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特許7176605露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、及びデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20221115BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 F
H01L21/68 K
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021164688
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2017543564の分割
【原出願日】2016-09-29
(65)【公開番号】P2022017264
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2015193726
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】原 篤史
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特許第6958356(JP,B2)
【文献】特開2006-303505(JP,A)
【文献】特開2012-099850(JP,A)
【文献】特開2001-135561(JP,A)
【文献】特開2009-300798(JP,A)
【文献】特開2006-203113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影光学系を介して照明光に対して、第1方向へ移動中の物体に対して走査露光する露光装置であって、
前記投影光学系の下方に配置され、前記物体を保持する第1移動体と、
前記投影光学系の光軸と直交する所定平面内における前記第1移動体の移動の基準となる基準部材と、
前記所定平面内で互いに直交する前記第1方向と第2方向とへ前記第1移動体を移動させる第1駆動部と、
前記第1駆動部による前記第1移動体の移動に対して併進移動する第2移動体と、
前記基準部材に対する前記第2移動体の前記第1方向に関する相対位置情報である第1情報と、前記基準部材に対する前記第2移動体の前記第2方向に関する相対位置情報である第2情報と、前記第2移動体に対する前記第1移動体の相対位置情報である第3情報と、前記第1情報と前記第2情報と前記第3情報とに基づいて前記基準部材に対する前記第1移動体の相対位置情報となる第4情報と、を計測する計測部と、
前記計測部による前記第1情報と前記第2情報と前記第3情報との計測中に、前記第1駆動部により前記第1移動体が前記第1方向へ移動されているときに前記第2移動体を前記第1方向に移動させ、前記第1駆動部により前記第1移動体が前記第2方向へ移動されているときに前記第2移動体を前記第2方向に移動させる第2駆動部と、を備え、
前記第1駆動部は、前記計測部により計測された前記第4情報に基づいて前記所定平面内で前記第1移動体を移動させ、
前記計測部は、前記第1情報と前記第2情報とを計測する第1計測部を有し、
前記第1計測部は、
複数の格子領域を有し、前記基準部材に、前記第1方向に沿って設けられる第1格子部材と、
前記第1格子部材上を移動し、前記第2移動体の前記第1方向の移動に対して併進移動し、前記第1格子部材に対して第1計測ビームを照射する第1ヘッドと、
複数の格子領域を有し、前記第2移動体の前記第1方向の移動に対して併進移動する第2格子部材と、
前記第2移動体の前記第2方向への移動により、前記第2格子部材上を移動しながら、前記第2格子部材に対して第2計測ビームを照射する第2ヘッドと、を有し、
前記第1ヘッドは、前記第2格子部材に設けられ、
前記第2ヘッドは、前記第2移動体に設けられる、露光装置。
【請求項2】
前記第1格子部材は、前記第2方向に互いに離れ、前記基準部材に、前記第1方向に沿って設けられた複数の格子領域を有する第1部材と第2部材とを有し、
前記第1ヘッドは、前記第1部材上を前記第1方向に沿って移動し、
前記第2格子部材は、前記第1部材と前記第2部材との間に架設され、前記第1ヘッドの移動と併進移動し、
前記第2ヘッドは、前記第2格子部材上を前記第2方向に沿って移動し、
前記第1計測部は、前記第1ヘッドから前記第1部材に対して前記第1計測ビームを照射して前記基準部材に対する前記第1ヘッドの前記第1方向に関する相対位置情報である第5情報と、前記第2ヘッドから前記第2格子部材に前記第2計測ビームを照射して前記第2格子部材に対する前記第2ヘッドの前記第2方向に関する相対位置情報である第6情報とを計測し、前記第5情報と、前記第6情報とに基づいて前記第1情報と前記第2情報とを計測する、請求項に記載の露光装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記第1情報と前記第2情報を測定する第2計測部を有し、
前記第2計測部は、前記第1計測部と前記投影光学系を隔てて設けられる、請求項またはに記載の露光装置。
【請求項4】
前記計測部は、前記第1駆動部による前記第1移動体の移動に対して併進移動する第3移動体と、前記第3移動体を移動させる第3駆動部とを有し、
前記第2計測部は、
複数の格子領域を有し、前記基準部材に、前記第1方向に沿って設けられる第3格子部材と、
前記第3格子部材上を移動し、前記第3移動体の前記第1方向の移動に対して併進移動し、前記第3格子部材に対して第3計測ビームを照射する第3ヘッドと、
複数の格子領域を有し、前記第3移動体の前記第1方向の移動に対して併進移動する第4格子部材と、
前記第3移動体の前記第2方向への移動により、前記第4格子部材上を移動しながら、前記第4格子部材に対して第4計測ビームを照射する第4ヘッドと、を有し、
前記第3ヘッドは、前記第4格子部材に設けられ、
前記第4ヘッドは、前記第3移動体に設けられる、請求項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記第3格子部材は、前記第2方向に互いに離れ、前記基準部材に、前記第1方向に沿って設けられた複数の格子領域を有する第3部材と第4部材とを有し、
前記第3ヘッドは、前記第3部材上を前記第1方向に沿って移動し、
前記第4格子部材は、前記第3部材と前記第4部材との間に架設され、前記第3ヘッドの移動と併進移動し、
前記第4ヘッドは、前記第4格子部材上を第4方向に沿って移動し、
前記第2計測部は、前記第3ヘッドから前記第3部材に対して前記第3計測ビームを照射して前記基準部材に対する前記第3ヘッドの前記第1方向に関する相対位置情報である第7情報と、前記第4ヘッドから前記第4格子部材に前記第4計測ビームを照射して前記第4格子部材に対する前記第4ヘッドの前記第2方向に関する相対位置情報である第8情報とを計測し、前記第7情報と、前記第8情報とに基づいて前記第1情報と前記第2情報とを計測する、請求項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記計測部は、前記第3情報を計測する第3計測部を有し、
前記第3計測部は、第1被検出部又は前記第1被検出部を検出する第1検出部の一方が前記第1移動体に設けられ、前記第1被検出部又は前記第1検出部の他方が前記第2移動体に設けられ、前記第1検出部による前記第1被検出部の第1検出結果により前記第3情報を計測する請求項1~のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記第2駆動部は、前記第3計測部で計測された前記第3情報に基づいて前記第2移動体を移動させる、請求項に記載の露光装置。
【請求項8】
前記第1被検出部は、格子領域を有する第5格子部材であり、
前記第1検出部は、前記第5格子部材に対して第5計測ビームを照射する第5ヘッドであり、前記第5計測ビームが前記第5格子部材に照射される前記第5ヘッドの計測情報を前記第1検出結果とする請求項またはに記載の露光装置。
【請求項9】
前記第5格子部材は、前記第1方向に関する長さが前記第1格子部材よりも短い請求項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記第1被検出部は、計測マークであり、
前記第1検出部は、前記計測マークを検出する撮像部を有する、請求項またはに記載の露光装置。
【請求項11】
前記計測部は、前記第3情報を計測する第4計測部を有し、
前記第4計測部は、第2被検出部又は前記第2被検出部を検出する第2検出部の一方が前記第1移動体に設けられ、前記第2被検出部又は前記第2検出部の他方が前記第3移動体に設けられ、前記第2検出部による前記第2被検出部の第2検出結果により前記第3情報を計測する請求項またはに記載の露光装置。
【請求項12】
前記第3駆動部は、前記第3情報を計測する第3計測部で計測された前記第3情報に基づいて前記第3移動体を移動させる、請求項またはに記載の露光装置。
【請求項13】
前記第2被検出部は、格子領域を有する第6格子部材であり、
