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特許7176389湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20221115BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221115BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20221115BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20221115BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20221115BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/42
C08G18/76 057
C08G18/40 009
C09J175/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018231626
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020094101
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070684(JP,A)
【文献】特開2018-104487(JP,A)
【文献】国際公開第2013/061790(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/153907(WO,A1)
【文献】特開2018-177937(JP,A)
【文献】特開平04-246490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 71/00-71/04
C09J 175/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物である結晶性ポリエステルポリオール(a-1)を含むポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の使用割合が、
前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中10~35質量%の範囲であり、
前記ポリオール(a)が、更に、ポリエーテルポリオール(a-2)を含有し、前記ポリエーテルポリオール(a-2)が、ポリオキシプロピレングリコール(PO)とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EOPO)とを質量比[PO/EOPO]で30/70~90/10の範囲で含有し、
前記ポリイソシアネート(b)が、ジイソシアネート(b-1)及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)を含有するものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(a)が、更に、ポリアクリルポリオール(a-3)、及び、前記(a-1)以外の結晶性ポリエステルポリオール(a-4)を含有するものである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)の含有割合が、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中1~10質量%の範囲である請求項1又は2記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項5】
少なくとも2つの物品が、請求項4記載の接着剤により貼り合されたことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、及び、接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基材に化粧シートが貼り合された化粧板は、床材、扉、造作部材、天板等の建築内装材に広く利用されている。前記基材と化粧シートとの貼り合わせには、これまでウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル系接着剤等が使用されている。この中でも、近年では、湿気硬化により優れた最終接着強度を発現する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤の利用が増えつつある。
【0003】
前記化粧板に使用される湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤としては、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーに、特定量のエポキシ基含有シランカップリング剤と(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤とを含有させた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が開示されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
しかしながら、前記接着剤は、耐加水分解性が不十分であり、経年で化粧シートが剥がれてくるとの指摘があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-225635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、接着性及び耐加水分解性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物である結晶性ポリエステルポリオール(a-1)を含むポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の使用割合が、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中10~35質量%の範囲であり、前記ポリイソシアネート(b)が、ジイソシアネート(b-1)及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)を含有するものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記湿気硬化型ホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤、及び、該接着剤により貼り合されたことを特徴とする物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性及び耐加水分解性を有するものである。
【0010】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができ、床材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0012】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)は、ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物であり、接着強度を付与するうえで必須の成分である。また、前記(a-1)の使用割合は、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中10~35質量%の範囲であることが必須である。前記(a-1)の使用量が、10質量%を下回る場合には、接着性が不十分となり、35質量%を超える場合には、耐加水分解性が不良となる。前記(a-1)の使用割合としては、より一層優れた接着性、及び、耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中13~27質量%の範囲であることが好ましく、15~25質量%の範囲がより好ましい。
【0013】
なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0014】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の数平均分子量としては、より一層優れた結晶性、及び接着性が得られる点から、500~10,000の範囲であることが好ましく、700~7,000の範囲がより好ましく、1,500~6,000の範囲が更に好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0015】
前記ポリオール(a)は、前記(a-1)以外にもその他のポリオールを含有するものである。前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール(a-2)、ポリアクリルポリオール(a-3)、前記(a-1)以外の結晶性ポリエステルポリオール(a-4)、結晶性ポリエステルポリオール以外のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた接着性、初期クリープ性、及び加水分解性が得られる点から、ポリエーテルポリオール(a-2)、ポリアクリルポリオール(a-3)、及び、前記(a-1)以外の結晶性ポリエステルポリオール(a-4)を用いることが好ましい。
【0016】
前記ポリエーテルポリオール(a-2)としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール等を用いることができる。これらのポリエーテルポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
