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特許7176574コーティング剤、コーティング膜及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】コーティング剤、コーティング膜及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20221115BHJP
   C08F 299/08 20060101ALI20221115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221115BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C09D183/04
C08F299/08
B32B27/00 101
C08G77/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020561505
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2019049800
(87)【国際公開番号】W WO2020130072
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2018238333
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】岡 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 泰廣
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/086958(WO,A1)
【文献】特開2013-249395(JP,A)
【文献】特開2018-083762(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106569388(CN,A)
【文献】特開2003-165955(JP,A)
【文献】特開2013-249400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,C08G,C08F,B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造(A)と、下記式(3)で表される構造(B)と、ウレタンまたはウレア結合のうちのいずれかまたは両方を有するシラン縮合物を含有することを特徴とする、コーティング剤。
【化1】
・・・(1)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(2)で表される基を示し、X~Xの少なくともつが式(2)で表される基である。
【化2】
・・・(2)
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、
は炭素数1~10のアルキレン基であって、n1は1~3の整数を示す。*は結合手を表す。))
【化3】
・・・(3)
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n2は1~3の整数を示し、n3は1~3の整数を示す。式中、Si原子に結合している酸素原子は、前記式()における、Si原子に結合している酸素原子と共有していても構わない。また、*は結合手を表す。
【請求項2】
前記Yが下記式(4)で表される構造である、請求項1に記載のコーティング剤。
【化4】
・・・(4)
(式中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、
Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n3は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す。)
【請求項3】
さらに、前記シラン縮合物が下記式(5)で表される構造(C)を含有するものである、請求項1または2に記載のコーティング剤。
【化5】
・・・(5)
【請求項4】
式(6)で表される化合物(A1)と、式(8)で表される化合物(B1)とを含有し、化合物(B1)がウレタンまたはウレア結合の少なくとも1つを有することを特徴とする組成物の縮合物を含有するコーティング剤。
【化6】
・・・(6)
(式中、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(7)で表される基を示し、X~Xの少なくともつが式(7)で表される基である。
【化7】
・・・・(7)
(式中、Yは炭素数1~10のアルキレン基であって、R10は炭素数1~15のアルキル基を示し、R11は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示し、n4は1~3の整数を示す。))
【化8】
・・・(8)
(式中、R12、R13は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示し、R14は水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n5は1~3の整数を示し、n6は1~3の整数を示す。)
【請求項5】
前記Yが下記式(9)で表される構造である、請求項4に記載のコーティング剤。
【化9】
・・・(9)
(式中、R15~R19はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、
Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n7は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す。)
【請求項6】
さらに、アルコキシシランを含有する組成物である、請求項4または5に記載のコーティング剤。
【請求項7】
ハードコート用である、請求項1~6のいずれかに記載のコーティング剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のコーティング剤を硬化してなるコーティング膜。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング膜を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するシラン縮合物を含有するコーティング剤、及び該コーティング剤を硬化してなるコーティング膜とを提供する。また、該コーティング膜を含有する積層体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス代替として、透明樹脂材料を使用することが増えている。特にポリカーボネート樹脂等は、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れることから、広く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂等は、ガラスに比べて、耐擦傷性および耐候性等に劣ることから、その表面を保護するハードコート材が提案されている。
【0003】
一般的に、耐摩耗性を向上させる手段として、ハードコート層には高い硬度が必要であり、オルガノシロキサン組成物を用いたコーティング材が多く提案されている。しかし、硬度を高くすると、得られる膜は脆く、更に樹脂基材との付着性低下と樹脂基材との環境寸法変化挙動差が大きくなりクラックが発生しやすいという課題がある。そこで、脆さと付着性の改善を目的に、アクリレート化合物やウレタン化合物を配合する手法が提案されているが、耐摩耗性が低下する欠点があり、特に視認性が求められる自動車窓向けハードコート付樹脂基板(樹脂グレージング)のようなガラス同等の耐摩耗性と付着性および耐候性を満足するには不十分である。これを改善するため、樹脂基材とハードコート層の間に、両層と付着性が良好なプライマー層を設け、ハードコート層では耐摩耗性と耐候性、プライマー層では耐候性と付着性という機能を分けた手法が提案されている。
【0004】
例えば、ポリカーボネート基材の表面にアクリル樹脂熱硬化膜、オルガノシロキサン系樹脂の熱硬化膜、有機ケイ素化合物を原料としたプラズマ誘起の化学気相成長法(CVD法)によりケイ素酸化膜を堆積した構成が提案されている。しかし、この積層体は、耐候性ならびに耐摩耗性が向上するものの、ケイ素酸化膜を堆積する真空チャンバー等のドライプロセス工程を必要とするためプロセスコストが高く、汎用的な普及への負荷が大きいと言える。また、熱硬化シリコーン樹脂を塗布・硬化する方法も提案されている。この方法は、ウェットプロセスで成膜可能なため、プロセスコストは低いが、硬化に高温かつ長時間を要するため生産性に乏しく、また、耐摩耗性も十分満足できるものではない。
上記課題を解決するために、ウェットプロセスで成膜可能であり、紫外線硬化により短時間での生産を可能にする有機樹脂基板の表面を保護するコーティング剤が特許文献3にて提案されているが、本発明者が検討をしたところ、耐磨耗性、耐湿熱性、耐冷熱性、耐候性を満足しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平3-45094号公報
【文献】特許第4462421号公報
【文献】特開2018-104618
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐摩耗性と耐候性、及び耐冷熱性に優れ、かつ耐湿熱性にも優れたコーティング膜を製造可能なコーティング剤を提供することにある。また、該コーティング膜を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するシラン縮合物を含有するコーティング剤、及び該コーティング剤を硬化してなるコーティング膜とを提供することで、上記課題が解決可能なことを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、