前記第2検出部は、前記第6格子部材に対して第6計測ビームを照射する第6ヘッドであり、前記第6計測ビームが前記第6格子部材に照射される前記第6ヘッドの計測情報を前記第2検出結果とする請求項11に記載の露光装置。
【請求項14】
前記第6格子部材は、前記第1方向に関する長さが前記第3格子部材よりも短い請求項13に記載の露光装置。
【請求項15】
前記第2被検出部は、計測マークであり、
前記第2検出部は、前記計測マークを検出する撮像部を有する、請求項11に記載の露光装置。
【請求項16】
所定のパターンを保持するパターン保持体と、前記パターン保持体を前記第1方向に駆動する第4駆動部とを有し、エネルギビームを用いて前記パターン保持体を介して前記物体に前記パターンを形成する形成装置を備える請求項1~15のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項17】
前記物体は、フラットパネルディスプレイに用いられる露光基板である請求項1~16のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項18】
前記露光基板は、少なくとも一辺の長さ又は対角長が500mm以上である請求項17に記載の露光装置。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか一項に記載の露光装置を用いて前記物体を露光することと、
露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、フラットパネルディスプレイの製造方法、デバイス製造方法、及び露光方法に係り、更に詳しくは、照明光により物体を露光する露光装置及び露光方法、前記露光装置を用いるフラットパネルディスプレイ又はデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク(フォトマスク)又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)と、ガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)とを所定の走査方向(スキャン方向)に沿って同期移動させつつ、マスクに形成されたパターンをエネルギビームを用いて基板上に転写するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが用いられている。
【0003】
この種の露光装置としては、基板ステージ装置が有するバーミラー(長尺の鏡)を用いて露光対象基板の水平面内の位置情報を求める光干渉計システムを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、光干渉計システムを用いて基板の位置情報を求める場合、いわゆる空気揺らぎの影響を無視することができない。また、上記空気揺らぎの影響は、エンコーダシステムを用いることにより低減できるが、近年の基板の大型化により、基板の全移動範囲をカバーすることができるスケールを用意することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0266961号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、投影光学系を介して照明光により物体を露光する露光装置であって、前記投影光学系の下方に配置され、前記物体を保持する第1移動体と、前記投影光学系の光軸と直交する所定平面内で互いに直交する第1、第2方向に関して前記第1移動体を移動させる第1駆動部と、前記第1移動体の位置情報を計測する計測部と、前記計測部を支持し、前記所定平面内に移動可能な第2移動体と、前記第1、第2方向に関して前記第2移動体を移動させる第2駆動部と、を備え、前記第2駆動部は、前記第1駆動部により前記第1移動体が前記第1方向または前記第2方向へ移動されているときに、前記第2移動体を前記第1方向または前記第2方向へ移動させる露光装置が、提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法が、提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様に係る露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、投影光学系を介して照明光により物体を露光する露光方法であって、前記投影光学系の下方に配置され、前記物体を保持する第1移動体を、第1駆動部により前記投影光学系の光軸と直交する所定平面内で互いに直交する第1、第2方向に関して移動させることと、前記第1移動体の位置情報を計測部により計測することと、前記計測部を支持し、前記所定平面内に移動可能な第2移動体を、第2駆動部により前記第1、第2方向に関して移動させることと、前記第1駆動部により前記第1移動体が前記第1方向または前記第2方向へ移動されているときに、前記第2駆動部により前記第2移動体を前記第1方向または前記第2方向へ移動させることと、を含む露光方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の液晶露光装置が備えるマスクエンコーダシステム、及び基板エンコーダシステムの概念図である。
図3図3(A)は、マスクエンコーダシステムの構成を示す平面図、図3(B)は、基板エンコーダシステムの構成を示す平面図である。
図4図4(A)は、図3(A)のA部拡大図、図4(B)は、図3(B)のB部拡大図、図4(C)は、図3(B)のC部拡大図である。
図5図5(A)~図5(E)は、マスクエンコーダシステム、及び基板エンコーダシステムにおけるヘッド出力の繋ぎ処理を説明するための図(その1~その5)である。
図6】液晶露光装置の制御系を中心的に構成する主制御装置の入出力関係を示すブロック図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、露光動作時における基板エンコーダシステムの動作を説明するための図(その1及びその2)である。
図8】第2の実施形態に係る基板エンコーダシステムの構成を示す図である。
図9】一対のヘッド間の距離を求めるための計測系の構成を説明するための図である。
図10】ヘッドステージの傾き量を求めるための計測系の構成を説明するための図である。
図11図1の液晶露光装置が備えるマスクエンコーダシステム、及び基板エンコーダシステムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、図1図7を用いて説明する。
【0012】
図1には、第1の実施形態に係る液晶露光装置10の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、例えば液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる矩形(角型)のガラス基板P(以下、単に基板Pと称する)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
【0013】
液晶露光装置10は、照明系12、回路パターンなどが形成されたマスクMを保持するマスクステージ装置14、投影光学系16、装置本体18、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0014】
照明系12は、例えば米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されている。照明系12は、図示しない光源(例えば、水銀ランプ)から射出された光を、それぞれ図示しない反射鏡、ダイクロイックミラー、シャッター、波長選択フィルタ、各種レンズなどを介して、露光用照明光(照明光)ILとしてマスクMに照射する。照明光ILとしては、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0015】
マスクステージ装置14は、マスクMを、例えば真空吸着により保持するマスクホルダ40、マスクホルダ40を走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動するとともに、Y軸方向、及びθz方向に適宜微少駆動するためのマスク駆動系48(図1では不図示。図6参照)、及び、マスクホルダ40のXY平面内の位置情報(θz方向の回転量情報も含む。以下同じ)を求めるためのマスクエンコーダシステム50を含む。マスクホルダ40は、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示されるような、平面視矩形の開口部が形成された枠状部材から成る。マスクホルダ40は、装置本体18の一部である上架台部18aに固定された一対のマスクガイド42上に、例えばエアベアリング(不図示)を介して載置されている。マスク駆動系48は、例えばリニアモータ(不図示)を含む。マスクエンコーダシステム50の構成については、後に詳しく説明する。
【0016】
