中の線41)。
これらの算出結果に基づいて、感光体走行距離Lから推定される推定膜厚Deを求めることができる。
膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30bから取得した算出膜厚Dc値に基づいて、例えば最小二乗法等で感光体走行距離Lに対する算出膜厚Dcの推移を算出することで、図7に示す線分41上に位置する推定膜厚Deを求める。
膜厚推定部30cは、複数の時点での算出膜厚Dcと走行距離Lに基づいて、最小二乗法に従って現時点の走行距離Lに対応した推定膜厚Deを算出することで、推定膜厚Deの推定精度を高めることができる。
【0027】
<感光体の算出膜厚に関するばらつき影響>
図8は、膜厚算出部30aにより算出された感光体の算出膜厚Dcに関するばらつきの影響の概要を示す図である。
図8に示すように、算出膜厚Dcから得られるI-V特性の傾きmのばらつきを考慮する必要がある。
傾きmがばらつく因子としては、主に以下のようなものがある。
(1)帯電バイアスの出力電圧Vのばらつき
(2)帯電電流の検出値Iのばらつき
(3)感光体6と帯電ローラ12との間の抵抗ばらつき
これらの因子による傾きのばらつき上下限幅は、帯電バイアスを出力する回路基板や感光体6等のハードウエア系の構成による要因で決まるため、画像形成装置1の機種によって固有に決まる。傾きmのばらつき上下限幅は、算出される傾きmにはほとんど依存せず、一定値として見なしても問題ない。この上下限幅から、算出膜厚Dcのばらつきを算出することができる(図8参照)。
【0028】
ここで、傾きの算出値mが大きい=算出膜厚Dcが小さい場合は、図8中の線45のように、傾きばらつきによる算出膜厚Dcばらつきは小さくなる。
逆に、傾きの算出値が小さい=算出膜厚が大きい場合は、図8中の線47のように、傾きばらつきによる算出膜厚Dcばらつきは大きくなる。
このように、算出膜厚Dcの結果によって算出膜厚Dcばらつきの幅が変わり、算出膜厚Dcばらつきの幅は算出膜厚Dcの値に基づいて決定できる。
【0029】
温度湿度環境によって傾きm-算出膜厚Dcの相関関係が変動するため、図8では環境影響も考慮してばらつきの幅を決定している。このため、温度湿度検知部11を用いて現在の温度湿度を検知しておき、傾きm-算出膜厚Dcの相関式を補正することで、ばらつきの幅を抑制することができる。
算出膜厚Dcのばらつきと同様の理論で、推定膜厚誤差算出部30fは、膜厚推定部30cにより求められた推定膜厚De(図7参照)に対して、推定膜厚Deに基づいて推定膜厚誤差ΔDeを算出する。例えば、下記のような1次関数により規定すると、係数αと切片βは画像形成装置1の機種に固有の実測データに基づいて決定できる。
ΔDe=α×De+β 式(1)
【0030】
なお、膜厚推定部30cは、温度湿度検知部11により検知された温度湿度情報に基づいて、推定膜厚Deを補正することで、推定膜厚Deの予測精度が高くなるという利点がある。
また、膜厚推定部30cは、温度湿度検知部11により検知された温度湿度情報に基づいて、推定膜厚誤差ΔDeを補正することで、推定膜厚誤差ΔDeの予測精度が高くなるという利点がある。
【0031】
膜厚範囲予測部30dは、現時点での膜厚のとりうる範囲として、膜厚範囲上限値Dmax、膜厚範囲下限値Dminを、以下の式(2)(3)により算出する。
膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deに推定膜厚誤差ΔDeを加算した値から、最小磨耗速度Vsminに前回の膜厚推定時からの走行距離(Ln-Le)を乗算した値を減算して膜厚範囲上限値Dmaxを算出する。
Dmax=De+ΔDe-Vsmin×(Ln-Le) 式(2)
一方、膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deから推定膜厚誤差ΔDeを減算した値から、最大磨耗速度Vsmaxに前回の膜厚推定時からの走行距離(Ln-Le)を乗算した値を減算して膜厚範囲下限値Dminを算出する。
Dmin=De-ΔDe-Vsmax×(Ln-Le) 式(3)
なお、前回の膜厚推定時からの走行距離(Ln-Le)とは、現在の走行距離Lnから前回の走行距離Leを減算した値である。
【0032】
膜厚範囲予測部30dは、膜厚推定部30cにより算出された推定膜厚Deに基づいて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することで、予測膜厚範囲を精度高く算出することができる。
膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deと推定膜厚誤差ΔDeとに基づいて、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することで、推定膜厚Deが薄いと膜厚推定時の推定膜厚誤差ΔDeが小さくなり、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの予測精度が高くなるという利点がある。
【0033】
なお、上述した最小磨耗速度Vsmin、最大磨耗速度Vsmaxは、それぞれ感光体膜厚が摩耗しうる最小、最大の速度を示す。最小磨耗速度Vsminと最大磨耗速度Vsmaxは、ともに画像形成装置1の機種に固有の値として決定されものであり、影響する因子は主に下記のものがある。
(1)クリーニングブレードの圧力
(2)現像ニップ(現像ローラと感光体)の押圧力
(3)環境(低温環境だとクリーニングブレードが硬くなるため摩耗し易い)
【0034】
<予測膜厚範囲>
図9は、感光体膜厚を推定する際の予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの概要を示す図である。
一般に、感光体6の膜厚は初期状態で±10%の許容範囲が与えられており、+10%の初期膜厚を初期最大膜厚Dsmaxといい、-10%の初期膜厚を初期最小膜厚Dsminといい、それらが縦軸上の感光体の算出膜厚Dcのとりうる初期値となる。さらに縦軸上の下方に、異常が発生する膜厚の限界値を表す最小膜厚閾値Drefがある。
符号48は、最も膜厚が厚い場合の推移を表す線分である。すなわち、初期最大膜厚Dsmaxから最小摩耗速度Vsminで感光体6が削れた場合の推移を表す線分である。
一方、符号49は、最も膜厚が薄い場合の推移を表す線分である。すなわち、初期最小膜厚Dsminから最大摩耗速度Vsmaxで感光体6が削れた場合の推移を表す線分である。
図9に示す予測膜厚範囲51は、上述した膜厚範囲上限値Dmax~膜厚範囲下限値Dminの範囲として予測できる。この予測膜厚範囲51は、推定膜厚Deによって変動する。
本実施形態では、予測膜厚範囲51の膜厚範囲上限値Dmaxを超えた算出膜厚Dcの一例として、図9に示すように算出膜厚Dcu1~Dcu4があった場合、それらを全て無視する。