下記式(1)で表される構造(A)と、下記式(3)で表される構造(B)と、ウレタンまたはウレア結合のうちのいずれかまたは両方を有するシラン縮合物を含有することを特徴とする、コーティング剤を提供するものである。
【0009】
【化1】
・・・(1)
【0010】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(2)で表される基を示し、X~Xの少なくとも一つが式(2)で表される基である。
【0011】
【化2】
・・・(2)
【0012】
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n1は1~3の整数を示す。))
【0013】
【化3】
・・・(3)
【0014】
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n2は1~3の整数を示し、n3は1~3の整数を示す。(式中、Si原子に結合している酸素原子は、前記式(1)における、Si原子に結合している酸素原子と共有していても構わない。)
【0015】
また本発明は、前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(4)で表される構造であるコーティング剤を提供するものである。
【0016】
【化4】
・・・(4)
【0017】
(式中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、
Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n3は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す)
【0018】
また本発明は、前記シラン縮合物が下記式(5)で表される構造(C)を含有するものである、前記コーティング剤を提供するものである。
【0019】
【化5】
・・・(5)
【0020】
また、本発明は、式(6)で表される化合物(A1)と、式(8)で表される化合物(B1)とを含有し、化合物(A1)及び化合物(B1)の少なくとも1つがウレタンまたはウレア結合の少なくとも1つを有することを特徴とする組成物の縮合物を含有するコーティング剤を提供する。
【0021】
【化6】
・・・(6)
【0022】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(6)で表される基を示し、X~Xの少なくとも一つが式(7)で表される基である。
【0023】
【化7】
・・・・(7)
【0024】
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、式中、R10は炭素数1~15の有機基を示し、R11は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示す。n4は1~3の整数を示す。
【0025】
【化8】
・・・(8)
【0026】
(式中、R12、R13は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示し、R14は水素原子またはメチル基を示し、
は炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n5は1~3の整数を示し、n6は1~3の整数を示す。)
【0027】
また本発明は、前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(8)で表される構造であることを特徴とする、コーティング剤である。
【0028】
【化9】
・・・(9)
【0029】
(式中、R15~R18はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R19はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~15のアルキル基を示し、Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n7は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す。)
【0030】
また、本発明は、前記コーティング剤を硬化してなるコーティング膜を提供する。
【0031】
また、本発明は、前記コーティング膜を含有する積層体を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明のコーティング膜は、耐摩耗性、耐候性及び耐冷熱性、特に長期耐候性に優れたコーティング膜を得ることができる。さらには、耐湿熱性や成形性に優れることから、ハードコート用、特に屋外用途として好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、下記式(1)で表される構造(A)と、下記式(3)で表される構造(B)と、ウレタンまたはウレア結合のうちのいずれかまたは両方を有するシラン縮合物を含有することを特徴とする、コーティング剤。
【0034】
【化10】
・・・(1)
【0035】
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル又は式(2)で表される基を示し、X~Xの少なくとも一つが式(2)で表される基である。
【0036】
【化11】
・・・(2)
【0037】
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、Yは炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n1は1~3の整数を示す。))
【0038】
【化12】
・・・(3)
【0039】
(式中、Rは炭素数1~15のアルキル基を示し、Rは水素原子またはメチル基を示し、Yは炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n2は1~3の整数を示し、n3は1~3の整数を示す。(式中、Si原子に結合している酸素原子は、前記式(1)における、Si原子に結合している酸素原子と共有していても構わない。)
【0040】
本発明のコーティング剤は、イソシアヌル環構造と(メタ)アクリロイル基とを有する縮合物であって、縮合物中にウレア結合またはウレタン結合を有することを特徴とする。縮合物中にウレア結合またはウレタン結合を有することにより、得られるコーティング膜の耐湿熱性が向上する。また、ウレア結合またはウレタン結合の作用により、成形性及び耐冷熱性も向上する。ウレア結合及びウレタン結合は、縮合物中においてどちらか1種類を1つまたは複数有していてもよいし、2種類をそれぞれ1つまたは複数有していても構わない。
【0041】
ウレア結合及びウレタン結合は、縮合物中のどこに導入されていても構わないが、好ましくは前記式(2)中のY中、及びまたは前記式(3)中のY中に存在することが好ましい。
【0042】
前記縮合物において、好ましい構造は、前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(4)で表される構造であることを特徴とする、コーティング剤である。
【0043】
【化13】
・・・(4)
(式中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、
Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n3は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す
【0044】
前記R~Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であるが、好ましくは水素原子または炭素数1~2のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。また、前記n3は1~3の数であるが、好ましくは1である。また、前記lは1~10の数であるが、好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。また、前記mは1~10の数であるが、好ましくは1~8であり、さらに好ましくは1~6である。
【0045】
<構造(A)>
本発明の構造Aは前記式(1)で表される、イソシアヌル環を有する構造である。構造(A)において、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(2)で表される基を示し、うち少なくとも1つが式(2)で表される基である。
式(1)において、好ましくは、X~Xの少なくとも2つが式(2)で表される基であり、より好ましくはX~Xの3つがいずれも式(2)で表される基であり、n1は2又は3から選ばれることが好ましい。
【0046】
<構造B>
本発明の構造Bは前記式(3)で表される、(メタ)アクリロイル基を有する構造である。 式(3)において、Yは好ましくはウレタン結合または、ウレア結合と、アルキル基とを組み合わせた結合基であり、n2は2~3から選ばれることが好ましく、n3は1~2から選ばれることが好ましい。
【0047】
本発明のシラン縮合体は、前記構造(A)及び構造(B)とを有する縮合物であるが、さらに下記式(5)で表される構造を有していていると、ハードコート性が向上することから好ましい。
【0048】
【化14】
・・・(5)
【0049】
<組成物>
本発明のシラン縮合体の製造方法としては特に限定はないが、式(6)で表される化合物(A1)と、式(8)で表される化合物(B1)とを含有し、化合物(A1)及び化合物(B1)の少なくとも1つがウレタンまたはウレア結合を有することを特徴とする組成物を縮合することで、好適に製造が可能である。
【0050】
【化15】
・・・(6)