投影光学系16は、マスクステージ装置14の下方に配置されている。投影光学系16は、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数(本実施形態では、例えば11本。図3(A)参照)の光学系を備えている。
【0017】
液晶露光装置10では、照明系12からの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光により、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0018】
装置本体18は、上記マスクステージ装置14、及び投影光学系16を支持しており、複数の防振装置19を介してクリーンルームの床11上に設置されている。装置本体18は、例えば米国特許出願公開第2008/0030702号明細書に開示される装置本体と同様に構成されており、上架台部18a、下架台部18b、及び一対の中架台部18cを有している。上述した投影光学系16は、上架台部18aに支持されることから、以下、上架台部18aを、適宜「光学定盤18a」と称して説明する。
【0019】
基板ステージ装置20は、基板Pを投影光学系16(照明光IL)に対して高精度位置決めするためのものであり、基板Pを水平面(X軸方向、及びY軸方向)に沿って所定の長ストロークで駆動するとともに、該基板Pを6自由度方向に微少駆動する。基板ステージ装置20の構成は、特に限定されないが、例えば米国特許出願公開第2008/129762号明細書、あるいは米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるような、ガントリタイプの2次元粗動ステージと、該2次元粗動ステージに対して微少駆動される微動ステージとを含む、いわゆる粗微動構成のステージ装置を用いることが好ましい。
【0020】
基板ステージ装置20は、基板ホルダ24を備えている。基板ホルダ24は、平面視矩形の板状部材から成り、その上面上に基板Pが載置される。基板ホルダ24は、基板駆動系28(図1では不図示。図6参照)の一部を構成する複数のリニアモータ(例えば、ボイスコイルモータ)により、投影光学系16に対してX軸及び/又はY軸方向に所定の長ストロークで駆動されるとともに、6自由度方向に微少駆動される。
【0021】
また、液晶露光装置10は、基板ホルダ24(すなわち、基板P)の6自由度方向の位置情報を求めるための基板位置計測系を有している。基板位置計測系は、図6に示されるように、基板PのZ軸、θx、θy方向(以下、Z・チルト方向と称する)の位置情報を求めるためのZ・チルト位置計測系88、及び基板PのXY平面内の位置情報を求めるための基板エンコーダシステム60を含む。Z・チルト位置計測系88の構成は、特に限定されないが、例えば米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示されるような、基板ホルダ24を含む系に取り付けられた複数のセンサを用いて、装置本体18(例えば下架台部18b)を基準として基板PのZ・チルト方向の位置情報を求める計測系を用いることができる。基板エンコーダシステム60の構成は、後述する。
【0022】
次に、図2を用いて本実施形態におけるマスクエンコーダシステム50、及び基板エンコーダシステム60の概念について説明する。図2に示されるように、マスクエンコーダシステム50は、マスクホルダ40の位置情報を光学定盤18a(投影レンズ)を基準に求める。また、基板エンコーダシステム60も、基板Pの位置情報を光学定盤18a(投影レンズ)を基準に求める。
【0023】
マスクエンコーダシステム50は、複数のエンコーダヘッド(以下、単に「ヘッド」と称する)58L、58Sが取り付けられたヘッドステージ54を有している。ヘッドステージ54は、マスクMを保持したマスクステージ14の移動に同期して、光学定盤18aに対してX軸方向に長ストロークで移動可能となっている。ヘッドステージ54の位置情報は、上記ヘッド58L、及び光学定盤18aに固定されたエンコーダスケール56L(以下、ロングスケール56L(回折格子板)と称する)を含むロングエンコーダシステムにより求められる。また、ヘッドステージ54とマスクホルダ40との相対位置情報は、上記ヘッド58S、及びマスクホルダ40に固定されたエンコーダスケール56S(以下、ショートスケール56S(回折格子板)と称する)を含むショートエンコーダシステムにより求められる。マスクエンコーダシステム50は、上記ロングエンコーダシステムの出力と、ショートエンコーダシステムの出力とに基づいて、光学定盤18aを基準とするマスクホルダ40の位置情報を求める。なお、ロングスケール56LのX軸方向の長さは、ショートスケール56SのX軸方向の長さよりも短い。換言すれば、ロングスケール56Lの長手方向の長さとショートスケールスケール56Sの長手方向の長さとを比較したときに、長手方向の長さが長いスケールをロングスケール56Lとし、短いスケールをショートスケール56Sとする。また、後述する基板エンコーダシステムも同様に、ロングスケール66X、66Yの長手方向の長さは、ショートスケール66Sの長手方向の長さよりも長いことを意味する。
【0024】
また、基板エンコーダシステム60も同様に、複数のヘッド68S、68Xが取り付けられたヘッドステージ64を有している。ヘッドステージ54は、基板Pが載置された基板ホルダ24を移動させる基板ステージ装置20の移動に同期して、光学定盤18aに対してX軸方向、及びY軸方向に長ストロークで移動可能となっている。ヘッドステージ64の位置情報は、上記ヘッド68X、及び光学定盤18aに固定されたロングスケール66Y(回折格子板)などを含むロングエンコーダシステムにより求められる。また、ヘッドステージ64と基板ホルダ24との相対位置情報は、上記ヘッド68S、及び基板ホルダ24に固定されたショートスケール66S(回折格子板)を含むショートエンコーダシステムにより求められる。基板エンコーダシステム60は、上記ロングエンコーダシステムの出力と、ショートエンコーダシステムの出力とに基づいて、光学定盤18aを基準とする基板ホルダ24の位置情報を求める。
【0025】
次に、マスクエンコーダシステム50の具体的な一例について説明する。図1に示されるように、光学定盤18aの上面には、一対のエンコーダベース52が固定されている。エンコーダベース52は、X軸方向に延びる部材から成る。一対のエンコーダベース52それぞれの上面には、複数(図1では紙面奥行き方向に重なっている。図3(A)参照)のロングスケール56Lが固定されている。また、マスクホルダ40の下面には、上記一対のエンコーダベース52に対応して、一対のショートスケール56Sが固定されている。さらに、上記一対のエンコーダベース52に対応して、エンコーダベース52とマスクホルダ40との間には、一対のヘッドステージ54が配置されている。
【0026】
図3(A)に示されるように、エンコーダベース52の上面には、複数のロングスケール56Lが固定されている。図4(A)に示されるように、複数のロングスケール56Lは、X軸方向に所定間隔で配置されている。各ロングスケール56Lは、例えば石英ガラスにより形成されたX軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。エンコーダベース52は、例えば温度変化などに起因して格子ピッチが変化しないように、熱膨張率がロングスケール56Lより低い(あるいは同等の)材料で形成されている。
【0027】
ロングスケール56Lの幅方向一側(図4(A)では、-Y側)の領域には、Xスケール56Lxが形成され、幅方向他側(図4(A)では、+Y側)の領域には、Yスケール56Lyが形成されている。Xスケール56Lxは、X軸方向に所定ピッチで形成された(X軸方向を周期方向とする)Y軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Xグレーティング)によって構成されている。同様に、Yスケール56Lyは、Y軸方向に所定ピッチで形成された(Y軸方向を周期方向とする)X軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Yグレーティング)によって構成されている。本実施形態のXスケール56Lx、及びYスケール56Lyにおいて、複数の格子線は、例えば10nm以下の間隔で形成されている。なお、図4(A)では、図示の便宜上、格子間の間隔(ピッチ)は、実際よりも格段に広く図示されている。その他の図も同様である。
【0028】
図3(A)に戻り、一対のショートスケール56Sそれぞれは、マスクホルダ40の下面に固定されている。ショートスケール56Sは、X軸方向の長さがロングスケール56Lよりも短い点を除き、ロングスケール56Lと同様に構成されている。すなわち、ショートスケール56Sにも、幅方向の一側、及び他側の領域に、それぞれXスケール56Sx、及びYスケール56Syが形成されている。なお、図4(A)では、格子線が実線で図示され、ショートスケール56Sが上方を向いているように図示されているが、複数のショートスケール56Sは、実際には、図1に示されるように格子面が下方を向いて配置されている。また、本実施形態において、ショートスケール56Sは、ロングスケール56Lに対してY軸方向に幾分ずれて配置されているが、同じY位置であっても良い。マスクホルダ40も、上述したエンコーダベース52と同様に、熱膨張率がショートスケール56Sより低い(あるいは同等の)材料で形成されている。