これらの中でも、基材への浸透性を高めることで、より一層優れた接着性が得られる点から、ポリオキシプロピレングリコール、及び/又は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを用いることが好ましく、ポリオキシプロピレングリコールとポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとを併用することが好ましい。
【0018】
前記ポリオキシプロピレングリコール(PO)とポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(EOPO)とを併用する場合の質量比[PO/EOPO]としては、より一層優れた接着性が得られる点から、30/70~90/10の範囲であることが好ましく、40/60~80/20の範囲がより好ましく、55/45~70/30の範囲が更に好ましい。
【0019】
前記ポリエーテルポリオール(a-2)の数平均分子量としては、より一層優れた接着性、耐加水分解性が得られる点から、500~100,000の範囲であることが好ましく、550~10,000の範囲がより好ましく、600~5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオール(a-2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0020】
前記ポリエーテルポリオール(a-2)を用いる場合の含有量としては、より一層優れた接着性と耐加水分解性のバランスが得られる点から、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中10~45質量%の範囲であることが好ましく、20~40質量%の範囲がより好ましい。
【0021】
前記ポリアクリルポリオール(a-3)としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を必須として含有する(メタ)アクリル化合物の重合物を用いることができる。
【0022】
なお、本発明において、「(メタ)アクリル化合物」とは、メタクリル化合物及び/又はアクリル化合物を示し、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及び/又はアクリレートを示し、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸及び/又はアクリル酸を示す。
【0023】
前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する(メタ)アクリル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シジクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリル化合物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル基を有する(メタ)アクリル化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-メチル-[1,3]-ジオキソラン-4-イル-メチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの(メタ)アクリル化合物は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記(メタ)アクリル化合物としては、前記したものの中でも、オープンタイム及び接着強度をより一層向上できる点から、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上の(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。
【0026】
前記ポリアクリルポリオール(a-3)の数平均分子量としては、オープンタイム及び接着強度をより一層向上できる点から、5,000~50,000の範囲であることが好ましく、10,000~30,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリアクリルポリオール(a-2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0027】
前記ポリアクリルポリオール(a-3)のガラス転移温度としては、オープンタイム及び接着強度をより一層向上できる点から、30~120℃の範囲であることが好ましく、50~80℃の範囲がより好ましい。なお、前記ポリアクリルポリオール(a-2)のガラス転移温度は、JISK7121-1987に準拠し、DSC(示差走査熱量計)により測定した値を示し、具体的には、示差走査型熱量計装置内に前記ポリアクリルポリオール(a-2)を入れ、(ガラス転移温度+50℃)まで昇温速度10℃/分で昇温した後、3分間保持し、その後急冷し、得られた示差熱曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を示す。
【0028】
前記アクリルポリオール(a-3)を用いる場合の使用割合としては、オープンタイム及び接着強度をより一層向上できる点から、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中5~25質量%の範囲であることが好ましく、10~20質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)としては、前記(a-1)以外のものであり、例えば、水酸基を有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。
【0030】
前記水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、接着性及び耐加水分解性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びデカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0031】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、これらの中でも結晶性を高め、接着性及び耐加水分解性をより一層向上できる点から、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0032】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)としては、前記したもの以外にも、ポリカプロラクトンポリオールを用いてもよい。
【0033】
前記ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、前述の水酸基を有する化合物とε-カプロラクトンとの反応物を用いることができる。
【0034】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)の数平均分子量としては、結晶性、接着強度及び耐加水分解性をより一層向上できる点から、500~10,000の範囲であることが好ましく、1,000~8,000の範囲がより好ましく、1,500~7,000の範囲が更に好ましい。また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)として前記カプロラクトンポリオールを用いる場合には、その数平均分子量としては、結晶性、接着強度及び耐加水分解性をより一層向上できる点から、20,000~200,000の範囲が好ましく、30,000~100,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0035】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a-4)を用いる場合の使用割合としては、結晶性、接着強度及び耐加水分解性をより一層向上できる点から、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中中5~25質量%の範囲であることが好ましく、7~18質量%の範囲がより好ましい。
【0036】
前記ポリイソシアネート(b)としては、優れた接着性、及び耐加水分解性が得られる点から、ジイソシアネート(b-1)及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)を含有することが必須である。
【0037】
前記ジイソシアネート(b-1)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネート等のジイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でもより一層優れた反応性及び接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0038】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)としては、具体的には下記式(2)で示されるものであり、好ましくは式(2)中、nが1~5の整数を示すものである。
(式(2)中、nは1以上の整数である。)
【0039】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)の使用割合としては、より一層優れた初期接着性、最終接着性、及び、耐加水分解性が得られる点から、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の合計質量中1~10質量%の範囲であることが好ましく、1.5~8質量%の範囲がより好ましく、2~5質量%の範囲が更に好ましい。