一方、予測膜厚範囲51の膜厚範囲下限値Dminを下回った算出膜厚Dcの一例として、図9に示すように算出膜厚Dcd1~Dcd3が3回連続して続いた場合、3回目の算出膜厚Dcd3を有効とする。
上述した計算式(2)(3)から、図8に示す理論に起因して、推定膜厚Deが薄くなるほど推定膜厚誤差ΔDeが小さくなり、予測される予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなる。
このため、図9に示すように、感光体6の膜厚が摩耗していって推定膜厚Deが薄くなる状態(感光体走行距離Lが長い状態)であるほど、精度良く膜厚を推定することが可能になる。
【0035】
図9は、感光体6の推定膜厚Deに対して行う異常判定処理の概要を示しており、縦軸が感光体6の算出膜厚Dc、横軸が感光体6の走行距離Lを示している。
図9に示すように、推定膜厚Deの結果から得られる予測膜厚範囲51は、感光体走行距離Lが長くなり推定膜厚Deが小さくなるほど、その感光体走行距離Lでの予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなる。すなわち、符号51で示す第1範囲から第2範囲52に移行して予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなる。この結果、現時点の走行距離における予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを精度良く算出することができる。
膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚Deの値が小さいほど、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなるように算出することで、推定膜厚Deが薄いと膜厚推定時の推定膜厚誤差ΔDeが小さくなり、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの予測精度が高くなるという利点がある。
【0036】
<異常判定処理>
次に、図9を参照して、予測膜厚範囲51外の算出膜厚Dcが算出された場合の異常判定処理について説明する。
算出膜厚Dcが膜厚範囲上限値Dmaxを越えた結果が算出された場合、算出膜厚Dcを無効とする。この際、想定より膜厚が厚い結果になるため、実際の膜厚の状態より有利な(削れていない)状態であると判断してしまう。
算出膜厚Dcの結果で感光体6の寿命を判断する場合には、算出膜厚Dcを無効として扱うことで、有利な判断がなされるというリスクを回避する。
【0037】
逆に、算出膜厚Dcが膜厚範囲下限値Dminを下回った場合、最初は算出膜厚Dcを無効として扱う。
ただし、膜厚範囲下限値Dminの下限割れ状態が真の状態だとすると、早期に判断して制御処理にフィードバックしない場合、異常画像が発生してしまうという問題がある。
そこで、範囲外の結果が出た場合は再度の膜厚検出を早期に実行し、範囲外の算出膜厚の真偽を早急に判断する。
範囲外回数計数部30dが範囲外回数を計数しておき、一定回数(例えば、3回)以上連続して算出膜厚Dcが下限割れ状態となった場合に、実際に膜厚が薄い状態になっていると判断して、下限割れの算出膜厚Dcを有効とする。
【0038】
このとき、下限割れと判断する以前の算出膜厚Dcが残っていると、推定膜厚Deを推定するための傾きmが緩くなり有利側に判定してしまうという問題があるので、有効となった下限割れの算出膜厚Dcを除き、過去に算出された算出膜厚Dcは破棄するべきである。
また、上限越え状態、下限割れ状態によらず、範囲外回数計数部30d1により範囲外と判断された回数が規定の回数以上に連続した場合に、膜厚推定処理自体の信頼性が疑われるため、それ以降の推定膜厚Deの結果を制御に反映させないことで、上述した問題を回避することができる。
【0039】
<メイン処理>
図10は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1のメイン処理を示すフローチャートである。
ステップS5では、制御部30は、待機状態にある。
ステップS10では、制御部30は、膜厚算出実行判断を開始する。
ステップS15では、制御部30は、膜厚算出実行条件を満足するか否かを判断する。ここで、膜厚算出実行条件を満足する場合(S15、Yes)はステップS20に進む。一方、膜厚算出実行条件を満足しない場合(S15、NO)はステップS5に戻る。
ステップS20では、制御部30は、膜厚算出動作を実行する。すなわち、制御部30は、感光体6へ印加すべき電圧値を示す電圧指令値を電圧印加部24に出力する。電圧印加部24は、電圧指令値に対応した印加電圧になるように調整して、帯電ローラ12を介して感光体6に電圧を印加する。
ステップS25では、膜厚算出部30aは、帯電バイアスと帯電電流の関係から、感光体膜厚Dcを算出する。
ステップS30では、算出膜厚保存部30bは、上記算出された算出膜厚Dc、および走行距離情報Lを保存する。
ステップS35では、制御部30は、異常判定処理のサブルーチン(図11)をコールする。
【0040】
<異常判定処理>
図11は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1の異常判定部30c1による異常判定処理を示すサブルーチンのフローチャートである。
上述したように、異常判定部30c1は、前回の推定膜厚Deの結果に基づいて、算出膜厚Dcが予測される予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに入っているかどうかを判断して、算出膜厚Dcが有効か無効を決定している。
ステップS110では、膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30bから取得した算出膜厚Dcに基づいて、現時点における推定膜厚Deを推定する。この際、膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30bから取得した複数の時点での算出膜厚Dcに基づいて、最小二乗法に従って現時点における推定膜厚Deを推定する。
ステップS115では、膜厚範囲予測部30dは、式(2)に基づいて、膜厚範囲上限値Dmaxを算出し、式(3)に基づいて、膜厚範囲下限値Dminを算出する。
【0041】
ステップS120では、異常判定部30c1は、最新の算出膜厚Dcが、以下の範囲(Dmin~Dmax)内に入っているか否かを判定する。
Dmin≦(最新のDc)≦Dmax 式(4)
異常判定部30c1は、次回の膜厚を推定する際に、予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax内に推定膜厚Deが入るか否かを判定することにより推定膜厚Deが有効か無効かを判定することで、推定膜厚Deの有効/無効を判定して推定膜厚Deの精度を高めることで、さらに次の膜厚推定の精度も高めることができる。
