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特許7176442連続鋳造用ベルト製造装置および連続鋳造用ベルト製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】連続鋳造用ベルト製造装置および連続鋳造用ベルト製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20221115BHJP
   B21D 53/14 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
B22D11/06 340
B22D11/06 360G
B21D53/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019043039
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020142297
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智行
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-286251(JP,A)
【文献】特開昭60-009555(JP,A)
【文献】特開平11-114669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/06
B21D 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属板からなる金属部材をせん断して形成されるベルト材を用いて連続鋳造用ベルトを製造する装置であって、
前記ベルト材の一方の端部に形成されている突出部の突出方向と同じ方向へ突出する突出部を前記ベルト材の他方の端部に形成するように前記金属部材をせん断するせん断部と、
前記ベルト材の両端部のそれぞれに形成された前記突出部の突出方向が同じ方向となるように前記両端部を突き合せた状態で、前記ベルト材の端部同士を溶接する溶接部と、
を備え
前記せん断部は、前記ベルト材の一方の端部に第一突出部を形成する第一せん断部と、前記ベルト材の他方の端部に前記第一突出部と同じ方向へ突出する第二突出部を形成する第二せん断部と、を備えている、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項2】
請求項に記載の連続鋳造用ベルト製造装置であって、
前記第一せん断部と前記第二せん断部とは、前記金属部材の搬送方向に対して垂直な方向に対向して配置され、前記金属部材を挟むようにして前記金属部材をせん断する一対のせん断上部とせん断下部とを、それぞれを有し、
前記第一せん断部における前記一対のせん断上部及びせん断下部の相対的な配置関係と、前記第二せん断部における前記一対のせん断上部及びせん断下部の相対的な配置関係とは、前記ベルト材の板状平面と垂直な面に対して対称である、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の連続鋳造用ベルト製造装置であって、
前記第一せん断部と前記第二せん断部とは、前記金属部材のせん断を同時に行う、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項4】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の連続鋳造用ベルト製造装置であって、
前記第一せん断部と前記第二せん断部とは、それぞれ前記金属部材の短手方向に対して所定角度で交差する前記第一せん断面と前記第二せん断面とを形成する、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項5】
請求項から請求項までのいずれか1項に記載の連続鋳造用ベルト製造装置であって、
前記第一せん断部と前記第二せん断部とは、前記金属部材の搬送方向に対して所定間隔だけ離れた位置に配置される、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項6】
請求項に記載の連続鋳造用ベルト製造装置であって、
前記所定間隔は、前記ベルト材の長さ以下である、連続鋳造用ベルト製造装置。
【請求項7】
帯状の金属板からなる金属部材をせん断して形成されるベルト材を形成する工程であって、前記ベルト材の一方の端部に形成されている突出部の突出方向と同じ方向へ突出する突出部を前記ベルト材の他方の端部に形成するように前記金属部材をせん断するせん断工程と、
前記ベルト材の両端部のそれぞれに形成された前記突出部の突出方向が同じ方向となるように前記両端部を突き合せた状態で、前記ベルト材の端部同士を溶接する溶接工程と、
を有し、
前記せん断工程では、前記ベルト材の一方の端部に第一せん断部によって第一突出部が形成され、前記ベルト材の他方の端部に第二せん断部によって前記第一突出部と同じ方向へ突出する第二突出部が形成される、連続鋳造用ベルト製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、連続鋳造機用ベルトの製造に用いて好適な連続鋳造用ベルト製造装置および連続鋳造用ベルト製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造用ベルトは、所定の大きさに切断された金属板の切断端部同士を溶接することにより製造される。