【0040】
前記ジイソシアネート(b-1)と前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(b-2)との質量比[(b-1)/(b-2)]としては、より一層優れた初期接着性、最終接着性、及び、耐加水分解性が得られる点から、前記20/1~2/1の範囲であることが好ましく、15/1~5/1の範囲がより好ましい。
【0041】
前記ポリイソシアネート(b)としては、前記(b-1)、及び(b-2)以外にも必要に応じてその他のポリイソシアネートを併用してもよい。前記その他のポリイソシアネートとしては、例えば、前記(b-1)のイソシアヌレート化合物;アダクト化合物;ビュレット化合物;アロファネート化合物等を用いることができる。これらのイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記(b-1)及び(b-2)の使用割合としては、前記ポリイソシアネート(b)中50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0042】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0043】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)の入った反応容器に、前記ポリオール(a)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(b)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0044】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリオール(a)が有する水酸基及び前記ポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)として、未反応のポリイソシアネートを減らし、高温下での高い凝集力を付与できる点から、1.5~5の範囲であることが好ましく、1.8~3の範囲がより好ましい。
【0045】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、高温下での接着性をより一層向上できる点から、1~10質量%の範囲であることが好ましく、2~5質量%の範囲がより好ましく、2.5~4.5質量%の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0046】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は前記ウレタンプレポリマーを含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0047】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、光安定剤、充填材、染料、顔料、消泡剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0048】
次に、物品について説明する。
【0049】
前記物品は、少なくとも2つの物品が、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤により貼り合されたものである。
【0050】
前記貼り合される物品としては、例えば、板状の木材、集成材、合板、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材;硬質セメント珪酸カルシウム板等の無機質基材;樹脂シート;ガラス;ゴム;プラスチック成形品;化粧紙、不織布、織布、突板;畳表などを用いることができる。
【0051】
前記接着剤層としては、十分な接着性が得られればよく適宜決定できるが、例えば、0.03~0.15mmの範囲が挙げられる。
【0052】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性及び耐加水分解性を有するものである。
【0053】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせ用接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板は、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができ、床材として特に好適に使用することができる。
【実施例
【0054】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0055】
[実施例1]
攪拌機、温度計、不活性ガス導入口及び還流冷却管を備えた4ツ口フラスコに、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;1,000、以下「PPG1000」と略記する。)12質量部、ポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PPG2000」と略記する。)10質量部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(数平均分子量;4,000、以下「EOPO」と略記する。)7質量部、ポリアクリルポリオール(メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートの反応物、数平均分子量;20,000、以下「Acpoly」と略記する。)15質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000、以下「結晶性PEs-1」と略記する。)25質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びドデカン二酸の反応物、数平均分子量;3,500、以下「結晶性PEs-2」と略記する。)10質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、反応容器内の温度を60℃に冷却後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)18質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、以下「ポリメリックMDI」と略記する。)3質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。なお、得られたウレタンプレポリマー製造時のNCO/OH=2.4、ウレタンプレポリマーのNCO%は4.1質量%であった。
【0056】
[実施例2~4、比較例1~3]
各種ポリオールの使用量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。
【0057】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した値を示す。
【0058】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0059】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0060】
[接着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で1時間溶融した後、ポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを使用して塗工した。この上に、MDFを貼り合わせ、圧着ローラーで圧着し、23℃、湿度50%の条件下で5日間放置し、エージングを行った。その後、23℃、湿度50%の雰囲気下で、25mm幅に対し、200mm/minの速度で180ド方向に剥がした際の剥離力の平均値を測定し、以下のように評価した。
「○」:25N/25mm以上
「×」:25N/25mm未満
【0061】
[加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で1時間溶融した後、ポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを使用して塗工した。この上に、MDFを貼り合わせ、圧着ローラーで圧着し、23℃、湿度50%の条件下で5日間放置し、エージングを行った。その後、85℃、湿度85%の雰囲気下で、25mm幅に対し、70gの荷重を90℃方向に与えたまま荷重が落下するまでの日数を測定し、以下のように評価した。
「○」:25日以上
「×」:25日未満
【0062】
【表1】
【0063】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた接着性及び耐加水分解性を有することが分かった。
【0064】
一方、比較例1は、結晶性ポリエステルポリオール(a-1)の使用量が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、接着性が不良であった。
【0065】
比較例2は、結晶性ポリエステルポリオール(a-2)の使用量が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、耐加水分解性が不良であった。
【0066】
比較例3は、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(b-2)を用いない態様であるが、耐加水分解性が不良であった。