【0042】
最新の算出膜厚Dcが、上記式(4)の範囲内に入っている場合には、ステップS123に進み、初期化処理として、範囲外連続回数カウンタKの値を0にする(K=0)。
次に、ステップS125に進み、最新の算出膜厚Dcを有効として判定し、メインルーチンに復帰する。
最新の算出膜厚Dcが、上記式(4)の範囲内に入っていない場合には、ステップS128に進み、範囲外回数計数部30d1は、範囲外回数のカウンタKをインクリメント(K=K+1)する。
次に、ステップS130に進み、異常判定部30c1は、範囲外回数のカウンタKが一定回数以上である場合に、連続して算出膜厚Dcが、
Dmin>(最新のDc) 式(5)
となっているか否かを判定する。
【0043】
最新の算出膜厚Dcが、上記式(5)の条件を満たす場合には、ステップS135に進み、異常判定部30c1は、最新の算出膜厚Dcを有効として判定し、メインルーチンに復帰する。
異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚Deが薄膜側で範囲外となった場合の範囲外回数を計数する範囲外回数計数部30d1を備え、異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数のカウンタKが一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった推定膜厚Deを有効として判定する。
【0044】
異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった推定膜厚Deを有効とすることで、薄膜側の推定膜厚Dが続いた場合に、感光体6の膜厚が削れている傾向性があることと判定して、有効とすることで安全側の制御をすることができる。
異常判定部30c1は、推定膜厚Deが有効となった場合に、推定膜厚保存部30iに保存している直近の1回以上前の推定膜厚Deを破棄することで、過去の推定膜厚Deに影響されて算出される推定膜厚が厚い側で認識されることを防ぐことができる。
異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚を画像形成に係る制御に用いないことで、無効な推定膜厚を用いて異常状態が発生するという不具合を回避することができる。
【0045】
最新の算出膜厚Dcが、上記式(5)の条件を満たさない場合には、ステップS140に進み、異常判定部30c1は、算出膜厚Dcを無効として判定し、メインルーチンに復帰する。
異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、推定膜厚Deが厚膜側で範囲外となった場合に、推定膜厚Deを無効として判定する。
異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、推定膜厚Deが厚膜側で範囲外となった場合に、推定膜厚Deを無効とすることで、実際は寿命時期に到達しているのに、まだ寿命に到達していないと判断して、異常画像を発生させるという不具合を防ぐことができる。
異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数未満で連続して計数されている場合に、再度、膜厚推定部30cに膜厚推定処理を実行させることで、推定膜厚Deの異常の真偽を早期に判断することができる。
【0046】
<第1実施形態の効果>
従来技術と異なり、算出膜厚Dcが正常であるか異常であるかを判別するために、過去の膜厚推定時の推定膜厚Deおよび感光体走行距離Lを記憶しておき、推定膜厚Deの値に対して、推定膜厚誤差ΔDeの幅が推定膜厚Deの関数で規定できる推定膜厚誤差ΔDeの上下限幅、および膜厚の磨耗速度の上下限を考慮することで、以降の膜厚値のとり得る範囲を算出することができる。
この予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxは、前回の推定膜厚Deによって変動し、膜厚が薄くなるほど範囲が狭くなり精度良く膜厚を算出することができるので、膜厚検出の結果の異常有無を判断し、精度の高い推定膜厚Deを算出することができる。
【0047】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ノイズ環境や湿度温度環境によってI-V特性の傾き-算出膜厚Dcの相関が変化するため、図8においては環境による影響も考慮して感光体の膜厚に関するばらつきの幅を決めている。
これに対して、第2実施形態では、温度湿度検知部11により現在の雰囲気温湿度を検知しておき、傾きm-算出膜厚Dcの相関式を補正することで、ばらつきの幅を抑制することを特徴とする。
算出膜厚Dcのばらつきと同様の理論で、推定膜厚誤差算出部30fは、図9を参照して求めた推定膜厚Deに対して、推定膜厚誤差ΔDeが推定膜厚Deに基づいて規定できる。
例えば、式(11)のような1次関数により規定すると、推定膜厚誤差ΔDe、係数α、推定膜厚De、切片βは機種固有の実測データに基づいて決定できる。
ΔDe=α×De+β 式(11)
【0048】
感光体の使用率を計算する際に、膜厚のとりうる範囲の下限値(膜厚範囲下限値Dmin)を、下記の式(12)によって算出することができる。
膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deから推定膜厚誤差ΔDeを減算した値から、最大磨耗速度Vsmaxに前回の膜厚推定時からの走行距離(Ln-Le)を乗算した値を減算して膜厚範囲下限値Dminを算出する。
Dmin=De-ΔDe-Vsmax×(Ln-Le) 式(12)
最大磨耗速度Vsmaxは、感光体の膜厚が摩耗しうる最大の速度を示す。最大磨耗速度Vsmaxは、機種に固有の値として決まるものであり、影響する因子は主に下記のものがある。
(1)クリーニングブレードの圧力
(2)現像ニップ(現像ローラと感光体)の押圧力
(3)環境(低温環境だとクリーニングブレードが硬くなるため摩耗し易い)
【0049】
<使用率計算処理の概要>
図12は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1に採用される使用率計算処理の概要を示す図である。
第2本実施形態では、感光体の使用率Urを計算する際に、異常なデータを用いて早期に感光体の寿命が終了したことと判定することを回避するために、図12に示すように、膜厚範囲下限値Dminを用いて使用率算出処理を行う。
図12では、横軸が感光体の寿命判断時に使用率Urを計算する際の感光体の走行距離L示しており、縦軸が感光体の推定膜厚Deを示している。
ところで、従来、初期の感光体の膜厚から想定される最大磨耗速度Vsmaxで感光体6が削れた場合の推定最小膜厚Dmin_cal(符号49)に基づいて、使用率Ur(%)を計算していた。