【0029】
ヘッドステージ54は、図4(A)に示されるように、平面視矩形の板上の部材から成り、例えばリニアモータなどのアクチュエータを含むヘッドステージ駆動系82(図6参照)によって、マスクホルダ40と同期して、X軸方向に長ストロークで駆動される。また、マスクステージ装置14(図1参照)は、ヘッドステージ54をX軸方向に直進案内するための、例えば機械的なリニアガイド装置を有している。
【0030】
ヘッドステージ54には、一対のXロングヘッド58Lx、及び一対のYロングヘッド58Ly(適宜、まとめてロングヘッド58Lと称する)が固定されている。ロングヘッド58Lは、例えば米国特許出願公開第2008/0094592号明細書に開示されるような、いわゆる回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、ロングスケール56Lに計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、ヘッドステージ54の位置情報(もしくは、変位量情報)を主制御装置90(図6参照)に供給する。
【0031】
すなわち、マスクエンコーダシステム50では、例えば4つのXロングヘッド(58Lx×2、58Lx×2)と、これらに対向するXロングスケール56Lx(ヘッドステージ54のX位置によって異なる)とによって、ヘッドステージ54のX軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのXロングリニアエンコーダ92Lx(図6参照)が構成され、例えば4つのYロングヘッド(58Ly×2、58Ly×2)と、これらに対向するYロングスケール56Ly(ヘッドステージ54のX位置によって異なる)とによって、ヘッドステージ54のY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのYロングリニアエンコーダ92Ly(図6参照)が構成される。
【0032】
主制御装置90は、図6に示されるように、例えば4つのXロングリニアエンコーダ92Lx、及び、例えば4つのYロングリニアエンコーダ92Lyの出力に基づいてヘッドステージ54(図4(A)参照)のX軸方向、及びY軸方向の位置情報を、例えば10nm以下の分解能で求める。また、主制御装置90は、例えば4つのXロングリニアエンコーダ92Lx(あるいは、例えば4つのYロングリニアエンコーダ92Ly)のうちの少なくとも2つの出力に基づいてヘッドステージ54のθz位置情報(回転量情報)を求める。
【0033】
また、ヘッドステージ54には、1つのXショートヘッド58Sx、及び1つのYショートヘッド58Sy(適宜、まとめてショートヘッド58Sと称する)が固定されている。ショートヘッド58Sも、上述したロングヘッド58Lと同様の回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、ショートスケール56Sに計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、マスクホルダ40とヘッドステージ54との相対位置情報を主制御装置90(図6参照)に供給する。
【0034】
すなわち、マスクエンコーダシステム50では、例えば2つのXショートヘッド(58Sx)と、これらに対向するXショートスケール56Sxとによって、マスクホルダ40とヘッドステージ54のX軸方向の相対位置情報を求めるための、例えば2つのXショートリニアエンコーダ92Sx(図6参照)が構成され、例えば2つのYショートヘッド(58SLy)と、これらに対向するYショートスケール56Syとによって、ヘッドステージ54のY軸方向の位置情報を求めるための、例えば2つのYショートリニアエンコーダ92Sy(図6参照)が構成される。
【0035】
従って、上述したヘッドステージ駆動系82(図6参照)は、ショートヘッド58Sからの計測ビームがショートスケール56Sから外れないように、マスクホルダ40に同期して(ショートヘッド58Sがショートスケール56Sに追従するように)、マスクホルダ40とヘッドステージ54とを相対的に駆動する。換言すれば、ショートヘッド58Sからの計測ビームがショートスケール56Sから外れなければ、マスクホルダ40とヘッドステージ54とは、移動時の位置が完全に一致していなくても良い。すなわち、マスクエンコーダシステム50では、Xショートリニアエンコーダ92Sx、及びYショートリニアエンコーダ92Sy(図6参照)によって、マスクホルダ40とヘッドステージ54との相対的な位置ずれが許容される(位置ずれを補償する)ようになっている。
【0036】
ここで、上述したように、複数のロングスケール56Lは、エンコーダベース52上において、X軸方向に所定間隔に離れて配置されている(図4(A)参照)。そして、ヘッドステージ54が有する一対のXロングヘッド58Lx、及び一対のYロングヘッド58Lyそれぞれの間隔が、隣接するロングスケール56L間の間隔よりも広く設定されている。また、一対のXロングヘッド58Lx、及び一対のYロングヘッド58Lyそれぞれの間隔が、隣接するロングスケール56Lの長さと等しくないように設定されている。これにより、マスクエンコーダシステム50では、一対のXロングヘッド58Lxのうち常に少なくとも一方がXロングスケール56Lxに対向するとともに、一対のYロングヘッド58Lyのうちの少なくとも一方が常にYロングスケール56Lyに対向する。従って、マスクエンコーダシステム50は、ヘッドステージ54の位置情報を途切れさせることなく主制御装置90(図6参照)に供給することができる。
【0037】
具体的に説明すると、例えばヘッドステージ54が+X側に移動する場合、マスクエンコーダシステム50は、隣接する一対のロングスケール56Lのうちの+X側のロングスケール56Lに対して一対のXロングヘッド58Lxの両方が対向する第1の状態(図4(A)に示される状態)、-X側のXロングヘッド58Lxが上記隣接する一対のXロングスケール56Lxの間の領域に対向し(いずれのXロングスケール56Lxにも対向せず)、+X側のXロングヘッド58Lxが上記+X側のXロングスケール56Lxに対向する第2の状態、-X側のXロングヘッド58Lxが-X側のXロングスケール56Lxに対向し、且つ+X側のXロングヘッド58Lxが+X側のXロングスケール56Lxに対向する第3の状態、-X側のXロングヘッド58Lxが-X側のXロングスケール56Lxに対向し、+X側のXロングヘッド58Lxが一対のXロングスケール56Lxの間の領域に対向する(いずれのXロングスケール56Lxにも対向しない)第4の状態、及び-X側のXロングスケール56Lxに対して一対のXロングヘッド58Lxの両方が対向する第5の状態、を上記順序で移行する。従って、常に少なくとも一方のXロングヘッド58LxがXロングスケール56Lxに対向する。
【0038】
主制御装置90(図6参照)は、上記第1、第3、及び第5の状態では、一対のXロングヘッド58Lxの出力の、例えば平均値に基づいてヘッドステージ54のX位置情報を求める。また、主制御装置90は、上記第2の状態では、+X側のXロングヘッド58Lxの出力のみに基づいてヘッドステージ54のX位置情報を求め、上記第4の状態では、-X側のXロングヘッド58Lxの出力のみに基づいてヘッドステージ54のX位置情報を求める。したがって、マスクエンコーダシステム50の計測値が途切れることがない。
【0039】
より詳細に説明すると、本実施形態のマスクエンコーダシステム50では、マスクエンコーダシステム50の計測値を途切れさせないようにするために、上記第1、第3、第5の状態、すなわち一対のヘッドの両方がスケールに対向し、該一対のヘッドのそれぞれから出力が供給される状態と、上記第2、第4の状態、すなわち一対のヘッドのうちの一方のみがスケールに対向し、該一方のヘッドのみから出力が供給される状態との間を移行する際に、ヘッドの出力の繋ぎ処理を行う。以下、図5(A)~図5(E)を用いてヘッドの繋ぎ処理について説明する。なお、説明の簡略化のため、図5(A)~図5(E)において、ロングスケール56Lには、2次元格子(グレーティング)が形成されているものとする。また、各ロングヘッド58X、58Yの出力は、理想値であるものとする。また、以下の説明では、隣接する一対のXロングヘッド58Lx(以下、Xヘッド58Lx1、58Lx2と称する)についての繋ぎ処理について説明するが、隣接する一対のYロングヘッド58Ly(以下、Yヘッド58Ly1、58Ly2と称する)においても、同様の繋ぎ処理が行われる。
【0040】