特許文献1に記載のように金属板の切断は、一対のせん断部材を用いたせん断により行われる。一対のせん断部材の一方および他方は、金属板を間に挟むとともに、金属板の板面に沿う方向に隣接して配置される。一対のせん断部材の一方および他方が切断のために接近すると、少なくとも金属板側の端部が重なり合う。一対のせん断部材の間に配置された金属板は、一対のせん断部材の接近により加えられるせん断力により切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-286251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のように、せん断部材により金属板をせん断すると、せん断部材の噛み合わせの向きに応じて塑性変形した部分、いわゆるバリが生じる。このバリは、切断面に沿って延びると共に金属板の板面から突出する形状を有している。さらに、せん断部材により切断された一方の切断面のバリと、他方の切断面のバリとは、板面から突出する方向が反対となっている。
【0005】
帯状の金属板の両端部は、金属板を移動させながらせん断部材により切断されている。そのため、一方の端部におけるバリと、他方の端部におけるバリとは、突出する方向が反対になる。金属板の一方の端部および他方の端部を突き合わせて溶接することにより連続鋳造用ベルトが形成される。このとき、一方の端部および他方の端部におけるバリの突出方向が反対であるため、溶接部分の強度が低下するという問題があった。
【0006】
これに対してバリを除去して溶接すると、強度の低下が抑制されることが知られている。
しかしながら、このような強度低下の抑制方法では、バリを除去する工程が増えるという問題があった。
【0007】
本開示の1つの局面は、工数の増加を抑制し、溶接部分の強度が低下することを抑制した連続鋳造用ベルト製造装置と連続鋳造用ベルト製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、帯状の金属板からなる金属部材をせん断して形成されるベルト材を用いて連続鋳造用ベルトを製造する装置であって、前記ベルト材の一方の端部に形成されている突出部の突出方向と同じ方向へ突出する突出部を前記ベルト材の他方の端部に形成するように前記金属部材をせん断するせん断部と、前記ベルト材の両端部のそれぞれに形成された前記突出部の突出方向が同じ方向となるように前記両端部を突き合せた状態で、前記ベルト材の端部同士を溶接する溶接部と、を備えている、連続鋳造用ベルト製造装置である。
【0009】
このような構成によれば、バリである突出部を除去する工数を増加させることなく、溶接部分の強度低下を抑制することができる。具体的には、せん断部により形成される突出部は、ベルト材の板状平面に対して同一の交差する方向へ突出する。ベルト材の一方のせん断面、および、他方のせん断面を突き合わせて環状とした場合においても、突出部はベルト材の板状平面に対して同一の方向に突出する。溶接部は、このような状態で突き合わされた一方のせん断面、および、他方のせん断面を溶接してつなげる。この溶接部分は、特許文献1におけるバリの除去を行っている場合と比較して溶接部分の強度が大きく低下することがない。言い換えると、バリである突出部を除去するための工数を増加させることなく、溶接部分の強度が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】荒引線製造装置の例を示す図である。
図2図1においてII―II面、すなわち、連続鋳造用ベルト製造装置において溝部と連続鋳造用ベルトとの間に形成される空間を表した断面図である。
図3】連続鋳造用ベルト製造装置の構成を表したブロック図である。
図4】せん断部を表した斜視図である。
図5】せん断部を上側からみた図である。
図6】せん断部を側面からみた図である。
図7図7は、せん断される金属部材と第一せん断部と第二せん断部との配置を表した図であり、図7(A)は、上側からみた図である。図7(B)は、第一せん断部によりせん断された金属部材の搬送部による搬送を表した図である。図7(C)は第一せん断部および第二せん断部によるせん断を表した図である。
図8】第一せん断部のせん断面付近を表した図である。
図9図9(A)は、連続鋳造用ベルト製造装置において製造されたベルト材の端部を横から見た図である。図9(B)は、連続鋳造用ベルト製造装置において製造され、両端部を突き合わせて環状としたベルト材を表した図である。
図10図10(A)は、従来の連続鋳造用ベルト製造装置において製造されたベルト材の端部を横から見た図である。図10(B)は、従来の連続鋳造用ベルト製造装置において製造され、両端部を突き合わせて環状としたベルト材を表した図である。
図11図11(A)は、変形例における連続鋳造用ベルト製造装置において、金属部材の表裏を反転させる機構を表した図である。図11(B)は、変形例における連続鋳造用ベルト製造装置において、第一せん断部および第二せん断部22の上下を反転させる機構を表した図である
図12】変形例において、第一せん断下部および第二せん断下部を一体化したせん断下部を含む連続鋳造用ベルト製造装置を表した図である。
