(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-14
(45)【発行日】2022-11-22
(54)【発明の名称】細胞評価システム及び方法、細胞評価プログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20221115BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221115BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/02
(21)【出願番号】P 2019515746
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2018017499
(87)【国際公開番号】W WO2018203568
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2017091957
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 戦略的創造研究推進(さきがけ)事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】517110494
【氏名又は名称】シンクサイト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 昌士
(72)【発明者】
【氏名】河村 踊子
(72)【発明者】
【氏名】太田 禎生
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価システムにおいて、
流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピングすることで物理的に計測する物理的計測手段と、
上記物理的計測手段により計測された計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との
3段階以上の連関度が予め記憶されているデータベースと、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに物理的計測手段を介して計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行うことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価手段とを備えること
を特徴とする細胞評価システム。
【請求項2】
上記データベースに、複数の時系列波形の組み合わせに対する1以上の細胞特定情報が
3段階以上の連関度を介して関連付けられた判定時に細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から細胞特定情報の何れか1以上が選択される学習済みモデルを記憶させておくこと
を特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項3】
上記データベースには、複数の細胞特定情報を混合させた混合体についての時系列波形と各細胞特定情報との3段階以上の連関度を通じて学習させた学習済みモデルを記憶させ 、
上記評価手段は、新たに物理的計測手段を介して計測された上記混合体の計測情報に基づいて、細胞特定情報を特定することで評価すること
を特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項4】
上記データベースには、特定の細胞特定情報に当てはまる蓋然性が高い波形上の兆候であるポジティブな時系列波形と、特定の細胞特定情報に当てはまる蓋然性が低い波形上の兆候であるネガティブな時系列波形とを予め3段階以上の連関度を通じて時系列波形と特定の細胞特定情報の関連付けを学習させた学習済みモデルを記憶させ、
上記評価手段は、新たに物理的計測手段を介して計測された上記混合体の時系列波形に基づいて、上記学習済みモデルを使用して、
ポジティブな時系列波形の兆候が表れた場合には特定の細胞特定情報に当てはまる蓋然性を高くし、
ネガティブな時系列波形の兆候が表れた場合には特定の細胞特定情報に当てはまる蓋然性を低くすること
を特徴とする請求項3記載の細胞評価システム。
【請求項5】
上記データベースには、検知すべき細胞特定情報を特定する上でネガティブな時系列波形を予め3段階以上の連関度を通じて学習させた学習済みモデルを記憶させ、
上記評価手段は、新たに物理的計測手段を介して計測された上記混合体の時系列波形に基づいて、ネガティブな時系列波形に該当しないものを検知すべき細胞特定情報として特定すること
を特徴とする請求項3記載の細胞評価システム。
【請求項6】
前記細胞特定情報が、細胞種、細胞フェノタイプ、細胞特性、細胞内分子局在、細胞内構造、細胞形態、細胞成熟度から選ばれる情報の
いずれかであることを特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項7】
前記連関度が、
機械学習を通じて更新が可能なモデル、ニューラルネットワーク、あるいは深層学習がなされることを前提としたネットワークの何れかで構成されること
を特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項8】
前記計測情報である信号強度の時系列波形が、前記一以上の細胞の電磁波、蛍光、位相、透過、分光、多色、散乱、反射、コヒーレントラマン、ラマン又は吸収・散乱・透過・ 蛍光スペクトル、音、テラヘルツ、インピーダンスの何れかによる前記物理的計測手段により計測されること
を特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項9】
前記構造化された励起光又は照明光が、特定の濃淡パターンを介して励起光又は照明光が発光されることにより、励起光又は照明光を流路中に流下する計測対象の細胞群に照射されること
を特徴とする請求項1記載の細胞評価システム。
【請求項10】
細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価方法において、
流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光
又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピング
することで物理的に計測し、
上記計測した計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との
3段階以上の連関度を予めデータベースに記憶させ、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行なうことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価を行うこと
を特徴とする細胞評価方法。
【請求項11】
細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価プログラムにおいて、
流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光
又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピング
することで物理的に計測し、
上記計測した計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との
3段階以上の連関度を予めデータベースに記憶させ、
上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行なうことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価をコンピュータに実行させること