【0051】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~15のアルキル基又は式(7)で表される基を示し、X~Xの少なくとも1つが式(7)で表される基である。
【0052】
【化16】
・・・・(7)
【0053】
(式中、Yは炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、式中、R10は炭素数1~15のアルキル基を示し、R11は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示す。
【0054】
【化17】
・・・(8)
【0055】
(式中、R12、R13は炭素数1~15のアルキル基または水素原子を示し、R14は水素原子またはメチル基を示し、Yは炭素数1~10のアルキル基、ウレア結合及びウレタン結合のいずれか一つまたは複数を有する結合基であって、n5は1~3の整数を示し、n6は1~3の整数を示す。
【0056】
好ましい構造は、前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(9)で表される構造であることを特徴とする、コーティング剤である。
【0057】
【化18】
・・・(9)
【0058】
(式中、R15~R18はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、R19はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~15のアルキル基 を示し、Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n7は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す。)
【0059】
<化合物(A1)>
式(6)で表される化合物(A1)において、X~Xの少なくとも1つが式(7)で表される基である。好ましくは、X~Xの少なくとも2つが式(7)で表される基であり、より好ましくはX~Xの3つがいずれも式(7)で表され基である場合である。また、n4は2又は3から選ばれることが好ましい。
【0060】
式(6)で表される化合物(A1)としては、ウレア結合またはウレタン結合を有する構造の化合物と、ウレア結合またはウレタン結合を有さない構造の化合物に大別できる。
ウレア結合またはウレタン結合を有さない構造の化合物としては、具体的には、1,3,5‐トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3‐(ジ‐2-プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1‐(2-プロペン-1-イル)-3,5-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3,5-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3-ビス(グリシジルメチル)-5-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3-(2-プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ジメチル-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。好ましくは、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0061】
また、式(6)で表される化合物(A1)として、ウレア結合を有する構造の化合物の場合、イソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物と、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物を反応することでも得ることができる。
【0062】
イソシアネート基を有するイソシアヌレート化合物としては、1、6ヘキサンジイソシアネートのイソシアヌレート体、1、5ペンタンジイソシアネートのイソシアヌレート体イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ジシクロヘキシルメタン4、4―ジイソシアネートのイソシアヌレート体、1、3-ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンのイソシアヌレート体、1、4-ビスイソシアネートメチルシクロヘキサンのイソシアヌレート体等が挙げられる。好ましくは、1、5ペンタンジイソシアネートのイソシアヌレート体または、1、6ヘキサンジイソシアネートのイソシアヌレート体である。
【0063】
アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、3-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、8-アミノオクチルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、8-アミノオクチルメチルジアルコキシシラン等である。好ましくは、3-アミノプロピルトリアルコキシシランである。
【0064】
<化合物(B1)>
式(8)表される化合物(B1)において、
式中、R14は好ましくは水素基であり、n5は2~3の整数が好ましく、より好ましくは3であり、n6は1~2の整数が好ましく、より好ましくは1である。
【0065】
前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(9)で表される構造であることが好ましい。式(9)中、R15~R19は好ましくはメチル基または水素基であり、より好ましくは水素基である。また、前記n7は1~3の数であるが、好ましくは1である。
また、前記lは1~10の数であるが、好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。また、前記mは1~10の数であるが、好ましくは1~9であり、さらに好ましくは1~8である。
【0066】
式(8)で表される化合物(B1)としては、ウレア結合またはウレタン結合を有する構造の化合物と、ウレア結合またはウレタン結合を有さない構造の化合物に大別できる。
ウレア結合またはウレタン結合を有さない構造の化合物としては、3-プロピル(メタ)アクリロイルトリメトキシシラン、3-プロピル(メタ)アクリロイルトリエトキシシラン、8-オクチル(メタ)アクリロイルトリメトキシシラン、8-オクチル(メタ)アクリロイルトリエトキシシラン、10-デカン(メタ)アクリロイルトリメトキシシラン、10-デカン(メタ)アクリロイルトリエトキシシラン、3-プロピル(メタ)アクリロイルメチルジメトキシシラン、3-プロピル(メタ)アクリロイルメチルジエトキシシラン、8-オクチル(メタ)アクリロイルメチルジメトキシシラン、8-オクチル(メタ)アクリロイルメチルジエトキシシラン、10-デカン(メタ)アクリロイルメチルジメトキシシラン、10-デカン(メタ)アクリロイルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
式(8)で表される化合物(B1)のうち、ウレタン結合を有する構造の化合物としては、イソシアネート基を有するシラン化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応することで得ることができる。
【0068】
イソシアネート基を有するシラン化合物としては、例えば3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、5-イソシアネートペンチルトリエトキシシラン、6-イソシアネートヘキシルトリエトキシシラン、8-イソシアネートオクチルトリエトキシシランが挙げられる。中でも、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0069】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1―メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-ブチル(メタ)アクリレート、1-エチル-2-ヒドロキシ-エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-ペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-プロピルエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレート、1-エチル-3-ヒドロキシ-プロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-ヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-プロピルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-プロピルプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-ペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-3-メチルブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-2-メチルブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-1-メチルブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-ヘキシル(メタ)アクリレート、3-エチル-4-ヒドロキシ-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチル-4-ヒドロキシ-ブチル(メタ)アクリレート、1-エチル-4-ヒドロキシ-ブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-ヘプチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-3-プロピルブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-2-プロピルブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-1-プロピルブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アミノ基本含有(メタ)アクリレートとの反応物が挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名「プラクセル」)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。