図13】変形例における連続鋳造用ベルト製造装置を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
本実施形態の連続鋳造用ベルト製造装置1は、以下に説明する荒引線製造装置1000に用いられる連続鋳造用ベルト300を製造するものである。まず、図1および図2を参照しながら連続鋳造用ベルト300が用いられる荒引線製造装置1000について説明する。その後、連続鋳造用ベルト300を製造する連続鋳造用ベルト製造装置1について説明する。
【0012】
荒引線製造装置1000は、銅または銅を成分に含む合金を材料とする荒引線を製造するものである。荒引線製造装置1000には、溶銅が一時的に貯留されるタンディシュ400と、溶銅を線状に形成するために用いられるホイール510と、が主に設けられている。
【0013】
荒引線製造装置1000において、荒引線の製造は次のように行われる。図1に示すように、タンディッシュ400からホイール510へ荒引線の原料となる溶銅が供給される。具体的には、タンディッシュ400に設けられた注湯ノズル410から溶銅が流出する。流出した溶銅は、図1および図2に示すように、ホイール510に設けられた溝部510aに注入される。溝部510aの開口は、溶銅が注入された後に連続鋳造用ベルト300により塞がれる。ここで、ホイール510の溝部510aと連続鋳造用ベルト300との間に形成される空間は、図1のII-II面での断面図である図2のように表される。ホイール510は図1に示すように中心軸線まわりに回転している。また連続鋳造用ベルト300も、ホイール510の回転に伴い移動している。言い換えると、連続鋳造用ベルト300は、ホイール510の外周面の一部と接触しながら周回移動している。溝部510aと連続鋳造用ベルト300との間に形成される空間に注入された溶銅は冷却水により冷却される。冷却水は、ホイール510の外周側から溝部510aおよび連続鋳造用ベルト300に向けて供給されている。冷却された溶銅が固体化すると、ホイール510と連続鋳造用ベルト300とが離れ、溝部510aから固体化した溶銅(以下、「鋳造材」とも表記する。)が取出される。このようにして、連続して延びる棒状の鋳造材が鋳造される。鋳造された鋳造材は、連続圧延装置600により圧延され圧延材となる。ついで、この圧延材には、その表面を酸化還元する等の表面清浄化処理が施されたあと、巻取装置700に巻き取られることにより、荒引線が得られる。
【0014】
[1.構成]
本実施形態の連続鋳造用ベルト製造装置1は、帯状に連続して延びる金属材からなる金属部材100を、金属部材100の長手方向に沿って所定の長さに切断(以下、「せん断」とも表記する。)するものである。所定の長さは、環状に形成された連続鋳造用ベルト300の周方向の長さ(以下、「周長」とも表記する。)である。連続鋳造用ベルト300の周長は、上述の荒引線製造装置1000の仕様に応じて定められる。連続鋳造用ベルト製造装置1は、図3に示すように、搬送部10、せん断部20、溶接部25および制御部30を備える。
【0015】
搬送部10は、図4図8に示すせん断前の金属部材100や、図9図10等に示すせん断後の金属材料であるベルト材200を、搬送方向Dに沿って搬送するものである。言い換えると、搬送部10は、せん断前の帯状に連続して延びる金属部材100をせん断部20に搬入し、せん断部20にて所定の長さにせん断された後のベルト材200をせん断部20から搬出するものである。本実施形態では、搬送部10は、連続鋳造用ベルト製造装置1が配置される床面と略平行となるように配置されたベルトコンベアなどの搬送路11を有するものである例に適用して説明する。以下では、搬送方向Dに対して垂直な向きを上下方向とする。また、搬送方向Dに沿って金属部材100が流れてくる向きを上流側、流れていく向きを下流側ともいう。本実施形態では、搬送部10が、金属部材100を搬送するベルトコンベアである例に適用して説明するが、金属部材100を搬送できるものであれば他の公知の構成を搬送部10として用いてもよい。
【0016】
せん断部20は、図3図4および図5に示すように、搬送部10により搬送された金属部材100を切断するものである。せん断部20の詳細については後述する。そして、せん断部20によりせん断された金属部材100をベルト材200ともいう。また、ベルト材200は、金属部材100の長手方向と交差する向きに切断されることにより形成される横断面、言い換えると、金属部材100が切断されることにより形成されるベルト材200の板状平面は、四角形状となるように形成される。
【0017】
溶接部25は、せん断部20によりせん断されたベルト材200の端部同士を突き合わせて溶接する。ここで、溶接部25は、ベルト材200が全体として円筒状、言い換えれば、短手方向に沿って見た場合に環状となるように曲げた上で、ベルト材200の端部同士を突き合わせ、突き合わせた端部を溶接する。
【0018】
制御部30は、せん断部20による金属部材100のせん断を制御するものである。