を特徴とする細胞評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞の評価を自動的に行う上で好適な細胞評価システム及び方法、細胞評価プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物を構成する最小単位は細胞である。従来より、生物の機能や構造、形態等について各種解明を行う場合には、あくまで細胞群を対象として行われ、これを構成する個々の細胞単位では行われてこなかった。
【0003】
しかし近年において、癌組織等において表現型が類似した細胞タイプにおいても、細胞毎に遺伝子発現が異なることが明らかになってきた。このため、細胞群単位で各種解明を行うのではなく、個々の細胞単位で解析を行う必要がある。
【0004】
このような一細胞(シングルセル)による解析を行う場合における細胞計測技術として、フローサイトメトリー法が提案されている。このフローサイトメトリー法は、個々の細胞を流体中に分散させ、その流体を微細に流下させて光学的に分析する技術であり、この技術を用いた装置をフローサイトメータと呼ぶ。このフローサイトメトリー法では、流路中に観察対象となる細胞等の微粒子を高速に流下しながら励起光を照射し、個々の細胞から発せられる蛍光輝度や散乱光の総量を取得することよって、観察対象物を評価することができる。このフローサイトメトリー法を用いると、非常に高いスループットで単一細胞の解析を行うことが可能となる。特許文献1には,フローサイトメータ及びそのフローサイトメータを用いたフローサイトメトリー法が開示されている。
【0005】
また、より詳細に個々の細胞の表現型を観察する方法として、蛍光顕微鏡やイメージングサイトメーターが知られている。これらの観察法は、観察対象物の蛍光輝度や散乱光の総量という1次元の情報だけではなく、2次元・3次元の形態情報まで取得できる。一方、フローサイトメータと異なり、観察対象物が移動しないために、ハイスループットに大量の単一細胞解析を行うことは難しい。この点、従来のフローサイトメータと同等のスループットで細胞の形態情報を高速に撮影できるイメージングフローサイトメーターが知られており(例えば、特許文献2参照。)、蛍光細胞画像を含む2次元・3次元の空間情報で細胞の表現型を評価することができる。これにより、既存のフローサイトメトリー法のスループットを維持しながら、細胞解析の情報量を飛躍的に向上させることが可能となり、細胞の表現型解析の質と量を向上させることができる。
【0006】
更に、イメージングフローサイトメーターによって生成される膨大な細胞形態情報を有効に活用するために、細胞形態情報に機械学習を用いて細胞を評価、分類する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。具体的には、事前に正解情報(教師データ)を与えて分類器を作成した上で、与えられた細胞情報の評価、分類を行う教師あり機械学習や、事前に正解情報がなく、与えられた細胞情報を評価、分類する教師なし機械学習等を用いる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5534214号公報
【文献】米国特許第6249341号公報
【文献】特願2015-212356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、教師あり機械学習を用いる場合には、正解付けをする教師は人間であり、人間が主観的に細胞を評価、分類した結果を教師データとしていた。そのため、細胞の形態情報を含めた物理的計測手段によって取得された情報は、人間が差異を判別できる範囲でしか分類、評価できず、各個人が持つバイアスを排除できないという問題があった。また、教師なし機械学習では、人間の主観的判断によらず自動で分類、評価が可能であるものの、一方で機械がどのような判断基準で分類、評価しているかを説明することができず、生物学的に意味のある分類、評価結果なのかを説明することができなかった。
【0009】
また、従来の生物学的計測手法である次世代DNA・RNAシークエンシング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAマイクロアレイ等を用いる場合には、細胞の核酸、タンパク質、代謝等の生化学的、分子生物学的情報に基づいているため、正確に細胞の分類、評価を行うことができる。しかし、これらの生物学的計測手法は、物理的計測手法に比べると遥かに高価な上に、スループットが遅く、膨大な量の単一細胞解析を行うことができないという問題点が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測して、その評価を生物学的計測情報によって正解付けすることで、高速、正確、かつ簡便に細胞の評価、分類を自動的に行うことが可能な細胞評価システム及び方法、細胞評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決するために、データベースに予め記憶されている、細胞を評価するための生物学的計測情報にそれぞれが紐付けられた参照用計測情報との3段階以上の連関度を参照し、新たに計測された細胞の計測情報に基づいて、上記参照用計測情報を探索するとともに、探索した上記参照用計測情報に紐付けられた生物学的計測情報により上記細胞を評価する細胞評価システム及び方法、細胞評価プログラムを発明した。
【0014】
即ち、本発明に係る細胞評価システムは、細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価システムにおいて、流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピングすることで物理的に計測する物理的計測手段と、上記物理的計測手段により計測された計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との3段階以上の連関度が予め記憶されているデータベースと、上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに物理的計測手段を介して計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行うことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価手段とを備えることを特徴とする細胞評価システム。
【0016】
本発明に係る細胞評価方法は、細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価方法において、流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピングすることで物理的に計測し、上記計測した計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との3段階以上の連関度を予めデータベースに記憶させ、上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行なうことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る細胞評価プログラムは、細胞群の中から一以上の細胞を物理的に計測してその細胞を評価する細胞評価プログラムにおいて、流路中に流下する計測対象の細胞群に対して、構造化された励起光又は照明光を照射し、個々の細胞について時系列的に上記励起光又は上記照明光と相互作用させ、当該細胞の光学的な空間情報を時系列波形にマッピングすることで物理的に計測し、上記計測した計測情報である信号強度の時系列波形と、細胞特定情報との3段階以上の連関度を予めデータベースに記憶させ、上記データベースに記憶されている連関度を参照し、新たに計測された細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行なうことで前記新たに測定された細胞の細胞特定情報を特定する評価をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明を適用した細胞評価システムによれば、イメージングフローサイトメーター分析部を介して新たに取得した細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、上述した連関度を参照することで参照用計測情報を選択し、更にこの参照用計測情報から生物学的計測情報を介して細胞種を判別し、ひいては細胞を評価することが可能となる。