図5(A)に示されるように、一対のXヘッド58X1、58X2それぞれが、隣接する一対のロングスケール56L(以下、スケール56L1、56L2と称する)のうち、+X側のスケール56L2を用いてヘッドステージ54(図4(A)参照)のX位置情報を求める場合、一対のXヘッド58X1、58X2は、双方がX座標情報を出力する。ここでは、一対のXヘッド58X1、58X2の出力は、同値となる。次いで、図5(B)に示されるように、ヘッドステージ54が+X方向に移動すると、Xヘッド58X1が、スケール56L2の計測範囲外となるので、該計測範囲外となる前に、Xヘッド58X1の出力を無効扱いとする。従って、ヘッドステージ54のX位置情報は、Xヘッド58X2の出力のみに基づいて求められる。
【0041】
また、図5(C)に示されるように、ヘッドステージ54(図4(A)参照)が更に+X方向に移動すると、Xヘッド58X1が-X側のスケール56L1に対向する。Xヘッド58X1は、スケール56L1を用いて計測動作可能な状態となった直後から、ヘッドステージ54のX位置情報を出力するが、Xヘッド58X1の出力は、不定値(またはゼロ)からカウントを再開するのでヘッドステージ54のX位置情報の算出に用いることができない。従って、この状態で、一対のXヘッド58X1、58X2それぞれの出力の繋ぎ処理が必要となる。繋ぎ処理としては、具体的には、不定値(またはゼロ)とされたXヘッド58X1の出力を、Xヘッド58X2の出力を用いて(例えば同値となるように)補正する処理を行う。該繋ぎ処理は、ヘッドステージ54が更に+X方向に移動して、図5(D)に示されるように、Xヘッド58X2が、スケール56L2の計測範囲外となる前に完了する。
【0042】
同様に、図5(D)に示されるように、Xヘッド58X2が、スケール56L2の計測範囲外となった場合には、該計測範囲外となる前に、Xヘッド58X2の出力を無効扱いとする。従って、ヘッドステージ54(図4(A)参照)のX位置情報は、Xヘッド58X1のみの出力に基づいて求められる。そして、図5(E)に示されるように、更にマスクホルダ40が+X方向に移動して、一対のXヘッド58X1、58X2それぞれがスケール56L1を用いて計測動作を行うことが可能となった直後に、Xヘッド58X2に対して、Xヘッド58X1の出力を用いた繋ぎ処理を行う。以降は、一対のXヘッド58X1、58X2それぞれの出力に基づいて、ヘッドステージ54のX位置情報が求められる。
【0043】
次に、基板エンコーダシステム60の構成について説明する。図1に示されるように、光学定盤18aの下面には、例えば4つのYエンコーダベース62Yが固定されている。なお、図1では、例えば4つのYエンコーダベース62Yのうちの2つは、他の2つの紙面奥側に隠れている(図3(B)参照)。また、例えば4つのYエンコーダベース62Yの下方には、一対のXエンコーダベース62Xが配置されている。さらに、一対のXエンコーダベース62Xそれぞれの下方には、ヘッドステージ64が配置されている。また、基板ホルダ24の上面には、一対のヘッドステージ64に対応して、ショートスケール66Sが固定されている。
【0044】
図3(B)に示されるように、Yエンコーダベース62Yは、Y軸方向に延びる部材から成る。例えば4つのYエンコーダベース62Yのうち、2つは、投影光学系16の+Y側にX軸方向に離間して配置され、他の2つは、投影光学系16の-Y側にX軸方向に離間して配置されている。Yエンコーダベース62Yの下面には、複数のYロングエンコーダスケール66Y(以下、Yロングスケール66Yと称する)が固定されている。
【0045】
Yロングスケール66Yは、例えば石英ガラスにより形成されたY軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。図4(B)に示されるように、Yロングスケール66Yは、Y軸方向に所定ピッチで形成された(Y軸方向を周期方向とする)X軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Yグレーティング)により構成されている。なお、図3(B)、図4(B)では、格子線が実線で図示され、Yロングスケール66Yが上方を向いているように図示されているが、複数のYロングスケール66Yは、実際には、図1に示されるように格子面が下方を向いて配置されている。
【0046】
Yロングスケール66Yの格子ピッチなどは、上記Yスケール56Ly(図4(A)参照)と同じでも良いし、異ならせても良い。上述したYエンコーダベース62Yは、例えば温度変化などに起因して格子ピッチが変化しないように、熱膨張率がYロングスケール66Yより低い(あるいは同等の)材料で形成されている。
【0047】
図3(B)に戻り、Xエンコーダベース62Xは、X軸方向に延びる部材から成り、X軸方向に離間した一対のYエンコーダベース62Y間に架け渡されている。一対のXエンコーダベース62Xは、Xベース駆動系84(図6参照)によって、基板ホルダ24に同期して、Y軸方向に所定の長ストロークで駆動される。Yエンコーダベース62YとXエンコーダベース62Xとの間には、Xエンコーダベース62XをY軸方向に直進案内するための、例えば機械的なリニアガイド装置が設けられている。
【0048】
Xエンコーダベース62Xの両端部近傍それぞれには、一対のYロングヘッド68Yが固定されている。Yロングヘッド68Yは、上述したロングヘッド58L(図4(A)参照)と同様の回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、Yスケール66Yに計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、Xエンコーダベース62XのY軸方向の位置情報を主制御装置90(図6参照)に供給する。
【0049】
すなわち、基板エンコーダシステム60では、例えば4つ(2×2)のYロングヘッド68Yと、これらに対応するYロングスケール66Y(Xエンコーダベース62XのY位置によって異なる)とによって、Xエンコーダベース62XのY軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのYロングリニアエンコーダ96Ly(図6参照)が構成されている。
【0050】
ここで、図4(B)に示されるように、複数のYロングスケール66Yも、上記ロングスケール56L(図4(A)参照)と同様に、Y軸方向に所定間隔で配置されている。また、一対のYロングヘッド68Y間の間隔は、隣接するYロングスケール66Y間の間隔よりも広く設定されている。これにより、基板エンコーダシステム60では、一対のYロングヘッド68Yのうち常に少なくとも一方がYロングスケール66Yに対向する。従って、基板エンコーダシステム60は、計測値を途切れさせることなくXエンコーダベース62X(図3(A)参照)の位置情報を求めることができる。従って、ここでも、上述したマスクエンコーダシステム50におけるヘッド出力の繋ぎ処理と同様のヘッド出力の繋ぎ処理(図5(A)~図5(E)参照)が行われる。
【0051】
Xエンコーダベース62Xの下面には、複数のXロングエンコーダスケール66X(以下、Xロングスケール66Xと称する)が固定されている。Xロングスケール66Xは、例えば石英ガラスにより形成されたX軸方向に延びる平面視矩形の板状(帯状)の部材から成る。図4(C)に示されるように、Xロングスケール66Xは、X軸方向に所定ピッチで形成された(X軸方向を周期方向とする)Y軸方向に延びる複数の格子線を有する反射型の回折格子(Yグレーティング)により構成されている。なお、図3(B)、図4(B)、図4(C)では、格子線が実線で図示され、Yロングスケール66Yが上方を向いているように図示されているが、複数のXロングスケール66Xは、実際には、図1に示されるように格子面が下方を向いて配置されている。なお、Xロングスケール66Xは、X軸方向に所定ピッチで形成された格子線を有するとしたが、これに限定されずX軸方向にもY軸方向にも所定ピッチで形成された格子線を有するようにしても良い。Yロングスケール66Yも同様に、Y軸方向に所定ピッチで形成された格子線を有するとしたが、これに限定されずX軸方向にもY軸方向にも所定ピッチで形成された格子線を有するようにしても良い。
【0052】
ヘッドステージ64は、図4(C)に示されるように、平面視矩形の板上の部材から成り、例えばリニアモータなどのアクチュエータを含むヘッドステージ駆動系86(図6参照)によって、基板ホルダ24と同期して、X軸方向に長ストロークで駆動される。ヘッドステージ64とXエンコーダベース62Xとの間には、ヘッドステージ64をX軸方向に直進案内するための、例えば機械的なリニアガイド装置が設けられている。また、ヘッドステージ64は、Xエンコーダベース62Xに対してY軸方向への相対移動が制限されており、Xエンコーダベース62XがY軸方向に駆動されると、これと一体的にY軸方向に移動するようになっている。
【0053】
ヘッドステージ64には、一対のXロングヘッド68Xが固定されている。Xロングヘッド68Xは、上述したロングヘッド58L(図4(A)参照)と同様の回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、Xロングスケール66Xに計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、ヘッドステージ64のX軸方向の位置情報を主制御装置90(図6参照)に供給する。
