(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの欠陥検査方法及びシリコンウェーハの欠陥検査システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20221115BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
H01L21/66 N
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2019236549
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 直之
(72)【発明者】
【氏名】常森 丈弘
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019780(JP,A)
【文献】特開平09-061365(JP,A)
【文献】特開2010-251542(JP,A)
【文献】特表2019-521368(JP,A)
【文献】特開2006-017630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からシリコンウェーハの表面に光を照射する、光照射工程と、
光検出器により、前記表面で反射した光を検出する、光検出工程と、を含み、
シリコンウェーハの側面視において、シリコンウェーハの表面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°であることを特徴とする、シリコンウェーハの欠陥検査方法。
【請求項2】
シリコンウェーハの表面に光を照射可能な光源と、
前記表面で反射した光を検出する光検出器と、を備え、
シリコンウェーハの側面に対応する側面視において、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°であることを特徴とする、シリコンウェーハの欠陥検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの欠陥検査方法及びシリコンウェーハの欠陥検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハに発生するスリップ転位を検査することが行われている。スリップ転位は、転位の移動によって顕在するシリコン原子レベルの浅い段差であり、結晶方位に従った方向に長さを有することが特徴である。
【0003】
例えば、特許文献1では、レーザ光を用いたシリコンウェーハの欠陥検査方法が開示されている。この方法は、レーザ光源から、シリコンウェーハの表面にレーザ光を照射し、反射光をフォトダイオードで検出することにより、シリコンウェーハの表面に形成された欠陥を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、スリップ転位が主に発生するシリコンウェーハの外周部においてレーザ光の散乱が強くなるなど、十分な検出感度が得られないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することのできる、シリコンウェーハの欠陥検査方法及びシリコンウェーハの欠陥検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のシリコンウェーハの欠陥検査方法は、
光源からシリコンウェーハの表面に光を照射する、光照射工程と、
光検出器により、前記表面で反射した光を検出する、光検出工程と、を含み、
シリコンウェーハの側面視において、シリコンウェーハの表面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°であることを特徴とする。
ここで、「検出光軸」とは、光検出器の検出面の法線方向となる軸線をいう。
【0008】
本発明のシリコンウェーハの欠陥検査システムは、
シリコンウェーハの表面に光を照射可能な光源と、
前記表面で反射した光を検出する光検出器と、を備え、
シリコンウェーハの側面に対応する側面視において、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して前記光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することのできる、シリコンウェーハの欠陥検査方法及びシリコンウェーハの欠陥検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査方法に用いることのできる光学系の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0012】
<シリコンウェーハの欠陥検査方法>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査方法について説明する。
図1は、本実施形態の方法に用いることのできる光学系の一例を示す側面図である。
図1は、シリコンウェーハWを側面から見た図を示している。
【0013】
図1に示すように、この光学系は、欠陥検査の対象物であるシリコンウェーハWと、シリコンウェーハWの表面に光を照射する光源1と、該表面で反射した光を検出する光検出器2と、を備えている。
【0014】
光源1は、シリコンウェーハWの表面の欠陥の検査に用いられる任意の既知のものとすることができる。光源1は、疑似平行光を照射することのできるスポット型ライトガイドとすることが好ましいが、他にも例えば蛍光灯等の集光灯とすることもでき、また、レーザ光源とすることもできる。
【0015】
光検出器2は、シリコンウェーハWの表面から反射された光を検出することにより、シリコンウェーハWの表面の欠陥を検出することのできる任意の既知のものとすることができる。光検出器2は、高分解能レンズ(特には限定されないが、例えばテンセントリックレンズであり、例えば倍率を0.5~1.5倍とし、焦点深度を50~80mmとすることができる)を有する高解像度エリアカメラ(特には限定されないが、例えば、解像度を1.0~3.0MPixelとし、フレームレートを50~200fpsとすることができる)とすることが好ましい。