制御部30は、CPU31と、RAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ(以下、メモリ32)と、を有する周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。制御部30の各種機能は、CPU31が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、メモリ32がプログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムが実行されることで、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部30を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0019】
<せん断部20>
せん断部20は、図4および図5に示すように、上流側に配置された第一せん断部21と下流側に配置された第二せん断部22とを有する。
【0020】
第一せん断部21は、上側かつ上流側に配置される第一せん断上部21aと、下側かつ下流側に配置される第一せん断下部21bとを有する。具体的には、第一せん断上部21aは、第一せん断下部21bよりも上側かつ上流側に配置され、第一せん断下部21bは、第一せん断上部21aよりも下側かつ下流側に配置されている。第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとの間には、搬送部10により金属部材100が搬入および搬出される。第一せん断上部21aおよび第一せん断部21の互いに対向する面における金属部材100と対向する端部の近傍領域(言い換えると金属部材100のせん断に用いられる部分)には、図6に示すように、それぞれ金属部材100よりも硬度の高い材料から形成された切断刃211a,211bが設けられる。
【0021】
図4および図5に示すように、金属部材100の平面上において、第一せん断部21の第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとによりせん断される方向、言い換えると、上側からみて、第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとにより切断される切断面に沿った方向をせん断方向とすると、当該せん断方向と金属部材100の短手方向Lとは、あらかじめ決められた角度であるせん断角度Aをなすように配置される。金属部材100の短手方向Lは、金属部材100の長手方向、言い換えると搬送方向Dに対して直交する方向である。
【0022】
第二せん断部22は、上側かつ下流側に配置される第二せん断上部22aと、下側かつ上流側に配置される第二せん断下部22bとを有する。言い換えると、第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとの相対的な配置関係と、第二せん断部22が備える第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとの相対的な配置関係は、金属部材100の切断面に対して対称となる。具体的には、第一せん断部21と比較すると、上側に配置される第二せん断上部22aが第二せん断下部22bよりも下流側に配置され、下側に配置される第二せん断下部22bが第二せん断上部22aよりも上流側に配置される点が第一せん断部21と異なっている。第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとの間に金属部材100が搬入および搬出される点、第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとに切断刃211a,211bが設けられる点は、第一せん断部21と同様である。
【0023】
金属部材100の平面上において、第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとによりせん断される方向、言い換えると、上側からみて、第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとにより切断される切断面に沿った方向をせん断方向とすると、当該せん断方向と金属部材100の短手方向Lとは、あらかじめ決められた角度であるせん断角度Aをなすように配置される点も第一せん断部21と同様である。
[2.作用]
<ベルト材200および連続鋳造用ベルト300の形成について>
図7(A)に示すように、これからせん断される金属部材100は、第一せん断部21よりも上流側に配置されている。具体的には、金属部材100の下流側の端部が第一せん断部21と隣接している。言い換えると、金属部材100と第一せん断部21との相対的な位置関係が直近のせん断が行われた後の状態となっている。金属部材100は、図7(B)に示すように、搬送部10により下流側に向かって搬送される。金属部材100が搬送される距離は、第二せん断部22によりせん断される位置から連続鋳造用ベルト300の周長である所定の長さである。その後、図7(C)に示すように、搬送された金属部材100は、第一せん断部21および第二せん断部22により切断される。第二せん断部22により切り離された部材がベルト材200である。ベルト材200は、横断面が四角形状に形成される。ベルト材200は、両端を突き合わせて溶接されることにより連続鋳造用ベルト300となる部材である。本実施形態では、第一せん断部21および第二せん断部22の間で切り離された部材は、連続鋳造用ベルト300の製造には用いられない。
【0024】