しかも本発明を適用した細胞評価システムによれば、これらの評価動作を人手を介することなく自動的に行うことが可能となる。これにより、新たに取得した細胞の計測情報である信号強度の時系列波形から、観察者の主観的判断によらず、生物学的に正しい正解情報に基づく細胞情報の分類、評価を高速かつ正確に行うことが可能となる。またイメージングフローサイトメーター分析部によるイメージングフローサイトメトリー技術により特定される個々の細胞について何れも自動的に細胞種を特定し、ひいては細胞を評価することも可能となることから、当該技術が生み出す膨大な情報量を有効に活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態における細胞評価システムのブロック構成図である。
【
図2】イメージングフローサイトメーター分析部の詳細な構成を示す図である。
【
図3】計測対象の細胞を峻別する方法について説明するための図である。
【
図4】データベースに記憶されている、計測情報と、参照用計測情報との3段階以上の連関度を示す図である。
【
図5】選択した参照用計測情報から細胞種を特定するまでのプロセスを示す図である。
【
図6】参照用計測情報を選択することで、生物学的計測情報を介して即座に細胞種を特定する例を示す図である。
【
図7】計測情報と、生物学的計測情報との3段階以上の連関度を示す図である。
【
図8】第2実施形態における細胞評価システムのブロック構成図である。
【
図9】第2実施形態における学習済みモデルの例を示す図である。
【
図10】細胞特定情報毎に時系列波形をそれぞれタグ付けして学習させる例を示す図である。
【
図11】複数の細胞特定情報を混合させた混合体についての時系列波形と各細胞特定情報との3段階以上の連関度を通じて学習させる例を示す図である。
【
図12】検知すべき細胞特定情報を特定する上でポジティブな時系列波形と、ネガティブな時系列波形に基づき学習済みモデルを構築する例を示す図である。
【
図13】ポジティブな兆候とネガティブな兆候を細胞特定情報と共に取得することで学習済みモデルを作る例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した細胞評価システムについて、図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0022】
第1実施形態
図1は、本発明を適用した細胞評価システム1の第1実施形態を示している。細胞評価システム1は、光源2と、光源2からの光が照射されるイメージングフローサイトメーター分析部3と、イメージングフローサイトメーター分析部3からの光情報を受光する受光部4と、光源2、イメージングフローサイトメーター分析部3及び受光部4にそれぞれ接続される制御部5と、光源2、受光部4及び制御部5にそれぞれ接続される評価部6と、評価部6、受光部4に接続されるデータベース7とを備えている。
【0023】
光源2は、イメージングフローサイトメーター分析部3における分析に必要な光を発光する。イメージングフローサイトメーター分析部3は、イメージングフローサイトメトリー法に基づき、個々の細胞を流体中に分散させ、その流体を微細に流下させて光学的に分析し、細胞の形態情報を取得する。このイメージングフローサイトメーター分析部3の詳細は、後段において詳述する。
【0024】
受光部4は、イメージングフローサイトメーター分析部3によるイメージングフローサイトメトリー法を介して得られる光情報を受光するためのセンサで構成される。制御部5は、光源2、イメージングフローサイトメーター分析部3、受光部4、評価部6を制御するための中央制御ユニットとしての役割を担う。この制御部5は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、タブレット型端末等で構成される。
【0025】
評価部6は、受光部4から得られた光情報を取得し、更にデータベースに記憶されている情報を参照し、イメージングフローサイトメーター中を流下する細胞を評価する。この細胞の評価は、細胞種の判別、細胞の機能や特性等が含まれる。この評価部6も同様に、PC、携帯端末、スマートフォン、ウェアラブル端末、タブレット型端末等で構成される。ちなみに、この評価部6は、上述した制御部5と同一デバイスで構成されていてもよい。データベース7は、上述した評価部6による細胞の評価を行う上で必要な情報を記憶するためのハードディスク等で構成されている。
【0026】
図2は、イメージングフローサイトメーター分析部3の詳細な構成を示している。このイメージングフローサイトメーター分析部3は、流路31中を流れる個々の細胞8につき、3次元的な蛍光画像を取得する。このイメージングフローサイトメーター分析部3は、第1対物レンズ32と、第1ビームスプリッタ33と、第1レンズ34と、第2レンズ35と、第2ビームスプリッタ36と、第2対物レンズ38と、ミラー39と、第3レンズ40と、第4レンズ41とを備えている。
【0027】
第1対物レンズ32は、光源2から供給されてくる光を流路31中に焦点を合わせ、また流路31から反射する戻り光を集光して、これを第1ビームスプリッタ33へと送る。第1ビームスプリッタ33は、光源2から発光された光をそのまま通過させると共に、第1対物レンズ32からの戻り光を反射させる役割を担う。第1レンズ34、第2レンズ35は、第1ビームスプリッタ33を反射した戻り光の焦点位置やスポット径の調整等を行う。第2ビームスプリッタ36は、第2レンズ35を通過した戻り光の一部を第2対物レンズ38に向けて反射させると共に、戻り光の一部をそのまま通過させる。第2対物レンズ38は、第2ビームスプリッタ36を反射してくる戻り光をミラー39へ導き、またミラー39から反射してきた戻り光を集光し、これについて第2ビームスプリッタ36を通過させて第4レンズ41へと導く。ミラー39は、第2対物レンズ38からの戻り光を反射する。第3レンズ40は、第2ビームスプリッタ36を通過した戻り光を集光して受光部4を構成する第1受光センサ4aに結像させる。第4レンズ41は、第2ビームスプリッタ36を通過した戻り光を集光して受光部4を構成する第2受光センサ4bに結像させる。なお、このイメージングフローサイトメーター分析部3の各構成要素は、制御部5による制御に基づいて動作することとなる。このイメージングフローサイトメーター分析部3は、US2015/0192767A1の開示技術を流用するものであってもよい。
【0028】
第1受光センサ4aは、結像された戻り光の光情報に基づいて、細胞8のx-y平面画像を撮像する。第2受光センサ4bは、結像された戻り光の光情報に基づいて、細胞8のx-z平面画像を撮像する。第1受光センサ4a、第2受光センサ4bは、それぞれ受光した各平面画像の光情報を電気信号に変換して、これを評価部6やデータベース7へ送信する。第1受光センサ4a、第2受光センサ4bは、それぞれ制御部5による制御に基づいて動作することとなる。
【0029】