【0070】
式(8)で表される化合物(B1)のうち、ウレア結合を有する構造の化合物としては、アミノ基を有するシラン化合物と、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応することで得ることができる。または、イソシアネート基を有するシラン化合物と、アミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応することで得ることができる。
【0071】
アミノ基を有するシラン化合物としては、例えば3-アミノプロピルトリエトキシシラン、8-アミノオクチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、8-アミノオクチルメチルジエトキシシラン、等のアミノ基を有するアルコキシシラン等である。中でも、3-アミノプロピルトリエトキシランが好ましい。
【0072】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、6-イソシアネートヘキシル(メタ)アクリレート、8-イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート、10-イソシアネートデカン(メタ)アクリレート等である。中でも、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアネートブチル(メタ)アクリレートが好ましい
【0073】
イソシアネート基を有するシラン化合物としては、化合物(B1)のうち、ウレタン結合を有する構造の化合物の製造に用いるシラン化合物を用いることができる。好ましくは、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランである。
【0074】
アミノ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、4-アミノブチル(メタ)アクリレート、6-アミノヘキシル(メタ)アクリレート、8-アミノオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-アミノプロピル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、4-アミノブチル(メタ)アクリレートである。
【0075】
化合物(A1)と化合物(B1)との配合比率としては特に限定はないが、好ましくはモル比として、1:4~1:50である。この範囲であると、耐湿熱性の観点から優れるからである。より好ましくは、1:6~1:20である。
【0076】
化合物(A1)と化合物(B1)において、式中YまたはYの少なくとも1つがウレア結合またはウレタン結合を有する結合基であることが好ましい。この部分にウレア結合またはウレタン結合がある場合、得られる縮合物の耐湿熱性および成形性に優れるからである。好ましくは、前記Y及びまたはYのうちのいずれかが下記式(9)で表される構造である場合である。
【0077】
【化19】
・・・(9)
【0078】
(式中、R15~R19はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、Zはウレアまたはウレタン結合を有する結合基を示し、n7は1~3の数を示し、lは1~10の数を示し、mは1~10の数を示す。)
【0079】
前記R15~R18は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であるが、好ましくは水素原子または炭素数1~2のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。また、前記n7は1~3の数であるが、好ましくは1である。また、前記lは1~10の数であるが、好ましくは1~5であり、さらに好ましくは1~3である。また、前記mは1~10の数であるが、好ましくは1~8であり、さらに好ましくは1~6である。
【0080】
また、本発明のシラン縮合物は式(5)で表される構造(C)を有することが好ましい。
構造(C)は、前記化合物(A1)と化合物(B1)を縮合することでも導入できるが、好ましくはアルコキシシランを配合し共縮合することが好ましい。
【0081】
アルコキシシランとしては特に限定はないが、好ましくはジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランである。中でも好ましくはトリアルコキシシランおよびまたはテトラアルコキシシランである。
【0082】
ジアルコキシシランとしては、具体的には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-グリシジルプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシランもしくはメチルフェニルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0083】
トリアルコキシシランとしては、具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、iso-ブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3-グリシジルプロピルトリメトキシラン、3-グリシジルプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N―2-(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシラン、N-フェニルー3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げれられる。
【0084】
テトラアルコキシシランとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n-プロピルシリケート、イソブチルシリケート、n-ブチルシリケート、n-ペンチルシリケート、アセチルシリケート等のアルキルシリケートが挙げられる。
【0085】
<配合比>
本発明の組成物は、前記化合物(A1)、化合物(B1)を含有する。
化合物(A1)と化合物(B1)の配合比は、モル比として1:4~1:50が好ましく。より好ましくは、1:6~1:20である。
【0086】
本発明の組成物が、さらにアルコキシシランを含有する場合、配合量としては(A1)と(B1)の総モル量に対して、200モル%以下が好ましい。より好ましく150モル%以下が好ましい。
【0087】
本発明の組成物は、その他の配合物を含有していても構わない。
その他の配合物としては、各種樹脂、反応性化合物、触媒、重合開始剤、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等、前記構造を有するシラン縮合物のほかに、その他のシラン縮合物、たとえば縮合に使用するそれぞれのシラン化合物の単独あるいは複合縮合物等である。
【0088】
<縮合方法>
本発明の縮合物は、式(1)で表される構造(A)と、下記式(3)で表される構造
(B)と、ウレタンまたはウレア結合のうちのいずれかを有するシラン縮合物である。本発明の縮合物の好ましい製造方法としては、式(6)で表される化合物(A1)と、式(7)で表される化合物(B1)とを含有する組成物を加水分解・縮合反応させることである。
【0089】
加水分解する方法は、溶液をpH1~7の酸性水で加水分解させることがよい。このpH調整には、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタル酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、リン酸などの有機酸及び無機酸を用いることができる。また、表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒を触媒に用いてもよい。上記酸又は酸触媒の使用量は、生成物に対して0.0001~20重量%である
【0090】
加水分解反応においては水の存在が必要である。水の量は、上記シラン化合物やシリケート化合物における加水分解性基(の一部)を加水分解するのに十分な量以上であればよく、加水分解性基の数の理論量(モル)の0.5~5.0倍モルに相当する量であることが好ましい。また、酸性触媒が水溶液として加えられる場合は、その水を計算に加える。水が少ない場合は、十分な加水分解が進行せず、多い場合には、残存する水により塗工性や乾燥効率が低下する。
【0091】
加水分解と同時に生成したシラノール基の脱水縮合反応が生じて、シロキサン樹脂となる。この縮合を行う温度は、常温または120℃以下の加熱下であり、より好ましくは30℃以上100℃以下である。温度が低い場合には、加水分解および縮合反応の時間が長く、生産性が低くなり、温度が範囲を超えて高い場合には、不溶化する恐れがある。