ここで、第一せん断部21におけるせん断について説明する。第一せん断部21におけるせん断は、図8に示すように、第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとが相対的に接近して行われる。搬送される金属部材100に切断刃211aおよび切断刃211bが上下から押し付けられ、金属部材100に加えられるせん断力により切断が行われる。なお、第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとは、互いに接近してもよいし、第一せん断上部21a第一せん断下部21bの一方が固定され、他方が一方に接近してもよい。第二せん断部22におけるせん断も第一せん断部21におけるせん断と同様に行われる。具体的には、第二せん断部22におけるせん断は、第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとが相対的に接近して行われる。搬送される金属部材100に切断刃221aおよび切断刃221bが上下から押し付けられ、金属部材100に加えられるせん断力により切断が行われる。
【0025】
ベルト材200のせん断面は、第一せん断部21および第二せん断部22の噛み合わせの向きに応じて塑性変形した部分が生じる。この塑性変形した部分がいわゆるバリ(突出部)である。このバリは第一せん断部21および第二せん断部22の噛み合わせの向きに応じた向きに生じる。具体的には、ベルト部材200における上流側に対応する端部のせん断面には、第二せん断部22の第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとの噛み合わせの向きに応じたバリ(第二突出部)が形成される。下流側に対応する端部のせん断面には、第一せん断部21の第一せん断上部21aと第一せん断下部21bとの噛み合わせの向きに応じたバリ(第一突出部)が形成される。すなわち、図6に示すように、第一せん断部21における第一せん断上部21a及び第一せん断下部21bの噛み合わせの向きと第二せん断部22における第二せん断上部22a及び第二せん断下部22bの噛み合わせの向きとが反対となるため、図9(A)に示すように、ベルト材200の両端部に形成されたバリ(第一突出部及び第二突出部)の突出する向きが板状平面に対して同一方向を向く(すなわち、ベルト材200の一方の端部に形成されている第一突出部が突出する方向とベルト材200の他方の端部に形成されている第二突出部が突出する方向とがベルト材200の同じ面に対して同じ方向となる)ように形成される。ベルト材200の両端部を突き合わせて環状とした場合にも、図9(B)に示すように、ベルト材200の両端部に形成されたバリ(第一突出部及び第二突出部)が突出する向き(突出方向)はベルト材200の同じ面に対して同じ方向となる。図9(B)では両端部のバリが環状の外側に突出している例を示している。
【0026】
第一せん断部21と第二せん断部22とによるせん断は、制御部30により同時に行われるように制御される。すなわち、第一せん断上部21aおよび第一せん断下部21bが相対的に接近するタイミングと、第二せん断上部22aと第二せん断下部22bとが相対的に接近するタイミングは、同時になるように制御される。
【0027】
上記せん断により形成されたベルト材200を図9(B)に示すように環状とし、ベルト材200の両端部に形成されたバリの突出する向きが同じ方向になるように両端部を突き合わせた状態で両端部を溶接することにより、連続鋳造用ベルト300が形成される。
【0028】
[3.効果]
(1)上記実施形態によれば、バリである突出部を除去するための工数を増加させることなく、溶接部分の強度が低下することを抑制することができる。すなわち、例えば、同じせん断部により金属部材100aの上流側および下流側の端部のせん断が行われる場合、図10(A)に示すように、金属部材100aをせん断することにより生成されるベルト材200aの上流側および下流側の端部のバリの向きが互いに反対方向に突出する。図10(B)に示すように、このベルト材200aの両端部を突き合わせて環状とした場合、突き合わせた端部におけるバリが反対方向に突出する。バリが反対方向に突出した状態でベルト材200aの両端部を溶接した場合、溶接した部分の強度の低下の原因となっていた。また、当該強度低下を防ぐため、両端のバリを削るなどの工程が必要となり、工数の増大を招いていた。
【0029】
上記実施形態に記載の連続鋳造用ベルト製造装置1により形成されたベルト材200においては、第一せん断部21および第二せん断部22の噛み合わせの向きが反対になるため、図9(A)に示すように、バリが突出する向きが板状平面に対して同一方向を向くように形成される。その結果、バリを落とす工程を必要とすることなく、また、溶接した部分の強度の低下を抑制することができる。
【0030】
(2)上記実施形態では、第一せん断部21と第二せん断部22とは、金属部材100のせん断を同時に行う。
このような構成によれば、第一せん断部21と第二せん断部22におけるせん断のタイミングが異なる場合と比較して金属部材100のせん断に要する時間を短縮しやすい。また、先に行うせん断から後に行うせん断までの期間がないため、当該期間の間、金属部材100を保持する必要をなくすことができる。
【0031】