ここで、推定最小膜厚Dmin_calは、式(13)に示すように、初期膜厚Dsから、最大磨耗速度Vsmaxに感光体の走行距離Lを乗算した値を減算して算出する。
Dmin_cal=Ds-Vsmax×L 式(13)
【0050】
第2実施形態では、前回の膜厚推定時の推定膜厚Deに基づいて膜厚範囲下限値Dminを算出しておき、この膜厚範囲下限値Dminに基づいて使用率Urを計算することで、膜厚推定の度により精度の高い使用率Urを算出することを特徴とする。
膜厚範囲下限値Dminは、図12において符号62で示す。
この最大磨耗膜厚Dsmaxと膜厚範囲下限値Dminを比較して、Dmin<Dmin_calとなる範囲64では、推定最小膜厚Dmin_calに基づいて、使用率Urを算出する。
一方、Dmin>Dmin_calとなる範囲65では、膜厚範囲下限値Dminに基づいて、使用率Urを算出する。
このように、推定最小膜厚Dmin_calと膜厚範囲下限値Dminのうち値の大きい方を使用率Urの計算に用いることで、使用率Urと感光体の寿命判断の精度をより向上することができる。この理由は、実際の感光体6の膜厚が最大摩耗膜厚よりも小さくならことに起因している。
ノイズの影響によって、膜厚範囲下限値Dmin(符号62)が異常な値となっていることが考えられるため、この場合、膜厚範囲下限値Dminを感光体6の使用率計算に用いない。
また、推定膜厚誤差ΔDeは、上述した式(12)により、感光体6が摩耗するに従って、推定膜厚誤差ΔDeの精度を向上することができる。
なお、図12に示す符号63は、使用率Urの計算に用いる膜厚値である。
これに伴い、感光体6の走行距離Lが長く、膜厚が薄い方が、膜厚推定の精度を向上することができる。このため、第2実施形態では、感光体の走行距離Lがある閾値を超えてから感光体の膜厚推定や使用率Urの計算を実施することで、より精度を向上することができる。
【0051】
<使用率算出処理>
図13は、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1による使用率算出処理を示すフローチャートである。
ステップS210では、比較部30kは、感光体6の走行距離Lが閾値Lrefよりも大きいか否かを判定する。
感光体6の走行距離Lが閾値Lrefよりも大きい場合には、ステップS215に進み、膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚Deに基づいて、膜厚範囲下限値Dminを算出する。
すなわち、膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deから推定膜厚誤差ΔDeを減算した値から、最大磨耗速度Vsmaxに前回の膜厚推定時からの走行距離(Ln-Le)を乗算した値を減算して膜厚範囲下限値Dminを算出する。
Dmin=De-ΔDe-Vsmax×(Ln-Le) 式(14)
【0052】
なお、推定膜厚誤差ΔDeは、前回の推定膜厚Deから今回の推定膜厚Deを減算して計算する。
膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚Deに基づく推定膜厚誤差ΔDeを用いて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することで、感光体6の膜厚が減少するに従って推定膜厚誤差ΔDeが低下するため、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの予測の精度を向上することができる。
【0053】
ステップS220では、比較部30kは、膜厚範囲下限値Dminが最大摩耗膜厚よりも大きいか否かを判定する。
膜厚範囲下限値Dminが推定最小膜厚Dmin_calよりも大きい場合(範囲64)には、ステップS225に進み、使用率計算部30gは、膜厚範囲下限値Dminを用いて使用率Urを算出する。
すなわち、使用率計算部30gは、膜厚範囲予測部30dにより予測された膜厚範囲下限値Dmin(式(14))に基づいて、感光体6の使用率Urを計算する。初期膜厚Ds、異常画像を出さないために必要な膜厚Drefとして、初期膜厚からの削れ量Ds-Dminと削れ許容量Ds-Drefとの比率から使用率Urが計算できる。
Ur=(Ds-Dmin)÷(Ds-Dref)×100 式(15)
使用率計算部30gは、予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算することで、使用率計算の精度を向上することができる。
使用率計算部30gは、走行距離算出部30hにより算出された感光体6の走行距離Lが一定の閾値を超えた後に、予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算することで、感光体6の使用率の予測の精度を向上することができる。
【0054】
一方、感光体6の走行距離Lが閾値Lrefよりも大きくない場合(S210、No)、又は膜厚範囲下限値Dminが推定最小膜厚Dmin_calよりも大きくない場合(範囲65)には、ステップS230に進み、使用率計算部30gは、推定最小膜厚Dmin_cal(式(13))を用いて感光体6の使用率Urを算出する。
Ur=(Ds-Dmin_cal)÷(Ds-Dref)×100 式(16)
使用率計算部30gは、予測膜厚範囲下限値Dmin、又は推定最小膜厚Dmin_calの大きい方の値に基づいて感光体6の使用率を計算するが、すでにプロセスカートリッジのID情報等に記録されている使用率情報と比較して、計算された使用率Urが下回る場合、使用率が減少してユーザが混乱しないよう、すでにID情報等に記録されている使用率情報のまま更新しないこととする。
【0055】
<第2実施形態の効果>
従来技術と異なり、算出膜厚Dcが正常であるのか異常であるのか判別するために、過去の膜厚推定時の推定膜厚De及び感光体走行距離Lを記憶しておき、感光体走行距離Lに対する膜厚値の傾きαおよび切片βを算出する。これらの算出結果に基づいて、感光体走行距離Lから想定される推定膜厚Deを推定することができる。
感光体6の寿命を判断する際に、直近の推定膜厚Deと、推定膜厚Deに基づく推定膜厚誤差ΔDeに基づいて膜厚の取りうる範囲の下限値である膜厚範囲下限値Dminを算出する。
この下限値を用いて使用率Urを計算して、寿命を判断する。この膜厚範囲下限値Dminは前回の推定膜厚Deに基づいており、感光体の走行距離Lが増えて膜厚が薄くなるほど精度のよい使用率Urの算出が可能となるので、推定膜厚Deに基づいて膜厚の取りうる範囲を考慮することで、精度の高い感光体の使用率Urを算出することができる。
【0056】
<第3実施形態>
<制御部>
図14は、本発明の第3実施形態に係る画像形成装置の主要部の構成を示す機能ブロック図である。なお、図14に示す符号のうち、図3に示す符号と同一のものについては同様の構成であるので、その説明を省略する。