【0092】
上記加水分解及び縮合の反応速度および生成する樹脂の分子量を調整する目的で有機溶媒を混合することが好ましい。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、ベンジルアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル系としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エーテル類としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエステル系としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、グリコールエーテル系としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、炭酸水素系としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0093】
溶剤の混合量は、加水分解する成分の全体量を100重量部とした場合、10重量部~
1000重量部であることが好ましい。
【0094】
<コーティング剤>
本発明のコーティング剤は、前記式(1)で表される構造(A)と、下記式(3)で表される構造(B)と、ウレタンまたはウレア結合のうちのいずれかを有するシラン縮合物を含有するものである。
本発明のコーティング剤は、前記構造を有するシラン縮合物のほかに、その他のシラン縮合物、たとえば縮合に使用するそれぞれのシラン化合物の単独あるいは複合縮合物も含有していても構わない。
<その他配合物>
【0095】
また、本発明のコーティング剤は、前記シラン縮合物の他の配合物を含有していても構わない。例えば、各種樹脂、反応性化合物、触媒、重合開始剤、有機フィラー、無機フィラー、有機溶剤、無機顔料、有機顔料、体質顔料、粘土鉱物、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、カップリング剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤等を配合してもかまわない。
【0096】
反応性化合物として、単官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0097】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名「プラクセル」)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、各種エポキシエステルの(メタ)アクリル酸付加物等を挙げることができる。
【0098】
多官能(メタ)アクリレートとしては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたグリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたリン酸トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、エチレンオキシドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドにより変性されたジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物とアルコール系化合物を反応させたウレタン(メタ)アクリレート化合物、多価アルコールと(メタ)アクリル酸及び多官能性カルボン酸との縮合反応により合成されるポリエステル(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノール型エポキシ樹脂あるいはノボラック型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との付加反応により合成されるエポキシ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0099】
有機溶剤としては、例えばエステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒が挙げられる。
具体的には、エステル系溶媒としては、酢酸エチル-、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ケトン系溶媒としては、アセトン、2-ブタノン、メチルエチル-ケトン、メチルイソブチルケトン等、エーテル系溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジオキソラン等、脂肪族系溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン等、芳香族系溶媒としてはトルエン、キシレン等、アルコール系溶媒としてはエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を例示することができる。
【0100】
また、粘度調整のために液状有機ポリマーを使用してもよい。液状有機ポリマーとは、硬化反応に直接寄与しない液状有機ポリマーであり、例えば、カルボキシル基含有ポリマー変性物(フローレンG-900、NC-500:共栄社)、アクリルポリマー(フローレンWK-20:共栄社)、特殊変性燐酸エステルのアミン塩(HIPLAAD ED-251:楠本化成)、変性アクリル系ブロック共重合物(DISPERBYK2000;ビックケミー)などが挙げられる。
【0101】
各種樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0102】
熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、熱硬化性樹脂とは、加熱または放射線や触媒などの手段によって硬化される際に実質的に不溶かつ不融性に変化し得る特性を持った樹脂である。その具体例としては、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、活性エステル樹脂、アニリン樹脂、シアネートエステル樹脂、スチレン・無水マレイン酸(SMA)樹脂、などが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0103】
熱可塑性樹脂とは、加熱により溶融成形可能な樹脂を言う。その具体例としてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸セルロース樹脂、アイオノマー樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種または2種以上を併用して用いることができる。
【0104】
本発明の樹脂組成物は、フィラーを配合することができる。たとえば、ハードコート性の向上を目的として、シリカを配合することができる。シリカとしては、限定は無く、粉末状のシリカやコロイダルシリカなど公知のシリカ微粒子を使用することができる。市販の粉末状のシリカ微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル50、200、旭硝子(株)製シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製E220A、E220、富士シリシア(株)製SYLYSIA470、日本板硝子(株)製SGフレ-ク等を挙げることができる。
また、市販のコロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノ-ルシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、PGM-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL等を挙げることができる。
【0105】
シリカとしては、反応性シリカを用いてもよい。反応性シリカとしては、例えば反応性化合物修飾シリカが挙げられる。反応性化合物としては、例えば疎水性基を有する反応性シランカップリング剤、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、グリシジル基を有する化合物が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販の粉末状のシリカとしては、日本アエロジル(株)製アエロジルRM50、R711等、(メタ)アクリロイル基を有する化合物で修飾した市販のコロイダルシリカとしては、日産化学工業(株)製MIBK-SD、MIBK-SD―L、MIBK-AC-2140Z、MEK-AC-2140Z等が挙げられる。また、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシジル基で修飾した後に、アクリル酸を付加反応させたシリカや、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランと水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物をウレタン化反応させたもので修飾したシリカも反応性シリカとして挙げられる。
【0106】
前記シリカ微粒子の形状は特に限定はなく、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、または不定形状のものを用いることができる。例えば、市販の中空状シリカ微粒子としては、日鉄鉱業(株)製シリナックス等を用いることができる。
また一次粒子径は、5~200nmの範囲が好ましい。5nm以上であると、組成物中の無機微粒子の分散が十分となり、200nmを以下では、硬化物の十分な強度が保持できる。
【0107】
シリカの配合量としては、樹脂組成物中の(メタ)アクリレートを有する化合物とシリカの合計量の固形分量を100重量部とするとき、3~60重量部の配合量であることが好ましい。