(3)上記実施形態では、第一せん断部21および第二せん断部22によるせん断のせん断方向と金属部材100の短手方向Lとは、あらかじめ決められた角度であるせん断角度Aをなすように配置される。すなわち、第一せん断部21と第二せん断部22とは、それぞれ金属板の短手方向Lに対して予め決められた所定の角度で交差する第一せん断面と第二せん断面とを形成する。
【0032】
このような構成によれば、第一せん断面と第二せん断面とが、それぞれ金属板の短手方向Lに対して予め決められた所定の角度で交差する。そのため、第一せん断面および第二せん断面が短手方向Lと沿った方向に形成される場合に比べ、溶接する辺を長くしやすい。また、溶接された辺が環状に曲折する際に応力が集中する領域(例えば、ベルト材の短手方向Lに延びる帯状の領域)に対して所定の角度を持たせることができる。このため、他と比較して強度が低い溶接された辺と応力が集中する領域とが一致することを防ぎやすく、曲折に対する強度を向上させることができる。
【0033】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0034】
(1)上記実施形態では、せん断部20は、第一せん断部21と第二せん断部22との二対のせん断部を有する例に適用して説明したが、せん断部20は、第一せん断部21および第二せん断部22の一方のみを有していてもよい。この場合、ベルト材200における上流側の端部に形成されるバリと、下流側の端部に形成されるバリとの向きが同方向となる機構が設けられる。例えば、設けられる機構によって、図11(A)に示すように、金属部材100の表裏を反転させてもよいし、図11(B)に示すように、用いられるせん断部20の上下を反転させてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、第一せん断部21の第一せん断下部21bと第二せん断部22の第二せん断下部22bとは別々に構成された例に適用して説明したが、図12に示すように、第一せん断下部21bおよび第二せん断下部22bを一体化したせん断下部23としてもよい。
【0036】
さらに、第一せん断部21と第二せん断部22との搬送方向の間隔は、ベルト材200の長さ以下とする。なお、図7(C)に示すように、第一せん断部21と第二せん断部22との間の金属部材100がロスとして廃棄される場合は、第一せん断部21と第二せん断部22との間隔を短くする(例えば、金属部材100の短手方向の長さ以下とする)ことにより、ベルト材200を形成するための金属部材100のロス(廃棄部分)を低減させることができる。
【0037】
また、第一せん断部21と第二せん断部22との間隔が例えばベルト材200の長さと同じだけ離れていてもよい。この場合、第一せん断部21と第二せん断部22との間においてせん断された金属部材100もベルト材200として使用できる。さらに、搬送方向はあらかじめ決められた方向に設定されるが、直線方向に進んでいなくてもよい。例えば、図13に示すように、搬送される金属部材100が曲面を形成するように搬送されてもよい。搬送方向が金属部材100の板厚方向に曲がり、金属部材100をU字状に曲げて搬送すると、直線方向に搬送する場合に比べて、連続鋳造用ベルト製造装置1の小型化をすることができる。具体的には、上面視における連続鋳造用ベルト製造装置1の設置面積を狭くすることができる。
【0038】
(2)また、第一せん断部21および第二せん断部22は同時にせん断を行うが、同時にせん断を行うものに限られるものではない。例えば、それぞれ別のタイミングで動作してもよい。
【0039】
(3)本開示に記載の制御部30およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部30およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部30およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部30に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0040】
(4)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0041】
(5)上述した連続鋳造用ベルト製造装置1の他、当該連続鋳造用ベルト製造装置1を構成要素とするシステム、当該連続鋳造用ベルト製造装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、連続鋳造用ベルト製造方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1…連続鋳造用ベルト製造装置、10…搬送部、20,21,22…せん断部、21a,22a…せん断上部、21b,22b,23…せん断下部、30…制御部、31…CPU、32…メモリ、100,100a…金属部材、200,200a…ベルト材、200…ベルト部材、211a,211b,221a,221b…切断刃、300…連続鋳造用ベルト、400…タンディシュ、400…タンディッシュ、410…注湯ノズル、510…ホイール、510a…溝部、600…連続圧延装置、1000…荒引線製造装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13