第3実施形態では、使用可能残日数算出部30p、推定膜厚・日時情報保存部30p1、差分値判定部30p2、経過日数判定部30p3、を備えることを特徴とする。
【0057】
使用可能残日数算出部30pは、膜厚範囲の下限値に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数を算出する。
使用可能残日数算出部30pは、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数を算出する。
使用可能残日数算出部30pは、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数を算出する。
使用可能残日数算出部30pは、差分値判定部30p2が、ある時点から現時点までの推定膜厚の差分値が一定閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数を算出する。
使用可能残日数算出部30pは、経過日数判定部30p3が、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上となったと判定した場合に、感光体、乃び現像部の使用可能残日数を算出する。
【0058】
推定膜厚・日時情報保存部30p1は、走行距離算出部30hにより算出された感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報を保存する。
差分値判定部30p2は、ある時点から現時点までの推定膜厚の差分値が一定の閾値以上であるか否かを判定する。
経過日数判定部30p3は、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0059】
<使用可能残日数算出処理の概要>
使用可能残日数算出部30pは、前述した推定膜厚Deや使用率Urに基づいて、現像部7の使用可能残日数を算出する。使用可能残日数算出部30pが、使用可能残日数を算出することで、ユーザやサービスマンが新しい現像部7を準備するまでのおおよその期間を把握しやすくなる。
使用可能残日数算出部30pは、式(17)に基づいて、100[%]から使用率Ur[%]を減算した値から、使用率Ur[%]を除算し、その値を交換年月日からの使用日数Duを除算して使用可能残日数Dlを算出する。
Dl=(100-Ur[%])÷(Ur[%]÷Du) 式(17)
【0060】
ここで、使用可能残日数算出部30pは、式(18)に基づいて、初期膜厚Dsから現時点の推定膜厚Deを減算した値を、初期膜厚Dsから閾値Drefを減算した値で除算し、さらにその値に100を乗算して使用率Ur[%]を算出する。
Ur[%]=(Ds-De)÷(Ds-Dref)×100 式(18)
【0061】
さらに、使用可能残日数算出部30pは、式(19)に基づいて、現時点の推定膜厚Deから閾値Derefを減算した値を、初期膜厚Dsから現時点の推定膜厚Deを減算した値で除算し、さらにその値を感光体6の交換年月日からの使用日数Duで除算して、使用可能残日数を算出する。
Dl=(De-Deref)÷((Ds-De)÷Du) 式(19)
となる。
一般的には、下記のように感光体6の走行距離Lや印刷枚数Npに基づいて、使用可能残日数Dlを算出する。
【0062】
使用可能残日数算出部30pは、式(20)に基づいて、寿命規定走行距離Ldから現時点の感光体の走行距離Lを減算した値を算出し、その算出値を、現時点の感光体6の走行距離Lを交換年月日からの使用日数Duで除算した値で除算して、使用可能残日数Dlを算出する。
Dl=(Ld-L)÷(L÷Du) 式(20)
【0063】
または、使用可能残日数算出部30pは、式(21)に基づいて、寿命枚数Nlから現時点の印刷枚数Npを減算した値を算出し、その算出値を、現時点の印刷枚数Npを交換年月日からの使用日数Duで除算した値で除算して、使用可能残日数Dlを算出する。
Dl=(Nl-Np)÷(Np÷Du) 式(21)
寿命により規定される走行距離Ldや枚数Nは感光体膜厚Dに対して余裕度のある値に設定されるため、実際にはさらに長く感光体6(現像部7)を使用することができる。
前述した推定膜厚Deに基づいて使用率Urを算出し、その使用率Urに基づいて使用可能残日数Dlを計算することで使用可能残日数Dlが膜厚と関連付けできる。それにより使用可能残日数Dlの精度を高くすることが可能となる。
【0064】
<感光体の走行距離と膜厚>
図15は、感光体の走行距離Lと膜厚Dの関係を示すグラフ図である。
図8及び図15に示すように、感光体の膜厚Dが厚い初期の状態、すなわち、感光体の走行距離が短い状態では、図15に示すように、推定膜厚Deの範囲が広くなっており、推定膜厚Deの精度が低下している。
このため、ある程度、膜が削れて膜厚Dが薄くなった状態を起点に使用可能残日数Dlを算出することで、より使用可能残日数Dlの算出精度を高くすることができる。
使用可能残日数算出部30pは、式(22)に基づいて、現時点の推定膜厚Deから閾値Drefを減算した値を、感光体の走行距離Lが進んだある時点での推定膜厚De(図15中のP3)から現時点の推定膜厚Deを減算した値で除算し、さらにその値を感光体の走行距離Lが進んだある時点からの経過日数Dpで除算して、使用可能残日数Dlを算出する。
Dl=(De-Dref)÷((De-De)÷Dp) 式(22)
使用可能残日数算出部30pが、使用可能残日数Dlを式(22)に従って求めることで、推定膜厚Deの精度が高い状態のデータのみに基づいた使用可能残日数Dlを予測することが可能となる。
【0065】
また、後述する差分値判定部30p2により、推定膜厚差分値ΔDeを判定した結果に起因して、使用可能残日数算出部30pは、式(23)に基づいて、現時点の推定膜厚Deから閾値Drefを減算した値を、推定膜厚Deが所定値以下となった時点での値De1(図15中のP4)から現時点の推定膜厚Deを減算した値で除算し、さらに、その値を推定膜厚Deが所定膜厚Dとなった時点からの経過日数Dpで除算して、使用可能残日数Dlを算出する。
Dl=(De-Dref)÷((De1-De)÷Dp) 式(23)
使用可能残日数算出部30pが、使用可能残日数Dlを式(23)に従って求めることで、推定膜厚Deの精度が高い状態のデータのみに基づいた使用可能残日数Dlを予測することが可能となる。
【0066】
<推定膜厚差分値>
ここで、差分値判定部30p2は、式(24)に基づいて、感光体走行距離Lが進んだある時点での推定膜厚Det1から現時点の推定膜厚Detnを減算した値を推定膜厚差分値ΔDeとして算出する。
ΔDe=(Det1-Detn) 式(24)
そして、差分値判定部30p2は、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0067】