【0054】
すなわち、基板エンコーダシステム60では、例えば4つ(2×2)のXロングヘッド68Xと、これらに対応するXロングスケール66X(ヘッドステージ64のX位置によって異なる)とによって、ヘッドステージ64のX軸方向の位置情報を求めるための、例えば4つのXロングリニアエンコーダ96Lx(図6参照)が構成されている。
【0055】
また、ヘッドステージ64には、1つのXショートヘッド68Sx、及び1つのYショートヘッド68Sy(適宜、まとめてショートヘッド68Sと称する)が固定されている。ショートヘッド68Sも、上述したXロングヘッド68Xと同様の回折干渉方式のエンコーダヘッドであり、ショートスケール56Sに計測ビームを照射し、そのスケールからのビームを受光することにより、基板ホルダ24とヘッドステージ64との相対位置情報を主制御装置90(図6参照)に供給する。
【0056】
ショートスケール66Sは、上述したマスクホルダ40に固定されたショートスケール56S(図3(A)参照)と実質的に同じものである。すなわち、ショートスケール66Sは、Xスケール66Sx、及びYスケール66Syを有している。また、ショートスケール66Sは、Xロングスケール66Xに対してY軸方向に幾分ずれて配置されているが、同じY位置であっても良い。基板ホルダ24も、上述したXエンコーダベース62Xと同様に、熱膨張率がショートスケール66Sより低い(あるいは同等の)材料で形成されている。
【0057】
すなわち、基板エンコーダシステム60では、例えば2つのXショートヘッド68Sxと、これらに対向するXショートスケール66Sxとによって、ヘッドステージ64と基板ホルダ24とのX軸方向の相対位置情報を求めるための、例えば2つのXショートリニアエンコーダ98Sx(図6参照)が構成され、例えば2つのYショートヘッド68Syと、これらに対向するYショートスケール66Syとによって、ヘッドステージ64と基板ホルダ24とのY軸方向の相対位置情報を求めるための、例えば2つのYショートリニアエンコーダ98Sy(図6参照)が構成される。
【0058】
従って、上述したXベース駆動系84、及びヘッドステージ駆動系86(それぞれ図6参照)は、ショートヘッド68Sからの計測ビームがショートスケール66Sから外れないように(ショートヘッド68Sがショートスケール66Sに追従するように)、基板ホルダ24に同期して、Xエンコーダベース62X、及びヘッドステージ54をそれぞれ基板ホルダ24に対して相対的に駆動する。換言すれば、ショートヘッド68Sからの計測ビームがショートスケール66Sから外れなければ、基板ホルダ24とヘッドステージ64とは、移動時の位置が完全に一致していなくても良い。すなわち、基板エンコーダシステム60では、Xショートリニアエンコーダ98Sx、及びYショートリニアエンコーダ98Sy(図6参照)によって、基板ホルダ24とヘッドステージ64との相対的な位置ずれが許容される(位置ずれを補償する)ようになっている。
【0059】
図6には、液晶露光装置10(図1参照)の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置90の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置90は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、液晶露光装置10の構成各部を統括制御する。
【0060】
上述のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、主制御装置90(図6参照)の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージ装置14上へマスクMが載置されるとともに、不図示の基板ローダによって、基板ステージ装置20(基板ホルダ24)上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置90により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。
【0061】
上記ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時におけるマスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20の動作に関しては、従来の露光装置における動作と同様であるので説明を省略する。
【0062】
また、上記ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時において、マスクエンコーダシステム50では、マスクMのスキャン方向への移動(加速、等速移動、減速)に同期して、一対のヘッドステージ54がスキャン方向に駆動される。
【0063】
また、上記ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時において、基板エンコーダシステム60では、図7(A)に示されるように、スキャン露光動作のために基板P(基板ホルダ24)がX軸方向に駆動されると、一対のヘッドステージ64が、基板Pに同期してX軸方向に駆動される。この際、一対のXエンコーダベース62Xは、静止状態とされる。これに対し、図7(B)に示されるように、ショット領域間移動のために基板P(基板ホルダ24)がY軸方向に駆動されると、一対のヘッドステージ64は、一対のXエンコーダベース62Xと一体的にY軸方向に移動する。従って、ショートヘッド68Sからの計測ビームがショートスケール66Sから外れることがない。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶露光装置10によれば、マスクMのXY平面内の位置情報を求めるためのマスクエンコーダシステム50、及び基板PのXY平面内の位置情報を求めるための基板エンコーダシステム60(それぞれ図1参照)それぞれは、対応するスケールに対して照射される計測ビームの光路長が短いので、例えば従来の干渉計システムに比べて空気揺らぎの影響を低減できる。従って、マスクM、及び基板Pの位置決め精度が向上する。また、空気揺らぎの影響が小さいので、従来の干渉計システムを用いる場合に必須となる部分空調設備を省略でき、コストダウンが可能となる。
【0065】
さらに、干渉計システムを用いる場合には、大きくて重いバーミラーをマスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20に備える必要があったが、本実施形態に係るマスクエンコーダシステム50、及び基板エンコーダシステム60では、上記バーミラーが不要となるので、マスクホルダ40を含む系、及び基板ホルダ24を含む系それぞれが小型・軽量化するとともに重量バランスが良くなり、これによりマスクM、基板Pの位置制御性が向上する。また、干渉計システムを用いる場合に比べ、調整箇所が少なくて済むので、マスクステージ装置14、及び基板ステージ装置20のコストダウンし、さらにメンテナンス性も向上する。また、組み立て時の調整も容易(あるいは不要)となる。
【0066】
また、本実施形態に係る基板エンコーダシステム60では、例えば一対のヘッドステージ64を基板Pに同期してY軸方向に駆動する(追従させる)ことにより、基板PのY位置情報を求める構成であるため、基板ステージ装置20側にY軸方向に延びるスケールを配置する必要(あるいは装置本体18側にY軸方向に複数のヘッドを配列する必要)がない。従って、基板位置計測系の構成をシンプルにすることができ、コストダウンが可能となる。
【0067】
また、本実施形態に係るマスクエンコーダシステム50では、隣接する一対のエンコーダヘッド(Xヘッド58Lx、Yヘッド58Ly)の出力をマスクホルダ40のX位置に応じて適宜切り換えながら該マスクホルダ40のXY平面内の位置情報を求める構成であるので、複数のスケール56LをX軸方向に所定間隔で(互いに離間して)配置しても、マスクホルダ40の位置情報を途切れることなく求めることができる。従って、マスクホルダ40の移動ストロークと同等の長さのスケールを用意する必要がなく、コストダウンが可能であり、特に本実施形態のような大型のマスクMを用いる液晶露光装置10に好適である。本実施形態に係る基板エンコーダシステム60も同様に、複数のスケール66XがX軸方向に、複数のスケール66YがY軸方向に、それぞれ所定間隔で配置されるので、基板Pの移動ストロークと同等の長さのスケールを用意する必要がなく、大型の基板Pを用いる液晶露光装置10に好適である。
【0068】
