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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】生体用電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/268 20210101AFI20221115BHJP
   A61B 5/271 20210101ALI20221115BHJP
   A61B 5/276 20210101ALI20221115BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20221115BHJP
【FI】
A61B5/268
A61B5/271
A61B5/276 200
A61B5/256 210
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021543836
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2019034575
(87)【国際公開番号】W WO2021044512
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】松岡 裕人
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆子
(72)【発明者】
【氏名】都甲 浩芳
(72)【発明者】
【氏名】小野 一善
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103612(JP,A)
【文献】特開2012-183082(JP,A)
【文献】特開2012-249645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性、防水性、および可撓性を有し、中央部に開口を備える環状の環状シートと、
前記環状シートの上に形成された金属からなる環状の配線と、
前記配線を覆い、前記開口を塞いで前記環状シートの上に形成された、導電性高分子から構成された導電シートと、
前記配線に接続し、前記環状シートの環状部分より外部に引き出された接続配線と、
前記導電シートの上に、前記導電シートを覆って形成された粘着層と
を備え
前記導電シートと、前記粘着層との間の全域に形成され、防水性を有する防水シートをさらに備えることを特徴とする生体用電極。
【請求項2】
請求項1記載の生体用電極において、
前記接続配線を覆って形成され、防水性を有する防水膜をさらに備えることを特徴とする生体用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
心電や心拍数の計測は、心臓疾患の診断に限らず、熱中症予防や中枢疲労の判断、眠気検知などの体調管理、心拍トレーニングなどのスポーツを含め、幅広い分野で有用な技術である。簡易に心電や心拍を計測するために、例えば、着るだけで心電や心拍が計測可能な衣服、例えば「hitoe(登録商標)」がある。
【0003】
この種の機能性衣服では、例えば、図7に示すように、シャツ251の裏に心電を検出する2つの生体用電極200を備えている。生体用電極200は、導電性高分子がコーティングされた繊維を用いた導電性の布である。この、導電性布による生体用電極200が、シャツ241の裏面に縫い付けられている。また、このシャツに装着した計測器211で心電を計測する。計測器211では、2つの生体用電極200で測定される心臓の筋収縮時に生じる電位差より、心電を計測することができる。また、計測器211が備える無線通信機能により、計測した心電や心拍数をスマートフォンなどの端末機器に送信する(非特許文献1)。
【0004】
心電を計測する場合、医師や検査技師が所定の場所に電極を貼り付けて計測することになるが、上述した衣服を用いることで、着るだけで電極が適切な位置に配置されて貼り付けられる状態となる。このため、ユーザは、簡単に心電や心拍を計測することができ、これらを活用したサービスを簡単に受けることが可能となる。
【0005】
ところで、上述した技術では、シャツ251が汗などで濡れた場合、シャツ251に取り付けられている2つの生体用電極200の間の抵抗が下がり、計測できる心電位が低くなるという問題がある。これを解決する方法として、図8に示すように、シャツ251の裏面に、絶縁テープ201を介して生体用電極200を貼り付ける技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/093194号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】塚田 信吾 他、「着るだけで心電図を測るウェアラブル電極インナー」、 NTT技術ジャーナル, vol. 26, no. 2, 15-18頁, 2014年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した技術では、導電性高分子を用いた生体用電極の導電性があまり高くないという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、導電性高分子を用いた生体用電極の導電性をより高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る生体用電極は、絶縁性、防水性、および可撓性を有し、中央部に開口を備える環状の環状シートと、環状シートの上に形成された金属からなる環状の配線と、配線を覆い、開口を塞いで環状シートの上に形成された、導電性高分子から構成された導電シートと、配線に接続し、環状シートの環状部分より外部に引き出された接続配線と、導電シートの上に、導電シートを覆って形成された粘着層とを備える。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、中央部に開口を備える環状の環状シートに、金属からなる環状の配線を設け、配線を覆い、開口を塞いで、環状シートの上に導電シートを形成したので、導電性高分子を用いた生体用電極の導電性をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の構成を示す平面図である。