【0108】
本発明の樹脂組成物は、シリカ以外のフィラーを有していても良い。シリカ以外のフィラーとしては、無機フィラーと有機フィラーが挙げられる。フィラー形状に限定はなく、粒子状や板状、繊維状のフィラーが挙げられる。
【0109】
例えば、耐熱性に優れるものとしては、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、等;熱伝導に優れるものとしては、窒化ホウ素、窒化アルミ、酸化アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素等;導電性に優れるものとしては、金属単体又は合金(例えば、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、白金、亜鉛、マンガン、ステンレスなど)を用いた金属フィラー及び/又は金属被覆フィラー、;バリア性に優れるものとしては、マイカ、クレイ、カオリン、タルク、ゼオライト、ウォラストナイト、スメクタイト等の鉱物等やチタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム;屈折率が高いものとしては、チタン酸バリウム、酸化ジルコニア、酸化チタン等;光触媒性を示すものとしては、チタン、セリウム、亜鉛、銅、アルミニウム、錫、インジウム、リン、炭素、イオウ、テリウム、ニッケル、鉄、コバルト、銀、モリブデン、ストロンチウム、クロム、バリウム、鉛等の光触媒金属、前記金属の複合物、それらの酸化物等;耐摩耗性に優れるものとしては、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等の金属、及びそれらの複合物及び酸化物等;導電性に優れるものとしては、銀、銅などの金属、酸化錫、酸化インジウム等;紫外線遮蔽に優れるものとしては、酸化チタン、酸化亜鉛等である。
これらの無機微粒子は、用途によって適時選択すればよく、単独で使用しても、複数種組み合わせて使用してもかまわない。また、上記無機微粒子は、例に挙げた特性以外にも様々な特性を有することから、適時用途に合わせて選択すればよい。
【0110】
無機繊維としては、カーボン繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維等の無機繊維のほか、炭素繊維、活性炭繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、タングステンカーバイド繊維、シリコンカーバイド繊維(炭化ケイ素繊維)、セラミックス繊維、アルミナ繊維、天然繊維、玄武岩などの鉱物繊維、ボロン繊維、窒化ホウ素繊維、炭化ホウ素繊維、及び金属繊維等を挙げることができる。上記金属繊維としては、例えば、アルミニウム繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維を挙げることができる。
【0111】
有機繊維としては、ポリベンザゾール、アラミド、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアリレート等の樹脂材料からなる合成繊維や、セルロース、パルプ、綿、羊毛、絹といった天然繊維、タンパク質、ポリペプチド、アルギン酸等の再生繊維等を挙げる事ができる。
【0112】
フィラーの配合量としては、樹脂組成物中の(メタ)アクリレートを有する化合物とフィラーの合計量の固形分量を100重量部とするとき、3~60重量部の配合量であることが好ましい。
【0113】
本発明の組成物は活性エネルギー線で硬化させるため、重合開始剤、特に光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては公知のものを使用すればよく、例えば、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、ベンゾフェノン類からなる群から選ばれる一種以上を好ましく用いることができる。前記アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシ-エトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン等が挙げられる。前記ベンジルケタール類としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。前記ベンゾイン類等としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。光重合開始剤は単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。前記光重合開始剤の使用量は、前記樹脂組成物の樹脂固形分量100重量%に対して、1~15重量%が好ましく、2~10重量%がより好ましい。
【0114】
本発明の組成物には、光安定剤、紫外線吸収剤を導入することもできる。光安定剤とっしては、ヒンダートアミン骨格を有するHALS等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、環状イミノエステル系、シアノアクリレート系、ポリマー型紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0115】
<表面改質剤>
本発明の組成物には、塗布時のレベリング性を高める目的や、硬化膜の滑り性を高めて耐擦傷性を高める目的等のため、各種表面改質剤を添加してもよい。表面改質剤としては、表面調整剤、レベリング剤、スベリ性付与剤、防汚性付与剤等の名称で市販されている、表面物性を改質する各種添加剤を使用することができる。それらのうち、シリコーン系表面改質剤およびフッ素系表面改質剤が好適である。具体例としては、シリコーン鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するシリコーン系ポリマーおよびオリゴマー、シリコーン鎖とポリエステル鎖を有するシリコーン系ポリマーおよびオリゴマー、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマーおよびオリゴマー、パーフルオロアルキルエーテル鎖とポリアルキレンオキサイド鎖を有するフッ素系ポリマーおよびオリゴマー、等が挙げられる。これらのうちの一種以上を使用すればよい。滑り性の持続力を高めるなどの目的で、分子中に(メタ)アクリロイル基を含有するものを使用してもよい。具体的な表面改質剤としては、EBECRYL350(ダイセル・オルネクス株式会社)、BYK-333(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK-377(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK-378(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3505(ビックケミー・ジャパン株式会社)、BYK―UV3576(ビックケミー・ジャパン株式会社)、メガファックRS-75(DIC株式会社)、メガファックRS-76-E(DIC株式会社)、メガファックRS-72-K(DIC株式会社)、メガファックRS-76-NS(DIC株式会社)、メガファックRS-90(DIC株式会社)、メガファックRS-91(DIC株式会社)、メガファックRS-55(DIC株式会社)、オプツールDAC-HP(ダイキン工業株式会社)、ZX-058-A(株式会社T&K TOKA)、ZX-201(株式会社T&K TOKA)、ZX-202(株式会社T&K TOKA)、ZX-212(株式会社T&K TOKA)、ZX-214-A(株式会社T&K TOKA)、X-22-164AS(信越化学工業株式会社)、X-22-164A(信越化学工業株式会社)、X-22-164B(信越化学工業株式会社)、X-22-164C(信越化学工業株式会社)、X-22-164E(信越化学工業株式会社)、X-22-174DX(信越化学工業株式会社)、等を挙げることができる。
【0116】
本発明のコーティング剤中において、本発明のシラン縮合体の配合量としては、コーティング剤の不揮発分全量に対し、10~100wt%であると好ましい。より好ましくは50~100wt%である。
【0117】
<コーティング膜および積層体>
本発明のコーティング剤を硬化することでコーティング膜を得ることができる。具体的には、基材に対し本発明のコーティング剤を塗工し硬化することで、コーティング膜を有する積層体を得ることができる。
【0118】
積層体における基材としては特に限定はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン類;ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン1、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンMX-Dなどのポリアミド類;ポリスチレン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等のスチレン系重合体;ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等のアクリル系重合体、ポリカーボネート等を使用することができる。前記プラスチック基材は、単層又は2層以上の積層構造を有するものであってもよい。また、これらのプラスチック基材は、未延伸、一軸延伸、二軸延伸されていてもよい。
【0119】
また、前記プラスチック基材には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、公知の帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、結晶核剤、滑剤等の公知の添加剤が含まれていても良い。
【0120】