また、本実施形態におけるショートスケール66Sは、基板ホルダ24の上面に固定されていたが、これに限定されず、基板ホルダ24の下面に固定されるようにしてもよい。その場合、ヘッドステージ64は、ヘッドステージ64aとヘッドステージ65bとの二つのステージによって構成されるようにしても良い。ヘッドステージ64aはXエンコーダベース62と対向するように配置され、ヘッドステージ64bは基板ホルダ24の下面に固定されたショートスケール66Sに対向するように配置される。換言すると、ヘッドステージ64aは光学定盤18aと基板ホルダ24との間に配置され、ヘッドステージ64bは基板ホルダ24の下方に配置される。この場合、ヘッドステージ64aとヘッドステージ64bとは、X軸方向とY軸方向を含む2次元平面内において同期して移動される。なお、ヘッドステージ64aとヘッドステージ64bとを機械的に連結するようにしても良いし、同期して駆動されるように電気的な制御を行っても良い。なお、ヘッドステージ64aとヘッドステージ64bと同期して移動する、と説明したが、これはヘッドステージ64aとヘッドステージ64bとの相対的な位置関係を概ね維持した状態で移動することを意味し、ヘッドステージ64a、ヘッドステージ64bの両者間の位置関係、移動方向、及び移動速度が厳密に一致した状態で移動する場合に限定されるものではない。
【0069】
また、本実施形態に係る基板エンコーダーシステム60では、Xエンコーダベース62XをYエンコーダベース62Yの下方に配置したが、Xエンコーダベース62をヘッドステージ64に設けるようにしても良い。図11に示されるように、ヘッドステージ64は、ヘッドステージ64Aとヘッドステージ65Bとの二つのステージによって構成されるようにしても良い。ヘッドステージ64Aの上面にはYヘッド68Yが配置され、下面にはXロングスケール66Xが配置される。ヘッドステージ64Bの上面にはXヘッド68Xが配置され、下面にはショートヘッド68Sが配置される。ヘッドステージ64Bは、基板ホルダ24がX軸方向に移動されると、その移動に同期してX軸方向に移動される。なおヘッドステージ64Aは、X軸方向へもY軸方向へも移動されない。またヘッドステージ64Bは、基板ホルダ24がY軸方向に駆動されると、その移動に同期するようにYヘッドステージ64Aとヘッドステージ64Bとが同期して、Y軸方向に駆動される。
【0070】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態に係る液晶露光装置について、図8を用いて説明する。第2の実施形態に係る液晶露光装置の構成は、基板エンコーダシステム160の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成及び機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0071】
本第2の実施形態における基板エンコーダシステム160は、上記第1の実施形態と比べて、ショートヘッド68Sを駆動するための駆動系の構成が異なる。すなわち、上記第1の実施形態では、図3(C)に示されるように、1つのショートヘッド68Sにつき、一対のYエンコーダベース62Y(固定)と、該一対のYエンコーダベース62Y間に架設された1つのXエンコーダベース62X(可動)とが用いられたが、本第2の実施形態では、図8に示されるように、一対のXエンコーダベース62X(固定)と、該一対のXエンコーダベース62X間に架設された1つのYエンコーダベース62Y(可動)とが用いられている。本第2の実施形態も、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、上記第1及び第2の各実施形態の構成は、一例であって、適宜変更が可能である。例えば、ヘッドステージ54、64に画像センサ(カメラ)、あるいは基準マークを取り付け、該画像センサを用いて投影レンズ関係のキャリブレーションを行っても良い。この場合、マスクホルダ40、及び基板ホルダ24を用いることなく上記キャリブレーションを行うことができ、効率がよい。
【0073】
また、上記実施形態における基板エンコーダシステム60では、ヘッドステージ64に取り付けられたショートヘッド68Sと、基板ホルダ24に固定されたショートスケール66Sとを含むエンコーダシステムによって、ヘッドステージ64と基板ホルダ24との相対位置情報を求めたが、これに限られず、ヘッドステージ64と基板ホルダ24との相対移動量が小さいことから、例えば基板ホルダ24にマークを形成するとともに、ヘッドステージ64に画像センサを取り付け、該画像センサがマークを観察し、高速で画像処理を行うことによって、ヘッドステージ64と基板ホルダ24との相対位置情報を求めても良い。
【0074】
また、上記各実施形態における各スケールと、これに対応するヘッドとの配置は、逆であっても良い。例えば、基板ホルダ24にショートヘッド68Sを固定するとともに、ヘッドステージ64にショートスケール66Sを固定しても良い。
【0075】
また、図9に示されるように、ヘッドステージ64が有する一対のXロングヘッド68Xの相互間の距離をセンサ166で計測し、該計測値を用いて基板エンコーダシステム60の出力を補正しても良い。センサ166の種類は、特に限定されないが、例えばレーザ干渉計などを用いることができる。基板エンコーダシステム60では、上述したように、一対のエンコーダヘッドの出力の繋ぎ処理を行うが、この繋ぎ処理において、一対のエンコーダヘッド間の間隔で既知、且つ不変であることが前提条件となる。このため、各ヘッドが取り付けられるヘッドステージ64としては、例えば熱膨張などの影響が少ない材料により形成されているが、本変形例のように、エンコーダヘッド間の間隔を計測することによって、仮にヘッドステージ64が変形(一対のエンコーダヘッド間の間隔が変化)しても、高精度で基板Pの位置情報を求めることができる。同様に、マスクエンコーダシステム50のヘッドステージ54が有する一対のXロングヘッド58Lx間、基板エンコーダシステム60のXエンコーダベース62Xに固定された一対のYロングヘッド68Y間の距離を計測しても良い。また、ヘッドユニット60が有する全て(本実施形態では、例えば合計で8つ)のヘッド(下向きの一対のヘッド66x、66y、上向きの一対のヘッド64x、64y)それぞれの相対的な位置関係を計測し、計測値を補正しても良い。
【0076】
また、上述したように、ヘッドステージ64が有する一対のXロングヘッド68Xの相互間の距離を適宜(例えば基板交換毎に)計測するキャリブレーション動作を行ってもよい。また、上記ヘッド間の間隔の測定を行うキャリブレーションポイントとは別に、マスクエンコーダシステム50、基板エンコーダシステム60それぞれの出力の原点位置決めを行うためのキャリブレーションポイントを設けても良い。該原点位置決めを行うための位置決めマークは、例えば複数のスケール56L、66Y、66Xの延長線上(外側)に配置しても良いし、隣接する一対のスケール56L、66Y、66X間に配置しても良いし、あるいは、スケール56L、66Y、66X内に形成しても良い。
【0077】
また、各ヘッドステージ54、64、Xエンコーダベース62Xの水平面に対する傾き(θx、θy方向の傾斜)量を求め、該傾き量(すなわち、各ヘッド58L、58S、68Y、68X、68S光軸の倒れ量)に応じて基板エンコーダシステム60の出力を補正しても良い。計測系としては、図10に示されるように、複数のZセンサ64zを対象物(図10ではXエンコーダベース62Xであるがヘッドステージ64を対象物としても良い)に取り付け、Yエンコーダベース62Y(あるいは上架台部18a)を基準として対象物の傾き量を求める計測系を用いることができるあるいは、2軸のレーザ干渉計264を設けて、対象物(図10ではヘッドステージ64であるがXエンコーダベース62Xを対象物としても良い)の傾き量(θx、θy方向の傾斜量)及び回転量(θz方向の回転量)を求めても良い。また、各ヘッド58L、58S、68Y、68X、68Sの傾き量を個別に計測しても良い。
【0078】
また、マスクエンコーダシステム50では、複数のロングスケール56LがX軸方向に離間して配置され、基板エンコーダシステム60では、複数のYロングスケール66YがY軸方向、複数のXロングスケール66XがX軸方向にそれぞれ離間して配置される場合を説明したが、スケールの数は、これに限られず、例えばマスクM、基板Pの大きさ、あるいは移動ストロークに応じて適宜変更が可能である。また、必ずしも複数のスケールが離間して配置されていなくても良く、例えばより長いひとつのスケールを用いても良い。
【0079】
また、スケールを複数設ける場合、各スケールの長さが互いに異なっていても良い。例えば、X軸方向に延びるスケールの長さを、ショット領域のX軸方向の長さより長く設定することにより、走査露光動作時における繋ぎ処理を回避することができる。Y軸方向に延びるスケールについても同様である。さらに、ショット領域の数の変化に対応できるように(例えば4面取りの場合と6面取りの場合)、投影光学系16の一側に配置されるスケールと、他側に配置されるスケールとで、互いに長さを異ならせても良い。
【0080】
また、ロングスケール56Lの表面にXロングスケール56LxとYロングスケール56Lyとが独立に形成された場合を説明したが、これに限られず、例えばXY2次元スケールを用いても良い。この場合、エンコーダヘッドもXY2次元ヘッドを用いることができる。ショートスケールとショートヘッドについても同様である。回折干渉方式のエンコーダシステムを用いる場合について説明したが、これに限られず、いわゆるピックアップ方式、磁気方式などの他のエンコーダも用いることができ、例えば米国特許第6,639,686号明細書などに開示されるいわゆるスキャンエンコーダなども用いることができる。