【0016】
ここで、
図1の側面視(シリコンウェーハWの側面視)において、シリコンウェーハWの表面に対して入射光の光軸がなす角度θ1(
図1に示すように、「90°-(入射角)」である)は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハWの表面に対して光検出器2の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°である。
以下、本発明を完成するに至った経緯について説明する。
【0017】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、シリコンウェーハの表面に形成されたスリップ転位を高感度に検出することのできる光学系について鋭意検討を重ねた。本発明者らは、シリコンウェーハへの光の入射角と等しい反射角の位置が最も集光しやすく、この角度上に光検出器を設置するという従前の技術常識にとらわれずに、入射角や光検出器の位置を検討したところ、上記角度θ1が所定の狭い範囲である場合は、シリコンウェーハへの光の入射角と等しい反射角の位置からあえてずらした、所定の狭い角度範囲に光検出器を設置することで、シリコンウェーハの表面に形成されたスリップ転位を高感度に検出し得ることを突き止めた。
以下、その実験の詳細について説明する。
【0018】
表面欠陥の検査対象として、径300mm、p型、結晶方位(100)のシリコンウェーハを用意した。光源として、疑似平行光を照射することのできるスポット型ライトガイドを用意し、光検出器として、高分解能レンズを有する高解像度エリアカメラを用意した。
シリコンウェーハの外周領域(シリコンウェーハの端縁から径方向内側に6mmまでの領域)について、上記光源及び光検出器の位置を上記角度θ1、θ2を変更しながら、表面欠陥の検査を行った。検査は、結晶方位の方向を基準(0°)として45°までの範囲について行った。
以下の表1に評価結果を示す。なお、表1において、評価「A」は光量が十分良好であり、評価「B」は光量が良好であり、評価「C」は光量が不足又は多過であることを示している。評価「A」及び「B」であれば、光量が良好であることにより、シリコンウェーハの表面に発生したスリップ転位を高感度で検出することができる。
【0019】
【0020】
表1に示すように、シリコンウェーハの表面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対して光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°である場合に、評価結果がA又はBとなり、良好となることが判明した。
これは、結晶軸に従う光学的散乱強度の低い対象物の検出においては、明視野の中心に近い範囲では反射光の強度が強いためコントラストの確認が困難であるが、暗視野との境界に近い範囲においては、反射光の強度が弱まるためコントラストが明確になり、欠陥の確認が容易となるためと考えられる。
【0021】
特に、角度θ1は、67°で、θ1-θ2は、-3°又は3°である場合、角度θ1は、70~73°であり、且つ、θ1-θ2は、-4°又は4°である場合、角度θ1は74°であり、且つ、θ1-θ2は-4°、-3°又は4°である場合、角度θ1は75°であり、且つ、θ1-θ2は-3°又は3°である場合、及び、角度θ1は、78°で、θ1-θ2は、-4°又は3°、4°である場合に、評価結果がAとなり、特に良好となることが判明した。
【0022】
以上の知見を踏まえ、本実施形態のシリコンウェーハの欠陥検査方法は、光源からシリコンウェーハの表面に光を照射する、光照射工程と、光検出器により、該表面で反射した光を検出する、光検出工程と、を含み、シリコンウェーハの側面視において、シリコンウェーハの表面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対して光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°である。
特に、角度θ1は、67°で、θ1-θ2は、-3°又は3°であること、角度θ1は、70~73°であり、且つ、θ1-θ2は、-4°又は4°であること、角度θ1は74°であり、且つ、θ1-θ2は-4°、-3°又は4°であること、角度θ1は75°であり、且つ、θ1-θ2は-3°又は3°であること、角度θ1は、78°であり、且つ、θ1-θ2は、-4°又は3°、4°であることが好ましい。
【0023】
<シリコンウェーハの欠陥検査システム>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの欠陥検査システムは、シリコンウェーハの表面に光を照射可能な光源と、該表面で反射した光を検出する光検出器と、を備え、シリコンウェーハの側面視において、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して入射光の光軸がなす角度θ1は、67~78°であり、且つ、シリコンウェーハの表面に対応する仮想平面に対して光検出器の検出光軸がなす角度をθ2とするとき、θ1-θ2は、-6~-1°又は1~6°である。
光源及び光検出器については、シリコンウェーハの欠陥検査方法について説明したのと同様であるため、説明を省略する。
特に、角度θ1は、67°で、θ1-θ2は、-3°又は3°であること、角度θ1は、70~73°であり、且つ、θ1-θ2は、-4°又は4°であること、角度θ1は74°であり、且つ、θ1-θ2は-4°、-3°又は4°であること、角度θ1は75°であり、且つ、θ1-θ2は-3°又は3°であること、角度θ1は、78°であり、且つ、θ1-θ2は、-4°又は3°、4°であることが好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1:光源
2:光検出器
W:シリコンウェーハ