次に、上述した構成からなる細胞評価システム1の動作について説明をする。イメージングフローサイトメーター分析部3は、上述した構成に基づき、流路31中を流れる一以上の細胞を物理的に計測する。この細胞8の物理的な計測は、可視画像、電磁波、蛍光、位相、透過、分光、多色、散乱、反射、コヒーレントラマン、ラマン又は吸収・散乱・透過・蛍光スペクトル、音、テラヘルツ、インピーダンスの何れかを介して行う。以下では、蛍光画像を3次元的に計測する場合を例にとり説明をする。
【0030】
先ず計測対象の細胞8の種類、形態は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されるものではなく、目的に応じて計測対象の細胞を選択することができる。したがって、本発明の計測対象としての細胞8は、浮遊細胞であってもよく、接着細胞であってもよい。明細胞には、細菌(単細胞生物)も含まれる。また2以上の細胞を計測対象してもよく、かかる場合には、複数の細胞があつまった塊(スフェロイド等)を計測対象としてもよい。
【0031】
また計測対象の細胞8を峻別する上では、
図3に示すように、少なくとも一つの細胞8と少なくとも一つのビーズ9とを備えたコンパートメント91を準備し、各コンパートメント91における細胞8の3次元的な蛍光画像のイメージング情報とビーズ9のイメージング情報とを共に測定することを経時的に繰り返すようにしてもよい。各コンパートメント91におけるビーズ9のイメージング情報を各コンパートメント91における細胞8を特定する上での指標とする。
【0032】
計測対象の細胞8の数は、シングルセル解析の観点からは、1コンパートメント91当たり1つであることが望ましいが、これに限定されるものではなく、1コンパートメント91当たりの細胞8の数を複数としてもよい。t=0(min)からt=10(min)まで時系列的に細胞8が変態し、或いは動的挙動を示す場合においても、ビーズ9を指標とすることで、そのコンパートメント91を特定することができ、ひいてはこれに含まれる細胞8を特定することが可能となる。その結果、一つの細胞8に着目した時系列的な動的変化データを連続的に取得することが可能となる。
【0033】
流路31を流れる細胞8に対して、光源2からの可視域の光が第1対物レンズ32から照射され、その戻り光は、第1対物レンズ32により集光され、第1ビームスプリッタ33を反射し、第1レンズ34、35を通過する。更にこの戻り光の一部は、第2ビームスプリッタ36をそのまま通過して第3レンズ40を介して第1受光センサ4aに結像される。またこの戻り光の他の一部は、第2ビームスプリッタ36を反射し、ミラー39を反射した上で、第4レンズ41を介して第2受光センサ4bに結像される。
【0034】
その結果、第1受光センサ4aにより細胞8のx-y平面画像が撮像され、第2受光センサ4bにより細胞8のx-z平面画像が撮像される結果、この細胞8の3次元的な蛍光画像が形成されることとなる。細胞8が流路31中の第1対物レンズ32による撮像範囲を通過する過程で、この撮像動作を連続して行うことにより、細胞8の3次元的な全体像の蛍光画像の光情報を取得することも可能となる。
【0035】
このようにして第1受光センサ4a、第2受光センサ4bを介して得られた計測情報は、評価部6、データベース7へと送られる。
【0036】
なお上述した動作例は、細胞8の3次元的な蛍光画像を物理的な計測情報として取得する場合について説明をしたが、仮に2次元的な平面画像を物理的な計測情報として取得する場合には、第1受光センサ4aによるx-y平面画像、第2受光センサ4bによるx-z平面画像の何れかを取得すればよい。
【0037】
評価部6は、第1受光センサ4a、第2受光センサ4bから送られてきた細胞8の物理的な計測情報を解析することにより、細胞8を新たに評価する。この評価部6は、この評価の過程において、データベース7に記憶されている情報を参照する。
【0038】
このデータベース7には、
図4に示すように、予め計測情報と、参照用計測情報との3段階以上の連関度が予め記憶されている。
【0039】
上述したイメージングフローサイトメーター分析部3により撮像された計測情報としての細胞の画像がこの連関度を介して左側に配列し、参照用計測情報がこの連関度を介して右側に配列している。参照用計測情報は、いわゆる細胞の画像の典型例を羅列したものである。この参照用計測情報は、細胞の形態上の特徴に応じて、例えば画像A~Kに分類されている。
【0040】
この連関度は、新たにイメージングフローサイトメーター分析部3等を通じて撮像された計測情報としての細胞の画像が、この参照用計測情報として予め細胞の形態毎に定義された画像A~Kの何れと関連性が高いかを示すものである。また計測情報としての細胞の画像も
図4に示すように画像P11~P16に予め類型化されている。このように計測情報と参照用計測情報は、予め画像毎に類型化されており、その類型化された計測情報の画像P11~P16と、参照用計測情報の画像A~Kとが互いに3段階以上の連関度を介し
て互いに関連付けられている。この連関度は、換言すれば、計測情報の画像が、いかなる参照用計測情報の画像に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、計測情報から参照用計測情報を選択する上での的確性を示すものである。
【0041】
例えば、計測情報の画像P11は、参照用計測情報の画像Aと連関度80%、画像Bと連関度60%、画像Hと連関度40%、画像Jと連関度20%であることが示されている。同様に計測情報の画像P13は、参照用計測情報の画像Dと連関度100%、画像Eと連関度80%、画像Fと連関度60%であることが示されている。同様に計測情報の画像P15は、参照用計測情報の画像Hと連関度80%、画像Dと連関度40%、画像Aと連関度20%であることが示されている。ちなみに
図4中の計測情報と参照用計測情報との間をつなぐ線の太さがその連関度の大きさを示しており、計測情報と参照用計測情報との間で線が連結されていない場合には、連関度が0%であることを意味している。
【0042】
なお連関度は、いわゆる機械学習を通じて更新が可能なモデルで構成されていてもよく、ニューラルネットワークで構成されていてもよい。またこの連関度は、深層学習がなされることを前提としたネットワークで構成されていてもよい。
【0043】
評価部6は、このようにデータベース7に記憶されている連関度を参照し、受光部4(第1受光センサ4a、第2受光センサ4b)を介して新たに取得した細胞8の計測情報が何れの参照用計測情報に該当する可能性が高いかを判別する。受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報が、計測情報において予め累計した画像P14に類似するのであれば、この画像P14と連関度の高い参照用計測情報の画像Gに最も該当する可能性が高いことを判別し、次に画像Cに該当する可能性が高いことを判別する。受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報が、計測情報において予め累計した画像P16に類似するのであれば、この画像P16と連関度の高い参照用計測情報の画像Jに最も該当する可能性が高いことを判別し、次に画像Kに該当する可能性が高いことを判別する。
【0044】
評価部6は、受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報に基づき、これら連関度を参照することにより、参照用計測情報の画像を選択する作業を行う。このとき、評価部6は、受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報と最も連関度の高い参照用計測情報の画像を選択するようにしてもよい。上述したように連関度が高いほど、その選択の的確性が高くなるためである。しかし、評価部6は、最も連関度の高い参照用計測情報の画像を選択する場合に限定されることはなく、連関度が中程度のもの、又は連関度が低いものをあえて選択するようにしてもよい。また、これ以外に計測情報と参照用計測情報との間で矢印が繋がっていない連関度が0%である参照用計測情報を選択してもよいことは勿論である。ちなみに評価部6は、この参照用計測情報を一つ選択する場合に限定されるものではなく、連関度を参照した上であえて複数の参照用計測情報を選択するようにしてもよい。