または、差分値判定部30p2は、式(25)に基づいて、所定膜厚Dから現時点の推定膜厚Deを減算した値を推定膜厚差分値ΔDeとして算出する。
ΔDe=(D-De) 式(25)
そして、差分値判定部30p2は、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定の閾値以上であるか否かを判定する。
式(24)または式(25)により算出された推定膜厚差分値ΔDeが、ある程度大きな値であれば、膜削れレート(1日当たりの膜削れ量)の推測に誤差が生じ易いため、推定膜厚Deに基づいて使用可能残日数Dlを算出する時期は、推定膜厚Deがある閾値Derefよりも小さくなった時点から行うことが望ましい。
【0068】
同様の理由で、経過日数判定部30p3は、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上であるか否かを判定する。
感光体走行距離Lが進んだある時点からの経過日数Dp、または、推定膜厚Deが所定膜厚となった時点からの経過日数Dpがある閾値Dprefを超えた時点から使用可能残日数Dlを算出することが望ましい。
【0069】
<第3実施形態の効果>
従来技術と異なり、使用可能残日数算出部30pが、予測膜厚範囲の下限値に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、枚数や走行距離情報から算出するよりも使用可能残日数Dlの予測精度を向上することができる。
膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、膜削れレートの予測精度が向上し、使用可能残日数Dlの予測精度を向上することができる。
膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、膜削れレートの予測精度が向上し、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、測定誤差の影響を受けることなく、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、測定誤差の影響を受けることなく、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
【0070】
<本実施形態の態様例の作用、効果のまとめ>
<第1態様>
本態様の画像形成装置1は、周回する感光体6の周面を帯電させる帯電ローラ12に帯電バイアスを印加する電圧印加部24と、帯電ローラ12から感光体6に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流電圧検知部19と、を備えた画像形成装置であって、帯電ローラ12に印加された帯電バイアスに係る電圧V、及び感光体6に流れる出力電流に係る電流Iに基づいて、感光体6の膜厚を算出する膜厚算出部30aと、帯電中の感光体6の走行距離Lを算出する走行距離算出部30hと、膜厚算出部30aによって算出された算出膜厚Dcに走行距離Lを関連付けして保存する算出膜厚保存部30iと、算出膜厚保存部30iから取得した複数の時点での算出膜厚Dcと走行距離Lに基づいて、現時点における推定膜厚Deを算出する膜厚推定部30cと、膜厚推定部30cにより算出された推定膜厚Deに基づいて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出する膜厚範囲予測部30dと、を備えることを特徴とする。
本態様によれば、推定膜厚Deに基づいて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することで、予測膜厚範囲を精度高く算出することができる。
【0071】
<第2態様>
本態様の膜厚推定部30cは、算出膜厚保存部30iから取得した複数の時点での算出膜厚Dcと走行距離Lに基づいて、最小二乗法に従って現時点の走行距離Lに対応した推定膜厚を算出することを特徴とする。
本態様によれば、複数の時点での算出膜厚Dcと走行距離Lに基づいて、最小二乗法に従って現時点の走行距離Lに対応した推定膜厚Deを算出することで、推定膜厚Deの推定精度を高めることができる。
【0072】
<第3態様>
本態様の膜厚推定部30cは、次回の膜厚を推定する際に、膜厚範囲予測部30dによって予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax内に推定膜厚Deが入るか否かを判定することにより推定膜厚Deが有効か無効かを判定する異常判定部30c1を備えることを特徴とする。
本態様によれば、次回の膜厚を推定する際に、予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax内に推定膜厚Deが入るか否かを判定することにより推定膜厚Deが有効か無効かを判定することで、推定膜厚Deの有効/無効を判定して推定膜厚Deの精度を高めることで、さらに次の膜厚推定の精度も高めることができる。
【0073】
<第4態様>
本態様の画像形成装置は、膜厚推定部30cに用いる帯電バイアス-帯電電流の傾きと感光体6の膜厚との関係を表す膜厚推定情報を保持する膜厚推定情報保持部30eと、膜厚推定情報と推定膜厚Deとに基づいて、膜厚推定情報と推定膜厚Deとの間の推定膜厚誤差ΔDeを算出する推定膜厚誤差算出手段と、を備え、膜厚範囲予測部30dは、推定膜厚Deと推定膜厚誤差ΔDeとに基づいて、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することを特徴とする。
本態様によれば、推定膜厚Deと推定膜厚誤差ΔDeとに基づいて、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出することで、推定膜厚Deが薄いと膜厚推定時の推定膜厚誤差ΔDeが小さくなり、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの予測精度が高くなるという利点がある。
【0074】
<第5態様>
本態様の膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚Deの値が小さいほど、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなるように算出することを特徴とする。
本態様によれば、前回の推定膜厚Deの値が小さいほど、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxが狭くなるように算出することで、推定膜厚Deが薄いと膜厚推定時の推定膜厚誤差ΔDeが小さくなり、予測膜厚範囲Dmin~Dmaxの予測精度が高くなるという利点がある。
【0075】
<第6態様>