前記プラスチック基材は、本発明の樹脂組成物との密着性を更に向上させるために、基材表面に公知の表面処理が施されていてもよく、かかる表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理、電子線照射処理、紫外線照射処理等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせた処理を行ってもよい。
【0121】
前記基材の形状は、特に制限がなく、例えば、シート状、板状、球状、フィルム状ないしは大型の構築物又は複雑なる形状の組立物あるいは成形物であってもよい。また前記基材の表面は、予め下塗り塗料等により被覆されていてもよく、また、その被覆部分が劣化していても、本発明の樹脂組成物を塗布することは可能である。
【0122】
前記下塗り塗料としては、公知の水溶解型又は水分散型塗料や有機溶剤型又は有機溶剤分散型塗料、粉体塗料等を使用することができる。具体的には、アクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、脂肪酸変性エポキシ樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料、ポリウレタン樹脂系塗料、フルオロオレフィン系塗料またはアミン変性エポキ樹脂塗料などのような各種のタイプのものを使用することができる。また、前記下塗り塗料は、顔料を含まないクリヤー塗料であってもよいし、前記顔料を含むエナメル系塗料あるいはアルミニウムフレーク等を含有するメタリック塗料であってもよい。
【0123】
前記基材に本発明の樹脂組成物や塗料を塗布する方法としては、例えば刷毛塗り法、ローラー塗装法、スプレー塗装法、浸漬塗装法、フロー・コーター塗装法、ロール・コーター塗装法もしくは電着塗装法などの公知慣用の塗装方法を適用することが可能である。
【0124】
コーティング液の硬化方法としては、本発明の樹脂組成物は、重合性不飽和基を有する化合物が含まれていることから、活性エネルギー線照射により硬化させることができる。
【0125】
活性エネルギー線硬化としては、活性エネルギー線を塗工物に照射することで硬化させることを言う。活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。これらのなかでも特に、硬化性および利便性の点から紫外線(UV)が好ましい。紫外線硬化させる際に使用する光は、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、アルゴンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー等を使用することができる。これらを用いて、約180~400nmの波長の紫外線を、塗工物の塗布面に照射することによって、塗膜を硬化させ硬化物層を作成し積層体を得ることが可能である。紫外線の照射量としては、使用される光重合開始剤の種類及び量によって適宜選択される。
【0126】
また、本コーティング液は、重合性不飽和基、アルコキシシリル基とシラノール基を含有することから、熱風乾燥機、IR乾燥機等で加熱することでも硬化することができる。
【0127】
前記塗装方法により前記基材表面に本発明の樹脂組成物を塗布した後、塗布面に紫外線を照射する、または塗布した基材を加熱することにより、優れた耐擦傷性を有する積層体を得ることができる。
【0128】
<用途>
本願の積層体は、ハードコート性、耐候性に優れるため、各種保護材として特に好適に使用可能である。例えば、建築材料用、住宅設備用、自動車・船舶・航空機・鉄道等の輸送機用、電子材料用、記録材料用、光学材料用、照明用、包装材料用、屋外設置物の保護用、光ファイバー被覆用、樹脂ガラス保護用等に可能である。
【実施例
【0129】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り重量基準である。
【0130】
(化合物B1の合成)
合成例1 UAS-1
四つ口フラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE-9007(信越化学工業製)247.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部、およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、2-ヒドロキシエチルアクリレート116.2質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-1を得た。
【0131】
合成例2 UAS-2
四つ口フラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE-9007(信越化学工業製)247.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部、およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、4-ヒドロキシブチルアクリレート144.2質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-2を得た。
【0132】
合成例3 UAS-3
四つ口フラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE-9007(信越化学工業製)247.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部、およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、8-ヒドロキシオクチルアクリレート210.2質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-3を得た。
【0133】
合成例4 UAS-4
四つ口フラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE-9007(信越化学工業製)247.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部、およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、FA-2D(ダイセル株式会社製)351質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-4を得た。
【0134】
合成例5 UAS-5
四つ口フラスコに、2-イソシアネートエチルアクリレート:カレンズAOI(昭和電工社製)141.2質量部、イソ酢酸ブチル405.7質量部およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製)264.5質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-5を得た。
【0135】
合成例6 UAS―6
四つ口フラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン:KBE-9007(信越化学工業製)247.4質量部、ジブチル錫ジラウレート0.2質量部、およびハイドロキノン0.2質量部を加え、均一溶液とした。フラスコの内温が60℃になるまで加温し、次いで、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成社製M-305)497.3質量部を約4時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で5時間加温し、赤外吸収スペクトルにてイソシアネート基の消失を確認し、ウレタン(メタ)シランアクリレート:UAS-6を得た。
【0136】
<縮合物の合成>
【0137】
合成例7 Psi-1
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)合成したUAS-06 216.0g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル140.8gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-1)を得た。
【0138】
合成例8 Psi-2
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-03 133.9g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル177.1gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-2)を得た。
【0139】
合成例9 Psi-3
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-01 106.4g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル135.8gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-3)を得た。
【0140】
合成例10 Psi-4
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-02 114.6g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル148gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-2)を得た。
【0141】
合成例11 Psi-5
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-05 237.5g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル36gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-5)を得た。