【0045】
次に評価部6は、選択した参照用計測情報から細胞種を特定する。
図5は、選択した参照用計測情報から細胞種を特定するまでのプロセスを示している。各参照用計測情報は、それぞれ生物学的計測情報に紐付けられている。この参照用計測情報と生物学的計測情報は、通常1対1で紐付けられているが、これに限定されるものではなく、1対複数、複数対1、又は複数対複数で互いに紐付けられていてもよい。
【0046】
この生物学的計測情報は、細胞種を特定するために、例えば、トランスクリプトーム、ゲノム、エピゲノム、タンパク質、代謝物、糖、脂質、細胞の時系列的変化傾向等を介して計測された情報である。この生物学的計測情報は、参照用計測情報を構成する画像A~Kの細胞毎に予めトランスクリプトームやゲノム等を介して取得された情報である。画像A~Kの各細胞についてこの生物学的計測情報を取得することにより、その画像A~Kの各細胞の正確な細胞の種類を把握することが可能となる。各生物学的計測情報とそこから特定される細胞種は通常1:1で対応する。この
図5の例では、参照用計測情報の画像Aの細胞の生物学的計測情報を取得した結果、「ゲノム○○○」であった場合、その「ゲノム○○○」から細胞種aを特定することが可能となる。参照用計測情報の画像Bの細胞の生物学的計測情報を取得した結果、「脂質の時系列的変化傾向△△△」であった場合、その「脂質の時系列的変化傾向△△△」から細胞種bを特定することが可能となる。参照用計測情報の画像Kの細胞の生物学的計測情報を取得した結果、「トランスクリプトーム□□□」であった場合、その「トランスクリプトーム□□□」から細胞種kを特定することが可能となる。更にこの生物学的計測情報は、より精細または異なる光学的情報を取得する光学イメージング計測情報を含む。つまり、生物学的計測情報は、細胞種等以外に、イメージング(形態)解析結果も含む概念である。
【0047】
データベース7には、この
図5に示すような参照用計測情報毎に対応する生物学的計測情報が記憶され、さらにこの生物学的計測情報から特定される細胞種が記憶されている。このため評価部6は、このデータベース7を参照することにより、選択した参照用計測情報に紐付けられる生物学的計測情報を判別し、その判別した生物学的計測情報により特定される細胞種を判別する。
【0048】
即ち、評価部6は、
図6に示すように参照用計測情報を選択することができれば、この生物学的計測情報を介して即座に細胞種を判別することが可能となる。評価部6は、判別した細胞種を図示しないディスプレイ等を始めとした表示部を介して表示する。これによりユーザは、図示しない表示部を視認することにより、新たに取得した細胞8の細胞種を即座に把握することが可能となる。
【0049】
即ち、本発明を適用した細胞評価システム1によれば、イメージングフローサイトメーター分析部3を介して新たに取得した細胞の計測情報から、上述した連関度を参照することで参照用計測情報を選択し、更にこの参照用計測情報から生物学的計測情報を介して細胞種を判別することが可能となる。しかも本発明を適用した細胞評価システム1によれば、これらの評価動作を人手を介することなく自動的に行うことが可能となる。これにより、物理的計測情報に基づいて、観察者の主観的判断によらず、生物学的に正しい正解情報に基づく細胞情報の分類、評価を高速かつ正確に行うことが可能となる。またイメージングフローサイトメーター分析部3によるイメージングフローサイトメトリー技術により特定される個々の細胞について何れも自動的に細胞種を特定することも可能となることから、当該技術が生み出す膨大な情報量を有効に活用することが可能となる。
【0050】
また、本発明を適用した細胞評価システム1では、3段階以上に設定されている連関度を介して参照用計測情報の探索を行う点に特徴がある。連関度は、例えば0~100%までの数値で記述することができるが、これに限定されるものではなく3段階以上の数値で記述できるものであればいかなる段階で構成されていてもよい。
【0051】
このような3段階以上の数値で表される連関度に基づいて探索することで、複数の参照用計測情報が選ばれる状況下において、当該連関度の高い順に探索して表示することも可能となる。このように連関度の高い順にユーザに表示できれば、より可能性の高い参照用計測情報を優先的に選択し、ひいてはそこから特定される細胞種を表示することもできる。一方、連関度の低い参照用計測情報であってもセカンドオピニオンという意味で、そこから特定される細胞種を表示することができ、ファーストオピニオンにおいて表示された細胞種が理解できない場合等において有用性を発揮することができる。
【0052】
これに加えて、本発明によれば、連関度が1%のような極めて低い参照用計測情報も見逃すことなく判断することができる。連関度が極めて低い参照用計測情報であっても僅かな兆候として繋がっているものであり、何十回、何百回に一度は、参照用計測情報として役に立つ場合もあることをユーザに対して注意喚起することができる。
【0053】
更に本発明によれば、このような3段階以上の連関度に基づいて探索を行うことにより、閾値の設定の仕方で、探索方針を決めることができるメリットがある。閾値を低くすれば、上述した連関度が1%のものであっても漏れなく拾うことができる反面、正解の可能性が低い参照用計測情報に基づく細胞種を沢山拾ってしまう場合もある。一方、閾値を高くすれば、正解の可能性が高い参照用計測情報により特定される細胞種のみ絞り込むことができる反面、何十回、何百回に一度は好適な解を表示する参照用計測情報により特定される細胞種を見落としてしまう場合もある。いずれに重きを置くかは、ユーザ側、システム側の考え方に基づいて決めることが可能となるが、このような重点を置くポイントを選ぶ自由度を高くすることが可能となる。
【0054】
また、本発明によれば、
図3の計測情報について、各計測情報P11~P16それぞれに対して参照用計測情報の連関度が予め設定されている場合を例にとり説明をしたが、これに限定されるのではない。計測情報の組み合わせと、参照用計測情報との3段階以上の連関度が予め記憶され、新たに物理的に計測された2以上の計測情報に基づいて評価を行うようにしてもよい。
【0055】
かかる場合には、例えば計測情報P11と、P12の組み合わせに対して、参照用計測情報Dの連関度が60%、参照用計測情報Eの連関度が40%等のように定義されているものとする。或いは計測情報P13、P14、P15の3つの組み合わせに対して参照用計測情報Hの連関度が20%、参照用計測情報Iの連関度が50%、参照用計測情報Jの連関度が70%等のように定義されている。
【0056】
新たに取得した2以上の計測情報が仮に計測情報P11と、計測情報P12であった場合、このような連関度を参照すると、参照用計測情報Dの連関度が60%、参照用計測情報Eの連関度が40%等である旨を判別することができる。これら連関度を参照して参照用計測情報を同様に選択することとなる。同様に、新たに取得した2以上の計測情報が仮に計測情報P13と、計測情報P14と、計測情報P15であった場合、このような連関度を参照すると、参照用計測情報Hの連関度が20%、参照用計測情報Iの連関度が50%、参照用計測情報Jの連関度が70%である旨を判別することができる。これら連関度を参照して参照用計測情報を同様に選択することとなる。
【0057】
この計測情報の組み合わせと、参照用計測情報との3段階以上の連関度を参照する例は、特に細胞の撮像画像の集合間において比較検証を行う、いわゆるマルチインスタンス学習等に適用するようにしてもよい。
【0058】