本態様の画像形成装置は、現在の温度湿度を検知する温度湿度検知部11と、膜厚推定部30cは、温度湿度検知部11により検知された温度湿度情報に基づいて、推定膜厚Deを補正することを特徴とする。
本態様によれば、温度湿度情報に基づいて、推定膜厚Deを補正することで、推定膜厚Deの予測精度が高くなるという利点がある。
【0076】
<第7態様>
本態様の画像形成装置は、現在の温度湿度を検知する温度湿度検知部11と、膜厚推定部30cは、温度湿度検知部11により検知された温度湿度情報に基づいて、推定膜厚誤差ΔDeを補正することを特徴とする。
本態様によれば、温度湿度情報に基づいて、推定膜厚誤差ΔDeを補正することで、推定膜厚誤差ΔDeの予測精度が高くなるという利点がある。
【0077】
<第8態様>
本態様の異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、推定膜厚Deが厚膜側で範囲外となった場合に、推定膜厚Deを無効とすることを特徴とする。
本態様によれば、推定膜厚Deが厚膜側で範囲外となった場合に、推定膜厚Deを無効とすることで、実際は寿命時期に到達しているのに、まだ寿命に到達していないと判断して、異常画像を発生させるという不具合を防ぐことができる。
【0078】
<第9態様>
本態様の異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚Deが薄膜側で範囲外となった場合の範囲外回数を計数する範囲外回数計数部30d1を備え、異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった推定膜厚Deを有効とすることを特徴とする。
本態様によれば、範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、薄膜側で範囲外となった推定膜厚Deを有効とすることで、薄膜側の推定膜厚Dが続いた場合に、感光体6の膜厚が削れている傾向性があることと判定して、有効とすることで安全側の制御をすることができる。
【0079】
<第10態様>
本態様の異常判定部30c1は、推定膜厚Deが有効となった場合に、推定膜厚保存部30iに保存している直近の1回以上前の推定膜厚Deを破棄することを特徴とする。
本態様によれば、推定膜厚Deが有効となった場合に、推定膜厚保存部30iに保存している直近の1回以上前の推定膜厚Deを破棄することで、過去の推定膜厚Deに影響されて算出される推定膜厚が厚い側で認識されることを防ぐことができる。
【0080】
<第11態様>
本態様の異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚Deが厚膜側であり予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax外となった場合、又は膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚Deが薄膜側であり予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmax外となった場合の範囲外回数を計数する範囲外回数計数部30d1を備え、異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数未満で連続して計数されている場合に、再度、膜厚推定部30cに膜厚推定処理を実行させることを特徴とする。
本態様によれば、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数未満で連続して計数されている場合に、再度、膜厚推定部30cに膜厚推定処理を実行させることで、推定膜厚Deの異常の真偽を早期に判断することができる。
【0081】
<第12態様>
本態様の異常判定部30c1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲Dmin~Dmaxに対して、膜厚推定部30cにより推定された推定膜厚Deが範囲外となった回数を計数する範囲外回数計数部30d1を備え、異常判定部30c1は、範囲外回数計数部30d1により計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚を画像形成に係る制御に用いないことを特徴とする。
本態様によれば、計数された範囲外回数が一定の回数以上に連続して計数された場合に、膜厚推定部30cによって推定された推定膜厚を画像形成に係る制御に用いないことで、無効な推定膜厚を用いて異常状態が発生するという不具合を回避することができる。
【0082】
<第13態様>
本態様の画像形成装置1は、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算する使用率計算部30gを備えることを特徴とする。
本態様によれば、予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算することで、使用率計算の精度を向上することができる。
【0083】
<第14態様>
本態様の画像形成装置1は、感光体6の走行距離Lを算出する走行距離算出部30hと、
膜厚範囲予測部30dによって予測された予測膜厚範囲下限値Dminと、感光体6の走行距離Lに基づいて算出可能な感光体6の膜が最大に摩耗したときの最大摩耗膜厚値とを比較する比較部30kと、を備え、使用率計算部30gは、予測膜厚範囲下限値Dmin、又は最大摩耗膜厚値の大きい方の値に基づいて、感光体6の使用率を計算することを特徴とする。
本態様によれば、予測膜厚範囲下限値Dmin、又は最大摩耗膜厚値の大きい方の値に基づいて、感光体6の使用率を計算することで、すでにプロセスカートリッジのID情報等に記録されている使用率情報と比較して、計算された使用率が下回る場合、使用率が減少してユーザが混乱しないよう、すでにID情報等に記録されている使用率情報のまま更新しないこととする。
【0084】
<第15態様>
本態様の膜厚範囲予測部30dは、前回の推定膜厚Deに基づく推定膜厚誤差ΔDeを用いて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲下限値Dminを算出することを特徴とする。
本態様によれば、前回の推定膜厚Deに基づく推定膜厚誤差ΔDeを用いて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲下限値Dminを算出することで、感光体6の膜厚が減少するに従って推定膜厚誤差ΔDeが低下するため、予測膜厚範囲下限値Dminの予測の精度を向上することができる。
【0085】
<第16態様>
本態様の使用率計算部30gは、走行距離算出部30hにより算出された感光体6の走行距離Lが一定の閾値を超えた後に、膜厚範囲予測部30dにより予測された予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算することを特徴とする。