図1B図1Bは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の構成を示す平面図である。
図1C図1Cは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の一部構成を示す断面図である。
図1D図1Dは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の一部構成を示す断面図である。
図2A図2Aは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の製造途中の状態を示す平面図である。
図2B図2Bは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の製造途中の状態を示す平面図である。
図2C図2Cは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の製造途中の状態を示す平面図である。
図2D図2Dは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の製造途中の状態を示す平面図である。
図2E図2Eは、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の構成を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る生体用電極100の適用例を示す構成図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る生体用電極100aの製造途中の状態を示す平面図である。
図5A図5Aは、生体用電極の詳細な構成を示す平面図である。
図5B図5Bは、生体用電極の詳細な構成を示す底面図である。
図5C図5Cは、生体用電極の詳細な構成を示す右側面図である。
図5D図5Dは、生体用電極の詳細な構成を示す左側面図である。
図5E図5Eは、生体用電極の詳細な構成を示す正面図である。
図5F図5Fは、生体用電極の詳細な構成を示す背面図である。
図6A図6Aは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す平面図である。
図6B図6Bは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す底面図である。
図6C図6Cは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す右側面図である。
図6D図6Dは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す左側面図である。
図6E図6Eは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す正面図である。
図6F図6Fは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す背面図である。
図6G図6Gは、本発明の実施の形態に係る生体用電極の詳細な構成を示す一部断面図である。
図7図7は、生体用電極200を用いた心電計測の構成を示す平面図である。
図8図8は、生体用電極200を用いた心電計測の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る生体用電極100について図1A図1B図1C図1Dを参照して説明する。なお、図1Cは、図1Bのaa’線の断面を示す。また、図1Dは、図1Bのbb’線の断面を示す。
【0014】
生体用電極100は、平面視で環状の環状シート101と、環状シート101の上に形成された金属からなる環状の配線102と、配線102の上に形成された導電シート103と、接続配線104と、導電シート103を覆って形成された粘着層105とを備える。粘着層105により、生体用電極100を、着衣の裏面に貼り付け可能としている。
【0015】
環状シート101は、絶縁性、防水性、および可撓性を有する材料から構成され、中央部に開口101aを備える。配線102は、例えば、金属ペーストから構成することができる。また、配線102は、金属箔から構成することもできる。
【0016】
導電シート103は、配線102の上に接して形成され、配線102と電気的に接続している。また、導電シート103は、配線102を覆い、かつ開口101aを塞いで環状シート101の上(一方の面の側)に形成されている。従って、環状シート101の他方の面の側において、導電シート103は、開口101aで露出している。例えば、導電シート103は、導電性接着材などにより、配線102が形成されている環状シート101の上に接着固定されている。導電シート103は、例えば、導電性高分子がコーティングされた繊維を用いた導電性の布である。導電シート103は、導電性高分子のフィルムから構成することもできる。導電性高分子は、例えば、PEDOT-PSS[Poly(3,4-ethylenedioxythiophene) -Poly(styrenesulfonate)]である。
【0017】
また、接続配線104は、配線102に接続し、環状シート101の環状部分より外部に引き出されている。接続配線104を用い、計測器に配線102を電気的に接続する。例えば、環状シート101は、環状部分より外部に突出した配線保持部101bを備え、配線保持部101bの上に接続配線104が形成されている。また、接続配線104は、防水性を有する防水膜106に覆われている。
【0018】