かかる場合には、ある疾患に関する細胞画像をそれぞれ参照用計測情報として記憶しておく。次に、ある患者Aの複数の細胞それぞれに対して計測情報としての細胞画像を複数撮像し、連関度を参照することで参照用計測情報に相当する疾患に該当するか否かを判別するようにしてもよい。
【0059】
本発明では、上述した連関度を更新させるようにしてもよい。つまり、
図4に示すような計測情報と、参照用計測情報を随時更新していく。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。また、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0060】
この連関度の更新は、計測情報と、参照用計測情報との関係性に関する情報が入る都度、連関度を上昇させ、或いは下降させる。例えば、ある計測情報の画像が、ある参照用計測情報の画像に対応していることが論文や学会発表、その他実験的検証に基づく研究データ等を通じて新たに確認できた場合、その計測情報の画像と参照用計測情報の画像との連関度を上昇させる。また、ある計測情報の画像が、ある参照用計測情報の画像に対応していないことが論文や学会発表、その他実験的検証に基づく研究データ等を通じて新たに確認できた場合、その計測情報の画像と参照用計測情報の画像との連関度を下降させる。
【0061】
連関度は、上述したように3段階以上とされていることで、このような連関度の上昇させたい場合、又は下降させたい場合に自在に対応することが可能となる。この連関度の更新そのものを上述した機械学習、深層学習を通じて行うようにしてもよい。
【0062】
さらに今までに無い計測情報が新たに撮像された場合、これが実はある参照用計測情報に対応していることが実験的に確認できた場合には、これらの間に新たに連関度を設定するようにしてもよい。そして、この新たな計測情報が当該参照用計測情報に対応している報告が上がる都度、この新たに設定した連関度を徐々に上昇させるようにしてもよい。
【0063】
なお、上述した実施の形態においては、細胞種を特定するための生物学的計測情報にそれぞれが紐付けられた参照用計測情報を選択する場合を例にとり説明した。本発明は、この細胞種を特定する例に限定されるものではなく、細胞の機能や特性を評価する場合に適用するようにしてもよい。かかる場合には、
図5に示す生物学的計測情報により特定されるものが細胞種ではなく、細胞の機能や細胞の特性となる。かかる場合においても同様にそれぞれの生物学的計測情報に対する、細胞の各機能や細胞の各特性の対応関係を予め取得し、データベース7に記憶させておくこととなる。その結果、
図6に示すように、参照用計測情報の画像が選択されると、この生物学的計測情報を介して即座に細胞種に代替される細胞の各機能や細胞の各特性が即座に決定されることとなる。
【0064】
また、上述した実施の形態においては、計測情報を2次元又は3次元の蛍光画像を介して取得する場合を例にとり説明したが、他の電磁波、明視野、暗視野、蛍光、位相、透過、分光、多色、散乱、反射、コヒーレントラマン、ラマン又は吸収・散乱・透過・蛍光スペクトル、音、テラヘルツ、インピーダンスの何れかにより細胞8を物理的に計測し、そこから計測情報を得る場合も同様である。かかる場合には、参照用計測情報もその物理的計測手段に合わせて予め典型例を用意しておき、連関度で互いの関連付けを行っておく。
【0065】
例えば物理的計測手段が蛍光スペクトル分析である場合には、計測情報、参照用計測情報共に蛍光スペクトルとなる。参照用計測情報は、各波長に対するピーク位置や変化傾向等が予め類型化されている。この類型化された参照用計測情報としての蛍光スペクトルパターンに対して、細胞8から新たに取得した蛍光スペクトルからなる計測情報に基づいて、連関度を参照することで参照用計測情報を選択することとなる。
【0066】
また物理的な計測手段として、イメージングフローサイトメトリー法以外に、顕微鏡を用いたマイクロウェル内のコンパートメント観察法を含めた顕微鏡を用いる観察法、イメージングサイトメトリー法等、いかなる方法に基づくものであってもよい。また液体中を流下する細胞を物理的に計測する場合以外に、液体中には無い細胞を計測する場合においても本発明を適用するようにしてもよい。使用する顕微鏡は、光学顕微鏡(明視野、位相差、蛍光、共焦点レーザー、ラマン等を含む)、または電子顕微鏡(透過型、走査型)等であってもよい。
【0067】
また、本発明では、
図7に示すように、予め計測情報と、生物学的計測情報との3段階以上の連関度が予め記憶させるようにしてもよい。
【0068】
上述したイメージングフローサイトメーター分析部3により撮像された計測情報としての細胞の画像がこの連関度を介して左側に配列し、生物学的計測情報がこの連関度を介して右側に配列している。生物学的計測情報は、例えばそれぞれ細胞種(細胞の機能や特性等)を特定するための各種ゲノム情報等が羅列されている。この生物学的計測情報は、ゲノム情報等に応じて予め類型化されており、
図7に示すようにゲノム情報O~ゲノム情報Y等が分類されている。
【0069】
この連関度は、新たにイメージングフローサイトメーター分析部3等を通じて撮像された計測情報としての細胞の画像が、この参照用計測情報として予め分類したゲノム情報O~ゲノム情報Y等の何れと関連性が高いかを示すものであり、互いに3段階以上の連関度を介して互いに関連付けられている。この連関度は、換言すれば、計測情報の画像が、いかなる生物学的計測情報に紐付けられる可能性が高いかを示す指標であり、計測情報から生物学的計測情報を選択する上での的確性を示すものである。
【0070】
例えば、計測情報の画像P11は、生物学的計測情報のゲノム情報Oと連関度80%、ゲノム情報Pと連関度60%、ゲノム情報Vと連関度40%、ゲノム情報Xと連関度20%であることが示されている。同様に計測情報の画像P13は、生物学的計測情報のゲノム情報Rと連関度100%、ゲノム情報Sと連関度80%、ゲノム情報Tと連関度60%であることが示されている。ちなみに
図7中の計測情報と生物学的計測情報との間をつなぐ線の太さがその連関度の大きさを示しており、計測情報と参照用計測情報との間で線が連結されていない場合には、連関度が0%であることを意味している。
【0071】
なお、この連関度も同様に、いわゆる機械学習を通じて更新が可能なモデルで構成されていてもよく、ニューラルネットワークで構成されていてもよい。またこの連関度は、深層学習がなされることを前提としたネットワークで構成されていてもよい。
【0072】
評価部6は、このようにデータベース7に記憶されている連関度を参照し、受光部4(第1受光センサ4a、第2受光センサ4b)を介して新たに取得した細胞8の計測情報が何れの生物学的計測情報に該当する可能性が高いかを判別する。受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報が、計測情報において予め累計した画像P14に類似するのであれば、この画像P14と連関度の高い生物学的計測情報のゲノム情報Uに最も該当する可能性が高いことを判別し、次にゲノム情報Qに該当する可能性が高いことを判別する。受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報が、計測情報において予め累計した画像P16に類似するのであれば、この画像P16と連関度の高い生物学的計測情報のゲノム情報Xに最も該当する可能性が高いことを判別し、次にゲノム情報Yに該当する可能性が高いことを判別する。
【0073】