【0142】
合成例12 Psi-6
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-02 114.6g(0.29モル)とテトラエトキシシラン(信越化学工業社製:KBE-14)130.1g(0.61モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル179.4gとリン酸:A-4 0.65gと水 127.4gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-6)を得た。
【0143】
合成例13 Psi-7
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-02 114.6g(0.29モル)とテトラエトキシシラン(信越化学工業社製:KBE-14)97.6g(0.46モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル165.2gとリン酸:A-4 0.53gと水 105.4gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-7)を得た。
【0144】
合成例14 Psi-8
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-02 114.6g(0.29モル)とテトラエトキシシラン(信越化学工業社製:KBE-14)65.0g(0.30モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル151.1gとリン酸:A-4 0.42gと水 82.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-8)を得た。
【0145】
合成例15 Psi-9
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-02 114.6g(0.29モル)とテトラエトキシシラン(信越化学工業社製:KBE-14)12.2g(0.06モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル128.1gとリン酸:A-4 0.23gと水 46.4gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-9)を得た。
【0146】
合成例16 Psi-10
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)20.0g(0.032モル)と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製:XIAMETER OFS-6030 SILANE)121.2g(0.49モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル151.2gとリン酸:A-4 0.32gと水 63.2gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-10)を得た。
【0147】
合成例17 Psi-11
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)20.0g(0.032モル)と3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製:XIAMETER OFS-6030 SILANE)121.2g(0.49モル)と手とテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製:KBE-14)20.32gとプロピレングリコールモノメチルエーテル170.9gとリン酸:A-4 0.39gと水 77.3gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-11)を得た。
【0148】
合成例18 Psi-12
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にトリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越化学工業株式会社製:KBM9659)12.0g(0.019モル)と合成したUAS-04 176.8g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル402.1gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-12)を得た。
【0149】
合成例19 Psi-13
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に合成したUAS-01 106.4g(0.29モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル128.8gとリン酸:A-4 0.19gと水 37.9gを投入し、80℃に昇温して4時間撹拌した後、固形分量が80wt%になるまで脱溶剤を実施した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分が40wt%となるように調整して目的物である縮合物(Psi-13)を得た。
【0150】
<実施例1>
(組成物の調製)
合成したPsi-1を固形分として100重量部、Irgcure819(BASF株式会社、光開始剤)を樹脂固形分に対して、2重量部を配合・攪拌し、その後プロピレングリコールモノメチルエーテルにて希釈し、樹脂固形分量40重量部の組成物1を得た。
【0151】
(積層体の製造)
得られた組成物1は、以下の条件を用いて、積層体1の製造を行った。得られた積層体1については、各種試験を行った。
【0152】
<塗工>
・バーコーター塗装
ポリカーボネート板(旭硝子製カーボグラスポリッシュクリア、厚み2mm)に対し、表2-1で調製した組成物1を乾燥後の塗膜厚さが約10~20μmとなるようにバーコーター塗装にて、塗布し、80℃の乾燥機で10分乾燥した。
【0153】
<硬化>
紫外線照射は、GS-YUASA(株)製の高圧水銀ランプを使用し、EIT社製のUV POWER PUCK IIのUV-A領域で、ピーク照度200mW/cmにて、1パス当りの照射エネルギーが1000mJ/cmとなるようランプ出力、ランプ高さ、及びコンベア速度を調整し、1パス(合計1000mJ/cm)で照射し硬化反応をさせ、積層体を得た。
【0154】
<評価>
[Taber磨耗性試験]
積層体表面を、テーバー磨耗試験にて、ASTM D1044に準拠した方法(磨耗輪:CS-10F、荷重:500g、回転数:500)にて擦り、初期状態とのくもり価の差、すなわち、ヘイズ値変化ΔH(%)を測定する。差が小さいほど、耐磨耗性が高いことを示し、ΔHaze≦4.0を合格値とした。
【0155】
[ヘイズ(くもり)値]
ヘイズメーターを使用して試験片の光線透過率を測定し、次式によって算出する(単位は%)。
【0156】
【数1】
【0157】
(耐湿熱性試験)
・白化
恒温恒湿機にて、50℃、95%で360時間整静置後、上記の各試料を室温に戻し、積層体表層の変化を目視で確認した。
【0158】
◎:白濁は生じていなかった。
〇:白濁がやや生じていた。
×:白濁がはっきりと生じていた
・密着
恒温恒湿機にて、50℃、95%で360時間整静置後、上記の各試料を室温に戻し、
100マス碁盤目密着性試験を実施した。
◎:100マス密着
〇:50~99マス密着
×:0~50マス密着
【0159】
(耐冷熱性試験)
・クラック
サイクルを繰り返した後、上記の各試料を室温に戻し、積層体表層の変化を目視で確認し冷熱試験機器にて、-30℃で1時間静置後、110℃で1時間静置した。これを100サイクル実施した。
◎:クラックが生じていなかった
〇:クラックがうっすら生じていた
×:クラックがはっきりと生じていた。
【0160】
・密着
冷熱試験機器にて、-30℃で1時間静置後、110℃で1時間静置した。これを100サイクル繰り返した後、上記の各試料を室温に戻し、100マス碁盤目密着性試験を実施した。
◎:100マス密着
〇:50~99マス密着
×:0~50マス密着
【0161】
(SUV促進耐候性試験)
岩崎電気製の超促進耐候試験機スーパーUVテスター(SUV)を使用して、4時間照射パネル温度63℃湿度90%)と4時間結露(ブラックパネル温度30℃湿度95%)の(照射強度100mW、ブラックパネル温度63℃湿度70%)と4時間暗黒(ブラック12時間を1サイクルとし、60サイクル評価を実施した。
【0162】
(クラック)
○:表面にクラックが発生していないもの
×:表面にクラックが発生しているもの
【0163】
<実施例2~20>
実施例1において、配合を表1-1および1-2に記載の配合率に変更した以外は同様にして、コーティング剤2~12を得た。得られた各組成物については、実施例1と同様にして積層体2~12を作成し、各種評価を行った。
【0164】
PGM-ST(日産化学工業社製):未修飾コロイダルシリカ
MEK-AC(日産化学工業社製):3-メタクリロイル修飾コロイダルシリカ
Irg819(BASF社製:Irgacure819)
【0165】
<比較例1~4>
実施例1において、配合を表2に記載の配合率に変更した以外は同様にして、比較コーティング剤1~4を得た。得られた各組成物については、実施例1と同様にして比較積層体1~4を作成し、各種評価を行った。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明のコーティング剤は、耐摩耗性や耐候性及び耐冷熱性、及び耐湿熱性に優れた硬化物を得られることから、ハードコート性に優れた積層体を製造可能である。