ここで、粘着層105は、防水性を有する材料から構成することができる。粘着層105を、防水性を有する材料から構成することで、粘着層105の側から導電シート103への水分の滲入(浸入)が防止できる。また、図示していないが、導電シート103と、粘着層105との間の全域に、防水性を有する防水シートを備える構成とすることもできる。このように防水シートを備えることで、粘着層105の側から導電シート103への水分の滲入(浸入)が防止できる。
【0019】
次に、実施の形態に係る生体用電極100の作製について、図2A図2Eを参照して説明する。まず、図2Aに示すように、環状シート101に、配線102,接続配線104を形成する。例えば、銀ペーストなどの金属ペーストのパターンを、スクリーン印刷法などにより形成することで、配線102,接続配線104とすることができる。
【0020】
次に、図2Bに示すように、配線保持部101bにおいて、接続配線104の上に防水膜106を形成する。例えば、防水性を有する高分子材料のフィルムを貼り付けることで、防水膜106とすることができる。
【0021】
次に、図2Cに示すように、導電シート103を用意し、用意した導電シート103の一方の面に粘着層105を貼り付ける。
【0022】
次に、一方の面に粘着層105を貼り付けた導電シート103を、環状シート101の配線102が形成されている面に貼り付け、図2Dに示すように、生体用電極100とする。この後、図2Eに示すように、配線保持部101bの先端領域において、端子107を取り付ける。端子107は、防水膜106に形成された貫通穴108を介し、接続配線104に電気的に接続している。
【0023】
次に、生体用電極100の適用例について、図3を参照して説明する。生体用電極100は、シャツ151の裏面に貼り付けて用いることができる。2つの生体用電極100を、心臓の位置を挾むように、シャツ151の裏面に貼り付ける。2つの生体用電極100の各々は、配線保持部101bに設けられている接続配線(不図示)により、計測器111に接続される。計測器111は、例えば、心電計測器であり、無線通信機能を備えている。計測器111は、2つの生体用電極100で測定される心臓の筋収縮時に生じる電位差より、心電を計測することができる。また、計測器111が備える無線通信機能により、計測した心電や心拍数をスマートフォンなどの端末機器に送信する。
【0024】
シャツ151が、ユーザに着衣されると、シャツ151の裏面に貼り付けられている生体用電極100の、環状シート101の開口101aに露出する導電シート103が、ユーザの体表面に接触する状態となる。2つの生体用電極100の導電シート103が、心臓の位置を挾んで、ユーザの体表面に接触する。一方、配線102(接続配線104)は、ユーザの体表面との間に環状シート101が存在し、ユーザの体表面に接触することはない。
【0025】
心臓の筋収縮時に生じる電位は、体表面に接触している導電シート103、配線102、接続配線104の経路で電導し、計測器111で計測される。このようにして、2つの生体用電極100で測定される心臓の筋収縮時に生じる電位の差より、計測器111は、心電を計測する。
【0026】
実施の形態に係る生体用電極100によれば、体表面に接触可能とされている導電シート103に、配線102が接続され、配線102は、接続配線104により計測器111に接続される。従って、導電シートのみで生体用電極とする従来と比較し、導電シート103と、計測器111との間の電気抵抗が低下し、より高い導電性が得られる。この結果、ユーザの心電など、ユーザの生体情報をより正確に計測することができる。
【0027】
また、生体用電極100は、防水性を有する材料から構成された粘着層105で、シャツ151に貼り付けられている。従って、生体用電極100とシャツ151との間の絶縁分離が確保される。このため、シャツ151を着用するユーザが汗をかき、シャツ151が汗で濡れて電気抵抗が下がったとしても、2つの生体用電極100の間の絶縁分離は確保され、心電を正確に計測することが可能である。
【0028】
上述した実施の形態に係る生体用電極100によれば、導電性高分子を用いた生体用電極の導電性をより高くすることができる。
【0029】
ところで、図4に示すように、絶縁性、防水性、および可撓性を有するシート101’に、電位計測回路を内蔵する計測器122を実装することで、心電、筋電、および表面電位を計測するシステムを構成することができる。シート101’は、中央部に、A/D変換器121,計測器122,無線通信回路123、電池124などを実装する。また、シート101’は、中央部を挾み、2つの生体用電極100aを備える。シート101’は、2つの環状シート101を一体にしている。2つの生体用電極100aで測定された電位は、A/D変換器121でデジタル変換され、計測器122で計測される。計測器122では、デジタル変換された2つの値の差より、心電を計測する。また、計測器122で計測された心電が、無線通信回路123により、無線端末に送信される。
【0030】
以下、生体用電極のより詳細な構成について、図5A図5B図5C図5D図5E図5Fに示す。また、本発明に係る生体用電極のより詳細な構成について、図6A図6B図6C図6D図6E図6F図6Gに示す。
【0031】
以上に説明したように、本発明によれば、中央部に開口を備える環状の環状シートに、金属からなる環状の配線を設け、配線を覆い、開口を塞いで、環状シートの上に導電シートを形成したので、導電性高分子を用いた生体用電極の導電性をより高くすることができる。また、本発明によれば、防水性を有する材料から環状シートを構成し、防水性を有する材料から粘着層を構成し、また、導電シートと粘着層との間の全域に、防水性を有する防水シートを備えるようにしたので、導電性の向上とともに、より高い防水性が得られる。
【0032】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0033】
100…生体用電極、101…環状シート、101a…開口、101b…配線保持部、102…配線、103…導電シート、104…接続配線、105…粘着層、106…防水膜。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7
図8