評価部6は、受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報に基づき、これら連関度を参照することにより、生物学的計測情報を選択する作業を行う。このとき、評価部6は、受光部4を介して新たに取得した細胞8の計測情報と最も連関度の高い生物学的計測情報を選択するようにしてもよい。上述したように連関度が高いほど、その選択の的確性が高くなるためである。しかし、評価部6は、最も連関度の高い生物学的計測情報の画像を選択する場合に限定されることはなく、連関度が中程度のもの、又は連関度が低いものをあえて選択するようにしてもよい。また、これ以外に計測情報と生物学的計測情報との間で矢印が繋がっていない連関度が0%である生物学的計測情報を選択してもよいことは勿論である。ちなみに評価部6は、この生物学的計測情報を一つ選択する場合に限定されるものではなく、連関度を参照した上であえて複数の参照用計測情報を選択するようにしてもよい。
【0074】
次に評価部6は、選択した生物学的計測情報から細胞種を特定する。生物学的計測情報はそもそも細胞種と関連付けられているものであることから、この生物学的計測情報を選択することができれば、即座に細胞種を特定することができる。また細胞種以外の細胞の機能や特性の評価と生物学的計測情報とを予め関連付けておくことにより、細胞種以外の細胞の評価を行うことも可能となる。
【0075】
このような
図7に示す計測情報と、生物学的計測情報との連関度についても更新するようにしてもよい。この更新は、例えばインターネットを始めとした公衆通信網を介して提供された情報を反映させるようにしてもよい。また、専門家による研究データや論文、学会発表や、新聞記事、書籍等の内容に基づいてシステム側又はユーザ側が人為的に、又は自動的に更新するようにしてもよい。これらの更新処理においては人工知能を活用するようにしてもよい。
【0076】
この連関度の更新は、計測情報と、生物学的計測情報との関係性に関する情報が入る都度、連関度を上昇させ、或いは下降させる。例えば、ある計測情報の画像が、ある生物学的計測情報のゲノム情報に対応していることが論文や学会発表、その他実験的検証に基づく研究データ等を通じて新たに確認できた場合、その計測情報の画像と生物学的計測情報のゲノム情報との連関度を上昇させる。また、ある計測情報の画像が、ある生物学的計測情報のゲノム情報に対応していないことが論文や学会発表、その他実験的検証に基づく研究データ等を通じて新たに確認できた場合、その計測情報の画像と生物学的計測情報のゲノム情報との連関度を下降させる。
【0077】
第2実施形態
以下、第2実施形態に係る細胞評価システム1´について図面を参照しながら詳細に説明をする。この第2実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成要素、部材に関しては、同一の符号を付すことにより以下での説明を省略する。
【0078】
図8は、本発明を適用した細胞評価システム1´の形態を示している。細胞評価システム1´は、イメージングフローサイトメーター分析部3´と、イメージングフローサイトメーター分析部3に接続されたレンズ72と、レンズ72から光が導かれるPMT(一画素素子)71とを備えている。またこの細胞評価システム1´は、PMT71により検知されたデータを評価する評価部6と、評価部6に対してそれぞれ接続された制御部7及びデータベース7とを備えている。
【0079】
この既知静止ランダム構造照明部30は、特定の濃淡パターンを介して励起光を発光する、いわゆる構造化照明を行う光構造である。この既知静止ランダム構造照明部30は、圧縮センシングによる設計方法、又はこれ以外のいかなる設計方法に基づいて設計される。このような光構造を通じて構造化された励起光又は照明光を照射することができ、サンプル面に光パターンを形成させることができる。このような既知静止ランダム構造照明部30中の流路中に計測対象となる細胞8を含む細胞群が流下する。その結果、流路中に流下する計測対象の細胞群に対して励起光が照射されることになる。個々の細胞8は、回折素子などの光学素子を通り、時系列的に励起光と相互作用することになる。当該細胞8の光学的な空間情報(形態に関する情報)を時系列波形にマッピングすることで物理的な計測を実現することができる。イメージングフローサイトメーター分析部3´は、いわゆるゴーストサイトメトリー法を適用するようにしてもよい。また得られた波形信号に基いて細胞の画像を再構成するようにしてもよいが、この細胞画像の再構成は、この第2実施形態において特段必須ではない。
【0080】
即ち、励起光は時系列に細胞8の異なる部分を励起し相互作用を起こさせ、細胞8の空間情報は時間情報に圧縮変換されることになる。イメージングフローサイトメーター分析部3´中を流れる細胞8の動きと、既知静止ランダム構造照明部30にからの励起光(照明光)の発光が進行し、励起光(照明光)と細胞の重なっている部分が変化していき、重なりの総量の時間変化を計測する。つまり、
図8に示すような横軸が時間軸であり、縦軸が信号強度軸からなる時系列波形を検出することができる。
【0081】
このような時系列波形を高速高感度な一画素素子であるPMT71により検出する。レンズ72は、イメージングフローサイトメーター分析部3´からの光をPMT71に対して導き、集光させることにより、一画素分の信号計測を行う。
【0082】
評価部6は、このようにして得られた時系列波形に基づいて、イメージングフローサイトメーター分析部3´を流れる細胞における細胞特定情報を探索する。ここでいう細胞特定情報とは、イメージングフローサイトメーター分析部3´を流れる細胞を特定するためのいかなる情報を含む概念であり、例えば細胞フェノタイプ、細胞特性、細胞種、細胞内分子局在、細胞内構造、細胞形態、細胞成熟度、それら重要な細胞キャラクタリゼーション等を規定するための情報である。以下の例では、この細胞特定情報として、イメージングフローサイトメーター分析部3´を流れる細胞の細胞種を探索する場合を例にとり説明をする。
【0083】
評価部6は、この細胞特定情報を探索するに当たり、事前に学習済みモデルをデータベース7内に構築して記憶させておく。この学習済みモデルの例を
図9に示す。
【0084】
図9に示すように、時系列波形がこの連関度を介して左側に配列し、細胞特定情報(細胞種)がこの連関度を介して右側に配列している。連関度については、上述した
図4の例と同様であるが、この例では、時系列波形が、細胞特定情報の何れと関連性が高いかを示すものである。
【0085】
例えば、時系列波形のU11は、細胞特定情報の細胞種Aと連関度80%、細胞種Bと連関度60%、細胞種Hと連関度40%、細胞種Jと連関度20%であることが示されている。同様に時系列波形のU13は、細胞特定情報の細胞種Dと連関度100%、細胞種Eと連関度80%、細胞種Fと連関度60%であることが示されている。同様に時系列波形のU15は、細胞特定情報の細胞種Hと連関度80%、細胞種Dと連関度40%、細胞種Aと連関度20%であることが示されている。ちなみに、時系列波形と細胞特定情報との間で線が連結されていない場合には、連関度が0%であることを意味している。
【0086】
なお連関度は、いわゆる機械学習を通じて更新が可能なモデルで構成されていてもよく、ニューラルネットワークで構成されていてもよい。またこの連関度は、深層学習がなされることを前提としたネットワークで構成されていてもよい。
【0087】
評価部6は、このようにデータベース7に記憶されている連関度を参照し、PMT71を介して新たに取得した細胞8の時系列波形が何れの細胞特定情報に該当する可能性が高いかを判別する。新たに取得した細胞8の時系列波形が、時系列波形U14に類似するのであれば、このU14と連関度の高い細胞特定情報の細胞種Gに最も該当する可能性が高いことを判別し、次に細胞種Cに該当する可能性が高いことを判別する。新たに取得した細胞8の時系列波形が、U16に類似するのであれば、このU16と連関度の高い細胞特定情報の細胞種Jに最も該当する可能性が高いことを判別し、次に細胞種Kに該当する可能性が高いことを判別する。
【0088】
ちなみに、新たに取得した時系列波形が、データベース7中に記憶させてある学習済みモデルの時系列波形Uのいずれに類似するかを判別する際にも、例えばディープラーニングや機械学習といった人工知能の各手法を用いるようにしてもよい。