【0081】
また、Yロングスケール66Yを有するYエンコーダベース62Yは、光学定盤18aの下面に直接取り付けられる構成であったが、これに限られず、所定のベース部材を光学定盤18aの下面に対して離間した状態で吊り下げ配置されても良い。
【0082】
また、基板ステージ装置20は、少なくとも基板Pを水平面に沿って長ストロークで駆動できれば良く、場合によっては6自由度方向の微少位置決めができなくても良い。このような2次元ステージ装置に対しても上記各実施形態に係る基板エンコーダシステムを好適に適用できる。
【0083】
また、主制御装置90(図6参照)は、一対のXロングヘッド58Lxの両方がロングスケールに対向する場合、ロングヘッド58Lxの出力の平均値に基づいてヘッドステージ54のX位置情報を求めると説明したが、これに限られない。一対のXロングヘッド58Lxに主従関係を持たせ、一方のXロングヘッド58Lxの値のみに基づいて、ヘッドステージ54のX位置情報を求めるようにしても良い。
【0084】
また、光学定盤18a上において、X軸方向に複数のスケールが、所定間隔の隙間を介しながら連なって配置されたスケール群(スケール列)を、複数列、互いにY軸方向に離れた異なる位置(例えば投影光学系16に対して一方の側(+Y側)の位置と、他方(-Y側)の位置)に配置する場合に、複数列間において、上記所定間隔の隙間の位置がX軸方向において重複しないように配置しても良い。このように複数のスケール列を配置すれば、互いのスケール列に対応して配置されたヘッドが同時に計測範囲外になる(換言すれば、両ヘッドが同時に隙間に対向する)ことがない。
【0085】
また、上記各実施形態において、ヘッド60またはヘッドステージ64が基板ホルダ24に同期して移動する、と説明する場面があるが、これはヘッド60またはヘッドステージ64が、基板ホルダ24に対する相対的な位置関係を概ね維持した状態で移動することを意味し、ヘッド60またはヘッドステージ64、基板ホルダ24の両者間の位置関係、移動方向、及び移動速度が厳密に一致した状態で移動する場合に限定されるものではない。
【0086】
また、光学定盤18a上において、X軸方向に複数のスケールが、所定間隔の隙間を介しながら連なって配置されたスケール群(スケール列)を、複数列、互いにY軸方向に離れた異なる位置(例えば投影光学系16に対して一方の側(+Y側)の位置と、他方(-Y側)の位置)に配置する場合に、この複数のスケール群(複数のスケール列)を、基板上におけるショットの配置(ショットマップ)に基づいて使い分け出来るように構成しても良い。たとえば、複数のスケール列の全体としての長さを、スケール列間で互いに異ならせておけば、異なるショットマップに対応でき、4面取りの場合と6面取りの場合など、基板上に形成するショット領域の数の変化にも対応できる。またこのように配置すると共に、各スケール列の隙間の位置をX軸方向において互いに異なる位置にすれば、複数のスケール列にそれぞれ対応するヘッドが同時に計測範囲外になることがないので、繋ぎ処理において不定値とされるセンサの数を減らすことができ、繋ぎ処理を高精度に行うことができる。
【0087】
また、光学定盤18a上で、X軸方向に複数のスケールが、所定間隔の隙間を介しながら連なって配置されたスケール群(スケール列)において、1つのスケール(X軸計測用のパターン)のX軸方向の長さを、1ショット領域の長さ(基板ホルダ上の基板をX軸方向に移動させながらスキャン露光を行う際に、デバイスパターンが照射されて基板上に形成される長さ)分だけ連続して測定できるような長さにしても良い。このようにすれば、1ショット領域のスキャン露光中に、複数スケールに対するヘッドの乗継制御を行わずに済むため、スキャン露光中の基板P(基板ホルダ)の位置計測(位置制御)を容易にできる。
【0088】
また、マスクホルダ40上の、所定間隔の隙間を介しながら複数のスケールがX軸方向に連なって配置されたスケール群(スケール列)において、上記実施形態では各スケールの長さが同一の長さのものを連ねて配置しているが、互いに長さの異なるスケールを連ねて配置するようにしても良い。例えば、マスクホルダ40上のスケール列において、X軸方向における両端部寄りにそれぞれ配置されるスケール(スケール列において、各端部に配置されるスケール)のX軸方向の長さよりも、中央部に配置されるスケールの方を物理的に長くしても良い。
【0089】
また、上記各実施形態では、一対のXヘッドと一対のYヘッドが、一つずつペアを組むようにX軸方向において並んで配置されているが(XヘッドとYヘッドとがX軸方向において同じ位置に配置されているが)、これらをX軸方向に相対的にずらして配置するようにしても良い
【0090】
また、あるヘッド54とそれに対応するスケール列(所定の隙間を介して複数のスケールを所定方向に連なって配置されるスケール列)とがX軸方向に相対的に移動している際に、ヘッド54内のある一組のヘッドが上述のスケール間の隙間に同時に対向した後で別のスケールに同時に対向した場合に、その乗り継いだヘッドの計測初期値を算出する必要がある。その際に、乗り継いだヘッドとは別の、ヘッド60内の残りの一組のヘッドと、それとは更に別の1つのヘッド(X軸方向に離れて且つ、落ちたヘッドとの距離がスケール長よりも短い位置に配置されるもの)の出力とを用いて、乗り継いだヘッドの乗継の際の初期値を算出するようにしても良い。上述の更に別のヘッドは、X軸方向の位置計測用ヘッドでもY軸方向の位置計測用ヘッドでも構わない。
【0091】
また、各実施形態に係る基板エンコーダシステム60は、基板ステージ装置20が基板ローダとの基板交換位置まで移動する間の位置情報を取得するために、基板ステージ装置20又は別のステージ装置に基板交換用のスケールを設け、下向きのヘッド(Xヘッド68sxなど)を使って基板ステージ装置20の位置情報を取得しても良い。あるいは、基板ステージ装置20又は別のステージ装置に基板交換用のヘッドを設け、スケールや基板交換用のスケールを計測することによって基板ステージ装置20の位置情報を取得しても良い。
【0092】
また、各実施形態に係るマスクエンコーダシステム50は、マスクステージ装置14がマスクローダとのマスク交換位置まで移動する間の位置情報を取得するために、マスクステージ装置14又は別のステージ装置にマスク交換用のスケールを設け、ヘッドユニット54を使ってマスクステージ装置14の位置情報を取得しても良い。また、エンコーダシステムとは別の位置計測系(たとえばステージ上のマークとそれを観察する観察系)を設けてステージの交換位置制御(管理)を行っても良い。
【0093】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、例えばDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0094】
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0095】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、例えば有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0096】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、例えばウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、例えばフィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0097】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【0098】
なお、上記実施形態で引用した露光装置などに関する全ての米国特許出願公開明細書及び米国特許明細書の開示を援用して本明細書の記載の一部とする。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上説明したように、本発明の露光装置及び露光方法は、照明光により物体を露光するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの生産に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの生産に適している。
【符号の説明】
【0100】
10…液晶露光装置、14…マスクステージ装置、20…基板ステージ装置、24…基板ホルダ、40…マスクホルダ、50…マスクエンコーダシステム、54…ヘッドステージ、60…基板エンコーダシステム、64…ヘッドステージ、90…主制御装置、M…マスク、P…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11