本態様によれば、走行距離算出部30hにより算出された感光体6の走行距離Lが一定の閾値を超えた後に、予測膜厚範囲下限値Dminに基づいて、感光体6の使用率を計算することで、感光体6の使用率の予測の精度を向上することができる。
【0086】
<第17態様>
本態様の画像形成装置1は、予測膜厚範囲の下限値に基づいて、感光体、乃び現像部の使用可能残日数Dlを算出する使用可能残日数算出部30pを備えることを特徴とする。
本態様によれば、予測膜厚範囲の下限値に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、枚数や走行距離情報から算出するよりも使用可能残日数Dlの予測精度を向上することができる。
【0087】
<第18態様>
本態様の画像形成装置1は、走行距離算出部30hにより算出された感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報を保存する推定膜厚・日時情報保存部30p1を備え、使用可能残日数算出部30pは、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することを特徴とする。
本態様によれば、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した感光体の走行距離がある閾値を超えた時点での推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、膜削れレートの予測精度が向上し、使用可能残日数Dlの予測精度を向上することができる。
【0088】
<第19態様>
本態様の画像形成装置1は、推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報を保存する推定膜厚・日時情報保存部30p1を備え、使用可能残日数算出部30pは、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することを特徴とする。
本態様によれば、膜圧推定部30cにより算出される現時点での推定膜厚、及び日時情報と、推定膜厚・日時情報保存部30p1から取得した推定膜厚がある閾値以下となった時の推定膜厚、及び日時情報に基づいて、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、膜削れレートの予測精度が向上し、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
【0089】
<第20態様>
本態様の画像形成装置1は、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定の閾値以上であるか否かを判定する差分値判定部30p2を備え、使用可能残日数算出部30pは、差分値判定部30p2が、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することを特徴とする。
本態様によれば、ある時点から現時点までの推定膜厚差分値ΔDeが一定閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、測定誤差の影響を受けることなく、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
【0090】
<第21態様>
本態様の画像形成装置1は、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上であるか否かを判定する経過日数判定部30p3を備え、使用可能残日数算出部30pは、経過日数判定部30p3が、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することを特徴とする。
本態様によれば、ある時点から現時点までの経過日数が一定の閾値以上となったと判定した場合に、感光体6、乃び現像部7の使用可能残日数Dlを算出することで、測定誤差の影響を受けることなく、使用可能残日数Dlの算出精度を向上することができる。
【0091】
<第22態様>
本態様の画像形成方法は、周回する感光体6の周面を帯電させる帯電ローラ12に帯電バイアスを印加する電圧印加部24と、帯電ローラ12から感光体6に流れる出力電流を表すフィードバック信号を生成する電流検知部と、を備えた画像形成装置による画像形成方法であって、帯電ローラ12に印加された帯電バイアスに係る電圧値、及び感光体6に流れる出力電流に係る電流値に基づいて、感光体6の膜厚を算出する膜厚算出ステップと、帯電中の感光体6の走行距離Lを算出する走行距離算出ステップと、膜厚算出ステップによって算出された算出膜厚Dcに走行距離Lを関連付けして保存する算出膜厚保存ステップと、算出膜厚保存ステップから取得した複数の時点での算出膜厚Dcと走行距離Lに基づいて、現時点における推定膜厚Deを算出する膜厚推定ステップと、膜厚推定ステップにより算出された推定膜厚Deに基づいて、現時点の走行距離Lに対応した予測膜厚範囲Dmin~Dmaxを算出する膜厚範囲予測ステップと、を実行することを特徴とする。
第22態様の作用、及び効果は第1態様と同様であるので、その説明を省略する。
【0092】
<第23態様>
本態様のプログラムは、第22態様に記載の画像形成方法における各ステップをプロセッサに実行させることを特徴とする。
本態様によれば、各ステップをプロセッサに実行させることができる。
【符号の説明】
【0093】
1…画像形成装置、7…現像部、8…搬送ベルト、9…定着部、10…制御ユニット、10a…A/D変換部、10b…CPU、10c…ROM、10d…RAM、10e…タイマ、11…温度湿度検知部、12…帯電ローラ、13…露光部、14…表示パネル、15…転写ローラ、16…ブレード、16…感光体、17…除電器、18…高圧電源、19…電流電圧検知部、21…モータ駆動部、24…電圧印加部、30…制御部、30a…膜厚算出部、30b…算出膜厚保存部、30c…膜厚推定部、30c1…異常判定部、30d…範囲外回数計数部、30d…膜厚範囲予測部、30d1…範囲外回数計数部、30e…膜厚推定情報保持部、30f…推定膜厚誤差算出部、30g…使用率計算部、30h…走行距離算出部、30i…算出膜厚保存部、30i…推定膜厚保存部、30j…膜厚決定計算部、30k…比較部、30m…使用率表示制御部、30p…使用可能残日数算出部30p、30p1…推定膜厚・日時情報保存部、30p2…差分値判定部、30p3…経過日数判定部、51…予測膜厚範囲、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【文献】特開平5-223513号公報
【文献】特開2009-098279公報
【文献】特開平8-334956号公報
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