【0089】
評価部6は、新たに取得した細胞8の時系列情報に基づき、これら連関度を参照することにより、細胞特定情報の何れか1以上を選択する作業を行う。このとき、評価部6は、受光部4を介して新たに取得した細胞8の時系列情報と最も連関度の高い細胞特定情報を選択するようにしてもよい。上述したように連関度が高いほど、その選択の的確性が高くなるためである。しかし、評価部6は、最も連関度の高い細胞特定情報の画像を選択する場合に限定されることはなく、連関度が中程度のもの、又は連関度が低いものをあえて選択するようにしてもよい。また、これ以外に時系列情報と細胞特定情報との間で矢印が繋がっていない連関度が0%である細胞特定情報を選択してもよいことは勿論である。ちなみに評価部6は、この細胞特定情報を一つ選択する場合に限定されるものではなく、連関度を参照した上であえて複数の細胞特定情報を選択するようにしてもよい。
【0090】
ちなみに、この連関度は、ニューラルネットワークのニューロンに代替されるものであってもよい。かかる場合には、複数の時系列波形の組み合わせに対する1以上の細胞特定情報が連関度を介して関連付けられた学習済みモデルを構築しておく。そして実際の判別時において、上述した方法に基づいて1以上の細胞特定情報を選択するようにしてもよい。
【0091】
図10は、細胞特定情報毎に時系列波形をそれぞれタグ付けして学習させる例を示している。つまり、各細胞種A、B毎にそれぞれ時系列波形を学習させる。細胞特定情報毎に時系列波形を3段階以上の連関度を通じて学習させた学習済みモデルを記憶させておく。このような学習済みモデルの例が上述した
図9に示すネットワークになる。次にPMT71を介して新たに取得した細胞8の時系列波形が何れの細胞特定情報(細胞種A,細胞種B)に該当するかを上述のように判別する。
【0092】
図11は、複数の細胞特定情報を混合させた混合体についての時系列波形と各細胞特定情報との3段階以上の連関度を通じて学習させる例を示している。つまり学習済みモデルの構築段階において、細胞種A、細胞種Bを混合させた混合体についての時系列波形を取得しておく。その結果得られる時系列波形は、細胞種Aに応じた兆候と、細胞種Bに応じた兆候が共に含まれるものとなっている。このような時系列波形を学習済みモデルとして学習させておき、PMT71を介して計測対象の細胞8が組み合わさった細胞群を新たに取得する。そこから得られる時系列波形から細胞種Aに応じた兆候、細胞種Bに応じた兆候をそれぞれ学習済みモデルと照らし合わせ、何れに該当するか判別する。
【0093】
かかる場合における学習済みモデルは、時系列波形を
図9に示す連関度の左側に配列し、この時系列波形は、細胞種Aに応じた兆候、細胞種Bに応じた兆候の何れか一方又は両方の兆候が組み合わさったものとなっている。このような時系列波形に対して、それぞれ細胞特定情報が連関度を介してタグ付けされて学習済みモデルを構成する。PMT71を介して計測対象の細胞8が組み合わさった細胞群から時系列波形を新たに取得し、学習済みモデルを参照した結果、これが
図11に示すように細胞種Bの兆候を含むことを判別した場合には、その取得した細胞群において細胞種Bが含まれていることを判別することが可能となる。
【0094】
図12は、検知すべき細胞特定情報を特定する上でポジティブな時系列波形と、ネガティブな時系列波形とを予め3段階以上の連関度を通じて学習させた学習済みモデルを構築する例である。
図11の例と同様に、複数の細胞特定情報を混合させた混合体についての時系列波形から、特定の細胞特定情報(例えば細胞種B)を検出する上で、ポジティブな時系列波形とネガティブな時系列的波形を予め学習させておく。ここでいうポジティブな時系列波形とは、特定の細胞特定情報(例えば細胞種B)に当てはまる蓋然性が高い波形上の兆候である。一方、ネガティブな時系列波形とは、特定の細胞特定情報(例えば細胞種B)に当てはまる蓋然性が低い波形上の兆候である。かかる場合には、時系列波形が
図9に示す連関度の左側に配列し、ポジティブかネガティブかが連関度の右側に配列し、それぞれ連関度を介して関連付けられている。
【0095】
そしてPMT71を介して計測対象の細胞8が組み合わさった細胞群から時系列波形を新たに取得し、学習済みモデルを参照した結果、ポジティブな時系列波形の兆候が現れた場合には、特定の細胞特定情報(例えば細胞種B)に当てはまる蓋然性を高くし、ネガティブな時系列波形の兆候が現れた場合には、特定の細胞特定情報(例えば細胞種B)に当てはまる蓋然性を低くする。つまり、ポジティブな時系列波形に近づくほど検知すべき細胞特定情報を判断する上でプラスに判断し、ネガティブな時系列波形に近づくほど検知すべき細胞特定情報を判断する上でプラスに判断する。最終的にこの特定の細胞特定情報に当てはまるポジティブな兆候とネガティブな兆候を総合的に見極め、特定の細胞特定情報に当てはまる蓋然性を判断していくことになる。
【0096】
かかる場合において、検知すべき細胞特定情報を特定する上でネガティブな時系列波形のみを予め3段階以上の連関度を通じて学習させた学習済みモデルを記憶させておくようにしてもよい。そしてPMT71を介して計測対象の細胞8が組み合わさった細胞群から時系列波形を新たに取得した場合には、ネガティブな時系列波形に該当するか否かを学習済みモデルを参照して判断する。その結果、ネガティブな時系列波形に該当しないものを検知すべき細胞特定情報として特定するようにしてもよい。
【0097】
図12中の「+」はポジティブな兆候であり、「-」はネガティブな兆候であるが、それぞれの兆候を検出する毎に制御部5による制御を切り替える例を示している。イメージングフローサイトメーター分析部3´の先端が分岐しており、制御部5による制御を通じて細胞を分類できるように構成している場合には、ポジティブな兆候が現れた場合のみその特定の細胞8を分岐させた特定の流路に導くようにしてもよい。かかる場合において制御部5は、電場や磁場等を通じたあらゆる物理的手段を通じて特定の細胞8を導くようにしてもよいことは勿論である。
【0098】
また
図13は、ポジティブな兆候とネガティブな兆候を細胞特定情報と共に取得することで学習済みモデルを作る例を示している。ポジティブな兆候を呈する時系列波形と共に、緑蛍光生細胞染色と、赤蛍光バイオマーカーを介して得られた細胞特定情報を同時に計測する。同様にネガティブな兆候を呈する時系列波形と共に、緑蛍光生細胞染色と、赤蛍光バイオマーカーを介して得られた細胞特定情報を同時に計測する。
【0099】
このようにて得られた各時系列波形とそれぞれにタグ付けされたポジティブ又はネガティブな細胞特定情報を同時に計測し、学習済みモデルとして蓄積していく。この学習済みモデルを構築する過程において、細胞の蛍光染色または非染色に関わらず、時系列波形と、細胞特定情報の同時計測を行うことが必要となる。
【0100】
なお、本発明においては、上述のようにして作製した学習済みモデルに基づく教師有り学習データに加え、ポジティブな時系列波形及びネガティブな時系列波形と関連付けられていないラベル無しデータに基づいた半教師有り学習に基づいて、細胞特定情報を特定するようにしてもよいことは勿論である。例えば、血液中のがん細胞のように、大半がどのようにラベルを付けてよいか分からない場合において、一部のみラベルの付け方が既知である場合において有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 細胞評価システム
2 光源
3 イメージングフローサイトメーター分析部
4 受光部
4a 受光センサ
4b 受光センサ
5 制御部
6 評価部
7 データベース
8 細胞
9 ビーズ
31 流路
32 第1対物レンズ
33 第1ビームスプリッタ
34 第1レンズ
35 第2レンズ
36 第2ビームスプリッタ
38 第2対物レンズ
39 ミラー
40 第3レンズ
41 第4レンズ
71 PMT
72 レンズ91 コンパートメント